マイクロ流体装置
本発明は、一端部で密閉領域(6)に接続する少なくとも一つのマイクロチャネル(2)を備えたマイクロ流体装置(1)に関するもので、密閉領域に接続しており、マイクロチャネルに接触することなくその間に流体を排出することの出来る入口回路(8)と出口回路(9)とをさらに備え、回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの端部の圧力を、マイクロチャネルの他端部の圧力とは独立に変更するよう制御可能であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流体装置とその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物分子またはマクロ分子の分析、バイオテクノロジー、医学的応用、化学合成、またはマイクロエレクトロニクスの分野などの技術分野においては、1マイクロリットル程度、またはそれ以下の量の製品サンプルを処理し、分析できる必要がある。
【0003】
それにより、高価な少量のサンプルへの作業の実行が可能になり、使用する消耗品(キャリア、ラベル等)の量を削減でき、多数のサンプルに対して同時に作業することが可能になり、物質や上昇させる熱の交換も可能で、輸送時間が短縮される。
【0004】
「マイクロ流体」装置、あるいは「マイクロトータル分析システム(microTAS)」として知られる装置が、現在開発されている。これらの装置は、一般的にマイクロチャネルを備え、その中でサンプルに対して各種の作業を自動的に行うことができる。
【0005】
例として、マイクロ流体診断装置は、マイクロチャネル内に分配された微量の血液等のサンプルに対して、サンプルの前処理(例えば、細胞溶解、DNA抽出またはタンパク質抽出)、必要ならば濃縮または分離(クロマトグラフィ、電気泳動)を実施し、それに続いて(蛍光、ルミネセンス、プラスモン共鳴による)光学型、電気または(伝導、周期的電気測定による)電気化学型、または(電界効果トランジスタ、バイオセンサ、振動マイクロメカニカル構造体等による)電子型等の各種の技術を用いて所定の分子を検出することを可能にする。
【0006】
DNA解析、細胞選別、化合物の合成、一つまたは複数の種についての製品の濃縮、成分の冷却または加熱のための熱伝導作用、核酸増幅反応等への応用は、このようなマイクロ流体装置を用いることによって可能である。
【0007】
マイクロ流体装置は、一般的に、エングレーヴィング、成型、加熱圧縮、または特にマイクロエレクトロニクスによるその他の方法によって作成されたほぼ平面状の支持体を備えている。このような装置を作成する方法の例は、M.Madouの"Fundamentals of Microfabrication" と題した1997年のCRC Pressの著作に記載されている。代案として、マイクロ流体装置は非平面の支持体を備え、例えば、薄い可撓性のフィルム内に組込んでもよい。代案として、マイクロ流体装置は、ほぼ円筒状のマイクロチャネルを備えていても良い。
【0008】
「マイクロ流体装置」という表現は、少なくとも一つのマイクロチャネル内の物質輸送を伴う装置を意味するために用いられる。「マイクロチャネル」という表現は、その長さの少なくとも一部にわたって、一方の端部から他方の端部までの直線で測定した、少なくとも1ヶ所の寸法が、1ミリメートルを有意に下回る断面を有するチャネルを意味することを意図している。
【0009】
マイクロチャネルは、例えば、比表面積は、1mm―1より有意に高く、好適には4mm―1より高く、例えば、10mm―1、さらには1μm―1であっても良い。
【0010】
「マイクロチャネル」は、ナノチャネルも含む。
【0011】
マイクロチャネルの断面は、一定または不定でもよい。断面は、例えば、円形、長方形、正方形、または皿型であっても良い。
【0012】
断面が長方形のとき、マイクロチャネルは、例えば、厚みが10μmと100μmの間、幅が20μmと1 mmの間、特に、幅は20μmと500μmの間であっても良い。
【0013】
一般的に、マイクロチャネルの長さは、1 mmと50cmの間、特に1cmと10mの間、例えば2cmであってよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
マイクロチャネルの断面が小さい場合、多数の問題が発生し、多くの場合、具体的には濡れ、毛細管力、または高い水力学的抵抗に関連した困難な問題である。
【0015】
密閉装置において、サンプル内に発生することのある気泡は、低振幅温度変化の結果として派生流を発生させることがある。
【0016】
例えば、一つまたは複数のタンクと連通している開放装置において、メニスカス、蒸発、レベル差などが存在する場合も、派生流の発生につながることがある。
【0017】
この派生流を回避するために、マイクロ流体装置内にマイクロ弁を組込むことができる。しかしながら、この解決法は製造の観点からは複雑であり、上述の短所、特に気泡に関係する諸問題を完全に解決することはできない。
【0018】
マイクロ流体装置に関係するもう一つの問題は、良好に制御された流れを保証することである。
【0019】
米国特許明細書US 6,012,902は、電界電気浸透を用いるマイクロ流体装置を開示している。このような取り組みの一つの限界は、それが伝導性の液体にしか適さないこと、またマイクロチャネルの表面電荷にきわめて敏感なことであり、表面電荷は、特に生物分子で作業する場合には、時間が経つと変化することがある。
【0020】
マイクロポンプを組込んだ装置も、公知である。例えば米国特許明細書US 6,408,878は、マイクロ流体装置内に組み込まれた膜ポンプを開示している。米国特許明細書US 6,296,020は、マイクロチャネル内で受動ポンプを用いることを提案している。これらの装置は、製造が比較的複雑であり、壊れやすく高価である。
【0021】
ポンピングを外部で行う装置も提案されている。例えば、注射器型マイクロポンプに関して言及することもできるが、これらを用いて少量のものを制御するのは困難であり、発生する流量は多すぎるか、ヒステリシスによる損失を受けることになる。
【0022】
蠕動ポンプの使用も提案されたが、これらは脈動を引き起こすことがあり、用途によってはきわめて厄介である。
【0023】
流量制御は静水圧を用いて行っても良い。しかしながら、この方法では幅広い圧力に対して容易に対応できない。
【0024】
米国特許明細書US 2002/033193は、マイクロチャネルに液体が満たされている場合に、空気が逃げるのを防止する弁を用いて流体の運動を停止し、マイクロチャネルからの空気の運動を制御して、チャネルを遠隔で開閉することを提案している。気体をマイクロチャネル内に封入した全ての装置と同様に、温度の僅かな変動により体積は大きく変化し、派生流を引き起こすことがある。
【0025】
国際特許明細書WO 01/04909においては、マイクロ流体装置のチャネルと連通している一つまたは複数の閉鎖リザーバ内に含まれる気体中に、圧力パルスが発生する。蠕動ポンプの場合と同様に、これが流れの中に厄介なパルスを発生させる。さらに、マイクロチャネルを通しての高い流体力学マイクロチャネルのために、平衡に達するまでの時間は比較的長く、それが流れの動的制御を困難にしている。最後に、気体温度の僅かな変動も圧力変化を生じることがあり、それが流れ特性の変化を伴い、極めて良好な温度制御をされた装置を備えることが必要になり、それは複雑であると同時にコスト高である。
【0026】
国際特許明細書WO 01/88204は、一端部が二つの側面エアダクトと連通している反応チャンバ内に開口し、その一方が正圧調整装置に接続され、他方が負圧調整装置に接続されるマイクロチャネルから成るマイクロ流体回路を開示している。したがって、この側面ダクトを流れる空気は反応チャンバ内での反応から生じる気体の排出を可能にする。この装置は、気体をマイクロ流体装置内に循環させることになる。先に述べたように、マイクロ流体装置が液体を含むさらに一般的な場合、その結果メニスカスが存在することになり、気泡の発生を助長して制御を複雑にし、プロセスの反復性とマイクロチャネル内の輸送作業に悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上述の欠点の全てまたは一部を解決し、特に反復可能で制御された流れを可能にするマイクロ流体装置の提案を目的とする。
【0028】
より具体的には、本発明は、マイクロチャネルの端部の少なくとも一つに対して加圧または減圧することにより、マイクロチャネル内に流れを生じさせるマイクロ流体装置に関する。
【0029】
したがって、その一つの側面によれば、本発明の主題は、一端部がチャンバに接続された少なくとも一つのマイクロチャネルを備えたマイクロ流体装置において、チャンバに接続された入口回路と出口回路とをさらに備え、両回路の間にマイクロチャネルと接触することなしに流体の流れを確立させることが可能であり、入口回路と出口回路の少なくとも一方が制御可能であって、マイクロチャネルの前記端部の圧力を、特にマイクロチャネルの他の端部の圧力とは独立して、変更すること特徴とする装置である。
【0030】
本発明は、マイクロチャネルの一端部における圧力に対する、したがって、マイクロチャネル内の流速に対する正確な制御を、入口回路および出口回路の少なくとも一方を制御することによって可能にし、反復自在な流れを実現することを可能にする。
【0031】
さらに、本発明にかかる装置において、マイクロチャネル内の流れは、従来のマイクロ流体装置と比較して比較的短い特定の時間後に停止させてもよく、それによってマイクロチャネル内の流れに対するより優れた動的制御が可能になる。
【0032】
本発明の一つの実施態様において、入口回路と出口回路との間の前述の流体の流れは、チャンバ内だけに生じさせることもできる。
【0033】
したがって、一つの実施態様において、入口回路および出口回路との間をチャンバを通って、マイクロチャネル内に含まれる製品と異なる流体を循環させることができる。
【0034】
有利には、入口回路および出口回路との間を循環する流体は気体であり、マイクロチャネル内に含まれる製品は液体である。
【0035】
本発明は、チャンバ内に含まれる気体の圧力が液体によって結合されているマイクロチャネルに伝達されるので、気体がマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークに入ることなしに、マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の液体流れの制御に、特に適している。
【0036】
入口回路および出口回路は、上述の流体の流れがチャンバ内に発生するようにチャンバ内に直接開口しても良い。代案として、入口回路および出口回路はチャンバ内に直接開口せず、例えば、単一のダクトを介してこのチャンバに接続しても良く、したがって前述の流体の流れは、チャンバ内に発生しない。
【0037】
このチャンバは、入口回路および出口回路がダクトを介して容器内に開口している、比較的単純な形状の容器によって画定しても良い。しかしながら、このチャンバは、複雑で分岐した形状を取ることもできる。このチャンバは、一方では、流体入口オリフィスに、他方で、この流体の出口オリフィスに接続された閉鎖容積を画定してもよく、この閉鎖容積も他のマイクロチャネルの少なくとも一つの端部に接続されている。入口オリフィスと出口オリフィスとの間を流れる流体の圧力は、ほぼ瞬間的に平衡に達することができる。「ほぼ瞬間的に」という表現は、マイクロチャネル内の製品輸送が調整される時間定数と比較して迅速に平衡に達することを意味する。
【0038】
本発明の好適な実施態様によれば、装置の一つまたは複数のマイクロチャネルは、完全に液体で満たされている。それぞれのマイクロチャネルは、一端部において、ダクトを介して関係するチャンバに接続され、それぞれのマイクロチャネルと対応するダクトは、一つまたは複数の液体で完全に満たされる。このようにして気体がマイクロチャネル内に運び込まれるリスクは制限されるが、気体が侵入した場合には厄介な気泡が形成されることがある。
【0039】
チャンバを関係するマイクロチャネルに接続するダクトは、可撓性でも剛性でも良い。
【0040】
このダクトは、その全長の少なくとも一部について、マイクロチャネルの断面よりも10n倍大きな断面を有してもよく、その際n>1、好適にはn>2である。
【0041】
このダクトは、チャンバとそれが接続されるマイクロチャネルの端部との間で、断面が徐々に小さくなるようにしても良い。
【0042】
マイクロチャネルは、例えば、円錐台形の部分を含んでいても良く、その部分は、適切ならば、チャンバの底部を画定する。
【0043】
マイクロ流体装置は、その厚みの中に一つまたは複数のチャンバが、少なくとも部分的に形成されるプレートを含んでもよい。本発明の一つの実施態様において、これらのチャンバは、特にプレートに固定されたダクトを介してマイクロチャネルの一方の端部とそれぞれ連通している。
【0044】
それぞれのチャンバへの液体製品の供給は、ダクト内に導入され、その端部内に開口している管によって提供することができる。それによって、マイクロチャネル内に気泡が形成されるリスクを低減することが可能になる。
【0045】
一つまたは複数のマイクロチャネルは、具体的には、一方は一つまたは複数のマイクロチャネルの底部を画定し、他方は一つまたは複数のマイクロチャネルの頂部壁を画定する重ね合わされた二枚のプレートを含む支持体上、またはその中に、例えば、エッチング、成型、押出、射出、熱間または冷間圧縮によって作製してもよい。
【0046】
装置が、プレート上に少なくとも部分的に作製された一つまたは複数のチャンバを備えている場合、装置の製造を容易にするために、好適には、このプレートは関係する一つまたは複数のマイクロチャネルを画定するプレートから分離される。
【0047】
入口回路および出口回路の少なくとも一方は、関係するチャンバの底部から好適にはゼロでない距離だけ離れて開口し、それにより、その圧力が入口回路および出口回路を用いて制御される気体をその上に配した特定の水頭をチャンバ内に有することが可能になる。
【0048】
それぞれのチャンバは10mm3より大きい、例えば、1cm3の容積を有してもよい。
【0049】
入口と出口回路との間の流体、特に気体の流れはほぼ連続である、すなわち経時的にほぼ一定であり、短時間脈動の影響を受けない。
【0050】
例えば、マイクロチャネルまたはチャンバの充填等のワンオフ操作のために一時的に流れを遮断することも可能である。
【0051】
有利には、入口回路および出口回路の少なくとも一方における、特に出口回路における流体学的マイクロチャネル損失は、マイクロチャネルにおける損失よりもはるかに低く、好適には少なくとも10倍低く、さらに好適には10n倍低く、ここでn>2である。
【0052】
本発明の一つの実施態様において、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、例えば、気体室、ポンプ、膨張弁等の正圧または負圧源を備えている。代案として、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、外気と連通し、この場合、外気も圧力源を構成すると考えられる。
【0053】
入口回路および出口回路と結合された圧力源は、それぞれ圧力が異なり、出口回路の圧力を入口回路の圧力よりも低くすることができる。出口回路とマイクロチャネルの端部の一つは共通圧力源、具体的には外気と連通することができる。
【0054】
好適には、入口回路および出口回路の少なくとも一方は、段階的に制御可能な弁、具体的にはソレノイド弁またはニードル弁を備えている。
【0055】
本発明の一つの実施態様において、入口回路および出口回路のそれぞれは、結合された弁を備えている。
【0056】
ソレノイド弁を用いて入口回路および出口回路を制御することにより、装置に手動で介入することなしに、特に、必要に応じて装置の動的特性を適合させることが可能になる。
【0057】
有利には、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、流れまたは圧力に関係する情報項目の関数として、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路を制御することができる動的調整システムに接続されている。
【0058】
情報項目は例えば、圧力センサ、流量、または流量センサによって配信することができる。センサはマイクロチャネルに、チャンバ内または入口回路および出口回路内に配置してもよい。
【0059】
上述の情報項目は特にセンサのカスケードによって、とりわけ異なる動作範囲を有する圧力または流速センサによって導出することが可能であり、とくにセンサが一つの範囲から別の範囲に切り替え可能なので、広範囲にわたって圧力または流速を測定することが可能になる。
【0060】
他のタイプのセンサ、例えば、生物種または分子検出器、蛍光、電気化学、吸収、プラスモン共鳴、周期的電流測定、電子、または電気検出器、またはバイオセンサなども使用できる。
【0061】
調整システムは入口回路および出口回路のソレノイド弁を制御するようにとくに設計しても良く、コンピュータなどの処理ユニットを備えることもできる。
【0062】
これによって、高性能自動化が使用でき、例えば、人の介入なしに、製品サンプルおよび/または分離グリッドの交換や分離、洗浄作業、製品交換作業、サンプル導入、および化学反応などの多数の作業を一緒にまとめることが可能になる。
【0063】
これによって、例えば、装置内で使用される流体または製品の挙動を測定する一つまたは複数のセンサからのフィードバック効果によって、その場に設置されるソレノイド弁の自動調整も可能になる。
【0064】
入口回路および出口回路は画像分析によって監視することもできる。特に、マイクロチャネル内の流れはカメラによって観察可能であり、例えば、マイクロチャネル内の全ての流れを停止したり、製品流速を測定するために、入口回路および出口回路は、マイクロチャネル内の製品の観察された運動の関数として制御することもできる。
【0065】
本発明の一実施形態において、マイクロチャネルはそれぞれの端部においてチャンバに接続され、それぞれのチャンバは入口回路および出口回路に連通し、これらの回路の間で流体の流れを確立させることができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、装置は複数個のマイクロチャネルを備え、そのうち少なくとも二つはそれぞれチャンバの一端部に接続され、それぞれのチャンバは入口回路と、および出口回路と連通し、これらの回路の間で流体の流れを確立させることができ、入口回路および出口回路の少なくとも一方は関連するマイクロチャネルの端部の圧力を変更するために制御することができる。
【0067】
上述のマイクロチャネルの少なくとも二つは互いに接続することが可能である。
【0068】
本発明により、接続されたマイクロチャネル内の流れをすばやく変更することができるので、例えば、一つのチャネル内に含まれる製品のフラクションxを第一のマイクロチャネルに送り、フラクション(1−x)を第二のマイクロチャネルに送り、フラクションxを0と1の間で変化させるために製品を比較的容易に分配することが可能である。
【0069】
装置は、とくに電気泳動または電気クロマトグラフィを実施しようとするとき、少なくとも一つの電極を、また好適には少なくとも二つの電極を備えることができる。
【0070】
チャンバがマイクロチャネル内に分配しようとする製品を含んでいるとき、電極は好適にはこの製品と接触して配置され、製品は導電性液体を介してマイクロチャネルに連通する。
【0071】
本発明は、例えば、診断方法、マイクロ流体装置内の製品に含まれる生物種の分析、精製または取扱の方法、など多数の用途に使用され、例えば、前記の生物種のためイオン、原子、分子、マクロ分子、核酸などの生物学的マクロ分子、ペプチド、蛋白質または蛋白質集合体、オリゴ糖、グリコペプチド、抗体、ハプテン、或いは代わりに細胞小器官、細胞、有機の、無機のまたは有機無機の粒子、ラテックス、ミセル、ベシキュールまたはリポソームを含むことが可能である。
【0072】
本発明はこのように、各種化学の分野または交配若しくはアフィニティ分析の分野において使用される。
【0073】
本発明はまた、マイクロ流体装置に含まれる生物種から新たな種を合成するためおよび/または製品または生物種の物理的または化学的特性を変更するためにも使用される。
【0074】
本発明は、代案としてハイスループットスクリーニングまたは薬剤調査のため使用される。
【0075】
本発明は、代案として人工香味料の生産をすることができる。
【0076】
本発明による装置は、分類、濾過、液体/液体抽出、標本処理、クロマトグラフィ、エレクトロ−クロマトグラフィまたは電気泳動の実行に用いることができる。
【0077】
本発明による装置は、化学反応、生物反応、または酵素反応を実行するため使用することができる。
【0078】
本発明により、例えば、化学反応、状態の変化、例えば電気泳動または電気浸透移動の場合の泡の出現、気化または温度の変化の後など、特にマイクロ流体装置の中にある一定の流体または製品の容積が操作中に変動するとき、マイクロチャネルの中の流量を制御することができる。
【0079】
本発明はまた、非常に多くのマイクロチャネルを並行して使用する場合に裨益する。複雑で嵩張る流量制御システムの使用を避けることが可能になるからである。
【0080】
本発明はまた、単数または複数のマイクロチャネルに含まれる製品に余り粘り気がない場合、または単数または複数のマイクロチャネルが、長さ10cm以下、または長さ5cmなど、比較的短い場合で、圧力の小さい変化の後であっても、派生流が発生し易い場合に有利である。
【0081】
さらに一般的に、本発明は、例えば、二つの非混和性(液体/液体)流体、または高分解能分離に関与する装置においてなど、流量が性能に対して特に重要な場合の、流量の制御に対し特に適している。
【0082】
本発明はまた、マイクロ流体装置の中の熱移転または熱交換のための方法の実施を可能にする。これを可能にするには、第二マイクロチャネルに隣接する第一マイクロチャネル内で、第二マイクロチャネル内の製品を加熱または冷却するための高温または低温の液体を、循環させる。この熱調整は、第一マイクロチャネル内の流量を制御することにより実行.することができる。
【0083】
その別の側面によると、本発明の別の主題は、それぞれの端において、それぞれが入口回路と出口回路に接続されているチャンバと連通する少なくとも一つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置である。その入口回路と出口回路の間では、流体の流れを確立することが出来て、入口回路と出口回路のうち少なくとも一つはマイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができるようにする。
【0084】
その別の側面によると、本発明の別の主題は、一端部でチャンバに接続する少なくとも一つのマイクロチャネルを含む装置であって、チャンバは入口回路と出口回路と連通しており、この回路間では流体の流れが確立し、入口回路と出口回路のうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう漸進的に制御することのできる弁を含んでいることを特徴とする装置である。
【0085】
その別の側面によると、本発明の追加の主題は、流体供給源に接続されており漏洩部が設けてあって流体供給源からの流体がチャンバを出ることのできるチャンバと、それぞれの端部において連通する少なくとも一つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置である。供給源は、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができる。
【0086】
漏洩部は、例えばニードル弁の開口部などを含む、所定断面のオリフィスを用いて形成する。漏洩部は、マイクロ流体装置の特性およびマイクロチャネル内を流れる製品を関数として調節可能であることが有利である。
【0087】
本発明の別の主題は、そのうち少なくとも一つが一端部で、5倍以上、n>1で好適にはn>2とし、好適には数桁(10n)だけマイクロチャネルより大きい容積を有するチャンバに接続されている一つまたは数個のマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置であって、チャンバに接続され、その間に流体の流れが確立される入口回路と出口回路をさらに含み、回路―入口回路と出口回路―のうち少なくとも一方は、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができることを特徴とするマイクロ流体装置である。
【0088】
その別の局面によると、発明のさらなる目的は、その一端部でチャンバに接続している、マイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロチャネルの前記端部の圧力を変更でき、出口回路が圧力溜めから成る圧力源を含むか、または外気等の圧力溜めと直接または間接的に連通していることを特徴とするマイクロ流体回路である。
【0089】
その別の局面によると、発明のさらなる目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロ回路の前記端部の圧力を変更でき、出口回路が、少なくとも製品がマイクロチャネル内を流れている間は圧力をほぼ一定に保つ圧力源を含むことを特徴とするマイクロ流体回路である。
【0090】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であり、装置は、チャンバに接続し、その間に流体の流れが確立できる入口回路および出口回路をさらに含み、少なくとも回路の一つ入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロ回路の前記端部の圧力を変更でき、流体の流れはマイクロチャネル内の製品の流れより極めて速い、好ましくは少なくとも10倍、よりさらに好ましくは、n>2で10n培速い流速を有する。
【0091】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部がチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含み、さらにチャンバに接続し、その間に流体の流れが確立できる入口回路および出口回路を含み、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロチャネルの前記端部の圧力を変更でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−全体、特には出口回路全体での水力学損失が、マイクロチャネルの水力学損失に比べ極めて小さい、よりさらには、n>2で10n培小さいマイクロ流体装置である。
【0092】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−が、マイクロチャネルの前記端部の圧力を、マイクロ回路のもう一方の端部の圧力とは独立に変更できるように制御可能な流体力学的損失を有することを特徴とする、マイクロ流体回路である。
【0093】
発明の別の目的は、マイクロチャネルの一端部に接続できるチャンバを少なくとも一つ含む圧力監視システムであって、それがチャンバに接続している入口回路および出口回路を含み、その間に、マイクロチャネルと接触することのない流体の流れを確立でき、回路−入口回路および/または出口回路−の少なくとも一つを制御してマイクロチャネル端部の圧力を変更できることを特徴とする監視システム。
【0094】
発明の別の目的は、マイクロチャネルの一端部に接続できるチャンバを少なくとも一つ含む圧力監視システムであり、システムはマイクロチャネルがこのシステムにモジュラー形式で接続できるように設計されており、たとえば本システムでは、望ましいマイクロチャネルの数に合わせて選ぶことができる数のモジュールを含むことができる。
【0095】
このシステムはさらに、場合によって、マイクロ流体装置内の圧力以外のパラメータ、例えば電圧を制御するように設計されたモジュールを少なくとも一つ含んでもよい。
【0096】
その別の局面によると、発明の別の目的は、前記目的とは独立にまたは組み合わせて、
−その厚みのある部分の中に、1または複数のチャンバが、少なくとも一部形作られている第一プレート、
−チャンバの少なくとも一つを外部から隔離するように設計された少なくとも一つの密閉部材、
−1または複数のマイクロチャネルを支持する支持体、
を含み、この支持体が特に二枚の重畳プレートを含み、一つは単数または複数のマイクロチャネルの底部を画定し、もう一方がその上壁を画定し、支持体は第一プレートに押付けることができ、それぞれのチャンバは密閉された形でマイクロチャネルの一端部と連通しているマイクロ流体装置である。
【0097】
発明の態様の一つでは、チャンバは、例えば第一プレートに固定している、可撓性ダクトを介してマイクロチャネルの一端部と連通している。このダクトは、第一プレートと支持体とを組み立てた時に、それらの間を密閉ように設計してもよい。
【0098】
その別の局面によれば、発明の別の目的は、前記目的とは独立にまたは組み合わせて、
−マイクロチャネル、
−ダクトを介してマイクロチャネルの一端と連通しているチャンバ、
−チャンバ内に挿入し、ダクトの端部近くに開口しているチューブ、
を含むマイクロ流体装置である。
【0099】
その別の局面によれば、発明の別の目的は、製品中に含まれる物質を分離するための方法であり、
−前記製品を、上記のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークを通して循環させるステップ、および
−マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の前記製品の流速、またはマイクロチャネルの端部間の圧力差を監視するステップを含むことを特徴とする。
【0100】
その別の局面によれば、発明の目的は、化学反応または状態の変化を監視する方法であり、
−前記製品を、上記のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークを通して循環させるステップ、および
−マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の前記製品の流速、または単数または複数のマイクロチャネルの端部間の圧力差を監視するステップを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0101】
発明は、以下の、幾つかの非限定的な例示的な実施形態の詳しい説明を読み、添付の図面を熟考することで、より良く理解できるだろう。
【実施例】
【0102】
実施例1
図1は、本発明の第一実施形態による、一端部3で第一圧力源4に接続し、もう一方の端部5で、可撓性ダクト7を介してチャンバ6に接続している、マイクロチャネル2を含むマイクロ流体装置を示す。
【0103】
チャンバ6には、マイクロチャネル2に分配される、記載の実施例では液体である製品Sを含んでいる。
【0104】
チャンバ6は、一端部で、ダクト13を介して、第二圧力源10に結合している入口回路8と連通し、もう一方の端部で、ダクト14を介して、第一圧力源4に結合している出口回路9と連通している。
【0105】
第一圧力源4は圧力P1であり、第二圧力源10には圧力P2の気体が入っている。
【0106】
本発明では、圧力値が参照圧力、例えば外気圧と関係していることに留意されたい。
【0107】
実施例の変形では、圧力P1またはP2の一つは、それ自体が外気圧に一致してもよい。この場合は、対応する圧力源(例えば、圧力源4)は、外気と連通している圧力ダンパーを有利に含み、ダンパーは周囲圧の急激な変動から装置を保護する。
【0108】
記載の実施例では、圧力P2は圧力P1より高い。
【0109】
圧力P2は、窒素シリンダ16に接続している圧力制御器15をもちいて一定に保たれる。
【0110】
変形として、圧力源10は、コンプレッサのチャンバに結合してもよい。
【0111】
ダクト8の通路内にソレノイド弁11を配置し、圧力源10からの気体の流速を調整する。
【0112】
ダクト9の通路内にニードル弁12を配置し、チャンバ6を出ていく気体の流速を制御する。
【0113】
弁11および12の開口部を調整することによって、入口8回路と出口9回路間にあるチャンバ6内の気体の流れを確立できる。
【0114】
出口回路9は、入口回路8からの気体の漏洩部である。
【0115】
マイクロチャネル2内の製品Sの流速Iは、マイクロチャネル2の二つの端部3と端部5間の圧力Pの差を細かく変化させることによって調整できる。この流速Iは、次の概略式を用いて表すことができる:
I=r4P/8L
式中rはマイクロチャネルの半径であり、Lは長さである。
【0116】
この式は、断面が円形のマイクロチャネルについて有効で、断面が異なるチャネルについては、他の表現式は公知のものであるか、またはストーク方程式を解くことで得られるものである。
【0117】
電気回路から類推して、圧力Pの差は、次式を用いて流速Iと関連付けることができる:
P=RI
式中Rはマイクロ流体抵抗と呼ばれ、次の概略式で与えられる:
R=8L/r4
【0118】
本実施例では、マイクロチャネルに関係するマイクロ流体抵抗はRcで表され、出口回路9と関連するものはRfで表され、そして入口回路8と関連するものはReで表される。
【0119】
定常状態では、チャネル内の流速Icは次式で表される:
式中では、Pf=P1×RfRc/(RfRc+ReRf+ReRc)である。
【0120】
この流速Icは、弁11の開放具合、言い換えるとReの値を滑らかに変えることによって調整でき、Reは連続的変えることができることにも気づくだろう。
【0121】
さらには、弁11の閉鎖した後に流れが停止するまでの特性時間(有限値から無限値へ切り替えるRe)は、次式で与えられる:
式中V1はチャンバ6内に含まれる気体の容積である。
【0122】
製品チャンバは出口回路または漏洩部に接続されていない公知の装置では、この特性時間Tは、ほぼ(RcV1)である。マイクロチャネルの抵抗Rcが比較的大きいので、この特性時間は一般には長く、数十分程度になることがある。
【0123】
本発明の利点によって、Rfの値を選択し、特性時間Tを比較的小さく、例えば数秒にすることができる。
【0124】
Rf値を計算する場合に考慮しなければならない粘度は、気体の粘度であり、その大きさはマイクロチャネル2中にある液体の粘度に比べて数桁小さいことに留意されたい。
【0125】
検討の実施例では、ソレノイド弁11は、その開放をチャンバ6内の気体圧を測定する圧力センサ17からもたらされる圧力情報の関数として制御できるようにする調整システム18に接続している。
【0126】
これにより、このチャンバ6内の気体圧力を動的に制御することが可能となる。
【0127】
調整システム18は、他の情報項目、特にマイクロチャネル2内の製品の流れに関係する情報項目を考慮して配置できる。
【0128】
本発明の範囲から逸脱することなしに、ニードル弁12を、やはり制御システムに接続するソレノイド弁と交換し、使用者の介入なしに装置1全体を自動的に制御できるようにしてもよい。
【0129】
装置が平衡に達するまでにかかる特性時間における漏洩の影響を、図4Aから4Cに例示する。
【0130】
これらの図4Aから4Cは、圧力の変化を時間の関数として描いている。
【0131】
図4Aは、出口回路のニードル弁が全開している例を、図4Bはニードル弁が半開状態の例を、図4Cはニードル弁が閉じた例を表している。
【0132】
全てのケースにおいて、1秒間、入口回路のソレノイド弁を開いた。
【0133】
図4Aからは、入口回路のソレノイド弁が閉じると、1秒以内に、チャンバ内の圧力が素早く一定の安定値に達した後、素早く元の平衡状態に素早く戻ることが分かる。
【0134】
図4Bからは、漏洩の影響が低い場合には、圧力は圧力センサを飽和状態にするものの、平衡状態への復帰には10秒程度を要し、流れの調整にとって不都合である。
【0135】
最後に、ニードル弁が開いていない場合は、圧力センサは実験を通して飽和状態を保ち、漏洩がなければチャネル内の流れを止めることはできないということを示す。
【0136】
検討の実施例では、マイクロチャネル2の端部5だけを圧力制御の対象とした。
【0137】
マイクロチャネル2の両端部3および5それぞれでの圧力を同時に制御する場合も、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0138】
実施例2
図2は、チャンバ6、6’の各端部3、5に接続するマイクロチャネル2を含む、装置1に相当類似しているマイクロ流体装置である。
【0139】
各チャンバ6、6’は装置1と同様の様式で、入口回路8、8’および出口回路9、9’と連通している。
【0140】
二つの入口回路8、8’は、共通の圧力源10に結合し、二つの出口回路9、9’は共通の圧力源4に結合する。
【0141】
装置1’はマイクロチャネル2内に入っている製品Sをある方向または反対方向に動かすことができる。
【0142】
即ち、矢印Fの方向に製品を動かすには、入口回路8’のソレノイド弁11’を閉じ、出口回路9’のニードル弁12を開いて、マイクロチャネルの端部3の圧力をP1にする。
【0143】
こうしてチャンバ6内に入口回路8から出口回路9に向かう気体の流れが確立され、このチャンバ6内の圧力は上昇し、マイクロチャネル2の端部3と端部5間の圧力差の結果として製品Sを矢印の方向に動かす。
【0144】
製品を反対方向、即ち矢印F’に動かすには、入口回路8のソレノイド弁11を閉じ、出口回路9のニードル弁12を開け、入口回路8’と出口回路9’間にあるチャンバ6内に気体の流れを確立する。
【0145】
実施例3
図3は、本発明の別の実施例によるマイクロ流体装置40を示している。
【0146】
この装置40は、特に電気泳動分離に用いられ、その中にマイクロチャネル42−45が交叉する形に作られるマイクロ流体セル41を含む。検討の実施例では、マイクロチャネル43および44はお互いに連続している。
【0147】
このセル41は、例えばY.Xia、G.M.Whitesides、Angew.Chem.Int.Ed.37、550(1998)に記載されているようにDow CorningからSylgard 184の名前で販売されているPDMSのブロックで作られる。
【0148】
PDMSブロックにはオリフィスを貫通し、各チャネル42−45の端部は接続ブロック46に支えられるチャンバ47−50とそれぞれ連通する。
【0149】
マイクロチャネルの端部の一つは、場合により反応チャンバに接続してもよい。
【0150】
チャンバ47−50は、KV Automation 01 216 002 20の名前で販売されている比例−制御弁58−61を介して、ダクト54−57によって共通の圧力源10に接続する。
【0151】
圧力源10は、図1に関連して記載したタイプのものである。
【0152】
ダクト54−57はそれぞれ、チャンバ47−50と弁58−61間で第二ダクト66−69に接続する。
【0153】
ダクト66−69は、Upchurch Scientificより販売されているニードル弁62−65を介して調節できる漏洩部を、図1に関連して示すように、圧力源4と連通する形に画定する。
【0154】
各チャンバ47−50は、装置1と同様の方法で、弁58−61によって制御可能な入口回路および弁62−65によって制御可能な出口回路に接続する。
【0155】
このようにして気体の流れを、各弁58−61と対応する弁62−65との間に確立できる。
【0156】
各ダクト54−57は、チャンバ47−50内の気体の圧力を測定するための圧力センサ70−73に接続する。
【0157】
センサ75により、圧力源10の圧力が測定可能になる。
【0158】
ソレノイド弁58−61は、調整システム18を介して動作する。
【0159】
マイクロ流体セル41は、低倍率対物レンズ(10X)を取り付けた、Zeiss Axiovert 135の名前で販売されている倒立顕微鏡80の上に置かれる。
【0160】
装置の特性時間を推定するために、以下の手順を行うことができる:
【0161】
レギュレータ15上で作動して圧力源10の圧力を調整し、外気圧に対してその圧力値を0.01-1bar、即ち103Pa-105Paに設定して開始する。
【0162】
Pluronic F127の名称でBASFから販売されている0.1%の界面活性剤を加えて濡れ性を向上させた濾過水でチャンバ49を部分的に満たし、毛細管現象によってチャネル42−45が満たされるのを待つ。
【0163】
必要であれば、この工程を加速する、または残存する気泡を取り除くために、チャンバ49に圧力を加えてもよい。
【0164】
顕微鏡観察によって、チャネル42−45が充填したことが確認できたら、チャンバ48および50を濾過水で一部満たし、そしてチャンバ47を顕微鏡下に容易に確認できる微粒子を含む溶液で一部満たす(例えば、1%の脂肪分の高いミルクを加えた水、フローラベルとして供給されているミルク内に含まれるオイルエマルジョン)。
【0165】
チャンバ50は、他のチャンバ47−49よりも高いレベルまで満たすことが望ましく、このチャンバ50は参照用に作動する。
【0166】
チャンバ47内の圧力を上げることによって、ミルクを加えた水は容易にチャネル42内に入り、ミルクを所定の速度でそこを通せることが分かる。
【0167】
チャンバ47−50内の圧力を調整することによって、各チャネル42−45内の製品を、短い特性時間で自由に始動または停止することができる。
【0168】
ニードル弁62−65を作動することによって、この特性時間を数分から約1秒まで、自由に増減できる。
【0169】
実施例4
図5−7に表されている本実施例では、マイクロ流体装置90は、その厚みの中にチャンバ92−95が形作られているプレート91を含む。各チャンバは、出口オリフィス96−99を介してプレート91の下側の方に向いて開口している。
【0170】
マイクロ流体装置90は、その中にマイクロチャネル100−103が交叉する形に作られている支持体105、および図6に見られるように互いに僅かにずれて配置されている側方マイクロチャネル101と102をさらに含む。
【0171】
この支持体105は、二枚の重畳プレート106および107から成り、この内の一つ106はマイクロチャネルの底部を画定し、もう一方107がその上部壁を画定する。
【0172】
図5に示すように、プレート9を支持体105とを組み合わせると、各チャンバ92−95は、プレート91に固定された可撓性ダクト110−113を介して、支持体105のマイクロチャネル100−103の一端部と密閉された形で連通している。
【0173】
各ダクト110−113は、支持体105のチャンバ115−118の底部内に開口し、各チャンバ115−118はマイクロチャネルの一端部と連通している。
【0174】
図5に見られるように、各チャンバ92−95には、対応するダクト110−113内に挿入され、その端部内に開口している小径の可撓性チューブ120を介して製品を供給してもよい。
【0175】
チューブ120はダクト110−113の端部内に開口しているという事実により、チャンバを満たす時の気泡の発生を回避できる。
【0176】
このチューブ120は、対応するチャンバ内に注入される製品の入ったマイクロシリンジ121、またはサンプルホルダー、例えばマイクロタイタレーションプレートにサンプルを吸引できるか、または引き上げに用いる圧力を上げることができるマイクロピペットに接続してもよい。
【0177】
各チャンバ92−95は、シール122によって、密閉式に閉じられる。
【0178】
各チャンバ92−95には、入口124回路および出口125回路と連通しているダクト123が差し込まれ、その中の圧力の制御を可能にしている。
【0179】
各チューブ120に、チューブ120内の流速を、チューブを変形することによって制御するように設計された、例えば電気機械的に制御されたクランピング装置127を結合してもよい。
【0180】
次に発明の様々な応用を提示する。
第一応用例:電気泳動法によるDNAの分離
【0181】
上述の第三実施例の装置40を使用するものとする。
顕微鏡80のステージに位置決めされた磁気コイル内に、セル41を置く。
【0182】
Doyle、Science、295、2237(2002)に記述するように、TBEバッファ内の磁性微粒子の溶液をチャンバ49の中に導入して、チャンバ49に対し少し高い圧力を掛けることにより、チャネル42−45の集合体をこの溶液で満たす。
【0183】
チャネル42−45を満たしたら、磁気コイルに電流を流して磁場を加える。これは、チャネル内に磁性カラムのネットワークを作る効果を有する。
【0184】
このとき、TBEバッファをチャンバ47と50内に導入すると、分析用のDNA溶液はチャンバ48内に導入される。
【0185】
このとき、例えば、ラムダファージDNAの48.5キロベースペアとT4ファージDNAの166キロベースペアを含むDNA溶液を、チャンバ48からチャンバ50に向かってチャネル43と45の中を循環させ、チャンバ48に0.1バール(104パスカル)程度に上げた圧力を加え、チャンバ47と50に0.02バール(2×103パスカル)程度に低く上げた圧力を加える。
【0186】
最後に、チャンバ全部の圧力を除去すると、チャンバ47と49との中に位置決めされた電極を用いてチャンバ47と49との間に電位差を加えることによりDNAはチャネル44に移動する。
【0187】
任意選択として、チャンバ48と50の中に電極を置くと、C.S.Effenhauser、A.Manz、H.M.Widmer、Anal.Chem.65、2637(1993)などに記述してあるように、チャネル43と45の中に含まれるDNAがが、チャネル44内に派生バックグラウンドノイズを発生するのを防止することが出来る。
【0188】
ニードル弁の利点により、電極の電気分解により生じる泡は、チャネル内に含まれる流体の流れを乱すことなく、逃がすことが出来る。
【0189】
図8の曲線にある例からも分かるように、幾つかのピークへの分離は、ほんの数分で得られるが、ゲル上での従来の電気泳動システムにおける同一の分離では12時間程も掛かる。
【0190】
その上、装置に人手で介入することなく、調整システム18から単に制御するだけで、要求通りにまたは予め計画した方法にしたがって、操作全体を何度でも繰り返すことが出来る。
【0191】
本発明により、図9から分かるように再現性の優れた分離曲線を得ることが可能になる。
【0192】
第二応用例:酵素による蛋白質の消化
この応用例においては、トリプシンの支持体として作動する磁気ヘッドを、単数または複数のマイクロチャネルに導入する。これらのヘッドは、磁石を用いて固定する。次いで、消化すべき蛋白質を含む製品を、単数または複数のマイクロチャネルを通して循環させる。
【0193】
本発明により、このようにして生成された蛋白質断片の運動を精密に制御することが出来るので、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィなどを用いて確認が容易になる。質量分析器と結合することも可能である。
【0194】
第三応用例:不均一触媒作用
この応用例においては、触媒をマイクロチャネルの壁に対して、または磁石により不動になる磁気ヘッドに対して固定する。
【0195】
次に、触媒に反応すると思われる製品を、マイクロチャネルを通して循環させる。
【0196】
第四応用例:化学分析
装置40のマイクロチャネルの交叉構成のネットワークを使用して、二つの試薬を、二つのマイクロチャネル、例えば42と45から、マイクロチャネルの交叉点に送って、そこで生じる反応の動力学を観測することが出来る。例えば、別の二つのマイクロチャネル43と44は、反応生成物を除去するのに用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】単一のマイクロチャネルを含む、発明の第一実施形態によるマイクロ流体装置を示す概略部分図。
【図2】図1のマイクロ流体装置の実施形態の変形を示す概略部分図。
【図3】交叉する形に配置されたマイクロチャネルを含む、本発明の別の実施形態によるマイクロ流体路装置を示す概略部分図。
【図4A】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図4B】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図4C】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図5】本発明の別の実施形態によるマイクロ流体装置断面を示す概略部分図。
【図6】その上にマイクロチャネルネットワークが作られている図5の装置の支持体を上から見た概略部分図。
【図7】その上にチャンバが作られた図5の装置のプレートを示す概略部分図。
【図8】本発明を実施することで得られた、時間を関数として表したDNA分離曲線の第一実施例を示す図。
【図9】同一の工程を3回繰り返して得られた、時間を関数として表した3つのDNA分離曲線を含む、第二実施例を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流体装置とその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物分子またはマクロ分子の分析、バイオテクノロジー、医学的応用、化学合成、またはマイクロエレクトロニクスの分野などの技術分野においては、1マイクロリットル程度、またはそれ以下の量の製品サンプルを処理し、分析できる必要がある。
【0003】
それにより、高価な少量のサンプルへの作業の実行が可能になり、使用する消耗品(キャリア、ラベル等)の量を削減でき、多数のサンプルに対して同時に作業することが可能になり、物質や上昇させる熱の交換も可能で、輸送時間が短縮される。
【0004】
「マイクロ流体」装置、あるいは「マイクロトータル分析システム(microTAS)」として知られる装置が、現在開発されている。これらの装置は、一般的にマイクロチャネルを備え、その中でサンプルに対して各種の作業を自動的に行うことができる。
【0005】
例として、マイクロ流体診断装置は、マイクロチャネル内に分配された微量の血液等のサンプルに対して、サンプルの前処理(例えば、細胞溶解、DNA抽出またはタンパク質抽出)、必要ならば濃縮または分離(クロマトグラフィ、電気泳動)を実施し、それに続いて(蛍光、ルミネセンス、プラスモン共鳴による)光学型、電気または(伝導、周期的電気測定による)電気化学型、または(電界効果トランジスタ、バイオセンサ、振動マイクロメカニカル構造体等による)電子型等の各種の技術を用いて所定の分子を検出することを可能にする。
【0006】
DNA解析、細胞選別、化合物の合成、一つまたは複数の種についての製品の濃縮、成分の冷却または加熱のための熱伝導作用、核酸増幅反応等への応用は、このようなマイクロ流体装置を用いることによって可能である。
【0007】
マイクロ流体装置は、一般的に、エングレーヴィング、成型、加熱圧縮、または特にマイクロエレクトロニクスによるその他の方法によって作成されたほぼ平面状の支持体を備えている。このような装置を作成する方法の例は、M.Madouの"Fundamentals of Microfabrication" と題した1997年のCRC Pressの著作に記載されている。代案として、マイクロ流体装置は非平面の支持体を備え、例えば、薄い可撓性のフィルム内に組込んでもよい。代案として、マイクロ流体装置は、ほぼ円筒状のマイクロチャネルを備えていても良い。
【0008】
「マイクロ流体装置」という表現は、少なくとも一つのマイクロチャネル内の物質輸送を伴う装置を意味するために用いられる。「マイクロチャネル」という表現は、その長さの少なくとも一部にわたって、一方の端部から他方の端部までの直線で測定した、少なくとも1ヶ所の寸法が、1ミリメートルを有意に下回る断面を有するチャネルを意味することを意図している。
【0009】
マイクロチャネルは、例えば、比表面積は、1mm―1より有意に高く、好適には4mm―1より高く、例えば、10mm―1、さらには1μm―1であっても良い。
【0010】
「マイクロチャネル」は、ナノチャネルも含む。
【0011】
マイクロチャネルの断面は、一定または不定でもよい。断面は、例えば、円形、長方形、正方形、または皿型であっても良い。
【0012】
断面が長方形のとき、マイクロチャネルは、例えば、厚みが10μmと100μmの間、幅が20μmと1 mmの間、特に、幅は20μmと500μmの間であっても良い。
【0013】
一般的に、マイクロチャネルの長さは、1 mmと50cmの間、特に1cmと10mの間、例えば2cmであってよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
マイクロチャネルの断面が小さい場合、多数の問題が発生し、多くの場合、具体的には濡れ、毛細管力、または高い水力学的抵抗に関連した困難な問題である。
【0015】
密閉装置において、サンプル内に発生することのある気泡は、低振幅温度変化の結果として派生流を発生させることがある。
【0016】
例えば、一つまたは複数のタンクと連通している開放装置において、メニスカス、蒸発、レベル差などが存在する場合も、派生流の発生につながることがある。
【0017】
この派生流を回避するために、マイクロ流体装置内にマイクロ弁を組込むことができる。しかしながら、この解決法は製造の観点からは複雑であり、上述の短所、特に気泡に関係する諸問題を完全に解決することはできない。
【0018】
マイクロ流体装置に関係するもう一つの問題は、良好に制御された流れを保証することである。
【0019】
米国特許明細書US 6,012,902は、電界電気浸透を用いるマイクロ流体装置を開示している。このような取り組みの一つの限界は、それが伝導性の液体にしか適さないこと、またマイクロチャネルの表面電荷にきわめて敏感なことであり、表面電荷は、特に生物分子で作業する場合には、時間が経つと変化することがある。
【0020】
マイクロポンプを組込んだ装置も、公知である。例えば米国特許明細書US 6,408,878は、マイクロ流体装置内に組み込まれた膜ポンプを開示している。米国特許明細書US 6,296,020は、マイクロチャネル内で受動ポンプを用いることを提案している。これらの装置は、製造が比較的複雑であり、壊れやすく高価である。
【0021】
ポンピングを外部で行う装置も提案されている。例えば、注射器型マイクロポンプに関して言及することもできるが、これらを用いて少量のものを制御するのは困難であり、発生する流量は多すぎるか、ヒステリシスによる損失を受けることになる。
【0022】
蠕動ポンプの使用も提案されたが、これらは脈動を引き起こすことがあり、用途によってはきわめて厄介である。
【0023】
流量制御は静水圧を用いて行っても良い。しかしながら、この方法では幅広い圧力に対して容易に対応できない。
【0024】
米国特許明細書US 2002/033193は、マイクロチャネルに液体が満たされている場合に、空気が逃げるのを防止する弁を用いて流体の運動を停止し、マイクロチャネルからの空気の運動を制御して、チャネルを遠隔で開閉することを提案している。気体をマイクロチャネル内に封入した全ての装置と同様に、温度の僅かな変動により体積は大きく変化し、派生流を引き起こすことがある。
【0025】
国際特許明細書WO 01/04909においては、マイクロ流体装置のチャネルと連通している一つまたは複数の閉鎖リザーバ内に含まれる気体中に、圧力パルスが発生する。蠕動ポンプの場合と同様に、これが流れの中に厄介なパルスを発生させる。さらに、マイクロチャネルを通しての高い流体力学マイクロチャネルのために、平衡に達するまでの時間は比較的長く、それが流れの動的制御を困難にしている。最後に、気体温度の僅かな変動も圧力変化を生じることがあり、それが流れ特性の変化を伴い、極めて良好な温度制御をされた装置を備えることが必要になり、それは複雑であると同時にコスト高である。
【0026】
国際特許明細書WO 01/88204は、一端部が二つの側面エアダクトと連通している反応チャンバ内に開口し、その一方が正圧調整装置に接続され、他方が負圧調整装置に接続されるマイクロチャネルから成るマイクロ流体回路を開示している。したがって、この側面ダクトを流れる空気は反応チャンバ内での反応から生じる気体の排出を可能にする。この装置は、気体をマイクロ流体装置内に循環させることになる。先に述べたように、マイクロ流体装置が液体を含むさらに一般的な場合、その結果メニスカスが存在することになり、気泡の発生を助長して制御を複雑にし、プロセスの反復性とマイクロチャネル内の輸送作業に悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上述の欠点の全てまたは一部を解決し、特に反復可能で制御された流れを可能にするマイクロ流体装置の提案を目的とする。
【0028】
より具体的には、本発明は、マイクロチャネルの端部の少なくとも一つに対して加圧または減圧することにより、マイクロチャネル内に流れを生じさせるマイクロ流体装置に関する。
【0029】
したがって、その一つの側面によれば、本発明の主題は、一端部がチャンバに接続された少なくとも一つのマイクロチャネルを備えたマイクロ流体装置において、チャンバに接続された入口回路と出口回路とをさらに備え、両回路の間にマイクロチャネルと接触することなしに流体の流れを確立させることが可能であり、入口回路と出口回路の少なくとも一方が制御可能であって、マイクロチャネルの前記端部の圧力を、特にマイクロチャネルの他の端部の圧力とは独立して、変更すること特徴とする装置である。
【0030】
本発明は、マイクロチャネルの一端部における圧力に対する、したがって、マイクロチャネル内の流速に対する正確な制御を、入口回路および出口回路の少なくとも一方を制御することによって可能にし、反復自在な流れを実現することを可能にする。
【0031】
さらに、本発明にかかる装置において、マイクロチャネル内の流れは、従来のマイクロ流体装置と比較して比較的短い特定の時間後に停止させてもよく、それによってマイクロチャネル内の流れに対するより優れた動的制御が可能になる。
【0032】
本発明の一つの実施態様において、入口回路と出口回路との間の前述の流体の流れは、チャンバ内だけに生じさせることもできる。
【0033】
したがって、一つの実施態様において、入口回路および出口回路との間をチャンバを通って、マイクロチャネル内に含まれる製品と異なる流体を循環させることができる。
【0034】
有利には、入口回路および出口回路との間を循環する流体は気体であり、マイクロチャネル内に含まれる製品は液体である。
【0035】
本発明は、チャンバ内に含まれる気体の圧力が液体によって結合されているマイクロチャネルに伝達されるので、気体がマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークに入ることなしに、マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の液体流れの制御に、特に適している。
【0036】
入口回路および出口回路は、上述の流体の流れがチャンバ内に発生するようにチャンバ内に直接開口しても良い。代案として、入口回路および出口回路はチャンバ内に直接開口せず、例えば、単一のダクトを介してこのチャンバに接続しても良く、したがって前述の流体の流れは、チャンバ内に発生しない。
【0037】
このチャンバは、入口回路および出口回路がダクトを介して容器内に開口している、比較的単純な形状の容器によって画定しても良い。しかしながら、このチャンバは、複雑で分岐した形状を取ることもできる。このチャンバは、一方では、流体入口オリフィスに、他方で、この流体の出口オリフィスに接続された閉鎖容積を画定してもよく、この閉鎖容積も他のマイクロチャネルの少なくとも一つの端部に接続されている。入口オリフィスと出口オリフィスとの間を流れる流体の圧力は、ほぼ瞬間的に平衡に達することができる。「ほぼ瞬間的に」という表現は、マイクロチャネル内の製品輸送が調整される時間定数と比較して迅速に平衡に達することを意味する。
【0038】
本発明の好適な実施態様によれば、装置の一つまたは複数のマイクロチャネルは、完全に液体で満たされている。それぞれのマイクロチャネルは、一端部において、ダクトを介して関係するチャンバに接続され、それぞれのマイクロチャネルと対応するダクトは、一つまたは複数の液体で完全に満たされる。このようにして気体がマイクロチャネル内に運び込まれるリスクは制限されるが、気体が侵入した場合には厄介な気泡が形成されることがある。
【0039】
チャンバを関係するマイクロチャネルに接続するダクトは、可撓性でも剛性でも良い。
【0040】
このダクトは、その全長の少なくとも一部について、マイクロチャネルの断面よりも10n倍大きな断面を有してもよく、その際n>1、好適にはn>2である。
【0041】
このダクトは、チャンバとそれが接続されるマイクロチャネルの端部との間で、断面が徐々に小さくなるようにしても良い。
【0042】
マイクロチャネルは、例えば、円錐台形の部分を含んでいても良く、その部分は、適切ならば、チャンバの底部を画定する。
【0043】
マイクロ流体装置は、その厚みの中に一つまたは複数のチャンバが、少なくとも部分的に形成されるプレートを含んでもよい。本発明の一つの実施態様において、これらのチャンバは、特にプレートに固定されたダクトを介してマイクロチャネルの一方の端部とそれぞれ連通している。
【0044】
それぞれのチャンバへの液体製品の供給は、ダクト内に導入され、その端部内に開口している管によって提供することができる。それによって、マイクロチャネル内に気泡が形成されるリスクを低減することが可能になる。
【0045】
一つまたは複数のマイクロチャネルは、具体的には、一方は一つまたは複数のマイクロチャネルの底部を画定し、他方は一つまたは複数のマイクロチャネルの頂部壁を画定する重ね合わされた二枚のプレートを含む支持体上、またはその中に、例えば、エッチング、成型、押出、射出、熱間または冷間圧縮によって作製してもよい。
【0046】
装置が、プレート上に少なくとも部分的に作製された一つまたは複数のチャンバを備えている場合、装置の製造を容易にするために、好適には、このプレートは関係する一つまたは複数のマイクロチャネルを画定するプレートから分離される。
【0047】
入口回路および出口回路の少なくとも一方は、関係するチャンバの底部から好適にはゼロでない距離だけ離れて開口し、それにより、その圧力が入口回路および出口回路を用いて制御される気体をその上に配した特定の水頭をチャンバ内に有することが可能になる。
【0048】
それぞれのチャンバは10mm3より大きい、例えば、1cm3の容積を有してもよい。
【0049】
入口と出口回路との間の流体、特に気体の流れはほぼ連続である、すなわち経時的にほぼ一定であり、短時間脈動の影響を受けない。
【0050】
例えば、マイクロチャネルまたはチャンバの充填等のワンオフ操作のために一時的に流れを遮断することも可能である。
【0051】
有利には、入口回路および出口回路の少なくとも一方における、特に出口回路における流体学的マイクロチャネル損失は、マイクロチャネルにおける損失よりもはるかに低く、好適には少なくとも10倍低く、さらに好適には10n倍低く、ここでn>2である。
【0052】
本発明の一つの実施態様において、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、例えば、気体室、ポンプ、膨張弁等の正圧または負圧源を備えている。代案として、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、外気と連通し、この場合、外気も圧力源を構成すると考えられる。
【0053】
入口回路および出口回路と結合された圧力源は、それぞれ圧力が異なり、出口回路の圧力を入口回路の圧力よりも低くすることができる。出口回路とマイクロチャネルの端部の一つは共通圧力源、具体的には外気と連通することができる。
【0054】
好適には、入口回路および出口回路の少なくとも一方は、段階的に制御可能な弁、具体的にはソレノイド弁またはニードル弁を備えている。
【0055】
本発明の一つの実施態様において、入口回路および出口回路のそれぞれは、結合された弁を備えている。
【0056】
ソレノイド弁を用いて入口回路および出口回路を制御することにより、装置に手動で介入することなしに、特に、必要に応じて装置の動的特性を適合させることが可能になる。
【0057】
有利には、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路は、流れまたは圧力に関係する情報項目の関数として、回路の少なくとも一つ、入口回路および/または出口回路を制御することができる動的調整システムに接続されている。
【0058】
情報項目は例えば、圧力センサ、流量、または流量センサによって配信することができる。センサはマイクロチャネルに、チャンバ内または入口回路および出口回路内に配置してもよい。
【0059】
上述の情報項目は特にセンサのカスケードによって、とりわけ異なる動作範囲を有する圧力または流速センサによって導出することが可能であり、とくにセンサが一つの範囲から別の範囲に切り替え可能なので、広範囲にわたって圧力または流速を測定することが可能になる。
【0060】
他のタイプのセンサ、例えば、生物種または分子検出器、蛍光、電気化学、吸収、プラスモン共鳴、周期的電流測定、電子、または電気検出器、またはバイオセンサなども使用できる。
【0061】
調整システムは入口回路および出口回路のソレノイド弁を制御するようにとくに設計しても良く、コンピュータなどの処理ユニットを備えることもできる。
【0062】
これによって、高性能自動化が使用でき、例えば、人の介入なしに、製品サンプルおよび/または分離グリッドの交換や分離、洗浄作業、製品交換作業、サンプル導入、および化学反応などの多数の作業を一緒にまとめることが可能になる。
【0063】
これによって、例えば、装置内で使用される流体または製品の挙動を測定する一つまたは複数のセンサからのフィードバック効果によって、その場に設置されるソレノイド弁の自動調整も可能になる。
【0064】
入口回路および出口回路は画像分析によって監視することもできる。特に、マイクロチャネル内の流れはカメラによって観察可能であり、例えば、マイクロチャネル内の全ての流れを停止したり、製品流速を測定するために、入口回路および出口回路は、マイクロチャネル内の製品の観察された運動の関数として制御することもできる。
【0065】
本発明の一実施形態において、マイクロチャネルはそれぞれの端部においてチャンバに接続され、それぞれのチャンバは入口回路および出口回路に連通し、これらの回路の間で流体の流れを確立させることができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、装置は複数個のマイクロチャネルを備え、そのうち少なくとも二つはそれぞれチャンバの一端部に接続され、それぞれのチャンバは入口回路と、および出口回路と連通し、これらの回路の間で流体の流れを確立させることができ、入口回路および出口回路の少なくとも一方は関連するマイクロチャネルの端部の圧力を変更するために制御することができる。
【0067】
上述のマイクロチャネルの少なくとも二つは互いに接続することが可能である。
【0068】
本発明により、接続されたマイクロチャネル内の流れをすばやく変更することができるので、例えば、一つのチャネル内に含まれる製品のフラクションxを第一のマイクロチャネルに送り、フラクション(1−x)を第二のマイクロチャネルに送り、フラクションxを0と1の間で変化させるために製品を比較的容易に分配することが可能である。
【0069】
装置は、とくに電気泳動または電気クロマトグラフィを実施しようとするとき、少なくとも一つの電極を、また好適には少なくとも二つの電極を備えることができる。
【0070】
チャンバがマイクロチャネル内に分配しようとする製品を含んでいるとき、電極は好適にはこの製品と接触して配置され、製品は導電性液体を介してマイクロチャネルに連通する。
【0071】
本発明は、例えば、診断方法、マイクロ流体装置内の製品に含まれる生物種の分析、精製または取扱の方法、など多数の用途に使用され、例えば、前記の生物種のためイオン、原子、分子、マクロ分子、核酸などの生物学的マクロ分子、ペプチド、蛋白質または蛋白質集合体、オリゴ糖、グリコペプチド、抗体、ハプテン、或いは代わりに細胞小器官、細胞、有機の、無機のまたは有機無機の粒子、ラテックス、ミセル、ベシキュールまたはリポソームを含むことが可能である。
【0072】
本発明はこのように、各種化学の分野または交配若しくはアフィニティ分析の分野において使用される。
【0073】
本発明はまた、マイクロ流体装置に含まれる生物種から新たな種を合成するためおよび/または製品または生物種の物理的または化学的特性を変更するためにも使用される。
【0074】
本発明は、代案としてハイスループットスクリーニングまたは薬剤調査のため使用される。
【0075】
本発明は、代案として人工香味料の生産をすることができる。
【0076】
本発明による装置は、分類、濾過、液体/液体抽出、標本処理、クロマトグラフィ、エレクトロ−クロマトグラフィまたは電気泳動の実行に用いることができる。
【0077】
本発明による装置は、化学反応、生物反応、または酵素反応を実行するため使用することができる。
【0078】
本発明により、例えば、化学反応、状態の変化、例えば電気泳動または電気浸透移動の場合の泡の出現、気化または温度の変化の後など、特にマイクロ流体装置の中にある一定の流体または製品の容積が操作中に変動するとき、マイクロチャネルの中の流量を制御することができる。
【0079】
本発明はまた、非常に多くのマイクロチャネルを並行して使用する場合に裨益する。複雑で嵩張る流量制御システムの使用を避けることが可能になるからである。
【0080】
本発明はまた、単数または複数のマイクロチャネルに含まれる製品に余り粘り気がない場合、または単数または複数のマイクロチャネルが、長さ10cm以下、または長さ5cmなど、比較的短い場合で、圧力の小さい変化の後であっても、派生流が発生し易い場合に有利である。
【0081】
さらに一般的に、本発明は、例えば、二つの非混和性(液体/液体)流体、または高分解能分離に関与する装置においてなど、流量が性能に対して特に重要な場合の、流量の制御に対し特に適している。
【0082】
本発明はまた、マイクロ流体装置の中の熱移転または熱交換のための方法の実施を可能にする。これを可能にするには、第二マイクロチャネルに隣接する第一マイクロチャネル内で、第二マイクロチャネル内の製品を加熱または冷却するための高温または低温の液体を、循環させる。この熱調整は、第一マイクロチャネル内の流量を制御することにより実行.することができる。
【0083】
その別の側面によると、本発明の別の主題は、それぞれの端において、それぞれが入口回路と出口回路に接続されているチャンバと連通する少なくとも一つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置である。その入口回路と出口回路の間では、流体の流れを確立することが出来て、入口回路と出口回路のうち少なくとも一つはマイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができるようにする。
【0084】
その別の側面によると、本発明の別の主題は、一端部でチャンバに接続する少なくとも一つのマイクロチャネルを含む装置であって、チャンバは入口回路と出口回路と連通しており、この回路間では流体の流れが確立し、入口回路と出口回路のうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう漸進的に制御することのできる弁を含んでいることを特徴とする装置である。
【0085】
その別の側面によると、本発明の追加の主題は、流体供給源に接続されており漏洩部が設けてあって流体供給源からの流体がチャンバを出ることのできるチャンバと、それぞれの端部において連通する少なくとも一つのマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置である。供給源は、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができる。
【0086】
漏洩部は、例えばニードル弁の開口部などを含む、所定断面のオリフィスを用いて形成する。漏洩部は、マイクロ流体装置の特性およびマイクロチャネル内を流れる製品を関数として調節可能であることが有利である。
【0087】
本発明の別の主題は、そのうち少なくとも一つが一端部で、5倍以上、n>1で好適にはn>2とし、好適には数桁(10n)だけマイクロチャネルより大きい容積を有するチャンバに接続されている一つまたは数個のマイクロチャネルを含むマイクロ流体装置であって、チャンバに接続され、その間に流体の流れが確立される入口回路と出口回路をさらに含み、回路―入口回路と出口回路―のうち少なくとも一方は、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御することができることを特徴とするマイクロ流体装置である。
【0088】
その別の局面によると、発明のさらなる目的は、その一端部でチャンバに接続している、マイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロチャネルの前記端部の圧力を変更でき、出口回路が圧力溜めから成る圧力源を含むか、または外気等の圧力溜めと直接または間接的に連通していることを特徴とするマイクロ流体回路である。
【0089】
その別の局面によると、発明のさらなる目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロ回路の前記端部の圧力を変更でき、出口回路が、少なくとも製品がマイクロチャネル内を流れている間は圧力をほぼ一定に保つ圧力源を含むことを特徴とするマイクロ流体回路である。
【0090】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であり、装置は、チャンバに接続し、その間に流体の流れが確立できる入口回路および出口回路をさらに含み、少なくとも回路の一つ入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロ回路の前記端部の圧力を変更でき、流体の流れはマイクロチャネル内の製品の流れより極めて速い、好ましくは少なくとも10倍、よりさらに好ましくは、n>2で10n培速い流速を有する。
【0091】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部がチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含み、さらにチャンバに接続し、その間に流体の流れが確立できる入口回路および出口回路を含み、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−を制御してマイクロチャネルの前記端部の圧力を変更でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−全体、特には出口回路全体での水力学損失が、マイクロチャネルの水力学損失に比べ極めて小さい、よりさらには、n>2で10n培小さいマイクロ流体装置である。
【0092】
その別の局面によると、発明の別の目的は、その一端部でチャンバに接続しているマイクロチャネルを少なくとも一つ含むマイクロ流体装置であって、それがチャンバに接続する入口回路および出口回路をさらに含み、その間に流体の流れが確立でき、回路の少なくとも一方−入口回路および/または出口回路−が、マイクロチャネルの前記端部の圧力を、マイクロ回路のもう一方の端部の圧力とは独立に変更できるように制御可能な流体力学的損失を有することを特徴とする、マイクロ流体回路である。
【0093】
発明の別の目的は、マイクロチャネルの一端部に接続できるチャンバを少なくとも一つ含む圧力監視システムであって、それがチャンバに接続している入口回路および出口回路を含み、その間に、マイクロチャネルと接触することのない流体の流れを確立でき、回路−入口回路および/または出口回路−の少なくとも一つを制御してマイクロチャネル端部の圧力を変更できることを特徴とする監視システム。
【0094】
発明の別の目的は、マイクロチャネルの一端部に接続できるチャンバを少なくとも一つ含む圧力監視システムであり、システムはマイクロチャネルがこのシステムにモジュラー形式で接続できるように設計されており、たとえば本システムでは、望ましいマイクロチャネルの数に合わせて選ぶことができる数のモジュールを含むことができる。
【0095】
このシステムはさらに、場合によって、マイクロ流体装置内の圧力以外のパラメータ、例えば電圧を制御するように設計されたモジュールを少なくとも一つ含んでもよい。
【0096】
その別の局面によると、発明の別の目的は、前記目的とは独立にまたは組み合わせて、
−その厚みのある部分の中に、1または複数のチャンバが、少なくとも一部形作られている第一プレート、
−チャンバの少なくとも一つを外部から隔離するように設計された少なくとも一つの密閉部材、
−1または複数のマイクロチャネルを支持する支持体、
を含み、この支持体が特に二枚の重畳プレートを含み、一つは単数または複数のマイクロチャネルの底部を画定し、もう一方がその上壁を画定し、支持体は第一プレートに押付けることができ、それぞれのチャンバは密閉された形でマイクロチャネルの一端部と連通しているマイクロ流体装置である。
【0097】
発明の態様の一つでは、チャンバは、例えば第一プレートに固定している、可撓性ダクトを介してマイクロチャネルの一端部と連通している。このダクトは、第一プレートと支持体とを組み立てた時に、それらの間を密閉ように設計してもよい。
【0098】
その別の局面によれば、発明の別の目的は、前記目的とは独立にまたは組み合わせて、
−マイクロチャネル、
−ダクトを介してマイクロチャネルの一端と連通しているチャンバ、
−チャンバ内に挿入し、ダクトの端部近くに開口しているチューブ、
を含むマイクロ流体装置である。
【0099】
その別の局面によれば、発明の別の目的は、製品中に含まれる物質を分離するための方法であり、
−前記製品を、上記のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークを通して循環させるステップ、および
−マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の前記製品の流速、またはマイクロチャネルの端部間の圧力差を監視するステップを含むことを特徴とする。
【0100】
その別の局面によれば、発明の目的は、化学反応または状態の変化を監視する方法であり、
−前記製品を、上記のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワークを通して循環させるステップ、および
−マイクロチャネルまたはマイクロチャネルネットワーク内の前記製品の流速、または単数または複数のマイクロチャネルの端部間の圧力差を監視するステップを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0101】
発明は、以下の、幾つかの非限定的な例示的な実施形態の詳しい説明を読み、添付の図面を熟考することで、より良く理解できるだろう。
【実施例】
【0102】
実施例1
図1は、本発明の第一実施形態による、一端部3で第一圧力源4に接続し、もう一方の端部5で、可撓性ダクト7を介してチャンバ6に接続している、マイクロチャネル2を含むマイクロ流体装置を示す。
【0103】
チャンバ6には、マイクロチャネル2に分配される、記載の実施例では液体である製品Sを含んでいる。
【0104】
チャンバ6は、一端部で、ダクト13を介して、第二圧力源10に結合している入口回路8と連通し、もう一方の端部で、ダクト14を介して、第一圧力源4に結合している出口回路9と連通している。
【0105】
第一圧力源4は圧力P1であり、第二圧力源10には圧力P2の気体が入っている。
【0106】
本発明では、圧力値が参照圧力、例えば外気圧と関係していることに留意されたい。
【0107】
実施例の変形では、圧力P1またはP2の一つは、それ自体が外気圧に一致してもよい。この場合は、対応する圧力源(例えば、圧力源4)は、外気と連通している圧力ダンパーを有利に含み、ダンパーは周囲圧の急激な変動から装置を保護する。
【0108】
記載の実施例では、圧力P2は圧力P1より高い。
【0109】
圧力P2は、窒素シリンダ16に接続している圧力制御器15をもちいて一定に保たれる。
【0110】
変形として、圧力源10は、コンプレッサのチャンバに結合してもよい。
【0111】
ダクト8の通路内にソレノイド弁11を配置し、圧力源10からの気体の流速を調整する。
【0112】
ダクト9の通路内にニードル弁12を配置し、チャンバ6を出ていく気体の流速を制御する。
【0113】
弁11および12の開口部を調整することによって、入口8回路と出口9回路間にあるチャンバ6内の気体の流れを確立できる。
【0114】
出口回路9は、入口回路8からの気体の漏洩部である。
【0115】
マイクロチャネル2内の製品Sの流速Iは、マイクロチャネル2の二つの端部3と端部5間の圧力Pの差を細かく変化させることによって調整できる。この流速Iは、次の概略式を用いて表すことができる:
I=r4P/8L
式中rはマイクロチャネルの半径であり、Lは長さである。
【0116】
この式は、断面が円形のマイクロチャネルについて有効で、断面が異なるチャネルについては、他の表現式は公知のものであるか、またはストーク方程式を解くことで得られるものである。
【0117】
電気回路から類推して、圧力Pの差は、次式を用いて流速Iと関連付けることができる:
P=RI
式中Rはマイクロ流体抵抗と呼ばれ、次の概略式で与えられる:
R=8L/r4
【0118】
本実施例では、マイクロチャネルに関係するマイクロ流体抵抗はRcで表され、出口回路9と関連するものはRfで表され、そして入口回路8と関連するものはReで表される。
【0119】
定常状態では、チャネル内の流速Icは次式で表される:
式中では、Pf=P1×RfRc/(RfRc+ReRf+ReRc)である。
【0120】
この流速Icは、弁11の開放具合、言い換えるとReの値を滑らかに変えることによって調整でき、Reは連続的変えることができることにも気づくだろう。
【0121】
さらには、弁11の閉鎖した後に流れが停止するまでの特性時間(有限値から無限値へ切り替えるRe)は、次式で与えられる:
式中V1はチャンバ6内に含まれる気体の容積である。
【0122】
製品チャンバは出口回路または漏洩部に接続されていない公知の装置では、この特性時間Tは、ほぼ(RcV1)である。マイクロチャネルの抵抗Rcが比較的大きいので、この特性時間は一般には長く、数十分程度になることがある。
【0123】
本発明の利点によって、Rfの値を選択し、特性時間Tを比較的小さく、例えば数秒にすることができる。
【0124】
Rf値を計算する場合に考慮しなければならない粘度は、気体の粘度であり、その大きさはマイクロチャネル2中にある液体の粘度に比べて数桁小さいことに留意されたい。
【0125】
検討の実施例では、ソレノイド弁11は、その開放をチャンバ6内の気体圧を測定する圧力センサ17からもたらされる圧力情報の関数として制御できるようにする調整システム18に接続している。
【0126】
これにより、このチャンバ6内の気体圧力を動的に制御することが可能となる。
【0127】
調整システム18は、他の情報項目、特にマイクロチャネル2内の製品の流れに関係する情報項目を考慮して配置できる。
【0128】
本発明の範囲から逸脱することなしに、ニードル弁12を、やはり制御システムに接続するソレノイド弁と交換し、使用者の介入なしに装置1全体を自動的に制御できるようにしてもよい。
【0129】
装置が平衡に達するまでにかかる特性時間における漏洩の影響を、図4Aから4Cに例示する。
【0130】
これらの図4Aから4Cは、圧力の変化を時間の関数として描いている。
【0131】
図4Aは、出口回路のニードル弁が全開している例を、図4Bはニードル弁が半開状態の例を、図4Cはニードル弁が閉じた例を表している。
【0132】
全てのケースにおいて、1秒間、入口回路のソレノイド弁を開いた。
【0133】
図4Aからは、入口回路のソレノイド弁が閉じると、1秒以内に、チャンバ内の圧力が素早く一定の安定値に達した後、素早く元の平衡状態に素早く戻ることが分かる。
【0134】
図4Bからは、漏洩の影響が低い場合には、圧力は圧力センサを飽和状態にするものの、平衡状態への復帰には10秒程度を要し、流れの調整にとって不都合である。
【0135】
最後に、ニードル弁が開いていない場合は、圧力センサは実験を通して飽和状態を保ち、漏洩がなければチャネル内の流れを止めることはできないということを示す。
【0136】
検討の実施例では、マイクロチャネル2の端部5だけを圧力制御の対象とした。
【0137】
マイクロチャネル2の両端部3および5それぞれでの圧力を同時に制御する場合も、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0138】
実施例2
図2は、チャンバ6、6’の各端部3、5に接続するマイクロチャネル2を含む、装置1に相当類似しているマイクロ流体装置である。
【0139】
各チャンバ6、6’は装置1と同様の様式で、入口回路8、8’および出口回路9、9’と連通している。
【0140】
二つの入口回路8、8’は、共通の圧力源10に結合し、二つの出口回路9、9’は共通の圧力源4に結合する。
【0141】
装置1’はマイクロチャネル2内に入っている製品Sをある方向または反対方向に動かすことができる。
【0142】
即ち、矢印Fの方向に製品を動かすには、入口回路8’のソレノイド弁11’を閉じ、出口回路9’のニードル弁12を開いて、マイクロチャネルの端部3の圧力をP1にする。
【0143】
こうしてチャンバ6内に入口回路8から出口回路9に向かう気体の流れが確立され、このチャンバ6内の圧力は上昇し、マイクロチャネル2の端部3と端部5間の圧力差の結果として製品Sを矢印の方向に動かす。
【0144】
製品を反対方向、即ち矢印F’に動かすには、入口回路8のソレノイド弁11を閉じ、出口回路9のニードル弁12を開け、入口回路8’と出口回路9’間にあるチャンバ6内に気体の流れを確立する。
【0145】
実施例3
図3は、本発明の別の実施例によるマイクロ流体装置40を示している。
【0146】
この装置40は、特に電気泳動分離に用いられ、その中にマイクロチャネル42−45が交叉する形に作られるマイクロ流体セル41を含む。検討の実施例では、マイクロチャネル43および44はお互いに連続している。
【0147】
このセル41は、例えばY.Xia、G.M.Whitesides、Angew.Chem.Int.Ed.37、550(1998)に記載されているようにDow CorningからSylgard 184の名前で販売されているPDMSのブロックで作られる。
【0148】
PDMSブロックにはオリフィスを貫通し、各チャネル42−45の端部は接続ブロック46に支えられるチャンバ47−50とそれぞれ連通する。
【0149】
マイクロチャネルの端部の一つは、場合により反応チャンバに接続してもよい。
【0150】
チャンバ47−50は、KV Automation 01 216 002 20の名前で販売されている比例−制御弁58−61を介して、ダクト54−57によって共通の圧力源10に接続する。
【0151】
圧力源10は、図1に関連して記載したタイプのものである。
【0152】
ダクト54−57はそれぞれ、チャンバ47−50と弁58−61間で第二ダクト66−69に接続する。
【0153】
ダクト66−69は、Upchurch Scientificより販売されているニードル弁62−65を介して調節できる漏洩部を、図1に関連して示すように、圧力源4と連通する形に画定する。
【0154】
各チャンバ47−50は、装置1と同様の方法で、弁58−61によって制御可能な入口回路および弁62−65によって制御可能な出口回路に接続する。
【0155】
このようにして気体の流れを、各弁58−61と対応する弁62−65との間に確立できる。
【0156】
各ダクト54−57は、チャンバ47−50内の気体の圧力を測定するための圧力センサ70−73に接続する。
【0157】
センサ75により、圧力源10の圧力が測定可能になる。
【0158】
ソレノイド弁58−61は、調整システム18を介して動作する。
【0159】
マイクロ流体セル41は、低倍率対物レンズ(10X)を取り付けた、Zeiss Axiovert 135の名前で販売されている倒立顕微鏡80の上に置かれる。
【0160】
装置の特性時間を推定するために、以下の手順を行うことができる:
【0161】
レギュレータ15上で作動して圧力源10の圧力を調整し、外気圧に対してその圧力値を0.01-1bar、即ち103Pa-105Paに設定して開始する。
【0162】
Pluronic F127の名称でBASFから販売されている0.1%の界面活性剤を加えて濡れ性を向上させた濾過水でチャンバ49を部分的に満たし、毛細管現象によってチャネル42−45が満たされるのを待つ。
【0163】
必要であれば、この工程を加速する、または残存する気泡を取り除くために、チャンバ49に圧力を加えてもよい。
【0164】
顕微鏡観察によって、チャネル42−45が充填したことが確認できたら、チャンバ48および50を濾過水で一部満たし、そしてチャンバ47を顕微鏡下に容易に確認できる微粒子を含む溶液で一部満たす(例えば、1%の脂肪分の高いミルクを加えた水、フローラベルとして供給されているミルク内に含まれるオイルエマルジョン)。
【0165】
チャンバ50は、他のチャンバ47−49よりも高いレベルまで満たすことが望ましく、このチャンバ50は参照用に作動する。
【0166】
チャンバ47内の圧力を上げることによって、ミルクを加えた水は容易にチャネル42内に入り、ミルクを所定の速度でそこを通せることが分かる。
【0167】
チャンバ47−50内の圧力を調整することによって、各チャネル42−45内の製品を、短い特性時間で自由に始動または停止することができる。
【0168】
ニードル弁62−65を作動することによって、この特性時間を数分から約1秒まで、自由に増減できる。
【0169】
実施例4
図5−7に表されている本実施例では、マイクロ流体装置90は、その厚みの中にチャンバ92−95が形作られているプレート91を含む。各チャンバは、出口オリフィス96−99を介してプレート91の下側の方に向いて開口している。
【0170】
マイクロ流体装置90は、その中にマイクロチャネル100−103が交叉する形に作られている支持体105、および図6に見られるように互いに僅かにずれて配置されている側方マイクロチャネル101と102をさらに含む。
【0171】
この支持体105は、二枚の重畳プレート106および107から成り、この内の一つ106はマイクロチャネルの底部を画定し、もう一方107がその上部壁を画定する。
【0172】
図5に示すように、プレート9を支持体105とを組み合わせると、各チャンバ92−95は、プレート91に固定された可撓性ダクト110−113を介して、支持体105のマイクロチャネル100−103の一端部と密閉された形で連通している。
【0173】
各ダクト110−113は、支持体105のチャンバ115−118の底部内に開口し、各チャンバ115−118はマイクロチャネルの一端部と連通している。
【0174】
図5に見られるように、各チャンバ92−95には、対応するダクト110−113内に挿入され、その端部内に開口している小径の可撓性チューブ120を介して製品を供給してもよい。
【0175】
チューブ120はダクト110−113の端部内に開口しているという事実により、チャンバを満たす時の気泡の発生を回避できる。
【0176】
このチューブ120は、対応するチャンバ内に注入される製品の入ったマイクロシリンジ121、またはサンプルホルダー、例えばマイクロタイタレーションプレートにサンプルを吸引できるか、または引き上げに用いる圧力を上げることができるマイクロピペットに接続してもよい。
【0177】
各チャンバ92−95は、シール122によって、密閉式に閉じられる。
【0178】
各チャンバ92−95には、入口124回路および出口125回路と連通しているダクト123が差し込まれ、その中の圧力の制御を可能にしている。
【0179】
各チューブ120に、チューブ120内の流速を、チューブを変形することによって制御するように設計された、例えば電気機械的に制御されたクランピング装置127を結合してもよい。
【0180】
次に発明の様々な応用を提示する。
第一応用例:電気泳動法によるDNAの分離
【0181】
上述の第三実施例の装置40を使用するものとする。
顕微鏡80のステージに位置決めされた磁気コイル内に、セル41を置く。
【0182】
Doyle、Science、295、2237(2002)に記述するように、TBEバッファ内の磁性微粒子の溶液をチャンバ49の中に導入して、チャンバ49に対し少し高い圧力を掛けることにより、チャネル42−45の集合体をこの溶液で満たす。
【0183】
チャネル42−45を満たしたら、磁気コイルに電流を流して磁場を加える。これは、チャネル内に磁性カラムのネットワークを作る効果を有する。
【0184】
このとき、TBEバッファをチャンバ47と50内に導入すると、分析用のDNA溶液はチャンバ48内に導入される。
【0185】
このとき、例えば、ラムダファージDNAの48.5キロベースペアとT4ファージDNAの166キロベースペアを含むDNA溶液を、チャンバ48からチャンバ50に向かってチャネル43と45の中を循環させ、チャンバ48に0.1バール(104パスカル)程度に上げた圧力を加え、チャンバ47と50に0.02バール(2×103パスカル)程度に低く上げた圧力を加える。
【0186】
最後に、チャンバ全部の圧力を除去すると、チャンバ47と49との中に位置決めされた電極を用いてチャンバ47と49との間に電位差を加えることによりDNAはチャネル44に移動する。
【0187】
任意選択として、チャンバ48と50の中に電極を置くと、C.S.Effenhauser、A.Manz、H.M.Widmer、Anal.Chem.65、2637(1993)などに記述してあるように、チャネル43と45の中に含まれるDNAがが、チャネル44内に派生バックグラウンドノイズを発生するのを防止することが出来る。
【0188】
ニードル弁の利点により、電極の電気分解により生じる泡は、チャネル内に含まれる流体の流れを乱すことなく、逃がすことが出来る。
【0189】
図8の曲線にある例からも分かるように、幾つかのピークへの分離は、ほんの数分で得られるが、ゲル上での従来の電気泳動システムにおける同一の分離では12時間程も掛かる。
【0190】
その上、装置に人手で介入することなく、調整システム18から単に制御するだけで、要求通りにまたは予め計画した方法にしたがって、操作全体を何度でも繰り返すことが出来る。
【0191】
本発明により、図9から分かるように再現性の優れた分離曲線を得ることが可能になる。
【0192】
第二応用例:酵素による蛋白質の消化
この応用例においては、トリプシンの支持体として作動する磁気ヘッドを、単数または複数のマイクロチャネルに導入する。これらのヘッドは、磁石を用いて固定する。次いで、消化すべき蛋白質を含む製品を、単数または複数のマイクロチャネルを通して循環させる。
【0193】
本発明により、このようにして生成された蛋白質断片の運動を精密に制御することが出来るので、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィなどを用いて確認が容易になる。質量分析器と結合することも可能である。
【0194】
第三応用例:不均一触媒作用
この応用例においては、触媒をマイクロチャネルの壁に対して、または磁石により不動になる磁気ヘッドに対して固定する。
【0195】
次に、触媒に反応すると思われる製品を、マイクロチャネルを通して循環させる。
【0196】
第四応用例:化学分析
装置40のマイクロチャネルの交叉構成のネットワークを使用して、二つの試薬を、二つのマイクロチャネル、例えば42と45から、マイクロチャネルの交叉点に送って、そこで生じる反応の動力学を観測することが出来る。例えば、別の二つのマイクロチャネル43と44は、反応生成物を除去するのに用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】単一のマイクロチャネルを含む、発明の第一実施形態によるマイクロ流体装置を示す概略部分図。
【図2】図1のマイクロ流体装置の実施形態の変形を示す概略部分図。
【図3】交叉する形に配置されたマイクロチャネルを含む、本発明の別の実施形態によるマイクロ流体路装置を示す概略部分図。
【図4A】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図4B】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図4C】出口回路閉鎖時、半開時、全開時の、入口回路の開口部に反応して、入口回路および出口回路と連通しているマイクロチャネルの一端部における圧力の変化を示す図。
【図5】本発明の別の実施形態によるマイクロ流体装置断面を示す概略部分図。
【図6】その上にマイクロチャネルネットワークが作られている図5の装置の支持体を上から見た概略部分図。
【図7】その上にチャンバが作られた図5の装置のプレートを示す概略部分図。
【図8】本発明を実施することで得られた、時間を関数として表したDNA分離曲線の第一実施例を示す図。
【図9】同一の工程を3回繰り返して得られた、時間を関数として表した3つのDNA分離曲線を含む、第二実施例を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部でチャンバ(6、6’、47−50、92−95)に接続する少なくとも一つのマイクロチャネル(2、42−45、100−103)を備えるマイクロ流体装置(1、1’、40、90)において、
チャンバに接続しており、マイクロチャネルに接触することなくその間に流体の流れを確立することの出来る入口回路(8、8’、124)と出口回路(9、9’、125)とをさらに備え、
回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの前記端部における圧力を、マイクロチャネルの他端部の圧力とは独立して、変更するよう制御可能であること、
を特徴とするマイクロ流体装置。
【請求項2】
前記入口回路と出口回路間でチャンバ(6、6’、47−50、92−95)内を循環する前記流体は、マイクロチャネル(2、42−45、100−103)に含まれる単数または複数の製品と異なることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記入口回路と出口回路間で循環する流体が、気体であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記マイクロチャネル(2、42−45、100−103)に含まれる製品が、液体であることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロチャネル(2、42−45、100−103)が、好ましくは1mm-1より大きく、好適には4mm-1より大きい、更に好適には10mm-1または1μm-1より大きい表面積/体積比を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記チャンバ(6、6’、47−50、92−95)の容積が、10mm3と5mlとの間に含まれることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記入口回路と出口回路間の流体の流れが、好ましくは連続的であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方における、特に出口回路における水力学的損失が、マイクロチャネルにおける水力学的損失より小さく、好適には少なくとも10倍だけ小さく、さらに好適には、n>2として、10n培小さいことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記マイクロチャネルは、チャンバに対しダクト(7)を用いて接続され、好適には一種または数種の液体で全体が満たされていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記入口回路と出口回路とがそれぞれ圧力源(4、10)を備え、その圧力が異なっていることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記出力回路とマイクロチャネルの一端部とあg、共通圧力源(4)を用いて連通していることを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、漸進的に制御可能な弁(11、11’、12、58−61、62−65)を備えることを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記弁が、ソレノイド弁またはニードル弁であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、前記入口回路または出口回路を、流量または圧力に関連する情報項目を関数として制御可能な動力学的調整システム(18)に接続されることを特徴とする請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記情報項目が、異なる動作範囲を有するセンサ、詳細には圧力または流量センサ、のカスケードにより分配されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記単数または複数のマイクロチャネルが、支持体の上または中に、エングレーヴィング、成形、押出し成形または射出成形、熱間または冷間圧縮、などにより製造されることを特徴とする請求項1〜15のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
それぞれのチャンバが、ダクトを介してマイクロチャネルの一端部と連通すること、
それぞれのチャンバに対する液体製品の供給が、ダクトと開口部との中に導入されてその端部に開口したチューブを介して行われること、
を特徴とする請求項1〜16のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記マイクロチャネルが、それぞれの端部においてチャンバに接続しており、それぞれのチャンバが入口回路および出口回路に連通しており、この回路間では結合されたチャンバ内に流体の流れが確立することを特徴とする請求項1〜17のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
複数のマイクロチャネルを備え、そのうち少なくとも二つはそれぞれその一端部においてチャンバに接続されており、それぞれのチャンバが、回路間に流体の流れを確立する入口回路および出口回路に連通しており、回路すなわち入口回路および/または出口回路のうち少なくとも一方が、前記マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御可能であることを特徴とする請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも一つの電極、好適には二つの電極を含むことを特徴とする請求項1〜19のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記電極がチャンバ内に置いてあり、前記チャンバが導電性液体を介してマイクロチャネルに連通していることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも部分的に形成される一つまたは複数のチャンバをプレート上に備え、前記プレートが、単数または複数の関連するマイクロチャネルを画定するプレートからは分離されることを特徴とする請求項1〜21のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
次の応用法のうちいずれか一つで、請求項1〜22のうちいずれか1項に記載の装置の使用であり、
前記装置内の製品に含まれる生物種の診断、分析、精製または取扱の各方法、生物種を合成する方法、生物種の物理的または化学的特性を変更する方法、ハイスループットスクリーニング方法または薬剤調査方法、クロマトグラフィ、エレクトロ−クロマトグラフィ、または電気泳動の方法、または装置内に熱を運ぶ方法を含むことを特徴とする装置の使用。
【請求項24】
製品中に含まれる物質を分離、または化学反応または状態の変化を監視する方法であって、
請求項1から22のうちいずれか一項に記載のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルのネットワークを通って前記製品を循環させるステップと、
前記マイクロチャネルまたは前記マイクロチャネルのネットワークにおける前記製品の流速、若しくは単数または複数のマイクロチャネルの端部間の圧力差、のいずれかを監視するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
マイクロチャネルの一端部に接続可能なチャンバの少なくとも一つを備えた圧力監視システムであって、マイクロチャネルをモジュラー方式でこのシステムに接続可能な設計となっていることを特徴とする圧力監視システム。
【請求項26】
マイクロチャネルの一端部に接続可能なチャンバの少なくとも一つを備えた圧力監視システムにおいて、
前記チャンバに接続され、マイクロチャネルに接触することなくその間に流体の流れを確立することが出来る入口回路と出口回路とを備え、前記入口回路と出口回路とのうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するために制御可能であることを特徴とする圧力監視システム。
【請求項1】
一端部でチャンバ(6、6’、47−50、92−95)に接続する少なくとも一つのマイクロチャネル(2、42−45、100−103)を備えるマイクロ流体装置(1、1’、40、90)において、
チャンバに接続しており、マイクロチャネルに接触することなくその間に流体の流れを確立することの出来る入口回路(8、8’、124)と出口回路(9、9’、125)とをさらに備え、
回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの前記端部における圧力を、マイクロチャネルの他端部の圧力とは独立して、変更するよう制御可能であること、
を特徴とするマイクロ流体装置。
【請求項2】
前記入口回路と出口回路間でチャンバ(6、6’、47−50、92−95)内を循環する前記流体は、マイクロチャネル(2、42−45、100−103)に含まれる単数または複数の製品と異なることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記入口回路と出口回路間で循環する流体が、気体であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記マイクロチャネル(2、42−45、100−103)に含まれる製品が、液体であることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロチャネル(2、42−45、100−103)が、好ましくは1mm-1より大きく、好適には4mm-1より大きい、更に好適には10mm-1または1μm-1より大きい表面積/体積比を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記チャンバ(6、6’、47−50、92−95)の容積が、10mm3と5mlとの間に含まれることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記入口回路と出口回路間の流体の流れが、好ましくは連続的であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方における、特に出口回路における水力学的損失が、マイクロチャネルにおける水力学的損失より小さく、好適には少なくとも10倍だけ小さく、さらに好適には、n>2として、10n培小さいことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記マイクロチャネルは、チャンバに対しダクト(7)を用いて接続され、好適には一種または数種の液体で全体が満たされていることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記入口回路と出口回路とがそれぞれ圧力源(4、10)を備え、その圧力が異なっていることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記出力回路とマイクロチャネルの一端部とあg、共通圧力源(4)を用いて連通していることを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、漸進的に制御可能な弁(11、11’、12、58−61、62−65)を備えることを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記弁が、ソレノイド弁またはニードル弁であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記回路−入口回路および/または出口回路−のうち少なくとも一方が、前記入口回路または出口回路を、流量または圧力に関連する情報項目を関数として制御可能な動力学的調整システム(18)に接続されることを特徴とする請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記情報項目が、異なる動作範囲を有するセンサ、詳細には圧力または流量センサ、のカスケードにより分配されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記単数または複数のマイクロチャネルが、支持体の上または中に、エングレーヴィング、成形、押出し成形または射出成形、熱間または冷間圧縮、などにより製造されることを特徴とする請求項1〜15のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
それぞれのチャンバが、ダクトを介してマイクロチャネルの一端部と連通すること、
それぞれのチャンバに対する液体製品の供給が、ダクトと開口部との中に導入されてその端部に開口したチューブを介して行われること、
を特徴とする請求項1〜16のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記マイクロチャネルが、それぞれの端部においてチャンバに接続しており、それぞれのチャンバが入口回路および出口回路に連通しており、この回路間では結合されたチャンバ内に流体の流れが確立することを特徴とする請求項1〜17のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
複数のマイクロチャネルを備え、そのうち少なくとも二つはそれぞれその一端部においてチャンバに接続されており、それぞれのチャンバが、回路間に流体の流れを確立する入口回路および出口回路に連通しており、回路すなわち入口回路および/または出口回路のうち少なくとも一方が、前記マイクロチャネルの端部における圧力を変更するよう制御可能であることを特徴とする請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも一つの電極、好適には二つの電極を含むことを特徴とする請求項1〜19のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記電極がチャンバ内に置いてあり、前記チャンバが導電性液体を介してマイクロチャネルに連通していることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも部分的に形成される一つまたは複数のチャンバをプレート上に備え、前記プレートが、単数または複数の関連するマイクロチャネルを画定するプレートからは分離されることを特徴とする請求項1〜21のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
次の応用法のうちいずれか一つで、請求項1〜22のうちいずれか1項に記載の装置の使用であり、
前記装置内の製品に含まれる生物種の診断、分析、精製または取扱の各方法、生物種を合成する方法、生物種の物理的または化学的特性を変更する方法、ハイスループットスクリーニング方法または薬剤調査方法、クロマトグラフィ、エレクトロ−クロマトグラフィ、または電気泳動の方法、または装置内に熱を運ぶ方法を含むことを特徴とする装置の使用。
【請求項24】
製品中に含まれる物質を分離、または化学反応または状態の変化を監視する方法であって、
請求項1から22のうちいずれか一項に記載のマイクロ流体装置のマイクロチャネルまたはマイクロチャネルのネットワークを通って前記製品を循環させるステップと、
前記マイクロチャネルまたは前記マイクロチャネルのネットワークにおける前記製品の流速、若しくは単数または複数のマイクロチャネルの端部間の圧力差、のいずれかを監視するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
マイクロチャネルの一端部に接続可能なチャンバの少なくとも一つを備えた圧力監視システムであって、マイクロチャネルをモジュラー方式でこのシステムに接続可能な設計となっていることを特徴とする圧力監視システム。
【請求項26】
マイクロチャネルの一端部に接続可能なチャンバの少なくとも一つを備えた圧力監視システムにおいて、
前記チャンバに接続され、マイクロチャネルに接触することなくその間に流体の流れを確立することが出来る入口回路と出口回路とを備え、前記入口回路と出口回路とのうち少なくとも一方が、マイクロチャネルの端部における圧力を変更するために制御可能であることを特徴とする圧力監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−511744(P2007−511744A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530369(P2006−530369)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001236
【国際公開番号】WO2004/103566
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(501339241)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシエ・シヤンテイフイツク・(セ・エーヌ・エール・エス) (4)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001236
【国際公開番号】WO2004/103566
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(501339241)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシエ・シヤンテイフイツク・(セ・エーヌ・エール・エス) (4)
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【Fターム(参考)】
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