説明

マグネトロンスパッタリングターゲットのエロージョン特性の予測及び補正

マグネトロン(72)をターゲット(38)の裏面の近傍で、半径方向成分を有する複雑な選択経路(150)で走査する場合、ターゲットエロージョン分布は、選択される複数の経路によって変わる形状を有する。所定のマグネトロンに対応する半径方向エロージョン速度分布(160)を測定する。走査中、定期的に、エロージョン分布(168)を、測定エロージョン速度分布(160)及び当該測定エロージョン速度分布から得られる分布(162,164,166)、マグネトロンが異なる半径方向位置で消費した時間、及びターゲット電力に基づいて計算する。計算エロージョン分布を使用することにより、エロージョン量がいずれかの位置で過剰になった時点を通知してターゲット交換を催促することができ、またターゲット上方のマグネトロンの高さを繰り返し走査に対応して調整することができる。本発明の別の態様によれば、マグネトロンの高さを、走査中に動的に調整する(206)ことによりエロージョン特性を補正する。当該補正は、計算エロージョン分布に基づいて行なうことができ、または定電力ターゲット電源(110)のターゲット電圧(124)の現在値をフィードバック制御することにより行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、材料のスパッタリングに関する。詳細には、本発明は、スパッタリングターゲットの裏面におけるマグネトロンの垂直方向移動に関する。
【背景技術】
【0002】
物理気相堆積法(physical vapor deposition:PVD)と別に表記されるスパッタリングは、金属層及び関連材料層を集積回路の製造工程において堆積させるために最も多用されている方法である。スパッタリングは、配線に使用される平坦金属層を堆積させるために開発されたのであり、そして工業用のスパッタリングでは通常、スパッタ反応ガスのプラズマ、普通はアルゴンのプラズマを利用して、負にバイアスされたターゲットにアルゴンイオンを衝突させてターゲット材料の原子をスパッタリングし、その後、ウェハをターゲット材料層で被覆する。金属窒化物の反応性スパッタリングでは、窒素ガスをスパッタリングチャンバに更に導入することができる。
【0003】
近年、スパッタリングを応用して、金属薄膜層及び金属窒化物薄膜層を、ビア及びトレンチのような高アスペクト比ホールの壁に堆積させている。スパッタリングは、タンタルのような高融点金属から成るバリア層、及び高融点金属窒化物バリア層をビア壁に堆積させて、銅がビアから、周囲の酸化シリコン誘電体層または低k誘電体材料に拡散するのを防止するために広く使用されている。スパッタリングは更に、薄膜銅シード層をビア壁に堆積させてメッキ電極として機能させ、そして核形成層を堆積させて、銅をビアホールに電気化学メッキ(electrochemical plating:ECP)によって充填するために使用される。
【0004】
通常、工業的に実施されるプラズマスパッタリングでは、スパッタ堆積させる材料のターゲットを、被覆対象のウェハを収容する真空チャンバに密閉する。アルゴンをチャンバに導入することができる。数百ボルトの負のDCバイアスをターゲットに、チャンバ壁またはチャンバシールドを接地したまま印加すると、アルゴンが励起されてプラズマ状態になる。正に帯電したアルゴンイオンは負にバイアスされたターゲットに高いエネルギーで引き付けられ、そして当該アルゴンイオンでターゲット原子をスパッタリングして当該ターゲットから飛び出させる。図1の模式断面図に示す例示的なターゲット10は、真空チャンバの中心軸12の回りに配置される。ターゲット10は多くの場合、真ちゅうにより構成することができるバッキングプレート14を含み、このバッキングプレート14に、例えば銅またはタンタルから成るターゲット層16を接着させる。しかしながら、1種類のターゲットから成る複数枚の銅ターゲットを用いることもできる。ターゲット10の裏面に配置されるマグネトロン18は、2つの対向する磁極20,22を含み、これらの磁極は、これらの磁極の背面で、磁気ヨーク24を介して磁気結合されることにより、磁場Bをターゲット層16の前面に放出する。磁場によりプラズマ中の電子が捕捉されるので、プラズマ密度が高くなることにより、スパッタリング速度が速くなる。マグネトロン18は通常、ターゲット10の中心軸12からずれるが、当該中心軸の回りを回転して方位角方向における堆積均一性を増大する。工業用マグネトロンは、図1に示す形状よりも更に複雑な形状を有する。
【0005】
スパッタリングを高アスペクト比ホールの壁の被覆に応用するのは、一部には、マグネトロンのサイズを小さくすると、ターゲットパワーが小面積に集中することにより、より高いターゲットパワー密度を生み出すことができ、プラズマ密度を、被スパッタ原子のかなり大きな部分がイオン化されるような値にすることができるという理由による。ウェハが電気的に負にバイアスされる場合、被スパッタイオンをウェハの狭いホール内の深い位置にまで引き込むことができる。高アスペクト比ホールに、高イオン化率の被スパッタ原子がスパッタリング堆積する現象は、主として、小型マグネトロン18をターゲット10の周辺の近傍で走査することにより促進される。被スパッタイオンは、それにも拘わらず(マグネトロンをターゲットの周辺の近傍で走査するにも拘わらず)、中心に向かって拡散する。
【0006】
これまで、マグネトロンは、一様なターゲットエロージョン領域が形成されるように設計されていたが、小型マグネトロンを用いてイオン化スパッタリングすることにより、一様なエロージョン領域を形成することができない恐れがある。更に、ターゲットの外側部分のみがスパッタリングされる場合、被スパッタ原子のかなりの部分がターゲット中心の近傍に再堆積し、そして厚さが増した再堆積材料が積もり、この再堆積材料はターゲットに固着することがないので、薄片になって剥がれ、そして許容できない個数のパーティクルが発生し、これらのパーティクルがウェハに降り注いで、欠陥を最終素子に生じさせる。この問題の対策を講じるために、ホン(Hong)らは、特許文献1において、スパッタ堆積のほとんどの部分に関して使用される半径方向外側位置と、マグネトロンでターゲットをクリーニングする半径方向内側位置との間で回転するマグネトロンを開示している。
【0007】
ターゲットのエロージョンを抑制するために細心の注意を払う必要がある。小型マグネトロン18を周辺で走査することにより、ターゲット層16にエロージョンが発生して、環状溝26が形成されるとともに、ターゲット層16の中心部分は、当該ターゲットの元の表面28から環状溝よりも浅い位置まで浸食される。ターゲット10を過剰にスパッタリングすると、ターゲット層16が、当該層を突き抜けるまでスパッタリングされて、露出した下地のバッキングプレート14をスパッタリングしてしまい、そして特にタンタルバリア層をスパッタ堆積させている場合には、チャンバを汚染してしまう。1種類のターゲットしか用いることがない場合、過剰スパッタリングにより、ターゲットを、当該ターゲットが真空に耐えることができない程度にまで機械的に弱くしてしまう恐れがある。これらの問題に対応するために、テストスパッタを行なうときに、エロージョンを寿命期間中の積算ターゲットエネルギーの関数として、例えばターゲットに、スパッタリングを稼働可能期間において行なっている間に与えられるエネルギーを表わすキロワット−アワー(kW−hr)の積算値の関数として測定することによりエロージョンを抑制することができる。寿命期間中の積算ターゲットエネルギーは、ターゲット及びマグネトロンの組み合わせに対応して、ターゲットスパッタリングの寿命終了時における、例えばターゲット層が厚み全体に亘ってスパッタリングされてバッキングプレートが露出する直前のターゲットエネルギーとして実験により明確化される。マグネトロン及びターゲット構成の組み合わせが固定される場合、測定される寿命終了時のターゲットエネルギーが、ターゲットを取り換える必要がある時点を決定する。
【0008】
エロージョンによって更に別の問題がプラズマスパッタリングに発生する。ターゲット10にエロージョンが発生すると、ターゲット層16内のスパッタリング表面が後退し、そして当該表面がマグネトロン18により近くなり、スパッタリング表面における磁場がターゲット10の寿命全体に亘って変化する。スパッタリング速度は、スパッタリング表面に隣接する磁場Bの絶対値によって変わり、磁場の絶対値は、エロージョンの深さとともに大きくなる。また、プラズマは、磁場が変化している状態では不安定になる可能性があり、場合によっては、プラズマが消え、またはスパークし、プラズマスパークによって、汚染パーティクルが発生し得る。ホン(Hong)らは、特許文献2において、ターゲットとマグネトロンとの間隔を定期的に調整して、ターゲットの長期エロージョン特性を多数のウェハサイクルに亘って補正することにより、スパッタリングプラズマを安定な状態で維持するという利点を開示している。
【0009】
ミラー(Miller)らは、特許文献3において、遊星歯車機構について記述しており、この遊星歯車機構によって、特許文献1のデュアルポジション型マグネトロン(two−position magnetron)にかなり類似する結果が、小型マグネトロンを多分葉状パターン(multi−lobed pattern)で、ターゲットの裏面全体に亘って走査することにより得られる。ミラー(Miller)らは、ユニバーサルマグネトロン運動(universal magnetron motion:UMM)機構と表記される更に汎用性の高い遊星走査機構(epicyclic scan mechanism)について、2007年10月25日に出願された特許文献4において記述しており、当該米国特許出願は、走査機構の詳細に関して本明細書において参照されることにより、当該米国特許出願の内容が本明細書に組み込まれる。遊星歯車機構の走査パターンは、当該機構を構成する歯車及びアームによって一定になるが、UMM機構によって、ほぼ任意の走査パターンを、2つの同軸シャフトを独立して回転させることにより生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7018515号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0133365号
【特許文献3】米国特許第6852202号
【特許文献4】米国特許出願第11/924573号
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様では、マグネトロンによって複雑な選択経路で走査されているターゲットの予測エロージョン分布を計算する。計算エロージョン分布を使用して、ターゲットの寿命の終点を、例えばターゲット層が、場合によってはスパッタリングが1つの領域のみで行われることにより、当該ターゲット層の厚さ全体に亘ってほとんど浸食されてしまう時点を求めることができる。
エロージョン分布を計算する1つの方法では、校正エロージョン速度分布を計算するために、例えばマグネトロンが、ターゲット中心から既知の半径方向位置で回転しているときのターゲットに与えられるエネルギー当たりのエロージョン深さを実験的に測定する。1つの半径方向位置で測定されるエロージョン速度は、別の半径方向位置におけるエロージョン速度に、反比例で、またはほぼ直線比例で変換することができる。走査を稼働可能期間において、同じタイプのマグネトロンが校正に使用される状態で行なっている間に、エロージョン速度分布は、多数回の走査に亘って、マグネトロンの既知の複数の半径方向位置におけるエロージョン速度と、これらの半径方向位置において消費される時間と、ターゲットに印加される電力との積を合計することにより求めることができる。計算手段を利用して、ターゲット上の異なる半径方向位置での計算ビンは、走査中に更新される。
【0012】
本発明の別の態様では、マグネトロンを、半径方向成分を有する経路で移動させ、そしてマグネトロンとターゲットとの間隔を、半径方向走査中に動的に調整して半径方向エロージョン分布を補正する。垂直方向調整は、定期的に計算されるエロージョン分布に従って行なうことができる。別の構成として、垂直方向調整は、ターゲットに電力供給するために使用される電気信号をモニタリングすることにより行なうことができる。例えば、ターゲット電源がほぼ一定の電力または電流をターゲットに供給する場合、ターゲット電圧をモニタリングし、そしてフィードバックループに使用して、垂直アクチュエータを制御することにより、当該ターゲット電圧を、マグネトロンと、浸食ターゲットのスパッタリング表面のうち、マグネトロンの下方に位置する部分との所望の間隔にほぼ対応する所望の電圧に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、スパッタリングターゲット及び関連するマグネトロンの模式断面図である。
【図2】図2は、スパッタチャンバの模式断面図であり、このスパッタチャンバは、当該チャンバにおけるマグネトロンに対応する広域遊星走査機構を含む。
【図3】図3は、マグネトロン及び当該マグネトロンの走査機構の1つの実施形態の正投影図である。
【図4】図4は、複雑なマグネトロン走査パターンを表わす図であり、この走査パターンを用いて本発明を使用することができる。
【図5】図5は、円対称走査に対応するエロージョン速度分布のグラフである。
【図6】図6は、図5のエロージョン速度分布から生成され、かつ他の複数の回転半径に正規化されたエロージョン速度分布のグラフである。
【図7】図7は、ターゲットエロージョン特性を静的に垂直方向に補正する本発明を実施する方法の1つの実施形態のフロー図である。
【図8】図8は、ターゲットエロージョン特性を動的に垂直方向に補正する本発明を実施する方法の別の実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以後Miller(ミラー)と表記することとする上に引用したMiller(ミラー)らによる特許文献4に記載されるスパッタリングシステムに適用されている。図2の断面図に模式的に示すスパッタチャンバ30は、従来のメインチャンバ32を含み、このメインチャンバ32は中心軸34に対してほぼ対称であり、かつターゲット38をアダプター40及びアイソレータ42を介して支持する。ターゲット38は、スパッタリングされる材料により形成することができる、またはチャンバ本体32の内側に面し、かつアイソレータ42を乗り越えて横方向に延びるバッキングプレートに接着されるターゲット層を含むことができる。スパッタチャンバ30は更に、ユニバーサルマグネトロン運動(UMM)アクチュエータ46を含み、このアクチュエータ46は、ターゲット38の裏面に配置され、かつ内側回転軸48及びチューブ状外側回転軸50を含み、これらの回転軸は、同軸であり、そして中心軸34の回りに配置され、かつ中心軸34に沿って延び、更には中心軸の回りを回転することができる。第1モータ52は内側回転軸48に駆動歯車54を介して、または2つの滑車に巻かれて滑車を回転させるベルトのような他の機械手段を介して接続される。第2モータ56は同じように、外側回転軸50に別の駆動歯車58を介して、または当該外側回転軸を、内側回転軸48の回転とは独立して回転させる機械手段を介して接続される。回転軸48,50、及びこれらの回転軸のモータ52,56は、垂直方向に可動なスライダー60上に支持される。第3モータ62は、スライダー60、及び当該スライダーが支持する回転軸48,50を垂直方向に移動させるウォームネジ機構のような垂直機構64を駆動する。
【0015】
回転軸48,50は、遊星機構70に接続され、この遊星機構70は、マグネトロン72を、マウント74を介して支持し、そして当該マグネトロンを、ターゲット38の裏面全体に亘って、回転軸48,50の回転によって決まるほぼ任意のパターンで走査する。遊星機構70及び当該遊星機構が支持するマグネトロン72もスライダープレート60とともに垂直に移動する。Miller(ミラー)遊星機構70の基本実施形態が遊星歯車システムであり、この遊星歯車システムは、米国特許第6,852,202号の太陽歯車を介した遊星歯車機構とは異なり、この遊星歯車機構は、Miller(ミラー)により更に詳細に記載され、かつ以下に概略説明されるように、固定されるのではなく内側回転軸48を介して回転する。マグネトロン72は通常、磁気ヨーク76を含み、この磁気ヨーク76は、一方の磁極性を持ち、かつ中心軸34に沿った内側磁極78、及び反対の磁極性を持ちかつ内側磁極78を取り囲む外側磁極80を支持し、そして磁場結合させる。マグネトロン72は通常、小さく、かつ円形である。マグネトロン72、及び遊星機構70の大部分は、冷媒を再循環させる図示しない冷却容器内に配置され、この容器は、ターゲットの裏面、または当該ターゲットのバッキングプレートに密閉固定されて、ターゲット38を適度に低い温度に維持する。
【0016】
メインチャンバ32に注目すると、真空ポンプ90は、メインチャンバ32の内部を、ポンピングポート92を介して排気する。ガスソース94は、アルゴンのようなスパッタ反応ガスをチャンバ32に質量流量コントローラ96を通して供給する。反応性スパッタリング、例えば金属窒化物の反応性スパッタリングが望ましい場合、この例における窒素のような反応性ガスが更に供給される。
【0017】
ウェハ100または他の基板が台座102に支持され、この台座102は、ターゲット38に対向する電極として構成される。締め付けリング104を使用してウェハ100を台座102に保持し、また台座周辺を保護することができる。しかしながら、多くの最新の反応器では、静電チャックを使用してウェハ100を台座102に押し付けて保持する。アダプター40に支持される電気接地シールド106は、チャンバ壁、及び台座102の側部をスパッタ堆積から保護し、そして更に、プラズマ放電におけるアノードとして機能する。反応ガスは主処理領域に、締め付けリング104または台座102とシールド106との隙間を通って流入する。他のシールド構造は、主シールド106の内側の浮遊電位副シールド、及び主シールド106のうち、副シールドにより保護されて処理領域へのガス流入を促進する部分を貫通する穿孔を含むことができる。
【0018】
DC電源110は、ターゲット38を接地シールド106に対して負にバイアスし、そして電源110によってアルゴン反応ガスを励起し、そして放電させてプラズマ状態にする。マグネトロン72はプラズマを集中させ、そして高密度プラズマ(HDP)領域112を、マグネトロン72の下方に、かつメインチャンバ32の内部に発生させる。正に帯電したアルゴンイオンがターゲット38に十分高いエネルギーで引き付けられて、金属をスパッタリングしてターゲット38のターゲット層から飛び出させる。スパッタリングされた金属はウェハ100の表面に堆積し、そして当該表面を被覆する。深く狭いホールにスパッタ堆積させるために好ましくは、RF電源114を台座電極102に、高域通過フィルタとして機能する容量結合回路116を介して接続することにより、プラズマに対して負のDC自己バイアスをウェハ100に発生させる。自己バイアスは、正の金属イオンを、または場合によってはアルゴンイオンをウェハ100に向けて直交軌道で加速して、これらのイオンを高アスペクト比ホールに一層容易に流入させるために有効である。自己バイアスによって更に、高エネルギーをイオンに付与することができ、このエネルギーを制御することにより、ウェハ100へのスパッタ堆積、及びウェハ100のスパッタエッチングを差別化することができる。
【0019】
コンピュータを利用したコントローラ118は、真空ポンプ90、アルゴン質量流量コントローラ96、電源110,114、及びマグネトロンアクチュエータモータ52,56,62を所望のスパッタリング条件、及びシステムに挿入されるCDROMのような読み取り可能媒体を介して、または等価な通信ラインを介してシステム118に入力される走査パターンに従って制御する。コントローラ118に接続されるメモリ120は、後で説明する制御アルゴリズムを実行する際に使用される。後で説明する目的のために、電力計122及び電圧計124をDC電源110とターゲット38との間に配置して、コントローラ118が、ターゲット38に印加されている電力及び電圧をモニタリングすることができるようにする。通常、DC電源110は、定電力モードで動作して、電力量を予め設定することができ、かつ電力量が比較的一定になるようにし、更には、電力量をコントローラ118が、デジタル制御信号として利用することができるようにする。しかしながら、定電流源を使用してもよい。チャン(Chang)らは、回転軸モータ52,56用の更に複雑な高速の制御回路について、2007年11月30日に出願された米国特許出願第11/948118号において説明している。
【0020】
更に現実的なバージョンの遊星走査アクチュエータ46及び接続マグネトロン72が、図3の正投影図に示されかつ図3においてユニバーサルマグネトロン運動(UMM)機構130と表記されるマグネトロンアクチュエータに組み込まれる。UMM機構130はフランジ132に支持され、フランジ132は、冷却容器の上部壁に支持され、かつ密閉固定される。フランジ132に容器の外部で支持されるデリック134は、垂直アクチュエータのモータ62を支持し、この垂直アクチュエータは、スライダー60を垂直方向に移動させることができ、このスライダー60は回転軸48,50、及びこれらの回転軸にリブ付きベルト136,138を介して接続される軸モータ52,56を回転可能に支持する。
【0021】
外側回転軸50は、回転/軸方向シール部を貫通して冷却容器に入り込み、そしてギアボックス140及び当該ギアボックスの釣り合い重り142に当該回転軸の下端部で固く取り付けられる。ギアボックス140の内部は、冷却流体が流入することがないように密閉され、そして当該内部は大気雰囲気になっている。太陽歯車が内側回転軸48の下端部に、かつギアボックス140の内部に固定される。ギアボックス140の内部で支持される遊星歯車システムは、太陽歯車と、そしてアイドラー歯車を介して回転可能に接続される従動ギアと、を含む。従動ギアの軸は、回転シール部を貫通して磁石アーム144を支持する。マグネトロン72は、磁石アーム144の一方の端部で支持され、そして釣り合い重り146は、他方の端部で支持される。UMM機構についての更なる詳細はMiller(ミラー)によって記述されている。内側回転軸48が、太陽歯車が静止するように回転する場合、外側回転軸50が回転することにより、ギアボックス140がチャンバの中心軸34の回りを回転するようになり、そしてマグネトロン72は、アームの長さ、及びギア比によって決まる、中心軸34の回りの多分葉状経路(multi−lobed path)の正常な遊星運動を行なう。2つの回転軸48,50が同期して回転する場合、マグネトロン72は、2つの回転の位相差によって決まる、或る半径方向位置での中心軸34回りの円形経路を従動する。しかしながら、2つの回転軸48,50は、独立して回転することができるので、マグネトロン72は、アーム長及びギア比に関係なく、コントローラ118からの指示による決定に従って、ほぼ任意の経路を辿って走査させることができる。例えば、図4のプロットに示す複雑な走査パターン150は、ターゲットの中心34に関して対称なほぼ円形の部分と、そして2つの異なる中心がターゲット中心34からずれた状態の2つのより小さいほぼ円形の部分と、を含む。
【0022】
垂直アクチュエータによって、マグネトロンを上昇させて、ターゲットエロージョン特性を補正することができる。例えば、マグネトロン72を、ターゲット層内の徐々に浸食された溝の表面から一定の距離に保つことにより、一定のプラズマ状態をターゲットの寿命全体に亘って維持することができる。本発明の幾つかの態様では、マグネトロン72の垂直方向移動の制御を行なう。
【0023】
遊星走査機構により実現することができる走査パターンを広域にすることによって、同じ走査機構を、異なるエロージョン分布をもたらす異なるプロセスに使用することができる。同じターゲットでも異なるプロセスに使用することができる。従って、これまで導出されてきた簡単な寿命終了時ターゲットエネルギーによって、ターゲット故障を高信頼度で予測するということができない。同様に、ターゲット−マグネトロン間隔の垂直方向調整値を容易に予測するということができない。同時に、マグネトロンをより小さいサイズにすると、エロージョン分布の変化が大きくなった。
【0024】
本発明の1つの態様によって、エロージョン分布を任意の走査パターンに関して計算することができる。エロージョン速度分布は、ターゲットタイプ及びマグネトロンに関して明確化されるだけでなく、チャンバ、及びシールドのようなチャンバに組み込まれる全てのプロセスキットに関しても明確化される。当該分布は、マグネトロンを、ターゲット中心から固定の半径Rの位置で回転させることにより明確化することができる。半径Rは従来より、円形マグネトロンの中心を基準にした値として得られる。校正フェーズでは、垂直方向補正を行なう必要があるが、その理由は、当該補正が作動中に行なわれるからである。校正スパッタリングによって、円形対称パターンが得られるはずである。スパッタリングを長く行なった後、エロージョンの深さをターゲット半径に亘って測定し、そして校正テスト中にターゲットに印加されるエネルギーに正規化して、エロージョン速度分布e(r,R)をターゲット中心からの半径rの関数として明確化する。当該エネルギーは、ターゲット電力を校正スパッタリング中の時間で積分した値であり、例えばkW−hr(キロワット−アワー)の単位で表わされる値である。ターゲット位置R=165mmの場合のエロージョン速度分布160を図5のグラフにμm/kW−hrの単位でプロットしている。当該分布の半径方向の広がりは、マグネトロンの物理的サイズによって生じる。2つのピークは、円形プラズマ軌道のうち、回転円弧に一致する部分にほぼ対応し、そして中心の谷は、プラズマ軌道のうち、複数の半径に沿って配列される部分に、従ってターゲットの下地部分の上を高速に掃引する部分に対応する。
【0025】
異なる校正テストを、異なるマグネトロン半径方向位置に関して行なうことができるが、1回だけの校正テストでも十分である。1回だけの校正測定に基づいて、他のマグネトロン半径方向位置Rに対応するエロージョン速度分布を次の方程式に従って計算することができる:


この方程式は、マグネトロンのサイズと、マグネトロンを中心から或る半径方向位置で円形に走査するときの円の長さとの幾何学的関係を反映している。値N=1が簡単な幾何学的考察により予測されるが、非線形関係が観測される場合が多く、0.9〜1.1の間の値Nが通常、使用される。
【0026】
従って、エロージョン分布E(r)は、マグネトロンが異なる半径方向位置Rで消費する時間の長さTとターゲット電力Pとの積を次式のように合計することにより予測することができる:


この方程式は、マグネトロンを、恐らくは異なる電力量で走査している全ての時間に亘って、マグネトロンが同じターゲット半径方向位置を多数回に亘って移動しているという事実を反映していない。方位角位置は方程式(2)には現われない。図4の経路のような複雑な経路の非円形部分があるにも拘わらず、比較的長い期間に亘って、ターゲットにエロージョンが円形対称に発生していると推定される。長期間の連続生産により生じる円形エロージョン経路は、繰り返し走査を意図的に不定期に開始して所望の走査経路が複数回のウェハサイクルの間に方位角方向に回転するようにすることにより得られる。
【0027】
エロージョン速度の1つの例では、図6のグラフに示すように、波形162は、マグネトロンを半径R=160mmの位置で第1の期間に亘って第1のターゲット電力で走査する場合のエロージョン分布をプロットしたものであり、波形164は、マグネトロンを半径R=80mmの位置で第2の期間に亘って第2のターゲット電力で走査する場合のエロージョン分布をプロットしたものであり、そして波形166は、マグネトロンを半径R=60mmの位置で第3の期間に亘って第3のターゲット電力で走査する場合のエロージョン分布をプロットしたものである。波形168は、他の3つの波形162,164,166の合計であり、そして3回の全ての走査に対応する合計エロージョン分布をプロットしたものである。
【0028】
しかしながら、実際、複雑な走査のほとんどの部分に関して、マグネトロンの半径方向位置は相当速く変化している。更に、この種類の計算を、処置がまれにしか必要とされない場合に生産をしながら行なうのではなく、相対的に容易なアプローチでは、各半径方向位置における蓄積エネルギーを追跡する。すなわち、カウンタを、コントローラ118がアクセスするメモリ120に付加することができる。データを複数のビン(bins)に仕分ける、例えば0〜295mmの範囲で10mmごとに配置されるビンに仕分けることができるが、より小さい数値を代表的な走査パターンに使用する、例えば90〜235mmの範囲でエネルギーごとに配置されるビンに使用することができる。
【0029】
エロージョン速度データは、これらの同じビンに対応してテーブル化し、そして同じ細分度を持つ必要がある。一定の比較的短い間隔で、例えば100msごとに、現在のターゲット電力を、マグネトロンの現在の半径方向位置に対応するビンに属する前の値に加算する。当該期間は一定であり、かつ計算においてのみ考慮される必要がある。
【0030】
このような演算の例示的な制御方法を、図7のフロー図に示す。通常の工業用制御システムでは、ポーリング及び割り込みを利用するので、図示のフロー図が当該演算を理解するためにのみ使用されることを理解されたい。初期状態170は、エロージョンが起きていない新品のターゲットが、スパッタチャンバ内に装着されていることを示している。ターゲットが、エロージョン速度が少なくとも1つの半径方向位置に対応して測定されているターゲット種類の1つであり、そしてエロージョン速度分布を、複数のエネルギービンに対応するマグネトロンの全ての半径方向位置に対応して利用することができると仮定する。初期化ステップ172では、これらのエネルギービンは全てゼロに初期化される。
【0031】
走査ステップ174では、マグネトロンを現在のレシピに従って走査する。更新テスト176では、短い設定時間が、例えば100msがエネルギービンの最後の更新後に経過したかどうかを判断する。経過していない場合、走査を単に継続する。短い設定時間が経過した場合、更新ステップ178では、エネルギービンを更新する。当該更新では、現在のレシピ、及び現在のサイクルの開始時点以降の時間を調べて、マグネトロンの現在の半径方向位置R、及びターゲット電力の両方を求める。ターゲット電力は、電力計122から求めるか、またはもっと簡単に、プロセスレシピから求めることができる。当該アルゴリズムの簡易バージョンでは、更新ステップ178において、ビンに属し、かつ現在のターゲット半径方向位置Rに対応するエネルギーを更新するだけであり、そしてエロージョン分布の計算は後の方のステップに委ねられる。連続生産に特に適用することができる変形例としての方法では、各ウェハサイクルにおいて同じ走査を、同じ電力で同じ合計走査長に亘って行なう。従って、ウェハサイクルの最後では、エネルギー更新ステップ178において、走査期間全体に対応するエネルギービンを、現在のレシピに設定されている値に基づいて更新することができる。
【0032】
分布テスト180では、長いエネルギー期間が、例えばターゲットに供給される合計エネルギーで測定される100kW−hrが、エロージョン分布が最後に計算された後に経過したかどうかを判断する。経過していない場合、走査を継続する。エネルギー期間を超えた場合、計算ステップ184において、現在のエロージョン分布を計算するか、または予測する。半径方向位置rにおけるエロージョン量E(r)は、方程式(2)で表される和である。
【0033】
分布テスト180は、ウェハスパッタリングサイクルで調整することができる、すなわちウェハをスパッタリングチャンバに搬入し、そしてスパッタリングチャンバから搬出しているときに行なうことができる。当該サイクルは、走査パターン及びターゲット電力を含むスパッタレシピの変更に一致させることができる。
【0034】
限界テスト186では、E(r)の値により定義されるエロージョン分布が、ターゲットエロージョンが限界に達し、そしてターゲットを交換する必要があることを示しているかどうかを判断する。例示的なテストでは、エロージョン量E(r)が最大になって、エロージョン発生前のターゲットの初期に存在した厚さが最小厚さ値よりも薄くなった場合に、ターゲットをメンテナンスステップ188で交換する必要がある。その後、新品のターゲット条件170が満たされる。最小厚さ値になるのは、別の100kW−hrの作動に対応して予測されるエロージョンが原因であるとすることができるが、最小厚さ値には、大きな誤差マージンを含める必要がある。エロージョン限界に達していない場合、走査を継続する。
【0035】
本発明の別の態様では、静的垂直方向補正(static vertical compensation)に対応する計算エロージョン分布を使用する。静的垂直方向補正ステップ190は、図7のプロセスに含めることができる。このステップ190では、コントローラは、ステップ184で計算されるエロージョン分布を調べ、そして当該エロージョン分布に基づいて、マグネトロンを、当該マグネトロンの垂直アクチュエータモータ62を介してどの位の距離だけ垂直方向に移動させてターゲットエロージョン特性を補正すればよいかについて判断する。概括すると、図1から明らかに分かることであるが、マグネトロン18の下部とターゲット層16の浸食表面との距離は一定に維持する必要がある。図1の溝26を明確に判別することができる場合、垂直方向補正量は、最大ターゲットエロージョン量として容易に求めることができる。しかしながら、図6に示す合計分布のような複雑なエロージョン分布に関する選択は、図1の場合のように明確に行なうということはできない。1つの選択では、補正量194を、ターゲットのほとんどの走査部分に亘るエロージョン分布の平均とする。別の選択では、補正量196を、ターゲットのほとんどの走査部分に亘る最小エロージョン量とする。後の方の別の選択は、マグネトロンがターゲットの現在のスパッタリング面から非常に遠く離れて配置される場合に、磁場強度が極めて小さくなってしまい、プラズマを維持することができず、プラズマが形成されない現象を誘発する。スパッタリングが効果的に終了するか、或いはプラズマが自然に、もっと広い浸食部分に亘って再び発生するかのいずれかであるが、プラズマが再び発生する場合には、再び発生することにより、大きなパーティクルをスパッタリングする火花または閃光が飛び、これによって、集積回路にパーティクルが降り注いで集積回路を不良にしてしまう恐れがある。
【0036】
走査ステップ174を再開すると、マグネトロンは、当該マグネトロンの新規の補正済み垂直方向位置に位置し、そして当該補正位置で、少なくとも1回のウェハサイクルの水平走査を、そして場合によっては多数回のウェハサイクルの水平走査を静的に継続する。
【0037】
本発明の別の態様では、ターゲット−マグネトロン間隔を、走査経路を辿っている間に動的に変化させて、計算エロージョン分布を補正する。具体的には、マグネトロンを、当該マグネトロンを任意の水平走査パターンの一部として方位角方向に、かつ半径方向に走査している状態で垂直方向に移動させることができる。この垂直方向移動は、当該移動の大部分において、エロージョン分布に対応するので、エロージョン特性を補正することができ、かつほぼ一定の間隔をマグネトロンと当該マグネトロン下方のスパッタリング表面との間で、走査中の全ての時点で実現することができる。すなわち、図1を参照すると、コントローラ118は、全ての3つのアクチュエータモータ52,56,62の回転速度を走査中に変化させることができる。
【0038】
本発明のこの態様を実施する方法の1つの実施形態を図8のフロー図に示す。新品ターゲットの初期状態170後の初期化フェーズでは、エネルギービンをエネルギー初期化ステップ172でゼロに設定するか、またはそれ以外の場合は初期化し、そしてエロージョン分布をエロージョン初期化ステップ202で初期化し、例えばゼロとする。ウェハサイクルにウェハ搬送ステップ204で入ると、いずれかのウェハがスパッタチャンバに搬入されている場合に、処理済みウェハをスパッタチャンバから取り出し、そして新規ウェハを当該チャンバに搬入する。このステップは、図7の方法には示されていないが当然行なわれていたステップである。走査ステップ206では、新規ウェハに対応するマグネトロンの1回の走査が行なわれる。当該走査は、行なわれている選択プロセスに関して決定された水平走査パターン、及び現在の計算エロージョン分布に従った垂直方向移動の両方を含む。走査ステップ206の期間及び水平走査経路は、プロセスレシピにより決定される。最初のウェハサイクルでは、通常、エロージョンの影響がウェハに現われることがないので、マグネトロンは垂直方向運動を行なう必要がない。走査ステップ206中の垂直方向運動は、そのまま現在の計算エロージョン分布に対応する必要はないが、その理由は、当該分布の広がりが、マグネトロンの寸法よりも遥かに小さい可能性があるからである。そうではなく、エロージョン分布に対する或る平均操作を行なって、走査ステップ206で使用される垂直方向走査プロファイルを決定することができる。
【0039】
走査ステップ206を完了した後に、そして場合によっては、ウェハ搬送ステップ204と同時に、更新ステップ178において、エネルギービンを走査パターン全体に関して更新し、そして計算ステップ184において、エロージョン分布を更新済みエネルギービンに基づいて計算する。限界テスト186で、エロージョン限界に達していないと判断すると、実行を返して、新規ウェハの処理がウェハ搬送ステップ204から始まるようにする。エロージョン限界に達してしまうと、ターゲットをメンテナンスステップ188で交換する。
【0040】
動的垂直方向補正の他に、図8のプロセスは、図7のプロセスとは、2つのテスト176,180を含まない点で、そしてエネルギービンを1回の走査が完了した時点でのみ更新する点で異なっている。なお、静的エロージョン量補正は、図8のタイミングで行なうことができ、そして動的エロージョン量補正は、図7のタイミングで行なうことができる。
【0041】
走査ステップ206で使用される垂直方向プロファイルは、計算エロージョン分布によって変わる。別の構成として、マグネトロンの垂直方向位置に対する閉ループ制御を行なうことができる。図2を参照すると、ターゲットDC電源110が定電力モードで、または定電流モードで、或いはこれらのモードの中間の或るモードで作動している場合、ターゲット電圧はターゲットのエロージョン全体の影響を受け易いことが分かる。本発明の別の実施形態によれば、動的エロージョン量補正は、垂直方向マグネトロン位置に対する閉ループ制御を施すことにより行なうことができる。コントローラ118は、電圧計124を介して、ターゲット電圧をマグネトロン走査中に、かつマグネトロン走査期間全体に亘ってモニタリングする。コントローラ118は、モニタリング済み電圧を、予め設定された所望電圧と比較し、そして垂直アクチュエータモータ62に指示して、マグネトロン72を、ターゲット電圧が所望電圧に戻るような方向に垂直に移動させる。所望電圧はマグネトロン72とスパッタリング表面との所望間隔に対応するので、ターゲットエロージョン特性を動的に補正することができる。閉ループフィードバック制御には、制御理論を深く考察して、過剰補正及び発振を回避する必要がある。閉ループ制御では多くの場合、複雑なPID制御を行ない、PID制御では、モニタリング済み信号の比例成分、積分成分、及び微分成分を使用する。更に別の拡張形態を、繰り返し走査中のエロージョンの変化が遅いので用いることができる。
【0042】
本発明は、ほぼ任意の走査経路を可能にする3軸走査機構を用いて使用されるように開発されているが、本発明は、ホン(Hong)らによる米国特許第7,018,515号に記載されているデュアルポジション型マグネトロンのような他のマグネトロン走査機構に用いることができるので有利である。
【0043】
このようにして、本発明により、プラズマスパッタリングに対する制御を一層良好に行なうことができ、かつハードウェアまたはテスト手段をほとんど追加することなくターゲットの寿命の終点を容易に判断することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロンをプラズマスパッタチャンバ内のターゲットの裏面において走査する方法であって、
電力を前記ターゲットに印加してプラズマを前記チャンバ内で励起し、そして前記ターゲットのスパッタリングを行なうステップと;
前記マグネトロンを前記チャンバの中心軸の回りに、前記中心軸に対して半径方向成分及び方位角成分を有する選択経路に沿って走査するステップと;
前記スパッタリングにより生じるエロージョン分布を、前記走査ステップ中に使用される操作パラメータに基づいて計算するステップと;
前記計算エロージョン分布が前記ターゲットの所定のエロージョン限界を示すときに前記ターゲットが使用されることがないように、前記ターゲットを取り外すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記操作パラメータは、前記ターゲットに印加される前記電力、及び前記選択経路を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記操作パラメータは、前記選択経路の半径方向位置を含むが、方位角位置は含まない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記中心軸に沿った前記マグネトロンの垂直方向位置を、前記計算エロージョン分布に基づいて調整するステップを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
更に、マグネトロンを前記中心軸から固定の半径方向位置で、所定のエネルギー期間に亘って回転させ、そして基準エロージョン速度分布を測定する校正ステップを含み、そして前記計算ステップでは、前記固定の半径方向位置を除く他の複数の半径方向位置に対応するエロージョン速度分布を、前記固定の半径方向位置と前記他の複数の半径方向位置との幾何学的関係に従って計算する、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記計算ステップでは、前記中心軸からの前記マグネトロンの複数の半径方向位置に従って配置されるエネルギービンを前記走査ステップ中に更新する、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記更新ステップでは、前記エネルギービンを、前記マグネトロンが前記ビンのそれぞれの半径方向位置に配置されていたときのターゲット電力と時間との積の値だけ増加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マグネトロンをプラズマスパッタチャンバ内のターゲットの裏面において走査する方法であって、
電力を前記ターゲットに印加してプラズマを前記チャンバ内で励起し、そして前記ターゲットの材料をスパッタリングして前記チャンバ内の基板に堆積させるステップと;
前記マグネトロンを前記チャンバの中心軸の回りに、前記中心軸に対する半径方向成分及び方位角成分を有する選択経路に沿って走査するステップと;
前記スパッタリングにより生じるエロージョン分布を、前記走査ステップ中に使用される操作パラメータに基づいて計算するステップと;
前記マグネトロンを前記中心軸に平行に垂直方向に、前記計算分布に基づいて移動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記マグネトロンを、ある基板に対応する走査ステップと、前記基板とは異なる基板に対応する走査ステップとの間にのみ垂直方向に移動させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マグネトロンを、前記走査ステップ中に垂直方向に移動させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
更に、前記計算エロージョン分布が前記ターゲットのエロージョン限界を超えたことを示す場合に前記ターゲットが使用されることがないように、前記ターゲットを取り外すステップを含む、請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
更に、マグネトロンを前記中心軸から固定の半径方向位置で、所定のエネルギー期間に亘って回転させ、そして基準エロージョン速度分布を測定する校正ステップを含み、そして前記計算ステップでは、前記固定の半径方向位置を除く他の複数の半径方向位置に対応するエロージョン速度分布を、前記固定の半径方向位置と前記他の複数の半径方向位置との幾何学的関係に従って計算する、請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記計算ステップでは、前記中心軸からの前記マグネトロンの複数の半径方向位置に従って配置されるエネルギービンを前記走査ステップ中に更新する、請求項8乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記更新ステップでは、前記エネルギービンを、前記マグネトロンが前記ビンのそれぞれの半径方向位置に配置されていたときのターゲット電力と時間との積の値だけ増加する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
マグネトロンをプラズマスパッタチャンバ内のターゲットの裏面において走査する方法であって、
電力を前記ターゲットに印加してプラズマを前記チャンバ内で励起し、そして前記ターゲットのスパッタリングを行なうステップと;
前記スパッタリングにより生じるエロージョン分布を、前記スパッタリング中に使用される操作パラメータに基づいて導出するステップと;
前記マグネトロンを前記チャンバの中心軸の回りに、前記中心軸に対して半径方向成分及び方位角成分を有する選択経路に沿って走査するステップと;
前記走査ステップと同時に、前記マグネトロンを前記中心軸に平行に垂直方向に移動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
更に、エロージョン分布を前記操作パラメータに基づいて計算するステップを含み、前記操作パラメータは、前記走査ステップの異なる期間中に前記ターゲットに印加される電力を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マグネトロンを、前記エロージョン分布から導出される補正プロファイルに従って移動させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
更に:
前記ターゲットに印加される前記電力により生じる電圧をモニタリングするステップと;
モニタリングされる前記電圧に応答して、前記マグネトロンを垂直方向に移動させて、前記電圧を所望電圧に戻すステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
中心軸の周りに配置され、かつ電源により電力供給されるターゲットを取り付けることができる真空チャンバと;
マグネトロンを前記中心軸に沿って、そして更には、前記中心軸に対して半径方向成分及び方位角成分を含む経路で移動させるアクチュエータ機構と;
前記電源及び前記アクチュエータ機構を制御し、そして操作パラメータに基づいて、前記ターゲットのスパッタリング中に、スパッタリングされる前記ターゲットのエロージョン分布を求めるコントローラと、
を備える、スパッタリングシステム。
【請求項20】
前記コントローラはメモリを含み、前記メモリは、複数のエントリを有し、かつ前記マグネトロンが前記メモリのそれぞれのエントリに対応する、前記中心軸からのそれぞれの半径方向位置に配置されていたときに前記ターゲットに印加されたエネルギー量の履歴を記録する、請求項19に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−508076(P2011−508076A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539456(P2010−539456)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/013766
【国際公開番号】WO2009/085157
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】