説明

マイクロ流体デバイスおよびこれを用いたタンパク質検出装置

【課題】熱レンズ顕微鏡には、5ナノメーター以下の小さいタンパク質が検知できない、マイクロ流路を流れる試料総量の1%以下しか検知できない、という課題がある。
【解決手段】流路の周囲に電極を備えたマイクロ流路内で、タンパク質だけが加熱される交流電圧を印加してタンパク質試料の周囲に温水塊を励起し、周囲の水より低い誘電率の温水塊を誘電泳動力で集束することと、周囲の水より小さい屈折率の温水塊を熱レンズ顕微鏡で検知することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、光学顕微鏡では検知が難しいナノサイズの物質を蛍光標識することなしに検知する熱レンズ顕微鏡に係わり、マイクロ流体デバイス内を流れる微少量、微小体積の生体物質、特にタンパク質を検知するために熱レンズ顕微鏡を用いるタンパク質検出装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
分析速度の向上、試料の少量化、装置の小型化などでの利点により、近年、多く用いられるようになったマイクロ流体デバイスは、シンプルな構成でも比較的高い精度が実現できる電気泳動クロマトグラフィーとその派生技術である電気浸透流クロマトグラフィーと、試料を蛍光染料あるいは蛍光タンパク質などを用いた蛍光標識による感度向上や、微少物質の表面電荷密度を一定とするミセルで包囲するミセル動電クロマトグラフィーの応用により、短い分離距離という分析装置では不利となる特質を改良し、高性能化が図られてきた。
【0003】
しかし、蛍光色素や蛍光タンパク質、量子ドット、あるいは標的と選択的に結合しやすい既知の物質による標識物質、さらには電気泳動用に表面電荷密度を制御するミセルなどの物質の付加は、励起光や蛍光の高エネルギー光被曝からのダメージだけでなく、タンパク質試料などでは結合した標識物質によるコンフォメーション変化や変質を防止できず、分析後に試料を元の状態で回収する、あるいは生体内と同じような活性を観察することは難しいという課題がある。
【0004】
そこで、タンパク質などのナノサイズ物質を、蛍光標識無しで検出する装置として、特許文献1、特許文献2などに開示されている熱レンズ顕微鏡が開発された。しかし、熱レンズ顕微鏡の検知できる物質サイズの限界は5ナノメーターまでであり、5ナノメーター以下のサイズのタンパク質は種類の数が多いにも関わらず検出できず、タンパク質検出装置としてはまだ性能が不十分である。また、熱レンズ顕微鏡に使われる励起光焦点の断面積は3.5平方マイクロメーター程度であり、少なくても一辺が数十マイクロメーターある流路断面の一部(面積比率で1%以下)を通過する試料しか検知していないため、検知されずに通り過ぎて無駄となる試料が多いという課題がある。
【0005】
また、キャリヤー液体中にけんだく状態あるいは浮遊状態で存在するマイクロメーターサイズの粒子状物質に誘電泳動力を作用させて流れの中心位置へ集束する技術が、特許文献3、非特許文献1などに記載されている。しかし誘電泳動力は、粒子が小さくなるにつれてその体積(半径の3乗)に比例して小さくなるため、タンパク質のように、その径が約1ナノメーターから数十ナノメーターくらいまでの間にたくさんの種類が存在する物質では、熱エネルギーであるブラウン運動に負けてしまい、集束させる作用を発揮することができない。
【特許文献1】特許公開2000−356746
【特許文献2】特許公開2002−082078
【特許文献3】WO2004/074814 (PCT/US2004/004783)
【非特許文献1】H. Morgan, D. Holmes and N.G. Green: "3D Focusing ofNanoparticles in Microfluidic Channels", IEE Proceedings Nanobiotechnology,vol.150, no.2, pp.76-81 (2003).
【非特許文献2】K. V. I. S. Kaler and T. B. Jones: "Dielectrophoretic spectraof single cells determined by feedback-controlled levitation", BiophysicalJournal, vol.57, pp.173-182 (1990).
【非特許文献3】J. Barthel, K. Bachhuber, R. Buchner, and H. Hetzenauer,"Dielectric Spectra of Some Common Solvents in the Microwave Region. Waterand Lower Alcohols", Chemical Physics Letters, vol.165, no.4, pp.369-373(1990).
【非特許文献4】N. Miura, N. Asaka, N. Shinyashiki, and S. Mashimo:"MicrowaveDielectric Study on Bound Water of Globule Protein in Aqueous Solution",Biopolymers, vol.34, Issue 3, pp.357-364 (1994).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の背景技術で述べたように熱レンズ顕微鏡には5ナノメーターという検知限界があり、5ナノメーター以下の小さいサイズのタンパク質が検知できないという課題がある。また、マイクロ流路内を流れる試料総量のうち検知できるのは1%以下であり、その他の大部分の試料は無駄に流れてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先ず流路の周囲に2種類の周波数の交流電圧を重畳して印加する電極を備えたマイクロ流路内で、キャリヤー液体中に分散状態あるいは浮遊状態で存在する試料を集束し、次に、熱レンズ励起光ではなく交流電界を用いて試料周囲に温水塊を励起し、あるいは交流電界の補助のもとに熱レンズ励起光を用いて熱レンズを励起し、熱レンズ顕微鏡で検出することにより、上記、課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
上記試料の集束手段は、試料をマイクロ流体デバイスの流路断面より細い軸流として流し、ほとんど全ての試料を無駄なく熱レンズ顕微鏡で検出できる断面内に送り込むことを可能にする。また、上記温水塊を励起する手段は従来のレーザー光励起による熱レンズ生成よりも効率の良い発熱と大きな温水塊を生成することができるため、5ナノメーター以下のタンパク質分子の検知も可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に述べるように、本発明により、少量のタンパク質試料を無駄なく検知する用途、また蛍光標識せずに精度良く検知する用途に適したマイクロ流体デバイスやタンパク質検出装置を実現する。
【実施例1】
【0010】
まず、本発明の原理説明に必要な、誘電泳動力について簡単に説明する。非特許文献2によれば、誘電泳動力(F)は、粒子(比誘電率ε)が分散された流体中(比誘電率ε)に電界勾配が存在する場合に発生し、電界の極性(電気力線の向き)には関係なく粒子に作用する引力(あるいは斥力)であり
F=2πrεε・Re[CM(ω)]・grad|E| … 式1
ε:真空の誘電率、d:粒子の直径、E:電界ベクトル
と表される。式1から、誘電泳動力(F)は粒子半径rの3乗(または体積)と、クラジウス−モソッティ係数CM(ω)={(ε−ε)/(ε+2ε)}の実数部であるRe[CM(ω)]と、電界の2乗の勾配である∇|E| の3つの項の積に比例することが分かる。
【0011】
一般には、誘電泳動力を発生するために電極へ印加する電圧として、周波数が約50Hzから50MHzの間の交流が使用される。この周波数範囲の交流電圧を用いると、粒子が帯電している場合に作用する電気泳動力を時間平均の効果によりキャンセルすることができる。また、電極が直に流体に接触している場合に生じる(電気分解などの)電極反応を抑制することができる。
【0012】
流体を20℃の水とすれば比誘電率εは約78であり、通常の生体物質では多くても比誘電率εは10以下であるから、水中ではほとんどの物質に、電極から反発する力(斥力)である負の誘電泳動力(ε<<ε、F<0)が働く。したがって、流路の周囲に設置した複数の電極から誘電泳動力を作用させると、水に浮遊して移動する試料は電極からの反発力に押されて流路の中心付近へ集まる。
【0013】
しかし、式1に示したように体積に相当するrに比例する項があるために、試料のサイズが小さくなるにつれて誘電泳動力は急激に小さくなる。200ナノメーター以下のサイズになると、熱運動(ブラウン運動)に負けて集束の効果が小さくなり、タンパク質の大きさに相当する15ナノメーター以下となると、ほとんど誘電泳動力の効果が見られなくなる。
【0014】
次に、これも本発明の原理説明に必要な、水の誘電損失について簡単に述べる。図1に示したグラフは非特許文献3に掲載された水の誘電損失(実線)と比誘電率(点線)のスペクトルであり、誘電損失は周波数20GHzにピークを持ち、バンド幅の広い吸収特性を持つことが示されている。この特性はγ分散と呼ばれ、γ分散周波数を境に水の比誘電率εが低周波側における78程度から高周波側における4.5程度にまで低下する。また、交流電界内でγ分散により水が発熱する性質は、電子レンジなどの調理器として利用されている。
【0015】
一方、水和水などの形で他の分子に束縛された水分子は、平均で30%(重量%)前後、極端な場合には90%もの割合を占め、自由状態の水分子よりもγ分散周波数が低くなることが知られている。タンパク質水溶液の誘電損失スペクトルの測定から水和水分子のγ分散周波数は100MHzとなることと、水和する水分子の数が表面積に相関があることが非特許文献4で報告されている。非特許文献4の中から、例として図2に、タンパク質ミオグロビン(分子量17.8KDa)の5%(重量%)水溶液に対する誘電損失(実線)と比誘電率(点線)のスペクトル測定値を示す。6MHz付近に大きな吸収ピークが観測されるが、このピークの周波数はタンパク質分子の大きさに依存して移動することからタンパク質自身の回転であると推定されている。
【0016】
これらの実験事実から、タンパク質の水溶液は約1MHz以上、1GHz以下の交流電界内でタンパク質自身の回転あるいはタンパク質に束縛された水和水の振動により発熱し、タンパク質を含まない水ではこの帯域で発熱が無いことが分かる。つまり、1MHzから1GHzくらいまでの交流電界を印加すると、タンパク質分子と水和水の発熱によりタンパク質分子周辺の水の温度が上昇し、熱レンズ(一般に光学レンズ焦点で励起されるものを言う)と似たような温水塊が形成される。しかも、交流印加の方が光照射に比べてはるかに大きなエネルギーを効率良く注入できるため、光励起では難しかった5ナノメーター以下のタンパク質のような小さな分子であっても大きな温水塊を作ることができる。
【0017】
水の低周波数における比誘電率は温度上昇と共に絶対温度の逆数に比例して低下することが知られている。したがってタンパク質はそのサイズが小さいために誘電泳動力はほとんど作用しないにも関わらず、タンパク質水溶液に1MHz以上の高周波数の交流電界を印加して生成した温水塊は、低周波数の交流にとっては誘電率が低い塊になるため、交流電界から誘電泳動力を作用させることができる。温水塊にこの電気力学的作用を及ぼすことにより、温水塊とその内部に存在するタンパク質分子を一緒に移動させることが可能になる。
【0018】
以上の原理に基づき考案された本発明によるタンパク質検出装置の全体図を図3に示す。本発明のマイクロ流体デバイス10の流入口には送液ポンプ14がチューブを介して接続され、送液ポンプ14の試料リザーバー15から試料であるタンパク質を含む水溶液が供給される。マイクロ流体デバイス10の流出口にはチューブを介して廃液容器16が接続されている。
【0019】
マイクロ流体デバイス10の内部は、後述するように第1のマイクロ流体デバイス領域と第2のマイクロ流体デバイス領域に分かれており、それぞれに少し異なる交流電圧が印加される。第1のマイクロ流体デバイス領域には、1MHz以下の周波数の交流を供給する低周波交流電源21と、1MHz以上の周波数の交流を供給する高周波交流電源22が、重畳回路23を介して電線により接続されている。重畳回路は例えばコンデンサカップリングによる非常にシンプルなものであっても構わない。第2のマイクロ流体デバイス領域には、高周波交流電源22から重畳回路を介さずに電線で直接接続されている。なお低周波交流電源には、後で述べるように、電圧値は同じで位相が異なる少なくとも2種類の電圧を出力する端子が設けられている。
【0020】
マイクロ流体デバイス10の所定の位置に焦点を設定した熱レンズ顕微鏡41は、マイクロ流路内を流れる試料を光センサー44で検出し、その検出信号を時間軸に対する検出電圧値としてデーター収集解析装置24に送る。
【0021】
プロセス制御装置25は熱レンズ顕微鏡41、データー収集解析装置24、低周波交流電源21、高周波交流電源22、送液ポンプ14とデーター配線により接続され、システム全体のプロセスを制御する。
【0022】
本発明による、タンパク質水溶液中のタンパク質分子を検出するためのマイクロ流体デバイス10を図4に示す。本実施例では第1のマイクロ流体デバイス領域31と、第2のマイクロ流体デバイス領域32が同一基板上に形成されている。以下にその動作を説明する。
【0023】
第1のマイクロ流体デバイス領域31におけるマイクロ流路は図5に示すように、流路断面の4つの隅の位置にそれぞれ独立した複数の交流電極33のエッジが配置されている。誘電泳動力を作用させるためにこの4つの電極に印加する1MHz以下の低周波数側の電圧としては、例えば、対角の2電極に図6(a)に実線で示すゼロ相、それと交差する対角の2電極に図6(a)に点線で示すπ相の同じ電圧値で位相が180度(πラジアン)異なる2種類の電圧を使用する。しかし、水溶液中のタンパク質分子のサイズは小さいために、図7(a)の状態では誘電泳動力はほとんど作用しない。
【0024】
ここで図7(b)に示すように、図7(a)と同じ電極へ、例えばコンデンサカップリングなどの重畳回路を介して1MHz以上の高周波を重畳した図6(b)のような交流を印加すると、タンパク質とその水和水が発熱し、その熱がタンパク質の周囲に拡散して温水塊52が生成される。なお図6(b)は解りやすく説明をするための図であって、低周波数と高周波数の比率や振幅の比率などが正確ではない。
【0025】
この温水塊は、誘電泳動力が作用する程度の体積を維持するように、また、高周波交流電圧による発熱量が大きすぎてタンパク質にダメージを与えたり、水の平均温度を上昇させたりしないような適度の大きさに設定されている。この設定は印加交流電圧の振幅やバースト幅(印加時間幅)などで制御される。
【0026】
誘電泳動力が充分に作用する程度の大きさの温水塊が形成されると、温水塊は流路の4つの角にある電極エッジからの反発力を受け、4つの電極からほぼ等距離となる流路中心に向かって移動し、流れに乗って移動しながら図7(c)に示すように集束する。
【0027】
この重畳する1MHz以上の高周波側の交流は、断続的に印加しても、ある時間内連続して印加しても、どのような時間シークエンスで印加しても構わない。しかし平均水温の上昇やタンパク質試料が局所的高温に晒されダメージを避けるうえで、交流電界はバースト状に印加し、試料がほぼ中心に集束した段階でオフする方が望ましい。一旦、集束すれば、拡散するまでの時間よりも短い時間内であれば、集束状態を保ちながらマイクロ流路内を流すことができる。
【0028】
集束した試料は上記マイクロ流路11を流れ、下流側の第2のマイクロ流体デバイス領域32へ入る。この領域の流路にも、図8のような交流電極33が備わっている。本実施例では、ほぼ流路内の中心に設定された熱レンズ顕微鏡の測定位置を、等距離で囲む8つの電極を構成し、測定位置で比較的均一な合成電界強度が得られる構造とした。熱レンズ顕微鏡の測定位置は、顕微鏡光学系の焦点位置と一致させると光の屈折が観測できなくなるため、焦点から前後に外れた光路中に設定される。
【0029】
この交流電極33に囲まれたマイクロ流路11内に、熱レンズ顕微鏡41からレーザーを光源とする検出光42が入射され、交流電極33から周期的に(1MHz以上1GHz以下の)交流のバーストが印加される。検出光照射領域43に何も試料が存在しない状態で、交流バースト印加期間にある場合に、検出光が光センサー44へ入射される様子を図9(a)に示す。自由水の誘電損失が非常に小さいため温水塊はできない。
【0030】
次に、検出光照射領域43にタンパク質分子51が2つ流入した状態で、交流バースト印加が無い期間の場合を図9(b)に示す。この場合も温水塊はできない。また、タンパク質分子は非常に小さいのでほとんど光の分散は生じないため、光センサー44へ入射される光量は変化しない。
【0031】
次に、検出光照射領域43にタンパク質分子51が存在し、交流バースト印加期間になった場合を図9(c)に示す。タンパク質分子51の周囲に温水塊52が生成される。温水塊の屈折率(γ分散の高周波数側の誘電率の平方根に相当する)は低いので、検出光に対して凹レンズと同じ作用をもたらし、光センサー44へ入射される光量は、交流印加が無い状態であった図9(b)のときよりも増加する。
【0032】
このようにして、タンパク質の存在を光センサー44に入射される検出光の光量変化により検知することができる。また試料が希薄な状態であれば、光センサーへ入射される光量の測定値は、タンパク質分子の総表面積と線形の関係にあり、分子数と分子量の積あるいは濃度を反映する値になる。以上に述べたようにして、本発明により、タンパク質を分子の数のレベルで検知することが可能になる。
【0033】
(変形例)
本発明の実施例では、第1のマイクロ流体デバイスにおける電極は流路の流れの方向に長い形状として図に示したが、流れの方向に短く分割して何段か並べる電極であっても構わない。短い電極を並べる構成にすると、流れの方向に対しても誘電泳動力を作用させ、濃縮やプロセス開始時間の正確な設定などの効果なども利用することが可能になる。
【0034】
本発明の実施例では、第2のマイクロ流体デバイス領域の電極の役割は、温水塊を生成することがメインであるため、本発明の実施形態では1MHz以上の高周波数側の交流だけが印加されている場合を述べた。しかし、この領域の電極に対しても集束のための低周波側の交流を重畳してもよく、本特許の意図を何ら妨げるものではない。
【0035】
また本発明の実施例では、第2のマイクロ流体デバイスとして8電極を使う構成を示したが、同じ目的を果たす構成であれば電極の数や配置に制限を与える必要は無い。
【0036】
また本発明の実施例では、第2のマイクロ流体デバイスにおけるタンパク質分子の検出に、熱レンズ顕微鏡に備わる熱レンズ励起光を用いず、周囲の電極からの交流印加だけを用いる例を示したが、交流印加と熱レンズ励起光を共用する使い方であっても構わない。このような使い方であれば、通常の熱レンズ顕微鏡では熱レンズができないために検出不可能であった5ナノメーター以下のタンパク質でも、交流印加のサポートのより検出可能となるものがあり、また従来から検出可能なタンパク質に対しても感度を向上することができる。
【0037】
また本発明の実施例では、送液ポンプによる圧力流れの送液を示したが、送液は圧力流れに限定されるものではなく他の方法であっても良い。例えば、マイクロ流路の流入口と流出口に設けた電極に直流電圧を印加し、電気泳動あるいは電気浸透流を利用して送液する方法であっても構わない。
【0038】
また本発明の実施例では、第1のマイクロ流体デバイスと第2のマイクロ流体デバイスを同一基板上に形成したが、これらは別の基板であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上述べたように本発明によるマイクロ流体デバイスやタンパク質検出装置は、少量のタンパク質試料を無駄なく検知する用途、また蛍光標識せずに精度良く検知する用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の原理に関わる水の誘電損失スペクトル図
【図2】本発明の原理に関わるタンパク質水溶液の誘電損失スペクトル図
【図3】本発明によるタンパク質検出装置の全体図
【図4】本発明によるマイクロ流体デバイスの平面図
【図5】第1のマイクロ流体デバイスの立体図
【図6】第1のマイクロ流体デバイスに印加する交流電圧の概念図
【図7】タンパク質試料が集束する過程を説明する図
【図8】第2のマイクロ流体デバイスの立体図
【図9】タンパク質試料の検出を説明する図
【符号の説明】
【0041】
10 マイクロ流体デバイス
11 マイクロ流路
12 流入口
13 流出口
14 送液ポンプ
15 試料リザーバー
16 廃液容器
21 低周波交流電源
22 高周波交流電源
23 重畳回路
24 データー収集解析装置
25 プロセス制御装置
31 第1のマイクロ流体デバイス領域
32 第2のマイクロ流体デバイス領域
33 交流電極
41 熱レンズ顕微鏡
42 検出光
43 検出光照射領域
44 光センサー
51 タンパク質分子
52 温水塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が水と共に流れる流路の一部に、断面を複数の電極が囲む領域を備えたマイクロ流体デバイスであって、試料の周囲に温水塊を励起する第1の周波数の交流電圧と、前記温水塊に誘電泳動力を作用させて前記温水塊を内部の試料と共に集束する第2の周波数の交流電圧の、少なくとも2つの異なる周波数の交流電圧を重畳して前記電極に印加することを特徴とするマイクロ流体デバイス
【請求項2】
請求項1における第1の周波数は1MHz以上1GHz以下であり、第2の周波数は1MHz以下であることを特徴とするマイクロ流体デバイス
【請求項3】
試料が水と共に流れる流路の一部に、断面を複数の電極が囲む領域を備えたマイクロ流体デバイスであって、前記電極へ交流電圧を印加して前記試料の周囲に温水塊を励起し、流路内の前記温水塊が通過する位置に検出光を放射する熱レンズ顕微鏡と共に用いるマイクロ流体デバイス
【請求項4】
請求項1の第1のマイクロ流体デバイスと、前記第1のマイクロ流体デバイスの下流に接続した請求項3の第2のマイクロ流体デバイスと、前記第2のマイクロ流体デバイスと共に用いる熱レンズ顕微鏡からなり、前記熱レンズ顕微鏡は、前記第2のマイクロ流体デバイスが励起する温水塊を検知することを特徴とするタンパク質検出装置
【請求項5】
請求項1の第1のマイクロ流体デバイスと、前記第1のマイクロ流体デバイスの下流に接続した請求項3の第2のマイクロ流体デバイスと、前記第2のマイクロ流体デバイスと共に用いる熱レンズ顕微鏡からなり、前記熱レンズ顕微鏡は、具備されている熱レンズ形成用の励起光を照射し、温水塊とともに励起される熱レンズを検知することを特徴とするタンパク質検出装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−329916(P2006−329916A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156846(P2005−156846)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(304015760)有限会社フルイド (10)
【Fターム(参考)】