説明

マイクロ流体デバイスおよびその使用方法

エラストマー基材において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーからの蒸発を防止する蒸気バリアと、該複数の反応チャンバーの各々を隔離する連続相流体とを含むマイクロ流体デバイス。本発明は、マイクロ流体デバイスに関する。本発明はまた、エラストマー基材内において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーからの蒸発を防止する蒸気バリアと、該複数の反応チャンバーの各々を隔離する連続相流体とを含むマイクロ流体デバイスにも関する。マイクロ流体デバイスを用いる標的核酸のデジタル定量法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年11月7日出願の米国仮特許出願60/996,236(これはその全体が参考として本明細書において援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、マイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
現行のマイクロ流体デバイス(「チップ」)およびシステムは、小容量、一般に数ナノリットルの半自動的および自動的な操作を可能とする。サンプル処理およびアッセイの微細化により、速度および感度の両方が増大するほか、スケールの節約ももたらされ、すなわち、アッセイを実行し、所望の情報を得るのに必要とされる試薬、サンプル、および空間がより少量およびより狭小となり、個々のサンプルおよび試薬に対する操作の減少により誤差の可能性が低下する。マイクロ流体デバイスおよびマイクロ流体システムは、タンパク質結晶解析、無細胞タンパク質合成、ガスクロマトグラフィー、細胞分離、電気泳動、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などを含む各種の化学的分析および生化学的分析による使用に適応または提供されている。
【0004】
PCRおよび他の核酸に基づく方法の出現、ならびにヒトゲノム配列決定の完了により、各種の核酸に基づく診断および検査がもたらされ、このため、より正確で高感度な分析ツールに対する要求はとどまることがない。遺伝子の発現、多型、変異(遺伝性または他の形での)などについての知識が医療の改善へと置き換えられ、これが、より正確で高感度な分析ツールを要求している。遺伝子疾患、癌、および感染症のより早期の検出および診断により、即時の有益な影響がもたらされる。疾患の早期段階はより効果的に治療することができ、成功度がより高いことが多く、したがって、対象の転帰および生活の質を大きく改善する。
【0005】
定量的リアルタイムPCR(RT−PCR)は、比較的まれな遺伝子多型を検出する最新の「ゴールドスタンダード」であるが、配列の違いを信頼できる形で検出する前に、サンプル中に約20%以上の配列の違いの存在を必要とする。PCRは、指数関数的増幅法であり、本来極めて高感度であり、原理的には単一分子の検出を可能とする。しかし、任意の非特異的な増幅または汚染により偽陽性がもたらされる場合があり、これにより、まれな配列を信頼できる形で検出することが極めて困難となる。標的配列がより高レベルで存在し得る他の分子種と極めて類似し、したがって、まれな分子種の検出におけるアッセイ感度を制限し得る場合、すなわちほぼ同一の配列を有する正常な分子によるバックグラウンドが大きいために、まれな癌細胞集団内における一塩基多型の存在が見えなくなりうる場合に、これは特に当てはまる。加えて、指数関数的増幅反応のリアルタイムでのモニタリングは、ダイナミックレンジが大きいが、識別力が制限され、2つの配列の相対度数の差が約20%未満である場合は、検出が困難であり得る。多くの適用では、はるかに大きな感度が必要とされる可能性がある。例として述べると、循環血液からの胎児異数性の検出は、約1〜6%の対立遺伝子の違いの正確な検出を必要とする(Loら、1998年、Am J Human Genetics)。
【0006】
デジタルPCRは、1999年にVogelsteinおよびKinzlerにより初めて説明された(Prot. Natl Acad. Sci USA、第96巻、9236〜9241頁)。デジタルPCR法は単一分子の増幅をもたらすが、従来の96ウェルプレートおよび384ウェルプレートを用いるマイクロリットル容量のリアクター内における肉眼での実施は、非特異的な増幅、汚染、高額な試薬費用、および少ない反応数を克服しなければならない場合がある。したがって、デジタルPCRによる定量的分析の実施には、低い偽陽性率で単一分子を信頼できる形で増幅することが必要である。これは、マイクロリットル容量のリアクターで注意深く最適化を行うことが必要とされることがらである。加えて、デジタルPCRによる分析の精度は、反応数に依存する。1%の違いを信頼できる形で検出するには、数十万〜百万の反応を必要とする。これは、既存の方法を用いる場合、実際的でない。
【0007】
新しく出現したマイクロ流体技術は、小容量の区画化、高いスケーラビリティー、およびスケールの節約による感度の増大を提供し、これにより、デジタルPCRの最大限の力を実現することが可能となる。
【0008】
アッセイサイズの縮小は、単なるスケールの節約を超えるものをもたらし、より少量のサンプルを用いることができ、1つのサンプルに対してより多くの検査を実施できることが最も明らかな有益性であるが、「従来の」容量サイズおよびサンプルサイズを用いては非実際的であるか、不可能であった生物学的アッセイもまた可能とすることができる。ある場合には、従来のアッセイを容易に縮小する(例えば、100ulの代わりに1ulの容量を用いる)ことができる一方、他の場合には、アッセイを準備する方法、データを分析する方法、または他の点において大きな改変を必要とし得る。Zhangら、2006年(Biotechnology Advances、第24巻、243〜284頁)は、DNA増幅ならびにマイクロ流体工学の適用に有用となりうる各種の方法、材料、および技法のためのPCR用マイクロ流体デバイスについて総説している。
【0009】
溶液を多数の小容量反応に区画化することは、多くの分野で有用である。バルブおよび流路を含むマイクロ流体デバイスは、均一の空間配置により、平面的(2次元的)なエマルジョンの形成を可能とする。この均一なアレイには、各液滴を経時的に追跡または画像化し得る利点がある。これは、リードアウトの経時的モニタリングを必要とするアッセイ(例えば、リアルタイムのポリメラーゼ連鎖反応)において特に重要である。さらに、このような方法により、各液滴の容量が実質的に同じである、正確に規定されたアレイが可能となる。
【0010】
バルブによる区画化を用いるマイクロ流体によるデジタルPCRが、環境菌に対する多重遺伝子解析(Warrenら、2006年、PNAS、第103巻、17807〜17812頁)において、また、造血細胞の転写因子プロファイリング(Ottesenら、2006年、Science、第314巻、1464〜1467頁)のために、用いられている。これらの実験で用いられるマイクロ流体デバイスでは、約9000の個別の10nL反応による区画化アレイが与えられる。
【0011】
現行のマイクロ流体デバイスにおいて達成可能なPCR反応の密度および最小容量は、実際的な制限を受ける場合がある。アレイの密度が増加するにつれ、個別の反応チャンバー容量は減少し、バルブが過大な空間を占めるために実現可能でなくなる場合がある。マイクロ流体バルブを信頼できる形で作製し得る最大密度(ピッチ(pitch)が約200μmである50個×50個のチャンバーアレイに基づく約2500cmであることが典型的)により、熱サイクリング時における過度の試薬の蒸発なしに気体透過性エラストマーによるデバイス内において実装し得るPCR反応の最小容量(約1nL)を伴って作製し得る、バルブにより画定される個々の反応チャンバーの数に対する上限(Thorsenら、2002年、Science、第298巻、580〜584頁)が与えられる。正確な測定は、単一のサンプルを数千〜数百万の個別の反応に区画化することを必要とし、このため、デバイス面積および試薬消費のいずれの点でもこれを高価なものとするので、デジタルPCRでは密度およびスケールが特に重要である。したがって、アッセイ密度を劇的に増大させ、アッセイ容量を劇的に低減する新たな方法が、この技法の潜在力の全面的な実現における中心的な課題である。
【0012】
各種の材料が、マイクロ流体工学の適用では公知であり用いられているが、操作の容易さおよびマイクロ流体デバイスのモノリシックの構築に対する適性ではシリコーンゴム材料(例えば、ポリジメチルシロキサン、またはPDMS)が好ましく、PDMSは、高度の気体透過性を示し、このため、デッドエンド構造の充填を可能とする。加えて、PDMSは、水蒸気に対しても透過性が高い。こうして、PDMSで構築されたマイクロ流体デバイス内において実施される一部の工程において、特に、高温が必要とされる場合、このようなPCRは、急速な蒸発による小容量の水性反応物からの乾燥を被る可能性があり、反応は失敗する可能性がある。
【0013】
この限界を克服しようとする試みでは、外部水分補給法が用いられている。これにより、蒸発速度がある程度低下するが、この水分補給を用いても、用いて成功し得るサンプル容量サイズは、やはり蒸発により制限される。このため、このようなシステムが、高密度アレイを可能とするであろう極めて小容量のサンプルサイズ(例えば、ピコリットル以下のオーダーにおける)、したがって、デバイスの有用性を向上させる大きなサンプル数を組み込む能力は制限される。
【0014】
特許文献1は、PCRアッセイを実施するためのマイクロ流体デバイスを開示しており、マイクロ流体デバイスからの流体の蒸発を低下させる、該デバイス内における流体で満たした防護チャネルの使用もさらに開示している。
【0015】
特許文献2は、失われた流体を、流体レザバーから毛細管チャネルを介して補充することによる、マイクロ流体デバイス内における蒸発に対する補完法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,118,910号明細書
【特許文献2】米国特許第6,555,389号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、マイクロ流体デバイスに関する。本発明はまた、エラストマー基材内において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーからの蒸発を防止する蒸気バリアと、該複数の反応チャンバーの各々を隔離する連続相流体とを含むマイクロ流体デバイスにも関する。マイクロ流体デバイスを用いる標的核酸のデジタル定量法もまた提供される。
【0018】
本発明は、反応チャンバー密度を3桁分上昇させて、平方インチ当たりの反応チャンバー約10,000,000個(約1.5×10個/cm)までの密度を達成する一方、各アッセイ容量を相応量だけ低下させるマイクロ流体デバイスを提供する。該デバイスは、個々の反応チャンバーを分離するバルブの必要なしに、pL容量のエマルジョンアレイへとアッセイを区画化する。
【0019】
本発明の一局面により、エラストマー基材内において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーからの蒸発を防止する蒸気バリアと、該複数の反応チャンバーの各々を隔離する連続相流体とを含むマイクロ流体デバイスが提供される。
【0020】
本発明の一局面により、エラストマー基材内において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーと同一平面で適用されており、エラストマー層により該反応チャンバーから分離された蒸気バリアとを含むマイクロ流体デバイスが提供される。
【0021】
本発明の別の局面により、マイクロ流体デバイスは、流路に沿って配置されており、各々が流路と交わる1つまたは複数の制御チャネルを含む複数のバルブをさらに含む。
【0022】
本発明の別の局面により、バルブは流路の第1および第2の端部に配置されている。
【0023】
本発明の別の局面により、反応チャンバーは、ピコリットル容量またはフェムトリットル容量である。
【0024】
本発明の別の局面により、反応チャンバーは、出口のない(blind)反応チャンバーである。
【0025】
本発明の別の局面では、反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている。
【0026】
本発明の別の局面により、反応チャンバーは、5000個/cm以上の密度で存在する。
【0027】
本発明の別の局面により、マイクロ流体デバイス内において流体を区画化する方法であって、第1の流体を有する流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該第1の流体とは非混和性の第2の流体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の流体を移動させる工程とを含み、該複数の反応チャンバーの各々における該第1の流体を、該流路内における該第2の流体により他の反応チャンバーの各々における該第1の流体から隔離する方法が提供される。
【0028】
本発明の別の局面により、標的核酸のデジタル定量法であって、マイクロ流体アレイの流路と流体連絡した複数の反応チャンバーに標的核酸を含む第1の流体を充填する工程と、該第1の流体とは非混和性の第2の流体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の流体を移動させる工程であって、該複数の反応チャンバーの各々における該第1の流体を、該流路内における該第2の流体により他の反応チャンバーの各々における該第1の流体から隔離する工程と、該マイクロ流体アレイをインキュベートする工程とを含む方法が提供される。
【0029】
本発明の別の局面により、反応チャンバーは、ピコリットル容量またはフェムトリットル容量である。
【0030】
本発明の別の局面により、第1の流体は水溶液である。
【0031】
本発明の別の局面により、第2の流体は非水性流体である。
【0032】
本発明の別の局面により、第1の流体は、PCR用の反応混合物を含む。
【0033】
本発明の別の局面により、第1の流体はサンプルを含む。
【0034】
本発明の別の局面により、反応チャンバーは、出口のない(blind)反応チャンバーである。
【0035】
本発明の別の局面では、反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置される。本発明の別の局面により、標的核酸は、第1の流体中において、複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約1個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である。
【0036】
本発明の別の局面により、標的核酸は、第1の流体中において、複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約0.5個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である。
【0037】
本発明の別の局面により、インキュベートする工程は、熱サイクリングを含む。
【0038】
本発明の別の局面により、エラストマー基材内において形成されている流路と連絡した複数の反応チャンバーと、2つ以上の反応チャンバー間の流体連絡を阻止する流体バリアとを含むマイクロ流体デバイスが提供される。
【0039】
本発明の別の局面により、デバイスは、複数の反応チャンバーと同一平面で適用されており、エラストマー層により該反応チャンバーから分離された蒸気バリアをさらに含む。
【0040】
本発明のこの概要は、本発明のすべての特徴を必ずしも説明するものではない。本発明の特定の実施形態についての以下の説明を吟味すれば、当業者には、本発明の他の局面、特徴、および利点が明らかとなろう。
【0041】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面が参照される以下の説明からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、マイクロ流体デバイスの作製工程についての概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態によるマイクロ流体アレイの概略図を示す。(a)1インチ×1インチ(2.54cm×2.54cm)の面積において1,000,000個の反応チャンバーをフィーチャするマイクロ流体アレイを示す図である。(b)サンプル充填領域を示す挿入図Aである。(c)マイクロ作製された反応チャンバーおよびフィードチャネルを示す挿入図Bである。(d)反応チャンバー形状の3次元的描画である。この例において、該チャンバーは、底面の1辺が10ミクロン、高さ40ミクロンで、総容量が4ピコリットル(pL)である。(e)バルブチャネルを欠く、(a)と同様のマイクロ流体アレイを示す図である。(f)挿入図Dである。(g)バルブチャネルを欠き、水分補給チャネルを含む、(a)と同様のマイクロ流体アレイを示す図である。
【図3】図3は、反応チャンバー内における流体の隔離を示す概略図を示す。(A)では、チャネルおよび反応チャンバーに第1の流体(F:ドット)が充填されている。(B)では、第2の流体(F:チェック)が導入されてチャネル内に流入し、第2の流体が第1の流体をチャネルから移動させるが、第1の流体は反応チャンバー内に残存する(第2の流体の流動により「取り除かれる」)。(C)では、第1の流体がチャネルから移動し、反応チャンバー、および反応チャンバーアクセスチャネルの一部だけに残存する。矢印により流体流動の方向を示す。
【図4】図4は、容量に関するスケーリングの精度および特異性についての統計学的プロットを示す。(A)チャンバー数の関数としてのデジタルPCRを用いて1%だけ異なる2つの対立遺伝子に対して測定された平均の分離についての数値計算を示す図である。差は、確率論的二項分布ノイズ(サンプリングノイズ)により決定される予測標準偏差(シグマ)により標準化される。反応チャンバーの50%における陽性増幅に対応するテンプレート濃度について、計算を実施した。約1,000,000個のチャンバーで5シグマの分離が達成されている。(B)100万個中に1個の頻度で存在するまれな分子種を検出するために、チャンバー容量の関数としての特異的増幅と非特異的増幅との効率比についての数値計算を示す図である。
【図5】図5は、チャンバー当たり10コピーで充填されたゲノムDNA(ポジティブコントロール)およびテンプレートなしのコントロール(ネガティブコントロール)サンプルに由来するGAPDH増幅の蛍光画像を示す。細線は、同じ流路に連絡された反応チャンバーのセットの輪郭を示す。太線は、蒸気バリアの境界を示す。デバイス底部において、サンプルの脱水による増幅失敗のエッジ効果が見られる。ポジティブコントロールの反応チャンバー(領域A、D、およびE)内におけるPCR反応が標的DNAおよび増幅に必要な試薬を含む一方、領域BおよびCにおけるネガティブコントロールの反応チャンバーは標的DNAを欠いた。明色の領域は、標的DNAに対するPCR増幅の成功を示す。
【図6】図6は、本発明によるマイクロ流体デバイスにおけるPCR反応の増幅プロットを示す。
【図7】図7は、本発明の平面エマルジョンアレイを用いる、第9番染色体(C9)に対する第21番染色体(C21)の3%の増加の検出についての結果を示す。ゲノムDNAサンプルを6%のトリソミー21 DNAでスパイクしたところ、最終的に、C9に対してC21が3%増加した(黒色ダイヤモンド)。染色体が正常な個体に由来する純粋なゲノムDNAは、1:1のC21:C9比を有する(黒色四角)。
【図8a】図8は、JAK2におけるV617変異体に対して異なる比の野生型を検出するアッセイの結果を示す。一定量の野生型に異なる量の変異体プラスミドを添加した(曲線因子(Fill factor)0.5)。(A)は、得られた比(濃色バー)および理論比(薄色バー)を示す。(B)は、0.1%のサンプルおよびコントロールサンプルを除き、Aの場合と同じ比を示す。
【図8b】図8は、JAK2におけるV617変異体に対して異なる比の野生型を検出するアッセイの結果を示す。一定量の野生型に異なる量の変異体プラスミドを添加した(曲線因子(Fill factor)0.5)。(A)は、得られた比(濃色バー)および理論比(薄色バー)を示す。(B)は、0.1%のサンプルおよびコントロールサンプルを除き、Aの場合と同じ比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、エラストマー基材内において形成されている流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、該複数の反応チャンバーを覆う蒸気バリアと、該複数の反応チャンバーの各々を隔離する連続相流体とを含むマイクロ流体デバイスに関する。該マイクロ流体デバイスを用いる、標的核酸のデジタル定量法もまた提供される。
【0044】
「流路(flow channel)」とは、流体が流動する経路を一般に指す。
【0045】
「反応チャンバー」、「反応ウェル」、または「ウェル」とは、化学的反応または酵素的反応が発生する境界づけられた領域である。それは、壁および1つまたは複数のバルブにより境界づけることができる。代替的に、反応チャンバーは、壁および流体バリアにより境界づけることもできる。反応チャンバーの「壁」は、該チャンバーを境界づけるすべての表面(流体、固体、または半固体)を含む。反応チャンバーは、1つまたは複数の流路と連絡され、該連絡は、1つまたは複数の流路による反応チャンバーの充填および/または排出を可能とする開口部を含む。本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイス内における複数の反応チャンバーは、均一なアレイに配置することができる−この配置をマイクロ流体アレイと呼ぶことができる。
【0046】
「隔離された反応チャンバー」とは、別の反応チャンバーまたは流路と流体連絡されていない反応チャンバーである。流体連絡は、例えば、バルブ、または流体バリアにより阻止することができる。流体バリアは、例えば、反応チャンバー内における材料(通常、別の流体)とは非混和性の流体により形成することができる。
【0047】
「出口のない(blind)反応チャンバー」とは、流体の流入を可能とする単一のアクセスポートまたは開口部を有するが、別個の流出口を欠くチャンバーである。
【0048】
「デッドエンド充填(dead−end fill)」とは、圧力下にある流体によりデッドエンドであるかまたは出口のない反応チャンバーに充填する方法である。最初に流体をチャネル構造に注入すると、それは、最小抵抗経路に従い、一部の領域を充填されていないかまたは部分的に充填された状態のままに放置する。マイクロ流体の作製において用いられる一部のエラストマー材料の気体透過性を利用して、デッドエンドチャネルに充填することが可能となる。すべての流出バルブを閉じて、圧力下(約300psiまたは約200kPaまでの)において流体を注入することにより、押圧された流体が該チャネルに充填され、該デバイスのチャンバーまたはチャネル内における任意の気体(空気)を圧迫する。押圧された気体はエラストマー内全体に拡散し、デッドエンドであるかまたは出口のない反応チャンバーを流体で充填して消失する。
【0049】
「試薬」とは、分析対象(例えば、分析される細胞、代謝物、または核酸)以外で反応において用いられる任意の作用物質を広く指す。核酸増幅反応用の試薬の例は、緩衝液、界面活性剤、金属イオン、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、キナーゼまたはホスファターゼ、プライマー、テンプレート核酸または標的核酸、ヌクレオチド、標識、色素、ヌクレアーゼなどを含むがこれらに限定されない。酵素反応用の試薬は、例えば、基質、補因子、緩衝液、金属イオン、阻害剤、および活性化剤を含む。細胞ベースの反応用の試薬は、酵素反応または核酸検出用の上記の試薬のほか、細胞、細胞特異的色素、または細胞受容体に結合するリガンド(例えば、アゴニストおよびアンタゴニスト)を含むがこれらに限定されない。エラストマー表面への試薬の吸着を低下させるため、試薬混合物中にTWEEN−20などの界面活性剤を組み入れることができる。
【0050】
プライマーとは、標的核酸にアニールし、核酸ポリメラーゼにより伸長する短い(一般に、10〜30ヌクレオチドの)核酸またはオリゴヌクレオチドである。プライマーは、標的核酸と完全に相補的な(プライマーのすべてのヌクレオチドと標的核酸との間で100%マッチする)場合もあり、プライマーが標的核酸の部位において選択的にハイブリダイズするように実質的に(100%未満)相補的な場合もある。
【0051】
プローブとは、標的核酸と特異的にハイブリダイズする核酸配列である。ハイブリダイゼーションは、例えば、二本鎖の立体構造の形成だけによって蛍光発光するように改変された特性を有する蛍光標識または蛍光色素(例えば、DNA染色色素)または蛍光発光(例えば、分子ビーコン)により検出可能である。プローブは、標的核酸配列に対する十分な相補性をもたらし、反応条件下においてアニールするのに適する任意の長さであり得る。ハイブリダイゼーションにおいて用いられるプローブは、二本鎖DNA、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドおよび一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、ロック核酸(LNA)プローブ、ならびにペプチド核酸を含みうる。一塩基多型または数個のヌクレオチドに関与する他の変異を同定するためのハイブリダイゼーション法は、米国特許第6,270,961号、同第6,025,136号、および同第6,872,530号において説明されている。本発明による使用に適するハイブリダイゼーションプローブは、約6〜約400ヌクレオチド、約20〜約200ヌクレオチド、または約30〜約100ヌクレオチドの長さの範囲のオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、LNA、およびPNAを含む。
【0052】
オリゴヌクレオチドとは、特定の核酸の検出および/または増幅のためのプローブ、プライマーとして有用であり得る可変長の核酸である。オリゴヌクレオチドを合成するための公知の方法は数多い−例えば、Bonora GM.ら、Nucleic Acid Res.(1990年)、第18巻、第11号、3155〜9頁;Lashkari DA.ら、PNAS(1995年)、第92巻、第17号、7912〜5頁;MeGall G.ら、PNAS(1996年)、第93巻、第24号、13555〜60頁;Albert TJ.ら、Nucleic Acid Res.(2003年)、第31巻、第7号、e35頁;Gao X.ら、Biopolymers(2004年)、第73巻、第5号、579〜96頁;およびMoorcroft MJ.ら、Nucleic Acid Res.(2005年)、第33巻、第8号、e75頁: Gait、1〜22頁;Atkinsonら、35〜81頁;Sproatら、83〜115頁;およびWuら、135〜151頁、「Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach」、M. J. Gait編、1984年、オックスフォード、IRL Press社;または「Molecular Cloning: a Laboratory Manual」、第3版、SambrookおよびRussell、ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、CSHL Press社を参照されたい。
【0053】
一部の核酸またはオリゴヌクレオチドには、該オリゴヌクレオチドにおける酵素的安定性の変化もしくは改善、または立体構造上の制約をもたらす単量体を組み込むことができる。例えば、二重環状ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドに対する立体構造上の制約をもたらす可能性があり、非修飾のオリゴヌクレオチドと比較して、異なるハイブリダイゼーションプロファイルまたは安定性プロファイルをもたらし得る。LNAヌクレオシドは二重環状ヌクレオシドの例であり、US6,268,490、US6,794,499、US7,034,133(参照によりこれらの各々を本明細書に組み込む)において説明される通り、2’−4’環状結合を有する。LNA単量体を含む核酸ポリマーの合成および重合化の方法は、例えば、WO99/14226、WO00/56746、WO00/56748、WO01/25248、WO0148190、WO02/28875、WO03/006475、WO03/09547、WO2004/083430、US6,268,490、US6,794,499、米国特許第7,034,133号において説明されている。
【0054】
「ワンポット(one−pot)」の工程または反応とは、試薬の添加および反応の複数にわたる個別の工程なしに、単一の反応チャンバー内において実行される工程である。ワンポット反応では、反応に必要な試薬を単一の反応媒体内で、実質的に同時に、一体に混合する。例えば、ワンポットのPCR反応は、単一の反応チャンバー内において増幅反応および検出の両方のための試薬を混合し得る増幅および検出の両方が同じ反応チャンバー内で実行される。特定の標的核酸の増幅および検出に必要なすべての試薬(標的核酸、プライマー、プローブ、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、緩衝液、塩などを含む)を含む反応混合物を混合することができ、この単一の混合物を本発明のマイクロ流体デバイス内に注入することができる。反応混合物ですべての反応チャンバーに充填し、該チャンバーを隔離し、熱サイクリングを実施する。特定の増幅産物の検出は、熱サイクリングの発生時、もしくはその発生後、またはその両方において実施することができる。ワンポット工程の変形形態として、本発明のマイクロ流体デバイスの合成時またはその後において、該デバイスの反応チャンバーのアレイまたはサブアレイ内に試薬を配置することができる。増幅に必要な残るすべての試薬を含む反応混合物を本発明のマイクロ流体デバイス内に注入し、反応チャンバー内においてプライマーおよびプローブを反応混合物と最終的に混合する。ここでもまた、特定の増幅産物の検出は、熱サイクリングの発生時、またはその両方において実施することができる。
【0055】
「流体連絡(fluid communication)」−マイクロ流体デバイスの2つ以上のエレメント(例えば、流路、注入ポート、流出ポート、ビア、反応チャンバー、流入口、または境界により画定される他のスペース)は、該2つのエレメントを連絡させる、流体を除外しない連続経路が存在する場合、流体連絡される。流体連絡は、バリア、バルブ、ポンプ、または該流体連絡の断絶の制御、およびマイクロ流体デバイスの1つまたは複数のエレメントの隔離を可能とする他の制御デバイスを介在させる場合がある。それらの中に第1相の第1の流体を有する2つ以上のエレメントの間の流体連絡はまた、非混和性の第2相の流体も介在させる場合がある。非混和性の流体を該エレメントの1つに導入することで、第1の流体を移動させる。例として述べると、エマルジョン中において、分散相の液滴の流体連絡は、連続相のエマルジョンにより断絶または阻止される。
【0056】
本発明の一部の実施形態において、非混和性の流体とは、本発明のマイクロ流体デバイスの反応チャンバー内における液滴間の流体連絡に介在するかまたはこれを阻止するバリアまたはバルブ(「流体バリア」または「流体バルブ」)であり得る。
【0057】
理論により拘束されることは望まないが、本明細書に記載の方法では、第1の流体と、1つもしくは複数のチャネル壁または反応チャンバー壁と、第1の流体とは非混和性の第2の流体との間における表面張力を利用して、その位置およびサイズがマイクロ流体チャネルの構造により正確に規定されるマイクロスケールの液滴の均一なアレイを創出する。
【0058】
2つの非混和性の流体が混合し、1つの流体(分散相)が他の流体(連続相)中に液滴またはコロイドとして懸濁すると、エマルジョンが形成される。連続相が液滴間におけるバリアを形成し、該エマルジョンが安定化される(液滴の合体が阻止される)場合、各液滴は、隔離された反応容器であり得る。界面活性剤の使用は、エマルジョンを安定化する1つの方法である。別の方法は、マイクロ流体デバイスの構造によりその位置およびサイズが正確に規定され、したがって、接触することが不可能なマイクロスケールの液滴の均一なアレイを可能とするチャンバー式のマイクロ流体デバイスと組み合わせて、分散相と、1つもしくは複数のチャネル壁または反応チャンバー壁と、連続相との間の表面張力を利用することである。
【0059】
本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスの構成は、アクセスチャネルを介して一連のナノリットル(nL)容量、ピコリットル(pL)容量、またはフェムトリットル(fL)容量のチャンバーに連絡されるマイクロ流体チャネルの直線アレイを含む。第1の流体、例えば、PCR増幅に必要とされるすべての成分を含むアッセイ混合物を、圧力下において流路内にまず導入し、すべての反応チャンバーにデッドエンド充填する。周囲空気は、反応チャンバーから気体透過性エラストマーによるデバイスのバルク内へと押し出される。限界希釈率で投入されたテンプレート分子は、ポアソン統計に従い、チャンバーアレイ全体に無作為に分配される。チャンバーに充填したら、流路を介して第2の流体を注入し、第1の流体を移動させる。理論により拘束されることは望まないが、相界面が各チャンバーを流過して前進すると、チャネルの狭窄部では表面張力による不安定が生じる結果、その位置および容量がチャンバーの形状により正確に規定された水溶液滴が分離する。これらの水溶液滴は、表面張力のためにチャンバーの大きな断面内にとどめられた状態を保ち、これにより、熱サイクリング時における各液滴の正確な配置が可能となる。
【0060】
多層ソフトリソグラフィー(MSL)は、数百〜数千の微細な反応チャンバー、バルブ、ポンプ、流体論理エレメント、および他の構成要素を有するマイクロ流体デバイスの容易かつ頑健な作製を可能とする軟質エラストマー処理における周知の作製法である。XiaおよびWhitesides、1998年(Angewandte Chemie、International Edition、第37巻、551〜575頁;参照により本明細書に組み込まれる)は、MSLを含むソフトリソグラフィーの手順、材料、および技法を説明し、総説している。
【0061】
略述すると、多層ソフトリソグラフィー(MSL)の全般的な発想は、厚さの異なるエラストマー、例えば、PDMSの層を、各々の上面に繰り返し積み重ねることである。それぞれ10:1未満の化学量論比およびこれを超える化学量論比を有するPDMSの薄層および厚層を個別のウェハー上で形成する。既にウェハー上で作製されたフォトレジストパターンにより、デバイスのマイクロ流体チャネルを規定する。次いで、厚層をウェハーから剥離させて薄層のウェハー上面に置く。ベーキングすると、各層の余剰成分が結合し、2層のチャネルからなるPDMS「チップ」が形成される。エラストマーを加工し、マイクロ流体的に適用する方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第6,929,030号;Schererら、Science、2000年、第290巻、1536〜1539頁;Ungerら、Science、2000年、第288巻、113〜116頁;McDonaldら、Acc. Chem. Res.、2002年、第35巻、491〜499頁;Thorsen, T.ら、Science、2002年、第298巻、580〜584頁;Liu, J.ら、Anal. Chem.、2003年、第75巻、4718〜4723頁;Rollandら、2004年、JACS、第126巻、2322〜2323頁;PCT公開第WO02/43615号および同第WO01/01025号を参照されたい。
【0062】
一般にエラストマー(elastomer)と呼ばれる各種の軟質ポリマーを、マイクロ流体デバイスおよびマイクロ流体システムで用いることができる。エラストマーは一般に、広範な熱安定性、高潤滑性、撥水性、および生理学的不活性を特徴とする。エラストマーの他の望ましい特性は、適用に伴い変化し得る。所望の目的に適するエラストマーまたはエラストマーの組合せを選択することは、当業者の能力内にある。エラストマーの例は、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、光硬化性ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、フルオロシリコーン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、ビニル−シラン間架橋シリコーンなどを含む。エラストマーは、光学的に透明の場合もあり、不透明の場合もあり、多様な程度に透明な場合もある。本発明の一部の実施形態では、生体適合性エラストマーを用いることが望ましい場合がある。PDMSは、ソフトリソグラフィーへの適用において最初に開発されより広く用いられているエラストマーの1つである。PDMSを本発明の各種の実施形態で用いられるエラストマーとして説明する場合、それは例示的な目的に過ぎず、代替的なエラストマーの選択も当業者の知識内にある。マイクロ流体的な適用において用いるのに適する各種のエラストマー、およびこれらの多様な特性および適用例は、米国特許第6,929,030号において説明されている。
【0063】
シリコンウェハーまたは他の適切な支持体上にレイアウトされたフォトレジストパターンにより、該層を成形するためのテンプレートがもたらされる。一般に、フォトレジストは、ポジティブ型またはネガティブ型として分類することができる。ポジティブ型フォトレジストは、極めて精細な分解能が可能である。これらは、KOHなどのアルカリ溶液中でよく溶けるが、ジアゾナフタキノン(DQ)などの感光性溶解阻害剤を用いてこの作用を遮断することが典型的である。紫外(UV)光との光反応によりDQが破壊され、現像液による該フォトレジストの溶解が可能となる。フォトレジストに対するこの種の処理の発想は、UV光に露光されたすべての区画が除去されるということである。ポジティブ型フォトレジストの例は、SPR220−7(Shipley Company LLC社製)である。
【0064】
ネガティブ型フォトレジストは一般に、非感光性基質、感光性架橋形成剤、およびコーティング溶剤を含む。UV光への露光時に架橋形成剤が活性化され、硬質のエポキシを形成させる。該フォトレジストの残りの非露光区画は、現像液により洗い流される。SU8(MicroChem社製)が、いずれのMSLテンプレートにおいても用いうるネガティブ型フォトレジストの例である。加えて、SU8は、エポキシとして極めて強力であり、後続のフォトリソグラフィー工程に対して耐性であり得る。特定のフォトレジストを加工する詳細な方法および技法は各製造元から入手できるので、本明細書ではこれ以上立ち入らない。具体的なフォトレジストの例は例示的な目的に過ぎず、本発明の限定として考えるべきではない。
【0065】
作製時には、他の構成要素をマイクロ流体デバイスに組み込み得、MLS時には、ミクロンスケールのバルブ、ポンプ、チャネル、流体マルチプレクサー、灌流チャンバーなどを集積化することができる。このような構成要素を作製し集積化する方法は、例えば、米国特許第7,144,616号、同第7,113,910号、同第7,040,338号、同第6,929,030号、同第6,899,137号、同第6,408,878号、同第6,793,753号、同第6,540,895号;米国特許出願第2004/0224380号、同第2004/0112442号;PCT出願第WO2006/060748号において説明されている。
【0066】
蒸発は、ピコリットルの容量範囲にあるアッセイを実施する場合に克服すべき障害である。マイクロ流体デバイスの作製時には、そこに流体が配置されるかまたは移送され、そこでの流体の喪失が望ましくない、反応チャンバーおよび反応チャネルに近接する形で、デバイス内に蒸気バリアを組み込むことができる。蒸気バリアは、任意の適切な材料であり得る。適切な材料は、光学的に透明であり、水蒸気に対して不透過性であり、マイクロ流体デバイスを含む基材、およびアッセイ混合物中で用いられる流体、または流路内においてアッセイ混合物を移動させるのに用いられる非混和性の油もしくは流体と非反応性であり、マイクロ流体アレイの作製およびそれらが用いられるアッセイにおいて用いられる温度範囲に対して耐性であり得ることが好ましい。加えて、用いられるエラストマーに結合し得る材料を用いることが望ましい。良好な結合は、エラストマーの特性の場合もあり、1つまたは複数の接着層の適用により達成する場合もあり、材料表面の改変(例えば、酸素プラズマへの曝露による)による場合もある。適切な材料の例は、アセテート、ポリエチレン、またはポリエチレンベースのシート、ポリキシレンポリマー(Parylene(商標)N、同C、同D)であり、他の例は、ガラス、シリコン、石英、雲母を含む。同様に、他のポリマー材料も用いることができ、これらのポリマー材料は、あらかじめ作製された膜として沈着させることもでき、膜として配置される液体(例は、樹脂調合物、ポリマー溶液、前駆体混合物などを含む)の沈着など他のポリマー処理法を用いて沈着させることもでき、ポリマー(Paryleneなどの)の蒸着によって沈着させることもでき、材料を表面上に凝縮させる蒸発によって沈着させることもでき、エアゾールの噴霧などによって沈着させることもできる。
【0067】
蒸気バリア(vapor barrier)は、アレイの少なくとも1つの側と同一平面にあるマイクロ流体デバイスの作製時において適用または配置される。蒸気バリアは、デッドエンド充填によりエラストマー内に押し出された気体を吸収するのに十分な厚さのエラストマー層により、アレイの反応チャンバーの1つの壁から分離される。この厚さは、例えば、約10〜約500μm、約50〜約250μm、または約75〜約225μm、または約100〜約200μm、または約125〜約175μmであり得る。理論に束縛されることは望まないが、この形状により、移送(蒸発)がアレイの側面だけを介して生じるように、水蒸気の実質的に二次元的な勾配が確立される。
【0068】
好ましい例において、アレイは、平面の両側において蒸気バリアにより挟みこまれる。本発明の一部の実施形態において、マイクロ流体アレイは、シリコン基材(アレイの底部)と、アレイの上部におけるアセテートまたはポリエチレンによるシートとの間に配置され、から分離される。説明した通りに構成される2枚の蒸気バリアを用いるデバイスの場合、バリアは、反応チャンバーの高さ、および反応チャンバーアレイの上方または下方に配置される流路、バルブなど、任意の付加層の存在に応じて変化する任意の適切な距離だけ分離させることができる。
【0069】
作製工程の簡単な概略図を図1に示す。(A)標準的なソフトリソグラフィー法を用いて、ウェハー121上にテンプレートフィーチャ120を成形する。(B)その厚さがフィーチャの高さよりもわずかに高くなるように、ウェハー上面に液体PDMSをスピンコート(spin)し、部分的に硬化させる。(C)蒸気バリア123をPDMS層122の上面に適用し、第2のPDMS層124により被覆する。(D)脱気およびベーキング後、テンプレートからデバイスを剥離させると、硬化したPDMS上にネガティブインプリントが残る。
【0070】
図2a〜dを参照すると、本発明の一実施形態によるデバイスの概略図が100において全体的に示される。図2bは、図2aの挿入図Aを示し、図2cは、図2dの挿入図Bを示し、図2dは、図2cの挿入図Cで示される反応チャンバー114の三次元描画を示す。この例示的なデバイスは、反応チャンバー114に充填するための、一連のカスケード流路105、107、109と流体連絡した13本の一次流路103を含む。各一次流路はサブアレイへと通じ、これに反応混合物、サンプルなどを含む流体を充填することができ、これは流路から独立でありえ、したがって、同じデバイス上において複数のサンプルまたは同じサンプルに対する複数の反応を充填し処理することが可能となる。
【0071】
バルブ流路102a、102bは、一次流路103と交差し、反応チャンバーのアレイを挟む。注入ポート104からの流体の流動はバルブ108により調整され、バルブ108はバルブ流路102a、b内における流体圧により開閉する。バルブ流路102aに沿うすべてのバルブは、注入ポート106aにより同時に操作することができ、バルブ流路102bに沿うすべてのバルブは、注入ポート106bにより同時に操作することができる。反応チャンバー114は、反応チャンバーアクセスチャネル112を介して反応チャンバー流路110と流体連絡している。図2cおよび2dに示す実施形態では、反応チャンバー114が出口のないチャンバーであり、単一の充填ポートを有し、別個の流出ポートを有さない。図2dに示される反応チャンバー114は幅よりも高さが高く、反応チャンバーの底部にアクセス流路を有する。反応チャンバーの他の構成も可能である。例えば、図2dに示す場合などの反応チャンバーは、「専有」面積(幅×奥行き)が小さく、幅または奥行きよりも高さの方が高い。このような「垂直方向の」構成では、サンプル容量がより大きくなり、チャンバーの平面密度が最大化される。より大きな反応容量により、反応チャンバー内により大量のフルオロフォア(または他の検出可能な標識もしくはシグナル発生試薬)を組み入れることができ、したがって、検出のためのより強いシグナルとなる。
【0072】
図2eおよび2fを参照すると、バルブチャネル102a、b、バルブ108、およびバルブ流路流入口106a、bを欠く本発明の代替的な実施形態の概略図が130において全般的に示される。図2fは図2eの挿入図Dを示し、図2fの挿入図Bは図2cに示される通りである。反応チャンバー114に充填するための流路103、105、107、109は、前出で検討した通りである。
【0073】
バルブ流路および一次流路とは別個に充填されて操作される水分補給(hydration)チャネルをアレイの周囲に組み入れ、アレイエッジ近傍の反応チャンバーに水分補給することができる。図2gを参照すると、本発明の代替的な実施形態の概略図が、140において全般的に示される。この実施形態は、図2a〜dおよびe〜fにおいて示される注入ポート104および流路を含み、水分補給チャネル142および水分補給ポート144をさらに含む。水分補給チャネル142は、一次流路103の上層または下層に形成され、水分補給チャネル内における流体の流動および圧力が、一次流路103または流路105、107、もしくは109(示さない)における流体の流動を実質的に制限するように、十分な厚さのエラストマーにより一次流路103を含む流路および反応チャンバーから分離されている。「実質的に制限する」という用語(または類似の用語)は、水分補給チャネルが流体を含有しないか、または圧力下にある条件下での、流路または反応サイトにおける流体の流動であるか、これに向かう流体の流動であるか、またはこれを介する流体の流動と比較して、流路または反応チャンバーにおける流体の流動であるか、これの外の流体の流動であるか、またはこれを介する流体の流動が40%を超えて低下しない(典型的には30%未満、好ましくは20%未満、またはより好ましくは10%未満低下する)ことを示すものと理解されたい。水分補給チャネル142は、流路103、105、107、または109の場合とほぼ同じ内径を有し得る。
【0074】
当業者は、本発明の一部の実施形態では、本明細書で開示される多様な特徴を組み合わせ得ることを理解するであろう。例えば、マイクロ流体デバイスは、図2aおよびbで示されるバルブ流路のほか、水分補給チャネルも含む場合がある。水分補給チャネルの他の構成もまた意図され、例えば、一連の個別の水分補給チャネルをマイクロ流体デバイスのエッジに沿って配置することができる。
【0075】
本発明の一部の実施形態によるデバイスは、各々が個別の区画またはサブアレイと連結される複数の個別の注入ポートを含むように作製することができる−高密度のアレイにより、単一のデバイス上における空間の多重化を用いる多重サンプル分析が可能となる。例えば、約1,000,000の反応のアレイを、各々が約25,000個の反応チャンバーを含む40の独立した区画に分割することができる。各々の独立したサブアレイと連結される個別の注入ポートにより、多重サンプル分析の実装が可能となる。
【0076】
先行充填戦略を用いて、規定のアレイ領域内において、個別のアッセイを空間的に多重化させることができる。略述すると、1つまたは複数のバルブを用いて、溶液中における異なる試薬セット(例えば、異なるプライマーおよび/またはプローブのセット)をその中へとデッドエンド充填し得るアレイ区画を隔離することができる。次いで、流路を空気でフラッシュして余剰の試薬を除去し、約80℃でデバイスをインキュベートして反応混合物から水を蒸発させ、アレイの規定の区画内に乾燥したプライマーおよびプローブを残す。このような先行充填されたデバイスを用いて、溶液中に標的核酸を含むサンプルをアレイのすべての反応チャンバーへと導入し、複数種の標的核酸について分析することができる(例えば、40の独立した区画を有するアレイの場合、最大40種の個別の標的核酸を分析することができる。)
図2a〜dで例示されるデバイスでは、バルブ流路により、デバイスのエッジにバルブが配置される。図2e〜gに示す通り、マイクロ流体デバイスのバルブなしの実施形態もまた用いることができる。このような実施形態では、マイクロ流体デバイス外部のバルブにより、流路または水分補給チャネルへの、これらからの、およびこれらを介する流体の流動を制御することができる。
【0077】
反応チャンバーに反応混合物(第1の流体)を充填するには、反応チャンバー(114)に、注入ポート104を介して注入された第1の流体(F、図3)をデッドエンド充填する。こうして、すべての反応チャンバーが、反応チャンバーアクセスチャネルを介して流路と流体連絡される。次いで、注入ポートに第2の流体(F)を注入する−流路を流動するFによりFが移動する。
【0078】
第1の流体は、アッセイで用いる反応混合物などの水溶液であり得る。例として述べると、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイの場合、第1の流体はPCRに必要なすべての試薬であるテンプレート核酸、ヌクレオチド、プライマー、適切な核酸ポリメラーゼ、緩衝液、塩を含みうる。アッセイの意図する使用に応じて、第1の流体は、色素、標識、プローブ、またはPCRアッセイの産物を検出する他の試薬をさらに含みうる。第2の流体は、第1の流体とは非混和性であり、また、マイクロ流体デバイスが構築される材料と適合的でもある。第2の流体はデバイスが作製されるPDMSエラストマーと適合性のある油、例えば、フッ素化油であり得る。「適合性」とは、第2の流体がデバイスと望ましくない形で相互作用または反応しないこと、−例えば、該流体に曝露されたときに該エラストマーが該流体を吸収したり膨張したりせず、デバイスの物理的特性が変化しない(弾力性または剛性に実質的な変化がない)こと−を意味する。PDMSを含むマイクロ流体デバイスと共に用いうる第2の流体の例は、ペルフルオロヘキサン(Fluorinert(商標))、フッ素化シリコーン油、フッ素化油(例えば、3M社または他の供給元から市販されるFC40、FC43、FC70、FC−72、FC−77、FC−84、FC−87など)、およびパラフィン油などの高分子量油を含む。
【0079】
本発明によるマイクロ流体デバイスの反応チャンバーおよび他のフィーチャの具体的な寸法および密度は、多層ソフトリソグラフィー(MSL)法自体の限界だけにより制約されうる。最新のMSL法は、1μmまでの小さなフィーチャの作製が日常的に可能である。例えば、本発明のマイクロ流体デバイスは、デバイス全体のサイズに応じて、約50,000〜約10個もしくはその間の任意の総数、または約100,000〜約5×10個もしくはその間の任意の総数、または約200,000〜約2×10個もしくはその間の任意の総数、または約250,000〜約10個もしくはその間の任意の総数の反応チャンバーによるアレイを含みうる。
【0080】
反応チャンバーの密度は、単位面積当たりの量との関係で表すことができる。例えば、一部のデバイスは、平方センチメートル当たり約1000〜約2×10個もしくはその間の任意の量、平方センチメートル当たり約5000〜約10個もしくはその間の任意の量、または平方センチメートル当たり約10000〜約500,000個もしくはその間の任意の量の反応チャンバー密度を有し得る。例えば、反応チャンバー密度は、平方センチメートル当たり約
【0081】
【化1】

個であり得る。
【0082】
マイクロ流体アレイ内において反応チャンバーを配置し得る密度はまた、変化させることもできる。例として述べると、約10μmのピッチ(pitch)を有する5μmの反応チャンバーのアレイは、平方センチメートル当たりの反応チャンバー10個(チャンバー当たり約125fL)の総密度を表す。チャンバーのピッチ(pitch)はデバイスの意図される使用に応じて変化し、より高容量を必要とする反応(例えば、反応チャンバー内に全細胞を入れる場合、または、標的分子を簡便な方法で十分に濃縮できない場合)のために、より大きな分離が必要な場合もある。一部のマイクロ流体アレイの場合、ピッチ(pitch)は、経験的に決定しなければならない場合がある−最適なピッチ(pitch)の決定は、当業者の能力内にある。例として述べると、ピッチ(pitch)は、約1〜約1000μmもしくはその間の任意の量、約2〜約80μmもしくはその間の任意の量、約5〜約60μmもしくはその間の任意の量、約10〜約40μmもしくはその間の任意の量、または約20〜約50μmもしくはその間の任意の量であり得る。例えば、ピッチ(pitch)は、
【0083】
【化2】

であり得る。
【0084】
単一の粒子を小容量の液滴内に区画化することにより、この粒子、細胞、または分子の有効濃度を高めることができる。区画化の1つの方法は、油など第2の液相により少なくとも1つの側面において水溶液滴を分離するエマルジョンの使用である。本発明の一部の実施形態により規定されるマイクロチャンバー(反応チャンバー)を伴う流路を含むマイクロ流体デバイスにより、均一の空間配置により平面(2次元的なエマルジョン)の形成が可能となり、反応チャンバーを画定するのにバルブを必要とせず、したがって反応チャンバーアレイにおける反応チャンバーのピッチ(pitch)および密度に対してそれらが賦与し得る制約が取り除かれる。この濃度の濃縮を増幅法と組み合わせることで、単一分子の数え上げ、すなわちデジタル定量化が可能となる。理論により拘束されることは望まないが、このような区画化により生物学的物質の濃度を濃縮することで、検出感度およびアッセイ感度を上昇させるための手段が得られる。粒子濃度は、アレイのウェル当たりの平均個数との関係で表すことができる。例えば、各ウェルが平均1個の粒子を有する反応チャンバーアレイにおいて、0個の粒子を含有する反応チャンバーもありえ、1個の粒子を含有する反応チャンバーもありえ、2個以上の粒子を含有する反応チャンバーもありうる。別の例として述べると、各ウェルが平均0.1個の粒子を有する反応チャンバーアレイでは、大半の反応チャンバーが0個の粒子を有することが見込まれ、約10%の反応チャンバーが1個の粒子を有することが見込まれ、極めて少数の反応チャンバーが2個以上の粒子を有することが見込まれる。本発明の一部の実施形態において、粒子は、反応チャンバー1個当たり約
【0085】
【化3】

またはこれらの間の任意の量の平均濃度で供給することができる。
【0086】
粒子は、マイクロスケールシステム内で流動し得る任意の離散的な物質であり得る。例となる粒子は、ビーズ、核酸、標的核酸、タンパク質、生体細胞、生体分子などを含む。例えば、ポリマービーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、ナイロン、および他の多くのポリマーによる)、シリカまたはシリコンによるビーズ、クレイまたはクレイビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、磁性ビーズ、金属ビーズ、無機化合物ビーズ、および有機化合物ビーズを用いることができる。例えば、クロマトグラフィーに用いられることが典型的な粒子(例えば、Sigma社(ミズーリ州、セントルイス)による1999年Sigma社製品カタログ、「Biochemicals and Reagents for Life Sciences Research」、例えば、1921〜2007頁;1999年Suppleco社製品カタログ「Chromatography Products」、その他を参照されたい)のほか、アフィニティー精製に一般に用いられる粒子(例えば、Dynal社製のDynabeads(商標)のほか、多くの誘導体化ビーズ、例えば、Promega社、Baxter Immunotherapy Group社、および他の多くの販売元により市販される、例えば、各種の誘導体化Dynabeads(商標)(例えば、一般に共役試薬を含む各種の磁性Dynabeads(商標)))など、多種多様な粒子が市販されている。
【0087】
例えば、単一のDNA分子を含有する1マイクロリットル容量の溶液による区画化では、10個L−1の濃度が得られる。この溶液を、各々の容量が1ピコリットルである1,000,000個の液滴に区画化すると、結果として、濃度が0の液滴999,999個と、有効濃度が1012個L−1の液滴1個とが得られ、1,000,000倍の濃縮となる。別の例において、本発明のマイクロ流体デバイスを用いて、反応チャンバー(例えば、約100pLの容量)内に細胞を区画化することができる。単一の細胞の隔離により、細胞がその環境に対して大きな影響を及ぼし、検出されるのに十分な程度に濃縮された分子を分泌することが可能となる。
【0088】
ピコリットル(pL)容量の液滴は、容量に対する表面積比が大きく、単一分子の信頼できる形での増幅は、蒸気透過性が極めて高いことが公知のPDMSで作製されたデバイスにおいては特に明瞭な現象である、熱サイクル時における試薬の蒸発により困難に遭遇する可能性がある。この蒸発は、平面に対する垂直方向において著明な勾配が生じる平面状のエマルジョンアレイにおいて顕著であり得る。この蒸発を制御するため、デバイス内に蒸気バリアを埋め込み、アレイを挟み込むことができる。これにより、アレイ平面に対して垂直な勾配における蒸気の喪失をなくすことで、pL容量の反応における標的核酸の増幅を成功させることができる。「ピコリットル容量」とは一般に、約1〜約1000pLもしくはその間の任意の量、約1〜約500pLもしくはその間の任意の量、約1〜約200pLもしくはその間の任意の量、約1〜約100pLもしくはその間の任意の量、または約1〜約50pLもしくはその間の任意の量の小容量について述べる。例えば、本発明のマイクロ流体デバイスにより形成される反応混合物の容量、または本発明の方法において用いられる反応混合物の容量は、
【0089】
【化4】

であり得る。
【0090】
本発明の各種の実施形態により、ピコリットル未満(sub−picoliter)の反応容量もまた実際的であり有用である。論じた通り、従来のリソグラフィー作製法は、1umまでの小さなフィーチャの達成が可能であり、これにより、フェムトリットルからピコリットルのスケールにおける容量によるチャンバーの画定が可能である。例えば、マイクロ流体アレイ内における1μmのチャンバーは、容量が約1フェムトリットル(fL)であり、約5μmのチャンバーは、容量が約125フェムトリットル(fL)である。ピコリットル未満(sub−picoliter)の容量とは一般に、約1fL〜約1000fLもしくはその間の任意の量、約10fL〜約500fLもしくはその間の任意の量、または約100fL〜約500fLもしくはその間の任意の量の小容量について述べる。例えば、本発明のマイクロ流体デバイスにより形成される反応混合物の容量、または本発明の方法において用いられる反応混合物の容量は、約
【0091】
【化5】

であり得る。
【0092】
反応チャンバーは、代替的に、液滴容量によってではなく、立方マイクロメートル単位または同等の寸法でのチャンバー容量により記載され得る。例えば、立方マイクロメートルからピコリットルへなど、必要な単位間の変換を決定することは、当業者の能力内にある。
【0093】
反応チャンバー内における反応混合物の蒸発を制限または防止することに加え、反応条件も制御される。
【0094】
該デバイスを温度制御反応(例えば、単回のインキュベーションまたは一連の温度循環、例えば、PCRまたは他の増幅反応もしくは伸長反応において用いられる熱サイクリングとして、ある時間にわたり1つまたは複数の温度でインキュベートする)で用いる場合、エラストマーによるデバイスを、スライドガラスまたはシリコンウェハーなどの支持体に固定することができる。デバイスは、温度および/または環境制御インキュベーター内に入れることもでき、熱サイクリング反応の場合、デバイスを任意の枚数の熱サイクリングプレート上に置くこともできる。熱サイクリング用のデバイスは公知であり、市販されている。一般に、反応チャンバーアレイを含むマイクロ流体デバイスを熱サイクリングプレート上に置き、反応の熱サイクリングを実施することができる。各種のこのような熱サイクリングプレートは、例えば、BioRad社、Thermo社、Eppendorf社、Techne社、Applied Biosystems社などの販売元から市販されている。代替的に、デバイスの基材が能動的な加熱エレメントおよび温度感知エレメントを含有することで、必要な熱サイクリング条件をもたらすことも可能である。例えば、シリコン基材内におけるヒーターおよび温度センサーの作製は、当技術分野において周知である。
【0095】
PCRの場合、熱サイクリングは、温度および特定の温度において反応がインキュベートされる時間の正確な制御を必要とする。テンプレート核酸または標的核酸の変性、アニーリング、および伸長のための温度範囲は、実施される特定の増幅反応、用いられるプライマーの相補性、標的核酸の組成、および選択される特定のポリメラーゼに応じて異なる。他の増幅法は、複数ラウンドの熱サイクリングを必要としない場合もあるが、反応条件の熱および時間の制御からやはり利益を得る可能性がある。例えば、ローリングサイクル増幅など、各種の等温での核酸増幅戦略が公知であり、本発明により想定されている。
【0096】
デバイスおよび反応チャンバーの熱プロファイルをモニタリングする能力もまた、有用であり得る。マイクロ流体デバイスには、センサー(例えば、熱電対、サーミスター、または焦電センサー)を組み込むことができる。温度は、赤外線カメラを用いて、または熱発色物質を用いてモニタリングすることができる。マイクロ流体デバイス内において温度プロファイルをモニタリングするこれらおよび他の方法は、米国特許第7,118,910号において説明されている。
【0097】
本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスおよび方法の適用は、多数であり、多様である。本明細書で説明されるマイクロ流体デバイスおよび方法の使用または適用を含む使用または適用および方法は、その任意の特定の適用または使用に限定されない。本発明の一部の実施形態では、以下の使用および適用が意図される。
【0098】
(サンプル、アッセイ、およびアッセイ条件)
本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスを適用し得る無数のアッセイおよび使用が存在する。このような使用についての総説、ならびに方法およびプロトコールについての参考文献および開示は、PCT公開第WO00/50172号に記載されている。本明細書において選択されるアッセイは例示的な目的で例示するものであり、限定的なものであると考えるべきではない。
【0099】
(単一細胞アッセイ)−各種の目的、例えば、細胞分類、核酸の精製および増幅、パッチクランプ法、カルシウム流の測定、ならびに全細胞電気泳動に、マイクロ流体ベースの単一細胞分析を用いることができる。加えて、マイクロ作製されたデバイス内における1個または数個の単一細胞の捕捉および画像化を用いて、多様な濃度にわたる1種または複数種の化学的刺激に対する細胞応答をモニタリングすることもできる。
【0100】
マイクロ流体デバイスまたはこのようなデバイスを含むシステムにより、後続の刺激および分析を可能とする形式において細胞の部分集団を分類および捕捉する細胞操作能力をもたらすことができる。このようなシステムにより、集団からの単一細胞の選択、チャンバーのアドレス可能なアレイ内の任意の位置におけるこの細胞の捕捉、1種または複数種の反応条件の適用、および各反応チャンバーの画像化を可能とし得る。この機能性により、複数個の単一細胞に対する化学的な遺伝子研究のための測定器をもたらすことができる。細胞ベースのマイクロ流体アッセイの例は、例えば、PCT公開第WO98/00231号および同第WO98/45481号において説明されている。細胞ベースのマイクロ流体アッセイは、細胞リガンド、例えば、受容体リガンド、薬剤、補因子などの結合および/または内部化のスクリーニングに有用であり得る。
【0101】
本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体アレイ内における粒子により、任意の各種の結合化学反応のための固体表面または半固体表面を提示することができ、これにより、アレイの粒子メンバー内への対象の生物学的成分および化学的成分の組込みが可能となる。天然および合成両方の多種多様な有機ポリマーおよび無機ポリマーを、固体表面用の材料として用いることができる。例示的なポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロースなどを含む。多種多様な固体粒子または半固体粒子の支持エレメントに対して分子を結合させるのに、多種多様な結合化学反応を用いることができる。当業者は、意図される適用に応じて、適切な化学反応を認め、これを容易に選択することができる。
【0102】
(タンパク質構造の研究)−本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、構造生物学への適用、例えば、タンパク質結晶構造解析への適用に有用であり得る。このような適用に有用な方法および技法は、例えば、HansenおよびQuake、2003年、Current Opinion in Structural Biology、第113巻、538〜544頁;Hansenら、2006年、J Am Chem Soc.、第128巻、3142〜3143頁;米国特許第7,217,321号において説明されている。
【0103】
本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、細胞、抗体、抗体リガンド、タンパク質、ペプチドなどを含む他の生物学的成分のスクリーニングを含む使用にも適応させることができる。このような細胞、抗体、および抗体リガンドの存在または不在はまた、望ましいものであれ望ましくないものであれ何らかの特徴と相関することも公知である。限界希釈率のサンプルをマイクロ流体デバイスに適用し、反応チャンバー内へと流入させることができ、説明した流体バリアにより該チャンバーを隔離する。適用の前に、サンプルを標識抗体(例えば、蛍光タグによる)または類似のマーカーなどのマーカーと混合することができる。隔離後、マーカーの存在についてスクリーニングすることにより、生物学的成分の存在または不在について、個々のチャンバーを吟味することができる。スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、タンパク質同定アッセイなどの例は、例えば、米国特許第6,632,655号において説明されている。
【0104】
(多型の配列決定、同定)−本発明の一部の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、核酸の配列決定、特に、配列決定ライブラリーの作製に用いることができる。ポリメラーゼおよびプライマーならびに他の必要な試薬と共に、配列決定されるDNA(標的核酸)を供給し、次いで、塩基の組込みについて迅速にアッセイするため、1度に1種のDNA塩基(A、C、T、またはG)に曝露する。1つまたは複数のヌクレオチド配列を決定するための各種の技法については、以下に説明されている。本発明の一部の実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスを、核酸の配列決定に用いることができる。本発明のデバイスは、場合によって、生物学的アッセイまたは化学的アッセイを実施するための試薬(これらは、アレイの一部の場合もあり、例えば、試薬トレーンにおいて、流動してアレイと接触する場合もある)を含む。配列決定のための反応混合物は、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、dNTP、ddNTP、dNTP類似体、蛍光dNTP、または蛍光dNTP、無機リン酸、ATP、熱安定性ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、ホスファターゼ、挿入色素、標識プローブ、還元剤、Mg++、分子密集化剤、例えば、PEG、緩衝液、塩、DTT、BSA、洗浄剤、または界面活性剤、電気浸透流を阻害もしくは増強する化学物質(例えば、ポリアクリルアミド)などの一部または全部を含みうる。
【0105】
標的核酸の他の分析法は、以下に説明されている。
【0106】
標的核酸とは、対象の1つまたは複数の配列を含む核酸である。サンプルまたは反応混合物中における標的核酸の存在は検出が可能であり、アッセイのデザインに応じて、定量化も可能である。標的核酸は、生物学的サンプル(「サンプル」)から得ることができる。
【0107】
「多型」とは、集団内における標的核酸の1つまたは複数の形態の発生である。多型部位は、核酸配列内における公知の位置である場合もあり、本明細書で説明される方法を用いて標的核酸内において存在することが決定される場合もある。代替的に、多型は、配列の変異または配列の変異体:DNA内で生じる場合は「DNA配列の変異」、RNA内で生じる場合は「RNA配列の変異」としても説明することができる。一塩基多型、すなわちSNPは、単一の塩基変化からなる多型である。
【0108】
組織サンプルは、例えば、掻爬、針吸引生検もしくは針(コア)生検、組織をサンプル採取するための切開生検、または対象組織の全切除を伴いうる切除生検により得ることができる。代替的に、例えば、毛髪、血液、血漿、血清、痰、尿、便、精液、羊膜液、絨毛膜絨毛、または当技術分野で公知の方法を用いる他の胎児組織もしくは胚組織など、遺伝子物質を含有する他の生体サンプルを用いることもできる。
【0109】
DNAおよびRNAは、当技術分野で公知の任意の各種の方法により個別にまたは一体に、生物学的サンプルから単離することができる。方法の選択は、アッセイされる核酸(DNAまたはRNA)、アッセイに用いられる方法などに依存し得る。生物学的サンプルからのDNAおよびRNAを単離する方法は、例えば、Sambrook J.ら、「Molecular Cloning」、Cold Spring Harbor Laboratory Press社(1989年);およびAusubel, FMら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons社(1994年);Botwell, DDL.、Anal. Biochem.(1987年)、第162巻、463〜465頁;米国特許第5,130,423号;米国特許第5,945,515号;米国特許第5,989,431号;米国特許第5,128,247号など、当技術分野において公知である。単一細胞の分析など、一部の場合では、分析前にDNAまたはRNAを精製する必要がないこともある。
【0110】
サンプル中における標的核酸の特定の配列を、当技術分野において公知である複数の方法のいずれか、例えば、タッチダウンPCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆PCR、転写媒介増幅(TMA)、ネストPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)などにより、増幅し得る。例えば、Compton J.、1991年、Nature、第350巻、91〜92頁;Malekら、1994年、Methods Mol Biol、第28巻、253〜60頁;Innisら(編)、「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」、60〜66頁、カリフォルニア州、サンディエゴ、Academic Press社、1990年;Roux K.、1994年、Biotechniques、第16巻、812〜4頁;Hecker KおよびRoux, L.、1996年、Biotechniques、第20巻、478〜85頁;Ochmanら、1988年、Genetics、第120巻、621〜3頁;米国特許第5,299,491号を参照されたい。これらのパラメータ、手法、および試薬、ならびに特定の反応条件に応じてこれらを最適化する方法は、当業者の能力内にある。
【0111】
本発明のマイクロ流体デバイスの高密度反応チャンバーアレイはまた、単一のデバイス上において、複数種の標的核酸、もしくは複数種のサンプル、またはこれらの両方の分析も可能とする。例えば、1,000,000の反応のアレイを、各々が25,000個の離散的なPCRチャンバーを含む40の独立した区画に分割することができる。独立したサブアレイと連結される個別の注入ポートを組み入れることにより、多重サンプル分析の実装が可能となる。別の例では、先行充填戦略を用いて、規定のアレイ領域内において、個別のアッセイを空間的に多重化することができる。説明した通りに、マイクロバルブを用いて、異なるプライマーおよびプローブのセットをその中へとデッドエンド充填し得るアレイ区画を隔離することができる。次いで、流路を空気でフラッシュして余剰のアッセイ混合物を除去し、先行充填したデバイスをインキュベート(例えば、約70〜80℃で)して先行充填したアッセイ混合物中における試薬を脱水し、規定の区画内に乾燥したプライマーおよびプローブを残す。この脱水工程の後、1種または複数種の標的核酸およびPCRに必要な他の試薬(しかし、先行充填したプライマーおよびプローブではない)を含む反応混合物を、上記で説明したマイクロ流体デバイスの1つまたは複数のサブアレイ内に注入し、脱水された試薬に再度水分補給する。次いで、流路をフラッシュして反応チャンバーを隔離し、反応を熱サイクルさせる。増幅反応時またはその後において、増幅産物をモニタリングすることができる。
【0112】
別の例では、単一の反応において、2種以上の増幅産物を検出し、定量することができる。これは、反応混合物中に、スペクトルが異なるフルオロフォアにより標識された複数種の配列特異的な蛍光プローブを組み込むことにより達成することができる。このような形での多重化は、単一のサンプル中においてアッセイし得る標的核酸の数が増大し、基準核酸による結果の標準化を可能とすることにより、1種または複数種の標的核酸の定量的な分析において重要な役割を果たす。
【0113】
標的核酸またはその増幅産物の検出もまた有用である。本明細書で説明されるマイクロ流体デバイスおよび方法と共に各種の戦略を用いることができ、適切なシステムの選択はまた、反応の詳細、反応条件に対する検出システムおよび検出試薬の適格性、反応数の規模(例えば、反応チャンバーの数、密度)、ならびにアッセイ時において、または終点として、標的核酸またはその増幅産物がモニタリングされるかどうかにも依存する。検出されるシグナルは、フルオロフォア、発色団、化学発光、比色反応、放射能、酵素反応に由来する基質などに由来するシグナルを含みうる。
【0114】
シグナルを検出するための例示的な手法は、共焦点レーザー走査顕微鏡、共鳴エネルギー移動(RET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、シンチレーション検出、蛍光相関分光分析、散光、吸光(UVまたは可視光)、反射などを含む。
【0115】
標的核酸またはその増幅産物の存在は、例えば、二本鎖核酸に特異的な色素の取り込みによるか、またはプローブに対する増幅された核酸部分のハイブリダイゼーションにより決定することができる。
【0116】
二本鎖核酸に結合した場合だけ蛍光発光するDNA染色色素は、増幅産物の検出に有用であり得る。このような色素の例は、SYBR Green I、同II、SYBR Gold、YO(オキサゾールイエロー)、TO(チアゾールオレンジ)、ピコグリーン(PG)(Molecular Probes社、Invitrogen社から市販される)、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、ヘキスト33258、ヘキスト33342、DAPIなどを含む。DNA染色色素の使用に関するさらなる議論は、例えば、Glazerら、1997年、Curr Opin Biotechnol、第8巻、94〜102頁;ならびにGlazer, ANおよびRye, HS、1992年、Nature、第359巻、859〜61頁;Higuchiら、BioTechnology、第10巻、413〜417頁において見出すことができる。
【0117】
「分子ビーコン」とは、標的核酸にハイブリダイズしない場合、ヘアピン形態で存在する一本鎖オリゴヌクレオチドである。該オリゴヌクレオチドの第1端は蛍光色素に結合させ、第2端は消光分子に結合させてある。ヘアピン形態にあるとき、消光分子の近接により蛍光は消光され、蛍光は観察されない。該オリゴヌクレオチド「ビーコン」が標的核酸にハイブリダイズすると、蛍光色素が消光分子から十分に分離され、蛍光が検出可能となる。色素の発光の変化をモニタリングすることにより、増幅産物の間接的なモニタリングが可能となる。当業者を導くのに十分なさらなる詳細は、例えば、PCT公開第WO95/13399号;Tyagi Sら、1998年、Nat Biotechnol、第1巻、49〜53頁;Tyagi SおよびKramer FR、1996年、Nat Biotechnol、第3巻、303〜8頁;ならびにMarras SAら、1999年、Genet Anal、第5〜6巻、151〜6頁において見出すことができる。
【0118】
蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)とは、ドナーの発光スペクトルがアクセプターの励起スペクトルと重複するように選択されたドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアの対の間における距離に依存する相互作用である。フルオロフォアが十分に近接すると、第1の規定波長によるドナーフルオロフォアの励起がドナーからアクセプターへと移動し、第2の規定波長における蛍光を検出することができる。核酸ハイブリダイゼーションを検出する場合、特定のプローブをドナー/アクセプター対の1つのメンバーで標識し、ヌクレオチドをドナー/アクセプター対の他のメンバーで標識する。溶液中における遊離時(例えば、核酸の重合化またはハイブリダイゼーションが生じる前)、ドナー/アクセプター対は、エネルギー移動を阻止するのに十分な距離だけ離れている。重合化反応が進むにつれ、標識されたヌクレオチドは分子内に組み込まれ、標識されたプライマーに対して、エネルギー移動が生じ、蛍光が検出されるのに十分な程度近づく。標的核酸における多型を検出するのに用いうる方法の例は、例えば、米国特許第6,500,650号、米国特許第5,945,283号、米国特許出願第2004/0005613号、およびWO97/22719において説明されている。
【0119】
リアルタイム定量PCRを用いて、増幅時および/または増幅後において形成される増幅産物の量を測定することにより、サンプル中における標的核酸配列の量を決定することができる。市販されるTaqMan(商標)アッセイ(Applied Biosystems社製)は、標的DNAにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブを移動させて切断し、蛍光シグナルを発生させる、Taqポリメラーゼの5’側ヌクレアーゼ活性に基づく。1つのプローブが「正常な」配列に対して相補的であり、他のプローブが対象の突然変異に対して相補的な、多型部位において異なる2つのプローブを有することが必要である。これらのプローブは、5’端に結合した異なる蛍光色素と、プローブが接触しないときは、蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)によりフルオロフォアと相互作用してプローブの蛍光を消光する3’端に結合した消光物質とを有する。PCRのアニーリング工程では、ハイブリダイゼーションプローブが標的DNAにハイブリダイズする。伸長工程では、5’側蛍光色素がTaqポリメラーゼの5’側ヌクレアーゼ活性により切断され、レポーター色素の蛍光発光が増大する。ミスマッチしたプローブは、断片化されることなく置換される。サンプル中における突然変異の存在は、2種の異なる色素のシグナル強度を測定することにより決定される。米国特許第5,210,015号、同第5,487,972号もまた参照されたい。
【0120】
侵襲的切断法では、Invader(商標)プローブと呼ばれるオリゴヌクレオチドと、1ヌクレオチドの重複により標的DNAにアニールする配列特異的なプローブとを用いる。該配列特異的なプローブが多型塩基に対して相補的な場合、インベーダーオリゴヌクレオチドの3’端が、対立遺伝子特異的なプローブの5’側アームを放出するフラップエンドヌクレアーゼにより認識されて切断される構造を形成する。当業者を導くのに十分なさらなる詳細は、例えば、Neri B.ら、2000年、Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis、第3826巻、117〜125頁;米国特許第6,964,848号により提供されている。
【0121】
Scorpionプローブシステムの使用を含むアッセイもまた、有用であり得る。このようなプローブおよびシステムは、例えば、Nucleic Acids Research、2000年、第28巻、3752〜3761頁;およびPCT公開第WO99/66071号において説明されている。
【0122】
プライマー伸長反応(すなわち、ミニ配列決定、ヌクレオチド特異的な伸長、または単純なPCR増幅)もまた、標的核酸における多型を同定する配列識別反応において有用であり得る。例えば、ミニ配列決定反応では、プライマーが、SNPのすぐ上流にあるその標的核酸(通常はDNA)にアニールし、多型部位に相補的な単一のヌクレオチドにより伸長する。該ヌクレオチドが相補的でない場合、伸長は生じない。
【0123】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)は、SNP当たり2つの配列特異的プローブ、および1つの一般的ライゲーションプローブを必要とする。一般的ライゲーションプローブは、配列特異的プローブに隣接してハイブリダイズし、適切な配列特異的プローブが完全にマッチすると、リガーゼが配列特異的プローブおよび一般的プローブの両方に結合する。完全にマッチしない場合は、リガーゼが配列特異的プローブおよび一般的プローブに結合できない。プローブのアニーリングは、例えば、酵素イムノアッセイにより検出することができる(Villahermosa ML.、J Hum Virol(2001年)、第4巻、第5号、238〜48頁;Romppanen EL、Scand J Clin Lab Invest(2001年)、第61巻、第2号、123〜9頁;Iannone MA.ら、Cytometry(2000年)、第39巻、第2号、131〜40頁)。
【0124】
ライゲーションローリングサークル増幅(L−RCA)もまた、Qi X.ら、Nucleic Acids Res(2001年)、第29巻、第22号、E116頁において説明される通り、一塩基多型の遺伝子型解析に用いられて成功している。
【0125】
Sanger配列決定(Sangerら、1977年、PNAS、第74巻、5463〜5467頁)では、DNAポリメラーゼを用いて、多様な長さの配列依存的なフラグメントを合成する。フラグメントの長さは、ジデオキシヌクレオチド塩基特異的なターミネーターの無作為的な組込みにより決定される。次いで、これらのフラグメントをゲル中において分離し、可視化し、配列決定する。上記の方法を洗練し、配列決定手順を自動化するために、多岐にわたる改善がなされている。同様に、RNA配列決定法もまた公知であり、例えば、Zimmern D.およびKaesberg P.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1978年)、第75巻、第9号、4257〜4261頁)ならびにMills DR.およびKramer FR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1979年)、第76巻、第5号、2232〜2235頁)を参照されたい。直接的にRNAを配列決定する化学的方法もまた公知である(Peattie DA.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1979年)、第76巻、第4号、1760〜1764頁)。他の方法は、Donis−Kellerら(1977年、Nucl. Acids Res.、第4巻、2527〜2538頁)、Simoncsits A.ら(Nature(1977年)、第269巻、第5631号、833〜836頁)、Axelrod VD.ら(Nucl. Acids Res.(1978年)、第5巻、第10号、3549〜3563頁)、ならびにKramer FR.およびMills DR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1978年)、第75巻、第11号、5334〜5338頁)による方法を含む。
【0126】
核酸配列はまた、該単一のヌクレオチドが蛍光増強マトリックス中に含有される場合、切断されたヌクレオチドの天然の蛍光発光をレーザーで刺激することによっても読み取ることができる(米国特許第5,674,743号)。ミニ配列決定反応では、多型部位に相補的な単一のヌクレオチドを伴うDNAポリメラーゼにより、SNPに隣接する標的DNAにアニールするプライマーを伸長させる。この方法は、DNAポリメラーゼによるヌクレオチド組込みの高精度に基づく。プライマー伸長産物の分析には、異なる技法が存在する。例えば、ミニ配列決定反応における標識もしくは未標識のヌクレオチド、dNTPと組み合わせたddNTP、またはddNTPだけのいずれを用いるかは、該産物を検出するために選択される方法に依存する。
【0127】
(テンプレート指示(template−directed)法)−一例では、大スケールのスクリーニングについて、Freeman BD.ら(J Mol Diagnostics(2002年)、第4巻、第4号、209〜215頁)により、蛍光偏光検出を伴うテンプレート指示による色素−ターミネーター組込み(TDI−FP)法が説明されている。一塩基多型の遺伝子型解析には、5’ヌクレアーゼアッセイもまた用いることができる(Aydin A.ら、Biotechniques(2001年)、第4巻、920〜2、924、926〜8頁)。WO0181631において説明される通り、SNPの識別を決定するには、ポリメラーゼ校正法もまた用いることができる。酵素増幅電子変換による単一塩基対におけるDNA突然変異の検出は、Patolsky Fら、Nat Biotech.(2001年)、第19巻、第3号、253〜257頁において説明されている。
【0128】
配列特異的PCR法もまた、一塩基多型の遺伝子型解析に用いられて成功している(Hawkins JR.ら、Hum Mutat(2002年)、第19巻、第5号、543〜553頁)。代替的には、一本鎖立体構造多型(SSCP)アッセイまたは切断フラグメント長多型(CFLP)アッセイを用いて、本明細書で説明される多型を検出することもできる。
【0129】
(マイクロ流体デバイスの適用)
説明したピコリットルまたはフェムトリットルの反応チャンバーのアレイを含むマイクロ流体デバイスは、生物学的なアッセイおよび診断に有用である。例えば、数十万〜百万の反応を用いる核酸のデジタル定量化により、1)極めて少数の対立遺伝子不均衡に対する高度の統計学的検定力による識別、2)長いゲノム距離にわたる単一分子上における標的配列の共局在化、および3)高度に相同的な遺伝子バックグラウンド内におけるまれな事象の検出における固有の能力がもたらされる。
【0130】
デジタルPCRアッセイのダイナミックレンジは、予測される陽性反応数がテンプレート濃度と共に直線的に増加する濃度範囲として説明することができる。理論により拘束されることは望まないが、各チャンバーの平均専有数が1に近づく結果として飽和がもたらされるまで直線的な応答が観察されるよう、アレイ全体における分子の分布は無作為である。したがって、デジタルアレイのダイナミックレンジは、チャンバー総数と共に増大する。ピコリットル容量での区画化により、配列相同性の高い大きなバックグラウンド内においてまれな配列を検出するのに用いうる、濃度の有効な濃縮がもたらされる。この点を説明するため、100万コピー当たり1コピーの相対濃度にある野生型のバックグラウンド中の10コピーの一塩基多型(SNP)(1000万コピーの野生型のバックグラウンド中の10コピーのSNP)を検出する作業を考えてみよう。このような状況では、野生型配列に対するごく微量の非特異的増幅によっても、結果として偽陽性がもたらされる可能性があり、いずれのPCR法による検出も極めて困難であるかまたは不可能となっている。しかし、このサンプルを1,000,000個のチャンバーに分割すると、反応チャンバー1個当たり平均10コピーの野生型配列が結果としてもたらされる。これらの反応チャンバーの大半は標的配列を有さないが、ちょうど10個の反応チャンバーは、(高い確率で)SNPの単一コピーを含有する。このような状況では、バックグラウンドを100万分の1に低下させることができ、10個の分子中1個だけの分子の識別が可能なアッセイであればSNPの検出を達成することができる。図4は、配列相同性が高い100万個の分子によるバックグラウンド中において単一の分子を検出するのに必要とされる特異的反応および非特異的反応に必要な相対的効率の容量依存性を示す。例えば、30サイクルのPCR反応により、非特異的な単位複製配列に対する特異的な単位複製配列の比として定義されるノイズ対シグナル比として10が必要であるとすると、1μLのリアクター内において必要とされる相対反応効率は約6倍である。比較として述べると、この同じサンプルを、容量が10pLのリアクター100,000個に分割する場合、必要とされる反応効率比は1.4となる。
【0131】
反応容量を2〜3(a few)ピコリットルまで減少させ、サンプル中における核酸を反応当たり1コピー未満の平均で存在するように分散させることにより、高い有効濃度がもたらされる。これはまた、そうしなければバックグラウンドを増大させる非特異的増幅および競合反応を低下させる利点も有する。
【0132】
デジタルPCRにより、同じDNA分子上において2つの標的配列を結果として存在させる遺伝子再配列の頻度を測定する光学的多重PCRを用いることが可能となる。多数の区画内に投入すると、分子は、おのずと無作為的かつ独立に分布する。サンプルが2つの標的配列を保有するまれな分子のサブセットを含有する場合、反応チャンバー内における増幅の共局在が偶然により予測されるよりも高頻度となり、これにより、この分子種の存在が示される。アレイ数が極めて多い場合、この解析の統計学的検定力は総チャンバー数と共に向上するので、正確な融合部位に依存しない両方の標的配列を有する少数の分子種を検出することが可能となる。この能力により、遺伝子融合、遺伝子転移、選択的スプライシング、および逆位を含む、各種のまれな遺伝子再配列の検出が可能となるであろう。例えば、このような手法は、単一の2色法多重アッセイを用いて、十分に特徴づけされたBCR/ABL融合癌遺伝子の変異体を検出するのに用いることができる。22q11上のBCRの9q34上のABLとの融合体は、成人における慢性骨髄性白血病(CML)症例の95%および急性リンパ芽球性白血病(ALL)症例の約25%ならびに小児におけるALL症例の約2〜5%において存在する、周知の染色体異常である(Burmeisterら、2000年、Leukemia、第14巻、1850頁)。RT−qPCRによる一般的な融合体転写物の検出は、診断および予後診断のゴールドスタンダードとして日常的に用いられている。しかし、内部のエキソンを架橋するには法外に長い単位複製配列を必要とするため、潜在的な切断点が多数であると、すべての転写物変異体を検出するプライマーの設計が困難となり、単一セットのプライマーを用いることができなくなる。融合の大半では、エキソンE1(BCR)およびA11(ABL)が融合部位を挟む。個別の2色(FAMおよびCal Orange)で報告するFRETプローブを用いてエキソンE1およびA11を独立に検出するのに2つのプライマーセットが用いられた多重アッセイは、BCR/ABL融合を含む細胞(例えば、慢性骨髄性白血病初代細胞、または同様の融合を有する細胞系)のcDNAクローンの段階希釈液でスパイクしたゲノムDNAサンプル中における共局在化の頻度について調べ、共局在化の統計学的に有意な濃縮をもたらす融合の最小限の画分を決定するのに用いることができる。
【0133】
配列内における多型位置の数値表示が特定の配列に関するものであることは、当業者により理解されるであろう。また、配列が番号付けされ配列が選択される方式に応じて、同じ位置に異なる数値表示が割り当てられる可能性もある。さらに、挿入または欠失などの配列変異により、突然変異部位におけるかまたは同部位の付近における特定のヌクレオチドの相対的な位置が変化し、次いで、同ヌクレオチドの数値表示が変化する可能性がある。
【0134】
(表1:配列)
【0135】
【表1】


(実験法)
チップの作製:標準的な多層ソフトリソグラフィーを用いて、ポリジメチルシロキサン(PDMS)によるマイクロ流体デバイスを作製した。20,000dpiの透明マスク(CAD/Art Services社製)を用いることによるフォトレジストのパターン形成には、標準的なリソグラフィーを用いる。MegaPixelテンプレート(アルバータ大学Nanofab製)を作製するために、色マスクを作製した。ソフトリソグラフィーを用いてネガティブ型のテンプレートを作製した。25マイクロメートルのチャネル厚をもたらす制御層にSU8−2025を用いる一方、立方体の反応チャンバーを創出するにはSU8−100を用いた。SU8−5で作製した高さ10umのチャネルにより反応チャンバーを連絡した。SPR−220をスピンコート(spin)して10umの厚さを達成し、これを用いてバルブが交差する流動ライン区画を創出する(Unger M.A.ら、2000年、Science、第288巻、113頁)。
【0136】
略述すると、テンプレート上にエラストマー層(5:1 GE RTV)をスピンコート(spin)(250rpm×1分間)し、部分的に硬化させる。反応チャンバー領域上に蒸気バリア(IPAで洗浄した透明なもの)を配置し、約7mmのエラストマー層(5:1 GE RTV)で覆い、脱気し、80℃で90分間にわたりベーキングしてエラストマーを硬化させ、1時間にわたり冷却した。硬化した反応チャンバー層をテンプレートから剥離させ、エラストマー制御層にかみ合わせた(支持マトリックス上に20:1 GE RTVをあらかじめスピンコート(spin)−500RPM×30秒間+1875RPM×90秒間−した後で、80℃で45分間にわたりベーキングした)。80℃で1時間にわたり2相をベーキングして結合させ、冷却し、支持マトリックスから剥離させた。デバイスにポートを穿孔し、基底層(20:1 GE RTV、説明した通りにスピンコート(spin))にデバイスを取り付けた。80℃で一晩にわたり最終アセンブリーをベーキングして、エラストマーを硬化させた。
【0137】
上記デバイスは、シリコンウェハーに結合した2層のPDMSから構成され、プッシュアップ形状を有する。まず、820RPMでPDMS(5:1 RTV A:B)層をスピンコート(spin)することにより、流動層を得た。次いで、水蒸気制御用のポリエチレンによる透明スライドを関連するフィーチャ上に配置し、約40gのPDMSをシリコンウェハー全体の上に流し込み、これを後に1時間にわたりベーキングした。制御層の場合は、ウェハーをPDMS(10:1 RTV A:B)でコーティングし、1800RPMでスピンコート(spin)し、次いで、45分間にわたりベーキングした。次いで、制御層および流動層をかみ合わせて、共にベーキングした。
【0138】
(チップ操作):まず、分析するサンプルを反応に必要とされるすべての試薬(プライマー、プローブ、dNTP、ポリメラーゼ、MgCl2)と混合し、次いで、リソグラフィーにより規定されたチャンバーの大規模アレイをフィーチャするマイクロ流体チャネル構造に注入する。まず、PCR反応チャンバーにPCR反応混合物を加圧充填する。次いで、主流路に油を加圧充填する。
【0139】
チャンバーの形状により、高表面張力が確保され、流体を注入するには、高圧を加える(約10PSI)必要がある。チャンバーを水性流体で満たした後では、流動ラインを加圧する結果、チャンバー自体においてではなく、連絡チャネルだけにおいて溶液が油により置換されるので、該形状が後の区画化の一助となる。
【0140】
(PCRアッセイおよび分析):別段に注記しない限り、本発明のマイクロ流体デバイスを用いて実施されるすべてのPCR反応は、FAMプローブに対して500nMのプローブ濃度、Cal Orangeプローブに対して250nMのプローブ濃度で、製造元の指示書に従い、ABI TAQ FASTマスターミックスにより実行した。反応混合物には、界面活性剤(0.1%TWEEN−20)を添加した。各プライマーは、750nMの濃度であった。熱サイクリングのプロトコールは、20秒間の加熱開始、ならびに1秒間にわたる95度および30秒間にわたる60度の40サイクルを含んだ。熱サイクリングおよび画像化は、BioMark(商標)システム(Fluidigm社製)を用いて実施した。終点の測定値を得、Matlabを用いて画像を解析した。テンプレート(標的DNA)は、IDT(Integrated DNA Technologies)社により合成され、PAGE精製された、配列番号1によるヒトBCL2遺伝子の一部を含んだ。このテンプレートは既に、リアルタイムPCRにより、100%のPCR効率を示していた。用いられたプライマーは、GCCACCTGTGGTCCACCT(配列番号2)およびTGGACATCTCGGCGAAGTCG(配列番号3)であり、プローブはFAM−CGACGACTTCTCCCGCCGCT−BHQ(配列番号4)であり、すべてIDT社により合成された。
【0141】
デバイス間のばらつきをモニタリングするため、以下の通りに、異なる色のアッセイにおいてコントロールを用いた。ヒトABL11遺伝子に由来するテンプレート(配列番号5)は、IDT社により合成され、PAGE精製された。以下のプライマー:ATTTGGAGGGCACAAAAGTG(配列番号6)およびGGGGGAGGCGTTACTGTG(配列番号7)がIDT社により合成された。Cal Orangeによる以下のプローブ:ACAGGTCTGACCAGGTGACC(配列番号8)は、Biosearch Technologies社により合成された。
【0142】
(トリソミー21の差別化):以下のプライマーおよびプローブ:Roche Diagnostics社製のATCGAGCAGGAGCTGGAG(配列番号9)、TGCCGGTCATAGCTCTTCTT(配列番号10)、およびLNAプローブ1(GCTCCAGG)(配列番号11)により、第21番染色体上のAIRE遺伝子上の領域を標的とした。
【0143】
第9番染色体上のABL遺伝子を、以下のプライマーおよびプローブ:ATTTGGAGGGCACAAAAGTG(配列番号12)、AGGGGTTTTGGAGTCAGGTT(配列番号13)(IDT社により合成される)、およびBiosearch Technologies社製のCalOrange−ACAGGTCTGACCAGGTGACC−BHQ1(配列番号14)により、標的とした。ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー、小児家族研究所から入手した6%の純粋なトリソミー21 DNAによりゲノムDNAをスパイクした。約20%の曲線因子(Fill factor)を得るように、デジタルPCR反応において用いられる最終DNAサンプルをセットした。この適用には、90,000個のチャンバーを有するデバイスを用いた。
【0144】
(JAK2アッセイ)
Jak2の野生型および変異体のプラスミドは、ヘテロ接合患者に由来する単位複製配列から作製した。略述すると、プライマーJak2fwd:TCCTCAGAACGTTGATGGCAG(配列番号21)およびJak2rev:ATTGCTTTCCTTTTTCACAAGAT(配列番号22)を用いて、453bpの標的を増幅した。増幅の条件は、100ngのゲノムDNAで開始し、3.5mMのMgCl濃度で、50℃のアニーリング温度であった。7%のポリアクリルアミドゲル上でPCR産物を泳動させ、適正なサイズのフラグメントを確認した。製造元の指示書に従い、TOPO TAサブクローニングキット(Invitrogen社製)を用いてサブクローニングを達成した。略述すると、1ulのPCR産物を1ulの緩衝液および1ulの直鎖化され活性化されたベクターおよび3ulのdHOと混合し、5分間にわたり室温でインキュベートし、次いで、氷上に置いた。4μlのクローニング反応物を、キットと共に供給された1アリコートのコンピテント細胞と混合し、5分間にわたり氷上でインキュベートした。50μlのトランスフェクション反応物をLBアンピシリンプレート上に播種し、37℃で一晩にわたり増殖させた。10個の単一コロニーを採取してLBアンピシリン培地に入れ、一晩にわたり増殖させ、次いで、DNAを単離した。
【0145】
プラスミドDNAを、Quiagen Midiプラスミド精製キットを用いて単離した。10個の単一コロニーに由来するDNAを、Taqmanベースの対立遺伝子識別アッセイ(Applied Biosystems社製)中で個別に調べた。進行中の試験のために、Jak2野生型(プラスミドA)およびJak2変異体(プラスミドB)1つずつをさらに単離した。
【0146】
上記プラスミドを、野生型(wtまたはWT)のバックグラウンドを一定とし、変異体(mtまたはMT)量を増加させる(1:1wt:mt〜1:1000)形で、テンプレートとして用いた。反応では、以下の配列:
【0147】
【化6】

を有する最終濃度750nMのプライマーおよびプローブを用いた。
【0148】
野生型の濃度は、チャンバー当たりプラスミド約0.5個であった。本適用では、90,000個のチャンバーおよび5本の流入ラインを有するデバイスを用いた。40サイクルのPCRを適用し、Matlabプログラムを用いることにより陽性チャンバー数をカウントした。
【実施例】
【0149】
(実施例1)
(大型スケールのマイクロ流体エマルジョンアレイ内における標的核酸の増幅)
蒸気バリアによる選択的な被覆を組み込むデバイスを用いて、PCR実験時における蒸発作用を裏付けた。同じチップ上において異なるサンプルを調べるために、図2dに示すチャンバー形状を有し、チャンバー密度が1個/1600umのマイクロ流体デバイスを、5枚の個別のチャンバーアレイにより設計した。デバイス内にPCR溶液を導入し、図3で概括した通りに区画化した。TaqManマスターミックス(Applied Biosystems社製)と共に、GAPDH用の標準的なTaqManアッセイを用いて、反応チャンバー1個当たり約10コピーのテンプレートDNA濃度による反応の進行をモニタリングした。40サイクルを超えて反応を進行させ、その終点画像を図5に示す。
【0150】
図5の顕微鏡写真は、1つの実験結果を示す。蒸気バリアにより被覆されたポジティブコントロールを伴う反応チャンバー(ポジティブコントロール領域AおよびD)が標的核酸の増幅に成功したのに対し、領域外において蒸気バリアにより被覆されたポジティブコントロールを伴う反応チャンバー(ポジティブコントロール領域Eの一部)は、増幅が不成功であった。
【0151】
マイクロ流体デバイス内に蒸気バリアを組み込むことにより、本発明者らは、約30ピコリットルの容量を有する最大90,000個の反応チャンバーによるアレイにおける単一分子の信頼できる形での増幅を裏付けた。
【0152】
(実施例2)
(標的DNAの単一コピー増幅)
各反応チャンバーが1個だけのDNA分子を含有するかまたはDNA分子を全く含有しないように、初期DNA(標的核酸)を希釈することにより、サンプル中に存在するDNA初期量を定量的に同定することができた。光学シグナルを有する各チャンバーがPCR増幅前における標的核酸の存在を示すように、標的核酸のコピーを有する反応チャンバーだけが検出用の蛍光シグナルをもたらす。
【0153】
説明した通り、希釈されたDNAを含有するPCR溶液の加圧レザバーに流体ラインを連絡させることにより、マイクロ流体チップに充填した。すべてのチャンバーの充填後、主流動ライン内にFluorinert(商標)油を加圧充填し、これにより、チャンバー内以外のすべての場所の流体を移動させ、チップの熱サイクル準備を整える。PCR反応が進むのに応じて、各サイクルにおけるチップ画像を収集した。これにより、各サイクルを経て増加するDNA産物を見る(蛍光シグナルにより)ことができる。これを図6に示す。反応チャンバーは、1辺30マイクロメートルであった。サイクル数が進むのに応じて、ネガティブコントロールの反応チャンバーに由来するシグナルがバックグラウンドにとどまる一方、ポジティブコントロールに由来するシグナルは指数関数的に増大した。
【0154】
本発明者らは、100万個の反応チャンバーを有するチップ上においてデジタルPCRを実行することにより、大幅なダイナミックレンジの増大のために、DNA分子を極めて正確にカウントし得ることを示した。特に、この種の分析は、公知のコントロールに対するまれな遺伝子発現産物をカウントする場合に不可欠である。複数の異なるプローブを用いる可能性のために、複数の遺伝子にわたる発現プロファイルを定量的に同定することが可能となる。
【0155】
(実施例3)
(微小な対立遺伝子不均衡の識別:胎児トリソミー21の非侵襲的検出)
本明細書で説明したマイクロ流体アレイを用いるデジタルPCR法を用いて、染色体数の微小な不均衡を検出した。サンプル中におけるC21の1.5%の増加を決定するためには、5シグマの確実性で約900,000のPCR反応が必要とされた:
【0156】
【化7】

mは、ゲノム等価性(1ゲノムセット=各染色体2本ずつ)数である。サンプルノイズであるシグマは、第21番染色体数の平方根である。論じた通り、従来のPCR法を用いる場合、この反応数は法外に大きく、事実上不可能である。10個の反応チャンバーを含むマイクロ流体アレイの使用により、この反応数が、可能で有効なスケールに凝縮される。
【0157】
第21番染色体(C21)および第9番染色体(C9)のコピー数は、それぞれ、第21番染色体および第9番染色体上の単一のコピーに存在することが公知であるAIRE遺伝子およびABL遺伝子のデジタル検出を用いて決定された。6%のトリソミー21 DNAでスパイクしたサンプルに対する、デジタルチャンバー90,000個にわたる測定値を、正常なゲノムサンプル中で得られるカウントにより標準化したところ、AIRE遺伝子について予測される3%の濃縮が示された(図7)。これらの測定値は、現在報告される任意のPCR法で最高の識別力を表し、1%未満の配列の違いの検出までそのままの形で拡張することができる。興味深いことに、正常なゲノムDNAにおけるAIREおよびABLの測定値は、陽性反応チャンバーの絶対数で一致する違いを示した。
【0158】
(実施例4)
(大きな相同のバックグラウンドにおけるまれな配列の検出:JAK2アッセイ)
概念実証として、Jak2遺伝子中においてSNP突然変異(V617F)を含有するプラスミドサンプルを分析した。V617F突然変異は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、および複数種の白血病など、複数種の骨髄増殖性障害に特異的である。共通のプライマーを用いる一方で、SNP領域に特異的なプローブにより、野生型Jak2遺伝子またはV617F変異体を含有するプラスミドを調べた。V617F変異体にはVICによるプローブを用いる一方で、FAMによるプローブを用いてSNPを調べた。一定の野生型バックグラウンドにわたり異なる量の変異体を含有するサンプルを調べたところ、該アッセイにより、文献(Bosdquetら、2006年、Hum Pathol、第37巻、1458頁)により報告される5:100の最小値と比較して小さな1:1000の対野生型変異体比を検出することができた。これらの結果を図8A、Bに示す。
【0159】
ピコリットル容量での区画化により、配列相同性の高い大きなバックグラウンド内においてまれな配列を検出するのに用いうる、濃度の有効な濃縮がもたらされる。1000コピー当たり1コピーの相対濃度にある野生型のバックグラウンド(1000コピーの野生型によるバックグラウンド中に1コピーのSNP)中における数コピーの一塩基多型(SNP)の非デジタル法による検出は容易でない。このような状況では、野生型配列に対するごく微量の非特異的増幅によっても、結果として偽陽性がもたらされ、いずれのPCR法による検出も極めて困難であるかまたは不可能となっている。しかし、このサンプルを100,000個のチャンバーに分割したところ、反応チャンバー1個当たり平均100コピーの野生型配列が結果としてもたらされた。これらの反応チャンバーの大半は標的配列を有さなかったが、100個の反応チャンバーは、(高い確率で)SNPを含む標的核酸の単一コピーを含有した。このような状況では、バックグラウンドがこのように4桁分低下し、SNPの検出は、10個の分子中において1個の分子だけの識別が可能なアッセイにより達成することができる。
【0160】
(実施例5)
(マイクロ流体アレイの配列決定ライブラリーへの適用)
伸長による配列決定またはライゲーションによる配列決定に依拠する自動配列決定装置または自動配列決定システムと共に用いられる配列決定ライブラリーを作製することができる。これらの配列決定法において重要な工程は、配列決定前における単一分子の増幅の局在化である。この工程では、配列決定される単一のDNAテンプレート分子をそれらの隣接分子から単離して、ポリメラーゼ連鎖反応またはローリングサイクル増幅を用いる増幅にかける。例として述べると、本発明によるマイクロ流体デバイスには、チャンバー当たり数個のビーズを与えるように選択される濃度で、ミクロンスケールのビーズを充填することができる。約10,000,000個の反応チャンバーを含むデバイスには、標的核酸を含むPCR反応混合物中約0.1個〜約0.5個の濃度にあるビーズ懸濁液を充填することができる。十分な量のビーズを供給して、チャンバー当たりの平均ビーズ数を約5個とする。ポアソン統計に基づくなら、この充填の結果、各々がその中にサンプルを有し、これらの約95%が単一のテンプレートを有し、これらのほとんどすべてが少なくとも1個(平均5個)のビーズを有する約1,000,000個のチャンバーがもたらされる。増幅後、チャンバーからビーズを除去することができる。チャンバーからビーズを除去する方法の例は、洗浄工程または支持体(例えば、ガラス)からのマイクロ流体デバイスの剥離を含む。ビーズを回収して配列決定することができる。この結果、そのうちの約95%が唯一の配列に結合し、分子約1,000,000個の総サンプルサイズを表す、ビーズ約5,000,000個のライブラリーがもたらされる。これらのライブラリーのサイズは、より多くのチャンバーを有するデバイスの作製によってさらに増大させることもでき、複数のデバイスの使用によってさらに増大させることもできる。
【0161】
すべての引用物は、参考として本明細書に援用される。
【0162】
本明細書で好ましい1つまたは複数の実施形態を、例として説明してきた。特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、各種の変更および改変を行いうることは、当業者に明らかであろう。
【0163】
本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
エラストマー基材において形成された流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、
該複数の反応チャンバーと同一平面で適用されており、エラストマー層により該反応チャンバーから分離された蒸気バリアと
を含むマイクロ流体デバイス。
・(項目2)
前記流路に沿って配置された複数のバルブをさらに含む、項目1に記載のデバイスであって、該複数のバルブの各々は、該流路と交わる1つまたは複数の制御チャネルを含む、デバイス。
・(項目3)
前記バルブが前記流路の第1の端部および第2の端部に配置されている、項目2に記載のデバイス。
・(項目4)
前記反応チャンバーが、ピコリットル容量またはフェムトリットル容量である、項目1に記載のデバイス。
・(項目5)
前記反応チャンバーが、出口のない(blind)反応チャンバーである、項目1に記載のデバイス。
・(項目6)
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、項目5に記載のデバイス。
・(項目7)
前記反応チャンバーが、5000個/cmまたはそれよりも大きい密度で存在する、項目1に記載のデバイス。
・(項目8)
マイクロ流体デバイス内において流体を区画化する方法であって、
第1の流体を有する流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、
該第1の流体とは非混和性の第2の流体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の流体を移動させる工程と
を含み、
該複数の反応チャンバーの各々における第1の流体が、該流路内における該第2の流体により他の反応チャンバーの各々における第1の流体から隔離される、方法。
・(項目9)
サンプルが、PCR用の1種または複数種の試薬をさらに含む、項目8に記載の方法。
・(項目10)
前記反応チャンバーが、ピコリットル容量またはフェムトリットル容量である、項目8に記載の方法。
・(項目11)
前記第1の流体が水溶液である、項目8に記載の方法。
・(項目12)
前記第2の流体が非水性流体である、項目8に記載の方法。
・(項目13)
前記第1の流体が、PCR用の反応混合物を含む、項目8に記載の方法。
・(項目14)
前記第1の流体がサンプルを含む、項目8に記載の方法。
・(項目15)
前記反応チャンバーが、出口のない(blind)反応チャンバーである、項目8に記載の方法。
・(項目16)
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、項目8に記載の方法。
・(項目17)
標的核酸のデジタル定量法であって、
マイクロ流体アレイの流路と流体連絡した複数の反応チャンバーに、標的核酸を含む第1の流体を充填する工程と、
該第1の流体とは非混和性の第2の流体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の流体を移動させる工程であって、該複数の反応チャンバーの各々における第1の流体が、該流路内における第2の流体により他の反応チャンバーの各々における該第1の流体から隔離される工程と、
該マイクロ流体アレイをインキュベートする工程と
を含む方法。
・(項目18)
前記反応チャンバーが、ピコリットル容量またはフェムトリットル容量である、項目17に記載の方法。
・(項目19)
前記第1の流体が水溶液である、項目17に記載の方法。
・(項目20)
前記第2の流体が非水性流体である、項目17に記載の方法。
・(項目21)
前記第1の流体が、PCR用の反応混合物を含む、項目17に記載の方法。
・(項目22)
前記第1の流体がサンプルを含む、項目17に記載の方法。
・(項目23)
前記反応チャンバーが、出口のない(blind)反応チャンバーである、項目17に記載の方法。
・(項目24)
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、項目17に記載の方法。
・(項目25)
前記標的核酸が、前記第1の流体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約1個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、項目17に記載の方法。
・(項目26)
前記標的核酸が、前記第1の流体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約0.5個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、項目17に記載の方法。
・(項目27)
前記インキュベートする工程が熱サイクリングを含む、項目17に記載の方法。
・(項目28)
エラストマー基材において形成された流路と流体連絡した複数の反応チャンバーと、
2つ以上の反応チャンバー間の流体連絡を阻止する流体バリアと
を含むマイクロ流体デバイス。
・(項目29)
前記複数の反応チャンバーと同一平面で適用されており、エラストマー層により前記反応チャンバーから分離された蒸気バリアをさらに含む、項目28に記載のデバイス。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図2f】

【図2g】

【図3A】

【図3B】

【図3C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー基材において形成されている流路とマイクロ流体的にバルブなしで流体連絡した、同一平面アレイにある複数の出口のない反応チャンバーと、
該複数の反応チャンバーと平行な平面において適用されかつエラストマー層により該反応チャンバーから分離された、蒸気バリアと
を含むマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記流路に沿って配置された複数のバルブをさらに含む、請求項1に記載のデバイスであって、該複数のバルブの各々は該流路と交わる1つまたは複数の制御チャネルを含む、デバイス。
【請求項3】
前記バルブが前記流路の第1の端部および第2の端部に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記反応チャンバーが、1ナノリットル容量未満である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記反応チャンバーが、約10pL容量〜約100pL容量である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
同一平面アレイにある前記出口のない反応チャンバーが、約200μm未満のピッチを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記エラストマー層が、約10μm〜約1000μmの厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記反応チャンバーが、5000個/cmまたはそれよりも大きい密度で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
マイクロ流体デバイスにおいて液体を区画化する方法であって、
流路と、流路と同一平面アレイにありかつ該流路と流体連絡した複数の出口のない反応チャンバーとに、圧力下で第1の液体を充填し、該出口のない反応チャンバーにある空気を、液体に対しては透過性でないが気体に対しては透過性である該反応チャンバーの壁を介して移動させる工程と、
該第1の液体とは非混和性の第2の液体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の液体を移動させる工程と
を含み、
該複数の反応チャンバーの各々における第1の液体が、該流路における該第2の液体により他の反応チャンバーの各々における該第1の液体から隔離される方法。
【請求項11】
サンプルが、PCR用の1種または複数種の試薬をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応チャンバーが、1ナノリットル容量未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記反応チャンバーが、約10pL〜約100pLの容量である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の液体が水溶液である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の液体が非水性液体である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の液体が、PCR用の反応混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の液体がサンプルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロ流体デバイスが、前記複数の反応チャンバーと平行な平面にありかつエラストマー層により該反応チャンバーから分離された蒸気バリアをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
標的核酸のデジタル定量法であって、
流路と、マイクロ流体アレイの流路と同一平面アレイにありかつ流体連絡した複数の出口のない反応チャンバーとに、圧力下で、標的核酸を含む第1の液体を充填し、該出口のない反応チャンバーにある空気を、液体に対しては透過性でないが気体に対しては透過性である該反応チャンバーの壁を介して移動させる工程と、
該第1の液体とは非混和性の第2の液体により該流路をフラッシュし、該反応チャンバーからではなくて該流路から該第1の液体を移動させる工程であって、該複数の反応チャンバーの各々における第1の液体が、該流路における該第2の液体により他の反応チャンバーの各々における該第1の液体から隔離される工程と、
該マイクロ流体アレイをインキュベートする工程と
を含む方法。
【請求項21】
前記反応チャンバーが、1ナノリットル容量未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記反応チャンバーが、約10pL〜約100pLの容量である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の液体が水溶液である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の液体が非水性液体である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の液体が、PCR用の反応混合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の液体がサンプルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記反応チャンバーに、1種または複数種の試薬があらかじめ配置されている、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記標的核酸が、前記第1の液体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約3個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記標的核酸が、前記第1の液体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約1個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記標的核酸が、前記第1の液体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約0.5個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記標的核酸が、前記第1の液体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約0.1個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記インキュベートする工程が熱サイクリングを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の液体が、少なくとも2種の標的核酸を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも2種の標的核酸の各々が、前記第1の液体中において、前記複数の反応チャンバー全体で平均して反応チャンバー1個当たり約3個未満の標的核酸を供給するのに適する濃度である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記インキュベートする工程が、光学的に多重化されたアッセイを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
エラストマー基材において形成されている流路と連絡された、同一平面アレイにある複数の出口のない反応チャンバーと、
2つ以上の反応チャンバー間の流体連絡を阻止する流体バリアと、
を含むマイクロ流体デバイスであって、
該複数の出口のない反応チャンバーの各々は、壁により境界付けられた、デバイス。
【請求項37】
前記複数の反応チャンバーと平行な平面で適用されておりかつエラストマー層により該反応チャンバーから分離された蒸気バリアをさらに含む、請求項34に記載のデバイス。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2011−504094(P2011−504094A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531389(P2010−531389)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001985
【国際公開番号】WO2009/059430
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(502087932)ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (10)
【Fターム(参考)】