説明

マスク検査装置及び方法

実対象物の実際の画像を生成する光学結像系(5)と、光学結像系の既知の収差係数を考慮に入れた所望の形状の対象物の推定画像を計算する計算ユニット(12)と、実際の画像と計算ユニット(12)によって計算された画像との差を検出する画像解析ユニット(13)とを備える、対象物の光学検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物、特にマスクの光学検査に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6548312B1号は、リソグラフィ投影システム用のマスクを設計する方法を開示している。半導体集積回路装置のパターンの歪み又は位置ずれなどのパターン異常を阻止又は防止するために、光強度が、マスクのパターン・データDBPと、パターン露光装置のレンズの収差データDBLとに基づいて計算される。次いで、この光強度計算の結果は、パターン露光装置のレンズが収差を有しないという条件で計算された光強度の結果と比較される。その後、マスクのパターン・データの、許容可能なレベルを超えているパターン・データが、比較の結果に基づいて計算された補正量に従って、そのパターン・データが許容可能なレベルを超えないように補正される。この補正後にマスク製造データDBMを用いてマスクが製造され、次いで、パターン露光装置に載置されて、所定のパターンを半導体ウェハに転写する。
【0003】
この方法によって、同じパターン露光装置で使用するためのマスクが製造される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクの構造体は、極めて小型でもよく、例えば1μm未満、更には、波長以下、すなわちフィーチャ・アプローチ(feature approach)の寸法でもよく、又は、照明源の波長より小さくてもよい。例えば、かかるマスクは、マイクロリソグラフィにおいてDVD製造のために使用され、複製プロセス用マスターと呼ばれる。極めて小型に構造化された装置を製造する手法は、必要とされるマスク、及び使用されるマスクの構造を特徴付けるのを困難にしている。
【0005】
光学検査とは、対象物が、(あるマージンの範囲内で)その対象物に設計された寸法、すなわち理想的な形状と、透過又は反射特性とを有するかどうかを検査するために画像化される方法である。この方法は、特に、いわゆる位相シフト・マスク、及び極紫外線リソグラフィで使用されるような反射型に使用されるマスクに関連する。光学検査用の既知の装置は光学又は電子顕微鏡を含む。光学検査用の既知の方法では、画像は対象物の理想形状と比較される。画像と理想形状とのずれは、通常、対象物の欠陥に起因すると考えられる。
【0006】
光学検査は、典型的な波長が600、365(I線)、248(DUV)、193ナノメートルの波長の可視光、紫外線光、DUV放射線、及び13ナノメートルの波長のEUV放射線による検査を含み得る。或いは、電子などの荷電粒子を使用する検査ツールが存在する。検査されている対象物の画像と理想形状とのずれが、対象物の欠陥以外の原因から生じ得ることが、既知の装置及び既知の方法の欠点である。この場合、(あるマージンの範囲内で)理想形状を有する対象物が、その画像が理想形状とはかけ離れているという理由で拒絶され得、これは不正エラーと名付けられ、又は、設計された寸法を有しない対象物が、その画像が理想形状からずれていないという理由で容認され得、これは不正パスと名付けられる。
【0007】
EUVマスクが反射マスクであること、また、かかる顕微鏡は、透過モードではなく反射モードで使用されることになることに留意されたい。
【0008】
本発明の目的は、所望の対象物と実対象物とのずれの識別が改善された、対象物の光学検査装置及び方法を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、より信頼性が高い対象物検査、すなわち、不正エラーと不正パスとの数が減少された検査を可能とする、光学検査装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、実対象物の実際の画像を生成する光学結像系を備える、対象物の光学検査装置を提供することによって達成される。所望の形状の対象物の推定画像が、計算ユニットによって計算される。光学結像系の収差係数は、少なくとも部分的に知られており、推定画像の計算に含まれる。装置は、実際の画像と、計算ユニットによって計算された画像との差を検出する画像解析ユニットを備える。
【0011】
実際の対象物は、以下では実対象物とも呼ばれ、その光学検査方法は、少なくとも概略的に知られた収差を有する光学結像系を提供する工程と、光学結像系を使用することによって、実対象物の実際の画像を生成する工程と、光学結像系の測定された収差を考慮に入れて、理想対象物の所望の画像を計算する工程と、実際の画像と所望の画像との差を検出する工程とを備える。
【0012】
収差係数を決定する工程は別のパーティ(party)によって実施されることができる。
【0013】
本発明の他の実施形態では、対象物が結像系のほぼ焦点面にあるときに実際の画像が生成される。
【0014】
本発明の他の実施形態では、対象物が結像系の非焦点面にあるときに実際の画像が生成される。
【0015】
本発明の他の実施形態は、実際の画像を生成する工程であって、対象物が第1の平面にあるとき、第1の実際の画像を生成する副工程と、対象物が第1の平面とは異なる第2の平面にあるとき、第2の実際の画像を生成する副工程とを備える工程と、所望の画像を計算する工程であって、第1の平面にある対象物のための第1の所望の画像を計算する副工程と、第2の平面にある対象物のための第2の所望の画像を計算する副工程とを備える工程と、実際の画像と所望の画像との差を検出する工程であって、第1の実際の画像と第1の所望の画像との差を検出する副工程と、第2の実際の画像と第2の所望の画像との差を検出する副工程とを備える工程とを備える。
【0016】
本発明の他の実施形態では、対象物が結像系のほぼ焦点面にあるときに実際の画像が生成される。
【0017】
本発明の他の実施形態は、実際の画像を生成する工程であって、対象物が第1の平面にあるときに第1の実際の画像を生成する副工程と、対象物が第1の平面とは異なる第2の平面にあるときに第2の実際の画像を生成する副工程とを備える工程と、所望の画像を計算する工程であって、第1の平面にある対象物のための第1の所望の画像を計算する副工程と、第2の平面にある対象物のための第2の所望の画像を計算する副工程とを備える工程と、実際の画像と所望の画像との差を検出する工程であって、第1の実際の画像と第1の所望の画像との差を検出する副工程と、第2の実際の画像と第2の所望の画像との差を検出する副工程とを備える工程とを備える。
【0018】
本発明の他の目的では、対象物の画像が、多くの異なる平面で撮像され、対応する理想画像が計算ユニットによって計算される。対象物が撮像された画像は、対象物の対応する計算された画像と比較される。実画像と計算された画像との差が検出される。検出された差に基づいて、対象物が所定のマージンの範囲内で所望の形状を有するかどうかの決定が行われる。
【0019】
本発明の他の実施形態では、画像は焦点面より下と上とで撮像される。
【0020】
本発明の他の実施形態では、光学結像系の収差は、所定の期間内、例えば、予防保守の間、及び/又は特別な事象の前に求められる。特別な事象とは、例えば、記録前又は記録後の結像系の初期化である。これは、特別な事象のほんのわずかなリストである。
【0021】
本発明の他の目的は、IC回路構造化領域と、光学結像系の収差の決定に適した十分小さい構造体とを備えるマスクである。十分小さいとは、λ/(2*NA)オーダーの直径を有する構造体を意味し、但し、λは照明波長であり、NAは検査ツールの対物レンズの開口数である。
【0022】
他の実施形態では、マスクはパターン識別構造体を備える。パターン識別構造体は、比較的大きいサイズを有し、従って、マスク上で発見しやすい。パターン識別構造体の存在は不可欠ではないが、この構造体は、小型構造体の画像の位置を見つける助けとなる。パターン識別構造体は、小型構造体から予め規定された距離、例えば50ミクロンの距離を置いて配置される。
【0023】
前述の概要、並びに以下の本発明の実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併せ読めば、よりよく理解されるであろう。図面は、本発明を説明する目的で、現在好ましいと考えられる実施形態を示している。しかし、本発明は、これらの実施形態のみに限られるものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
光学マスク検査システム1が図1に概略的に示されている。このシステムは、光源11と、結像系5と、対象物の画像を記録するユニットとを備える。この場合では、CCDカメラ7が記録ユニットとして使用され、対象物8はマスク9である。マスク9は、透明基板15と、光源11から放出される放射線に関する減衰層19とを備える。
【0025】
層19はまた、いわゆるハーフトーン型(attenuated)位相シフト・マスクの場合のように、例えば10%の透過率を有する部分的に透明な層でもよい。また、層19は、位相シフト・マスクの場合のように、完全に透明な層でもよい。後者の場合では、透過された光の光学位相が、例えば180度変更されるとき、層19は目に見える。基板15がエッチングされた構造体を含む場合、層19はなくてもよい。また、層19は不透明でもよく、これは例えば、層19が、典型的には100ナノメートルの厚さのクロム層である場合である。最後に、エッチングされた構造化基板15と、(部分的に)透明な層19との組合せが存在する。簡潔に説明するために、層19を不透明と呼ぶ。
【0026】
不透明層は構造化されている。この構造は、マスク・パターンである。マスク・パターン21のみが、結像系5によって画像化され得る。CCDカメラ7は、マスクの観察された画像を検出する。この検出されたマスク20の画像は、それぞれ、マスクの観測された画像又はマスク・パターンである。検出された実画像のデータが、解析ユニットに転送される。これらのデータは理想的に構造化されたマスクの所望の画像データと比較される。計算ユニット12は、光学結像系の収差係数を考慮に入れた所望の画像のデータを生成する。計算ユニットはマスクの所望の画像と実画像との差を求める。全画像にわたってほぼ一定の差は容認可能である。
【0027】
場合によっては、実画像と所望の画像との平均強度が同じになるように、実画像の強度と所望の画像強度とを平均化する(norm)必要がある。
【0028】
以下のものが存在する。
マスク設計:例えば、いわゆるGDS2フォーマットの形の電子データ・ファイル。このデータ・ファイルは、所望の画像を計算するために使用されることになる。
実マスク:製造されたときのマスク上のパターンの真の形状、エッチ深さなど。
【0029】
光学系の収差を含む、顕微鏡によって観測された画像。
所望の画像:既知の収差を有する結像系を用いると見られることになるであろうマスク設計の画像。
【0030】
図2にマスクの断面図が示されている。マスクの不透明層19は孔17を有する。
【0031】
図3にマスクの上面図が示されている。このマスクは、小孔27と、識別パターン23と、IC回路21とを備える。それに関して、識別パターンは満たされているべきであり、その輪郭だけが描かれている。これらの構造体の図は、原理的な特徴を表すものである。小孔は結像系5の収差係数を決定するのに使用される。識別パターン23は小孔27の位置を見つける助けとなる。各マスク上にこれら2つの構造体23、27を有する必要はない。この例では、IC回路構造体21と、小孔27と、識別構造体23とが同じマスク上に配置されている。好ましくは、識別構造体23と小孔27とは、ステッパの画像フィールドのすぐ外側、又はいわゆるスクライブ・レーン(scribe lane)領域内、又はIC装置の機能性に影響を与えない領域内に配置される。従って、これらの構造体23、27は、IC回路構造体21とは分離されている。小孔27をIC回路21内に組み込むことも可能である。また、好ましくは、水平及び垂直フィーチャの両方を有するIC回路構造体21の適当な部分を識別構造体27として使用することも可能である。
【0032】
図4に、線構造体31を有するマスクの上面図が示されている。一点鎖線33が示されている。図面5〜8には、この線33に沿って測られた測定値が示されている。以下で、マスク検査方法が更に詳細に説明されている。
【0033】
マスク検査及びマスク欠陥の識別におけるエラーは、少なくとも部分的には、検査に使用される光学系5の欠陥によって引き起こされる。使用されるレンズは、波面収差、幾何収差、及び/又は色収差などの収差を有し、従って、不完全な画像を生じることになり、すなわち、光学結像系5によって生成された画像は、実際の対象物とは異なることになる。一般に、参照により本明細書に組み込まれる「Assessment of an extended Nijboer−Zernike approach for the computation of the optical point spread functions」J.Braat、P.Dierksen、A.Janssen、Opt.Soc.Am.A/Vol.19,No.5/2002年5月、858頁に開示されるように、瞳関数A.exp(I*phi)が、考えられ得る非定値透過振幅Aを有する光学系に規定され得る。これらの収差は、いわゆるゼルニケ多項式によって特徴付けることが可能である。本発明者らは、良く知られたフリンジ・ゼルニケ法を使用している。
【0034】
対象物を検査するとき、検査されている対象物の画像と、その理想形状とのずれは、少なくとも部分的に光学結像系5のレンズの収差から生じる。
【0035】
光学結像系のこれらの収差と、収差係数とを求め特徴付けるのに、様々な方法が知られている。国際公開WO03/56392A号には、光学結像系の収差を求める方法が記載されている。この出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
結像系の収差係数の少なくともいくつかは知られている。既知の収差係数は、所望の画像、すなわち、これらの収差係数を有するこの光学結像系5によって生成される所望の形状を有する対象物の画像が、どのように見えるかを計算するために使用される。次いで、この所望の画像は、実際の画像と所望の画像との差を検出するために使用される。差の検出は、解析ユニット13で行われる。対象物の理想形状ではなく、所望の画像が光学検査に使用されるので、光学結像系5の収差によるずれにより、生じる不正エラー又は不正パスは少なくなる。その結果、マスク検査はより信頼性が高くなる。
【0037】
所望の画像は以下のように計算され得る。
【0038】
本発明による装置及び方法は、光学検査の精度が光学結像系の解像限界付近である場合、すなわち光学検査に許容されるエラーが、例えば分解能より低い場合に使用され得る。
【0039】
特に、シグマ<0.4の低いコヒーレンス値又は瞳フィルレシオ(pupil fill ratio)が使用されるマスク検査は、特に収差の影響を受けやすい。かかる設定は、例えば位相シフト・マスクの検査で使用され得る。
【0040】
更に、焦点ずれや収差の影響を取り除き、更には画像を鮮明にするために、逆畳込みアルゴリズム(deconvolution algorithm)が使用されてもよい。このアルゴリズムの使用によって、更に30%の分解能が得られる。
【0041】
光学検査用のこの装置及び方法は、極めて小型の構造体を備えたマスク用である。本発明による装置及び方法は、リソグラフィ・マスクの検査に使用され得る。かかるマスクは、位相シフト・マスクでよい。193nmの光が使用されるマイクロリソグラフィ・システムでは、500nm以下の構造体のマスクが使用される。また、本発明は、DVD製造用マスクの検査にも使用されることができる。
【0042】
本発明は、リソグラフィ用マスクの検査に限られるものではなく、他の対象物の検査にも同様に使用されることができる。
【0043】
実際の画像と所望の画像との差を検出するには、実際の画像と所望の画像との強度に関する差が計算され得る。好ましくは、差を求める前に、これら2つの画像の一方の強度、特に輝度及び/又はコントラストが拡大・縮小され、これは、2つの画像間の強度に関する差を補償するためである。
【0044】
更なる工程において、実画像と所望の画像との相関位置が求められなければならない。
【0045】
一般に、所望の画像と実際の画像とは、視野が完全には一致しないので、光軸に平行な面に平行移動され得る。2つの画像は、この不一致を補償するために互いにシフトされ得る。いくつか(例えば3つ)の焦点ずれ位置で撮像された実際の画像が、対応する焦点ずれ位置における所望の画像と比較され得、共通の「原点」(X、Y、Z)が求められ得る。2つの画像を重ね合わせるために、「最小二乗法」又は相関アルゴリズムが使用されてもよい。これは、対象物の小さな誤差を近似化するものである。最も整合した(X、Y、Z)が見つかった後、差が計算される。
【0046】
所望の画像を計算するときに考慮される収差係数は、以下の収差係数の1つ又は複数を備え得る。
光学顕微鏡:低次の波面収差、すなわち球面収差、コマ収差、非点収差、3倍収差。
【0047】
365〜157nmの検査波長を有する光学ツールは、通常、狭い光学帯域幅を有する光源を使用する。また、将来は、13nmの検査波長を有するEUVツールも、狭帯域の光源を使用しなければならなくなる。
【0048】
SEMでは、所望の画像を計算するときに、色収差と球面収差(Cs、Cc)とが考慮されるべきである。また、場合によっては、C5、すなわち5次収差を考慮に入れることも有用である。
【0049】
結像系の焦点面付近にある対象物で実際の画像が生成される場合、実際の画像と所望の画像との差は、主に、結像に使用された光の振幅の歪みによるものとなる。焦点面とは、鮮明な画像が生成される平面である。
【0050】
実際の画像が、結像系の焦点面とは異なる平面にある対象物で生成される場合、実際の画像と所望の画像との差は、主に、結像に使用された光の振幅の歪みによるものである。
【0051】
好ましくは、最良焦点f=0の周りで対称的に等間隔に位置する焦点ずれ値が使用される。焦点位置とは、対象物(マスク)の鮮明な画像が生成される位置である。焦点インクリメントは、λ/NA2の分数であり、例えば、−λ/2Na2、0、+λ/2Na2である。また、焦点値の数は、5又は11でさえもよい。焦点値が多くなればなるほど、光学系のより正確な特徴付けが得られるが、おそらくは3が最少である。実際の画像と所望の画像との差は、主に、透過エラーの様相を示す結像系の収差による。これは、例えば、IC製造に使用される、いわゆるバイナリ及び位相シフト・リソグラフィ・マスクの検査に関係する。
【0052】
2つのそれぞれの平面にある対象物で2つの実際の画像が生成される場合、これらの2つの平面にある対象物のための2つの所望の画像が、理想形状と、収差係数と、2つの平面の位置とから計算され得る。次いで、それぞれの実際の画像と所望の画像との差が検出され得る。
【0053】
3つのそれぞれの平面にある対象物で3つの実際の画像が生成される場合、これらの3つの平面にある対象物のための3つの所望の画像が、理想形状と、収差係数と、3つの平面の位置とに基づいて計算され得る。次いで、それぞれの実際の画像と所望の画像との差が検出され得る。
【0054】
後者の場合、第1の平面が結像系の焦点面であり、第2の平面が焦点面より上にあり、且つ、第3の平面が焦点面より下にあると有利である。
【0055】
収差係数は、例えば光学系のドリフトによる焦点ずれのため、又はレンズ経年過程のため、時間が経過するにつれて変化し得る。この場合、第1の実際の画像が生成される前に収差係数の第1の値が求められ得、第2の実際の画像が生成される前に収差係数の第2の値が求められ得る。第1の実際の画像と第2の実際の画像とは、同じ対象物からでも、又は異なる2つの対象物からでも生成されることができる。収差係数の第1の値と、それぞれの対象物の所望の形状とから第1の所望の画像が計算され得、収差係数の第2の値から第2の所望の画像が計算され得る。
【0056】
この方法はまた、予め製造された半導体装置を検査するために使用されてもよい。検査されるべき領域は金属線を含んでもよい。この検査において金属線の線幅を求めてもよい。
【0057】
マスクの異なる画像が示された図4の、一点鎖線に沿った断面図が、図5〜8に示されている。図4のマスクは3つのバー構造体を有する。バーは、等間隔に配置されている。
【0058】
図5に理想形状を有するマスクの理想画像が示され、ここでは、光学結像系5は収差を有しない。3つのバーはそれぞれ、150nmの線幅を有する。波長はλ=193nmであり、開口数はNA=0.63である。このマスクは検査をパスすることになる。
【0059】
図6に実画像の断面図が示され、ここでは、マスクは理想形状を有する。光学結像系は、Xコマ収差を有し、この収差は、フリンジ・ゼルニケ法のゼルニケ多項式Z7によって説明され得る。図6の実画像は図5に示される画像とは全く異なる。従って、このマスクは、収差が考慮されなければ拒絶されることになり、不正エラーを導くことになる。これとは違って、本発明によれば、所望の画像はマスクの理想形状と収差とから計算される。この場合、所望の画像は図6の実画像と同じとなり、不正エラーは回避される。実画像と所望の画像との比較によって、検査されたマスクは検査をパスする結果になる。所望の画像を計算するために光学結像系5のコマ収差の既知の収差係数Z7が使用された。
Z7=(3r−2r)cosφ
【0060】
線幅エラーを有するマスクの断面図が図7に示されており、ここでは、光学検査システム5のコマ収差はZ7=0である。各バーの線幅は、130nm、150nm、170nmである。上述の方法及び検査装置を用いると、検査されたマスクは光学検査をパスしない。
【0061】
線幅エラーを有する実マスクの画像の断面図が図8に示されており、ここでは光学系は、−120m波のZ7収差(Xコマ収差)を有する。バーの線幅は、130nm、150nm、170nmである。画像は対称であり、線幅エラーにも関わらず、良好なマスクを示すように見える。これは不正パスをもたらすことになるであろう。これとは違って、本発明によれば、実画像は図6に示される所望の画像と比較される。これらの2つの画像は全く異なる。このマスクは光学検査をパスせず、従って、不正パスを回避する。
【0062】
このように、実対象物すなわちマスクの線幅エラーをコマ収差を考慮に入れた所望の画像と比較して識別することが可能となる。同様に、球面収差Z9、非点収差Z5若しくはZ6、又は3フォイル(three foil)収差Z11もまた、線幅エラーを生じ得る。
【0063】
記載されたこのシステム及び方法は、透過型で使用されるシステムのみに限られるものではなく、反射モードで動作するシステムにも使用され得る。反射モードでは、光源と対物レンズとは、マスクの同じ側にある。
【0064】
また、使用可能な光学結像系は上述の光学系のみに限られるものではない。また、別の結像系、例えば、液浸系も、本発明の範囲から逸脱せずに使用され得る。結像系は、EUV放射線又は軟X線放射線を使用することができる。波長は例えば13nmでよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】対象物の光学検査システムを示す図である。
【図2】マスクを示す断面図である。
【図3】マスクを示す上面図である。
【図4】線構造体を有するマスクの上面図である。
【図5】1つの線の方向における画像の図である。
【図6】1つの線の方向における画像の図である。
【図7】1つの線の方向における画像の図である。
【図8】1つの線の方向における画像の図である。
【符号の説明】
【0066】
1 マスク検査システム
3 顕微鏡
5 光学結像系
7 透過又は反射された光を検出するための、CCDカメラなどのCCDカメラ光学カメラ
8 対象物
9 マスク/レチクル
11 光源
12 計算ユニット
13 解析ユニット
15 透明材料/基板
17 孔
19 不透明材料
21 IC回路
23 パターン識別構造体
25 収差検出用構造体
27 小孔
29
31 線構造体
33 一点鎖線35

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実際の対象物の実際の画像を生成する光学結像系と、前記実際の対象物の前記実際の画像を記録する記録ユニットと、前記光学結像系の既知の収差係数を考慮に入れて、所望の形状の対象物の推定画像を計算する計算ユニットと、前記実際の画像と前記計算ユニットによって計算された画像との複数の差を検出する画像解析ユニットとを備える、対象物の光学検査装置。
【請求項2】
光学結像系を使用することによって、前記実際の対象物の実際の画像を生成する工程であって、前記光学結像系の収差が既知である工程と、
前記光学結像系の求められた収差を考慮に入れて、所望の対象物の所望の画像を計算する工程と、
前記実際の画像と所望の画像との複数の差を検出する工程とを備える、対象物の光学検査方法。
【請求項3】
前記光学系の収差が求められる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象物が前記結像系のほぼ焦点面にあるときに前記実際の画像が生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象物が前記結像系の非焦点面にあるときに前記実際の画像が生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記実際の画像を生成する工程が、
前記対象物が第1の平面にあるときに第1の実際の画像を生成する副工程と、
前記対象物が前記第1の平面とは異なる第2の平面にあるときに第2の実際の画像を生成する副工程とを備え、
前記所望の画像を計算する工程が、
前記第1の平面にある前記対象物のための第1の所望の画像を計算する副工程と、
前記第2の平面にある前記対象物のための第2の所望の画像を計算する副工程とを備え、
前記実際の画像と前記所望の画像との複数の差を検出する工程が、
前記第1の実際の画像と前記第1の所望の画像との複数の差を検出する副工程と、
前記第2の実際の画像と前記第2の所望の画像との複数の差を検出する副工程とを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記実際の画像を生成する工程が、
前記対象物が前記第1の平面及び前記第2の平面とは異なる少なくとも1つの更なる平面にあるとき、更なる実際の画像を生成する副工程を更に備え、
前記所望の画像を計算する工程が、
前記対象物が少なくとも更なる平面にあるときに更なる所望の画像を計算する副工程を更に備え、
前記実際の画像と前記所望の画像との複数の差を検出する工程が、
割り当てられた更なる実際の画像と前記更なる所望の画像との複数の差を検出する副工程を更に備える、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の平面が前記結像系の焦点面であり、前記第2の平面が前記焦点面より上にあり、更なる平面が焦点面より下にある、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
複数の所定の時間期間内に前記収差を求める工程を更に備える、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記光学結像装置の始動後に前記収差を求める工程を更に備える、請求項2又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記収差を決定する工程が、
光学画像が生成される前に第1の収差を求める副工程と、
光学画像が生成された後に第2の収差を求める副工程とを備え、
前記第1及び第2の決定された収差を考慮に入れて前記所望の画像が計算される副工程とを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記対象物がリソグラフィ・マスクである、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象物が予め製造された半導体装置である、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光学結像系が、光学顕微鏡、特に光学液浸顕微鏡又はEUV顕微鏡である、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記光学結像系が電子顕微鏡である、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記実際の画像と所望の画像との検出された差からエラー領域を識別する工程を更に備える、請求項2から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
更なる検査方法によって前記エラー領域を検査する工程を更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象物を製造する工程と、
請求項2から17のいずれか一項に記載の方法によって前記対象物を検査する工程と、
前記所望の対象物を考慮に入れて前記対象物の製造を調節する工程と、
別の対象物を製造する工程とを備える、対象物を製造する方法。
【請求項19】
複数のIC回路構造化領域と、請求項1に記載の光学結像系の収差を求めるのに適した極小構造体とを備える、マスク。
【請求項20】
前記マスクが識別構造体を備える、請求項19に記載のマスク。
【請求項21】
前記極小構造体が前記光学結像系の解像度に応じた小孔であり、前記孔の直径が前記光学結像系の解像度よりも小さい、請求項19に記載のマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−520755(P2007−520755A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551989(P2006−551989)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050435
【国際公開番号】WO2005/076077
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】