説明

マスク、及びマスクの製造方法

【課題】 シリコンマスクを形成するエッチング処理時に、エッチング処理を最適な時期に終了させることが容易なマスク、及びマスクの製造方法を提案する。
【解決手段】 被成膜基板に対して所定パターンを有する薄膜を形成するためのシリコンマスクMが、シリコン基材S上に、所定パターンに対応する開口部20と、開口部20を形成する際の形成状態を検知可能な検知部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク、及びマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称する。)装置は、薄膜を積層した構造を有する自発光型の高速応答性表示素子を備えるため、軽くて動画対応に優れた表示パネルを形成でき、近年ではFPD(Flat Panel Display)テレビ等の表示パネルとして非常に注目されている。その代表的な製造方法としては、フォトリソグラフィ技術を用いることにより、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の透明陽極を所望の形状にパターニングし、更に透明陽極上に蒸着法を用いて有機材料を積層成膜し、その後に陰極を形成する方法が知られている。
特に、フルカラーの有機EL装置を製造する場合には、R,G,Bの各色の有機材料をメタルマスクマスク等を介して蒸着することによりパターン形成する必要がある。
【0003】
ところで、パネルサイズが大きくなると、それに応じて大きなメタルマスクを形成する必要がある。しかしながら、大きくて薄いメタルマスクを高精度に作成することは非常に難しく、また、メタルマスクの熱膨張係数はガラス等の被成膜基板に比べて非常に大きいため、蒸着時の輻射熱の作用によってメタルマスクの寸法が被成膜基板の寸法よりも大きくなり、密着されていたメタルマスクと被成膜基板とがずれてしまい、蒸着部分において寸法の誤差が生じる場合がある。このため、メタルマスクを用いた場合には、およそ20インチ以下のパネルサイズの有機EL装置が、製造の限界と言われている。
【0004】
そこで、最近では、シリコン基板を用いてマスクを製造する技術が提案されている。この技術は、フォトリソグラフィやドライエッチング等の半導体製造技術を用いてシリコン基板自体をマスクにするというものである。シリコンは熱膨張係数がガラス等の被成膜基板と略同じであり、熱膨張に起因するずれが生じることはない。更に、加工精度も非常に高い。
また、結晶異方性エッチング法を用いることにより、(100)面方位のシリコンウエハをエッチングし、基板主面に対して開口内面が傾斜したテーパ状の開口部を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−308972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術では、テーパ状の開口部の形成方法としては、シリコン基材(シリコンウエハ)をエッチング液に所定時間、浸漬することにより行われている。そして、エッチング液への浸漬時間を一定に管理することにより、同一形状のテーパ状開口部を有するマスクを形成するようにしている。このため、予め複数のシリコン基材に対してエッチング処理を施し、最適なエッチング時間を求めるようにしていた。
しかしながら、最適なエッチング時間を求めるためには、
エッチング処理を施した複数のシリコン基材を破壊して、電子顕微鏡でテーパ状開口部の形状を観察する必要があった。
また、最適なエッチング時間を求めて、エッチング時間を一定に管理したとしても、エッチング条件を常に一定に再現することが困難であるため、例えば、エッチング液の濃度や温度等のエッチング条件がばらつくと、エッチング処理の過不足が発生してしまう。
具体的には、エッチング処理が過度に行われた場合には、マスクの厚みが薄くなりすぎて、必要な強度が得られず、マスクに撓みやクラックが発生しまう。一方、エッチング処理が不十分であると、テーパ状開口部が厚くなってしまい、マスク使用時(蒸着処理時)に高精細なパターンの薄膜の形成が困難となってしまう。
このように、シリコン基材のエッチング処理時に、単にエッチング液への浸漬時間を管理するだけでは、エッチング処理を最適な時期に終了させることができないので、同一形状のテーパ状開口部を有するマスクを製造することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、シリコンマスクを形成するエッチング処理時に、エッチング処理を最適な時期に終了させることが容易なマスク、及びマスクの製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマスク、及びマスクの製造方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明は、被成膜基板に対して所定パターンを有する薄膜を形成するためのシリコンマスクであって、シリコン基材上に、前記所定パターンに対応する開口部と、前記開口部を形成する際の形成状態を検知可能な検知部と、を備えるようにした。
この発明によれば、検知部により、開口部をエッチング処理により形成する際に、開口部の形成状態が検知可能となるので、最適に時期にエッチング処理を終了させることができる。これにより、所望の形状の開口部(所定パターン)を有するマスクを容易に得ることができる。
【0008】
検知部としては、前記開口部が有する斜面と略平行な斜面を有するものや、前記検知部が、平面視略六角形に形成されるものが用いられる。検知部が開口部と同時にエッチング処理されるように形成されるので、開口部が有する斜面と略平行な斜面が形成され、また、シリコンがダイヤモンド構造を有することから平面視略六角形に形成される。
【0009】
第2の発明は、マスクの製造方法が、シリコン基材上に酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜に対して所定パターン及び検知用パターンを形成する工程と、前記検知用パターンを監視しつつ、前記所定パターン及び検知用パターンを介して前記シリコン基材に対してエッチング処理を施して、前記所定パターンに対応した開口部及び検知部を形成するエッチング工程と、前記酸化膜を前記シリコン基材から剥離する工程と、を有するようにした。
この発明によれば、開口部の形成と同時に、検知用パターンを形成し、この検知用パターンを介して基材に対してエッチング処理を施すので、開口部と同一条件で形成される部位が開口部(パターン部)が近傍に配置される。そして、エッチング処理時に、開口部と同一条件で形成される部位(検知用パターン)を監視することにより、開口部の形成状態を検知することができる。したがって、エッチング条件の変化に関わらず、エッチング処理の最適な終了時期を求めることができる。また、マスクを破壊する必要がなくなるので、管理コスト等を抑えることができる。
【0010】
また、前記エッチング工程が、前記検知用パターンの監視結果に基づいて、前記エッチング処理を終了させる工程を含むものでは、検知用パターンを監視することにより、開口部の形成状態を検知することができるので、最適な時期にエッチング処理を終了させることで、所望の形状の開口部を有するマスクを容易に得ることができる。
また、前記検知用パターンに対する光の反射範囲の変化に基づいて、前記エッチング処理の終了時期を判断する工程を含むものでは、酸化膜からなる検知用パターンが光透過性膜であることから、下層のシリコン基材がエッチングされると検知用パターンの光の反射範囲が変化するので、この反射範囲を監視することで、開口部の形成状態を容易に検知することができる。
また、検知用パターンが、平面視略円形に形成されるものでは、下層のシリコン基材が均等にエッチングされるので、検知用パターンを平面視略円形とすることで、光の反射範囲の変化が監視しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のマスク、及びマスクの製造方法の実施形態について図を参照して説明する。
なお、以下の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0012】
〔マスク〕
図1は、本発明のマスクの構造を説明するための図であって、図1(a)はマスクの断面斜視図、図1(b)はパターン部の断面図、図1(c)は検知部の平面図、図1(d)は検知部の断面図である。
図1(a)に示すように、マスクMは、(110)面方位を有するシリコン基材(シリコンウエハ)を後述の製造工程によって加工されたものであり、当該マスクMの外形をなす外枠部10と、当該外枠部10の内側に設けられた複数のマスク開口部24を有するパターン部20と、を備えた構成となっている。
外枠部10は、シリコン基材の厚みをそのまま利用して形成されたものである。
パターン部20は、外枠部10から連結されると共にX方向及びY方向に延在して設けられた複数の梁部22と、複数の梁部22により囲まれるように開口する複数のマスク開口部24を備える構成となっている。つまり、梁部22が網目状に構成されることで、複数のマスク開口部24がマトリクス状に配置されている。
なお、パターン部20は、複数のマスク開口部24がマトリクス状に等ピッチに配置された構成に限らず、成膜対象物に形成するパターンに応じて適宜変更可能である。
【0013】
図1(b)に示すように、パターン部20の梁部22は、断面が、マスクMの表側主面MT及び裏側主面MBに対して垂直方向(Z方向)に形成された垂直面22Aと、表側主面MT及び垂直面22Aに対して所定の角度に傾斜して形成された傾斜面22Bとを有するように形成される。
垂直面22AのZ方向に長さは、約10μm程度に形成される。また、傾斜面22Bの結晶面は、(111)面であり、(110)面方位シリコン基板に対して結晶異方性エッチング処理を施すことによって形成できる面なので、研削加工等の物理的な加工が不要であって、化学的処理によって容易に形成される。このように、梁部22に垂直面22Aと傾斜面22Bとを形成することにより、マスク開口部24がテーパー状に形成される。
なお、裏側主面MBは、蒸着やスパッタ等の各種成膜を行う際に成膜対象物(ガラス基板等)と対向させる面である。また、マスクMの表側主面MTは、各種成膜を行う際に材料気体や原子がマスク開口部24に向けて入射する面である。
【0014】
このように、マスクMは、パターン部20の梁部22に垂直面22Aが設けられているので、撓みや曲げが生じ難くなっている。また、傾斜面22Bが設けられているので、マスク開口部24が表側主面MTに向けて口径が広がるテーパ形状を有することとなる。したがって、このマスクMを用いて蒸着法やスパッタ法等の各種成膜を施した際には、表側主面MTに対して斜め方向から入射する材料気体や原子を、マスク開口部24のテーパ形状に沿って、裏側主面MB側に配置した成膜対象物に誘導することができる。これにより、成膜対象物にパターン部20に応じた薄膜を正確に形成することができる。
【0015】
また、図1(a)に示すように、表側主面MTのパターン部20の近傍には、検知部15が形成される。検知部15は、パターン部20(マスク開口部24)を形成する際に、マスク開口部24(梁部22)の形成状態を検知を可能とする部材である。すなわち、検知部15は、マスクMを用いて成膜する際に機能するものではなく、マスクMをシリコン基材から化学的処理によって形成する際に、その機能を発揮するものである。
なお、検知部15は、図1(c)に示すように、平面視略六角形の形状を有し、また、図1(d)に示すように、表側主面MTに対して所定の角度に傾斜して形成された傾斜面15Aを有するように形成される。この傾斜面15Aは、傾斜面22Bと略平行に形成される。
【0016】
〔マスクの製造方法〕
次に、マスクMの製造方法について、図2及び図3を参照して説明する。
図2及び図3は、マスクMを製造する工程を説明する工程図である。
まず、図2(a)に示すように、(110)面方位のシリコン基材Sに酸化シリコン(SiO)からなる耐エッチング膜30を形成する。
耐エッチング膜30は、後述するように結晶異方性エッチング液(例えば、テトラメチル水酸化アンモニウム等のアルカリ水溶液)に耐性を有する膜である。耐エッチング膜30は、シリコン基材Sに湿式熱酸化処理を施すことによって形成され、その膜厚は、およそ1μm程度が好ましい。なお、熱酸化により形成した酸化シリコン膜以外にも、例えばCVD法により形成した酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、AuやPtのスパッタ膜等からなるものであっても良い。
【0017】
次に、図2(b)に示すように、シリコン基材Sの両面(表側主面MT、裏側主面MB)に形成した耐エッチング膜30に、複数の開口部31を形成する。この開口部31の配列パターンは、形成するパターン部20(マスク開口部24)に対応するものとする。
なお、開口部形成は、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術により行われる。
【0018】
次いで、図2(c)に示すように、表側主面MTの耐エッチング膜30の一部を薄膜化し、薄膜部32を形成する。すなわち、耐エッチング膜30をシリコン基材Sの表面まで貫通するものでなく、底部に薄膜の酸化シリコン膜を残存した形で形成するものとする。耐エッチング膜30を薄膜化した薄膜部32の形成領域は、パターン部20の形成領域に対応するものとする。
また、表側主面MTの耐エッチング膜30のうち、パターン部20の形成領域とは異なる領域(図1参照)に、薄膜部32と同様に薄膜部33を形成する。薄膜部33は、平面視(表側主面MT側から見ると)略円環形の溝部として形成される。すなわち、薄膜部33内に、薄膜化されない耐エッチング膜30が平面視略円形に残存する。平面視略円形に形成される耐エッチング膜30は、後工程において、光学顕微鏡により監視される部位であり、以下、検知用パターン34と呼ぶ。
【0019】
次いで、図2(d)に示すように、耐エッチング膜30をマスクとしてシリコン基材Sのエッチングを行い、開口部31の配列パターンに対応した開口部35を形成する。この開口部35は、その後、マスク開口部24となるものである。
具体的には、耐エッチング膜30を備えるシリコン基材Sを低濃度(18%)の水酸化カリウム水溶液(KOHエッチング液)に所定時間浸漬することにより、異方性エッチングを行う。
【0020】
次いで、図3(a)に示すように、表側主面MTの耐エッチング膜30のうち、薄膜化した耐エッチング膜30、すなわち、薄膜部32,33を剥離する。これにより、表側主面MT側のパターン部20の形成領域に対応する領域、及び検知用パターン34の周囲から耐エッチング膜30を剥離し、シリコン基材Sを露出させる。
【0021】
次いで、図3(b)に示すように、再び、シリコン基材Sを高濃度(35%)の水酸化カリウム水溶液(KOHエッチング液)に所定時間浸漬することにより、異方性エッチングを行う。
そして、シリコン基材Sの表側主面MT側がエッチングされ、パターン部20の梁部22(マスク開口部24)が形成され、パターン部20(梁部22)の厚さが約70μm程度まで薄くなる。
この際、梁部22には、エッチング速度の遅い(111)面、すなわち傾斜面22Bが出現するので、テーパ形を備えた梁部22(マスク開口部24)が形成される。
同様に、検知用パターン34の下方のシリコン基材Sもエッチングされ、エッチング速度の遅い(111)面が出現する。この面は、傾斜面22Bと略平行な面であって、上述した傾斜面15Aである。すなわち、検知用パターン34の下方のシリコン基材Sは、上述した検知部15となる。なお、検知部15は、平面視すると、略六角形にエッチングされる(図1(c),(d)参照)。
【0022】
そして、図3(c)に示すように、エッチング処理を終了させた後に、耐エッチング膜30を剥離することにより、マスクMの製造が完成する。
【0023】
ところで、上述したマスク開口部24(梁部22)の形成工程(図3(d)参照)では、梁部22の垂直面22AのZ方向に長さが、約10μm程度となった時点で、処理を終了させることが、マスクMの設計事項として要求されている。すなわち、シリコン基材Sがエッチングされて、梁部22の傾斜面22Bが出現し、梁部22が所望の形状となった時点で、エッチング処理を終了させることが必要となる。特に、エッチング条件に関わらず、エッチング処理終了時期を検知する必要がある。
このため、検知用パターン34を光学顕微鏡等により監視し、検知用パターン34の監視結果に基づいて、エッチング処理終了時期を検知するようにしている。
【0024】
上述したように、検知用パターン34の下方に存在するシリコン基材S(検知部15)は、梁部22(マスク開口部24)と同時にエッチングされる。すなわち、検知用パターン34の下方に、梁部22(マスク開口部24)と同一のエッチング状態が出現している。
したがって、検知用パターン34の下方に存在する検知部15のエッチング状態(形成状態)を監視することにより、梁部22(マスク開口部24)のエッチング状態(形成状態)を検知することができる。
また、検知用パターン34は、シリコン基材S上に形成された酸化シリコン(SiO)からなる耐エッチング膜30であって、光透過性を有する膜であることから、検知用パターン34を表側主面MT側から光学顕微鏡等により観察することにより、検知用パターン34の下方に存在する検知部15のエッチング状態を監視することができる。
なお、検知用パターン34の下方に存在する検知部15のエッチング状態の監視方法としては、検知部15の形状を電子顕微鏡により観察する必要はなく、検知用パターン34の光の反射範囲を監視することにより行われる。
【0025】
図4は、検知部15のエッチング状態と、検知用パターン34の光の反射範囲との関係を時間順に示す図である。なお、図4(a)〜(d)において、左側の図は検知部15及び検知用パターン34の断面図、右側の図は検知部15及び検知用パターン34の平面図である。
図4(a)〜(d)に示すように、検知部15のエッチングが進行するに伴って、検知用パターン34の下方に検知部15が形成される。そして、検知部15は、傾斜面15Aを有するので、検知用パターン34と検知部15との接触範囲が徐々に狭くなる。
このため、検知用パターン34を表側主面MT側から観察すると、検知用パターン34と検知部15とが接触している範囲と、接触していない範囲(シリコン基材Sがエッチングされた範囲)とが、明確に区別することが可能となる。すなわち、検知用パターン34と検知部15とが接触している範囲では、検知用パターン34を透過した光が検知部15に上端面(平坦な表側主面MT)において反射するため、明るく見える。一方、検知用パターン34と検知部15とが接触していない範囲では、検知用パターン34を透過した光が検知部15の傾斜面15Aにおいて、斜め方向に反射してしまうので、暗く見える。
つまり、検知用パターン34を監視すると、明るい範囲がエッチングの進行に伴って、徐々に小さくなる。すなわち、光の反射範囲が徐々に変化する。
【0026】
そして、検知用パターン34における光の反射範囲(例えば、明るい範囲の直径)と、梁部22の垂直面22AのZ方向に長さとは、同時にエッチングされていることから、比例関係にある。
したがって、予め両者の関係を実験等により求めておくことにより、検知用パターン34における光の反射範囲の直径が所定の値となった時に、エッチング処理を終了させることで、梁部22の垂直面22AのZ方向に長さを常に一定に形成することが可能となる。
なお、検知用パターン34を平面視略円形に形成したのは、上述したように、検知用パターン34における光の反射範囲が略円形(正確には略六角形)となり、反射範囲の変化が観察しやすくなるという利点があるからである。
【0027】
また、検知用パターン34の大きさ(直径)を調整して、梁部22の垂直面22AのZ方向に長さが所望の長さ(約10μm)となった時に、検知用パターン34における光の反射範囲の直径がゼロとなるようにすることが望ましい。すなわち、検知用パターン34が検知部15とが接触する範囲がエッチングにより完全に削られて、検知用パターン34における光の反射範囲(明るい範囲の直径)が消滅するようにする。これにより、検知用パターン34における光の反射範囲(明るい範囲の直径)が消滅した時に、エッチング処理を終了させればよいことになる。これにより、検知用パターン34における光の反射範囲の監視が容易化されるので、光の反射範囲の監視が自動化可能となる。
【0028】
以上のように、マスクMは、パターン部20の形成処理時(エッチング処理時)に、検知用パターン34における光の反射範囲を監視するようにしたので、エッチング条件(エッチング液濃度、温度等)が一定でなくとも、常にエッチング処理を最適な時期に終了させることが可能となる。したがって、所望のパターン形状を有するマスクMを安定して製造することができる。
【0029】
〔マスクの使用方法〕
次に、マスクの使用方法について、図5を参照して説明する。
図5は、マスクMを使用するマスク蒸着装置を示す模式図である。
蒸着装置50は、真空チャンバ52の底部に蒸着源54を配置し、その上方にマスクMを配置し、更にその上に成膜対象物であるガラス基板(被成膜基板)LマスクMと密着させながら支持する。そして、蒸着時は膜厚分布をよくするために、ガラス基板LとマスクMを固定したまま回転させる。
また、蒸着源54が発している蒸着物の速度(蒸着速度)は水晶振動子の膜厚センサ56より管理され、厳密な膜厚管理を行っている。膜厚センサ56によって蒸着した膜の膜厚が所定の値に達した際には、蒸着源54の直上にあるシャッター58を閉じて、蒸着を終了し、マスクMとガラス基板Lの固定を解除し、ガラス基板Lのみを搬出する。
なお、本実施形態においては、マスクMを蒸着用マスクとして用いる場合について説明したが、例えばスパッタリング用マスクや、CVD用マスクとして用いることもできる。
【0030】
〔有機EL装置の製造方法〕
次に、マスクMを用いた有機EL装置の製造方法について、図6を参照して説明する。ここでは、蒸着対象物であるガラス基板Lに、有機EL装置形成用材料を蒸着する場合について説明する。
まず、図6(a)に示すように、ガラス基板L上には、薄膜トランジスタ等のスイッチング素子を形成し、そのスイッチング素子に接続するように陽極40を設ける。更に、その陽極40に接続するように、正孔注入層41及び正孔輸送層42を形成する。
【0031】
次に、マスクMとガラス基板L(正孔輸送層42)とを密着した状態で、赤色発光層形成用材料Rをガラス基板L上に蒸着する。ガラス基板L上には、マスクMのマスク開口部24に応じて赤色発光層形成用材料Rが蒸着される。
【0032】
次いで、図6(b)に示すように、ガラス基板Lに対するマスクMの位置をずらし(あるいはマスクMを別のマスクMと交換し)、マスクMとガラス基板L(正孔輸送層42)とを密着した状態で、緑色発光層形成用材料Gをガラス基板L上に蒸着する。ガラス基板L上には、マスクMのマスク開口部24に応じて緑色発光層形成用材料Gが蒸着される。
【0033】
次いで、図6(c)に示すように、ガラス基板Lに対するマスクMの位置をずらし(あるいはマスクMを別のマスクMと交換し)、マスクMとガラス基板L(正孔輸送層42)とを密着した状態で、青色発光層形成用材料Bをガラス基板L上に蒸着する。ガラス基板L上には、マスクMのマスク開口部24に応じて青色発光層形成用材料Bが蒸着される。
以上のようにして、ガラス基板L上にRGB3色の有機材料からなる発光層43が形成される。
【0034】
次に、図6(d)に示すように、発光層43の上に、電子輸送層44、及び陰極45が形成されることにより、有機EL装置DPが形成される。
なお、本実施形態に係る有機EL装置DPは、発光層を含む発光素子からの発光をガラス基板L側から装置外部に取り出す形態であり、ガラス基板Lの形成材料としては、透明なガラスの他に、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられる。特に、ガラス基板Lの形成材料としては安価なソーダガラスが好適に用いられる。一方、ガラス基板Lと反対側から発光を取り出す形態の場合には、ガラス基板Lは不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0035】
なお、本実施の形態の有機EL装置DPはアクティブマトリクス型であり、実際には複数のデータ線と複数の走査線とが格子状に配置され、これらデータ線や走査線に区画されたマトリクス状に配置された各画素にスイッチングトランジスタやドライビングトランジスタ等の駆動用TFTを介して上記の発光素子が接続されている。そして、データ線や走査線を介して駆動信号が供給されると電極間に電流が流れ、発光素子が発光して透明な基板の外面側に光が出射され、その画素が点灯する。なお、本発明は、アクティブマトリクス型に限られず、パッシブ駆動型の表示素子にも適用できることはいうまでもない。
【0036】
〔電子機器〕
次に、上記有機EL装置DPを備えた電子機器の例について説明する。
図7(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図7(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置DPを用いた表示部を示している。
【0037】
図7(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図7(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記の有機EL装置DPを用いた表示部を示している。
図7(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図7(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記の有機EL装置DPを用いた表示部を示している。
図7(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施の形態の有機EL装置DPを備えているので、発光光の輝度の均一化を達成し、表示ムラがない、鮮やかな画像表示が可能な表示部を備えた電子機器となる。
【0038】
なお、電子機器としては、前記の携帯電話などに限られることなく、種々の電子機器に適用することができる。例えば、ノート型コンピュータ、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マスクの構造を示す断面斜視図、及び詳細断面図である。
【図2】マスクの製造方法を説明するための工程図である。
【図3】図2に続くマスクの製造工程を示す図である。
【図4】検知部のエッチング状態と、検知用パターンの光の反射範囲との関係を時間順示す図である。
【図5】マスク蒸着装置の構成を示す説明図である。
【図6】有機EL装置の製造方法を説明するための工程図である。
【図7】有機EL装置を備える電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
M…マスク(シリコンマスク)、 MB…裏側主面、 MT…表側主面、 S…シリコン基材、 15…検知部、 15A…傾斜面(斜面)、 22…梁部、 22B…傾斜面(斜面)、 24…マスク開口部(開口部)、 30…耐エッチング膜(酸化膜)、 34…検知用パターン、 43…発光層(薄膜)、 50…蒸着装置、 L…ガラス基板(被成膜基板)、 DP…有機EL装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜基板に対して所定パターンを有する薄膜を形成するためのシリコンマスクであって、
シリコン基材上に、
前記所定パターンに対応する開口部と、
前記開口部を形成する際の形成状態を検知可能な検知部と、
を備えることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記検知部は、前記開口部が有する斜面と略平行な斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記検知部は、平面視略六角形に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
シリコン基材上に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜に対して所定パターン及び検知用パターンを形成する工程と、
前記検知用パターンを監視しつつ、前記所定パターン及び検知用パターンを介して前記シリコン基材に対してエッチング処理を施して、前記所定パターンに対応した開口部及び検知部を形成するエッチング工程と、
前記酸化膜を前記シリコン基材から剥離する工程と、
を有することを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項5】
前記エッチング工程は、前記検知用パターンの監視結果に基づいて、前記エッチング処理を終了させる工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のマスクの製造方法。
【請求項6】
前記検知用パターンに対する光の反射範囲の変化に基づいて、前記エッチング処理の終了時期を判断する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のマスクの製造方法。
【請求項7】
前記検知用パターンは、平面視略円形に形成されることを特徴とする請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載のマスクの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−241541(P2006−241541A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60037(P2005−60037)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】