説明

マスク移動装置、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法

【課題】帯状の基板に表示素子を効率的に製造できること。
【解決手段】本発明の態様にかかるマスク移動装置は、パターンを有するマスクを保持して該マスクを移動させるマスク移動装置であって、円筒状に形成され、所定の円筒面に沿って前記マスクを保持する保持部と、前記円筒面の円周方向に沿って前記保持部を回転させる駆動部と、を備え、前記保持部は、前記保持部が保持する前記マスクの前記パターンを前記保持部の内側に露出させる第一開口部と、前記第一開口部と対向し、前記パターンから前記第一開口部を介して前記保持部の内側に発した光を前記保持部の外側へ通過させる第二開口部と、が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク移動装置、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などの表示装置を構成する表示素子として、例えば液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子が知られている。現在、これらの表示素子では、各画素に対応して基板表面に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を形成する能動的素子(アクティブデバイス)が主流となってきている。
【0003】
近年では、可撓性を有する基板(例えばフィルム部材など)上に表示素子を形成する技術が提案されている。このような技術として、例えばロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)と呼ばれる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ロール方式では、基板供給側の供給用ローラーに巻かれた帯状の基板を送り出すと共に送り出された基板を基板回収側の回収用ローラーで巻き取りながら基板を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2008/129819号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、表示装置では表示画面の大型化が期待されており、上記のようなロール方式においても、帯状の基板に大型の表示素子を効率的に製造可能とする技術が要望されている。
【0006】
そこで、本発明の態様は、帯状の基板に表示素子を効率的に製造することができるマスク移動装置、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、パターンを有するマスクを保持して該マスクを移動させるマスク移動装置であって、円筒状に形成され、所定の円筒面に沿って前記マスクを保持する保持部と、前記円筒面の円周方向に沿って前記保持部を回転させる駆動部と、を備え、前記保持部は、前記保持部が保持する前記マスクの前記パターンを前記保持部の内側に露出させる第一開口部と、前記第一開口部と対向し、前記パターンから前記第一開口部を介して前記保持部の内側に発した光を前記保持部の外側へ通過させる第二開口部と、が形成されているマスク移動装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、パターンを有する複数のマスクを保持して該複数のマスクを移動させるマスク移動装置であって、円筒状に形成され、所定の円筒面に沿って前記複数のマスクを保持する保持部と、前記円筒面の円周方向に沿って前記保持部を回転させる駆動部と、を備え、前記保持部は、前記保持部が保持する複数の前記マスクの前記パターンを、それぞれ前記保持部の内側に露出させる複数の第一開口部と、複数の前記第一開口部とそれぞれ対向し、前記パターンから前記第一開口部を介して前記保持部の内側に発した光を前記保持部の外側へ通過させる複数の第二開口部と、が形成されているマスク移動装置が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様に従えば、マスクが有するパターンを基板に転写する露光装置であって、前記マスクを保持して該マスクを移動させる本発明の第1の態様又は第2の態様に従うマスク移動装置と、前記マスク移動装置に保持された前記マスクの前記パターンの像を前記第二開口部を介して投影する投影光学装置と、前記投影光学装置による前記パターンの像の投影領域を経由するように前記基板を案内する案内装置と、を備える露光装置が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様に従えば、帯状の基板を処理する基板処理装置であって、前記基板を該基板の長手方向に搬送する基板搬送部と、前記基板搬送部による前記基板の搬送経路に沿って設けられ、該搬送経路に沿って搬送される前記基板に対して処理を行う基板処理部と、を備え、前記基板処理部は、前記基板にパターンを転写する本発明の第3の態様に従う露光装置を含む基板処理装置が提供される。
【0011】
本発明の第5の態様に従えば、基板を処理してデバイスを製造するデバイス製造方法であって、本発明の第3の態様に従う露光装置を用いて、前記基板にパターンを転写することと、前記パターンが転写された前記基板を該パターンに基づいて加工することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、帯状の基板に表示素子を効率的に製造することができるマスク移動装置、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係る露光装置の構成を示す概略図。
【図3】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図4A】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図4B】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図5】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図6】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す平面図。
【図7】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す模式図。
【図8】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す平面図。
【図9】本実施形態に係る露光装置の動作の様子を示す図。
【図10】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図11】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図12】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図13】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図14】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図15】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図16】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図17】本実施形態に係る露光装置の他の構成を示す図。
【図18】半導体デバイスを製造する際の製造工程の一部を示すフローチャート。
【図19】液晶表示素子の製造する際の製造工程の一部を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置FPAの構成を示す図である。
図1に示すように、基板処理装置FPAは、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)FBを供給する基板供給部SU、基板FBの表面(被処理面)に対して処理を行う基板処理部PR、基板FBを回収する基板回収部CL、及び、これらの各部を制御する制御部CONTを有している。
【0015】
なお、本実施形態では、図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置FPAは、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−側)からプラス側(+側)へ基板FBを搬送する。その際、帯状の基板FBの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0016】
基板処理装置FPAは、基板供給部SUから基板FBが送り出されてから、基板回収部CLによって基板FBが回収されるまでの間に、基板FBの表面に各種処理を実行する装置である。基板処理装置FPAは、基板FB上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。
【0017】
基板処理装置FPAにおいて処理対象となる基板FBとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0018】
基板FBは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0019】
基板FBの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板FBのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板FBのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0020】
基板FBは、可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板FBとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0021】
基板供給部SUは、例えばロール状に巻かれた基板FBを基板処理部PRへ送り出して供給する。この場合、基板供給部SUには、基板FBを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板FBを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部SUは、ロール状に巻かれた基板FBを送り出す機構に限定されず、帯状の基板FBをその長さ方向に順次送り出す機構を含むものであればよい。
【0022】
基板回収部CLは、基板処理部PRからの基板FBを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部CLには、基板供給部SUと同様に、基板FBを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置、回収した基板FBを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部PRにおいて基板FBがパネル状に切断される場合などには例えば基板FBを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板FBを回収する構成であっても構わない。
【0023】
基板処理部PRは、基板供給部SUから供給される基板FBを基板回収部CLへ搬送すると共に、搬送の過程で基板FBの被処理面Fpに対して処理を行う。基板処理部PRは、例えば処理装置10、搬送装置30及びアライメント装置50を有している。
【0024】
処理装置10は、基板FBの被処理面Fpに対して例えば有機EL素子を形成するための各種装置を有している。このような装置としては、例えば被処理面Fp上に隔壁を形成するための隔壁形成装置、電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置)、成膜装置(例えば蒸着装置、スパッタリング装置)、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、基板FBの搬送経路に沿って適宜設けられる。本実施形態では、処理装置10として、露光装置が設けられている。
【0025】
搬送装置30は、基板処理部PR内において基板FBを基板回収部CL側へ搬送するローラー装置Rを有している。ローラー装置Rは、基板FBの搬送経路に沿って複数設けられている。複数のローラー装置Rのうち少なくとも一部のローラー装置Rには、駆動機構(不図示)が取り付けられている。このようなローラー装置Rが回転することにより、基板FBがX軸方向に搬送されるようになっている。複数のローラー装置Rのうち一部のローラー装置Rが基板FBの表面と交差する方向に移動可能に設けられた構成であっても構わない。
【0026】
アライメント装置50は、基板FBに対してアライメント動作を行う。アライメント装置50は、基板FBの位置を検出するアライメントカメラ51と、当該アライメントカメラ51の検出結果に基づいて基板FBの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する調整装置52とを有している。
【0027】
アライメントカメラ51は、例えば基板FBに形成されたアライメントマークを検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。制御部CONTは、当該検出結果に基づいて基板FBの位置情報を求め、当該位置情報に基づいて調整装置52による調整量を制御する。
【0028】
図2は、処理装置10として用いられる露光装置EXの構成を示す図である。露光装置EXは、マスクMに形成されたパターンPmの像を基板FBに投影する装置である。露光装置EXは、図2に示すように、マスクMを照明する照明装置IUと、マスクMを保持して移動及び回転可能なマスク移動装置MSTと、基板FBに対してパターンPmの拡大像を投影する投影装置PUと、基板FBを案内する基板案内装置FSTとを有している。
【0029】
照明装置IUは、マスクMに露光光ELIを照明する。照明装置IUは、光源装置20と、照射光学系21とを有している。光源装置20から射出される露光光ELIは、照射光学系21を介して複数の方向からマスクMに対して照射される。なお、照射光学系21は、図2において簡略化して示されているが、実際には、露光光ELIを導光する複数の光学素子を含むものである。
【0030】
マスク移動装置MSTは、保持部40及び駆動装置ACMを有している。保持部40は、概形として円筒状に形成されており、その外周面に相当する円筒面40aに沿ってマスクMを保持するように形成されている。保持部40は、円筒面40aの円周方向に沿って(すなわち、円筒面40aの中心軸線としての軸線C回りに)回転可能に設けられている。駆動装置ACMは、保持部40を円筒面40aに沿って回転駆動させると共に、保持部40を図中X方向、Y方向及びZ方向へ移動させることができる。
【0031】
マスクMは、保持部40によって取り外し可能に保持される。マスクMとしては、例えばシート状に形成された透過型マスクが用いられる。マスクMは、パターンPmが円筒面40aに沿って配置されるように、パターンPmが形成されたパターン面を円筒面40aの内側に向けて保持部40に保持される。このため、パターンPmは、実質的に円筒面40aに一致する面上に配置されることになる。
【0032】
投影装置PUは、複数の投影光学系PLを有している。複数の投影光学系PLの一部は、マスクMに対して基板FBの上流側(−X側)に配置されており、保持部40の+X側に配置されたパターンPmの拡大像を、保持部40よりも−X側に位置する基板FBに対して投影する。また、複数の投影光学系PLの他の一部は、マスクMに対して基板FBの下流側(+X側)に配置されており、保持部40の−X側に配置されたパターンPmの拡大像を、保持部40よりも+X側に位置する基板FBに対して投影する。
【0033】
各投影光学系PLは、第1結像部60及び第2結像部61を有している。第1結像部60は、円筒状の保持部40の内側の領域(以下では、この内側の領域のことを適宜保持部40の内部と称する)に設けられている。第1結像部60は、マスクMを透過して保持部40内部に入射された露光光を、円筒状の保持部40の外側の領域(以下では、この外側の領域のことを適宜保持部40の外部と称する)へ射出する。第2結像部61は、保持部40の外部に設けられている。第2結像部61は、第1結像部60からの露光光を受光して基板FBに照射する。投影光学系PLは、例えば、第1結像部60が等倍又は略等倍の投影倍率を有し、第2結像部61が拡大の投影倍率(拡大倍率)を有することによって、パターンPmの拡大像を基板FBに投影する。
【0034】
基板案内装置FSTは、投影装置PUによってパターンPmの像が投影される投影領域PAを経由するように基板FBを案内する。基板案内装置FSTは、案内部80、上流側ローラー81、下流側ローラー82及び駆動装置ACFを有している。案内部80は、保持部40の+X側に配置される投影光学系PLの投影領域PAと−X側に配置される投影光学系PLの投影領域PAとに対応した位置にそれぞれ配置されている。
【0035】
各案内部80は、基板FBを支持する支持面80aを有している。案内部80は、図示しないエアベアリング機構が設けられており、このエアベアリング機構によって基板FBを支持面80a上に非接触に支持することができる。支持面80aは、投影光学系PLについて円筒面40aと光学的に共役な位置に配置されている。支持面80aは、湾曲部83を有している。湾曲部83は、投影光学系PLによってマスクMの湾曲方向と光学的に対応する方向に湾曲されている。具体的には、投影光学系PLに向かって凹の円筒面状に湾曲されたマスクMに対応して、湾曲部83は、投影光学系PLに向かって凸の円筒面状に湾曲されている。案内部80に案内される基板FBは、湾曲部83の表面形状に倣って湾曲して案内される。
【0036】
なお、湾曲部83が配置される位置は、上記のようにマスクM(円筒面40a)と光学的に共役な位置に限定されず、その位置から例えば投影光学系PLによるパターンPmの像の焦点深度の範囲内でずれた位置であっても構わない。焦点深度δは例えば、
−k・λ/NA≦δ≦+k・λ/NAで表される。ここで、λは露光光ELIの波長(中心波長)、NAは投影光学系PLの像側の開口数、kはプロセス係数(結像に関与する諸条件に基づいて決定される定数)である。
【0037】
湾曲部83は、マスクMの曲率(円筒面40aの曲率)と同一の曲率で湾曲されている。基板FBがマスクMの曲率と同一の曲率となるように湾曲されて案内されるため、露光光ELIがマスクMに照射される照射面と、露光光ELIが基板FBに照射される照射面とが同一の曲率となる。換言すると、投影光学系PLの視野領域内に位置するマスクMの曲率と、投影光学系PLの投影領域(すなわち、視野領域内のパターンPmが投影される領域)内に位置する基板FBの曲率とが等しくなる。このため、投影光学系PLの視野領域内及び投影領域内の全面にわたってマスクMと基板FBとが相互に共役関係を満足することとなり、投影領域内の全面にわたってパターンPmの拡大像を基板FBに良好に投影することができる。
【0038】
支持面80aには、湾曲部83の上流側及び下流側に、それぞれ第二湾曲部84が形成されている。第二湾曲部84は、案内部80における基板FBの搬入部及び搬出部に相当する位置に設けられている。第二湾曲部84は、湾曲部83よりも曲率が大きく(すなわち、曲率半径が小さく)なるように湾曲されている。このため、案内部80によって支持される基板FBは、案内部80の上流側及び下流側の端部と接触することが回避され、この端部によって損傷されることがなくなる。また、基板FBの先端部を支持面80a上に搬入する際に、案内部80の上流側の端部に接触させることなく滑らかに搬入させることができる。
【0039】
上流側ローラー81は、基板FBを案内部80に搬入する。下流側ローラー82は、基板FBを案内部80から搬出する。上流側ローラー81及び下流側ローラー82は、例えば所定の搬送速度で基板FBを搬送する。駆動装置ACFは、上流側ローラー81及び下流側ローラー82の回転速度を調整する。
【0040】
駆動装置ACFは、制御部CONTからの制御信号に基づいて上流側ローラー81及び下流側ローラー82の回転速度を調整し、これによって基板FBの搬送速度を調整する。
制御部CONTは、マスクMの回転速度に応じた搬送速度で基板FBが搬送されるように、駆動装置ACMの駆動及び駆動装置ACFの駆動を制御する。具体的には、制御部CONTは、円筒面40aに沿ったマスクMの移動速度(周速度)に対する、基板FBの長さ方向への搬送速度(すなわち、基板FBの表面の移動速度)の比が、投影光学系PLの投影倍率(拡大倍率)と等しくなるように、駆動装置ACM及び駆動装置ACFの駆動を制御する。
【0041】
図3は、マスク移動装置MSTの構成を示す斜視図である。図3では、保持部40の内部に投影装置PUの一部が配置された状態を示している。図4Aは、保持部40の構成を示す斜視図である。図4Bは、マスクMに形成されるパターンPmを示す図である。
【0042】
図2、図3、図4Aに示すように、マスク移動装置MSTの保持部40は、円筒面40aに沿って形成されている。保持部40は、軸線Cを中心として円筒面40aの円周方向に沿って回転可能に設けられている。保持部40は、不図示の固定装置などによって露光装置EXに対して着脱可能に設けられている。
【0043】
保持部40は、リング部43及び連結部44を有している。リング部43は、軸線Cを共通の中心軸として5つ配列されている。連結部44は、これら5つのリング部43を連結する位置に配置されている。連結部44は、隣り合う2つのリング部43を、円周方向に沿った2箇所の位置で連結するように設けられている。当該2箇所の連結部44は、例えば軸線Cを基準として対称な位置(軸線Cを挟んで対向する位置)に配置されている。
連結部44は、5つのリング部43の間の4箇所に円周方向に2つずつ、合計8つ設けられている。なお、保持部40を構成するリング部43及び連結部44の数は、上記の数に限定されるものではない。特に、リング部43の数は、投影光学系の数に対応して設けられる。
【0044】
保持部40は、リング部43と連結部44とで形成される複数の開口部OPを有している。開口部OPは、保持部40の内部と外部とを連通するように形成されている。複数の開口部OPには、第一開口部41及び第二開口部42が含まれている。第一開口部41及び第二開口部42は、露光光ELIを通過可能に形成されている。
【0045】
第一開口部41は、保持部40のうちマスクMを保持する部分に設けられる。第一開口部41は、軸線Cに沿って4つ(第一開口部41a〜41d)設けられている。保持部40は、リング部43及び連結部44のうち第一開口部41a〜41dの周囲の領域にマスク吸着部SCを有している。
【0046】
マスク吸着部SCは、例えばリング部43及び連結部44に設けられた不図示の吸引口と、当該吸引口に接続された不図示の吸引ポンプとを有している。マスク吸着部SCは、吸引口を介してマスクMを吸引することにより、マスクMを保持部40に吸着可能となっている。マスク吸着部SCは、マスクMの吸引を停止することでマスクMの保持を解除することができるようになっている。マスク吸着部SCの吸引を調整することにより、マスクMの取り付け、取り外しの切り替えをスムーズに行うことができるようになっている。
【0047】
マスクM(Ma〜Md)は、各第一開口部41a〜41dについて1枚ずつ保持されている。マスクMa〜Mdは、図4Bに示すように、所定方向(軸線Cに対応する方向)に相互につなぎ合わせた場合に全体として所望のパターンPmが形成されるように、それぞれパターンPa〜Pdが形成されている。換言すると、マスクMa〜Mdのそれぞれに形成されているパターンPa〜Pdを所定方向につなぎ合わせることでパターンPmが構成される。なお、マスクMa,Mbのうち相互に隣り合う端部領域(図4Bにおいて、相互につなぎ合わされる部分)には、同一パターンが形成されている。同様に、マスクMb,Mc及びマスクMc,Mdのうち、それぞれ相互に隣り合う端部領域においても、同一パターンが形成されている。
【0048】
第二開口部42は、第一開口部41a〜41dと同様、軸線Cに沿って4つ(第二開口部42a〜42d)設けられている。第二開口部42は、軸線Cを基準として第一開口部41と対称な位置(軸線Cを挟んで対向する位置)に設けられている。第二開口部42a〜42dは、例えば円周方向の寸法及び軸線C方向の寸法がそれぞれ第一開口部41a〜41dと同一に形成されている。第一開口部41a〜41dと第二開口部42a〜42dとは、互いに円筒面40aの円周方向にずれるように配置されている。
【0049】
保持部40の軸線C方向の両端部には、不図示の回転機構等に接続される被接続部43aが形成されている。当該回転機構は、上記の駆動装置ACMの一部である。このような回転機構としては、例えば保持部40を回転させる歯車機構の一部であっても構わないし、リニアモータ機構の可動子(磁石部あるいはコイル部)であっても構わない。
【0050】
図5は、照明装置IUの一部の構成と投影装置PUの一部の構成とを示す図である。図6は、照明装置IU及び投影装置PUの構成を模式的に示す図である。
図3、図5、図6に示すように、照明装置IUは、保持部40に保持される4枚のマスクM(Ma〜Md)ごとに設けられた4つの照明光学系IL(照明光学系ILa〜ILd)を有している。照明光学系ILaは、第一開口部41aに設けられるマスクMaを照明する。照明光学系ILbは、第一開口部41bに設けられるマスクMbを照明する。照明光学系ILcは、第一開口部41cに設けられるマスクMcを照明する。照明光学系ILdは、第一開口部41dに設けられるマスクMdを照明する。このうち、照明光学系ILa及びILcは、保持部40の+X側に配置されており、保持部40の外部から内部に向かってマスクMa,Mcをそれぞれ照明する。また、照明光学系ILb及びILdは、保持部40の−X側に配置されており、保持部40の外部から内部に向かってマスクMb,Mdをそれぞれ照明する。照明光学系ILa〜ILdは、例えばマスクMa〜Mdのピッチ(すなわち、隣り合う間隔)に対応するピッチでY方向に配置されている。
【0051】
図7は、投影装置PUの構成を模式的に示す図である。
図2、図3、図5〜図7に示すように、投影装置PUは、4つの照明光学系ILa〜ILd及び4つのマスクMa〜Mdにそれぞれ対応した4つの投影光学系PL(PLa〜PLd)を有している。照明光学系ILa及びマスクMaには投影光学系PLaが、照明光学系ILb及びマスクMbには投影光学系PLbが、照明光学系ILc及びマスクMcには投影光学系PLcが、照明光学系ILd及びマスクMdには投影光学系PLdが、それぞれ対応して配置されている。
【0052】
投影光学系PLa〜PLdの第1結像部60(60a〜60d)は、それぞれ保持部40の内部に配置されている。第1結像部60aは、照明光学系ILaからマスクMaを介した露光光ELIの光路に配置されている。第1結像部60bは、照明光学系ILbからマスクMbを介した露光光ELIの光路に配置されている。第1結像部60cは、照明光学系ILcからマスクMcを介した露光光ELIの光路に配置されている。第1結像部60dは、照明光学系ILdからマスクMdを介した露光光ELIの光路に配置されている。
【0053】
第1結像部60a〜60dは、フレーム62に保持されている(図5参照)。フレーム62は、保持部40の内部において軸線Cに沿って配置されている。保持部40の内部に配置されたフレーム62及び各第1結像部60a〜60dは、保持部40には接触しない位置に保持されている。
【0054】
第1結像部60a〜60dは、図6に示すように、それぞれ照明光学系ILa〜ILdからマスクMa〜Md及び第一開口部41a〜41dを介した露光光ELIを、保持部40の内部において軸線Cを跨ぐように導光し、第二開口部42a〜42dを介して保持部40の外部に射出する。
【0055】
図6及び図7に示すように、第1結像部60(60a〜60d)は、保持部40の内部に瞳面65(65a〜65d)を形成する。本実施形態では、軸線Cの近傍(例えば軸線Cの入射面側の近傍)に瞳面65a〜65dが形成されている。当該瞳面65a〜65dには、開口絞り63(63a〜63d)が設けられている。なお、ここでは、瞳面とは、光学系の入射瞳又は射出瞳と共役な面を含むものとしている。
【0056】
また、図6及び図7に示すように、第1結像部60(60a〜60d)は、第二開口部42(42a〜42d)の近傍にパターンPm(Pa〜Pd)の中間像を形成する。本実施形態では、第二開口部42(42a〜42d)よりも保持部40の内側にパターンPm(Pa〜Pd)の中間像66(66a〜66d)が形成されている。また、中間像66(66a〜66d)が形成される位置には、開閉可能なブラインド64(64a〜64d)が設けられている。ブラインド64a〜64dは、制御部CONTによって開閉が制御される。
【0057】
一方、投影光学系PLa〜PLdの第2結像部61(61a〜61d)は、それぞれ保持部40の外部に配置されている。第2結像部61a〜61dは、それぞれ第1結像部60a〜60dから射出された露光光ELIを受光し、中間像66a〜66dの拡大像、ひいてはパターンPa〜Pdの拡大像を所定の投影領域PAa〜PAdに投影する。ここで、投影領域PAa,PAcは、保持部40よりも−X側に設けられ、投影領域PAb,PAdは、保持部40よりも+X側に設けられている。そして、保持部40よりも−X側の案内部80は、投影領域PAa,PAcの下部に配置され、保持部40よりも+X側の案内部80は、投影領域PAb,PAdの下部に配置されている。
【0058】
図8は、マスク移動装置MSTと基板FBとの位置関係を示す平面図である。
図8に示すように、投影光学系PLa〜PLdによる投影領域PAa〜PAdは、例えばY方向に沿って2辺が平行な平行四辺形状に形成されている。投影領域PAa〜PAdは、Y方向の端部の幅(X方向の寸法)が徐々に小さくなるように形成されている。以下、この幅が徐々に小さくなっている部分をテーパー部分と表記する。なお、投影領域PAa〜PAdの形状は、平行四辺形状に限定されるものではなく、例えばY方向の端部にテーパー部を有する台形状または六角形状とすることもできる。投影領域PAa〜PAdの形状は、それぞれブラインド64a〜64dによって設定される。
【0059】
投影光学系PLa及び投影光学系PLbは、投影領域PAaの+Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置と投影領域PAbの−Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置とが重なるように配置されている。また、投影光学系PLb及び投影光学系PLcは、投影領域PAbの+Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置と投影領域PAcの−Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置とが重なるように配置されている。更に、投影光学系PLc及び投影光学系PLdは、投影領域PAcの+Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置と投影領域PAdの−Y側に形成されるテーパー部分のY方向に関する位置とが重なるように配置されている。
【0060】
図8の一部には、保持部40を+Y方向に見たときの模式図が示されている。ここで、上記の第一開口部41a〜41dのうち軸線C方向に沿って隣り合う2つの第一開口部の円周方向の相互のずれ量(または、軸線C方向に隣り合う2つの第一開口部にそれぞれ設けられるマスクMの各パターンの円周方向の相互のずれ量)をS、保持部40(円筒面40a)の直径をD、投影光学系PLa,PLc(第一投影光学系)による投影領域と投影光学系PLb,PLd(第二投影光学系)による投影領域とのX軸方向の間隔(一般には、基板FBの移動経路に沿った間隔)をL、投影光学系PLa〜PLdの投影倍率をβとすると、以下の式を満たすようにずれ量Sが設定されている。
S=π×D/2−L/β(ただし、L≦β×π×D/2)
【0061】
なお、本実施形態では、第一投影光学系に対応する照射光学系21と第2投影光学系に対応する照射光学系21とが、互いに対向する方向からマスクMに露光光ELIを照射し、第一投影光学系の視野領域と第二投影光学系の視野領域とが、軸線Cを挟んでマスクMの互いに反対側に位置するものとしていたが、かかる構成に限定されるものではない。これに対応して、ずれ量Sは、マスクMの回転進行方向に関して円筒面40aの円周方向に沿った第一投影光学系の視野領域から第二投影光学系の視野領域までの間隔Nと、間隔Lと、投影倍率βとを用いて次式によって設定される。
S=N−L/β(ただし、L≦β×N)
また、間隔Nに対応する円筒面40aの円弧の中心角φ(ラジアン)を用いると、ずれ量Sは、さらに次式によって設定できる。
S=φ×D/2−L/β
なお、間隔Nは、マスクMの回転進行方向に関して円筒面40aの円周方向に沿った基板FBの下流側に投影領域を形成する投影光学系の視野領域から基板FBの上流側に投影領域を形成する投影光学系の視野領域までの間隔と言い換えることができる。
【0062】
上記のように構成された基板処理装置FPAは、制御部CONTの制御により、ロール方式によって有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する。
以下、上記構成の基板処理装置FPAを用いて表示素子を製造する工程を説明する。
【0063】
まず、不図示のローラーに巻き付けられた帯状の基板FBを基板供給部SUに取り付ける。制御部CONTは、この状態から基板供給部SUから当該基板FBが送り出されるように、不図示のローラーを回転させる。そして、基板処理部PRを通過した当該基板FBを基板回収部CLに設けられた不図示のローラーで巻き取らせる。この基板供給部SU及び基板回収部CLを制御することによって、基板FBの被処理面Fpを基板処理部PRに対して連続的に搬送することができる。
【0064】
制御部CONTは、基板FBが基板供給部SUから送り出されてから基板回収部CLで巻き取られるまでの間に、基板処理部PRの搬送装置30によって基板FBを当該基板処理部PR内で適宜搬送させつつ、処理装置10によって表示素子の構成要素を基板FB上に順次形成させる。この工程の中で、露光装置EXによって処理を行う場合、まず保持部40にマスクMa〜Mdを取り付ける。
【0065】
次に、制御部CONTは、照明装置IUからマスクMのパターンPmに対して露光光ELIを照射させる。投影光学系PLは、パターンPmの拡大像を投影領域PAa〜PAdに対して投影する。
【0066】
図9に示すように、投影領域PAa〜PAdは、基板FBのうち案内部80の湾曲部83上に配置された領域に形成される。基板FBの当該部分は、湾曲部83に倣って湾曲されている。投影領域PAa〜PAdは、湾曲された基板FB上に形成される。
【0067】
制御部CONTは、まず保持部40の上流側(−X側)において露光処理を行わせる。
制御部CONTは、照明光学系ILa及びILcから露光光ELIをそれぞれマスクMa及びMcのパターンPa及びPcに照射させる。当該露光光ELIは、マスクMa及びMc、第一開口部41a及び41cを順に透過し、保持部40の内部において投影光学系PLa及びPLcの第1結像部60a及び60cにそれぞれ入射する。
【0068】
第1結像部60a及び60cを介した露光光ELIは、第二開口部42a及び42cを通過して第2結像部61a及び61cに入射する。第2結像部61a及び61cを介した露光光ELIは、投影領域PAa及びPAcに照射される。この動作により、投影領域PAa及びPAcには、パターンPaの拡大像及びパターンPcの拡大像がそれぞれ投影されることになる。この状態で、制御部CONTは、駆動装置ACMによって保持部40を回転させつつ、基板FBを+X方向に移動させる。これによって、基板FBのうちY方向に離れた2つの領域が、投影領域PAa,PAcに投影されるパターンPa,Pcの拡大像によって+X側から−X側へと順に露光され、基板FBにX軸方向に沿った帯状の露光領域PBa,PBcが形成される。このとき、制御部CONTは、円筒面40aに沿ったマスクMの移動速度に対する基板FBの長さ方向への移動速度の比が、投影光学系PLの投影倍率(拡大倍率)と等しくなるように、保持部40の回転速度と基板FBの移動速度とを調整しつつ、駆動装置ACM及び駆動装置ACFに当該動作を行わせる。
【0069】
続いて、制御部CONTは、基板FBの移動にともない露光領域PBa,PBcの+X側端部が投影領域PAb及びPAdと等しいX方向位置に到達したら、次に保持部40の下流側(+X側)において露光処理を行わせる。制御部CONTは、照明光学系ILb及びILdから露光光ELIをそれぞれマスクMb及びMdのパターンPb及びPdに照射させる。
【0070】
パターンPb及びPdを介した露光光ELIは、第一開口部41b及び41d、第1結像部60b及び60d、第二開口部42b及び42dを順に通過して第2結像部61b及び61dに入射する。第2結像部61b及び61dを介した露光光ELIは、投影領域PAb及びPAdに照射される。
【0071】
投影領域PAb及びPAdには、パターンPb及びPdの拡大像がそれぞれ投影される。これによって、基板FBのうちY方向に離れた2つの領域が、投影領域PAb,PAdに投影されるパターンPb,Pdの拡大像によって+X側から−X側へと順に露光され、X軸方向に沿った帯状の露光領域PBb,PBdが基板FBに形成される。このとき、露光領域PBbの−Y側の端部及び+Y側の端部は、それぞれ露光領域PBaの+Y側の端部及び露光領域PBcの−Y側の端部に重なった状態で露光され、露光領域PBdの−Y側の端部は、露光領域PBcの+Y側の端部に重なった状態で露光される。また、制御部CONTは、引き続き円筒面40aに沿ったマスクMの移動速度に対する基板FBの長さ方向への移動速度が投影光学系PLの投影倍率と等しくなるように、保持部40の回転速度と基板FBの移動速度とを、それぞれ駆動装置ACM及び駆動装置ACFに調整させる。
【0072】
本実施形態では、基板FB上には、投影領域PAa〜PAdに投影される単独の像のみによって露光される部分と、投影領域PAaに投影される像の一部と投影領域PAbに投影される像の一部とによって露光される部分と、投影領域PAbに投影される像の一部と投影領域PAcに投影される像の一部とによって露光される部分と、投影領域PAcに投影される像の一部と投影領域PAdに投影される像の一部とによって露光される部分と、が形成されることになる。このように露光動作を行うことにより、基板FB上には、図4Bに示したパターンPmの拡大像に対応する露光パターンPfが形成されることになる。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、パターンPmを有するマスクMを保持して該マスクMを移動させるマスク移動装置MSTであって、円筒状に形成されパターンPmが円筒面40a上に配置されるようにマスクMを円筒面40aに沿って取り外し可能に保持する保持部40を有することとしたので、パターンPmの像を帯状の基板FBに効率的に露光することができる。これにより、帯状の基板FBに表示素子を効率的に製造することができる移動装置MSTを提供することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、マスクMを介した露光光が保持部40の内部を通過するように形成されているため、保持部40の内部の空間を有効活用することができる。これにより、露光装置EXの省スペース化を図ることができる。また、保持部40を円筒面の円周方向に沿って回転させる駆動装置ACMが保持部40の軸線C方向の端部を介して当該保持部40を回転させるため、保持部40の内部を通過する露光光を遮ることなく保持部40を回転させることができる。
【0075】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、基板FBを案内する基板案内装置FSTにおいて、基板FBを支持する案内部80を用いる構成としたが、これに限られることは無い。例えば図10に示すように、保持部40の円筒面40aと同一径の円筒面を備えた案内ローラー140を用いる構成としても構わない。
【0076】
この場合、制御部CONTは、保持部40と案内ローラー140とを回転させる際に、保持部40の駆動装置ACMと案内ローラー140の駆動装置ACFとを同期させて制御する。具体的には、制御部CONTは、円筒面40aに沿ったマスクMの移動速度に対する、案内ローラー140の表面に沿った基板FBの移動速度の比が、投影光学系PLの投影倍率(拡大倍率)と等しくなるように、駆動装置ACMと駆動装置ACFとの駆動を制御する。
【0077】
また、上記実施形態では、照明装置IUをマスク移動装置MST(保持部40)の外部に配置し、マスクMを透過型マスクとし、保持部40の外部からマスクMを透過させて露光光ELIを保持部40の内部に入射する構成としたが、これに限られることは無い。例えば、図11に示すように、まずマスクMとして反射型のマスクを用いることとし、照明装置IUから保持部40の軸線C方向の端部を介して露光光をELIを保持部40の内部に引き回し、当該保持部40の内部においてマスクMに露光光ELIを反射させることにより、保持部40の内部に露光光ELIを通過させる構成としても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、上記の露光装置EXを1つ用いた基板処理装置FPAの構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図12に示すように、露光装置EXを複数(例えば、2つ)配置させた構成としても構わない。この場合、基板FB上には、第1露光装置EX1による露光パターンPf1と、第2露光装置EX2による露光パターンPf2とが形成されることになる。
【0079】
また、上記実施形態では、保持部40に4枚のマスクMを保持させる構成としたが、これに限られることは無く、例えば図13に示すように、4つのパターンPa〜Pdが形成された1枚のマスクMを保持部40に保持させる構成としても構わない。この場合、保持部40の第一開口部41a〜41dに対応する位置にはパターンPa〜Pdを形成しておき、第二開口部42a〜42dに対応する位置には、開口部Poを形成しておくようにする。この構成により、マスクMの取り付け、取り外し、交換動作を容易に行うことができる。
【0080】
また、上記実施形態では、保持部40の円周方向に第一開口部41と第二開口部42と1つずつ形成する構成としたが、これに限られることは無い。例えば、図14に示すように、保持部40の円周方向に第一開口部141及び第二開口部142を3つずつ形成する構成としても構わない。また、保持部40の円周方向に第一開口部及び第二開口部を2つずつ、あるいは4つ以上ずつ形成する構成としても勿論構わない。
【0081】
また、上記実施形態では、マスクMを保持部40に保持させる際、保持部40のリング部43の形状にマスクMの周縁部を沿わせるようにしてマスクMを湾曲させる構成としたが、これに限られることは無い。例えば図15に示すように、例えば気体供給ポンプ90などを用いて保持部40の内部に気体を供給し、保持部40の内部の圧力を利用してマスクMの湾曲を調整する構成としても構わない。
【0082】
また、上記実施形態の構成に加えて、例えば図16に示すように、回転位置に配置された保持部40の円筒面40a上の所定位置についての位置情報(例えばX方向、Y方向、Z方向の座標など)を検出するセンサ91を設ける構成としても構わない。この構成によれば、円筒面40aの位置座標の変化を検出することにより、保持部40の偏心回転を検出することができる。なお、センサ91は、円筒面40aの固定位置の位置情報の代わりにマスクMの所定位置の位置情報を検出する構成としてもよい。
【0083】
加えて、センサ91の検出結果に応じて例えば露光光ELIの結像位置を調整する調整部を設ける構成としても構わない。このような構成としては、例えば図16に示すように、第1結像部60の一部としてあるいは当該第1結像部60とは別個に、平行平板ガラス67や焦点調整レンズ68などを設ける構成が挙げられる。この場合、平行平板ガラス67は、第1結像部60の光軸60xに対して傾斜可能とし、焦点調整レンズ68は、光軸60xに沿って移動可能(位置可変)とするとよい。なお、平行平板ガラス67は、光軸60xと交差するとともに円筒面40aの軸線Cに平行な軸を中心として傾斜可能(回転可能)とすることが好ましい。
【0084】
また、上記実施形態では、第1結像部60が保持部40の軸線Cよりも光路上流側に瞳面65を形成し、保持部40の内部にパターンPmの中間像66を形成するように配置された構成としたが、これに限られることは無い。例えば図17に示すように、保持部40の軸線Cよりも光路下流側に瞳面65を形成する構成としても構わない。また、パターンPmの中間像66を保持部40の外部に形成する構成としても構わない。更に、瞳面65を保持部40の外部に形成する構成としても構わない。
【0085】
また、上記実施形態の構成に加えて、図17に示すように、例えば第一開口部41にブラインド48を設ける構成としても構わない。また、例えばマスクMを挟んで保持するクランプ機構45を配置する構成としても構わない。当該クランプ機構45は、例えば保持部40の連結部44などに配置することができる。勿論、保持部40のリング部43にクランプ機構45を設ける構成としても構わない。
【0086】
次に本発明の一実施形態による露光装置をリソグラフィー工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図18は、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。まず、図18のステップS10において、帯状の基板に金属膜が蒸着される。次のステップS12において、その基板の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップS14において、露光装置EXを用いて、マスクM上のパターンの像が投影装置PU(投影光学系PL1〜PL4)を介して、その基板の各ショット領域に順次露光転写される(転写工程)。
【0087】
その後、ステップS16において、その基板のフォトレジストの現像(現像工程)が行われた後、ステップS18において、レジストパターンを介してその基板のエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、その基板の各ショット領域に形成される。その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く効率的に製造することができる。
【0088】
また、露光装置EXでは、帯状の基板に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を製造することもできる。以下、図19のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図19は、マイクロデバイスとしての液晶表示素子の製造する際の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【0089】
図19中のパターン形成工程S20では、本実施形態の露光装置EXを用いてマスクMのパターンを感光性基板(例えば、レジストが塗布されたガラス製もしくはプラスティック製の基板)に転写露光する、所謂光リソグラフィー工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。
その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レチクル剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルタ形成工程S22へ移行する。
【0090】
次に、カラーフィルタ形成工程S22では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、又はR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列したカラーフィルタを形成する。そして、カラーフィルタ形成工程S22の後に、セル組み立て工程S24が実行される。セル組み立て工程S24では、パターン形成工程S20にて得られた所定パターンを有する基板、及びカラーフィルタ形成工程S22にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。
【0091】
セル組み立て工程S24では、例えば、パターン形成工程S20にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程S22にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。その後、モジュール組立工程S26にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0092】
EX…露光装置 M…マスク Pm…パターン IU…照明装置 MST…マスク移動装置 PU…投影装置 FST…基板案内装置 ELI…露光光 ACM、ACF…駆動装置 PL…投影光学系 PA…投影領域 FPA…基板処理装置 FB…基板 SU…基板供給部 PR…基板処理部 CL…基板回収部 CONT…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有するマスクを保持して該マスクを移動させるマスク移動装置であって、
円筒状に形成され、所定の円筒面に沿って前記マスクを保持する保持部と、
前記円筒面の円周方向に沿って前記保持部を回転させる駆動部と、
を備え、
前記保持部は、
前記保持部が保持する前記マスクの前記パターンを前記保持部の内側に露出させる第一開口部と、
前記第一開口部と対向し、前記パターンから前記第一開口部を介して前記保持部の内側に発した光を前記保持部の外側へ通過させる第二開口部と、
が形成されているマスク移動装置。
【請求項2】
パターンを有する複数のマスクを保持して該複数のマスクを移動させるマスク移動装置であって、
円筒状に形成され、所定の円筒面に沿って前記複数のマスクを保持する保持部と、
前記円筒面の円周方向に沿って前記保持部を回転させる駆動部と、
を備え、
前記保持部は、
前記保持部が保持する複数の前記マスクの前記パターンを、それぞれ前記保持部の内側に露出させる複数の第一開口部と、
複数の前記第一開口部とそれぞれ対向し、前記パターンから前記第一開口部を介して前記保持部の内側に発した光を前記保持部の外側へ通過させる複数の第二開口部と、
が形成されているマスク移動装置。
【請求項3】
複数の前記第一開口部は、前記円筒面の円周方向に沿って配列されている
請求項2に記載のマスク移動装置。
【請求項4】
前記第一開口部と前記第二開口部とは、前記円筒面の円周方向に沿って交互に配置されている
請求項3に記載のマスク移動装置。
【請求項5】
複数の前記第一開口部は、前記円筒面の中心軸線方向に沿って配列されている
請求項2に記載のマスク移動装置。
【請求項6】
前記中心軸線方向に隣り合う2つの前記第一開口部は、前記円筒面の円周方向に相互に所定量ずれて配置されている
請求項5に記載のマスク移動装置。
【請求項7】
前記中心軸線方向に隣り合う2つの前記第一開口部に対してそれぞれ設けられる2つの前記マスクは、前記円筒面の円周方向に相互に所定量ずれて配置されている
請求項5に記載のマスク移動装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記円筒面の中心軸線方向に関する前記保持部の端部に接続され、該端部を前記円筒面の円周方向に沿って回転させる
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項9】
前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記円筒面の円周方向に沿って帯状に形成されている
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項10】
前記保持部は、前記第一開口部の周縁部に設けられて前記マスクを吸着する吸着部を有する
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項11】
前記保持部は、前記マスクの端部を固定する固定機構を有する
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項12】
前記保持部は、前記第二開口部を閉塞するとともに前記光を透過させるカバー部材が設けられる
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項13】
前記保持部の内側に気体を供給する気体供給部を備える
請求項12に記載のマスク移動装置。
【請求項14】
前記保持部は、前記パターンの像を形成する光学系の少なくとも一部が該保持部の内側に配置される
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のマスク移動装置。
【請求項15】
マスクが有するパターンを基板に転写する露光装置であって、
前記マスクを保持して該マスクを移動させる請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のマスク移動装置と、
前記マスク移動装置に保持された前記マスクの前記パターンの像を前記第二開口部を介して投影する投影光学装置と、
前記投影光学装置による前記パターンの像の投影領域を経由するように前記基板を案内する案内装置と、
を備える露光装置。
【請求項16】
前記案内装置は、前記投影領域に位置する前記基板を支持する支持部を有する
請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記支持部は、前記マスク移動装置に保持された前記マスクの湾曲方向に対して、前記投影光学装置によって光学的に対応する方向に湾曲した湾曲部を有し、該湾曲部に沿って前記基板を湾曲させて該基板を支持する
請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記湾曲部は、前記投影光学装置に向けて凸状に湾曲されている
請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
前記湾曲部は、前記マスク移動装置に保持された前記マスクの曲率と同一の曲率で湾曲されている
請求項17又は請求項18に記載の露光装置。
【請求項20】
前記支持部は、表面に沿って前記基板を案内する案内ローラーと、該案内ローラーを前記表面の円周方向に沿って回転させるローラー駆動部と、を有し、
前記湾曲部は、前記案内ローラーの表面部に設けられている
請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
前記マスク移動装置の前記駆動部と、前記ローラー駆動部とを同期させて制御する制御部を備える
請求項20に記載の露光装置。
【請求項22】
前記投影光学装置は、
前記マスク移動装置の前記保持部の内側に配置されて、前記パターンから発した光を前記第二開口部から射出させる第1光学系と、
前記第1光学系を介した前記光を前記投影領域に照射して前記パターンの像を投影する第2光学系と、
を含む請求項15から請求項21のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項23】
前記第1光学系は、前記第二開口部の近傍に前記パターンの中間像を結像する
請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記第1光学系は、前記中間像の結像位置を調整する調整部を含む
請求項23に記載の露光装置。
【請求項25】
前記マスク移動装置の前記保持部の位置情報又は前記保持部に保持された前記マスクの位置情報を検出する検出部を備え、
前記調整部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記中間像の結像位置を調整する
請求項24に記載の露光装置。
【請求項26】
前記投影光学装置は、前記第二開口部の近傍に該投影光学装置の瞳面を形成する
請求項15から請求項22のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項27】
帯状の基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板を該基板の長手方向に搬送する基板搬送部と、
前記基板搬送部による前記基板の搬送経路に沿って設けられ、該搬送経路に沿って搬送される前記基板に対して処理を行う基板処理部と、を備え、
前記基板処理部は、前記基板にパターンを転写する請求項15から請求項26のいずれか一項に記載の露光装置を含む
基板処理装置。
【請求項28】
基板を処理してデバイスを製造するデバイス製造方法であって、
請求項15から請求項26のいずれか一項に記載の露光装置を用いて、前記基板にパターンを転写することと、
前記パターンが転写された前記基板を該パターンに基づいて加工することと、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−221536(P2011−221536A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89071(P2011−89071)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】