説明

マイクロ流体デバイス

【課題】マイクロポンプシステムを有するマイクロ流体デバイスにおいて、製造工程の簡素化を図ると共に、さらなる小型化を図る。
【解決手段】マイクロ流体デバイス1は、ガス発生部3を有する。ガス発生部3は、基板10と、ガス発生層20とを有している。基板10は、第1の主面10aと第2の主面10bとを有する。基板10には、少なくとも第1の主面10aに開口するマイクロ流路14が形成されている。ガス発生層20は、基板10の第1の主面10aに、開口14aを覆うように配置されている。ガス発生層20は、外部刺激を受けることによりガスを発生させる。ガス発生層20の基板10側の表面及び基板10の第1の主面10aのうちの少なくとも一方は、粗面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスに関し、詳細には、マイクロポンプシステムを有するマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、マイクロ流体デバイスの一例として、マイクロポンプシステムを有するマイクロ全分析システムが開示されている。特許文献1のマイクロポンプシステムは、微細流路と、ガス発生材料が充填されたマイクロポンプ室とが形成された基板により構成されている。特許文献1のマイクロポンプシステムでは、光線をマイクロポンプ室に照射したり、熱を付与したりすることでガス発生材料からガスが発生し、マイクロポンプシステムが作動する。このため、特許文献1のマイクロポンプシステムは、複雑な機械的構造を要さない。従って、特許文献1に開示された構造を採用することで、マイクロポンプシステムの小型化及び製造容易化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−297102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたマイクロポンプシステムでは、基板内にマイクロポンプ室を形成する必要がある。このため、マイクロポンプシステムの製造工程が煩雑となる傾向にある。また、マイクロポンプシステムをさらに小型化したいという要望を十分に満足させることは困難である。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロポンプシステムを有するマイクロ流体デバイスにおいて、製造工程の簡素化を図ると共に、さらなる小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るマイクロ流体デバイスは、ガス発生部を有する。ガス発生部は、基板と、ガス発生層とを有する。基板は、第1の主面と第2の主面とを有する。基板には、第1の主面に開口するマイクロ流路が形成されている。ガス発生層は、基板の第1の主面に、開口を覆うように配置されている。ガス発生層は、外部刺激を受けることによりガスを発生させる。ガス発生層の基板側の表面及び基板の第1の主面のうちの少なくとも一方は、粗面である。
【0007】
本発明のある特定の局面において、ガス発生層は、第1の主面に貼付されているガス発生フィルムである。
【0008】
本発明の他の特定の局面において、ガス発生部は、ガス発生層の基板側とは反対側の表面に設けられたバリア層をさらに有する。
【0009】
本発明の別の特定の局面において、バリア層は、ガス発生層を覆うように配置されており、ガス発生層の外周全体にわたって基板に接合されている。
【0010】
本発明のさらに別の特定の局面において、バリア層は、ガラス製又は樹脂製の膜又は基板である。
【0011】
本発明のまた他の特定の局面において、基板には、マイクロ流路が複数設けられており、ガス発生層は、光が照射されることによりガスを発生させるガス発生剤を含み、マイクロ流体デバイスは、平面視において、隣接するマイクロ流路の開口相互間に設けられ、ガス発生層を遮光する遮光層をさらに備えている。
【0012】
本発明のまた別の特定の局面において、ガス発生層は、基板に貼付されており、ガス発生層の基板側の表面及び基板の第1の主面のうちの少なくとも一方には、開口に接続された溝又は孔が形成されている。
【0013】
溝又は孔は、開口から基板の板面方向に延びていることが好ましい。
【0014】
溝又は孔が複数形成されており、複数の溝又は孔は、基板の板面方向において、開口から放射状に延びていることが好ましい。
【0015】
ガス発生層は、外部刺激を受けることによりガスを発生させるガス発生剤を含むことが好ましい。外部刺激は、光であることが好ましい。
【0016】
ガス発生剤は、アゾ化合物及びアジド化合物のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0017】
ガス発生層は、バインダー樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0018】
本発明のまたさらに別の特定の局面において、マイクロ流路には、第1の主面に対する開口が複数形成されている。
【0019】
本発明のさらにまた他の特定の局面において、基板には、マイクロ流路が複数形成されており、複数のマイクロ流路は、相互に接続されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、基板上に設けられたガス発生層からマイクロ流路にガスが供給されるため、マイクロポンプシステムを有するマイクロ流体デバイスにおいて、製造工程の簡素化を図ると共に、さらなる小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図2】図2は、第2の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図3】図3は、第3の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図4】図4は、第4の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図5】図5は、第5の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図6】図6は、第5の実施形態におけるガス発生層の平面図である。
【図7】図7は、変形例1におけるガス発生層の平面図である。
【図8】図8は、変形例2に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図9】図9は、変形例2における基板の平面図である。
【図10】図10は、変形例3に係るマイクロ流体デバイスの概略断面図である。
【図11】図11は、変形例3におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図12】図12は、変形例4におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図13】図13は、変形例5におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図14】図14は、変形例6におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図15】図15は、変形例7におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図16】図16は、変形例8におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図17】図17は、変形例9におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図18】図18は、変形例10におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図19】図19は、変形例11におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図20】図20は、変形例11におけるマイクロ流体デバイスの概略平面図である。
【図21】図21は、変形例12におけるマイクロ流路の構成を表わす概略平面図である。
【図22】図22は、変形例12に係るマイクロ流体デバイスの概略平面図である。
【図23】図23は、変形例13に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【図24】図24は、変形例14に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好ましい形態の一例について、図1に示すマイクロ流体デバイス1を例に挙げて説明する。但し、マイクロ流体デバイス1は、単なる例示であって、本発明は、マイクロ流体デバイス1に限定されるものではない。
【0023】
図1は、マイクロ流体デバイス1の断面図である。マイクロ流体デバイス1は、マイクロ流路を有するデバイスである限りにおいて特に限定されない。マイクロ流体デバイス1は、例えば、重金属分析や生化学分析を行うためのマイクロ分析デバイスであってもよい。マイクロ流体デバイス1がマイクロ分析デバイスである場合は、マイクロ流体デバイス1は、マイクロ流路14に連通して基板10に形成された検出部や分析部をさらに有するものであってもよい。
【0024】
なお、本明細書において、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体が、表面張力と毛細管現象との影響を強く受け、通常の寸法の流路を流れる液体とは異なる挙動を示す形状寸法に形成された流路をいう。すなわち、「マイクロ流路」とは、マイクロ流路を流れる液体に所謂マイクロ効果が発現する形状寸法に形成された流路をいう。
【0025】
但し、どのような形状寸法の流路においてマイクロ効果が発現するかは、流路に導入される液体の物性によって異なる。例えば、マイクロ流路が横断面矩形状である場合には、一般的には、マイクロ流路の横断面における高さ及び幅のうちの小さい方が5mm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下に設定される。マイクロ流路が横断面円形状である場合は、一般的には、マイクロ流路の直径は、5mm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下に設定される。
【0026】
図1に示すように、マイクロ流体デバイス1は、マイクロポンプシステム2を備えている。マイクロポンプシステム2には、ガス発生部3が形成されている。ガス発生部3は、基板10と、ガス発生層20と、バリア層21とを備えている。
【0027】
基板10は、第1の主面10aと第2の主面10bとを備えている。なお、第1の主面10aには、開口14aの内周面は含まれない。すなわち、主面には、表面に凹部が形成されている場合において、凹部の表面は含まれない。
【0028】
基板10には、マイクロ流路14が形成されている。マイクロ流路14は、基板10の第1の主面10aに開口している。言い換えれば、マイクロ流路14には、第1の主面10aに開口する開口14aが形成されている。なお、本実施形態では、マイクロ流路14が第1の主面10aにのみ開口している例について説明する。但し、マイクロ流路14は、第1の主面10aと第2の主面10bとの両方に開口していてもよい。
【0029】
基板10の材質は、特に限定されない。基板10は、例えばガラス製であってもよく、樹脂製であってもよい。具体的には、基板10は、例えば、有機シロキサン化合物からなるものであってもよい。有機シロキサン化合物の具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS:poly(dimethylsiloxane))、ポリメチル水素シロキサンなどが挙げられる。
【0030】
成形型に樹脂を流し込んだ後に硬化させることによって基板10を作製する場合は、基板10は、実質的にPDMSからなるものであることが特に好ましい。PDMSからなる部材は転写性が高いため、PDMSを用いることによって高い形状精度の基板10を作製することができる。また、PDMSは光透過性が優れているため、光透過性の高い基板10を得ることができる。
【0031】
本実施形態では、基板10は、第1の基板11と、第2の基板12と、第3の基板13とによって構成されている。但し、基板10は、一枚の基板によって構成されていてもよく、2枚以上の基板により構成されていてもよい。
【0032】
基板10の第1の主面10aは、アンカー処理されていることが好ましい。基板10の第1の主面10aにアンカー処理を施しておくことによって、基板10とガス発生層20との間においてガスが発生したり、発生したガスが基板10とガス発生層20との間に溜まったりすることを抑制することができる。
【0033】
上記アンカー処理としては、例えば、基板10の第1の主面10aにコロナ放電処理や表面処理剤を塗布する処理が挙げられる。ここで、表面処理剤としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、1,3共役ジエンモノマーを含む重合ポリマー又は共重合ポリマー、1,3共役ジエンモノマーを含む重合オリゴマー又は共重合オリゴマー、1,3共役ジエンモノマー誘導体を含む重合ポリマー又は共重合ポリマー、1,3共役ジエンモノマー誘導体を含む重合オリゴマー又は共重合オリゴマー、又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0034】
基板10の第1の主面10aの上には、ガス発生層20が配置されている。本実施形態では、ガス発生層20は、基板10に対して貼付されている。開口14aは、このガス発生層20によって覆われている。
【0035】
ガス発生層20の厚みは、好ましくは1μm〜200μm、より好ましくは5μm〜100μm、さらに好ましくは10μm〜50μmである。ガス発生層20の厚みが1μm以下の場合には、外部刺激を受けて発生するガスの量が少なかったり、バインダー樹脂が粘接着剤樹脂を含むような場合には、基板10に対する接着性が不足したりする場合がある。また、ガス発生層20の厚みが200μm以上である場合には、発生したガスが基板10に到達するまでに要する時間が長くなる傾向にある。
【0036】
ガス発生層20は、外部刺激を受けることによってガスを発生させる層である。ガス発生層20は、外部刺激を受けることによってガスを発生させるガス発生剤を少なくとも含む。本実施形態では、ガス発生層20は、ガス発生剤と、バインダーとを含む。ガス発生層20は、さらに種々の添加剤を含むものであってもよい。
【0037】
なお、本発明において、外部刺激とは、ガス発生部にガス発生反応を起こさせるために外部から供給される物理的または化学的な刺激を意味する。すなわち、外部刺激とは、ガス発生部からガスが発生するようにガス発生部に作用するものである。外部刺激の具体例としては、光や熱等のエネルギー、酸や塩基等の物質が挙げられる。すなわち、「外部刺激を受ける」には、光や熱等のエネルギーが照射されること、酸や塩基等の物質が供給されることが含まれる。
【0038】
外部刺激は、ガス発生部にガス発生反応を起こさせるものである限りにおいて特に限定されないが、光であることが好ましい。光の照射のオン/オフや照射する光の強度調整は容易に行えるため、外部刺激が光である場合は、ガス発生の制御が容易であり、また、ガス発生の高い応答性が得やすい。さらに、外部刺激が光である場合は、基板10に要求される熱的耐久性が低くなるため、基板10の選択自由度が向上する。
【0039】
ガス発生剤は、外部刺激を受けることによりガスを発生させる材料のみにより構成されていてもよい。また、ガス発生剤は、外部刺激を受けることにより、別の刺激を発生させる刺激発生剤と、その刺激発生剤により発生した刺激を受けることによってガスを発生させる刺激ガス発生剤とを含んでいてもよい。
【0040】
ガス発生剤は、例えば、光又は熱を受けることにより酸又はアルカリを発生させる材料と、その材料により発生した酸又はアルカリによりガスを発生させる材料とを含んでいてもよい。より具体的には、ガス発生材料は、光が照射されることにより酸を発生させる光酸発生剤と、酸と接触することによりガスを発生させる酸刺激ガス発生剤とを含んでいてもよい。またガス発生材料は、光が照射されることにより塩基を発生させる光塩基発生剤と、塩基と接触することにより塩基ガスを発生させる塩基増殖剤を含んでもよい。
【0041】
ガス発生層20に照射される光は、ガス発生剤または増感剤が吸収する波長帯の光であれば、特に限定されないが、波長が10nm〜400nmの紫外線及び紫外線に近い400nm〜420nmの青色光であることが好ましく、300nm〜400nmの近紫外線であることがより好ましい。
【0042】
ガス発生層20への光照射に用いられる光源は、特に限定されない。光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、発光ダイオード(LED)、全固体レーザー、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯などが挙げられる。なかでも、光源としては、発熱も少なく安価な発光ダイオード(LED)などの発光素子が好ましく用いられる。
【0043】
ガス発生剤の具体例としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物等が挙げられる。アゾ化合物は、アゾアミド化合物であってもよい。
【0044】
アゾ化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、特定の波長域の光、熱等による刺激を受けることにより窒素ガスを発生させる。
【0045】
アジド化合物の具体例としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、アジド基を有するポリマー等が挙げられる。アジド基を有するポリマーの具体例としては、グリシジルアジドポリマー等が挙げられる。グリシジルアジドポリマーは、例えば、p−tert−ブチルベンズアジドと3−アジドメチル−3−メチルオキセタンとを開環重合することにより得られる。これらのアジド化合物は、特定の波長域の光、熱、超音波及び衝撃等による刺激を受けることにより分解して、窒素ガスを発生させる。
【0046】
なお、アゾ化合物は、衝撃によっては気体を発生しないことから取り扱いが極めて容易である。また、アゾ化合物は、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生させることもなく、光の照射を中断することで気体の発生を中断させることもできる。このため、アゾ化合物をガス発生剤として用いることによりガス発生量の制御が容易となる。
【0047】
アゾ化合物等のガス発生剤は、高い耐熱性を有することが好ましい。具体的には、ガス発生剤の10時間半減期温度が80℃以上であることが好ましい。ガス発生剤を高耐熱性にすることによって、マイクロ流体デバイス1を高温環境下においても好適に使用可能なものとすることができる。また、マイクロ流体デバイス1の貯蔵時における劣化を抑制することができる。
【0048】
10時間半減期温度が80℃以上であるアゾ化合物としては、下記一般式(3)で表されるアゾアミド化合物等が挙げられる。下記一般式(3)で表されるアゾアミド化合物は、耐熱性に優れていることに加え、アクリル酸アルキルエステルポリマー等の粘着性を有するポリマーへの溶解性にも優れている。このため、粘接着剤樹脂中において、アゾアミド化合物が粒子化することを抑制することができる。
【0049】
【化1】

【0050】
一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して、低級アルキル基を表し、Rは、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、RとRは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
上記一般式(3)で表されるアゾアミド化合物の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]等が挙げられる。
【0052】
なかでも、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)及び2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]は、溶剤への溶解性に特に優れていることから好適に用いられる。
【0053】
光酸発生剤は、特に限定されない。光酸発生剤としては、例えば、従来公知の光酸発生剤を用いることができる。
【0054】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル類及び有機ハロゲン化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、スルホン酸オニウム塩、ベンジルスルホン酸エステル、ハロゲン化イソシアヌレート及びビスアリールスルホニルジアゾメタンからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることがより好ましい。これらの光酸発生剤は、光照射により効率的に分解し、スルホン酸等の強酸を発生させる。よって、これらの光酸発生剤を用いることによって、ガスの発生効率をより一層高めることができる。
【0055】
キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸と、低分子芳香族ヒドロキノン化合物とのエステルが挙げられる。低分子芳香族ヒドロキノン化合物としては、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、クレゾール等が挙げられる。これらの中でも、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸−p−クレゾールエステルが特に好ましく用いられる。
【0056】
オニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0057】
スルホン酸エステル類としては、ビスアリールスルホニルジアゾメタン、p−ニトロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、m−ニトロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、m、p−ジニトロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、p−シアノベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、クロロベンジル9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、ジメチルアミノナフタレン−5−スルホネート、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、4−メトキシフェニル−フェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、ジフェニルヨードニウム−アントラセン−2−スルホネート、ジフェニルヨードニウム−トルフルオロメタンスルホネート、(5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル等が挙げられる。これらの中でも、光照射された際の酸の発生効率が高いジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、5−プロピルスルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−2−メチルフェニルアセトニトリルが特に好ましく用いられる。
【0058】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリブロモメチルスルフォニルピリジンなどが挙げられる。
【0059】
酸刺激ガス発生剤としては、酸の刺激すなわち酸の作用によりガスを発生するものであれば特に限定されないが、炭酸塩及び重炭酸塩のうちの少なくとも一方が好適に用いられる。
【0060】
酸刺激ガス発生剤の具体例としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。これらの酸刺激ガス発生剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムであり、より好ましくは、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの混合物は、安定性に優れ、かつガス発生量が多いため、酸刺激ガス発生剤として好適に用いられる。
【0061】
なお、酸刺激ガス発生剤の配合量は、光酸発生剤から発生する酸と化学等量であることが望ましい。
【0062】
また、酸刺激ガス発生剤と光酸発生剤とのそれぞれは、液状であってもよいし、粒子状であってもよい。但し、取り扱い性及びガスの発生効率を高くする観点から、酸刺激ガス発生剤と光酸発生剤とのうちの少なくとも一方が微粒子であることが好ましい。また、酸刺激ガス発生剤と光酸発生剤とのうちの少なくとも一方を微粒子とすることによって、微粒子間に隙間が形成され、発生したガスの通過が容易となる。なお、本明細書において、微粒子とは、平均直径が50μm〜2mm程度の粒子をいう。
【0063】
ガス発生剤は、光の照射により分解し、ガス状の塩基を発生する光塩基発生剤(A)と、塩基増殖剤(B)とを含んでいてもよい。
【0064】
光塩基発生剤(A)は、例えば、コバルトアミン系錯体、カルバミン酸o−ニトロベンジル、オキシムエステル、下記の式(4)で表わされる光の照射によりアミンを発生させるカルバモイルオキシイミノ基含有化合物、及び下記の式(5)で表わされるカルボン酸(a1)と塩基性化合物(a2)との塩からなる群から選択された少なくとも1種であってもよい。
【0065】
【化2】

【0066】
式(4)において、Rは、n価の有機基であり、R及びRは各々、水素、芳香族もしくは脂肪族基であり、nは1以上の整数である。
【0067】
【化3】

【0068】
上記式(4)で表わされるカルバモイルオキシイミノ基含有化合物としては、特に限定されないが、特開2002−138076号において、下記のようにして製造されることが示されている化合物などを例示することができる。
【0069】
ヘキサメチレンジイソシアネート0.05molに、テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解したアセトフェノンオキシム0.1molを添加し、乾燥、窒素雰囲気下、50℃で4時間攪拌し反応させた。反応液からテトラヒドロフランを揮発させると白色の固体が得られた。得られた白色の固体を80℃のメチルエチルケトンに溶解させ、再結晶により精製し、光照射によりアミンを発生する化合物を作製した。
【0070】
上記カルボン酸(a1)と、塩基性化合物(a2)との塩は、カルボン酸(a1)と、塩基性化合物(a2)とを溶液中で混合するだけで簡単に調製することができる。カルボン酸(a1)と、塩基性化合物(a2)とを容器中で混合すると、下記の反応式(S1)で表わされる酸塩基反応が進行し、塩A1を生じる。
【0071】
【化4】

【0072】
上記式(S1)中、Xは塩基性化合物(a2)であり、(A1)は塩である。
【0073】
上記のようにして得られる塩は、カルボン酸(a1)に由来する骨格を有するので、光の照射により容易に脱炭酸を起こし、下記の反応式(S2)で表わされる反応が進行する。従って、上記塩は、単独で優れた光分解性能を発現する。すなわち、上記の塩の分解により、塩基ガスと二酸化炭素とが速やかに発生し、しかも十分な量の塩基ガス及び二酸化炭素が発生することとなる。
【0074】
【化5】

【0075】
上記式(S2)中、Xは塩基性化合物(a2)を示す。
【0076】
上記塩基性化合物(a2)としては特に限定されず、例えば、一級アミン、二級アミン及び三級アミン等のアミン、ピリジル基を含有する化合物、ヒドラジン化合物、アミド化合物、水酸化四級アンモニウム塩、メルカプト化合物、スルフィド化合物及びホスフィン化合物などを用いることができる。これらは、複数用いられても構わない。
【0077】
上記塩基性化合物(a2)としては、下記の式(6)〜(9)で表わされる化合物からなる群から選択された少なくとも1種が好適に用いられる。その場合には、上記塩が光の照射により、より一層速やかに分解し、より一層速やかに塩基ガス及び二酸化炭素が発生する。
【0078】
【化6】

【0079】
【化7】

【0080】
【化8】

【0081】
【化9】

【0082】
上記式(9)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン鎖を表す。塩基ガスも発生するので、好ましくはRは、炭素数1〜2のアルキレン鎖である。
【0083】
【化10】

【0084】
上記式(10)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン鎖を表す。塩基ガスも発生するので、好ましくは、Rは炭素数1〜2のアルキレン鎖を表す。
【0085】
【化11】

【0086】
上述した式(9)において、Rが炭素数1または2のアルキレン鎖の場合、及び式(10)において、Rが炭素数1または2のアルキレン鎖の場合には、加えて、上記塩基ガスが、塩基増殖剤(B)と反応することにより、連鎖的に塩基ガスが発生する。塩基増殖剤(B)が反応して生じた塩基ガスは、自己を触媒として、さらに塩基ガスを発生するので、幾何級数的に塩基ガスが発生することとなる。加えて、同時に二酸化炭素も発生する。従って、より一層速やかに大量のガスが発生する。
【0087】
他方、式(9)において、Rが炭素数3〜10のアルキレン鎖の場合、及び式(10)において、Rが炭素数3〜10のアルキレン鎖の場合には、分子量が大きいので、塩基増殖剤が塩基ガスを発生しない。しかしながら、これらの塩基増殖剤は、側鎖にカルボキシル基を多く含んでいるので、二酸化炭素ガスを速やかにかつ効率良く発生させる。
【0088】
塩基増殖剤としては、特に限定されないが、好ましくは、9−フルオレニルカルバメート誘導体が用いられる。9−フルオレニルカルバメート誘導体は、二官能型、球状多官能のオリゴマー型、直鎖高分子型、またはシロキサン型のいずれであってもよい。
【0089】
上記塩基増殖剤(B)としては、下記式(12)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤(B1)が好ましい。
【0090】
【化12】

【0091】
上述した式(12)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤(B1)は、塩基増殖反応によって分解して、新たにアミンを発生する。さらに、発生したアミンが新たな触媒として機能し、増殖的に多数のアミンを生成する。上記式(12)で表される塩基増殖性基が分子内に多く存在するほど、分子内での塩基増殖反応が効率的に起こる。従って、より一層多くのアミノ基が生成する。
【0092】
上記式(12)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤(B1)を用いた塩基増殖反応では、活性な水素原子が塩基によって引き抜かれて、カルバニオンが形成される。次いで、カルバミン酸が脱離し、さらに分解が進行してアミノ基と二酸化炭素を生成する。このアミノ基が触媒となってこの反応を加速する。この反応を下記反応式(X1)に示す。
【0093】
【化13】

【0094】
上記式(12)で表される塩基増殖性基としては、下記式(13)で表される塩基増殖性基が好ましい。
【0095】
【化14】

【0096】
上記式(13)中、Zは置換または無置換のアルキレン鎖を示す。
【0097】
上記式(13)中、Zの具体例としては、メチレン鎖、エチレン鎖、プロピレン鎖などが挙げられる。上記塩基増殖反応が効果的に起こるため、Zは無置換のアルキレン鎖であることが好ましい。なかでも、Zにおける立体障害も小さくなり、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易いため、Zはメチレン鎖であることがより好ましい。
【0098】
上記式(13)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤としては、下記式(14)で表される塩基増殖剤が好ましい。
【0099】
【化15】

【0100】
上記式(14)中、Xは水素原子、置換されているアルキル基、または無置換のアルキル基を示し、Zは置換または無置換のアルキレン鎖を示し、nは1〜4の整数を示す。
【0101】
上記式(14)中、Xの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。塩基増殖反応が効果的に起こるため、Xは無置換のアルキル基であることが好ましい。なかでも、Xにおける立体障害も小さくなり、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易いため、Xはエチル基であることがより好ましい。
【0102】
上記式(14)中、nは1〜4の整数を示す。上記式(14)で表される塩基増殖剤が同一分子内に複数の9−フルオレニルカルバメート基を有する場合には、発生した塩基の触媒作用によって塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易い。よって上記式(14)中、nは3又は4の整数であることが好ましい。
【0103】
上記式(14)で表される塩基増殖剤の具体例としては、下記式(15)で表される塩基増殖剤(Flu3)、下記式(16)で表される塩基増殖剤(Flu4)が挙げられる。下記式(15)及び式(16)で表される塩基増殖剤は、公知の方法によって得ることができる。
【0104】
【化16】

【0105】
【化17】

【0106】
上記式(15)及び式(16)で表される塩基増殖剤は、同一分子内に複数の9−フルオレニルカルバメート基を有する。よって、発生した塩基の触媒作用によって塩基増殖反応が進行し易い。塩基の発生効率がより一層高められるので、上記式(15)で表される塩基増殖剤がより好ましく、上記式(16)で表される塩基増殖剤がさらに好ましい。
【0107】
上記式(12),(13)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤、あるいは上記式(14)〜(16)で表される塩基増殖剤は、特に限定されないが、例えばフルオレニルメタノールとイソシアネート誘導体との付加反応や、フルオレニルカルバメート基を有するアクリレートモノマーとポリチオール誘導体との付加反応によって合成することができる。前者の付加反応にはスズ触媒を適切に用い、後者の付加反応には塩基触媒を適切に用いることにより、合成を簡便に行うことができる。
【0108】
上記式(12)で表される塩基増殖性基としては、下記式(17)で表される塩基増殖性基も好ましい。
【0109】
【化18】

【0110】
上記式(17)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0111】
上記式(12)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤(B1)としては、上記式(17)で表される塩基増殖性基と、下記式(18)で表される不飽和基とを有する塩基増殖剤もより好ましく用いることができる。
【0112】
【化19】

【0113】
上記式(18)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0114】
上記式(17)で表される塩基増殖性基と上記式(18)で表される不飽和基とを有する塩基増殖剤もより好ましく用いることができる。
【0115】
上記式(17)で表される塩基増殖性基を有する塩基増殖剤は、例えば、下記反応式(X2)に示すように、上記式(18)で表される不飽和基を有する化合物と、9−フルオレニルメチルN−(2−メルカプトエチル)カルバメートとの付加反応により得ることができる。なお、この付加反応では、上記式(17)中のRは、上記式(18)で表される不飽和基のRに由来する。
【0116】
【化20】

【0117】
上記式(X2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0118】
上記式(18)で表される不飽和基を有する化合物は、アクリレート基あるいはメタクリレート基(以下(メタ)アクリレート基として両者を合わせて表記する)を有する化合物である。
【0119】
上記式(18)で表される不飽和基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系モノマーまたはオリゴマーなどを用いることができる。塩基増殖剤が同一分子中にできるだけ多くの上記式(18)で表される塩基増殖性基を含んでいると、塩基増殖反応が効率よく起こるため、(メタ)アクリレート基を少なくとも2つ有するモノマーあるいはオリゴマーが好ましい。
【0120】
上記多官能性(メタ)アクリレートモノマーまたは(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、具体的には、エチレンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、およびこれらの類似物が挙げられる。
【0121】
更には、例えば、ノボラック型の化合物や、公知のデンドリティックな多官能性(メタ)アクリレートも用いることができる。これらは単独で使用してもよいし、混合物として用いてもよい。
【0122】
塩基増殖剤の同一分子中に、上記式(17)で表される塩基増殖性基の数を増やすためには、上記式(18)で表される不飽和基を少なくとも2つ有する化合物を用いればよい。
【0123】
上記式(18)で表される不飽和基を少なくとも2つ有する化合物は、例えば、上記式(18)で表される不飽和基を有する化合物に、α−チオグリセリンをマイケル付加反応させて、下記式(19)で表されるジオール置換された基に変換し、ついで、それぞれの水酸基をエステル化あるいはウレタン化することによって得ることができる。この反応によって、例えば1つの不飽和基を2つあるいは4つの不飽和基に変換させることができる。
【0124】
【化21】

【0125】
上記式(19)中Rは、水素原子またはメチル基を示す。
【0126】
上記式(19)で表される基を有するポリオール化合物の水酸基に、不飽和基である(メタ)アクリレート基を導入するためには、エステル化法およびウレタン化法を用いることができる。
【0127】
上記塩基増殖剤(B)の配合割合は、塩基性化合物(A)100重量部に対して、20〜300重量部の範囲が好ましい。塩基増殖剤(B)が20重量部未満であると、塩基増殖剤反応を使った連鎖反応が効率的に起こらない場合がある。300重量部を超えると、塩基増殖剤が溶媒中に飽和し、塩基増殖剤が析出することがある。また、反応系を連鎖反応が支配し、反応を止めたいときに止めることができず、反応の制御が困難になることがある。
【0128】
アミノアルキル化合物(C)
上記光塩基発生剤(A)100重量部に対し、20〜100重量部の割合でアミノアルキル化合物(C)がさらに含有されていることが好ましい。20重量部未満では、アミノアルキル化合物(C)を添加した効果が十分得られないことがあり、100重量部を越えると光塩基発生剤から生じるラジカルは、光塩基発生剤と等量であり、過剰に加えても未反応で反応が終了することがある。
【0129】
アミノアルキル化合物(C)は、光塩基発生剤(A)の分解により発生したアルキルラジカルと反応する。この反応によっても塩基ガスが発生する。そのため、ガスの発生効率がさらに高められる。そして、発生した塩基ガスが、塩基増殖剤(B)とさらに反応することにより、塩基ガスがより一層幾何級数的に発生することとなる。さらに、塩基ガス発生時に、同時に二酸化炭素が発生する。よって、上記塩基増殖剤(B)に加えて、アミノアルキル化合物(C)をさらに用いることにより、ガス発生効率をより一層高めることができる。
【0130】
上記アミノアルキル化合物(C)としては、特に限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、N−メチル−アミノエチル、N,N−ジメチルアミノエチル、N,N−ジエチルエチレンジアミン及びN−メチルアミノブチルからなる群から選択された1種の化合物が好適に用いられ、その場合には、ガス発生効率をさらに高めることができる。
【0131】
ガス発生剤が上記光塩基発生剤(A)を含む場合、光増感剤を含有していなくても、少量の光を短時間照射した場合でも、充分な量の塩基ガスが発生し得る。
【0132】
ガス発生層20は、光増感剤をさらに含むことが好ましい。ガス発生層20に光増感剤を含ませることにより、光が照射された際に、ガスをより一層速やかに発生させることができる。
【0133】
光増感剤は、光が照射されることによりガスを発生させるガス発生剤にエネルギーを移動させてガス発生剤の分解を促進する化合物である限りにおいて特に限定されない。光増感剤としては、例えば、チオキサントン、ベンゾフェノン、アセトフェノン類、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンジエート、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンのように窒素が環系の一部をなしているもの、アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩、N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物、トリ−n−ブチルフォスフィン、N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒドかアセトアルデヒドとジアミンの縮合物、アントラセン及びその誘導体、キサンチン、N−フェニルグリシン、フタロシアニン、ナフトシアニン、チオシアニン等のシアニン色素類ポルフィリン及びその誘導体等が挙げられる。これらの光増感剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
光増感剤の配合割合は、光増感作用が得られる限りにおいて特に限定されず、例えば、光が照射されることによりガスを発生させるガス発生剤100重量部に対して光増感剤を0.1〜50重量部の範囲で含有させることが好ましく、1〜10重量部の範囲で含有させることがより好ましい。光増感剤が少なすぎると、十分な増感作用が得難くなる傾向にあり、光増感剤が多すぎると、ガス発生剤の光分解が抑制されたりすることがある。
【0135】
また、ガスの発生を補助させる目的で、ガス発生層20に光分解性のアゾ化合物や過酸化物などを添加してもよい。
【0136】
光分解性のアゾ化合物としては、例えば、アゾアミド系化合物、アゾニトリル系化合物、アゾアミジン系化合物又はサイクリックアゾアミジン化合物等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0137】
光分解性の過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、o−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、アントラキノン類、トリアジン類、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等が挙げられる。アントラキノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等が挙げられる。トリアジン類としては、例えば、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が挙げられる。
【0138】
ガス発生の連鎖を止める目的で、ガス発生層20にラジカルスカベンジャーなどを添加してもよい。
【0139】
ラジカルスカベンジャーとしては、例えば、t−ブチルカテコール、ヒロドキノン、メチルエーテル、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ系酵素ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール類、リノレイン酸等が挙げられる。
【0140】
ガス発生剤は、ガス発生層20内において相溶化状態として存在することが好ましい。高い気体発生効率を得ることができ、かつガス発生層20の表面の平滑性を高くすることができるからである。
【0141】
なお、本明細書において「相溶化状態」とは、電子顕微鏡によりガス発生層20を観察したときにガス発生剤を確認することができない程度に微分散又は相溶している状態をいう。
【0142】
ガス発生剤が相溶化状態で存在するようにするために、ガス発生層20中に溶解するガス発生剤を選択することが好ましい。但し、ガス発生剤は、ガス発生層20中に溶解しにくいものであってもよい。その場合は、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることによりガス発生剤を分散させることが好ましい。
【0143】
また、バインター樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの高分子材料を用いることができる。また、これらの共重合体を用いてもよく、これらを併用してもよい。なかでも、ガスの発生効率がより一層高められるので、ポリ(メタ)アクリレートが好ましい。バインダー樹脂の紫外光吸収帯は、上記光酸発生剤や光増感剤、光塩基発生剤の紫外光吸収帯よりも短波長であることが望ましい。
【0144】
バインダー樹脂は、ガス発生層20に種々の機能を持たせるために添加されるものである。バインダー樹脂は、例えば粘接着剤樹脂を含むことが好ましい。ガス発生層20にバインダー樹脂として粘接着剤樹脂を含有させることにより、ガス発生層20と基板10との粘着性、接着性を高めることができる。
【0145】
なお、本実施形態において、粘接着剤樹脂は、ガス発生層20に付与される外部刺激によって硬化しないものであることが好ましい。粘接着剤樹脂を外部刺激によって硬化しないものとすることで、ガス発生層20に対する外部刺激の付与が開始された後もガス発生層20と基板10との高い粘接着性を維持することができるからである。粘接着剤樹脂は、例えば、外部刺激によって架橋されないものであることが好ましい。
【0146】
粘接着剤樹脂の具体例としては、例えば、ゴム系粘接着剤樹脂、アクリル系粘接着剤樹脂、シリコーン系粘接着剤樹脂、ウレタン系粘接着剤樹脂、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体系粘接着剤樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体粘接着剤樹脂、エポキシ系粘接着剤樹脂、イソシアネート系粘接着剤樹脂等が挙げられる。好ましくは、アクリル系粘接着剤樹脂が用いられる。
【0147】
もっとも、バインダー樹脂は、粘接着剤樹脂を含んでいなくてもよい。バインダー樹脂が、粘接着剤樹脂粘接着剤樹脂を含まない場合には、図23に示すように、基板10とガス発生層20との間、及びガス発生層20とバリア層21との間のそれぞれに粘接着剤層33,34を配置することにより基板10とガス発生層20とを貼付してもよい。
【0148】
また、本発明において、ガス発生層の形態は、ガス発生フィルムに限定されない。ガス発生層は、例えば、ガス発生剤が付着または含浸された板状またはフィルム状の多孔質体であってもよい。この場合は、ガス発生層において発生したガスが多孔質体に形成されている多数の孔を通じて速やかにマイクロ流路に導かれる。従って、マイクロ流体システムの送液効率をより高めることができる。なお、この場合は、ガス発生層20からのガスがマイクロ流路14に好適に導かれるために、バリア層21を設けておくことが特に好ましい。
【0149】
多孔質体は、特に限定されないが、具体例としては、例えば、複数の繊維の集合体である不織布や織布、発泡体などが挙げられ得る。
【0150】
また、ガス発生層は、ガス発生層において発生したガスが速やかにマイクロ流路に供給されるように、ガスがマイクロ流路に供給されやすい形状に加工されていることが好ましい。例えば、図24に示すように、ガス発生層20には、ガス発生層20の厚さ方向にガス発生層20を貫通する複数の貫通孔35がマトリクス状に形成されていてもよい。この場合、貫通孔35の径は、マイクロ流路14の径よりも小さいことが好ましい。なお、この場合においても、ガス発生層20からのガスがマイクロ流路14に好適に導かれるために、バリア層21を設けておくことが特に好ましい。
【0151】
バインダー樹脂を含む場合には、アゾ化合物またはアジド化合物は、バインダー樹脂100重量部に対して、5重量部〜100重量部の割合で含有されていることが好ましく、より好ましくは10重量部〜50重量部である。アゾ化合物またはアジド化合物の割合が少なすぎると、外部刺激によるガス発生量が少なくなりすぎる場合があり、アゾ化合物またはアジド化合物の割合が多すぎると、アゾ化合物またはアジド化合物がバインダー樹脂中に溶解できなくなってしまう場合がある。
【0152】
また、上述の光酸発生剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、2〜150重量部の割合で含有されていることが好ましく、より好ましくは10〜100重量部である。また、酸刺激ガス発生剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、2〜150重量部の割合で含有さていることがより好ましく、さらに好ましくは10〜100重量部である。光酸発生剤並びに酸刺激ガス発生剤の割合が少なすぎると、光照射によるガス発生が充分ではなくなる場合があり、光酸発生剤並びに酸刺激ガス発生剤の割合が多すぎると、光酸発生剤並びに酸刺激ガス発生剤がバインダー樹脂中に溶解できなくなってしまう場合がある。
【0153】
光塩基発生剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、100重量部に対し、20〜500重量部の割合で含有されていることが好ましい。光塩基発生剤の割合が少なすぎると、光照射によるガス発生が充分ではなくなる場合があり、光塩基発生剤の割合が多すぎると、光塩基発生剤がバインダー樹脂中に溶解できなくなってしまう場合がある。
【0154】
塩基増殖剤の配合割合は、光塩基発生剤100重量部に対して、20〜300重量部の範囲が好ましい。塩基増殖剤が20重量部未満であると、塩基増殖剤反応を使った連鎖反応が効率的に起こらない場合がある。300重量部を超えると、塩基増殖剤が溶媒中に飽和し、塩基増殖剤が析出することがある。また、反応系を連鎖反応が支配し、反応を止めたいときに止めることができず、反応の制御が困難になることがある。
【0155】
アミノアルキル化合物の配合割合は、光塩基発生剤100重量部に対し、20〜100重量部の範囲が好ましい。アミノアルキル化合物の配合割合が20重量部未満では、アミノアルキル化合物を添加した効果が十分得られないことがあり、アミノアルキル化合物の配合割合が100重量部を越えると光塩基発生剤から生じるラジカルは、光塩基発生剤と等量であり、過剰に加えても未反応で反応が終了することがある。
【0156】
アクリル系粘接着剤樹脂は、常温で粘着性を有するポリマーである。アクリル系粘接着剤樹脂は、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、例えば、主モノマーとしてのアルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルのうちの少なくとも一方と、官能基含有モノマーと、更に必要に応じて共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる。官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0157】
基板10が実質的に有機シロキサン化合物からなる場合のように、基板10の極性が低い場合は、極性が低い粘接着剤樹脂を用いることが好ましい。
【0158】
極性が低い粘接着剤樹脂を用いることにより、基板10の極性が低い場合においても、基板10とガス発生層20との密着強度を高めることができる。
【0159】
極性が低い粘接着剤樹脂としては、アルキルペンダント系化合物やフッ素置換アルキルペンダント系化合物などの極性が低い側鎖を有する粘接着樹脂、シリコーン系粘接着剤樹脂などが挙げられる。
【0160】
アルキルペンダント系化合物としては、例えば、長鎖アルキルアクリレート重合物や長鎖アルキル変性高分子などが挙げられる。長鎖アルキルアクリレート重合物の具体例としては、例えば、炭素数12以上の長鎖アルキルアクリレート、例えばステアリルアクリレートと、皮膜形成成分としてのブチルアクリレートやアクリロニトリルと、テープ支持体への密着性を付与する官能基成分としてのアクリル酸や無水マレイン酸とを共重合したものなどが挙げられる。長鎖アルキル変性高分子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコールなどの重合度の高いポリマーに対して塩化アルキロイルやアルキルイソシアネートなどの長鎖アルキル成分をペンダント化したものなどが挙げられる。
【0161】
フッ素置換アルキルペンダント系化合物としては、例えば、CF基やCH基を含む(メタ)アルキルアクリレートなどが挙げられる。また、フッ素置換アルキルペンダント系化合物は、例えば2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレートや2,2,3,3―テトラフルオロペンチルアクリレートと、皮膜形成成分としてのブチルアクリレートやアクリロニトリルと、テープ支持体への密着性を付与する官能基成分としてのアクリル酸や無水マレイン酸とを共重合したものであってもよい。
【0162】
シリコーン系粘接着剤樹脂の具体例としては、例えば、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含む混合物が挙げられる。シリコーンゴムの具体例としては、下記式(1)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーンレジンの具体例としては、下記式(2)で表されるシリコーンレジンが挙げられる。
【0163】
【化22】

【0164】
(上記式(1)中、R及びRのそれぞれは、メチル基又はフェニル基であり、nは5,000〜20,000である。)
【0165】
【化23】

【0166】
(上記式(2)中、R、R及びRのそれぞれは、メチル基又はフェニル基であり、xは2,000〜7,500であり、yは、2,300〜13,500である。)
【0167】
シリコーンゴムは、架橋部を有するものであってもよい。シリコーンゴムの架橋方法は特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物を用いる方法や、ヒドロシリル化反応を用いる方法などが挙げられる。
【0168】
シリコーン系粘接着剤樹脂の溶解度パラメータ(SP値)は、特に限定されないが、例えば6.0〜11.0であることが好ましい。これによれば、極性が低い基板10とガス発生層20との密着強度をより高くすることができる。ここで、溶解度パラメータ(SP値)とは、物質の凝集エネルギーの平方根であり、樹脂の溶剤への溶解性や樹脂同士の相溶性あるいは密着性の指針となる。
【0169】
また、基板10の極性が低い場合には、粘接着剤樹脂にシランカップリング剤を含有させてもよい。粘接着剤樹脂にシランカップリング剤を含有させた場合においても同様に、極性が低い基板10とガス発生層20との密着強度を高めることができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトシキシラン等のビニルシラン化合物、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、3−メタクリロキシプロピル」メチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロシラン化合物、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物などが挙げられる。
【0170】
また、基板10の極性が低い場合は、基板10とガス発生層20との間に密着層を設けてもよい。これにより、基板10とガス発生層20との密着強度を高めることができる。具体的には、例えば、実質的に有機シロキサン化合物からなる基板10と、アクリル系粘接着剤を含むガス発生層20とを用いる場合は、基板10とガス発生層20との間に、実質的にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなる密着層を設けることが好ましい。
【0171】
なお、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、バインダー樹脂に、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の架橋剤を適宜配合してもよい。また、バインダー樹脂に、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0172】
なお、ガス発生層20は、例えば、1又は複数のフィルムにより構成されていてもよい。すなわち、基板10上に成膜されることでガス発生層20が形成されていてもよく、また基板10にフィルム状のガス発生層20が貼付されていてもよい。
【0173】
バリア層21は、ガス発生層20の基板10側とは反対側の表面に設けられている。バリア層21は、ガス発生層20において発生したガスがバリア層21側に流出することを抑制するためのものである。このため、バリア層21は、ガス発生層20において発生するガスを透過させにくいものであることが好ましく、ガス発生層20において発生するガスを実質的に透過させないものであることが好ましい。
【0174】
また、バリア層21は、ガス発生層20が光照射によってガスを発生させるものである場合は、光を透過させるものであることが好ましい。
【0175】
バリア層21は、例えば樹脂製の膜、フィルム又は基板、もしくはガラス製の膜、フィルム又は基板であってもよい。バリア層21の材質としては、例えば、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びガラスなどが挙げられる。
【0176】
なお、バリア層21は、ガス発生層20の上に成膜することで形成されてもよい。また、ガス発生層20の上に、フィルム状のバリア層21が貼付されていてもよい。若しくは、バリア層21上に予めガス発生層20を成膜しておき、その後、ガス発生層20のバリア層21とは反対側の表面を基板10に貼付してもよい。この場合に、ガス発生層20の成膜方法は特に限定されない。例えば、塗工や押し出し成形によりガス発生層20を成膜してもよい。
【0177】
また、バリア層21のガス発生層20側の表面は、アンカー処理されていることが好ましい。バリア層21のガス発生層20側の表面にアンカー処理を施しておくことによって、バリア層21とガス発生層20との間でガスが発生したり、発生したガスがバリア層21とガス発生層20との間の隙間に溜まったりすることを抑制することができる。従って、バリア層21とガス発生層20とが剥離することを抑制することができる。アンカー処理の方法は、上述した方法と同じ方法を用いることができる。
【0178】
なお、バリア層21の層厚は、特に限定されないが、10μm〜100μmであることが好ましく、25μm〜75μmであることがさらに好ましい。
【0179】
以上説明したように、本実施形態では、マイクロ流路14の開口14aを覆うようにガス発生層20が設けられている。このため、ガス発生層20に外部刺激が付与されることによりガス発生層20において発生したガスがマイクロ流路14に供給される。このため、例えば、特許文献1に記載のマイクロポンプシステムのように、マイクロポンプ室を設ける必要がない。従って、本実施形態によれば、マイクロポンプシステム2、ひいてはマイクロ流体デバイス1をより小型化することが可能となる。
【0180】
また、マイクロ流体デバイス1では、マイクロポンプ室を基板内に形成する必要がなく、単にガス発生層20を形成すればよいため、特許文献1に記載されたマイクロ流体デバイスよりもさらに容易に作製することができる。特に、ガス発生層20としてガス発生フィルムを使用する場合は、さらに作製が容易となる。
【0181】
さらに、本実施形態では、開口14aの開口面積を調節することによっても、マイクロ流路14に供給されるガスの量を調節することも可能である。
【0182】
本実施形態では、ガス発生層20の基板10とは反対側の表面にバリア層21が設けられている。このため、ガス発生層20において発生したガスが効率的にマイクロ流路14に供給される。従って、マイクロ流路14において、高いガス圧を容易に得ることができる。
【0183】
また、本実施形態では、ガス発生層20にバインダーが含有されている。このため、ガス発生層20に種々の機能を付与することができる。例えば、バインダーとして粘接着剤樹脂を含有させることによって、ガス発生層20と基板10との粘接着性を高めることができる。このため、例えば、ガスが発生したときにおけるガス発生層20の基板10からの剥離を抑制することができる。従って、マイクロ流路14におけるガス圧をより高くすることができる。
【0184】
特に、バインダーとして外部刺激によって硬化しない粘接着剤樹脂を含有させることによって、ガス発生層20に対して外部刺激の付与が開始された後においても、ガス発生層20の基板10に対する高い粘接着性を維持することができる。従って、マイクロ流路14におけるガス圧をさらに高くすることができる。
【0185】
以下、本発明を実施した好ましい形態のさらなる例について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0186】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、マイクロ流体デバイス1にひとつのガス発生部3のみが形成されている例について説明した。但し、本発明において、図2に示すように、ガス発生部3は複数形成されていてもよい。言い換えれば、マイクロ流路14は複数設けられていてもよい。この場合において、ガス発生層20は、複数のガス発生部3に共通してひとつのみ設けてもよい。
【0187】
本実施形態のように、複数のガス発生部3がマトリクス状に形成されている場合において、ガス発生層20が光照射によりガスを発生させるものである場合は、平面視において、隣接する開口14a相互間に、ガス発生層20に照射される光23を遮光する1又は複数の遮光層22を設けてもよい。
【0188】
この遮光層22を設けることによって、ガス発生層20の各開口14aに対応する部分への光照射の制御が容易となる。具体的には、例えば、遮光層22が設けられていない場合は、ガス発生層20の隣接する複数の開口14aに対応する部分の全体に光が照射されてしまう虞がある。よって、ガス発生層20のうち、ひとつの開口14aに対応する部分にのみ光照射することが困難である。それに対して、本実施形態では、ガス発生層20の隣接する開口14aに対応する部分相互間が遮光層22により区画されている。このため、ガス発生層20のある特定の開口14aに対応する部分に対して照射しようとした光が、ガス発生層20の上記特定の開口14aに隣接する開口14aに対応する部分に対して照射されることが抑制される。このため、各ガス発生部3を独立して制御することが容易となる。
【0189】
遮光層22は、各開口14aに対応する部分に開口又は光透過部が形成されたものであることが好ましい。換言すれば、平面視において、ガス発生層20の各開口14aに対応する部分が遮光層22において相互に隔離されていることが好ましい。ガス発生層20のある特定の開口14aに対応する部分に対して照射しようとした光が、ガス発生層20の上記特定の開口14aに隣接する開口14aに対応する部分に対して照射されることをより効果的に抑制することができるからである。
【0190】
本実施形態は、隣接する開口14a相互間の距離が短いときに特に有効である。言い換えれば、本実施形態によれば、多数のガス発生部3を密集して配置することも可能となる。
【0191】
(第3の実施形態)
上記第2の実施形態では、ガス発生層20は、複数のガス発生部3に共通してひとつのみ設けられている例について説明した。但し、図3に示すように、ガス発生層20を複数のガス発生部3のそれぞれに対して別個に設けてもよい。この場合、ガス発生層20と基板10とが必ずしも貼付されている必要はない。例えば、隣接するガス発生層20の間においてバリア層21と基板10とを接着させ、バリア層21を基板10に対して固定すると共に、バリア層21と基板10との間にガス発生層20を配置してもよい。
【0192】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。図4に示すように、本実施形態では、バリア層21は、ガス発生層20の外周に位置する外周部21aにおいて、全周にわたって基板10に接合されている。これにより、基板10とバリア層21との間に実質的に気密された空間が形成されている。そして、その気密空間内にガス発生層20が配置されている。
【0193】
ガス発生層20は、基板10に粘着又は接着されていてもよく、基板10に粘着及び接着されていなくてもよい。ガス発生層20には、連通孔20aが形成されている。連通孔20aは、開口14aに連通している。
【0194】
例えば、連通孔20aが形成されていない場合は、ガス発生層20の基板10とは反対側の表面において発生したガスは、ガス発生層20の内部を経由してマイクロ流路14に供給される。このため、マイクロ流路14に対するガスの供給効率が低くなる傾向にある。それに対して、本実施形態では、連通孔20aが形成されているため、ガス発生層20の基板10とは反対側の表面において発生したガスも連通孔20aを介してマイクロ流路14に供給される。このため、マイクロ流路14に効率的にガスを供給することができる。従って、例えば、ガス発生層20を小さくすることも可能となる。
【0195】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に係るマイクロ流体デバイスの断面図である。図5に示すように、ガス発生層20には、開口14aに接続された1又は複数の溝20bが形成されていてもよい。これによれば、ガス発生層20の開口14aから離れた部分において発生したガスも効率的にマイクロ流路14に供給することが可能となる。
【0196】
例えば、図6に示すように、開口14aに対応する部分から放射状に延びるように複数の溝20bを形成することが好ましい。これによれば、ガス発生層20のより広域な部分からマイクロ流路14に対してガスを供給することが可能となるからである。
【0197】
また、図7に示すように、放射状に形成された複数の溝20bを連通させる輪帯状又は馬蹄状の溝をさらに形成してもよい。なお、本発明において、溝20bの形成する本数、形状は何ら限定されない。
【0198】
なお、溝20bの替わりに、ガス発生層20を厚さ方向に貫通する開孔を形成してもよい。
【0199】
また、溝20bや開孔を形成する替わりに、ガス発生層20の基板10側の表面を粗面としてもよい。その場合であっても、ガス発生層20の開口14aから離れた部分において発生したガスも効率的にマイクロ流路14に供給することが可能となる。
【0200】
また、上記第5の実施形態のように、ガス発生層20に溝20bを形成する替わりに、図8及び図9に示すように、基板10の表面10aに溝10cを形成してもよい。さらに、ガス発生層20に溝20bを形成すると共に、基板10の表面10aに溝10cを形成してもよい。
【0201】
(実験例1)
2−エチルへキシルアクリレート96.5重量部、アクリル酸3重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部のアクリル系共重合体(重量平均分子量70万)を用意した。
【0202】
前記アクリル系共重合体100重量部と、溶剤としての酢酸エチル200重量部と、架橋剤としてのイソシアネート系化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL45)5重量部とを混合し、粘接着剤樹脂バインダー溶液を調製した。
【0203】
前記粘接着剤樹脂バインダー溶液に、光酸発生剤としての2,3,4,4’−テトラヒドロキシべンゾフェノンと、酸刺激ガス発生剤としての炭酸水素ナトリウムとを配合し、光応答性ガス発生材料とした。なお、2,3,4,4’−テトラヒドロキシべンゾフェノンと、炭酸水素ナトリウムとのそれぞれの配合量は、アクリル系共重合体100重量部に対して35重量部、75重量部とした。
【0204】
前記光応答性ガス発生材料を、アンカー処理が施された厚さ50μmのPETフィルム上にキャストにより塗布した後、乾燥させることにより光応答性ガス発生フィルムを作製した。乾燥後の光応答性ガス発生フィルムの厚みは約30μmであった。
【0205】
(実験例2)
実験例1の粘接着剤樹脂バインダー溶液に、上記光酸発生剤及び酸刺激ガス発生剤に替えて、光ガス発生剤として2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)をアクリル系共重合体100重量部に対して20重量部配合した以外は、実験例1と同様にして、光応答性ガス発生フィルムを作製した。
【0206】
(実験例3)
光ガス発生剤として3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを用いたこと以外は実験例2と同様にして、光応答性ガス発生フィルムを作製した。
【0207】
(評価)
大きさ50mm×50mm、厚さ5mmで中心に直径1mmの貫通孔が形成されたポリメチルメタクリレート(PMMA)製板を用意した。実験例1〜3で得られた各光応答性ガス発生フィルムを、ハンドローラーを用いて、PMMA製板に貼付した。
【0208】
ガスが通過するチューブと、そのチューブの一端に取り付けられたガス量測定用のメスピペットとを備えるガス発生定量測定装置を用意した。そのガス発生定量測定装置のチューブの他端をPMMA製板に形成された貫通孔の光応答性ガス発生フィルムとは反対側の開口に接続した。なお、ガス発生定量測定装置は、チューブの一方から水を流し込み、メスピペットの基準線まで水を満たした状態を初期状態として、この初期状態からのフォルムから発生したガスによる水位変化を計測するものである。
【0209】
次に、光応答性ガス発生フィルムに、高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を光照射強度24mW/cm(365nm)で照射したときのガス発生量を測定した。また、紫外線を照射してから200秒経過後に、光酸発生剤と酸刺激ガス発生剤との合計量、及び光ガス発生剤1gあたりのガス発生量を測定し、下記の評価基準で評価した。
【0210】
〔ガス発生量の評価基準〕
◎:光ガス発生剤1gあたりのガスの発生量が1.5mL以上
○:光ガス発生剤1gあたりのガスの発生量が1.0mL以上、1.5mL未満
△:光ガス発生剤1gあたりのガスの発生量が0.5以上、1.0mL未満
×:光ガス発生剤1gあたりのガスの発生量が0.5mL未満
結果を以下に示す。
【0211】
〔ガス発生量評価結果〕
実験例1:○
実験例2:◎
実験例3:◎
【0212】
(変形例3〜12)
上記実施形態では、1つのマイクロ流路14に対して開口14aが1つだけ形成されている例について説明した。ただし、本発明はこの構成に限定されない。例えば、1つのマイクロ流路14に対して複数の開口14aが形成されていてもよい。また、基板10には、相互に接続された複数のマイクロ流路14が形成されていてもよい。図10〜図22に、マイクロ流路14の形成例を示す。
【0213】
図10及び図11に示す例では、1つのマイクロ流路14に対して、2つの開口14aが形成されている。そして、マイクロ流路14からのガスを排出するためのガス排出口30がマイクロ流路14の端部に形成されている。
【0214】
図12に示す例では、1つのマイクロ流路14に対して、4つの開口14aが直列に形成されている。ガス排出口30は、マイクロ流路14の隣接する開口14a相互間の部分に形成されている。
【0215】
図13に示す例では、1つのガス排出口30に対して、複数のマイクロ流路14が並列に接続されている。具体的には、1つのガス排出口30に対して、3つのマイクロ流路14が並列に接続されている。各マイクロ流路14には、それぞれ複数の開口14aが形成されている。
【0216】
図14に示す例では、1つのガス排出口30に対して、4つのマイクロ流路14が接続されている。複数のマイクロ流路14の内の少なくともひとつは、枝分かれ状に形成されている。
【0217】
図15に示す例では、複数の開口14aが、マイクロ流路14によって網目状に接続されている。
【0218】
図16に示す例では、網目状に形成されたマイクロ流路14の中央部にガス排出口30が形成されている。
【0219】
図17及び図18に示す例では、1つのガス排出口30に対して、ガス排出口30から放射状に延びる複数のマイクロ流路14が接続されている。図17に示す例では、各マイクロ流路に1つの開口14aが形成されている。そして、各マイクロ流路が相互に接続されている。図18に示す例では、各マイクロ流路14に、複数の開口14aが、等間隔に、直列に形成されている。
【0220】
図19及び図20に示す例においても、1つのガス排出口30に対して、ガス排出口30から放射状に延びる複数のマイクロ流路14が接続されている。図19では、各マイクロ流路14は、ガス排出口30に接続された主流路14bと、副流路14cとを備えている。副流路14cは、主流路14bに並列に接続されている。複数の副流路14cのそれぞれにも、開口14aが形成されている。図20に示すように、1つのガス排出口30に接続された複数のマイクロ流路14からなるマイクロ流路群31が、基板10に複数形成されている。
【0221】
図21及び図22に示す例では、相互に接続された複数のマイクロ流路14を含むマイクロ流路組32が1つのガス排出口30に対して複数接続されている。そして複数のマイクロ流路組32からなるマイクロ流路群31が、基板10に複数形成されている。
【0222】
以上のように、1つのマイクロ流路14に対して複数の開口14aを形成したり、1つのガス排出口30に対して複数のマイクロ流路14を接続したりすることにより、1つのガス排出口30から排出されるガスの量を多くすることができ、排出ガス圧力を高くすることができる。また、1つのガス排出口30から、長期間にわたってガスを排出させることも可能となる。
【0223】
特に、例えば、図19に示す例のように、開口14aを密集して配置することにより、小型でありつつ、高い出力及び長期間にわたるガス排出が可能なマイクロ流体デバイスを実現することが可能となる。
【0224】
なお、図19に示す例のように、開口14aが密集して配置されている場合は、複数のLEDが規則的に配列されたLEDアレイを光源として用いることが好ましい。
【0225】
また、ひとつのガス排出口30に接続された1または複数のマイクロ流路14に形成された複数の開口14aに対して光を照射するタイミングは、相互に等しくてもよいし、異なっていてもよい。複数の開口14aに対して光を照射するタイミングを相互に異ならせることによりガス排出が可能な期間をより長くすることができる。
【符号の説明】
【0226】
1 …マイクロ流体デバイス
2 …マイクロポンプシステム
3 …ガス発生部
10 …基板
10a…第1の主面
10b…第2の主面
10c…溝
11 …第1の基板
12 …第2の基板
13 …第3の基板
14 …マイクロ流路
14a…開口
14b…主流路
14c…副流路
20 …ガス発生層
20a…連通孔
20b…溝
21 …バリア層
21a…外周部
22 …遮光層
23 …光
30 …ガス排出口
31 …マイクロ流路群
32 …マイクロ流路組
33,34…粘接着剤層
35 …貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生部を有するマイクロ流体デバイスであって、
前記ガス発生部は、
第1の主面と第2の主面とを有し、前記第1の主面に開口するマイクロ流路が形成された基板と、
前記基板の第1の主面に、前記開口を覆うように配置され、外部刺激を受けることによりガスを発生させるガス発生層と、
を有し、
前記ガス発生層の前記基板側の表面及び前記基板の第1の主面のうちの少なくとも一方は、粗面である、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記ガス発生層は、前記第1の主面に貼付されているガス発生フィルムである、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記ガス発生部は、前記ガス発生層の前記基板側とは反対側の表面に設けられたバリア層をさらに有する、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記バリア層は、ガス発生層を覆うように配置されており、前記ガス発生層の外周全体にわたって前記基板に接合されている、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記バリア層は、ガラス製又は樹脂製の膜又は基板である、請求項3または4に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記基板には、前記マイクロ流路が複数設けられており、
前記ガス発生層は、光が照射されることによりガスを発生させるガス発生剤を含み、
平面視において、隣接する前記マイクロ流路の開口相互間に設けられ、前記ガス発生層を遮光する遮光層をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記ガス発生層は、前記基板に貼付されており、前記ガス発生層の前記基板側の表面及び前記基板の第1の主面のうちの少なくとも一方には、前記開口に接続された溝又は孔が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記溝又は孔は、前記開口から前記基板の板面方向に延びている、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記溝又は孔が複数形成されており、
前記複数の溝又は孔は、前記基板の板面方向において、前記開口から放射状に延びている、請求項7又は8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記ガス発生層は、外部刺激を受けることによりガスを発生させるガス発生剤を含む、請求項1〜5,7〜9のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記ガス発生剤は、アゾ化合物及びアジド化合物のうちの少なくとも一方を含む、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記ガス発生層は、バインダー樹脂をさらに含む、請求項10または11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記バインダー樹脂は、粘接着剤樹脂を含む、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記マイクロ流路には、前記第1の主面に対する開口が複数形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
前記基板には、前記マイクロ流路が複数形成されており、前記複数のマイクロ流路は、相互に接続されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2010−105159(P2010−105159A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262014(P2009−262014)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【分割の表示】特願2009−511288(P2009−511288)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】