説明

マルチチップモジュールおよびこれを備えた電子機器

【課題】プロファイリングモジュールを搭載することなく処理量に応じたチップ選択により動作時の電力の最小化を測ることが可能なマルチチップモジュールを実現する。
【解決手段】 2以上の汎用LSI1、2、3と、前記汎用LSI1、2、3の動作を制御する制御LSI4と、を積層したマルチチップモジュールであって、前記制御LSI4は、前記汎用LSI1、2、3の内、同一機能を有する前記汎用LSIのそれぞれについての電力値テーブル405と、前記電力値テーブル405を参照して、その中で起動可能な前記汎用LSI1、2、3にタスクを振り分ける選択回路404とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチップモジュールおよびこれを備えた電子機器に係り、特に、汎用的な複数のチップを積層するマルチチップモジュールを備えた電子機器における消費電力の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実装面積向上および接続部(IF)の遅延バラツキ抑制、IFの低電力化のため、複数のチップを、ワイヤボンドではなくマイクロバンプ、TSV(Si貫通電極:Through-Silicon Via)/ワイヤレスTSVなどのワイヤレス実装技術を用いて実装するマルチチップモジュール、1つの半導体基板上に複数のプロセッサコアを搭載する多コアプロセッサが開発されている(例えば特許文献1)。
特許文献1の多コアプロセッサにおいては、個々のコアの特性バラツキおよび経時的な特性変化への対応として、複数のプロセッサコアの各コアの特性を動的にプロファイリングし、プロファイリングの結果に応じて複数のコアを選択して動作させる構成をとっている。
【0003】
また、高性能化と低消費電力及び低リーク電力との両立を図るために、高性能のCPUと低消費電力のCPUとを、処理内容に応じていずれのCPUを使用するのが最適かを判断するようにした半導体集積回路装置も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-510618号
【特許文献2】特開2002-288150号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、汎用的な複数のチップを積層するマルチチップモジュールにおいては、同一機能のチップを積層した場合であっても、それぞれのチップの出来栄えによって消費する電力に差が発生する。上記多コアプロセッサのようにプロファイリングモジュールを用いて各コアの特性を測定して選択する方法を、同一機能のチップが複数搭載されるマルチチップモジュールに適用する場合、消費電力の最小化が出来ないという問題がある。またプロファイリングモジュールには、遅延モニタおよび電流モニタが必要となる。たとえば、遅延モニタは、FF(フリップフロップ回路)間に代表回路を挟んで電圧、周波数などを変化させてPass/Fail判定することで、その回路の実力を確認する回路などの仕組みが必要になる。代表回路を何にするかはノウハウであり、電流モニタは、電圧モニタ回路を搭載して電流値の大小関係を予測したり、遅延モニタからリーク電流の大小関係を予測したりする必要があるため、簡単なデジタル回路で構成するのは不可能である。
以上のような状況であり、汎用チップでこのように複雑な回路を用いるとチップコストがかさむため、量産保障も難しい上、開発費が膨大となる。従って、プロファイリングモジュールを、汎用的なチップに適用するのは困難であるという問題がある。
【0006】
更に、各チップの消費電力を動的にプロファイリングするために電力を使用することになり、そのために消費電力がさらに増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、プロファイリングモジュールを搭載することなく処理量に応じたチップ選択により動作時の電力の最小化を測ることが可能なマルチチップモジュールを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、2以上の汎用LSIと、前記汎用LSIの動作を制御する制御LSIと、を積層したマルチチップモジュールであって、前記制御LSIは、前記汎用LSIの内、同一機能を有する前記汎用LSIのそれぞれについての電力値テーブルと、前記電力値テーブルを参照して、その中で起動可能な前記汎用LSIにタスクを振り分ける選択回路とを具備したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記マルチチップモジュールであって、前記制御LSIは、各LSIの消費電力を予め記憶した記憶部を有し、同一機能を持つLSIを動作させる場合は電力の小さいLSIを優先的に動作させることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記マルチチップモジュールであって、制御用LSIの上部に、同一機能を持つLSIを消費電力の小さい順に重ねたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記マルチチップモジュールであって、前記汎用LSIは、メモリ容量を持つ2つ以上のメモリを含み、前記制御用LSIは、前記メモリの消費電力を予め記憶した記憶部と、前記メモリの動作を制御する制御部と、を有する。
【0012】
また本発明の電子機器は、上記マルチチップモジュールを搭載し、所望の処理を行う処理部を有する。
【0013】
また本発明は、前記マルチチップモジュールが、同一の画像処理機能を有する2つの画像処理LSIと、前記画像処理LSIを制御する制御用LSIからなるマルチチップモジュールであり、前記処理部が映像表示装置を含む電子機器であって、映像入力信号が3D(次元)信号(Lch、Rch)の場合は、2つの画像処理LSIを動作させ、映像入力信号が2D信号の場合は、前記2つの画像処理LSIの内、消費電力の少ない画像処理LSIで画像処理を行い、前記映像表示装置に映像表示する。
本発明でLSIとはLSIチップを指すものとする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば、マルチチップモジュールにおいてプロファイリングモジュールを搭載することなく、処理量に応じたチップ選択により、動作時の電力の最小化を図ることができ、通常設計のなされた汎用的なチップに有効に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係るマルチチップモジュールの構成図
【図2】実施の形態1に係るマルチチップモジュールの概念図
【図3】実施の形態1に係るマルチチップモジュールを示すブロック図
【図4】実施の形態1に係る各チップの電力値テーブルを示す図であり、(a)は電力値、(b)は、優先順位を示す図
【図5】実施の形態1に係る制御LSIのフローチャートを示す図
【図6】実施の形態1に係る制御LSIのフローチャートを示す図
【図7】実施の形態2に係るマルチチップモジュール各チップの電力値テーブルを示す図であり、(a)は電力値、(b)は、優先順位を示す図
【図8】実施の形態2に係る制御LSIのフローチャートを示す図
【図9】実施の形態2に係る制御LSIのフローチャートを示す図
【図10】実施の形態3に係るマルチチップモジュールを示すブロック図
【図11】実施の形態3に係る制御LSIのフローチャートを示す図
【図12】実施の形態4に係るマルチチップモジュールを用いた映像機器の制御LSIを示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるマルチチップモジュールの構成図である。図2は、同マルチチップモジュールの概念図であり、最下層に制御LSI4を備え、その上にLSI1、LSI2、LSI3がシリコン貫通ビアによって積層されている。制御LSI4は、汎用LSI1、2、3のそれぞれについての電力値テーブル403を格納するとともに、電力値テーブル403の情報に基づき、汎用LSI1−3を選択するメモリ選択回路404を具備している。5は実装基板である。制御LSIはCPUを含むマイコンLSIであり、LSI1−3は同一機能を有する汎用のメモリLSIである。図3に制御LSI4の詳細な構成を示すブロック図を示す。
【0017】
本実施の形態1のマルチチップモジュールは、図3に示すように、3つの汎用LSI1、2、3と、これら汎用LSI1、2、3の動作を制御する制御LSI4とを順次、実装基板5上に積層し、それぞれバンプ13、23、33、43を介してフリップチップ接続して構成されている。この制御LSI4は、汎用LSI1、2、3の内、同一機能を有する汎用LSI1、2、3のそれぞれについての電力値テーブル405と、電力値テーブル405を参照して、その中で起動可能な汎用LSI1−3にタスクを振り分けるメモリ選択回路404とを具備している。
【0018】
制御LSI4は、メモリ選択回路404を含むメモリアクセスコントローラ403と、汎用CPU401と、ハードエンジン402と、電力値テーブル405とを具備している。メモリアクセスコントローラ403は汎用CPU401、ハードエンジン402とバス406で接続されており、メモリアクセスコントローラ403は、バス406およびメモリ選択信号を送出する信号線407でメモリを構成する汎用LSI1、2、3と接続されている。
【0019】
メモリアクセスコントローラ403は、汎用CPU401、ハードエンジン402から、汎用LSI1、2、3(メモリ)へのデータ書き込み、読み出しなどを調停しており、メモリ選択回路404によって汎用LSI1〜3のいずれかが選択される。
【0020】
また、制御LSI4の中には、あらかじめLSI検査において積層されるLSI1−3の電力値が測定された電力値テーブル405が記憶部Mに格納されており、この電力値テーブル405を参照して、同一の機能を有する、積層された汎用LSI1−3の中から最小の電力値で機能を達成することができる汎用LSI1−3が選択される。
汎用LSI1−3の電力値テーブルを図4に示す。図4に示すように、電力値テーブルには汎用LSI1−3の電力値が記載されている。これらの消費電力については、事前にLSIテスタを用いて代表的な動作パターン、たとえば代表的な温度及び動作条件で電力値を測定し、その結果を制御LSI4の電力値テーブル405に格納しておく。電力値テーブル405は制御LSI4中に集積化された不揮発メモリに格納されている。
【0021】
そして電力値テーブル405に、測定された電力値を格納された制御LSI4は、電源が投入されると、格納されている不揮発メモリからレジスタに電力値がリードされ、汎用LSI1−3の電力値を比較し汎用LSI1−3の使用優先順位がつけられる。その後、メモリアクセスコントローラ403は、その優先順位にしたがい、汎用LSI1−3の選択をする。
【0022】
次に、制御LSI4の動作について、詳細に説明する。図5及び図6に、検査時及び実使用時の制御LSI4の動作のフローチャートを示す。
まず、図5に示すように、検査が開始されると(S1001)、制御LSI4は、各汎用LSI1−3の電力値を順次測定し、測定で得られた電力値を、図4(a)に示す、電力値テーブル405に格納する(S1002)。
そして検査が終了する(S1003)。
【0023】
こののち、実装基板5上に制御用LSI4、汎用LSI3、汎用LSI2、汎用LSI1の順にバンプ43、33、23、13を介して接続する。なおこれらのバンプ43、33、23、13はそれぞれパッド45、35、25、15に形成されており、相対向する実装基板5、制御用LSI4、汎用LSI3、汎用LSI2の貫通ビア54、44、34、24に接続されたパッド(図示せず)に接続され、基板―チップ間接続およびチップチップ間接続が達成できるようになっている。なお、ここでは最上層の汎用LSI1にも貫通ビア14が形成されており、3つの汎用LSIは設計仕様で製造されたものである。なお同一工程で同一の設計条件で製造された場合にも特性ばらつきが生じる場合があるため、本発明は適用可能である。
【0024】
この状態で汎用LSI4及び制御LSI1−3のバンプを介して電力値を測定することにより、実装状態に近い電力値を測定することができる。また、制御LSI4に測定機能を持たせることができる場合は実装基板5上に汎用LSI4及び制御LSI1−3を実装し、実装後の各制御LSIの電力値を測定することで、実使用時に、より近い電力値データを得ることができる。
【0025】
次に、実使用時には、図6にそのフローチャートを示すように、電力値テーブルを格納された制御LSIは、電源スイッチが投入されると(S2001)、メモリ選択回路404を起動し、電力値テーブル405内の電力値を比較し汎用LSI1−3の優先順位を決定する(S2002)。
例えば、電力値のみを基準にして汎用LSIを選択する場合には、図4(b)に示す優先順位に従って汎用LSIを選択する。ここでは、汎用LSI1−3の電力値がXmV、YmV、ZmVであり、X<Y<Zである故、優先順位を汎用LSI1−3の順に1−3とした。この優先順位に従い、使用する汎用LSIが一つの場合には、汎用LSI1を選択する。そして2つの場合には汎用LSI1及び2を選択し、3個を使用する場合には、汎用LSI1−3を選択する。
汎用LSI1−3の選択に際しては電力値テーブル405における電力値の小さいものから優先的に選択するが、加えて、リーク電流、配線容量等も考慮し、リーク電流小、配線容量小、動作電流小の出来栄えの汎用LSI1−3を優先的に選択するようにしてもよい。
【0026】
このようにして優先順位が決定されると、メモリ選択回路404で決定された優先順位に従い、メモリアクセスコントローラ403は汎用LSI1−3を選択して電源電流を流し、駆動する。
【0027】
上記構成によれば、同一機能を有する汎用LSIを積層したマルチチップモジュールにおいて、全ての同一機能の汎用LSIを動作させる必要が無い場合に、消費電力の小さい汎用LSI1−3を優先的に動作させることにより、低消費電力化を図ることが可能である。リーク電流については、リーク電流も考慮して優先順位を選択すると、各々のLSIの出来栄えにより1桁程度の電流差があるため、最大1/10程度の電力削減効果を期待することができる。動作電流の場合は、プロセス、設計、機能により異なるが、動作電流も考慮して優先順位を選択すると、最大で約20〜30%程度の削減が期待できる。
また、あらかじめ格納された電力値テーブルを用いて汎用LSIを選択するため、動作初期から最適なコア(汎用LSI)を選択することが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
なお、電力値テーブルについては、動作電流とリーク電流のバランスによって、低温側で電力が小さいチップと高温側で電力が小さいチップはイコールではないので、温度条件ごとにもたせるようにしても良い。本発明の実施の形態2として、使用温度に30°と125℃のピークがあるような汎用LSIを用いて優先順位を決定する例について説明する。
【0029】
例えば、使用温度に30°と125℃のピークがあるような汎用LSIの場合、図7(a)に示すように30°と125℃の場合の電力値を測定し、電力値テーブルに格納しておくようにしてもよい。図7(b)に示すように、30°のときに汎用LSI1−3の電力量がXmV、YmV、ZmV(X<Y<Z)、125℃のときに汎用LSI1−3の電力量がX’mV、Y‘mV、Z‘mV(X’>Y‘>Z’)であったとする。このとき30°のときの汎用LSI1−3の優先順位は汎用LSI1、汎用LSI2、汎用LSI3とする。また、125℃のときには汎用LSI1−3の優先順位は汎用LSI3、汎用LSI2、汎用LSI1とする。ここで使用温度とは、LSIの内部温度をいうものとする。
【0030】
次に、制御LSI4の動作について図8及び図9に検査時及び実使用時のフローチャートを示す。
まず、図8に示すように、検査が開始されると(S3001)、制御LSI4は、各汎用LSI1−3の温度毎(30℃、125℃)の電力値を順次測定し、測定で得られた電力値を電力値テーブル405に格納する(S3002)。
そして検査が終了する(S3003)。
【0031】
次に、実使用時には、図9にそのフローチャートを示すように、電力値テーブルを格納された制御LSIは、電源スイッチが投入されると(S4001)、温度計により温度の確認を行う(S4002)。
【0032】
そしてメモリ選択回路404を起動し、温度条件による切り替えが可能か否かを判断する(S4003)。温度変化によりすでに選択されている汎用メモリを切り替える必要あると判断された場合には、メモリ選択回路404で、電力値テーブル内の実温度の値を比較し、汎用LSI1-3の優先順位を決定する。ここで測定温度が100℃であった場合には、125℃により近いものとし電力値テーブル405内の125℃の優先順位を優先順位として決定する(S4004)。
【0033】
例えば、電力値のみを基準にして汎用LSIを選択する場合には、図7(b)に示す優先順位に従って汎用LSIを選択する。ここでは、30℃の場合、汎用LSI1−3の電力値がXmV、YmV、ZmVであり、X<Y<Zである故、優先順位を汎用LSI1−3の順に1−3とした。一つの場合には、汎用LSI1を選択する。また125℃の場合、汎用LSI1−3の電力値がX’mV、Y’mV、Z’mVであり、X’>Y’>Z’である故、優先順位を汎用LSI1−3の順に3−1とした。従って汎用LSI内部の温度が30℃に近い場合には、一つの場合には、汎用LSI1及び2を選択する。そして2つの場合には汎用LSI1及び2を選択し、3個を使用する場合には、汎用LSI1−3を選択する。
【0034】
汎用LSI内部の温度が125℃に近い場合には、一つの場合には、汎用LSI3を選択する。そして2つの場合には汎用LSI2及び3を選択し、3個を使用する場合には、汎用LSI1−3を選択する。
【0035】
このように、汎用LSI1−3の選択に際しては電力値テーブル405における電力値の小さいものから優先的に選択するが、さらに、リーク電流、配線容量等も考慮し、リーク電流小、配線容量小、動作電流小の出来栄えの汎用LSI1−3を優先的に選択するようにしてもよい。
【0036】
一方、温度変化が所定の値よりも小さく、すでに選択されている汎用メモリを切り替える必要なしと判断された場合には、再度温度確認ステップS4002に戻る。
【0037】
このようにして優先順位が決定されると、メモリ選択回路404で決定された優先順位に従い、メモリアクセスコントローラ403は汎用LSI1-3を選択して電源電流を流し、駆動する(S4005)。
【0038】
上記構成によれば、同一機能を有する汎用LSIを積層したマルチチップモジュールにおいて、全ての同一機能のLSIを動作させる必要が無い場合に、消費電力の小さい汎用LSI1−3を優先的に動作させることにより、低消費電力化を図ることが可能である。リーク電流については、各々のLSIの出来栄えにより1桁程度の電流差があるため、最大1/10程度の電力削減効果を期待することができる。動作電流の場合は、プロセス、設計、機能により異なるが、最大で約20〜30%程度の削減が期待できる。
【0039】
また、あらかじめ格納された電力値テーブルを用いて汎用LSIを選択するため、動作初期から最適な汎用LSIを選択することが可能である。
このようにして、より電力量の小さいマルチチップモジュールを実現することができる。
【0040】
なお、電力値テーブルについては、チップ内に電力値を持つケースと、チップ内には優先順位のみテーブルとして持つケースとが考えられる。
【0041】
前者は、電力テーブルをチップ内部でもってその値を比較して優先順位を決める、後者は、テスタ上で電力値を比較し、優先順位のみ格納するものである。(ここでは実際には、テスタでの電力値を元にテストプログラムで電力値を確認し、優先順位のみ格納する。)
【0042】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3として電力値テーブルを格納していない制御LSIの場合について説明する。
図10は、実施の形態3にかかる制御LSIのブロック図である。実施の形態1及び2で用いた制御LSIとは電力値テーブルを格納していない点において相違する。他の部分は前記実施の形態1の制御LSIと同様であり、ここでは説明を省略する。本実施の形態におけるマルチチップモジュールの構成は図1に示したものと同様、貫通ビアを用いて実装したものである。
【0043】
本実施の形態においては、制御LSI4上に複数の汎用LSI1−3を積層する前にLSI検査にてこれらの汎用LSI1−3の電力値を測定し、制御LSI4の外部に、別途電力値テーブルを有している。そしてこの測定値を用いて電力値のもっとも小さいLSIから順に制御LSI4上に積層する。制御LSI4には、選択回路404Sを設け、下層のものから選択するように設計を施しておく。
選択回路404Sによって、積層された汎用LSI1−3のうち、下層のものから順にLSIを選択していく。選択回路404Sは、詳細は省略するが、所望のプログラムが格納されたものである。この選択回路では、下層から順に汎用LSIを選択する。
【0044】
なお、複数の汎用LSI1−3を制御LSI4上に積層する前に汎用LSI1−3の電力値を測定して、電力値のもっとも小さいLSIから順に制御LSI4上に積層するという方法がとられているが、さらに実装してマルチチップモジュールを形成した後、実装基板5の半田ボール53(BGA)を介して再度個々の汎用LSIの電力値を測定できるようにすることにより、実装によるインピーダンス変化をも考慮した、高精度の電力値測定を行うことができる。
この状態で汎用LSI4の半田ボール53を介して電力値を測定することにより、実使用時に、より近い電力値データを得ることができることで、より適切なLSIを用いた実装を実現することができる。
【0045】
本実施の形態におけるメモリアクセス動作のフローチャートを図11に示す。
まず、制御LSI4は、電源スイッチが投入されると(S5001)、メモリ選択回路404を起動し、選択された動作モードからメモリの必要数を判断する(S5002)。
そして必要数に応じて、メモリ選択回路404は下層から汎用LSI1-3を選択する(S5003)。この優先順位に従い、たとえば汎用LSIを1つ使用する場合には、最下層の汎用LSI3を、2つの場合には最下層の汎用LSI3とその上層の汎用LSI2とを選択する。3つの場合には汎用LSI1−3のすべてを選択する。
【0046】
このようにして優先順位が決定されると、メモリ選択回路404で決定された優先順位に従い、メモリアクセスコントローラ403は汎用LSI1−3を選択して電源電流を流し、駆動する。
【0047】
上記構成によって、同一機能を有する汎用のLSIを積層したマルチチップモジュールにおいて、全ての同一機能のLSIを動作させる必要が無い場合に、消費電力の小さいLSIを優先的に動作させることにより、低消費電力化を図ることが可能である。また本実施の形態のマルチチップモジュールの場合には、より電力量の小さい汎用LSIを下に配置しているため、1つしか汎用LSIを使用しない場合は最も下層、すなわち、実装基板5に最も近い汎用LSIのみを使用することができる。従って、他の汎用LSIを経ることなく電流供給がなされることになり、電流の搬送経路が短くなり、更なる効率の向上を図ることが可能となる。
【0048】
リーク電流の場合、各々のLSIの出来栄えにより1桁程度の電流差があるため、最大1/10程度の電力削減効果が期待できる。動作電流の場合は、プロセス、設計、機能により異なるが、最大で約20〜30%程度の削減が期待できる。
【0049】
また、制御LSIに電力値テーブルを格納する必要がないため、その分制御LSIチップの縮小を図ることが可能である。また電力値を書き込むという検査が不要になるため、検査の簡略化を図ることができる。
【0050】
なお、前記実施の形態では、消費電力の小さい順に汎用LSIを積層するようにしたが、消費電力の小さい順ではなく、別の順番で規則性をもたせるようにしてもよい。このように、消費電力と汎用LSIの積層の順番に規則性を持たせ、その規則に沿って消費電力の小さい汎用LSIを選択することで、電力値テーブルを用いてLSIを選択するのに比べ、LSI選択にかかる電力を削減することができ、一層の電力低減を実現することが可能である。
【0051】
このように、順番を決めて、組み立てと設計を行うようにすることで、検査がシンプルになる。また、放熱しやすいように電力の大きいチップを上に置くようにしてもよい。
また、チップの上に放熱板を置くなどチップの上から放熱をする場合には、上側に電力値の高いチップを配すようにし、実装基板側から放熱するのであれば、下側に電力値の高いチップを配するようにするのがよい。
【0052】
本実施の形態においては、制御LSI及び汎用LSIの積層構造はこれらに限定されるものではなく、LSIの積層関係と各々のLSIにおける消費電力との間に相互関係を持たせたものであればよく、制御LSIが最下層であっても最上層であってもよく、汎用LSIの積層順が消費電力の小さいものを最下層にしてその上に積層してもよければ、最上層にして下層に行くほど電力の大きいものとしてもよい。
【0053】
なお、前記実施の形態では、汎用LSIが同一機能を有する1種類の汎用LSIのみである場合について説明したが、同一機能を有する複数の汎用LSIが複数組組み込まれる場合、あるいは、これに加えて別のLSIが組み込まれている場合にも、それぞれについて同様の処理をし、選択順位を決定することで、容易に消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0054】
また、以上説明した実施の形態では、汎用LSIがメモリである場合について説明したが、積層されるLSIがメモリではなく、処理機能を持つ汎用LSIを用いたマルチチップモジュールの場合は、メモリアクセスコントローラに代えてタスクコントローラを用いて、汎用LSIの使用順位を決定するようにすればよい。
【0055】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4として映像機器への適用例について説明する。
本実施の形態の映像機器では、図12にブロック図を示すように、同一の画像処理機能を有する2つの画像処理LSI10、20と、画像処理LSI10、20を制御する制御用LSI40からなるマルチチップモジュール1と、映像表示装置60とを有する。この制御用LSI40は、映像入力信号が3D信号(Lch、Rch)の場合は、2つの画像処理LSIを動作させ、映像入力信号が2D信号の場合は、2つの画像処理LSI10、20の内、消費電力の少ない画像処理LSI40で画像処理を行い、映像表示装置60に映像表示するように構成されている。
【0056】
制御LSI40は、タスク選択回路404pを含むタスクコントローラ403pと、汎用CPU401と、ハードエンジン402と、電力値テーブル405とを具備している。タスクコントローラ403pは汎用CPU401、ハードエンジン402とバス406で接続されており、タスクコントローラ403pは、バス406および選択信号を送出する信号線で画像処理LSI10、20を構成する汎用LSIと接続されている。
【0057】
タスクコントローラ403pは、汎用CPU401と、ハードエンジン402とを用いて、画像処理LSI10、20の駆動タイミングの調停をしており、タスク選択回路404pによって画像処理LSI10、20のいずれかが選択される。
処理フローについては前記実施の形態1、2と同様であるためここでは説明を省略する。
【0058】
このように本発明の実施の形態の映像機器の場合にも、同一の処理機能をもつ2つの画像処理LSI10、20を用い、2次元の場合は1つ、3次元の場合は2つ使用するが、本実施の形態の映像機器では、消費電力が最小限となるように制御することができ、極めて簡単な構成で消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0059】
また、前記実施の形態において、汎用LSIの消費電力が小さかったとしてもすでにそのLSIには別のタスクでいっぱいになっている際など、積層されている汎用LSIの状況判断をする状況判断回路など、タスクコントローラに、状況判断機能を持たせておくことで、より作業性よく制御することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るマルチチップモジュールは、比較的簡単な構成でありながらも消費電力を低減することができ、映像機器をはじめ種々の電子機器への適用が有用である。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 汎用LSI
4 制御LSI
5 実装基板
10、20 画像処理LSI
13、23、33、43 バンプ
14、24、34、44 貫通ビア
15、25、35、45 パッド
40 制御LSI
53 半田ボール
60 表示装置
401 汎用CPU
402 ハードエンジン
403 メモリアクセスコントローラ
403p タスクコントローラ
404 メモリ選択回路
404p タスク選択回路
405 電力値テーブル
406 メモリバス
407 メモリ選択信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の汎用LSIと、
前記汎用LSIの動作を制御する制御LSIと、
を積層したマルチチップモジュールであって、
前記制御LSIは、前記汎用LSIの内、同一機能を有する前記汎用LSIのそれぞれについての電力値テーブルと、前記電力値テーブルを参照して、その中で起動可能な前記汎用LSIにタスクを振り分ける選択回路とを具備したマルチチップモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチチップモジュールであって、
前記制御LSIは、各LSIの消費電力を予め記憶した記憶部を有し、
同一機能を持つLSIを動作させる場合は電力の小さいLSIを優先的に動作させるマルチチップモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチチップモジュールであって、
制御用LSIの上部に、同一機能を持つLSIを消費電力の小さい順に重ねたマルチチップモジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマルチチップモジュールであって、
前記汎用LSIは、メモリ容量を持つ2つ以上のメモリを含み、
前記制御用LSIは、
前記メモリの消費電力を予め記憶した記憶部と、
前記メモリの動作を制御する制御部と、を有するマルチチップモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマルチチップモジュールを搭載し、
所望の処理を行う処理部とを有する電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記マルチチップモジュールが、
同一の画像処理機能を有する2つの画像処理LSIと、
前記画像処理LSIを制御する制御用LSIからなるマルチチップモジュールであり、
前記処理部が映像表示装置を含む電子機器であって
映像入力信号が3D信号(Lch、Rch)の場合は、2つの画像処理LSIを動作させ、
映像入力信号が2D信号の場合は、前記2つの画像処理LSIの内、消費電力の少ない画像処理LSIで画像処理を行い、前記映像表示装置に映像表示する映像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−65076(P2013−65076A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201945(P2011−201945)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】