説明

マスキング剤

【課題】本発明の目的は、飲食品や医薬品の雑味や、飲食品や医薬品の風味としては強すぎる風味を、その基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加でマスキングすることのできるマスキング剤、及びマスキング方法を提供すること。
【解決手段】以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全てを満たす乳清ミネラルを有効成分として含有するマスキング剤。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が25〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が1.0質量%以上
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.0〜7.5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品や医薬品の苦味、渋味、エグ味などの雑味や、飲食品や経口医薬品の風味としては強すぎる風味を、その基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加でマスキングすることのできるマスキング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品には、その飲食品毎に好ましい基本風味バランスがある。
しかし、飲食品の製造時における加熱殺菌や保存料添加などの食品加工工程中や、該飲食品の保存期間中に、苦味や渋味、あるいはエグ味などのその風味バランスを崩す風味、すなわち雑味が生成してしまうことがある。
このような場合、それらの雑味を取り除く加工、例えば蒸留や溶出などをすればよいが、そのような操作は、微量成分を取り除くことであるから極めて煩雑で、また、飲食品の基本風味まで減少させてしまうおそれがある。
【0003】
また、飲食品の中には、特定の風味だけが極めて強く、その飲食品の好ましい基本風味バランスを崩してしまっている場合もある。
このような場合は、その特定の風味を有する食品成分を配合しない、或は取り除く加工をすればいいが、他の風味まで削ることになってしまい、飲食品の風味バランスをさらに崩してしまうことになってしまう。
【0004】
そのため、雑味を有する飲食品にあっては、飲食品の基本風味のバランスを大きく崩すことなく、上記雑味を感じなくさせることができ、また特定の風味だけが極めて強い飲食品にあっては、極少量の成分を添加するだけで、その強すぎる特定の風味を弱めることができる、いわゆるマスキング剤の提案が各種行なわれてきた。
【0005】
例えば、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(例えば特許文献1参照)、ステビア抽出物(例えば特許文献2参照)、乾燥したアミ類、及び/又はオキアミ類抽出物(例えば特許文献3参照)、グルコン酸の非毒性塩(例えば特許文献4参照)などが提案されているが、特許文献1のマスキング剤は、乳化剤であるため、物性に影響を与えてしまうことが多く、また、その風味自体が悪いという問題があり、特許文献2のマスキング剤は、苦味・渋味を有する飲食品にしか効果がなく、また、強い甘味をもつため添加量が制限されるという問題があり、特許文献3のマスキング剤は、苦味にしか効果がないことに加え、添加量を比較的多く必要とするという問題があり、特許文献4のマスキング剤は、添加量を比較的多く必要とするという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−65177号公報
【特許文献2】特開2005−336078号公報
【特許文献3】特開平10−179077号公報
【特許文献4】WO00/48475公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、飲食品や医薬品の雑味や、飲食品や医薬品の風味としては強すぎる風味を、その基本風味バランスを変えることなく、極少量の添加で、マスキングすることのできるマスキング剤、及びマスキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、ある特定の組成の乳清ミネラルは、上記雑味や、強すぎる風味を持つ飲食品に、極少量添加しただけであっても、極めて強いマスキング効果を示すことを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全てを満たす乳清ミネラルを有効成分として含有するマスキング剤を提供するものである。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が25〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が1.0質量%以上
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.0〜7.5
また、本発明は、該マスキング剤を飲食品や医薬品に添加することを特徴とする、飲食品や医薬品の雑味や強すぎる風味のマスキング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスキング剤は、飲食品や医薬品に含まれる雑味や強すぎる風味を、その基本風味を変えることなく、極少量の添加でマスキングすることができる。
また、本発明のマスキング方法によれば、飲食品や医薬品に含まれる雑味や強すぎる風味を、その基本風味を変えることなくマスキングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルについて詳述する。
通常、乳清ミネラルとは、乳又は乳清から可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳中の灰分を含有するという特徴を有する。
そのため、その灰分組成は、原料となる乳やホエー中の組成に近い比率で含有する。
【0011】
本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、上記乳清ミネラルと異なり、カルシウム含量が低く、乳酸含量が高く、且つpHが高いという特徴を有するものである。すなわち、本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全てを満たすものである。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が25〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が1.0質量%以上
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.0〜7.5
【0012】
本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、固形分中の灰分含量は25〜75質量%、好ましくは30〜75質量%である。25質量%未満であると、他の有機成分が多くなり原料由来の風味が強過ぎてマスキング剤に適さなくなる。75質量%を超えると、苦味が強くなりマスキング剤に適さなくなる。
【0013】
また、本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量は2質量%未満、好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満である。2質量%以上になると、マスキング効果が著しく弱くなることに加え、得られる飲食品に濁りが生じやすくなる。なお、下限は特に制限はない。
【0014】
本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、灰分中のカルシウム含量は5質量%未満、好ましくは3質量%未満、最も好ましくは2質量%未満である。5質量%以上であると、マスキング効果が著しく弱くなることに加え、得られる飲食品に濁りが生じやすくなる。なお、下限は特に制限はない。
【0015】
さらに、本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、固形分中の乳酸含量は1.0質量%以上、好ましくは2〜25質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。1.0質量%未満であるとマスキング効果が弱くなる。なお、ここでいう乳酸含量とは、一般的な手法である検体を過塩素酸によって処理した後、高速液体クロマトグラフ法で測定した結果得られるデータに基づくものであり、よって乳酸のみならず、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等の塩の形態で含有するものも一括した量である。
【0016】
そして、本発明のマスキング剤で使用する乳清ミネラルは、固形分0.1質量%水溶液のpHが6.0〜7.5、好ましくはpHが6.5〜7.0である。6.0未満であると、マスキング効果が弱くマスキング剤として適さなくなり、7.5を超えると、製造時や使用時の加熱で褐変等が発生し易くなる。
【0017】
なお、乳清ミネラルを得る工程において、その出発物質としては、乳又はホエーを使用する。
上記乳としては、牛乳をはじめ、人乳、山羊乳、馬乳、さらにそれらを使用した脱脂乳、加工乳、及び、クリームなどが挙げられ、そのいずれでも使用することが可能である。また上記ホエーとしては、上記乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエー、さらには、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエー、乳を限外濾過することによって得られるホエーなど、いずれでも使用することができる。
さらに、チーズを製造する際に副産物として得られるホエー、及び、カゼイン製造の際に副産物として得られるホエーは、その製造方法により酸性ホエーと甘性ホエーがあるが、そのどちらでも使用することができる。
【0018】
本発明のマスキング剤を得るためには、上記乳又はホエーの中でも、特にマスキング効果が高いことから、牛乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエー、又はカゼイン製造の際に副産物として得られるホエーを使用することが好ましく、さらに好ましくは、牛乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られるホエーを使用し、特に好ましくは、牛乳を使用してチーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーを使用する。
【0019】
上述のとおり、本発明で使用する乳酸含量が高くカルシウム含量が低い乳清ミネラルを得るためには、従来の乳清ミネラルは直接使用することができない。よって、上記乳酸含量であり、上記カルシウム含量の乳清ミネラルを得るには、乳又はホエーから、膜分離、及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖と蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエーを用いる方法、あるいは、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得ることができるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては特に限定されず、調温保持による沈殿法やイオン交換など公知の方法を採ることができる。また、固形分中の灰分含量は、例えばナノ濾過膜分離時の膜処理条件を調整することによって調製でき、またpHは、例えば出発原料として使用する甘性ホエーを得る際のチーズ製造時の発酵時間を調整することで調製できる。
【0020】
なお、ホエーとして乳酸発酵を強度にすすめるか、あるいは、酸性ホエーを得る際に大量の乳酸を用い乳酸量を増やす方法なども考えられるが、得られた乳清ミネラルが(d)のpH条件を満たすことが困難となる。こうした場合、さらにアルカリ等の添加による中和工程を行う方法もあるが、味質が低下するため好ましくない。
【0021】
上記乳清ミネラルは、固形分が20質量%以上であれば流動状、ペースト状、粉末状等どのような形態であってもよいが、飲食品への混合性が良好であること、また、保存時の吸湿性が防止されることから粉末状であることが好ましい。
なお、流動状やペースト状である場合、その固形分は好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは40〜70質量%であり、粉末状である場合、その固形分は好ましくは40〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
【0022】
本発明のマスキング剤は、上記乳清ミネラルを有効成分として含有するものである。
本発明のマスキング剤は、上記乳清ミネラルをそのまま単独で使用してもよく、また各種の添加剤と混合して、常法により粉体、顆粒状、錠剤、液剤などの形状に製剤化して用いてもよい。これらの製剤中の上記乳清ミネラルの含有量は、乳清ミネラル由来の固形分として好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは20〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
【0023】
粉体、顆粒状、錠剤などの形状に製剤化するための添加剤としては、アルギン酸類、ペクチン、海藻多糖類、カルボキシメチルセルロース等の増粘多糖類や、乳糖、でんぷん、二酸化ケイ素等の賦形剤、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、ステビア等の甘味料、微粒二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、リン酸二ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の固結防止剤、ビタミン類、香料、酸化防止剤、光沢剤などが挙げられ、これらの一種または二種以上のものが適宜選択して用いられる。本発明のマスキング剤中における上記各種添加剤の含有量は、添加剤によって異なるが、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
液剤の形状に製剤化する場合は、液体に溶解または分散させることにより得られる。そのような液体としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。本発明のマスキング剤中における上記液体の含有量は、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0024】
本発明のマスキング剤は、様々な雑味や強すぎる風味のマスキングに適用でき、例えば苦味、渋味、収れん味、辛味および酸味等が挙げられる。また、缶詰やレトルト食品などの加熱殺菌食品における、いわゆる缶詰臭やレトルト臭のマスキングについても適している。中でも本発明のマスキング剤は苦味のマスキングに特に適している。
【0025】
次に本発明の飲食品について述べる。
本発明の飲食品は、本発明のマスキング剤を含有する飲食品である。
本発明の飲食品における、本発明のマスキング剤の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や、求めるマスキング効果の強さに応じて適宜決定されるが、飲食品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
【0026】
なお、本発明でいうところの飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、スープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、ソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、クッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、おにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、ラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、フライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、ガム等の菓子類、饅頭、カステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、スポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、サワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳や乳製品等があげられる。
【0027】
次に本発明の医薬品について述べる。
本発明の医薬品は、本発明のマスキング剤を含有する医薬品である。
本発明の医薬品における、本発明のマスキング剤の含有量は、特に限定されず、使用する医薬品や、求めるマスキング効果の強さに応じて適宜決定されるが、医薬品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
【0028】
なお、本発明でいうところの医薬品としては、経口医薬品であれば特に限定されるものではなく、例えば、カゼ薬、胃腸薬、頭痛薬、歯磨き剤等があげられる。
【0029】
次に、本発明の飲食品のマスキング方法、及び本発明の医薬品のマスキング方法について述べる。
本発明の飲食品のマスキング方法は、上記本発明のマスキング剤を飲食品に添加するものであり、飲食品の基本風味を維持したまま、飲食品の雑味や強すぎる風味をマスキングするものである。
本発明のマスキング剤を飲食品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる飲食品の加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
【0030】
また、本発明の医薬品のマスキング方法は、上記本発明のマスキング剤を医薬品に添加するものであり、医薬品の基本薬効を維持したまま、医薬品の雑味や強すぎる風味をマスキングするものである。
本発明のマスキング剤を医薬品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる医薬品の加工時、調剤時、服用時等に、医薬品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
【0031】
本発明のマスキング剤の、飲食品への添加量は、上述のとおり、飲食品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
本発明のマスキング剤の、医薬品への添加量は、上述のとおり、医薬品100質量部に対し、マスキング剤に含まれる乳清ミネラルの固形分として、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.0005〜0.2質量部、さらに好ましくは0.001〜0.1質量部である。0.0001質量部未満、又は、0.5質量部を超えると、マスキング効果が認められ難く、また0.5質量部を超えると、乳清ミネラルの苦味が感じられるおそれがある。
【実施例】
【0032】
<乳清ミネラルの製造>
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分97質量%の乳清ミネラル1を得た。
【0033】
〔製造例2〕
上記乳清ミネラル1の加熱処理工程において、処理時間を半分にした以外は同様にして乳清ミネラル2を得た。
【0034】
〔製造例3〕
上記乳清ミネラル1の出発原料として、乳酸発酵時間を20%短縮した甘性ホエーを使用した以外は同様にして乳清ミネラル3を得た。
【0035】
〔製造例4〜7〕
さらに、上記乳清ミネラルを得る過程で、pH、及び乳酸含量を出発原料に使用するチーズの発酵時間で調整し、固形分中の灰分含量をナノ濾過膜分離時の膜処理条件を調整することで調整し、カルシウム含量を加熱処理の処理時間で調整し、下記の表1の組成である製造例4〜7の乳清ミネラル4〜7を得た。
【0036】
〔製造例8〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離後、さらに、逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮した。その後、さらに80℃20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレ-ターで濃縮し、固形分が40質量%の流動状の乳清ミネラル8を得た。
【0037】
以下の表1に各製造例において得られた乳清ミネラルの、(a)固形分中の灰分含量、(b)固形分中のカルシウム含量、(c)灰分中のカルシウム含量、(d)固形分中の乳酸含量、(e)固形分0.1質量%水溶液のpHを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
〔実施例1〕
グレープフルーツをジューサーにて絞りグレープフルーツジュースを得た。上記製造例1で得た乳清ミネラル1をそのまま本発明のマスキング剤Aとして、この絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース1を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース1は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0040】
〔実施例2〕
上記製造例2で得た乳清ミネラル2をそのまま本発明のマスキング剤Bとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース2を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース2は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0041】
〔実施例3〕
上記製造例3で得た乳清ミネラル3をそのまま本発明のマスキング剤Cとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品であるグレープフルーツジュース3を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース3は、無添加のグレープフルーツジュースに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0042】
〔比較例1〕
上記製造例4で得た乳清ミネラル4をそのまま比較例のマスキング剤Dとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース4を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース4は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。また、若干のにごりが見られた。
【0043】
〔比較例2〕
上記製造例5で得た乳清ミネラル5をそのまま比較例のマスキング剤Eとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース5を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース5は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
【0044】
〔比較例3〕
上記製造例6で得た乳清ミネラル6をそのまま比較例のマスキング剤Fとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース6を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース6は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
【0045】
〔比較例4〕
上記製造例7で得た乳清ミネラル7をそのまま比較例のマスキング剤Gとして、上記絞りグレープフルーツジュース100質量部に対し0.005質量部添加し、十分に混合し、比較例の飲食品であるグレープフルーツジュース7を得た。得られた本発明のグレープフルーツジュース7は、無添加のグレープフルーツジュースとほぼ同等の苦味を有するものであり、上記マスキング剤A〜Cで見られた効果はまったく得られなかった。
【0046】
〔実施例4〕
健胃散(マルピー/大日本住友製薬)100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の医薬品である健胃散を得た。得られた本発明の健胃散は、無添加の健胃散に比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて服用しやすいものであった。
【0047】
〔実施例5〕
無糖レギュラーコーヒー(モカブレンド)のブラックコーヒー100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.005質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるブラックコーヒーを得た。得られた本発明のブラックコーヒーは、無添加のブラックコーヒーに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0048】
〔実施例6〕
ラガービール100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.005質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるビールを得た。得られた本発明のビールは、無添加のビールに比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0049】
〔実施例7〕
センブリ(日本薬局方センブリ/山本漢方製薬(株))を所定の方法で煎じセンブリ液とした。このセンブリ液100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の医薬品であるセンブリ液を得た。得られた本発明のセンブリ液は、無添加のセンブリ液に比べその基本風味バランスを変えることなく、苦味だけが低減されており、極めて服用しやすいものであった。
【0050】
〔実施例8〕
食酢を水で5倍希釈し食酢飲料とした。上記製造例8で得た乳清ミネラル8を固形分10質量%となるよう水で希釈し、これをUHT殺菌処理(殺菌温度140℃、保持時間6秒)し、さらに、孔径φ0.2μmの濾過膜を通過させたものを本発明のマスキング剤Hとした。
なお、製造例8で得られた乳清ミネラル8は目視で若干の濁りが見られ、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0020であったのに対し、本発明のマスキング剤Hは目視で透明であり、分光光度計により波長660nmにて吸光度を測定したところ、Abs. 0.0000であった。また、細菌検査を行ったところ、一般生菌数が陰性であり、常温保管可能なものであった。
上記食酢飲料100質量部に対し上記マスキング剤Hを0.05質量部添加し、十分に混合し、本発明の飲食品である食酢飲料1を得た。得られた本発明の食酢飲料1は、無添加の食酢飲料に比べその基本風味バランスを変えることなく、酸味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0051】
〔実施例9〕
シロップ漬けみかん(固形分55質量%)の缶詰めを開封し、シロップ漬けみかん100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.002質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるシロップ漬けみかんを得た。得られた本発明のシロップ漬けみかんは、無添加のシロップ漬け缶詰みかんに比べその基本風味バランスを変えることなく、缶詰独特の加工臭だけが低減されており、極めて食べやすいものであった。
【0052】
〔実施例10〕
豆乳(おいしい無調製豆乳/紀文(株))100質量部あたり、上記マスキング剤Hを0.2質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品である豆乳を得た。得られた本発明の豆乳は、無添加の豆乳に比べその基本風味バランスを変えることなく、豆臭さだけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0053】
〔実施例11〕
水100mlに、塩化マグネシウム4mg、塩化ナトリウム105mg、塩化カリウム30mgを加え、更に、液糖5.0g、グレープフルーツ香料1mgを加え、十分に混合し、スポーツドリンクを得た。このスポーツドリンク100質量部あたり、上記マスキング剤Hを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるスポーツドリンクを得た。得られた本発明のスポーツドリンクは、無添加のスポーツドリンクに比べその基本風味バランスを変えることなく、収れん味だけが低減されており、極めて飲みやすいものであった。
【0054】
〔実施例12〕
プレーンヨーグルト100質量部あたり、上記マスキング剤Aを0.02質量部添加、十分に混合し、本発明の飲食品であるプレーンヨーグルトを得た。得られた本発明のプレーンヨーグルトは、無添加のプレーンヨーグルトに比べ、酸味だけが低減されており、極めて食べやすいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)(b)(c)(d)(e)の全ての条件を満たす乳清ミネラルを有効成分として含有するマスキング剤。
(a)乳清ミネラルの固形分中の灰分含量が25〜75質量%
(b)乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満
(c)乳清ミネラルの灰分中のカルシウム含量が5質量%未満
(d)乳清ミネラルの固形分中の乳酸含量が1.0質量%以上
(e)乳清ミネラルの固形分0.1質量%水溶液のpHが6.0〜7.5
【請求項2】
苦味マスキング剤であることを特徴とする請求項1記載のマスキング剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマスキング剤を含有する飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2記載のマスキング剤を含有する経口医薬品。
【請求項5】
請求項1又は2記載のマスキング剤を飲食品に添加することを特徴とする飲食品のマスキング方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載のマスキング剤を医薬品に添加することを特徴とする経口医薬品のマスキング方法。

【公開番号】特開2008−54667(P2008−54667A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160737(P2007−160737)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】