説明

マイクロ波電力増幅器

【課題】分配偏差を低減してFETセルの均一動作を図って利得と出力を向上することができるマイクロ波電力増幅器を得る。
【解決手段】複数のFETセル1から構成されているFETチップ2と、FETチップ2の入力側に接続された入力整合回路3と、FETチップ2の出力側に接続された出力整合回路4とを設けたマイクロ波電力増幅器であって、入力整合回路3、出力整合回路4の少なくとも一方は、FETチップ2に接続され、FETチップ側に信号の伝播方向に沿って複数本のスリット11又は12が異なる間隔で設けられたマイクロストリップ線路7又は9を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてVHF帯、UHF帯、マイクロ波帯及びミリ波帯で用いられるマイクロ波電力増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロ波電力増幅器について図13及び図14を参照しながら説明する。図13は、従来のマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、入出力整合回路として、マイクロストリップ線路からなる2段のインピーダンス変成器を用いた場合について示しているが、ここでは説明を簡単にするために、入出力整合回路としてマイクロストリップ線路からなる1段のインピーダンス変成器を用いた場合について説明する。さらに、特許文献1では、スリットは1本のみであるが、ここではスリットが複数本の場合について説明する。
【0004】
図13において、従来のマイクロ波電力増幅器は、複数の電界効果トランジスタ(FET)セル1で構成されているFETチップ2と、FETチップ2にワイヤ15で接続されている入力整合回路3と、FETチップ2にワイヤ17で接続されている出力整合回路4とが設けられている。
【0005】
入力整合回路3には、FETチップ2とは反対側に入力端子5が設けられ、出力整合回路4には、FETチップ2とは反対側に出力端子6が設けられている。また、入力整合回路3及び出力整合回路4は、誘電体基板上に形成されたマイクロストリップ線路からなっている。通常、その線路長は使用周波数帯で1/4波長であり、その線路幅は入力整合回路3についてはFETの入力側インピーダンスが入力端子5の電源インピーダンスと整合がとれるように、また出力整合回路4についてはFETの出力側インピーダンスが出力端子6の負荷インピーダンスと整合がとれるように決定されている。さらに、スリット12は、出力整合回路4において信号の伝播方向に沿って等間隔で設けられ、シート形状の抵抗14がスリット12に装荷されている。
【0006】
次に、従来のマイクロ波電力増幅器の動作について説明する。入力端子5から入力された信号は、入力整合回路3を介してFETチップ2に入力され、FETにより増幅された信号が、出力整合回路4を介して出力端子6に出力される。増幅器の出力値はFETのゲート幅、すなわちFETセル数に依存するため、高出力を実現するためにFETチップ2は複数のFETセル1から構成される。このとき、模式的に図13に示すように、FETセル1と入力整合回路3と出力整合回路4とで閉ループ回路が形成され、発振する場合がある。このマイクロ波電力増幅器では、スリット12に装荷された抵抗14によりFETセル1間のアイソレーションが向上し、発振が抑圧される効果がある。また、スリット12の長さを変えることにより、閉ループ回路の外周長を変えてアイソレーションを向上する周波数帯を適宜決定することもできる。
【0007】
以上のように、従来のマイクロ波電力増幅器では、スリット12は、抵抗14を装荷し外周長を変えて所望の周波数帯でアイソレーションを向上する目的でのみ設けられていた。また、すべてのFETセル1間のアイソレーションを向上するためには、スリット12はFETセル1の間隔にあわせて等間隔で配置されていた。
【0008】
また、図14は、別の従来のマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、入出力整合として1段のインピーダンス変成器を用い、マイクロ波の伝播方向に沿って複数本のスリットを設けている。図14において、スリットはFETの中央部および両端部を通る信号の経路長が物理的にほぼ等しくなるように設けられている。以上のように、別の従来のマイクロ波電力増幅器では、整合回路の位相偏差を低減する目的でスリットが複数本設けられていた。なお、明細書中には記載されていないものの、図14から明らかなように、中央部と外側のスリット間隔の比はほぼ2:1で配置されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2001−185966号公報
【特許文献2】特開平7−307626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、複数本のスリットを等間隔で配置した場合は、整合回路での信号の分配偏差が大きくなるため、FETセルの不均一動作が大きくなり、利得及び出力の低下が大きくなるという問題点があった。
【0011】
また、整合回路で信号の位相偏差を低減するようにのみスリット間隔を決定した場合は、分配振幅偏差の改善は大きくないため、やはり利得及び出力の低下が大きくなるという問題点があった。
【0012】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、分配偏差を低減してFETセルの均一動作を図って利得と出力を向上することができるマイクロ波電力増幅器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るマイクロ波電力増幅器は、複数のFETセルから構成されているFETチップと、前記FETチップの入力側に接続された入力整合回路と、前記FETチップの出力側に接続された出力整合回路とを設けたマイクロ波電力増幅器であって、前記入力整合回路、前記出力整合回路の少なくとも一方は、前記FETチップに接続され、前記FETチップ側に信号の伝播方向に沿って複数本のスリットが異なる間隔で設けられた第1の伝送線路を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るマイクロ波電力増幅器は、分配偏差を低減してFETセルの均一動作を図って利得と出力を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るマイクロ波電力増幅器について図1を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0016】
図1において、この実施の形態1に係るマイクロ波電力増幅器は、複数の電界効果トランジスタ(FET)セル1で構成されているFETチップ2と、FETチップ2にワイヤ15で接続されている入力整合回路3と、FETチップ2にワイヤ17で接続されている出力整合回路4とが設けられている。
【0017】
入力整合回路3は、マイクロストリップ線路7と、マイクロストリップ線路7にワイヤ16で接続されているマイクロストリップ線路8とが設けられている。
【0018】
出力整合回路4は、マイクロストリップ線路9と、マイクロストリップ線路9にワイヤ18で接続されているマイクロストリップ線路10とが設けられている。
【0019】
入力整合回路3と出力整合回路4は、誘電体基板上に形成されたマイクロストリップ線路からなっている。通常、その線路長は使用周波数帯で1/4波長であり、その線路幅は入力整合回路3についてはFETの入力側インピーダンスを入力端子5の電源インピーダンスと整合がとれるように、また出力整合回路4についてはFETの出力側インピーダンスを出力端子6の負荷インピーダンスと整合がとれるように決定されている。
【0020】
また、スリット11は、入力整合回路3のマイクロストリップ線路7において信号の伝播方向に沿って複数本、不等間隔で設けられている。スリット12も、図1に示すように同様である。さらに、シート形状の抵抗13、14がスリット11、12にそれぞれ装荷されている。
【0021】
ここでは、2段のインピーダンス変成器を用いた場合について説明しているが、FETチップ2に接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9と、入出力端子5、6に接続される2段目のマイクロストリップ線路8、10は、その特性インピーダンスを決定する線路幅と、線路長の実現性を考えて、異なる誘電体基板に形成されている。通常、FETチップ2に接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9を形成する誘電体基板は、高誘電率基板、入出力端子5、6に接続される2段目のマイクロストリップ線路8、10を形成する誘電体基板は、アルミナなどの比較的誘電率の低い基板で構成される。
【0022】
つぎに、この実施の形態1に係るマイクロ波電力増幅器の動作について図面を参照しながら説明する。
【0023】
入力端子5から入力された信号は、入力整合回路3を介してFETチップ2に入力され、FETにより増幅された信号が、出力整合回路4を介して出力端子6に出力される。通常のマイクロストリップ線路では、線路幅方向の中央部より両端部に電流が集中するが、スリット11、12をマイクロストリップ線路7、9に不等間隔で配置しているため、電流の大きさが分散される。また、各FETセル1から整合回路を見込んだインピーダンスがスリット間隔に応じて変わる。
【0024】
従って、スリット間隔をパラメータとして設計を行うことにより、線路幅方向の中央部より両端部が大きい電流の振幅分布の不均一性、すなわち信号の分配偏差を低減できるとともに、各FETセル1を異なる整合条件で動作させることができるという効果がある。
【0025】
なお、ここでは、スリット11、12に抵抗13、14を装荷した構成について示したが、信号の分配偏差の低減の観点からは無くともよい。
【0026】
また、2段のインピーダンス変成器を用いた場合について示したが、1段または3段以上でもよい。
【0027】
さらに、スリットは、入力整合回路3のみ、出力整合回路4のみ、あるいは両整合回路に設けてもよい。入力整合回路3に設けた場合は利得の向上、出力整合回路4に設けた場合は利得及び出力の向上に効果がある。
【0028】
また、ここでは、マイクロストリップ線路を用いた場合について説明したが、トリプレート線路やコプレナ線路など、導体パターンを有し、スリットの装荷が可能な伝送線路についても同様の効果がある。
【0029】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るマイクロ波電力増幅器について図2から図5までを参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態2に係るマイクロ波電力増幅器のFETチップと出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。この図2は、説明を簡単にするため、FETチップと出力整合回路部分のみ示している。
【0030】
図2において、図1と同じ符号1、2、9、12、14、17は、図1と同一のものである。
【0031】
スリット12の間隔W1、W2、W3は、マイクロストリップ線路9の幅方向において、中央部ほど広く、両端部ほど狭い。すなわち、図2上、マイクロストリップ線路9の上端から、上から数えて1本目のスリット12までの間隔をW1、1本目のスリット12から2本目のスリット12までの間隔をW2、2本目のスリット12から3本目のスリット12までの間隔をW3、3本目のスリット12から4本目のスリット12までの間隔をW2、4本目のスリット12からマイクロストリップ線路9の下端までの間隔をW1とすると、W1<W2<W3となっている。
【0032】
本実施の形態2によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、通常のマイクロストリップ線路では線路幅方向の中央部より両端部に電流が集中するが、スリット12の間隔はマイクロストリップ線路の幅方向において、中央部ほど広く、両端部ほど狭くなっているため、電流の大きさは両端部で低下し、中央部では増加する。このため、信号の分配偏差が低減する。
【0033】
図3と図4は、スリットが2本の場合の入力整合回路とその分配特性を示すグラフである。なお、図3(a)及び(b)には、計算上便宜的に装荷したポート1(Port1)からポート5(Port5)までに対応する線路も示しているが、計算結果の基準面はポートと整合回路の接続面であり、その計算結果は整合回路のみの特性に相当する。例えば、厚さ0.1mm、比誘電率12.9の基板上に幅0.308mm、長さ0.6mmの伝送線路(マイクロストリップ線路)7を形成して幅0.01mmのスリット11を2本装荷した場合、図3(a)に示すように中央部のスリット間隔W2が0.144mmの場合(中央部と外側のスリット間隔の比が2:1)に比べて、図3(b)に示すようにスリット間隔W2が0.18mmとした場合の方が、図4(a)、(b)に示すように周波数FL(GHz)からFH(GHz)においてSパラメータの振幅偏差、位相偏差ともに改善されている。なお、図4(a)、(b)において、S41はポート4とポート1の間のSパラメータの振幅、位相を示し、S31はポート3とポート1の間のSパラメータの振幅、位相を示す。また、ここでは、振幅偏差とはS31とS41の振幅の差、位相偏差とはS31とS41の位相の差を示す。
【0034】
また、各FETセル1から出力整合回路4を見込んだインピーダンスが、スリット12の間隔、すなわちスリット12により分割された線路幅に応じて、両端部では高インピーダンス、中央部では低インピーダンスになる。図5は、図3に示した入力整合回路において、分配端子すなわちポート3、4側から回路側を見込んだインピーダンスを示すグラフである。周波数FL(低)からFH(高)までの周波数特性をそれぞれプロットしている。外側の分配端子から回路側を見込んだインピーダンス(S44)を比較すると、中央部のスリット間隔W2が0.144mmの場合(○印)にくらべ、W2=0.18mmとした場合(□印)の方が高インピーダンスとなっている。一般的に、効率整合となるインピーダンスは出力整合となるインピーダンスよりも高くなる。従って、信号の振幅が中央部より大きい両端部では効率整合に、中央部では出力整合に近づくことにより、各FETセル1の出力値が均一になるという効果がある。また、FETセルごとに個別にバイアスを印加できる場合には、中央部と外側のFETセルでバイアス条件を変えることにより、より各FETセルの出力値を均一にできるという効果もある。
【0035】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るマイクロ波電力増幅器について図6を参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態3に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【0036】
図6において、符号1から18までは図1と同一である。なお、ここでは、スリット11、12は2本の場合について示している。また、突起部19、20は、FETチップ2に接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9のFETチップ側に設けられている。突起部19、20を設けることにより、マイクロストリップ線路7、9の線路幅がFETチップ2の幅に合わせて大きくなっている。
【0037】
本実施の形態3によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、FETチップ2の幅に合わせた一様な線路幅のマイクロストリップ線路を用いる場合は、その線路幅により決定される特性インピーダンスになってしまうが、本実施の形態3では特性インピーダンスを所望の値にしつつ、FETのゲート幅を大きくすることができ、高出力化を図れるという効果もある。
【0038】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るマイクロ波電力増幅器について図7を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態4に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【0039】
図7において、符号1から20は図6と同一である。カット部21、22は、FETチップ2に接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9のFETチップ2と反対側に設けられている。カット部21、22を設けることにより、その線路幅が2段目のマイクロストリップ線路8、10の線路幅に合わされている。
【0040】
本実施の形態4によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、1段目のマイクロストリップ線路7、9と2段目のマイクロストリップ線路8、10の線路幅をその接続部においてカット部21、22により揃えることにより、線路間の不連続による反射が低減されるとともに、線路幅方向の両端部を伝播する信号の経路長がカットをしない場合にくらべて短縮されるので、中央部を伝播する信号の経路長との差異が低減され、合成効率が向上し、利得および出力が向上するという効果もある。
【0041】
さらに、カット部21、22によりマイクロストリップ線路7、9の一端の線路幅を小さくすることで、出力の向上のためにFETのゲート幅を大きくし、かつ、FETチップ2と接続されるマイクロストリップ線路7、9の一端の線路幅を大きくしたことによる特性インピーダンスの変化を低減し、所望の特性インピーダンスを実現できるという効果もある。
【0042】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係るマイクロ波電力増幅器について図8を参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態5に係るマイクロ波電力増幅器の出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。この図8は、説明を簡単にするため、出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路のみ示している。
【0043】
図8において、符号9、12、14、20、22は図7と同一である。また、不連続部23は、スリット12の幅に設けている。なお、図8には信号の伝播もあわせて模式的に示している。
【0044】
本実施の形態5によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、図8に示すように、スリット12の幅に、信号の伝播方向に対して、不連続部23を設けることにより、線路幅方向の両端部を伝播する信号の経路長と、中央部を伝播する信号の経路長との差異が低減され、合成効率が向上し、利得および出力が向上するという効果がある。
【0045】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係るマイクロ波電力増幅器について図9を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態6に係るマイクロ波電力増幅器の出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。この図9は、説明を簡単にするため、出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路のみ示している。
【0046】
図9において、符号9、12、14、20、22は図7と同一である。また、不連続部24は、マイクロストリップ線路9の線路幅部分に設けられている。
【0047】
本実施の形態6によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、線路幅を部分的に細くすることにより、設計の自由度を大きくし、マイクロストリップ線路9の幅方向の両端部をより高インピーダンスにすることができる。従って、信号の振幅がより均一化され、利得と出力がさらに向上するという効果がある。
【0048】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7に係るマイクロ波電力増幅器について図10を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の形態7に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【0049】
図10において、符号1から22は図7と同一である。入力整合回路3又は出力整合回路4は、2段のインピーダンス変成器で構成され、FETチップ2と接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9のFETチップ2と反対側の一端のコーナは、2段目のマイクロストリップ線路8、10の線路幅とほぼ同一になるように、片側のみカットされている。なお、図10には信号の伝播もあわせて模式的に示している。
【0050】
本実施の形態7によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、図10に示すように、1段目のマイクロストリップ線路9から2段目のマイクロストリップ線路10にかけての、線路幅方向の両端部間での信号の経路長の差異が低減するため、合成効率が向上するとともに、1段目と2段目のマイクロストリップ線路間の不連続による反射が低減され、利得および出力が向上するという効果がある。
【0051】
実施の形態8.
この発明の実施の形態8に係るマイクロ波電力増幅器について図11を参照しながら説明する。図11は、この発明の実施の形態8に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【0052】
図11において、符号1から22は図7と同一である。入力整合回路3又は出力整合回路4は、2段のインピーダンス変成器で構成され、FETチップ2と接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9に設けられたスリット11、12の形状は、マイクロストリップ線路7、9の線路幅方向に対して不均一、つまり不連続部23が設けられている。換言すると、スリット11、12の幅は、スリット11、12の信号の伝播方向における中央付近で広くなっている。なお、信号の伝播もあわせて模式的に示している。
【0053】
本実施の形態8によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、図11に示すように1段目のマイクロストリップ線路9から2段目のマイクロストリップ線路10にかけての、線路幅方向の両端部間での信号の経路長の差異が低減するため、合成効率が向上するとともに、1段目と2段目のマイクロストリップ線路間の不連続による反射が低減され、利得および出力が向上するという効果がある。
【0054】
実施の形態9.
この発明の実施の形態9に係るマイクロ波電力増幅器について図12を参照しながら説明する。図12は、この発明の実施の形態9に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【0055】
図12において、符号1から22は図7と同一、符号24は図9と同一である。入力整合回路3又は出力整合回路4は、2段のインピーダンス変成器で構成され、FETチップ2と接続される1段目のマイクロストリップ線路7、9の線路幅は、線路の中心に対して不均一、つまり、マイクロストリップ線路7、9の信号の伝播方向における中央付近で狭くなっている。なお、信号の伝播もあわせて模式的に示している。
【0056】
本実施の形態9によっても上記実施の形態1と同様の効果を有する。また、図12に示すように、1段目のマイクロストリップ線路9から2段目のマイクロストリップ線路10にかけての、線路幅方向の両端部間での信号の経路長の差異が低減するため、合成効率が向上するとともに、1段目と2段目のマイクロストリップ線路間の不連続による反射が低減され、利得および出力が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態1に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るマイクロ波電力増幅器のFETチップと出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。
【図3】スリットが2本の場合の入力整合回路の構成を示す図である。
【図4】スリットが2本の場合の入力整合回路の分配特性を示すグラフである。
【図5】図3の入力整合回路における、分配端子側から回路側を見込んだインピーダンスを示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態3に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係るマイクロ波電力増幅器の出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態6に係るマイクロ波電力増幅器の出力整合回路の1段目のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態7に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態8に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態9に係るマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図13】従来のマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【図14】別の従来のマイクロ波電力増幅器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 FETセル、2 FETチップ、3 入力整合回路、4 出力整合回路、5 入力端子、6 出力端子、7 マイクロストリップ線路、8 マイクロストリップ線路、9 マイクロストリップ線路、10 マイクロストリップ線路、11 スリット、12 スリット、13 抵抗、14 抵抗、15 ワイヤ、16 ワイヤ、17 ワイヤ、18 ワイヤ、19 突起部、20 突起部、21 カット部、22 カット部、23 不連続部、24 不連続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のFETセルから構成されているFETチップと、前記FETチップの入力側に接続された入力整合回路と、前記FETチップの出力側に接続された出力整合回路とを備えたマイクロ波電力増幅器であって、
前記入力整合回路、前記出力整合回路の少なくとも一方は、
前記FETチップに接続され、前記FETチップ側に信号の伝播方向に沿って複数本のスリットが異なる間隔で設けられた第1の伝送線路を含む
ことを特徴とするマイクロ波電力増幅器。
【請求項2】
前記間隔は、前記信号の伝播方向に対して直交している前記第1の伝送線路の幅方向の中央部に比べて両端部ほど狭い
ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項3】
前記FETチップの幅が拡張した場合に前記FETチップの拡張した幅に合わせて、前記第1の伝送線路は、前記FETチップの反対側に比べて前記FETチップ側の線路幅が広い
ことを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項4】
前記入力整合回路、前記出力整合回路の少なくともいずれか一方は、
前記第1の伝送線路に接続された第2の伝送線路をさらに含み、
前記第2の伝送線路の線路幅に合わせて、前記第1の伝送線路は、前記FETチップの反対側のコーナがカットされている
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項5】
前記スリットの幅は、前記信号の伝播方向に対して不均一である
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項6】
前記第1の伝送線路の線路幅は、前記信号の伝播方向に対して不均一である
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項7】
前記第2の伝送線路の線路幅とほぼ同一になるように、前記第1の伝送線路は、前記FETチップの反対側の2つのコーナのうち片方のみカットされている
ことを特徴とする請求項4記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項8】
前記スリットの幅は、前記スリットの前記信号の伝播方向における中央付近で広い
ことを特徴とする請求項5記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項9】
前記第1の伝送線路の線路幅は、前記第1の伝送線路の前記信号の伝播方向における中央付近で狭い
ことを特徴とする請求項6記載のマイクロ波電力増幅器。
【請求項10】
前記第1及び第2の伝送線路は、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレナ線路のいずれかである
ことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかに記載のマイクロ波電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−22235(P2008−22235A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191743(P2006−191743)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】