説明

マルチコアファイバ及びそれを含む光コネクタ

【課題】光通信システムにおける光導波路の一部への適用に際し、接続対象間の良好な光学的結合を容易に実現するための構造を備えたマルチコアファイバ等を提供する。
【解決手段】マルチコアファイバ500は、複数のコアと、これら複数のコア110を、所定の配列状態を保持したまま一体的に被覆するクラッド120と、位置決め構造150を備える。具体的に、複数のコア110それぞれは、所定軸AXに沿って伸び、かつ、光学的に互いに独立した光導波路として機能する。クラッド120は、複数のコア110を一体的に被覆するとともに、所定軸AXに直交する断面において、複数のコア110の配列状態を保持する。位置決め構造150は、断面上で規定されるコア配列の接続対象に対する回転であって所定軸AXを中心とした回転を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ網の一部として、それぞれが個別に光導波路として機能する複数のコアを有するマルチコアファイバに関し、特に、当該マルチコアファイバと種々の光ネットワーク資源との接続精度の向上を容易に実現可能にする構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの送信局と複数の加入者との間の光通信を可能にするFTTH(Fiber To The Home)サービスを提供するため、例えば図9に示されたように、多段の光スプリッタを介在させることで1本の光ファイバを各加入者が共有する、いわゆるPON(Passive Optical Network)システムが実現されている。
【0003】
すなわち、図9に示されたPONシステムは、インターネットなどの既存の通信システムの最終中継局である端局1(送信局)と、端局1と加入者宅2(加入者)との間に敷設された光ファイバ網とを備える。この光ファイバ網は、分岐点として設けられたクロージャー(光スプリッタ30を含む)と、端局1からクロージャーまでの光通信回線12と、クロージャーから各加入者宅2までの光通信回線31から構成されている。
【0004】
上記端局1は、局側終端装置10(OLT:Optical Line Terminal)と、OLT10からの多重化信号を分岐する光スプリッタ11を備える。一方、上記加入者宅2には、加入者側終端装置20(ONU:Optical Network Unit)が設けられている。また、端局1と加入者宅2との間に敷設されている光ファイバ網の分岐点としてのクロージャーには、少なくとも、到達した多重化信号をさらに分岐するための光スプリッタ30や、サービス内容を制限するための波長選択フィルタなどが配置されている。
【0005】
以上のように、図9に示されたPONシステムでは、端局1内に光スプリッタ11が設けられるとともに、光ファイバ網上に配置されたクロージャー内にも光スプリッタ30が設けられているので、1つの局側終端装置10からは複数の加入者に対してFTTHサービスの提供が可能になっている。
【0006】
しかしながら、上述のように多段の光スプリッタを介することで複数の加入者が一本の光ファイバを共有するPONシステムでは、輻輳制御(Congestion Control)や受信ダイナミックレンジの確保など、将来的な伝送容量の増加に対して技術的課題を抱えているのは事実である。本技術的課題(輻輳制御・ダイナミックレンジの確保など)を解決する手段の一つとして、SS(Single Star)システムへの移行が考えられる。SSシステムへ移行する場合は、局内側においてファイバ心数がPONシステムに対して増大するため、局内側光ケーブルにおいて極細径化・超高密度化が必須となる。極細径・超高密度化用の光ファイバとしては、マルチコアファイバが好適である。
【0007】
例えば、マルチコアファイバとして、特許文献1に開示された光ファイバは、その断面において二次元に配置された7個以上のコアを有する。また、特許文献2には、複数のコアが一直線上に並列された光ファイバが開示されており、光導波路・半導体光集積素子との接続が容易になる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−341147号公報
【特許文献2】特開平10−104443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載されたマルチコアファイバは、送信端や受信端において、光デバイス等との接続が困難になる。これは、特許文献2にも記載されている通り、通常製造される光導波路、半導体光集積素子等の光学デバイスは、一次元に複数の光送受信要素(発光エリア又は受光エリア)が配列されているのが一般的であり、このような光デバイスを、その断面において複数のコアが二次元に配置されているマルチコアファイバ(以下、この配置状態を二次元コア配列という)に光学的に結合させることは困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載されたマルチコアファイバは、一次元配列された光送受信要素との光学的な接続を目的としているため、コアは一次元に配列されている。この場合、当該マルチコアファイバ一本当りのコア数を大幅に増加させることが困難であるため、光伝送路としての利用はできない。
【0012】
一方で、FTTHにおいて加入者の増加に伴いファイバ芯数も増加するため局内のファイバ収納スペースを圧迫しているのも事実であり、一次元コア配列を有するマルチコアファイバ、二次元コア配列を有するマルチコアファイバの何れに関しても、その利用要求が高まってくることは容易に想像できる。しかしながら、マルチコアファイバと他のネットワーク資源との接続を考えると、単一コアファイバの接続とは異なり、当該マルチコアファイバの長手方向を中心としたコア配列の回転も修正する必要があり、その接続作業は著しく煩雑になることが容易に予想される。すなわち、このような接続作業では、通常、個別の光導波路として機能するコアごとに接続点を通過するモニタ光のパワーを測定しながら当該マルチコアファイバ側のコア配列の微調整が行われる。コア配列の微調整自体は、当該マルチコアファイバをその長手方向を中心に回転させることにより行われるが、コア配列を視覚的に確認することは困難である。そのため、複数のコアを有するマルチコアファイバと他のネットワーク資源に接続する場合における接続作業の煩雑さ増大は容易に予想される。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、光通信システムにおける光導波路の一部として適用可能なマルチコアファイバであって、光導波路の一部への適用に際し、同一コア配列を有する別のマルチコアファイバ等、種々のネットワーク資源(接続対象)間の良好な光学的結合を容易に実現するための構造を備えたマルチコアファイバ、及び、それを含む光コネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明に係るマルチコアファイバは、複数のコアと、これら複数のコアを一体的に被覆するクラッドと、当該マルチコアファイバの長手方向を中心とした自身のコア配列の回転を制限するための位置決め構造を備える。具体的に、複数のコアそれぞれは、所定軸(当該マルチコアファイバの長手方向に一致)に沿って伸び、かつ、光学的に互いに独立した光導波路として機能する。クラッドは、複数のコアを一体的に被覆するとともに、所定軸に直交する当該マルチコアファイバの断面において、複数のコアを一次元あるいは二次元に配列した状態で保持する。位置決め構造は、断面上で規定されるコア配列の接続対象に対する回転であって所定軸を中心とした回転を制限する。
【0015】
上述のように、マルチコアファイバ自体に位置決め構造を設けることにより、接続対象に対するコア配列の回転状態を視覚的に確認でき、接続作業の効率を大幅に改善することが可能になる。
【0016】
本発明に係るマルチコアファイバにおいて、位置決め構造は、マルチコアファイバ同士の接続作業を容易にするため、その断面において、非点対称に整形された当該マルチコアファイバの外周形状を含むのが好ましい。このように外周形状を基準にしてコア位置決めを行う場合、高精度のコア位置決めを容易に実現できる。なお、より具体的に、位置決め構造は、当該マルチコアファイバの断面において、少なくとも一部が直線によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含んでもよい。また、位置決め構造は、当該マルチコアファイバの断面において、少なくとも一部が断面中心に向かって突出した凹形状によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含んでもよい。さらに、位置決め構造は、当該マルチコアファイバの断面において、少なくとも一部が断面中心から断面外周へ向かう方向に突出した凸形状によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含んでもよい。いずれの位置決め構造においても、マルチコアファイバ間での接続を実施する場合、当該マルチコアファイバの位置決め構造に係合する形状の補助構造を治具などに予め形成することにより、当該マルチコアファイバの円周方向の位置決めが容易に実現できる。
【0017】
本発明に係るマルチコアファイバにおいて、位置決め構造は、当該マルチコアファイバの端面から所定軸に沿って伸びたガイド孔であってもよい。特に、このガイド孔は、端面上における断面形状が非点対称に整形されるのが好ましい。マルチコアファイバ同士の接続作業では、このガイド孔と一致する断面形状を有するガイドピンを用意し、このガイドピンの両端を、接続すべきマルチコアファイバそれぞれのガイド孔に挿入することで、上述のような治具を用意することなく、高精度にコア位置決めされたマルチコアファイバ同士の接続作業が実現できる。
【0018】
本発明に係る光コネクタは、上述のような構造を備えたマルチコアファイバ(本発明に係るマルチコアファイバ)と、このマルチコアファイバの端面を含む先端部分に取り付けられるフェルールを備える。特に、このフェルールは、マルチコアファイバの先端部分を収納する貫通孔を有するとともに、当該フェルールに対する所定軸を中心としたマルチコアファイバの回転を、上述の位置決め構造と協働して制限するための補助構造が貫通孔内に設けられている。マルチコアファイバをコネクタ形状の状態で正確に位置決めするためである。
【0019】
なお、本発明に係るフェルールは、当該フェルールが取り付けられたマルチコアファイバを別のネットワーク資源へ接続するため、アライメントスリーブをなどに挿入されることになる。そのため、当該フェルールの外周面上には、所定軸を中心とした当該フェルールの回転を制限するための位置決め構造(マルチコアファイバに設けられた位置決め構造を同じ)が形成されている。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、複数のコアを有するマルチコアファイバにおける外周方向の回転を制限する位置決め構造を設けたことにより、当該マルチコアファイバと他のネットワーク資源との接続、例えば、同一コア配列を有するマルチコアファイバ同士の接続作業において、容易にコア位置決めの精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るマルチコアファイバの一実施形態の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るマルチコアファイバ及び光コネクタの接続作業を説明するための図である。
【図3】本発明に係るマルチコアファイバの治具(ガイド部材)固定作業及び光コネクタの製造工程を説明するための図である。
【図4】本発明に係るマルチコアファイバ同士の接続作業を説明するための図である。
【図5】本発明に係るマルチコアファイバに適用される種々の位置決め構造を説明するための図である。
【図6】本発明に係るマルチコアファイバが固定される治具(ガイド部材)の断面構造を説明するための図である。
【図7】本発明に係るマルチコアファイバの先端部分に取り付けられるフェルールの構造を説明するための斜視図である。
【図8】本発明に係るマルチコアファイバ同士の接続作業を説明するための図である。
【図9】従来の光通信システム(PONシステム)の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明に係るマルチコアファイバ及び光コネクタの各実施形態を、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。また、本願発明に適用可能なマルチコアファイバは、一次元コア配列、二次元コア配列の何れを有するマルチコアファイバも適用可能であるが、以下の説明では、接続作業がより複雑な二次元コア配列を有するマルチコアファイバについてのみについて言及することとする。ただし、一次元コア配列を有するマルチコアファイバにおいても、二次元コア配列を有するマルチコアファイバと同様の効果を奏する。
【0023】
図1は、本発明に係るマルチコアファイバの一実施形態の構造を示す斜視図である。この図1において、当該マルチコアファイバ500は、複数のコア110と、二次元配列状態(一次元コア配列でもよい)を保持した状態でこれら複数のコア110を一体的に被覆するクラッド120と、クラッド120の外周に設けられた樹脂被覆130と、位置決め構造150を備える。複数のコア110それぞれは、当該マルチコアファイバ500の長手方向に一致する所定軸AXに沿ってそれぞれ伸び、かつ、光学的に互いに独立した光導波路として機能する。クラッド120は、複数のコア110を一体的に被覆するとともに、所定軸AXに直交する当該マルチコアファイバ500の断面において、複数のコア110により構成される当該マルチコアファイバ500の二次元コア配列を保持する。位置決め構造150は、断面上で規定される二次元コア配列の接続対象に対する回転であって所定軸AXを中心とした回転を制限する。なお、接続作業の際には、当該マルチコアファイバ500の端面を含む先端部分の樹脂被覆130は除去される。
【0024】
続いて、図2に、一般的な構造(一次元コア配列、二次元コア配列の何れを有していてもよい)を備えたマルチコアファイバ100と他のネットワーク資源との、種々の接続形態を示す。当然のことながら、本実施形態に係るマルチコアファイバ500も、図2に示されたような種々の接続形態を想定している。
【0025】
例えば、図2(a)には、マルチコアファイバ同士の接続形態として、マルチコアファイバ同士を直接接続する例が示されている。すなわち、一方のマルチコアファイバ100aの端面と他方のマルチコアファイバ100bの端面を接続点Aにおいて突合せた状態で、各マルチコアファイバ100a、100bにおけるコア同士の位置決め作業(調芯作業)が行われる。この調芯作業の後、これらマルチコアファイバ100a、100bが接続点Aにおいて融着接続される。
【0026】
図2(b)には、マルチコアファイバ同士の接続形態として、マルチコアファイバ同士の非接触接続の例が示されている。すなわち、一方のマルチコアファイバ100aには、光コネクタを構成するため、その端面を含む先端部分にフェルール300aが取り付けられている(接着剤により固定、以下、接着固定という)。また、他方のマルチコアファイバ100bにも、光コネクタを構成するため、その端面を含む先端部分にフェルール300bが接着固定される。以上のように構成された光コネクタの各フェルール300a、300bがそれぞれアライメントスリーブ200に挿入される。なお、各マルチコアファイバ100a、100bにおけるコア同士の位置決め作業は、例えば、各フェルール300a、300bをアライメントスリーブ200内に挿入した状態で行われ、位置決め完了後に各フェルール300a、300bがアライメントスリーブ200に固定される。
【0027】
また、図2(c)には、マルチコアファイバと光分岐デバイスとの接続形態として、マルチコアファイバと分岐デバイスの非接触接続の例が示されている。すなわち、マルチコアファイバ100には、光コネクタを構成するため、その端面を含む先端部分にフェルール300が接着固定される。一方、光分岐デバイス220は、二次元配列されたコアそれぞれからの光束を個別に取り込むための入射端面が受光面上に形成されており、各入射端から取り込まれた光束は対応する分岐路230に出力される。また、この光分岐デバイス220は、マルチコアファイバ100の先端部分に取り付けられたフェルール300の保持するスリーブ210内に収納されている。以上のように構成された光コネクタのフェルール300がそれぞれスリーブ210に挿入された後、マルチコアファイバ100において二次元配列された複数のコアと、光分岐デバイス210の受光面上に形成された複数の入射端面との位置決めが行われる。
【0028】
なお、上述の各接続形態(図2(a)〜2(c))の何れにおいても、接続対象に対してマルチコアファイバの位置決め作業は必要であり、接続部位を通過するモニタ光の光パワーを測定しながら、マルチコアファイバ100又はその先端部分に接着固定されたフェルール300の位置調節が行われる。
【0029】
上述のような接続形態の何れにおいても、本発明に係るマルチコアファイバ500は、他のネットワーク資源に接続する際の接続作業を大幅に簡略化することを可能にする。
【0030】
すなわち、マルチコアファイバ同士の接続において、当該マルチコアファイバ500は、図3(a)に示されたように、予めガイド部材400に設置されることなる。このとき、用意されるガイド部材400には、マルチコアファイバ500が設置されるガイド溝510が設けられている。通常、ガイド溝510に設置された一般的な光ファイバ(マルチコアファイバを含む)は、所定軸AXを中心とした外周方向の回転を制限することができない。そのため、二次元コア配列を有するマルチコアファイバが設置されても、二次元コア配列の回転を制限することはできない。また、接続対象に対する二次元コア配列の位置関係も確認できない。
【0031】
これに対し、本実施形態に係るマルチコアファイバ500は、図1に示されたように、クラッド120の表面に位置決め構造150が設けられている。したがって、当該マルチコアファイバ500が設置されるガイド溝510内に、位置決め構造150と係合可能な断面形状を有するガイド520を設けておくことにより、所定軸AXを中心とした当該マルチコアファイバ500の外周方向の回転(図3(a)中の矢印Sで示された方向)を制限することが可能になる。
【0032】
具体的にマルチコアファイバ同士を接続する場合には、図4に示されたように、接続されるべきマルチコアファイバそれぞれを保持するガイド部材を用意する。例えば、図4(a)の例では、図3(a)に示された1つのガイド部材400のガイド溝510に、マルチコアファイバ500a、500bそれぞれの先端部分を、各位置決め構造150とガイド520を係合させるように設置する。このようにマルチコアファイバ500a、500bは、ガイド部材400のガイド溝510に設置されると同時に外周方向の位置決めが完了するため、接続点Aにおけるコア位置決めを高精度に実現することができる。また、図4(b)に示されたように、マルチコアファイバ500a、500bは、別個にガイド部材400a、400bにより保持されてもよい。この場合、ガイド部材400aとガイド部材400bを接近させることにより、マルチコアファイバ500aの端面とマルチコアファイバ500bの端面を付き合わせることが可能になる。このとき、端面同士が突き合わされた状態で、マルチコアファイバ500a、500b間での高精度のコア位置決めが達成される。すなわち、二次元配列されたコア同士の調芯作業を行うことなく、マルチコアファイバ500a、500bの突合せのみで、接続点Aにおいて融着接続することが可能になる。
【0033】
一方、光コネクタを構成する場合は、図3(b)に示されたように、マルチコアファイバ500の先端部分をフェルール300の貫通孔内へ挿入した状態で、フェルール300がマルチコアファイバ500に接着固定される。このとき、フェルール300の貫通孔内壁には、本実施形態に係るマルチコアファイバ500に設けられた位置決め構造150に一致した断面形状を有するガイド530が設けられており、位置決め構造150とガイド530を係合させた状態で、マルチコアファイバ500の先端部分をフェルール300の貫通孔内に挿入することにより、このフェルール300に対してマルチコアファイバ500の外周方向の回転は制限される。このフェルール300自体は、さらに図2(b)や2(c)に示されたように、スリーブに固定されるため、図3(b)に示された用に、フェルール300の外周面に位置決め構造540を備えてもよい。この場合、フェルール300が挿入されるスリーブ内壁には、当該フェルール300の位置決め構造540と一致した断面形状を有するガイドが設けられている必要がある。なお、フェルール挿入と同時に位置固定してしまう構造のスリーブの場合、フェルール300側の位置決め構造540は不要である。
【0034】
次に、本発明に係るマルチコアファイバに適用可能な種々の位置決め構造について、図5〜図8を用いて説明する。なお、図5は、本発明に係るマルチコアファイバに適用される種々の位置決め構造を説明するための図である。図6は、図3(a)に示されたように、本発明に係るマルチコアファイバ500が固定されるガイド部材400の断面構造を説明するための図である。図7は、本発明に係るマルチコアファイバ500の先端部分に取り付けられるフェルール300の構造を説明するための斜視図である。図8は、図5(f)に示されたような位置決め構造を有するマルチコアファイバ500同士の接続作業を説明するための図である。
【0035】
まず、本実施形態に係るマルチコアファイバに適用可能な位置決め構造は、当該マルチコアファイバの断面において、非点対称に整形された当該マルチコアファイバの外周形状を含むのが好ましい。
【0036】
具体的に、図5(a)には、第1変形例に係る位置決め構造151が適用されたマルチコアファイバ510の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ510の位置決め構造151は、断面において、少なくとも一部が直線によって構成された当該マルチコアファイバ510の外周形状で規定される。このような位置決め構造151を備えたマルチコアファイバ510が設置されるガイド部材410は、図6(a)に示されたような断面構造を有する。すなわち、マルチコアファイバ510が設置されるガイド溝511には、当該マルチコアファイバ510の位置決め構造151に一致した平坦部(ガイド)521が形成されている。このような断面構造を有するガイド部材410のガイド溝511にマルチコアファイバ510が設置されると、同時に当該マルチコアファイバ510の外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。さらに、当該マルチコアファイバ510を利用して光コネクタを構成する場合には、図7(a)に示されたようなフェルール310が適用される。このフェルール310の貫通孔(マルチコアファイバ510の端面を含む先端部分が挿入される)の内壁には、位置決め構造151に一致する平坦部(ガイド)531が設けられており、マルチコアファイバ510の先端部分がフェルール310に挿入されると同時に、フェルール310に対して当該マルチコアファイバ510の位置決めが完了する。なお、フェルール310の外周面には、スリーブとの位置決めに寄与するための位置決め構造541が設けられてもよい。
【0037】
図5(b)には、第2変形例に係る位置決め構造152が適用されたマルチコアファイバ520の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ520の位置決め構造152は、断面において、少なくとも一部が断面の中心に向かって突出した凹形状(三角形の断面形状)によって構成された当該マルチコアファイバ520の外周形状で規定される。このような位置決め構造152を備えたマルチコアファイバ520が設置されるガイド部材420は、図6(b)に示されたような断面構造を有する。すなわち、マルチコアファイバ520が設置されるガイド溝512には、当該マルチコアファイバ520の位置決め構造152に一致した三角形の断面形状を有するガイド522が形成されている。このような断面構造を有するガイド部材420のガイド溝512にマルチコアファイバ520が設置されると、同時に当該マルチコアファイバ520の外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。さらに、当該マルチコアファイバ520を利用して光コネクタを構成する場合には、図7(b)に示されたようなフェルール320が適用される。このフェルール320の貫通孔(マルチコアファイバ520の端面を含む先端部分が挿入される)の内壁には、位置決め構造152に一致する三角形の断面形状のガイド532が設けられており、マルチコアファイバ520の先端部分がフェルール320に挿入されると同時に、フェルール320に対して当該マルチコアファイバ520の位置決めが完了する。なお、フェルール320の外周面には、スリーブとの位置決めに寄与するための位置決め構造542が設けられてもよい。
【0038】
図5(c)には、第3変形例に係る位置決め構造153が適用されたマルチコアファイバ530の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ530の位置決め構造153は、断面において、少なくとも一部が断面の中心に向かって突出した凹形状(四角形の断面形状)によって構成された当該マルチコアファイバ530の外周形状で規定される。このような位置決め構造153を備えたマルチコアファイバ530が設置されるガイド部材430は、図6(c)に示されたような断面構造を有する。すなわち、マルチコアファイバ530が設置されるガイド溝513には、当該マルチコアファイバ530の位置決め構造153に一致した四角形の断面形状を有するガイド523が形成されている。このような断面構造を有するガイド部材430のガイド溝513にマルチコアファイバ530が設置されると、同時に当該マルチコアファイバ530の外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。さらに、当該マルチコアファイバ530を利用して光コネクタを構成する場合には、図7(c)に示されたようなフェルール330が適用される。このフェルール330の貫通孔(マルチコアファイバ530の端面を含む先端部分が挿入される)の内壁には、位置決め構造153に一致する四角形の断面形状のガイド533が設けられており、マルチコアファイバ530の先端部分がフェルール330に挿入されると同時に、フェルール330に対して当該マルチコアファイバ530の位置決めが完了する。なお、フェルール330の外周面には、スリーブとの位置決めに寄与するための位置決め構造543が設けられてもよい。
【0039】
図5(d)には、第4変形例に係る位置決め構造154が適用されたマルチコアファイバ540の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ540の位置決め構造154は、断面において、少なくとも一部が断面の中心から外周方向に向かって突出した凸形状(三角形の断面形状)によって構成された当該マルチコアファイバ540の外周形状で規定される。このような位置決め構造154を備えたマルチコアファイバ540が設置されるガイド部材440は、図6(d)に示されたような断面構造を有する。すなわち、マルチコアファイバ540が設置されるガイド溝514には、当該マルチコアファイバ540の位置決め構造154に一致した三角形の断面形状を有するガイド524が形成されている。このような断面構造を有するガイド部材440のガイド溝514にマルチコアファイバ540が設置されると、同時に当該マルチコアファイバ540の外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。さらに、当該マルチコアファイバ540を利用して光コネクタを構成する場合には、図7(d)に示されたようなフェルール340が適用される。このフェルール340の貫通孔(マルチコアファイバ540の端面を含む先端部分が挿入される)の内壁には、位置決め構造154に一致する三角形の断面形状のガイド534が設けられており、マルチコアファイバ540の先端部分がフェルール340に挿入されると同時に、フェルール340に対して当該マルチコアファイバ540の位置決めが完了する。なお、フェルール340の外周面には、スリーブとの位置決めに寄与するための位置決め構造544が設けられてもよい。
【0040】
図5(e)には、第5変形例に係る位置決め構造155が適用されたマルチコアファイバ550の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ550の位置決め構造155は、断面において、少なくとも一部が断面の中心から外周方向に向かって突出した凸(四角形の断面形状)形状によって構成された当該マルチコアファイバ550の外周形状で規定される。このような位置決め構造155を備えたマルチコアファイバ550が設置されるガイド部材450は、図6(e)に示されたような断面構造を有する。すなわち、マルチコアファイバ550が設置されるガイド溝515には、当該マルチコアファイバ550の位置決め構造155に一致した四角形の断面形状を有するガイド525が形成されている。このような断面構造を有するガイド部材450のガイド溝515にマルチコアファイバ550が設置されると、同時に当該マルチコアファイバ550の外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。さらに、当該マルチコアファイバ550を利用して光コネクタを構成する場合には、図7(e)に示されたようなフェルール350が適用される。このフェルール350の貫通孔(マルチコアファイバ550の端面を含む先端部分が挿入される)の内壁には、位置決め構造155に一致する四角形の断面形状のガイド535が設けられており、マルチコアファイバ550の先端部分がフェルール350に挿入されると同時に、フェルール350に対して当該マルチコアファイバ550の位置決めが完了する。なお、フェルール350の外周面には、スリーブとの位置決めに寄与するための位置決め構造545が設けられてもよい。
【0041】
さらに、図5(f)には、第6変形例に係る位置決め構造156が適用されたマルチコアファイバ560の断面構造が示されている。すなわち、当該マルチコアファイバ560の位置決め構造156は、当該マルチコアファイバ560の端面から所定軸AXに沿って伸びたガイド孔であり、端面上における断面形状は非点対称に整形されている。このような位置決め構造156を備えたマルチコアファイバ560同士の接続は、図8に示されたように、ガイドピン600を介して行われる。すなわち、ガイドピン600は、位置決め構造156に一致した断面形状を有しており、このガイドピン600の一端が一方のマルチコアファイバ560aの端面に形成された位置決め構造156a内に挿入される。また、ガイドピン600の他端は、他方のマルチコアファイバ560bの端面に形成された位置決め構造156bに挿入される。このように、ガイドピン600を介して、マルチコアファイバ560a、560bが互いに端面を突き合わせることにより、マルチコアファイバ560a、560b同士は、互いに外周方向の回転も制限され、結果的に、互いに二次元配列された複数コア同士の調芯作業が省略可能になる。
【0042】
なお、本発明に係るマルチコアファイバに適用される位置決め構造は、上述のような形状には限定されず、機械的に当該マルチコアファイバの外周方向の回転を制限可能な形状であれば特に制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るマルチコアファイバは、種々のネットワーク資源により構成される光通信システムの光伝送路への適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
110…コア、120…クラッド、150〜156…位置決め構造、300、300a、300b、310〜350…フェルール、400、400a、400b、410〜450…ガイド部材、500、500a、500b、510〜560、560a、560b…マルチコアファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが所定軸に沿って伸び、かつ、光学的に互いに独立した光導波路として機能する複数のコアと、
前記複数のコアを一体的に被覆するとともに、前記所定軸に直交する断面において、前記複数のコアの配列状態を保持するクラッドと、
接続対象に対する前記所定軸を中心とした回転であって前記断面上で規定されるコア配列の回転を制限するための位置決め構造と、を備えたマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記位置決め構造は、前記断面において、非点対称に整形された当該マルチコアファイバの外周形状を含むことを特徴とする請求項1記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記位置決め構造は、前記断面において、少なくとも一部が直線によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含むことを特徴とする請求項2記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記位置決め構造は、前記断面において、少なくとも一部が前記断面の中心に向かって突出した凹形状によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含むことを特徴とする請求項2記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記位置決め構造は、前記断面において、少なくとも一部が前記断面の中心から外周方向に向かって突出した凸形状によって構成された当該マルチコアファイバの外周形状を含むことを特徴とする請求項2記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記位置決め構造は、当該マルチコアファイバの端面から前記所定軸に沿って伸びた穴部であって、前記端面上における断面形状が非点対称に整形された穴部を含むことを特徴とする請求項1記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項記載のマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバの端面を含む先端部分に取り付けられるフェルールであって、前記先端部分を収納する貫通孔を有するとともに、当該フェルールに対する前記所定軸を中心とした前記マルチコアファイバの回転を、前記位置決め構造と協働して制限するための補助構造が前記貫通孔内に設けられたフェルールと、を備えた光コネクタ。
【請求項8】
接続対象に対して前記所定軸を中心とした当該フェルールの回転を制限するための位置決め構造が、外周面上に形成されたことを特徴とする請求項7記載の光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−286548(P2010−286548A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138360(P2009−138360)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】