説明

マニピュレータシステム及び微小操作対象物の操作方法

【課題】微小な操作対象物の交換作業を自動的に可能なマニピュレータシステム及び微小操作対象物の操作方法を提供する。
【解決手段】キャピラリ25,35を駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸を回転駆動するモータと、回転軸に固定されて、ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて回転軸を微動駆動させる微動機構と、微動機構を伴って三次元空間を移動してキャピラリの位置を制御する三次元軸移動テーブルと、を有する一対のマニピュレータ14,16と、マニピュレータに操作される微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段12と、マニピュレータの駆動を制御する制御手段43と、マニュピレータを駆動する操作手段47と、を備え、操作対象物を操作する際に、マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータを用いて細胞や卵等の微小な対象物に微細な操作を行うマニピュレータシステム及びこのマニピュレータシステムを用いた微小操作対象物の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジ分野において顕微鏡観察下で卵や細胞に精子やDNA溶液を注入(インジェクション)するなどのように卵等の微小な対象物に微細な操作を行うマイクロマニピュレーションシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。顕微鏡の視野内でマイクロマニュピレータを用いて微小針(キャピラリ)を操作することにより被検体に対して遺伝子組み換え操作や顕微受精操作等の微細操作が行われる。
【0003】
非特許文献1には、受精卵の前核に直接微量のDNAを注入するマイクロインジェクション法が記載されており、インジェクション操作前の卵はドロップの上方に入れ、インジェクション操作後の卵はドロップの下方に移し、未処理卵と区別して操作することが記載されている。非特許文献2には、卵細胞の周囲に4つの電極を配置し、位相のずれた電圧を印加し、回転電場を発生させて卵を回転させるようにした卵細胞回転機構を有するマイクロマニピュレーションシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2005−258413号公報
【非特許文献1】「改訂第4版 新遺伝子工学ハンドブック」羊土社248 〜253頁
【非特許文献2】「マイクロマニピュレーションシステム」メディカル ・サイエンス・ダイジェスト28巻4号2002年35〜37頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顕微鏡の視野内でキャピラリにより遺伝子組み換え操作や顕微受精操作等の微細操作を行う場合、対象物(卵や細胞等)を操作する前後にキャピラリを所定の位置ヘセッティングする操作は、マニピュレータの基本操作に慣れた熟練技術が必要であった。
【0005】
非特許文献1のマイクロインジェクション法は、インジェクション作業をする培地中で操作後の卵と未操作卵をドロップ中で混在しないように、操作後の卵はドロップの下方へ移動させ、続いて上方から未操作卵を持ってくるものであるが、この方法によれば、マニピュレータ自体の基本操作に慣れておく必要性があり、不慣れな作業者が操作すると操作効率が低下してしまうという問題があった。
【0006】
非特許文献2の卵細胞回転機構は、新たに電極機能を設け、操作する卵周辺に電場を発生させて卵を回転させるもので、その結果によれば、受精能、発生能に障害はないとされているが、使用するには新たに設備導入が必要となる。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、容易かつ正確に卵等の微小な操作対象物の交換作業を自動的に可能なマニピュレータシステム及び微小操作対象物の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本実施形態のマニピュレータシステムの基本的構成は、微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段と、前記操作対象物を操作するためにXYZ軸の三方向に電動で駆動可能な一対のマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニュピレータを駆動する操作手段と、を備え、前記操作対象物を操作する際に、前記マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化したものである。
【0009】
すなわち、本実施形態によるマニピュレータシステムは、キャピラリを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構と、前記微動機構を伴って三次元空間を移動して前記キャピラリの位置を制御する三次元軸移動テーブルと、を有する一対のマニピュレータと、前記マニピュレータに操作される微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段と、前記マニピュレータの駆動を制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニュピレータを駆動する操作手段と、を備え、前記操作対象物を操作する際に、前記マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化したことを特徴とする。
【0010】
このマニピュレータシステムによれば、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換をマニピュレータのシーケンス駆動で自動化することで、卵等の微小な操作対象物の交換作業を熟練技術がなくても自動的に操作可能となり、効率的に行うことができる。なお、前記操作手段がジョイステックを備え、ジョイステックのスイッチ操作により前記シーケンス駆動が開始するように構成できる。
【0011】
上記マニピュレータは、次のように駆動される。すなわち、三次元軸移動テーブルの駆動により、微動機構を三次元空間の任意の位置に移動させることができ、微動機構が三次元空間の任意の位置に位置決めされたときに、モータを粗動駆動すると、モータの回転軸の回転に伴う回転運動がねじ要素を介してねじ軸に直線運動として伝達され、ねじ軸がキャピラリを駆動対象として、その軸方向に沿って移動する。この際、微動機構の圧電素子に電圧を印加すると、この印加電圧に応じて回転軸がその軸方向に沿って微動駆動されるため、この微動駆動をねじ要素を介してねじ軸に伝達することで、キャピラリをその軸方向に沿って直線運動させることができる。なお、キャピラリは、ピペットの先端側に取り付けられて、ピペットが駆動されることでピペットを介して駆動される。
【0012】
上記マニピュレータシステムにおいて前記マニピュレータは、前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記キャピラリ側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備えることが好ましい。ねじ軸のうちねじ要素よりもピペット側の部位を、リニアガイドでスライド自在に支持することで、ねじ軸の直線運動のみをキャピラリに伝達することができる。
【0013】
また、前記制御手段は、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記キャピラリがインジェクション動作可能な電圧を印加することが好ましい。圧電素子に対して、キャピラリがインジェクション動作可能な電圧を印加することで、ピペットによる微動動作として、ピペットに対してインジェクション動作を行わせることができる。
【0014】
また、前記マニピュレータに取り付けられたキャピラリ及び前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段を備え、前記シーケンス駆動の際に、前記撮像手段により撮影された前記キャピラリ及び前記操作対象物の顕微鏡画像を画像処理し、その画像処理された画像に基づいて前記マニピュレータを駆動することが好ましい。
【0015】
この場合、前記マニピュレータの一方に取り付けられたホールディングキャピラリに保持された操作対象物の特定部分を前記画像処理された画像に基づいて検出し、前記特定部分が所定位置にないとき、前記マニピュレータの他方に取り付けられたインジェクションキャピラリが自動的に前記操作対象物を操作することで前記所定位置に位置決めすることが好ましい。これにより、例えば、操作対象物が卵のとき、卵の保持位置を変えて卵の核をインジェクション処理のし易い所定位置に位置調整して位置決めることができる。
【0016】
また、前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段を備え、前記顕微鏡画像から作成したテンプレート画像に基づいてパターンマッチングによる解析を行い、前記解析結果に基づいて前記マニピュレータを駆動することで、マニュピレータ及びキャピラリを自動的に駆動することができるとともに、テンプレート画像を利用することで自動化効率を向上させることができる。この場合、前記テンプレート画像の作成の有無を入力する入力手段を備えることが好ましく、必要に応じてテンプレート画像を作成することができ、また、先に作成したテンプレート画像を引き続き使用することができる。
【0017】
また、前記マニピュレータに取り付けられたインジェクションキャピラリが前記操作後の操作対象物と前記操作前の操作対象物とを仕切るように前記マニピュレータを駆動することが好ましい。これにより、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物とを区別することができ、両者の混在を防止することができる。
【0018】
また、前記マニピュレータに取り付けられたホールディングキャピラリは、吸引手段により陰圧状態で前記操作対象物を保持するとともにその陰圧が制御可能であることが好ましい。これにより、例えば、操作対象物が卵でインジェクション処理を行うときは、ホールディングキャピラリにおいて比較的強い陰圧で操作対象物を保持でき、また、上述のような卵の核の位置の調整のときは、位置調整し易いように比較的弱い陰圧で操作対象物を保持できる。
【0019】
この場合、前記操作後の操作対象物を保持するホールディングキャピラリの陰圧を弱めてから、前記マニピュレータに取り付けられたインジェクションキャピラリを移動させることで、前記操作後の操作対象物を前記ホールディングキャピラリから離して移動させることが自動で実行できる。なお、この移動のとき、インジェクションキャピラリが操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との間に位置し、仕切り機能を発揮し、両者の混在を防止する。また、ホールディングキャピラリが弱い陰圧であると、ホールディングキャピラリの近傍にある操作前の操作対象物が吸い寄せられて自動的にホールディングキャピラリに保持される。
【0020】
本実施形態による別のマニピュレータシステムは、微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段と、前記操作対象物を操作するためにXYZ軸の三方向に電動で駆動可能な一対のマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニュピレータを駆動する操作手段と、前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段と、を備え、前記顕微鏡画像から作成したテンプレート画像に基づいてパターンマッチングによる解析を行い、前記解析結果に基づいて前記マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化したことを特徴とする。
【0021】
このマニピュレータシステムによれば、マニュピレータを自動的に駆動することができ、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換をマニピュレータのシーケンス駆動で自動化することで、卵等の微小な操作対象物の交換作業を熟練技術がなくても自動的に操作可能となり、操作対象物の交換等の操作処理を熟練技術がなくても操作可能となり、効率的に行うことができる。また、テンプレート画像を利用することで自動化効率を向上させることができる。
【0022】
この場合、前記テンプレート画像の作成の有無を入力する入力手段を備えることが好ましく、必要に応じてテンプレート画像を作成することができ、また、先に作成したテンプレート画像を引き続き使用することができる。
【0023】
本実施形態による微小操作対象物の操作方法は、上述のマイクロマニピュレータシステムを用いて、前記微小な操作対象物である卵に対してインジェクション操作を行うことを特徴とする。
【0024】
この操作方法によれば、操作済み卵と未操作卵との交換をマニピュレータのシーケンス駆動で自動化することで、煩雑な操作をせずに容易に微小な操作対象物である卵のセッティングが可能となり、卵の操作処理を熟練技術がなくても操作可能となり、効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容易かつ正確に卵等の微小な操作対象物の交換作業を自動的に可能なマニピュレータシステム及び微小操作対象物の操作方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
〈第1の実施形態〉
【0028】
図1は第1の実施形態によるマニピュレータシステムの構成を概略的に示す図である。図1において、マニピュレータシステム10は、顕微鏡観察下で試料に人工操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユニット12と、マニピュレータ14と、マニピュレータ16とを備えており、顕微鏡ユニット12の両側にマニピュレータ14、16が分かれて配置されている。
【0029】
顕微鏡ユニット12は、撮像素子としてのカメラ18、顕微鏡20、試料台としてのベース22を備えている。このベース22の直上に顕微鏡20が配置される構造となっている。なお、顕微鏡20とカメラ18とは一体構造となっており、図示は省略したが、ベース22に向けて光を照射する光源を備えている。
【0030】
ベース22上には試料(図示せず)が乗せられるようになっている。この状態で、ベース22上の試料に顕微鏡20から光が照射され、ベース22上の細胞で反射した光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大されたあとカメラ18で撮像されるようになっており、カメラ18の撮像による画像を基に試料を観察することができる。
【0031】
マニピュレータ14は、図1に示すように、X軸‐Y軸‐Z軸の3軸構成のマニピュレータとして、ピペット24、X‐Y軸テーブル26、Z軸テーブル28、X‐Y軸テーブル26を駆動する駆動装置30、Z軸テーブルを駆動する駆動装置32を備えて構成されている。ピペット24の先端には、毛細管チップであるキャピラリ25が取り付けられている。
【0032】
ピペット24は、Z軸テーブル28に連結され、Z軸テーブル28は、X‐Y軸テーブル26上に上下動自在に配置され、駆動装置30、32はコントローラ43に接続されている。なお、コントローラ43は、パーソナルコンピュータ(パソコン、PC)から構成されてよい。
【0033】
X‐Y軸テーブル26は、駆動装置30の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル28は、駆動装置32の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル28に連結されたピペット24は、X‐Y軸テーブル26とZ軸テーブル28の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の細胞などを保持するように構成されている。
【0034】
マニピュレータ16は、直交3軸構成のマニピュレータとして、ピペット(インジェクションピペット)34と、X‐Y軸テーブル36と、Z軸テーブル38と、X‐Y軸テーブル36を駆動する駆動装置40と、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42を備え、ピペット34は、Z軸テーブル38に連結され、Z軸テーブル38は、X‐Y軸テーブル36上に上下動自在に配置され、駆動装置40、42は、コントローラ43に接続されている。ピペット34の先端にはキャピラリ(ガラスキャピラリ)35が取り付けられている。
【0035】
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル38に連結されたピペット34は、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の試料に人工操作を行うように構成されている。このように、マニピュレータ14、16はほぼ同一構成であり、以下、ピペット34が連結されたマニピュレータ16を例に挙げて説明する。
【0036】
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動(モータ)により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動(モータ)により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されているとともに、ベース22上の細胞などを、針を挿入するための挿入対象とするピペット34を連結している。
【0037】
すなわち、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38は、駆動装置40、42の駆動により、ベース22上の細胞などを含む3次元空間を移動領域として移動し、ピペット34を、例えば、ピペット34の先端側からベース22上の細胞(試料)に対して、針を挿入するための挿入位置まで粗動駆動する粗動機構(3次元軸移動テーブル)として構成されている。
【0038】
また、Z軸テーブル38とピペット34との連結部は、ナノポジショナとしての機能を備えている。ナノポジショナは、ピペット34を設置している方向へ自在に移動可能に支持するとともに、さらに、ピペット34をその長手方向(軸線方向)に沿って微動駆動するように構成されている。
【0039】
具体的には、Z軸テーブル38とピペット34との連結部には、ナノポジショナとして、微動機構44を備えている。
【0040】
微動機構44は、図2乃至図4に示すように、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング48を備えており、ほぼ筒状に形成されたハウジング48内には、ピペット34を駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸52と、ねじ軸52を囲む中空状の回転軸54が挿通されている。ハウジング48はその底部がベース56に固定されている。
【0041】
ねじ軸52の先端側には、治具58を介してピペット34の根元側が連結されており、ねじ軸52の中程には、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合されるねじ要素としてのボールねじナット(BSナット)60が装着され、治具58とねじ軸52との間にはスライダ62が連結されている。スライダ62はベース56とほぼ直交する方向に配置され、切り欠き64を間にしてリニアガイド66に連結されている。リニアガイド66はベース56底部側に配置され、ベアリング68を介して、ねじ軸52の軸方向に沿って移動自在にベース56に連結されている。
【0042】
すなわち、リニアガイド66は、ねじ軸52の軸方向の移動に合わせて、ねじ軸52の先端側を支持したスライダ62を、ベース56に沿って往復動させるようになっている。この際、ねじ軸52のうちボールねじナット60よりもピペット34側の部位が、スライダ62を介してリニアガイド66でスライド自在に支持されるので、ねじ軸52の直線運動をピペット34へ伝達することができる。
【0043】
ボールねじナット60は、回転軸54の軸方向一端側(先端側)の段部54aに固定されているとともに、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合され、ねじ軸52がその軸方向に沿って往復動(直線運動)するのを自在に支持するようになっている。すなわち、ボールねじナット60は、回転軸54の回転運動をねじ軸52の直線運動に変換するための要素として構成されている。
【0044】
回転軸54の軸方向他端側は、中空モータ70内の回転部に連結している。中空モータ70のハウジング74は、その底部側がベース56に弾性体としてのゴムワッシャ76を介してボルト78が固定されている。中空モータ70が駆動されると回転軸54が回転し、回転軸54の回転運動がボールねじナット60を介してねじ軸52に伝達され、ねじ軸52がその軸方向に沿って直線運動するようになっている。なお、モータ70と回転軸54との連結にカップリングを使用してもよい。
【0045】
一方、回転軸54の段部54aに隣接して、軸受80、82が内輪間座84を間にして収納されている。軸受80、82は、それぞれ内輪80a、82aと、外輪80b、82bと、内輪と外輪間に挿入されたボール80c、82cを備え、各内輪80a、82aが回転軸54の外周面に嵌合され、各外輪80b、82bがハウジング48の内周面に嵌合され、回転軸54を回転自在に支持するようになっている。軸受80、82は、内輪間座84を間にし、回転軸54にロックナット86により固定されている。軸受80は、ハウジング48内の段部54aと円環状のスペーサ90と当接することにより、回転軸54の軸方向への移動が規制されるようになっている。軸受82の外輪82bとハウジング48の蓋88との間に、円環状の圧電素子92と円環状のスペーサ90が配置されている。
【0046】
また、各軸受80、82、圧電素子92は、スペーサ90の長さを調節し、蓋88を閉めることにより、予圧が付与される。
【0047】
具体的には、スペーサ90の長さを調整し、蓋88を閉めると、その位置に応じた締結力が軸受82と軸受80の外輪82b、80bに、軸方向に沿った押圧力として予圧が付与されるとともに、同時に圧電素子92にも予圧が付与される。これにより、軸受80、82および圧電素子92に所定の予圧が付与され、軸受80、82の外輪間に軸方向間の距離としての間隙94が形成される。
【0048】
圧電素子92は、リード線(図示せず)を介して制御回路としてのコントローラ43に接続されており、コントローラ43からの電圧に応じて回転軸54の長手方向(軸方向)に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素として構成されている。すなわち、圧電素子92は、コントローラ43からの印加電圧に応答して、回転軸54の軸方向に沿って伸縮し、回転軸54をその軸方向に沿って微動させるようになっている。回転軸54が軸方向に沿って微動すると、この微動がねじ軸52を介してピペット34に伝達され、ピペット34の位置が微調整されることになる。
【0049】
上記構成において、インジェクション用マニピュレータ16を駆動するに際しては、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動して、インジェクションピペット34をベース22上の細胞に近づけて位置決めしたあと、微動機構44を用いてピペット34を微動駆動することとしている。
【0050】
具体的には、ピペット34にキャピラリ35として、ガラスキャピラリをセッティングするに際しては、図5に示すように、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22からピペット34を退避させる状態になるように、マニピュレータ14,16を駆動する。これにより、ピペット34にガラスキャピラリ35をセッティングする際、十分な作業スペースが得られる。
【0051】
ガラスキャピラリ35をピペット34に取り付けた後は、コントローラ43からの指令により、マニピュレータ14、16を駆動し、図6に示すように、ガラスキャピラリ35が取り付けられたピペット34を顕微鏡作業箇所であるベース22上へ移動させる。このときの作業方法はジョイスティック47やボタン43Bやマウス49(図7)を用いたりする方法を用いることもできる。
【0052】
ガラスキャピラリ35を顕微鏡作業箇所に移動させる際、1回目(初めての)の操作の場合、顕微鏡視野倍率を低倍にし、アクチュエータを駆動することで、顕微鏡20の視野内にガラスキャピラリ35が確認でき次第、アクチュエータの駆動を停止する。
【0053】
このあと、コントローラ43の画像処理を利用し、アクチュエータを駆動することで、顕微鏡20の視野内に、ガラスキャピラリ35を最適位置へ移動し、アクチュエータの駆動を停止する。このとき、1回目の操作の際に駆動したアクチュエータの移動量をコントローラ43に記憶する。このとき必要であれば、XYZの駆動系も駆動しても良い。
【0054】
次に、マニピュレータ16を操作し、シャーレの交換あるいはガラスキャピラリ35の交換が必要になった場合、アクチュエータを駆動し、顕微鏡作業箇所からガラスキャピラリ35を退避させるための操作を行う。このときボタン43Bの操作により、ガラスキャピラリ35をセッティングした位置まで駆動しても良いし、ジョイステック47などを用いて任意の位置まで退避するようにしてもよい。
【0055】
一方、再度、顕微鏡作業箇所へガラスキャピラリ35を移動する場合、1回目にセッティングした際の位置をコントローラ43が記憶しているため、マニピュレータ16で、容易にガラスキャピラリ35の位置を調整することが可能になる。
【0056】
また一連の細胞操作作業中にガラスキャピラリ35を交換する必要があった場合でも、ピペット34をマニピュレータ16から外すことなく、ガラスキャピラリ35をセッティングすることが可能となるので、作業効率を向上することができる。
【0057】
ガラスキャピラリ35として、その形状が均一なものを使用する場合は、本発明に係るマニピュレータ16を用いることで、従来のものよりも効率を向上させることができる。
【0058】
またガラスキャピラリ35の形状にばらつきがある場合でもピペット34をアクチュエータ(ねじ軸52)の駆動によって直線往復運動させることができるため、ガラスキャピラリ35の位置を微細に調整することができる。
【0059】
また、ガラスキャピラリ35が細胞の挿入位置に位置決めされたときには、圧電素子92にインジェクション用の電圧を印加し、微動機構44を微動駆動することで、ピペット34によるインジェクション動作を行うことができる。この際、圧電素子92からピペット34を支持する治具58までの間には弱いばね要素を配置していないため、高い応答性を得ることが可能である。
【0060】
圧電素子92に印加する電圧の電圧波形としては、正弦波、矩形波、三角波などを用いることができる。また圧電素子92に電圧を印加する方法としては、操作者がボタン43Bを押している間、信号波形を連続して出力して駆動しても良いし、バースト波形を使用しても良い。
【0061】
本実施形態においては、軸受80、82のうち軸受80の内輪80aと外輪80bの変位量であって、圧電素子92の変位の半分の変位量がピペット34の変位量に設定されているため、圧電素子92には微動変位量の2倍の変位を与えるための制御電圧と初期設定電圧とを加算した微動用電圧を印加することになる。
【0062】
例えば、圧電素子92に2xの伸びが生じたときには、この伸びによる押圧力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて軸受82の外輪82bを押圧し、軸受80の外輪80bを軸方向に移動させ、軸受80、82の各外輪間の間隙94が2x分更に狭くなって圧電素子92の軸方向の伸びを吸収する。
【0063】
この間隙94の変位は、弾性変形に伴って軸受80、82がそれぞれ軸方向にxずつ変位し、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することにより生じる。
【0064】
逆に、圧電素子92が2x縮むと、押圧力が減少し、軸受80、82の弾性変形がそれぞれxずつ減少し、間隙94が広がる方向に、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することになり、圧電素子92の縮む分を吸収する。
【0065】
このように、間隙94の変位xを軸受80、82がxずつ分けて吸収するので、軸受80、82を互いに押圧する力がバランスしたときに、軸受80、82の内輪80a、80bが回転軸54と共に軸方向にx変位する。これにより、回転軸54にねじ軸52を介して連結されたピペット34が軸方向にxだけ変位する。つまり、圧電素子92の2xの半分の変位量がピペット34の微動変位量となってピペット34が挿入位置に挿入される。ピペット34が挿入位置に位置決めされたあと、圧電素子92にインジェクション用電圧を印加すると、ピペット34がインジェクション動作を行うことになる。
【0066】
本実施形態によれば、中空モータ70の駆動に伴う回転軸54の回転運動をボールねじナット60を介して直線運動に変換してねじ軸52に伝達し、中空モータ70の粗動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って粗動駆動し、微動機構44の微動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って微動駆動させるようにしたため、ピペット34にガラスキャピラリ35を取り付けるだけで、ピペット34を直線運動させることができ、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22へ向けてピペット34を移動させたり、ベース22からピペット34を退避させたりする際に、煩雑な作業を不要とすることができる。
【0067】
次に、図1のマニピュレータシステム10のパーソナルコンピュータ(コントローラ)43による制御について図7を参照して説明する。図7は図1のパーソナルコンピュータ(コントローラ)43による制御系要部を示すブロック図である。
【0068】
図1,図7のパーソナルコンピュータ43は、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM、ROMなどのハードウエア資源を備え、所定のプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果に従って制御部46が各種の制御を行うように駆動指令を出力する。すなわち、制御部46は、図1の顕微鏡ユニット12の焦点合わせ機構81,マニピュレータ14の駆動装置30,32,シリンジポンプ29、及び、マニピュレータ16の駆動装置40,42,注入ポンプ39,微動機構44の圧電素子92を制御し、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等を介してそれぞれに駆動指令を出力する。
【0069】
また、パーソナルコンピュータ43には、情報入力手段としてキーボードの他にジョイステック47,マウス49,ボタン43B(図1)が接続されており、さらに、CRTや液晶パネルからなる表示部45が接続され、表示部45にはカメラ18で取得した顕微鏡画像や各種制御用画面が表示されるようになっている。
【0070】
また、制御部46は、マニピュレータ14,16を所定のシーケンスで自動的に駆動するようになっている。かかるシーケンス駆動は、所定のプログラムによるCPUの演算結果に基づいて制御部46が順次、それぞれに駆動指令を出力することで行われ、例えば、ベース22上で多数の卵を操作する場合、マニピュレータ14,16が操作済みの卵と操作前の卵との区別のための操作を行うようになっている。
【0071】
また、パーソナルコンピュータ43は、顕微鏡20を通してカメラ18で撮像した顕微鏡視野の画像信号が入力する画像入力部82と、画像入力部82からの画像信号をA/D(アナログ/デジタル)変換して画像処理を行う画像処理部83と、画像処理前後の画像情報が表示部45へと出力する画像出力部84と、カメラ18で撮像された操作対象物の卵の核等の位置やホールディングキャピラリ25とインジェクションキャピラリ35との位置等を画像処理後の画像情報に基づいて検出するための位置検出部85と、を備え、各部82〜85が制御部46により制御されるようになっている。
【0072】
画像処理部83は、例えば、検出対象物の位置を検出するためにエッジ抽出処理やパターンマッチングを行い、その処理結果に基づいて位置検出部85が卵の核やキャピラリ25,35の位置を検出し、それらの検出位置に基づいてキャピラリ25,35等の駆動が制御される。
【0073】
また、表示部45には、カメラ18で撮像したキャピラリ25,35の画像を含めて卵等の微小な操作対象物の顕微鏡画像や演算結果に関する情報などが表示される。
【0074】
図1,図7の顕微鏡ユニット12,マニピュレータ14,16の各動作は、ジョイステック47の操作による入力情報に基づいて図7の制御部46により制御される。ジョイステック47はホールディング用マニピュレータ14及びインジェクション用マニピュレータ16に対しそれぞれ1つずつ用意される。図8に図1,図7のジョイステックの具体例を示す斜視図を示す。
【0075】
図8のように、ジョイステック47は、基台から直立し操作者により掴まれて右側R,左側Lに傾斜するように、また、ねじるように操作可能な本体部(ハンドル)47eと、その上部に並んで配置された第1,第2及び第3押しボタンスイッチ47a,47b,47cと、さらにその上部に配置された4方向や8方向等の多方向ハットスイッチ47dと、押しボタンスイッチ47a〜47cの反対側に配置されたトリガスイッチ47gと、を備えている。
【0076】
図1,図7のジョイステック47の押しボタンスイッチ47a〜47c,多方向ハットスイッチ47d,本体部47e,トリガスイッチ47gには、それぞれ、顕微鏡ユニット12の焦点合わせ機構81、各マニュピレータ14,16のXYZ軸、シリンジポンプ29,注入ポンプ39,圧電素子92の各駆動の操作機能が割り当てられている。例えば、トリガスイッチ47gを引きながら本体部47eを右側R,左側Lに傾斜させることでマニュピレータ14,16のXY駆動を行うことができ、本体部47eをねじることでZ駆動を行うことができる。
【0077】
また、ホールディング用マニピュレータ14に関しては、多方向ハットスイッチ47dの上方向、下方向ボタンを押すと、焦点合わせ機構81が駆動し、顕微鏡20の焦点合わせができ、右方向、左方向ボタンを押すと、卵等の操作対象物に対するXY平面回転、YZ平面回転を行うことができ、また、押しボタンスイッチ47b,47cはシリンジ調整のためのものであり、押しボタンスイッチ47b,47cの1つを押すと、シリンジポンプ29によるホールディングキャピラリ25の吸引圧(陰圧)を調節できる。また、例えば、押しボタンスイッチ47aを用いて、マニピュレータ14,16に対し自動でシーケンス駆動を行わせることができる。
【0078】
また、インジェクション用マニピュレータ16に関しては、多方向ハットスイッチ47dを用いてモータ駆動によるXY平面における微動を制御でき、押しボタンスイッチ47b,47cはシリンジ調整のためのものであり、押しボタンスイッチ47aは穿孔駆動のオン・オフ制御のためのものである。
【0079】
図8のジョイステック47における上記スイッチの操作により、図1,図7のマニピュレータ14が駆動され、そのホールディングキャピラリ25がベース22上の卵等を保持し、また、その保持の吸引圧(陰圧)が制御される。
【0080】
また、ジョイスティック47における上記スイッチの操作により、マニピュレータ16が駆動され、そのインジェクションキャピラリ35の先端がインジェクション方向に直線的に変位し、卵に挿入されたインジェクションキャピラリ35から所定の溶液が注入ポンプ39の駆動により卵に対しインジェクションされ、さらに必要であれば、そのキャピラリ35の駆動の間または駆動の後に、穿孔用電圧が圧電素子92に印加され、圧電素子92が駆動され、インジェクションキャピラリ35が卵に接近または当接した位置で微小量の移動を行うことで卵に対する穿孔動作を行い、挿入されたインジェクションキャピラリ35から所定の溶液が注入ポンプ39の駆動により卵に注入(インジェクション)される。その後、インジェクションキャピラリ35を卵内の位置から抜くように駆動する。
【0081】
次に、図1〜図8のマニピュレータシステム10による動作について図9,図10をさらに参照して説明する。
【0082】
図9は、図1の顕微鏡ユニット12による顕微鏡視野を模式的に示す図であり、キャピラリ25,35の各先端位置及び操作対象物の卵を示し、操作対象物の卵に対する交換等の各操作ステップ(a)乃至(e)を説明するための図である。図10は、同じく、キャピラリ25,35の各先端位置及び操作対象物の卵を示し、操作対象物の卵に対する位置決め等の各操作ステップ(a)乃至(e)を説明するための図である。
【0083】
例えば、図1のベース22上で多数の卵に対するDNAマイクロインジェクションを行うとき、インジェクション操作済み卵を未操作卵と区別しながら移動させ、未操作卵を新たにセッティングするようにして卵を次々と交換することが必要であるが、かかる卵交換ステップがマニピュレータシステム10によるシーケンス駆動で次のようにして自動的に実行される。
【0084】
図9(a)は、インジェクションキャピラリ35を通してのインジェクション操作の終了した操作済卵D1がホールディングキャピラリ25に所定の陰圧で保持されており、インジェクションキャピラリ35が操作済卵D1から抜かれた状態を示す。この状態で図8のジョイスティック47のトリガスイッチ47gをオンにすると、次のようにマニピュレータ14,16がシーケンス駆動される。
【0085】
すなわち、図9(a)に示す現状のインジェクションキャピラリ35とホールディングキャピラリ25との位置関係を制御部46が図7の位置検出部85の検出結果に基づいて認識する。
【0086】
次に、図9(b)のように、インジェクション用マニピュレータ16を駆動してインジェクションキャピラリ35を図の破線位置から実線の所定位置ヘ移動させる。この所定位置は、例えば、インジェクションキャピラリ35の先端35aがホールディングキャピラリ25の先端で図の下方近傍とし、インジェクションキャピラリ35が未操作卵D2と操作済卵D1との間に位置させることで、未操作卵D2と操作済卵D1とが区別される。
【0087】
次に、図9(c)のように、図9(b)の移動動作の実行中または後、図7のシリンジポンプ29を制御し、ホールディングキャピラリ25の陰圧の圧力状態を予め設定した分だけ陽圧にして陰圧を弱めて卵に対するホールド力を緩める。この操作は、卵を完全にリリースするような圧力状態ではなく、軽くホールドする程度の圧力状態にすることが望ましい。
【0088】
次に、図9(d)のように、インジェクション用マニピュレータ16を駆動してインジェクションキャピラリ35を図の上方に図の破線位置から実線位置ヘ移動させる。このとき、緩くホールドされた操作済卵D1もホールディングキャピラリ25から離れ、インジェクションキャピラリ35の移動とともに図の破線位置から実線位置へ移動する。
【0089】
そして、図9(e)のように、ホールディングキャピラリ25の圧力状態は弱い陰圧であるため、図の下方にある次に操作する未操作卵D2が自動的に図の破線位置から実線位置へと移動しホールディングキャピラリ25により保持される。このとき、インジェクションキャピラリ35が操作済卵D1と未操作卵D2との間に位置し、操作済卵D1と未操作卵D2とが混在しないように仕切り機能を発揮するため、これら卵が混在することを防ぐことができる。
【0090】
上述のようにして、インジェクションキャピラリ35によるインジェクション操作が終了した操作済卵D1をホールディングキャピラリ25から離して移動させて次の未操作卵D2をホールディングキャピラリ25に保持させてセッテイングすることができ、操作済卵と未操作卵卵との交換を自動的に実行できる。しかも、操作済卵D1はインジェクションキャピラリ35により仕切られて未操作卵D2と混在することを防止できる。
【0091】
次に、図10(a)のように、インジェクション用マニピュレータ16を駆動してインジェクションキャピラリ35を所定位置へ移動させる。この所定位置は、例えば、未操作卵D2の時計4〜5時方向の下方近傍である。この状態で、未操作卵D2の核dが所定位置に表示部45の顕微鏡画像で確認できれば、シリンジポンプ29を制御してホールディングキャピラリ25によるホールド力を強め、未操作卵D2を確実にホールドする。
【0092】
上述の未操作卵D2の確実なホールドのとき、インジェクションしたい核dは顕微鏡画像で時計3時方向に確認できることが望ましい。すなわち、核dの所定位置は時計3時方向である。この理由として、インジェクションする場所を時計3時方向にセッティングすることでホールディングとインジェクションとの軸が一致し、作業者がインジェクションし易いためである。さらに、例えば、未操作卵D2の核dが9時方向に位置した場合、インジェクションのときにインジェクションキャピラリ35がホールディングキャピラリ25に接触し折損する可能性があるため、3時方向にセッティングすることが好ましい。
【0093】
また、図10(b)のように、未操作卵D2において核dが所定位置(時計3時方向)に確認できない場合は、制御部46が自動的にインジェクションキャピラリ35を制御して未操作卵D2を図のYZ平面で第1回転パターンまたはXY平面で第2回転パターンで回転させる。このとき、ホールディングキャピラリ25による陰圧は弱いままであり、回転操作はインジェクションキャピラリ35で未操作卵D2を第1回転パターンではじくような動作や第2回転パターンで突っつく動作をすることで行い、未操作卵D2をどのような方向で回転させるかはカメラ18からの画像情報に対し制御部46が位置検出部85による核dの検出結果に基づいて判別し、所定位置に核dが確認できるまで継続して動作する。このとき、回転操作ごとに顕微鏡ユニット12の焦点合わせ機構81をジョイスティック47の所定スイッチで操作し、未操作卵D2の核dの位置を表示部45で確認しながら焦点合わせ機構81を駆動する。
【0094】
上述のようにして、図10(c)のように、未操作卵D2の核dを所定位置に位置決めた後、核dとインジェクションキャピラリ35との焦点が一致するように、インジェクションキャピラリ35が取付けられたインジェクション用マニピュレータ16のZ軸を駆動し上下動させて、画像情報を判定値とした焦点合わせをすることにより、インジェクションキャピラリ35をZ軸方向の位置にセッテイングする。また、未操作卵D2の核dの所定位置への設定後、シリンジポンプ29を制御してホールディングキャピラリ25によるホールド力を強め、未操作卵D2を確実にホールドする。
【0095】
次に、図10(d)のように、インジェクション用マニピュレータ16のXY軸を駆動し、マニピュレータ16をXY平面で図の破線位置から実線位置へ移動させることで、インジェクションキャピラリ35をXY軸方向の位置にセッティングする。
【0096】
上述のようにしてインジェクションキャピラリ35のインジェクション操作可能な位置へのセッティングが完了すると、操作者は、未操作卵D2の核dの位置を表示部45で見ながら、図8のジョイスティック47のスイッチを操作することで、図10(e)のように、インジェクション用マニピュレータ16を駆動して未操作卵D2にインジェクションキャピラリ35を挿入して注入ポンプ39を駆動することでインジェクション操作を行う。
【0097】
上述のインジェクション操作が終了すると、インジェクション用マニピュレータ16を駆動してインジェクションキャピラリ35を卵から抜くことで、上述の図9(a)の状態になる。
【0098】
以上のようにして、未操作卵D2をホールディングキャピラリ25にセッテイングした後(図9(e))、未操作卵D2の核dの位置を確認し、必要な場合は核dの位置を調整してから、インジェクションキャピラリ35をインジェクション操作可能な位置へセッティングすることを自動でシーケンス駆動で行うことができる。
【0099】
以上のように、本実施の形態によれば、図9(a)〜(e)及び図10(a)〜(d)の各操作をシーケンス駆動により自動で実行できることで、操作者は複雑な操作をすることなしに卵及びインジェクションキャピラリ35のセッティングが可能となり、操作者に対する負担が軽減され、熟練技術者以外の操作者でも巧みな操作をせずにマニピュレータシステムを使用することが可能となる。
【0100】
なお、図9(a)〜(e)及び図10(a)〜(e)での各操作は、DNAマイクロインジェクション以外に、卵へ精子を注入する作業の際にも操作者が作業し易いようにセッティングでき、この場合にも有効な操作方法である。
【0101】
従来、遺伝子組み換え操作や顕微受精操作のとき、細胞や卵等の操作対象物を操作する前後に所定の位置にセッティングする操作は、マニピュレータの基本操作に慣れた熟練技術が必要であったが、本実施の形態のマニピュレータシステムによれば、かかる操作が容易に行うことができるように電動マニピュレータをシーケンス駆動し、熟練技術がなくても操作処理が可能であるとともに、従来手動で操作した同じ動作を自動的に操作するため、操作者が違和感なく効率よく作業できる。
【0102】
〈第2の実施形態〉
図11〜図18を参照して第2の実施形態によるマニピュレータシステムについて説明する。本実施形態によるマニピュレータシステムは、図1〜図8のマニピュレータシステムと基本的に同様の構成であり、図9,図10と同様にしてジョイスティックのボタンを押すことで自動的に細胞・卵の交換作業を行うことが可能なものであるが、テンプレート画像を利用して自動化効率を向上させたものである。
【0103】
図11は第2の実施形態を説明するために図7の表示部45に表示された顕微鏡画像及び制御画面の例を示す図である。図12は図11の顕微鏡画像においてテンプレート画像の選択を行う例を示す図11と同様の図である。図13は図12で選択したテンプレート画像の記憶を行う例を示す図11と同様の図である。図14は作成されたテンプレート画像の例を示す図11と同様の図である。図15は顕微鏡画像において位置関係等の演算の例を説明するための図である。
【0104】
図16は第2の実施形態のマニピュレータシステムでテンプレート画像を作成するステップを説明するためのフローチャートである。図17は図16のテンプレート画像作成後のステップを説明するためのフローチャートである。図18は図16,図17の演算ステップの具体例を説明するためのフローチャートである。
【0105】
本実施形態のマニピュレータシステムは、図7の表示部45に図11〜図14のようなテンプレート画像作成画面45aを表示させることができるようになっている。この画面45aには、カメラ18で取得した顕微鏡画像を所定の倍率で表示する顕微鏡画面部101と、インジェクション側のテンプレート画像を表示するテンプレート画像表示部102と、ホールディング側のテンプレート画像を表示するテンプレート画像表示部103と、テンプレート画像作成要否の選択のためにテンプレート画像作成有無の入力手段として設けられたテンプレート画像作成要否ボタン104と、インジェクション側ボタン105と、ホールディング側ボタン106とが表示される。なお、テンプレート画像作成画面45aは、例えば、図7の表示部45上でのマウス49による操作で表示させることができる。
【0106】
本実施形態における卵交換動作は、図9のように、インジェクションキャピラリ35とホールディングキャピラリ25との間の位置関係の計測(a)、インジェクションキャピラリ35の移動(b)、ホールディングキャピラリ25による陰圧低下(c)、インジェクションキャピラリ35の移動(d)、及び、未操作卵D2の移動後(e)のホールディングキャピラリ25による陰圧上昇の各動作がジョイスティック47上の各ボタンを押すことで自動的に実行されるが、図9(a)においてテンプレート画像を作成するステップS01〜S10について図16を参照して説明する。
【0107】
まず、図11の画面45aを図7の表示部45に表示させてから、図11のテンプレート画像作成要否ボタン104をマウス49の操作でクリックしてON(作成要)にする(S01)。
【0108】
次に、ジョイスティック47上の割り当てられた例えばボタン47fを押すことで(S02)、顕微鏡20に取り付けているカメラ18から顕微鏡画像を取得し(S03)、その取得した顕微鏡画像が図11の顕微鏡画面部101に表示される(S04)。顕微鏡画面部101には、図11のように、卵Dを保持したホールディングキャピラリ25とインジェクションキャピラリ35とが拡大されて表示されている。
【0109】
次に、図12のようにパターンマッチングするためのインジェクション側のテンプレート画像110(図12の長方形状の破線で示す)をマウス49によるドラッグ操作で選択する(S05)。
【0110】
次に、図13のインジェクション側ボタン105をマウス49の操作でクリックして上述の選択したテンプレート画像110をハードディスク等の記憶手段に記憶させる(S06)。この記憶されたテンプレート画像110が図13のように、テンプレート画像表示部102に表示される。
【0111】
次に、ホールディング側のテンプレート画像を作成していない場合(S07)、上述と同様のステップS05,S06により、ホールディング側のテンプレート画像111(図14)を選択し、ホールディング側ボタン106をマウス49の操作でクリックして上述の選択したテンプレート画像110を記憶させる。この記憶されたテンプレート画像111が図14のように、テンプレート画像表示部103に表示される。
【0112】
上述のようにして両側のテンプレート画像110,111を作成してから、テンプレート画像作成要否ボタン104をマウス49の操作でクリックしてOFF(作成否)にすると(S08)、自動でパターンマッチングによる解析を実行し(S09)、顕微鏡画面部101に表示されている顕微鏡画像にテンプレート画像110,111と同じ部分(または近い部分)を検出した場合は、座標値算出等の演算を実行し(S10)、図9(a)のようなキャピラリ35とキャピラリ25との間の位置関係の計測を行い、上述の図9(b)からの操作が自動で開始される(S11)。
【0113】
なお、ステップS09のパターンマッチングでテンプレート画像110,111と同じ部分(または近い部分)を検出できなかったときは自動操作が開始しないようになっており、この場合は、例えば、再度テンプレート画像を取得する等の対策を実行する。
【0114】
次に、上述のようにしてテンプレート画像を作成後の2回目以降の動作について図17を参照して説明する。
【0115】
まず、テンプレート画像の作成が必要か否かを判断し(S21)、必要であれば、図16のステップS01に戻り、上記ステップを繰り返す。
【0116】
次に、テンプレート画像の作成が不要であれば、ジョイスティック47のボタン47fをマウス49でクリックすることで(S22)、自動的に、顕微鏡画像の取得(S23)、その画像表示(S24)、パターンマッチングによる解析(S25)、座標値算出等の演算(S26)、自動操作開始(S27)を順に図16と同様にして実行する。
【0117】
次の卵交換作業が残っており作業が未終了の場合(S28)、ステップS21に戻り、上述のステップを繰り返す。また、ステップS25のパターンマッチングでテンプレート画像と同じ部分(または近い部分)を検出できなかった場合もステップS21に戻り、再度テンプレート画像を作成する等の対策をとる。
【0118】
次に、図16,図17の演算ステップS10,S26について図15,図18を参照して説明する。
【0119】
まず、図16のステップS05,S06のテンプレート画像作成時にテンプレート画像に関する座標値等のデータを計測し、ハードディスク等の記憶手段に記憶させておく。そして、図15のように、座標値等のデータに基づいてテンプレート画像110の横方向長さX1,縦方向長さY1及びテンプレート画像111の横方向長さX2,縦方向長さY2を算出し、上述のステップS09,S25のパターンマッチング結果の各テンプレート画像110,111の重心位置(図15の各「x」印で示す)を算出する(S31)。
【0120】
次に、上述の2つのテンプレート画像110,111によるパターンマッチング結果からインジェクションキャピラリ35とホールディングキャピラリ25との間の位置関係m(図15)を算出する(S32)。
【0121】
次に、上記位置関係mに基づいて図9(b)の移動動作をするためのインジェクションキャピラリ35の所要ストローク量を算出する(S33)。すなわち、図15のインジェクションキャピラリ35のテンプレート画像110が破線で示すように矢印方向nに移動する場合のストローク量を算出する。
【0122】
次に、インジェクションキャピラリ35を上記ストローク量だけ移動させるためにインジェクション用マニュピレータ16に対する指令値に変換する(S34)。このように変換された指令値によりインジェクションキャピラリ35が図9(b)のように移動することができる。
【0123】
以上のように、本実施形態による動作(図16〜図18)によれば、図9と同様の卵交換作業を繰り返して行う場合、ジョイスティック47上のボタンを1回押すのみで自動的にマニピュレータ14,16、シリンジポンプ29や注入ポンプ39等を駆動することができるから、従来のように巧みにマニピュレータの操作及びインジェクタの操作を行う必要がない。
【0124】
すなわち、非特許文献1に示された従来のマイクロインジェクション法によれば、インジェクション作業をする培地中で操作済卵と未操作卵をドロップ中で混在しないようにし、操作済卵はドロップ上方へ移動させ、続いて下方から未操作卵を持ってくるが、この方法では、マニピュレータ自体の基本操作に慣れておく必要性があり、不慣れな作業者が操作する際、作業効率の低下が生じるという問題があったのに対し、本実施形態によれば、容易にかつ正確に卵交換作業を自動的に行うことができ、不慣れな作業者が操作しても作業効率の低下が生じることがない。
【0125】
また、本実施形態のマニュピレータシステムにより卵交換作業を自動で行う際に、操作者が必要に応じ、テンプレート画像を作成しパターンマッチングによりパーソナルコンピュータ(コントローラ)43上で解析し、その結果に基づいてマニピュレータ14,16等を駆動することで自動化効率を向上させることができる。すなわち、先に作成したテンプレート画像を用いて次のパターンマッチングによる解析・演算を行うことができ、テンプレート画像を利用することで本実施形態のマニュピレータシステムによる自動化効率を向上させることができる。
【0126】
さらに、卵交換作業を繰返していくうちにキャピラリ25,35の見え方が変わってきた場合、図17のステップS21で判断し、図16のステップS01に戻り、テンプレート画像作成要否ボタン104をONにしてテンプレート画像を再作成することができ、その都度テンプレート画像をアップデートすることができる。このように、テンプレート画像作成は操作者が必要と判断した場合に限り行うことができる。その結果、パターンマッチング時の誤認識やパターマッチングによる不検出を防ぐことができる。
【0127】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、上述のシーケンス駆動は、図9(a)のような状態から開始したが、本発明はこれに限定されず、他の状態から開始するようにしてもよく、例えば、図10(e)のインジェクション操作の後から開始し、インジェクションキャピラリ35を卵から抜く動作からシーケンス駆動するようにしてもよい。また、例えば、図9(a)〜(e)の操作をシーケンス駆動し、図10(a)〜(e)の操作を手動としてもよい。
【0128】
また、図7の焦点合わせ機構81は、自動で合焦動作を行うように構成してもよい。また、本実施形態の操作方法は、細胞操作、遺伝子組み換え操作、顕微受精等の微細操作に好適であり、このマニピュレータシステムは、細胞や卵等の電子機器検査・分析装置等に適用して好ましいものである。
【0129】
また、例えば、図16〜図18の動作は、本実施形態のマニピュレータシステムに限定されず、XYZ方向に駆動可能な電動マニピュレータに顕微鏡画像を取り込むためのカメラが装着されているシステムであれば適用可能であるので、マニピュレータは他の形式によるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施形態によるマニピュレータシステムの構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のマニピュレータシステムに使用可能な圧電アクチュエータの正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2の圧電アクチュエータの斜視図である。
【図5】図1のマニピュレータを顕微鏡作業箇所へ導入する前の状態を示す斜視図である。
【図6】図1のマニピュレータを顕微鏡作業箇所へ配置したときの状態を示す斜視図である。
【図7】図1のパーソナルコンピュータ(コントローラ)43による制御系要部を示すブロック図である。
【図8】図1,図7のジョイスティックの具体例を示す斜視図である。
【図9】図1の顕微鏡ユニット12による顕微鏡視野を模式的に示す図であり、キャピラリ25,35の各先端位置及び操作対象物の卵を示し、操作対象物の卵に対する交換等の各操作ステップ(a)乃至(e)を説明するための図である。
【図10】図1の顕微鏡ユニット12による顕微鏡視野を模式的に示す図であり、キャピラリ25,35の各先端位置及び操作対象物の卵を示し、操作対象物の卵に対する位置決め等の各操作ステップ(a)乃至(e)を説明するための図である。
【図11】第2の実施形態を説明するために図7の表示部45に表示された顕微鏡画像及び制御画面の例を示す図である。
【図12】図11の顕微鏡画像においてテンプレート画像の選択を行う例を示す図11と同様の図である。
【図13】図12で選択したテンプレート画像の記憶を行う例を示す図11と同様の図である。
【図14】作成されたテンプレート画像の例を示す図11と同様の図である。
【図15】顕微鏡画像において位置関係等の演算の例を説明するための図である。
【図16】第2の実施形態のマニピュレータシステムでテンプレート画像を作成するステップを説明するためのフローチャートである。
【図17】図16のテンプレート画像作成後のステップを説明するためのフローチャートである。
【図18】図16,図17の演算ステップの具体例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
10 マニピュレータシステム、12 顕微鏡ユニット、14 ホールディング用マニピュレータ、マニピュレータ、16 インジェクション用マニピュレータ、マニピュレータ、18 カメラ、20 顕微鏡、25 ホールディングキャピラリ、キャピラリ、29 シリンジポンプ、30,32 駆動装置、35 インジェクションキャピラリ、キャピラリ、39 注入ポンプ、40,42 駆動装置、43 パーソナルコンピュータ、コントローラ、45 表示部、46 制御部、47 ジョイステック、70 モータ、92 圧電素子、104 テンプレート画像作成要否ボタン、110,111 テンプレート画像、D 卵、細胞、D1 操作済卵、D2 未操作卵、d 核

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリを駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸と、回転軸をその軸方向への移動を自在に支持するとともに前記回転軸を回転駆動するモータと、前記回転軸に固定されて前記ねじ軸にねじ結合され、前記ねじ軸をその軸方向への移動を自在に支持するねじ要素と、圧電素子への印加電圧に応じて前記回転軸をその軸方向に沿って微動駆動させる微動機構と、前記微動機構を伴って三次元空間を移動して前記キャピラリの位置を制御する三次元軸移動テーブルと、を有する一対のマニピュレータと、
前記マニピュレータに操作される微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段と、
前記マニピュレータの駆動を制御する制御手段と、
前記制御手段を介して前記マニュピレータを駆動する操作手段と、を備え、
前記操作対象物を操作する際に、前記マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化したことを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項2】
前記マニピュレータは、前記ねじ軸のうち前記ねじ要素よりも前記キャピラリ側の部位をスライド自在に支持するリニアガイドを備える請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記圧電素子に対する印加電圧を制御する制御回路を備え、前記制御回路は、前記圧電素子に対して、前記キャピラリがインジェクション動作可能な電圧を印加する請求項1または2に記載のマニピュレータシステム。
【請求項4】
前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段を備え、
前記シーケンス駆動の際に、前記撮像手段により撮影された前記キャピラリ及び前記操作対象物の顕微鏡画像を画像処理し、その画像処理された画像に基づいて前記マニピュレータを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマニピュレータシステム。
【請求項5】
前記マニピュレータの一方に取り付けられたホールディングキャピラリに保持された操作対象物の特定部分を前記画像処理された画像に基づいて検出し、前記特定部分が所定位置にないとき、前記マニピュレータの他方に取り付けられたインジェクションキャピラリが自動的に前記操作対象物を操作することで前記所定位置に位置決めする請求項4に記載のマニピュレータシステム。
【請求項6】
前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段を備え、
前記顕微鏡画像から作成したテンプレート画像に基づいてパターンマッチングによる解析を行い、前記解析結果に基づいて前記マニピュレータを駆動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマニピュレータシステム。
【請求項7】
前記テンプレート画像の作成の有無を入力する入力手段を備える請求項6に記載のマニピュレータシステム。
【請求項8】
前記マニピュレータに取り付けられたインジェクションキャピラリが前記操作後の操作対象物と前記操作前の操作対象物とを仕切るように前記マニピュレータを駆動する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のマニピュレータシステム。
【請求項9】
前記マニピュレータに取り付けられたホールディングキャピラリは、吸引手段により陰圧状態で前記操作対象物を保持するとともにその陰圧が制御可能である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のマニピュレータシステム。
【請求項10】
前記操作後の操作対象物を保持するホールディングキャピラリの陰圧を弱めてから、前記マニピュレータに取り付けられたインジェクションキャピラリを移動させることで、前記操作後の操作対象物を前記ホールディングキャピラリから離して移動させる請求項9に記載のマニピュレータシステム。
【請求項11】
微小な操作対象物を観察する顕微鏡手段と、前記操作対象物を操作するためにXYZ軸の三方向に電動で駆動可能な一対のマニピュレータと、前記マニピュレータの駆動を制御する制御手段と、前記制御手段を介して前記マニュピレータを駆動する操作手段と、前記操作対象物の前記顕微鏡手段による顕微鏡画像を撮影する撮像手段と、を備え、
前記顕微鏡画像から作成したテンプレート画像に基づいてパターンマッチングによる解析を行い、前記解析結果に基づいて前記マニピュレータをシーケンス駆動することで、操作後の操作対象物と操作前の操作対象物との交換を自動化したことを特徴とするマニピュレータシステム。
【請求項12】
前記テンプレート画像の作成の有無を入力する入力手段を備える請求項11に記載のマニピュレータシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムを用いて、前記微小な操作対象物である卵に対してインジェクション操作を行うことを特徴とする微小操作対象物の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−211027(P2009−211027A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153024(P2008−153024)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】