マルチバンド無線周波数動作用のインダクタ・デバイス
モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分(L11、L21、L22、L12)に分散される。より小さなインダクタ部分(L11、L21、L22、L12)は、インダクタを差動インダクタ・デバイスとして機能させるようなカスコード構成に設けられる。中間インダクタ部分(L21、L22)の間のノード(CM)はインダクタ・デバイスのコモン・モード・ポイントであり、典型的には信号接地に接続される。インダクタ部分(L12、L11)の外側端にあるノード(Outm、Outp)は差動出力部であり、例えば、デバイス自体と次段のデバイス(例えばミキサの入力段)とのインターフェースにある増幅器デバイスの出力ノードである。インダクタ部分のうちの幾つかは、1つ又はそれ以上の高周波数帯域動作のために、1つ又はそれ以上のステップにおけるコモン・モード・ポイントに関して対称的にバイパス又はショートカットされる(S1)ように配置される。スイッチング可能な対称的ショートカットにより、制御可能なインダクタンス・ステップを生成することができる。コモン・モード信号は、制御状態に関わりなく、同じインダクタンスの影響を受ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)回路に関し、具体的には、マルチバンド無線周波数(RF)動作のための集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信事業において多目的無線周波数集積回路(RFIC)を同時に多数のシステム及び周波数帯域により実施することの将来的な動向は疑いのないことである。新規の周波数割当ては、旧式の商業システム又は政府及び軍機関からの周波数帯の取得と相俟って、非常に散らばった無線インターフェースを生じる。このことは、RFICエンジンに対して複雑性とダイ面積消費を増す厳しい要件を設けることになる。多目的RFICにおいて、別々のRF信号経路の全体的な程度は高くなる可能性があり、また将来的には確実に増えるであろう。例えば、携帯電話のためのRFICは、GSM800、GSM1800、GSM1900、CDMA2000、European WCDMA、US WCDMA、WLAN、GPS、及びDVB無線インターフェースをサポートしなければならない場合がある。直接変換アーキテクチャにおいては、単一システムの種々の周波数変異は、いかなる外部部品も取り替えることなく容易に実装することができる。典型的なトランシーバ構成においては、周波数変動の要求はRFフロント・エンドに集中する。これはほぼ例外なく、システム及び周波数変異の各々に対するRFフロント・エンドの多重化と周波数スケーリングとを意味する。
【0003】
RFIC増幅器を実施するための典型的な回路構成は、例えば、RLCパラレル共振器を有する、誘導縮退型カスコード増幅器である。この差動構成は2つの差動インダクタを含み、多重信号経路が必要な場合にはそれらを多重化しなければならない。加えて、種々の共振周波数をもつ共振器は、次段へのインターフェースを多重化することによって互いに分離しなければならない。少なくとも他の信号経路は常に無効ダイ面積としてシャット・ダウンされるので、このことはマルチバンド動作を実施するためのダイ面積に効率的なやり方ではない。
【0004】
特に小規模の周波数ステップを維持するための別の従来の方法は、キャパシタ同調である。しかしながら、これはオクターブ規模の周波数同調には適さない。キャパシタ同調による固定インダクタ・デバイスを用いたオクターブ規模の周波数同調の実施は、インダクタのQ値は強い周波数依存性を有するので、共振器のQ値を低下させる。さらに、スイッチング・デバイスは理想的でないので、大規模な同調可能なキャパシタ・マトリックスの実施に問題を生じる。典型的なやり方は、小規模の内部帯域同調に対してキャパシタ同調を用いて、周波数応答を最適化する又は部品ばらつきを補償することである。
【0005】
Park他による「Variable Inductance Multilayer Inductor With MOFET Switch Control」,IEEE Electron device letters,Vol.25,No.3,March 2004,p.144−146は、3つのらせん型インダクタが垂直方向に積層され、この積層インダクタのうちの2つにはインダクタンス分散動作のための2つのパラレル接続されたMOS−FETスイッチが備えられている、可変モノリシック・インダクタを開示している。2つのスイッチがオフ状態であるときには、合計インダクタンスは近似的に各インダクタのインダクタンスの総和であり、2つのスイッチがオン状態であるときには、インダクタンスは1つのインダクタのインダクタンスである。その結果として、マルチバンドRF回路に対して、より小さなチップ面積を必要とする可変インダクタが得られる。従来技術のインダクタンス(シングル・エンド・デバイス)に伴う問題は、差動動作に用いられるスイッチが、差動信号経路に雑音を発生することである。さらに、段構造に反するレイアウト技術的な観点は、ICプロセスが一般に高性能インダクタ・デバイスを生成するのに適した低抵抗金属層を1つしか含まないことである。加えて、従来技術はなんら顕著なダイ面積の節約をもたらしてはいない。
【発明の開示】
【0006】
本発明の1つの目的は、受信機チェーンと送信機チェーンの両方のRFフロント・エンドにおけるマルチバンドRF動作のための改善された可変インダクタンスを提供することである。
【0007】
本発明の目的は、添付の独立請求項による本発明によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項において開示される。
【0008】
本発明は、そのインダクタンスがより小さなインダクタ部分に実質的に分散されているモノリシック平面インダクタの特定の位置に、スイッチング可能な対称的ショートカットを設けることに基づく。より小さなインダクタ部分は、インダクタを差動インダクタ・デバイスとして機能させるカスコード構成様式で設けられる。この構成においては、(電気的に)中間のインダクタ部分の間の中間ノードはコモン・モード・ポイントを形成し、(電気的に)外側のインダクタ部分の外側端は差動インダクタの差動モード出力部を形成する。インダクタ部分のうちの幾つかは、1つ又はそれ以上の高無線周波数帯域での動作のための1つ又はそれ以上のステップにおいて、コモン・ポイントに関して対称的にバイパス即ちショートカットされるように配置される。スイッチング可能な対称的ショートカットにより、制御可能なインダクタンス・ステップを設けることが可能である。コモン・モード信号は、制御された状態に関わりなく、同じインダクタンスの影響を受ける。
【0009】
本発明によるインダクタ・デバイスは、RFフロント・エンドにおいて最も面積を消費する部分である受動インダクタ・デバイスを単一で全ての種々異なる周波数帯域に対して使用できるようにすることによって、これらの全ての種々異なる周波数帯域をカバーするのに必要な種々異なる信号経路の量を著しく減らすことができる。このようにして、RFICチップは使用されない周波数共振器の全く使用されないインダクタ・デバイスを何も含まず、全ての大面積のインダクタは少なくとも部分的に使用される。さらに、本発明による差動分散インダクタにおいては、バイパス・スイッチによって生じる雑音はコモン・モードの雑音であり、従って、インダクタの差動出力には現れない。これは、MOSFETスイッチが電流経路上にあって、スイッチによって生じた雑音エネルギーが全て信号経路に重畳される、従来技術の積層インダクタに比べて有利な点である。本発明による差動分散インダクタは複数の既存の回路設計に直接に適用可能であるが、一方従来技術の積層インダクタは、個々の可変インダクタとしては良好に動作することができても、ダイ面積を著しく節約しつつ性能を顕著に低減させることのない種々の回路設計に導入するには問題をはらんでいる。
【0010】
オクターブ規模のマルチバンド用途においては、共振器のダイ面積は、実際にはほぼ二分割することができる。また、マルチバンド動作において、共振器ノードにおける多重インターフェースを避けることもできる。縮退用途においては、GSM850・GSM1800及びGSM900・GSM1900システムのような異なる無線システムのための共通分散インダクタ・デバイスを実施することができる。加えて、必要であれば、異なる周波数変異/システムの入力段を組み合わせることができる。本発明はまた、共振器におけると同じ様式で折畳みカスコード・トポロジーに用いて、広帯域動作を改善することができる。折畳みカスコード・トポロジーにおいては、折畳みインダクタのQ値要件は非常に低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下で、本発明は、添付の図面を参照しながら例示的な実施形態により詳細に説明される。
【0012】
図1には、本発明の基本的な考えが一実施例により示される。モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。隣接したインダクタ部分L21及びL22の間のノードCMはインダクタ・デバイスのコモン・モード・ポイントであり、典型的には信号接地(例えば供給電圧VCC又は接地)に接続される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部であり、例えば、デバイス自体と次段のデバイス(例えばミキサの入力段)とのインターフェースにある増幅デバイスの出力ノードである。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWp、及び、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmは、ノードSWpとノードSWmの間に接続されたショートカット又はバイパス・スイッチング・デバイスS1によって、ショートカット・スイッチング機能が実施されるノードである。図1に示されるインダクタ構成の一般的な機能性を以下に提示する。
【0013】
開放スイッチ構成
スイッチ・デバイスS1が開放されたままであるとき、インダクタは、インダクタンス部分L11、L21、L22、及びL12のカスケードを形成して、通常のインダクタ・デバイスと非常によく似た働きをする。唯一の欠点は、スイッチ・デバイスS1と可能性のあるデバイス外の配線とによって生じる寄生容量である。これらの寄生容量は、例えばスイッチとしてMOSトランジスタが用いられるときに著しいものとなる可能性がある。これは、インダクタのQ値を低下させる。しかしながら実際には、開放スイッチ動作においては、デバイスはより低い周波数において動作することが意図されており、従って、寄生容量の大きさは、より低い動作周波数に応じてより高くなる可能性がある。
【0014】
ショートカット構成
スイッチ・デバイスS1がノードSWp及びSWmをショートカットする(差動界/回路から中間インダクタ部分L21及びL22をバイパスする)場合には、出力ノードOutp及びOutmは、少なくとも理想的な条件において、インダクタ部分L12及びL11のみを見込む。この構成は、より高い帯域での動作を実施するのに用いることができる。スイッチ・デバイスS1の寄生抵抗はインダクタのQ値を著しく低下させる。同様に、インダクタ部分L21及びL22は、相互インダクタンスM12による負荷として働く。この構成においては、コモン・モード経路は、開放構成と同等であり、DC経路は依然としてインダクタ部分L21及びL22を通して働く。
【0015】
図2には、図1の差動インダクタに関する簡略化されたレイアウト専用の実施の一例が示される。実施例のいずれにおいても、基板への散逸(渦電流)に対するシールド構造体は示されない。
【0016】
図2において、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン21と左回り螺旋状金属ライン22とから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。ライン21及び22の反対側端は、それぞれ差動出力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン21及び22は、別の(下層の)金属層への貫通接続部を備える金属交差部23によって互いの内部に互い違いに配置される。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、他の金属層内の金属ライン24及び25への貫通接続部によって設けられる。ノードOutp、Outm、SWp、SWm、及びCMへの接続は、同じ層内で、又は、特にスイッチがインダクタ・デバイスの内部に設置できる場合には他の層又は複数層内で、種々の異なる方式で形成できることを理解されたい。これらの種々の方式の実施例は、下記の本発明の他の実施形態の説明においても示されることになる。インダクタの一般的な形状は任意の適切なものとすることができる。典型的には、インダクタは円形、又は本明細書の実施例に示される八角形などの多角形である。
【0017】
図3及び図4には、下層の金属層がスイッチング接触部配線に用いられない場合の図1及び図2の変形が示される。これは、例えば入力段の縮退に適すると見ることができる。この実施例においては、モノリシック平面インダクタは6つの小さなインダクタ部分L31、L11、L21、L22、L11、及びL31に分散される。隣接するインダクタ部分L21とL22の間のノードCMは、インダクタ・デバイスのコモン・モード・ポイントであり、典型的には信号接地(例えば供給電圧VCC又は接地)に接続される。インダクタ部分L32及びL31の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部であり、例えば、デバイス自体と次段のデバイス(例えばミキサの入力段)のインターフェースにある増幅デバイスの出力ノードである。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間にあるノードSWp、及び中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間にあるノードSWmは、ノードSWpとノードSWmの間に接続されたショートカット又はバイパス・スイッチング・デバイスS1によって、ショートカット・スイッチング機能が実施されるノードである。ここでも、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン31と左回り螺旋状金属ライン32とから形成され、これらラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。ライン31及び32の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン31及び32は、別の(下層の)金属層への貫通接続部を備える金属交差部33によって互いの内部に互い違いに配置される。コモン・モード・ノードCMへの接続は、下層の金属層内の金属ライン34への貫通接続部によって設けられる。
【0018】
やはり同じ基本的な考えに基づくさらに異なった構造体が、図5及び図6に示される。図5の概略図は、図3のそれと同一である。図6に示されるレイアウトにおいては、やはりモノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン61と左回り螺旋状金属ライン62とから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。しかしながら、ここでは、コモン・モード・ノードCMは、インダクタの最外側の巻き部分に形成され、出力部Outp及びOutmは金属ライン61及び62の内側端に形成されるが、これらは貫通接続部と下層の金属層内の金属ライン63及び64により、インダクタの外部に接続される。ライン61及び62の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン61及び62の巻きは2つの群に配置され、3つの最外側の巻きが第1の群を形成し、4つの最内側の巻きが第2の群を形成する。群の間の間隔は、各群内の巻きの間の間隔より大きい。これに対応して、インダクタ部分L21、L22とL31、L32との間の相互インダクタンスM12は、より小さくなる。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、第1の外側群の最内側の巻き部分に形成される。その結果として、スイッチS1が開放スイッチ構成にあるときには、インダクタはインダクタンス部分L31、L11、L21、L22、L12及びL32のカスケードとなり、低帯域(LB)動作に好適である。ショートカットされた構成においては、スイッチ・デバイスS1はノードSWp及びSWmをショートカットし(インダクタ部分L21及びL22をバイパスし)、出力ノードOutp及びOutmは、少なくとも理想的な条件においては、インダクタ部分L31、L22、L21及びL11のカスケードのみを見込むことになる。この構成は、改善された高帯域(HB)動作を実施するのに用いることができる。この場合、自己共振周波数の増加と外側インダクタによる内側インダクタへの負荷の減少(より小さなM12)とによる、高帯域インダクタ(HB)のQ値の改善が得られる。さらに、高帯域インダクタは干渉技術の観点から見て実質的により小さくなる。システム・オン・チップの概念においては、高帯域(HB)は、低帯域よりも、より問題のある干渉環境を含むことは極めて明白である。不利な点は、低帯域(LB)インダクタのQ値が僅かに減ることと、ダイ面積消費が増すことである。
【0019】
図7は、分散型3nH/18nHインダクタと、2つの分離した3nH及び18nHの従来型インダクタとの比較を示す。従来型インダクタはベンダによって提供された要素モデルであり、分散インダクタは基板シールドなしのMomentumでシミュレートされたものである。
【0020】
本発明による分散インダクタ・デバイスに用いるのに適したスイッチング機能S1の実施例が以下に与えられるが、本発明をこれらの実施例に限定する意図はない。1つのアプローチは、コモン・モード電圧レベルに応じてNMOS又はPMOSスイッチを用いて実施することができるCMOSスイッチング機能である。典型的な実施においては、NMOSスイッチは縮退部に用いられ、PMOSスイッチは共振器に用いられるが、例えば折畳みカスコード・トポロジーはこの予備的な実施を取り除く。
【0021】
標準的なBiCMOSプロセスからの1000μm/0.35μmのNMOS及びPMOSデバイスのスイッチング・ダイナミクス(SD)が図8に示される。予想されるように、開放スイッチ状態(ZOFF又は実際にはCOFF)は、単に寸法中心の量であり、従って、ほぼデバイスに依存しない結果をもたらしている。ショートカット状態(ZON又は実際にはRON)は、p型及びn型トランジスタの移動度に関する結果を与える。マルチバンド動作においては、関心ある周波数帯域は、異なるスイッチング状態において同じ周波数にはないことに留意されたい。このことは明らかに、図8において斜線で示されているように(SD NMOS及びSD PMOS)、スイッチング・ダイナミクスの有効範囲を広げる。この例示的な場合においては、デュアルバンド動作は、850MHzから1950MHzのWCDMA EU帯域までのオクターブ規模の周波数ステップを目的としている。
【0022】
別のアプローチは、バイポーラ・スイッチング機能である。CMOSデバイスの寸法は、高帯域のインダクタのQ値を劣化させないように十分なRONを達成するためには大きくなる。このことは寄生容量COFFの増加を引き起こし、従って、高周波数での動作を困難にする。バイポーラ・デバイスは、著しく小さなデバイス・サイズ従って寄生容量COFFにより、適度に低いRONを維持するように用いることができる。特に高周波数での特別な目的において、より高いスイッチング・ダイナミクスを維持するために、新規なスイッチング・デバイスが開発される。
【0023】
図9には、この特定の電流リーク型バイポーラ・スイッチ・デバイスが示される。これは、コモン・ベースのトランジスタQ1及びQ2を備える。Q1及びQ2のベースは共通のバイアス電圧Vbiasに接続され、それらのコレクタは、例えば供給電圧VCCに接続される。エミッタは分散インダクタのスイッチング・ノードSWp及びSWmに接続される。ショートカット状態では、このデバイスは、デバイスを通してリークする一定のゼロ入力電流を伴う一定動作点を必要とすることに留意されたい。このデバイスの理解できる不利な点は、電圧ヘッドルームの損失又は追加の電流消費である。デバイスが信号経路に直列に接続される場合には、電圧ヘッドルームが減少する。信号経路に並列に接続される場合には、電流消費が増加する。
【0024】
図9のBJTスイッチング・デバイスの導入は簡単である。動作点にバイアスされる場合、入力インピーダンス(RON)は、
【数1】
と与えることができ、ここでZinは、コレクタ及びベース・ノードをショートカットした差動カスコード構成(コモン・ベース)の入力インピーダンス(エミッタのインピーダンス)であり、gmはバイポーラ・デバイスの相互コンダクタンスであり、kはボルツマン定数であり、Tはケルビン単位の温度であり、qは電子電荷であり、ICはデバイスの動作点におけるコレクタ電流である。開放状態(IC=0)では、デバイスの入力インピーダンスはトランジスタの寄生容量によって定められるが、これは小面積のデバイスに対しては無視できる。性能上の有利な点は、主として、開放状態の最大化された高周波アイソレーションにある。
【0025】
図10には、動作点IC=10mAにおけるバイポーラ・スイッチの特性が示される。対応するCMOSスイッチの結果は周波数範囲[0.5GHz〜5.0GHz]の下側左隅に斜線マークで示される。認められるように、スイッチング・ダイナミクスの特に高端部が著しく高く、又同じく、広帯域の動作が明らかに改善されている。マークA及びBは、2GHzの周波数におけるNMOS(A)及びPMOS(B)スイッチのスイッチング・ダイナミクスを表す。BJTスイッチは、11GHz(A)と20GHz(B)の周波数において、同じ性能の結果を示している。
【0026】
第3のアプローチは、分離スイッチングである。分離設計においては、スイッチは、ピン・ダイオード・スイッチ、FETベースのスイッチ、電気機械式スイッチ、又は機械式スイッチなどの種々異なる市販の代替物を用いて実施することができる。この場合には、標準的な分離型インダクタが使用できる。また、例えばデュアル・トランジスタ・チップを有する上記BJTスイッチの分離型も可能である。
【0027】
これより、幾つかの用途における本発明による分散型のスイッチング可能なインダクタを検討する。典型的なRF設計ブロックの負荷共振器は、本発明の最も重要な用途分野である。インダクタ面積は比較的大きく、従って、本発明により、大きなダイ面積を節約することができる。また、異なるブロック間で避けられる内部インターフェースは、有意のものであることが分かる。下記において、NMOS若しくはPMOSスイッチ、或いは異なるHBT構成を用いて、より低い又はより高いコモン・モード電圧レベルで動作する負荷共振器に適した種々様々なトポロジーを説明する。
【0028】
1つの好ましい共振器構成は、PMOS又はNMOSスイッチングによる図1及び図2に示された分散インダクタとすることができる。この構成は、より高い動作電圧(VCC⇒PMOS)又はより低い動作電圧(gnd⇒NMOS)に接続された従来の負荷共振器に適する。インダクタがより低い動作電圧に接続できる場合には、好ましいスイッチング・ダイナミクスを有するNMOSスイッチング・デバイスを用いることができる。
【0029】
図11及び図12には、このような共振器構成に関連するシミュレーション結果が示される。図11は、閉じたNMOSデバイス[400〜2000μm]/0.35μm及び理想的なショートカットを用いた高帯域(HB)状態に対するインダクタンス及びQ値のシミュレーションを示す。図12は開放されたNMOSデバイス[400〜2000mm]/0.35mm及び開放構成を用いた低帯域(LB)状態に対するインダクタンス及びQ値のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは基板シールドを除外したものである。使用したスイッチング・デバイスは、旧式の0.35μmトランジスタ長を有し、並のスイッチング・ダイナミクスのみを有するNMOSトランジスタである。2GHzにおいて3nHの理想的なインダクタのQ値に対する共振器減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rpar(インダクタ及びスイッチング・デバイス)の影響が図13及び図14に示される。減衰抵抗の関連する値は数百オームであり、示される実施例においては100オーム未満である。このことは、多くの設計ブロックにおける共振器Q値に対する極めて低い要件(Q<10)を示す。
【0030】
特に高周波数動作に適した別の負荷共振器関連の構成が図15及び図16に示される。本発明の基本的な考えにより、モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部である。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpHBと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとの間には、図9によるバイポーラ・スイッチが接続され、トランジスタQ1及びQ2が電圧Vb2によってスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。加えて、図9による同様のスイッチング機能が、中間インダクタ部分L21及びL22の反対側端のノード、SWpLB及びノードSWmLBの間に接続される。高周波数動作においては、Q1及びQ2が電圧Vb2によってスイッチ・オンされるときトランジスタQ3及びQ4はスイッチ・オフされ、逆の場合も同様である。トランジスタの対にバイアスが印加されると、差動エミッタ・インピーダンスは1/gmに等しくなり、ショートカットされ、一方他のトランジスタの対においては寄生容量に等しくなる、即ち開放状態となる。示された構成はより高い動作電圧において電圧ヘッドルームの減少を伴って動作するのに適している。例示的なレイアウトは図16に示される。モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン161と左回り螺旋状金属ライン162とから形成され、これらラインはそれらの一端であるノードSWpLB及びSWmLBにおいてQ3及びQ4のエミッタに相互接続される。ライン161及び162の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。スイッチング・ノードSWpHB及びSWmHBは、それぞれQ1及びQ2のエミッタに接続される。
【0031】
より低いコモン・モード・レベルに適した変換トポロジーが図17及び図18に示される。本発明の基本的な考えにより、モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。コモン・モード・ノードCMは、接地に接続される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部である。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとの間に、図9によるバイポーラ・スイッチング・デバイスが接続され、トランジスタQ1及びQ2が電圧Vbによってスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。このトポロジーはスイッチング・デバイスのための追加の電流経路を有する。図18に示された例示的なレイアウトにおいては、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン181と左回り螺旋状金属ライン182とから形成され、これらラインはそれらの一端であるCMにおいて接地に接続される。ライン181及び182の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、それぞれQ1及びQ2のエミッタに接続される。
【0032】
第2の用途分野は、例えば入力段の誘導縮退などの、相互コンダクタンスgm段のためのスイッチング可能なインダクタ構成にある。この状況においては、NPN型の入力トランジスタを用いることができるが、PNP、NMOS、又はPMOSなどの他の型もまた可能である。下記において、NMOS若しくはPMOSスイッチ、或いは異なるHBT構成を用いて、より低い又はより高いコモン・モード電圧レベルで動作する誘導縮退した入力段に適した種々様々なトポロジーを説明する。n型実施からp型実施への変換は可能である。
【0033】
図19及び図20は、高周波数(HB)及び低周波数(LB)入力段のトランジスタ自体がスイッチング機能に用いられる実施例を示す。HB入力トランジスタQPHB及びQMHBのエミッタは、それぞれ、中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpHBと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとに接続され、入力部HB INM及びHB INPに高周波数(HB)動作をもたらす。インダクタとHB入力段の差動HB出力は、QPHB及びQMHBのコレクタから得られる。同様に、トランジスタQPLB及びQMLBは、スイッチング・ノードSWpLB及びSWmLB(出力部Outp及びOutm)に接続されて、入力部LB INM及びLB INPにLB動作をもたらす。インダクタとLB入力段の差動LB出力は、QPLB及びQMLBのコレクタから得られる。図20に示されたレイアウトは、図19を参照して説明されたスイッチング機能をもたらすために2つの入力トランジスタ段が用いられており、分離したスイッチを必要としない点を除いて、図18のレイアウトと同じである。
【0034】
図21及び図22は、入力段の入力トランジスタQP及びQMのエミッタが、それぞれインダクタ部分L11及びL12の外側端子に接続された、さらに進んだ実施例を示す。インダクタと入力トランジスタの差動出力は、コレクタから得られる。スイッチング機能は、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpに接続された1つの主電極と、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmに接続された他の主電極と、を有するNMOSトランジスタによってもたらされ、NMOSトランジスタが制御入力SWによりスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。この構成においては、同一の入力段を再利用する可能性を考えることができる。図21に示されたレイアウトは、上述のインダクタに対して図20の概略を直接に適用したものである。
【0035】
図23及び図24は、入力段の入力トランジスタQP及びQMのエミッタが、それぞれインダクタ部分L11及びL12の外側端子に接続された、さらに進んだ実施例を示す。インダクタと入力トランジスタの差動出力は、コレクタから得られる。スイッチング機能は、ノードSWpとノードSWmの間に接続された電流リーク型スイッチQ1、Q2によってもたらされ、電流リーク型スイッチが制御入力電圧Vbによりスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。この構成においても、同一の入力段を再利用する可能性を考えることができる。図24に示されたレイアウトは、上述のインダクタに対して図23の概略を直接に適用したものである。
【0036】
マルチバンド動作の教示的な実施例が以下に示される。図25には、本発明による、850MHz帯域及びEU WCDMA帯域における動作を維持するためのマルチバンドLNAが示される。このLNAは、基盤事業における二次的LNAを目的とするものである。デュアルバンドLNAのインダクタ251と入力段252は、図20に示された構成のものと同じ構造及び動作を有する構成をもたらす。モノリシック平面インダクタL1は、右回り螺旋状金属ラインと左回り螺旋状金属ラインとから形成され、これらラインはそれらの一端CMにおいて接地に接続される。金属ラインの反対側端のSWpLB及びSWmLBは、それぞれ低帯域(LB)入力トランジスタQpLB及びQmLBのエミッタに接続される。インダクタとLB入力段の差動LB出力は、QPLB及びQMLBのコレクタから得られる。HB入力トランジスタQPHB及びQMHBのエミッタは、スイッチング・ノードSWpHBに接続される。インダクタとHB入力段の差動HB出力は、QPHB及びQMHBのコレクタから得られる。換言すれば、入力トランジスタは、自立的に自己スイッチングするデュアルバンドの誘導性縮退が得られるようなスイッチング機能を与えるために用いられる。
【0037】
入力トランジスタQpLB、QmLB、QPHB、及びQMHBのコレクタは、デュアルバンドLNAのカスコード段253に接続される。カスコード段253からの出力は、広い動作帯域幅を有するミキサなどの、信号経路内の次のデバイスの入力段254に接続される。デバイス254の入力部には、本発明の原理による分散インダクタL及びPMOSスイッチ255を用いて、共振器のデュアルバンド・インダクタが設けられる。モノリシック平面インダクタLは、右回り螺旋状金属ラインと左回り螺旋状金属ラインとから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて、接地に接続されるコモン・コードCMを形成する。金属ラインの反対側端は、段254の入力部に接続される差動出力部を形成する。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、インダクタの反対側にある外側から2番目の巻き部分に接続される。CMOSスイッチング機能255は、PMOSスイッチ255を用いて実施することができる。
【0038】
本発明はまた、共振器におけると同様の仕方で折畳みカスコード・トポロジーの形式で用いて、広帯域動作を改善することができる。種々異なる折畳みカスコード構成により、完全にn型又はp型のスイッチング・デバイスを用いることができる。図26には、種々のRF設計ブロックに適した折畳みカスコード・トポロジーが示される。入力電圧VINは、n型入力段261に入力される。入力段261からの出力電流Igmは、折畳みインピーダンス262に印加され、さらに、カスコード段263の入力部に印加される。折畳みインピーダンス262は、任意のトランジスタを有する活性デバイス、又は受動デバイス(R、L、RC、RL、又はRLCネットワーク)を用いて実施することができる。信号の折畳みは、この場合には、接地電位に関して実施されるが、任意の他の電位に関しても実施することができる。カスコード段263の出力部にはn型スイッチング・デバイスを有する分散インダクタが設けられ、出力電圧VOUTを生成する。この場合には、折畳みカスコード・トポロジーは、より良好なスイッチング・ダイナミクスを有するn型スイッチング・デバイスを可能にする。
【0039】
本発明による分散インダクタ・デバイスはまた、「分離したインダクタ」によって実施することができ、その結果、分散インダクタ・デバイスのかなり複雑なモデリングを避けることができる。このような分散インダクタ・デバイスの実施例が図27に示される。このデバイスは、2つの実質的に分離した平面インダクタ部分を備え、ここで第1のインダクタ区域271は、右回り螺旋状金属ライン272と左回り螺旋状金属ライン273とから形成され、これらラインはそれらの一端CMにおいて接地に接続されて、中間インダクタ部分L21とL22を形成する。金属ライン272及び273の反対側端は、それぞれスイッチング・ノードSWm及びSWpを形成する。第2のインダクタ部分274は、右回り螺旋状金属ライン275と左回り螺旋状金属ライン276とから形成され、これらのラインはそれらの内側端においてスイッチング・ノードSWm及びSWpに接続される。ライン275及び276の外側端は、差動インダクタの差動出力部Diffm及びDiffpを形成する。この状況においては、ベンダからの標準的なライブラリ・モデルを直接用いることができる。明らかに不利な点は、著しく増加するダイ面積消費であるが、それでもなお、マルチバンド動作に対して単一のインターフェースを与える。
【0040】
本発明の種々の実施形態に関して上述された実施例は、デュアルバンド・インダクタであるが、マルチバンド・インダクタもまた可能である。非常に直接的な実施は、例えば、図28に示されたような形式で、多重インダクタ・ステップを設けることである。再び、2つの螺旋状金属ライン281及び282が、それらの第1の端部がコモン・モード・ノードCMに接続されるように設けられる。ライン281及び282の外側端は、差動インダクタの差動出力部Diffm及びDiffpを形成する。第1のスイッチング・ノード対SWp3及びSWm3は、インダクタの最内側の巻きの1つから引き出される。第2のスイッチング・ノード対SWp1及びSWm1は、インダクタの中間の巻きの1つから引き出される。第3のスイッチング・ノード対SWp2及びSWm2は、インダクタの最外側の巻きの1つから引き出される。本発明によるスイッチング機能は、スイッチング・ノードの対の各々に設けられて選択的なショートカットをもたらす。ショートカットがないときには、インダクタは最も低い周波数帯域で動作する。第1のスイッチング・ノード対SWp3及びSWm3がショートカットされるときには、次に高い周波数帯域が用いられる。第2のスイッチング・ノード対SWp1及びSWm1がショートカットされるときには、さらに高い周波数帯域が用いられる。最後に、第3のスイッチング・ノード対SWp2及びSWm2がショートカットされるときには、最も高い周波数帯域が用いられる。典型的な例は、例えば2GHz、900MHz、及び450MHzなどのオクターブ規模の周波数ステップを有するマルチバンド設計ブロックである。現在存在するスイッチング・デバイスのスイッチング・ダイナミクスは比較的小さいので、非常に小さな周波数ステップは可能ではない。図28においては、2つのスイッチング・デバイスはデバイス外部に設計され、1つの例示的なスイッチング・デバイスはインダクタ・デバイス内部に設計される。
【0041】
図29に示された回路構成を用いてプログラム可能な利得増幅器(PGA)を実施することができる。AC結合された入力トランジスタQpHB1〜QpHBn、QmHB1〜QmHBn、QpLB1〜QpLBn、及びQmLB1〜QmLBnのマトリックスが、入力部LBとHBの両方に設けられる。異なる寄与を有する入力段に(バイアス電圧Vb1〜Vbnにより)バイアスを印加することによって、異なる利得コードを選択することができる。LB入力部に接続されたトランジスタのみがバイアスを印加される場合には、低利得モードが達成される。従来の「一定IM3」ギルバート・セルVGAに比べて明らかな利点は、一定のOIP3をもたらすことができる点である。
【0042】
技術の発展に伴って、本発明の構想を種々の仕方で実施できることは当業者には明白であろう。本発明及びその実施形態は、上記の実施例には限定されず、添付の特許請求の範囲内で変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】インダクタンス・ステップを有するインダクタ・デバイスの原理を示す概略図である。
【図2】図1の差動インダクタに関する簡略化されたレイアウト専用の実施の一例を示す。
【図3】本発明による別のインダクタ・デバイスの概略図を示す。
【図4】本発明による別のインダクタ・デバイスのレイアウト実施を示す。
【図5】本発明による更に別のインダクタ・デバイスの概略図を示す。
【図6】本発明による更に別のインダクタ・デバイスのレイアウト実施を示す。
【図7】分散型3nH/18nHインダクタと、2つの分離した3nH及び18nH従来型インダクタとを比較するグラフである。
【図8】NMOS及びPMOSスイッチング・デバイスのスイッチング・ダイナミクス(SD)を示す。
【図9】電流リーク型バイポーラ・スイッチ・デバイスを示す概略図である。
【図10】図9のバイポーラ・スイッチの特性を示すグラフである。
【図11】図1及び図2に示された分散インダクタに基づく負荷共振器構成のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】図1及び図2に示された分散インダクタに基づく負荷共振器構成のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】高帯域と低帯域の動作において、それぞれ異なるNMOSデバイス寸法を有する図1及び図2の理想的なインダクタのQ値への共振減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rparの影響を示す。
【図14】高帯域と低帯域の動作において、それぞれ異なるNMOSデバイス寸法を有する図1及び図2の理想的なインダクタのQ値への共振減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rparの影響を示す。
【図15】本発明による電流リーク型バイポーラ・スイッチング・デバイスを用いた別の負荷共振器構成の概略図である。
【図16】本発明による電流リーク型バイポーラ・スイッチング・デバイスを用いた別の負荷共振器構成のレイアウト実施を示す。
【図17】出力部において低コモン・モード・レベルで動作するための変換トポロジーを有する更に別の負荷共振器構成の概略図である。
【図18】出力部において低コモン・モード・レベルで動作するための変換トポロジーを有する更に別の負荷共振器構成のレイアウト実施を示す。
【図19】スイッチング機能のために入力段のトランジスタを用いる構成の概略図である。
【図20】スイッチング機能のために入力段のトランジスタを用いる構成のレイアウト実施を示す。
【図21】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタとNMOSトランジスタを用いる更なる構成を示す。
【図22】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタとNMOSトランジスタを用いる更なる構成を示す。
【図23】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタと電流リーク型バイポーラ・スイッチを用いる更なる構成を示す。
【図24】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタと電流リーク型バイポーラ・スイッチを用いる更なる構成を示す。
【図25】本発明によるマルチバンドLNAの一実施例を示す概略図である。
【図26】本発明による折畳みカスコード構成の一実施例を示すブロック図である。
【図27】分離平面インダクタを用いる分散インダクタのレイアウト実施を示す。
【図28】本発明によるマルチバンド分散インダクタのレイアウト実施の一実施例を示す。
【図29】多重利得増幅器の概略図及びレイアウト実施である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)回路に関し、具体的には、マルチバンド無線周波数(RF)動作のための集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信事業において多目的無線周波数集積回路(RFIC)を同時に多数のシステム及び周波数帯域により実施することの将来的な動向は疑いのないことである。新規の周波数割当ては、旧式の商業システム又は政府及び軍機関からの周波数帯の取得と相俟って、非常に散らばった無線インターフェースを生じる。このことは、RFICエンジンに対して複雑性とダイ面積消費を増す厳しい要件を設けることになる。多目的RFICにおいて、別々のRF信号経路の全体的な程度は高くなる可能性があり、また将来的には確実に増えるであろう。例えば、携帯電話のためのRFICは、GSM800、GSM1800、GSM1900、CDMA2000、European WCDMA、US WCDMA、WLAN、GPS、及びDVB無線インターフェースをサポートしなければならない場合がある。直接変換アーキテクチャにおいては、単一システムの種々の周波数変異は、いかなる外部部品も取り替えることなく容易に実装することができる。典型的なトランシーバ構成においては、周波数変動の要求はRFフロント・エンドに集中する。これはほぼ例外なく、システム及び周波数変異の各々に対するRFフロント・エンドの多重化と周波数スケーリングとを意味する。
【0003】
RFIC増幅器を実施するための典型的な回路構成は、例えば、RLCパラレル共振器を有する、誘導縮退型カスコード増幅器である。この差動構成は2つの差動インダクタを含み、多重信号経路が必要な場合にはそれらを多重化しなければならない。加えて、種々の共振周波数をもつ共振器は、次段へのインターフェースを多重化することによって互いに分離しなければならない。少なくとも他の信号経路は常に無効ダイ面積としてシャット・ダウンされるので、このことはマルチバンド動作を実施するためのダイ面積に効率的なやり方ではない。
【0004】
特に小規模の周波数ステップを維持するための別の従来の方法は、キャパシタ同調である。しかしながら、これはオクターブ規模の周波数同調には適さない。キャパシタ同調による固定インダクタ・デバイスを用いたオクターブ規模の周波数同調の実施は、インダクタのQ値は強い周波数依存性を有するので、共振器のQ値を低下させる。さらに、スイッチング・デバイスは理想的でないので、大規模な同調可能なキャパシタ・マトリックスの実施に問題を生じる。典型的なやり方は、小規模の内部帯域同調に対してキャパシタ同調を用いて、周波数応答を最適化する又は部品ばらつきを補償することである。
【0005】
Park他による「Variable Inductance Multilayer Inductor With MOFET Switch Control」,IEEE Electron device letters,Vol.25,No.3,March 2004,p.144−146は、3つのらせん型インダクタが垂直方向に積層され、この積層インダクタのうちの2つにはインダクタンス分散動作のための2つのパラレル接続されたMOS−FETスイッチが備えられている、可変モノリシック・インダクタを開示している。2つのスイッチがオフ状態であるときには、合計インダクタンスは近似的に各インダクタのインダクタンスの総和であり、2つのスイッチがオン状態であるときには、インダクタンスは1つのインダクタのインダクタンスである。その結果として、マルチバンドRF回路に対して、より小さなチップ面積を必要とする可変インダクタが得られる。従来技術のインダクタンス(シングル・エンド・デバイス)に伴う問題は、差動動作に用いられるスイッチが、差動信号経路に雑音を発生することである。さらに、段構造に反するレイアウト技術的な観点は、ICプロセスが一般に高性能インダクタ・デバイスを生成するのに適した低抵抗金属層を1つしか含まないことである。加えて、従来技術はなんら顕著なダイ面積の節約をもたらしてはいない。
【発明の開示】
【0006】
本発明の1つの目的は、受信機チェーンと送信機チェーンの両方のRFフロント・エンドにおけるマルチバンドRF動作のための改善された可変インダクタンスを提供することである。
【0007】
本発明の目的は、添付の独立請求項による本発明によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項において開示される。
【0008】
本発明は、そのインダクタンスがより小さなインダクタ部分に実質的に分散されているモノリシック平面インダクタの特定の位置に、スイッチング可能な対称的ショートカットを設けることに基づく。より小さなインダクタ部分は、インダクタを差動インダクタ・デバイスとして機能させるカスコード構成様式で設けられる。この構成においては、(電気的に)中間のインダクタ部分の間の中間ノードはコモン・モード・ポイントを形成し、(電気的に)外側のインダクタ部分の外側端は差動インダクタの差動モード出力部を形成する。インダクタ部分のうちの幾つかは、1つ又はそれ以上の高無線周波数帯域での動作のための1つ又はそれ以上のステップにおいて、コモン・ポイントに関して対称的にバイパス即ちショートカットされるように配置される。スイッチング可能な対称的ショートカットにより、制御可能なインダクタンス・ステップを設けることが可能である。コモン・モード信号は、制御された状態に関わりなく、同じインダクタンスの影響を受ける。
【0009】
本発明によるインダクタ・デバイスは、RFフロント・エンドにおいて最も面積を消費する部分である受動インダクタ・デバイスを単一で全ての種々異なる周波数帯域に対して使用できるようにすることによって、これらの全ての種々異なる周波数帯域をカバーするのに必要な種々異なる信号経路の量を著しく減らすことができる。このようにして、RFICチップは使用されない周波数共振器の全く使用されないインダクタ・デバイスを何も含まず、全ての大面積のインダクタは少なくとも部分的に使用される。さらに、本発明による差動分散インダクタにおいては、バイパス・スイッチによって生じる雑音はコモン・モードの雑音であり、従って、インダクタの差動出力には現れない。これは、MOSFETスイッチが電流経路上にあって、スイッチによって生じた雑音エネルギーが全て信号経路に重畳される、従来技術の積層インダクタに比べて有利な点である。本発明による差動分散インダクタは複数の既存の回路設計に直接に適用可能であるが、一方従来技術の積層インダクタは、個々の可変インダクタとしては良好に動作することができても、ダイ面積を著しく節約しつつ性能を顕著に低減させることのない種々の回路設計に導入するには問題をはらんでいる。
【0010】
オクターブ規模のマルチバンド用途においては、共振器のダイ面積は、実際にはほぼ二分割することができる。また、マルチバンド動作において、共振器ノードにおける多重インターフェースを避けることもできる。縮退用途においては、GSM850・GSM1800及びGSM900・GSM1900システムのような異なる無線システムのための共通分散インダクタ・デバイスを実施することができる。加えて、必要であれば、異なる周波数変異/システムの入力段を組み合わせることができる。本発明はまた、共振器におけると同じ様式で折畳みカスコード・トポロジーに用いて、広帯域動作を改善することができる。折畳みカスコード・トポロジーにおいては、折畳みインダクタのQ値要件は非常に低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下で、本発明は、添付の図面を参照しながら例示的な実施形態により詳細に説明される。
【0012】
図1には、本発明の基本的な考えが一実施例により示される。モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。隣接したインダクタ部分L21及びL22の間のノードCMはインダクタ・デバイスのコモン・モード・ポイントであり、典型的には信号接地(例えば供給電圧VCC又は接地)に接続される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部であり、例えば、デバイス自体と次段のデバイス(例えばミキサの入力段)とのインターフェースにある増幅デバイスの出力ノードである。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWp、及び、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmは、ノードSWpとノードSWmの間に接続されたショートカット又はバイパス・スイッチング・デバイスS1によって、ショートカット・スイッチング機能が実施されるノードである。図1に示されるインダクタ構成の一般的な機能性を以下に提示する。
【0013】
開放スイッチ構成
スイッチ・デバイスS1が開放されたままであるとき、インダクタは、インダクタンス部分L11、L21、L22、及びL12のカスケードを形成して、通常のインダクタ・デバイスと非常によく似た働きをする。唯一の欠点は、スイッチ・デバイスS1と可能性のあるデバイス外の配線とによって生じる寄生容量である。これらの寄生容量は、例えばスイッチとしてMOSトランジスタが用いられるときに著しいものとなる可能性がある。これは、インダクタのQ値を低下させる。しかしながら実際には、開放スイッチ動作においては、デバイスはより低い周波数において動作することが意図されており、従って、寄生容量の大きさは、より低い動作周波数に応じてより高くなる可能性がある。
【0014】
ショートカット構成
スイッチ・デバイスS1がノードSWp及びSWmをショートカットする(差動界/回路から中間インダクタ部分L21及びL22をバイパスする)場合には、出力ノードOutp及びOutmは、少なくとも理想的な条件において、インダクタ部分L12及びL11のみを見込む。この構成は、より高い帯域での動作を実施するのに用いることができる。スイッチ・デバイスS1の寄生抵抗はインダクタのQ値を著しく低下させる。同様に、インダクタ部分L21及びL22は、相互インダクタンスM12による負荷として働く。この構成においては、コモン・モード経路は、開放構成と同等であり、DC経路は依然としてインダクタ部分L21及びL22を通して働く。
【0015】
図2には、図1の差動インダクタに関する簡略化されたレイアウト専用の実施の一例が示される。実施例のいずれにおいても、基板への散逸(渦電流)に対するシールド構造体は示されない。
【0016】
図2において、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン21と左回り螺旋状金属ライン22とから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。ライン21及び22の反対側端は、それぞれ差動出力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン21及び22は、別の(下層の)金属層への貫通接続部を備える金属交差部23によって互いの内部に互い違いに配置される。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、他の金属層内の金属ライン24及び25への貫通接続部によって設けられる。ノードOutp、Outm、SWp、SWm、及びCMへの接続は、同じ層内で、又は、特にスイッチがインダクタ・デバイスの内部に設置できる場合には他の層又は複数層内で、種々の異なる方式で形成できることを理解されたい。これらの種々の方式の実施例は、下記の本発明の他の実施形態の説明においても示されることになる。インダクタの一般的な形状は任意の適切なものとすることができる。典型的には、インダクタは円形、又は本明細書の実施例に示される八角形などの多角形である。
【0017】
図3及び図4には、下層の金属層がスイッチング接触部配線に用いられない場合の図1及び図2の変形が示される。これは、例えば入力段の縮退に適すると見ることができる。この実施例においては、モノリシック平面インダクタは6つの小さなインダクタ部分L31、L11、L21、L22、L11、及びL31に分散される。隣接するインダクタ部分L21とL22の間のノードCMは、インダクタ・デバイスのコモン・モード・ポイントであり、典型的には信号接地(例えば供給電圧VCC又は接地)に接続される。インダクタ部分L32及びL31の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部であり、例えば、デバイス自体と次段のデバイス(例えばミキサの入力段)のインターフェースにある増幅デバイスの出力ノードである。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間にあるノードSWp、及び中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間にあるノードSWmは、ノードSWpとノードSWmの間に接続されたショートカット又はバイパス・スイッチング・デバイスS1によって、ショートカット・スイッチング機能が実施されるノードである。ここでも、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン31と左回り螺旋状金属ライン32とから形成され、これらラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。ライン31及び32の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン31及び32は、別の(下層の)金属層への貫通接続部を備える金属交差部33によって互いの内部に互い違いに配置される。コモン・モード・ノードCMへの接続は、下層の金属層内の金属ライン34への貫通接続部によって設けられる。
【0018】
やはり同じ基本的な考えに基づくさらに異なった構造体が、図5及び図6に示される。図5の概略図は、図3のそれと同一である。図6に示されるレイアウトにおいては、やはりモノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン61と左回り螺旋状金属ライン62とから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて中間ノード、即ちコモン・モード・ノードCMを形成する。しかしながら、ここでは、コモン・モード・ノードCMは、インダクタの最外側の巻き部分に形成され、出力部Outp及びOutmは金属ライン61及び62の内側端に形成されるが、これらは貫通接続部と下層の金属層内の金属ライン63及び64により、インダクタの外部に接続される。ライン61及び62の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。金属ライン61及び62の巻きは2つの群に配置され、3つの最外側の巻きが第1の群を形成し、4つの最内側の巻きが第2の群を形成する。群の間の間隔は、各群内の巻きの間の間隔より大きい。これに対応して、インダクタ部分L21、L22とL31、L32との間の相互インダクタンスM12は、より小さくなる。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、第1の外側群の最内側の巻き部分に形成される。その結果として、スイッチS1が開放スイッチ構成にあるときには、インダクタはインダクタンス部分L31、L11、L21、L22、L12及びL32のカスケードとなり、低帯域(LB)動作に好適である。ショートカットされた構成においては、スイッチ・デバイスS1はノードSWp及びSWmをショートカットし(インダクタ部分L21及びL22をバイパスし)、出力ノードOutp及びOutmは、少なくとも理想的な条件においては、インダクタ部分L31、L22、L21及びL11のカスケードのみを見込むことになる。この構成は、改善された高帯域(HB)動作を実施するのに用いることができる。この場合、自己共振周波数の増加と外側インダクタによる内側インダクタへの負荷の減少(より小さなM12)とによる、高帯域インダクタ(HB)のQ値の改善が得られる。さらに、高帯域インダクタは干渉技術の観点から見て実質的により小さくなる。システム・オン・チップの概念においては、高帯域(HB)は、低帯域よりも、より問題のある干渉環境を含むことは極めて明白である。不利な点は、低帯域(LB)インダクタのQ値が僅かに減ることと、ダイ面積消費が増すことである。
【0019】
図7は、分散型3nH/18nHインダクタと、2つの分離した3nH及び18nHの従来型インダクタとの比較を示す。従来型インダクタはベンダによって提供された要素モデルであり、分散インダクタは基板シールドなしのMomentumでシミュレートされたものである。
【0020】
本発明による分散インダクタ・デバイスに用いるのに適したスイッチング機能S1の実施例が以下に与えられるが、本発明をこれらの実施例に限定する意図はない。1つのアプローチは、コモン・モード電圧レベルに応じてNMOS又はPMOSスイッチを用いて実施することができるCMOSスイッチング機能である。典型的な実施においては、NMOSスイッチは縮退部に用いられ、PMOSスイッチは共振器に用いられるが、例えば折畳みカスコード・トポロジーはこの予備的な実施を取り除く。
【0021】
標準的なBiCMOSプロセスからの1000μm/0.35μmのNMOS及びPMOSデバイスのスイッチング・ダイナミクス(SD)が図8に示される。予想されるように、開放スイッチ状態(ZOFF又は実際にはCOFF)は、単に寸法中心の量であり、従って、ほぼデバイスに依存しない結果をもたらしている。ショートカット状態(ZON又は実際にはRON)は、p型及びn型トランジスタの移動度に関する結果を与える。マルチバンド動作においては、関心ある周波数帯域は、異なるスイッチング状態において同じ周波数にはないことに留意されたい。このことは明らかに、図8において斜線で示されているように(SD NMOS及びSD PMOS)、スイッチング・ダイナミクスの有効範囲を広げる。この例示的な場合においては、デュアルバンド動作は、850MHzから1950MHzのWCDMA EU帯域までのオクターブ規模の周波数ステップを目的としている。
【0022】
別のアプローチは、バイポーラ・スイッチング機能である。CMOSデバイスの寸法は、高帯域のインダクタのQ値を劣化させないように十分なRONを達成するためには大きくなる。このことは寄生容量COFFの増加を引き起こし、従って、高周波数での動作を困難にする。バイポーラ・デバイスは、著しく小さなデバイス・サイズ従って寄生容量COFFにより、適度に低いRONを維持するように用いることができる。特に高周波数での特別な目的において、より高いスイッチング・ダイナミクスを維持するために、新規なスイッチング・デバイスが開発される。
【0023】
図9には、この特定の電流リーク型バイポーラ・スイッチ・デバイスが示される。これは、コモン・ベースのトランジスタQ1及びQ2を備える。Q1及びQ2のベースは共通のバイアス電圧Vbiasに接続され、それらのコレクタは、例えば供給電圧VCCに接続される。エミッタは分散インダクタのスイッチング・ノードSWp及びSWmに接続される。ショートカット状態では、このデバイスは、デバイスを通してリークする一定のゼロ入力電流を伴う一定動作点を必要とすることに留意されたい。このデバイスの理解できる不利な点は、電圧ヘッドルームの損失又は追加の電流消費である。デバイスが信号経路に直列に接続される場合には、電圧ヘッドルームが減少する。信号経路に並列に接続される場合には、電流消費が増加する。
【0024】
図9のBJTスイッチング・デバイスの導入は簡単である。動作点にバイアスされる場合、入力インピーダンス(RON)は、
【数1】
と与えることができ、ここでZinは、コレクタ及びベース・ノードをショートカットした差動カスコード構成(コモン・ベース)の入力インピーダンス(エミッタのインピーダンス)であり、gmはバイポーラ・デバイスの相互コンダクタンスであり、kはボルツマン定数であり、Tはケルビン単位の温度であり、qは電子電荷であり、ICはデバイスの動作点におけるコレクタ電流である。開放状態(IC=0)では、デバイスの入力インピーダンスはトランジスタの寄生容量によって定められるが、これは小面積のデバイスに対しては無視できる。性能上の有利な点は、主として、開放状態の最大化された高周波アイソレーションにある。
【0025】
図10には、動作点IC=10mAにおけるバイポーラ・スイッチの特性が示される。対応するCMOSスイッチの結果は周波数範囲[0.5GHz〜5.0GHz]の下側左隅に斜線マークで示される。認められるように、スイッチング・ダイナミクスの特に高端部が著しく高く、又同じく、広帯域の動作が明らかに改善されている。マークA及びBは、2GHzの周波数におけるNMOS(A)及びPMOS(B)スイッチのスイッチング・ダイナミクスを表す。BJTスイッチは、11GHz(A)と20GHz(B)の周波数において、同じ性能の結果を示している。
【0026】
第3のアプローチは、分離スイッチングである。分離設計においては、スイッチは、ピン・ダイオード・スイッチ、FETベースのスイッチ、電気機械式スイッチ、又は機械式スイッチなどの種々異なる市販の代替物を用いて実施することができる。この場合には、標準的な分離型インダクタが使用できる。また、例えばデュアル・トランジスタ・チップを有する上記BJTスイッチの分離型も可能である。
【0027】
これより、幾つかの用途における本発明による分散型のスイッチング可能なインダクタを検討する。典型的なRF設計ブロックの負荷共振器は、本発明の最も重要な用途分野である。インダクタ面積は比較的大きく、従って、本発明により、大きなダイ面積を節約することができる。また、異なるブロック間で避けられる内部インターフェースは、有意のものであることが分かる。下記において、NMOS若しくはPMOSスイッチ、或いは異なるHBT構成を用いて、より低い又はより高いコモン・モード電圧レベルで動作する負荷共振器に適した種々様々なトポロジーを説明する。
【0028】
1つの好ましい共振器構成は、PMOS又はNMOSスイッチングによる図1及び図2に示された分散インダクタとすることができる。この構成は、より高い動作電圧(VCC⇒PMOS)又はより低い動作電圧(gnd⇒NMOS)に接続された従来の負荷共振器に適する。インダクタがより低い動作電圧に接続できる場合には、好ましいスイッチング・ダイナミクスを有するNMOSスイッチング・デバイスを用いることができる。
【0029】
図11及び図12には、このような共振器構成に関連するシミュレーション結果が示される。図11は、閉じたNMOSデバイス[400〜2000μm]/0.35μm及び理想的なショートカットを用いた高帯域(HB)状態に対するインダクタンス及びQ値のシミュレーションを示す。図12は開放されたNMOSデバイス[400〜2000mm]/0.35mm及び開放構成を用いた低帯域(LB)状態に対するインダクタンス及びQ値のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは基板シールドを除外したものである。使用したスイッチング・デバイスは、旧式の0.35μmトランジスタ長を有し、並のスイッチング・ダイナミクスのみを有するNMOSトランジスタである。2GHzにおいて3nHの理想的なインダクタのQ値に対する共振器減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rpar(インダクタ及びスイッチング・デバイス)の影響が図13及び図14に示される。減衰抵抗の関連する値は数百オームであり、示される実施例においては100オーム未満である。このことは、多くの設計ブロックにおける共振器Q値に対する極めて低い要件(Q<10)を示す。
【0030】
特に高周波数動作に適した別の負荷共振器関連の構成が図15及び図16に示される。本発明の基本的な考えにより、モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部である。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpHBと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとの間には、図9によるバイポーラ・スイッチが接続され、トランジスタQ1及びQ2が電圧Vb2によってスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。加えて、図9による同様のスイッチング機能が、中間インダクタ部分L21及びL22の反対側端のノード、SWpLB及びノードSWmLBの間に接続される。高周波数動作においては、Q1及びQ2が電圧Vb2によってスイッチ・オンされるときトランジスタQ3及びQ4はスイッチ・オフされ、逆の場合も同様である。トランジスタの対にバイアスが印加されると、差動エミッタ・インピーダンスは1/gmに等しくなり、ショートカットされ、一方他のトランジスタの対においては寄生容量に等しくなる、即ち開放状態となる。示された構成はより高い動作電圧において電圧ヘッドルームの減少を伴って動作するのに適している。例示的なレイアウトは図16に示される。モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン161と左回り螺旋状金属ライン162とから形成され、これらラインはそれらの一端であるノードSWpLB及びSWmLBにおいてQ3及びQ4のエミッタに相互接続される。ライン161及び162の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。スイッチング・ノードSWpHB及びSWmHBは、それぞれQ1及びQ2のエミッタに接続される。
【0031】
より低いコモン・モード・レベルに適した変換トポロジーが図17及び図18に示される。本発明の基本的な考えにより、モノリシック平面インダクタのインダクタンスは、より小さなインダクタ部分L11、L21、L22、及びL12に分散される。コモン・モード・ノードCMは、接地に接続される。インダクタ部分L12及びL11の外側端にあるノードOutm及びOutpは差動出力部である。中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとの間に、図9によるバイポーラ・スイッチング・デバイスが接続され、トランジスタQ1及びQ2が電圧Vbによってスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。このトポロジーはスイッチング・デバイスのための追加の電流経路を有する。図18に示された例示的なレイアウトにおいては、モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状金属ライン181と左回り螺旋状金属ライン182とから形成され、これらラインはそれらの一端であるCMにおいて接地に接続される。ライン181及び182の反対側端は、それぞれ差動出力/入力部Outm及びOutpを形成する。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、それぞれQ1及びQ2のエミッタに接続される。
【0032】
第2の用途分野は、例えば入力段の誘導縮退などの、相互コンダクタンスgm段のためのスイッチング可能なインダクタ構成にある。この状況においては、NPN型の入力トランジスタを用いることができるが、PNP、NMOS、又はPMOSなどの他の型もまた可能である。下記において、NMOS若しくはPMOSスイッチ、或いは異なるHBT構成を用いて、より低い又はより高いコモン・モード電圧レベルで動作する誘導縮退した入力段に適した種々様々なトポロジーを説明する。n型実施からp型実施への変換は可能である。
【0033】
図19及び図20は、高周波数(HB)及び低周波数(LB)入力段のトランジスタ自体がスイッチング機能に用いられる実施例を示す。HB入力トランジスタQPHB及びQMHBのエミッタは、それぞれ、中間インダクタ部分L22と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpHBと、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmHBとに接続され、入力部HB INM及びHB INPに高周波数(HB)動作をもたらす。インダクタとHB入力段の差動HB出力は、QPHB及びQMHBのコレクタから得られる。同様に、トランジスタQPLB及びQMLBは、スイッチング・ノードSWpLB及びSWmLB(出力部Outp及びOutm)に接続されて、入力部LB INM及びLB INPにLB動作をもたらす。インダクタとLB入力段の差動LB出力は、QPLB及びQMLBのコレクタから得られる。図20に示されたレイアウトは、図19を参照して説明されたスイッチング機能をもたらすために2つの入力トランジスタ段が用いられており、分離したスイッチを必要としない点を除いて、図18のレイアウトと同じである。
【0034】
図21及び図22は、入力段の入力トランジスタQP及びQMのエミッタが、それぞれインダクタ部分L11及びL12の外側端子に接続された、さらに進んだ実施例を示す。インダクタと入力トランジスタの差動出力は、コレクタから得られる。スイッチング機能は、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L11の間のノードSWpに接続された1つの主電極と、中間インダクタ部分L21と外側インダクタ部分L12の間のノードSWmに接続された他の主電極と、を有するNMOSトランジスタによってもたらされ、NMOSトランジスタが制御入力SWによりスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。この構成においては、同一の入力段を再利用する可能性を考えることができる。図21に示されたレイアウトは、上述のインダクタに対して図20の概略を直接に適用したものである。
【0035】
図23及び図24は、入力段の入力トランジスタQP及びQMのエミッタが、それぞれインダクタ部分L11及びL12の外側端子に接続された、さらに進んだ実施例を示す。インダクタと入力トランジスタの差動出力は、コレクタから得られる。スイッチング機能は、ノードSWpとノードSWmの間に接続された電流リーク型スイッチQ1、Q2によってもたらされ、電流リーク型スイッチが制御入力電圧Vbによりスイッチ・オンされるとき、高周波数(HB)動作のためのショートカットをもたらす。この構成においても、同一の入力段を再利用する可能性を考えることができる。図24に示されたレイアウトは、上述のインダクタに対して図23の概略を直接に適用したものである。
【0036】
マルチバンド動作の教示的な実施例が以下に示される。図25には、本発明による、850MHz帯域及びEU WCDMA帯域における動作を維持するためのマルチバンドLNAが示される。このLNAは、基盤事業における二次的LNAを目的とするものである。デュアルバンドLNAのインダクタ251と入力段252は、図20に示された構成のものと同じ構造及び動作を有する構成をもたらす。モノリシック平面インダクタL1は、右回り螺旋状金属ラインと左回り螺旋状金属ラインとから形成され、これらラインはそれらの一端CMにおいて接地に接続される。金属ラインの反対側端のSWpLB及びSWmLBは、それぞれ低帯域(LB)入力トランジスタQpLB及びQmLBのエミッタに接続される。インダクタとLB入力段の差動LB出力は、QPLB及びQMLBのコレクタから得られる。HB入力トランジスタQPHB及びQMHBのエミッタは、スイッチング・ノードSWpHBに接続される。インダクタとHB入力段の差動HB出力は、QPHB及びQMHBのコレクタから得られる。換言すれば、入力トランジスタは、自立的に自己スイッチングするデュアルバンドの誘導性縮退が得られるようなスイッチング機能を与えるために用いられる。
【0037】
入力トランジスタQpLB、QmLB、QPHB、及びQMHBのコレクタは、デュアルバンドLNAのカスコード段253に接続される。カスコード段253からの出力は、広い動作帯域幅を有するミキサなどの、信号経路内の次のデバイスの入力段254に接続される。デバイス254の入力部には、本発明の原理による分散インダクタL及びPMOSスイッチ255を用いて、共振器のデュアルバンド・インダクタが設けられる。モノリシック平面インダクタLは、右回り螺旋状金属ラインと左回り螺旋状金属ラインとから形成され、これらのラインはそれらの一端において相互接続されて、接地に接続されるコモン・コードCMを形成する。金属ラインの反対側端は、段254の入力部に接続される差動出力部を形成する。スイッチング・ノードSWp及びSWmは、インダクタの反対側にある外側から2番目の巻き部分に接続される。CMOSスイッチング機能255は、PMOSスイッチ255を用いて実施することができる。
【0038】
本発明はまた、共振器におけると同様の仕方で折畳みカスコード・トポロジーの形式で用いて、広帯域動作を改善することができる。種々異なる折畳みカスコード構成により、完全にn型又はp型のスイッチング・デバイスを用いることができる。図26には、種々のRF設計ブロックに適した折畳みカスコード・トポロジーが示される。入力電圧VINは、n型入力段261に入力される。入力段261からの出力電流Igmは、折畳みインピーダンス262に印加され、さらに、カスコード段263の入力部に印加される。折畳みインピーダンス262は、任意のトランジスタを有する活性デバイス、又は受動デバイス(R、L、RC、RL、又はRLCネットワーク)を用いて実施することができる。信号の折畳みは、この場合には、接地電位に関して実施されるが、任意の他の電位に関しても実施することができる。カスコード段263の出力部にはn型スイッチング・デバイスを有する分散インダクタが設けられ、出力電圧VOUTを生成する。この場合には、折畳みカスコード・トポロジーは、より良好なスイッチング・ダイナミクスを有するn型スイッチング・デバイスを可能にする。
【0039】
本発明による分散インダクタ・デバイスはまた、「分離したインダクタ」によって実施することができ、その結果、分散インダクタ・デバイスのかなり複雑なモデリングを避けることができる。このような分散インダクタ・デバイスの実施例が図27に示される。このデバイスは、2つの実質的に分離した平面インダクタ部分を備え、ここで第1のインダクタ区域271は、右回り螺旋状金属ライン272と左回り螺旋状金属ライン273とから形成され、これらラインはそれらの一端CMにおいて接地に接続されて、中間インダクタ部分L21とL22を形成する。金属ライン272及び273の反対側端は、それぞれスイッチング・ノードSWm及びSWpを形成する。第2のインダクタ部分274は、右回り螺旋状金属ライン275と左回り螺旋状金属ライン276とから形成され、これらのラインはそれらの内側端においてスイッチング・ノードSWm及びSWpに接続される。ライン275及び276の外側端は、差動インダクタの差動出力部Diffm及びDiffpを形成する。この状況においては、ベンダからの標準的なライブラリ・モデルを直接用いることができる。明らかに不利な点は、著しく増加するダイ面積消費であるが、それでもなお、マルチバンド動作に対して単一のインターフェースを与える。
【0040】
本発明の種々の実施形態に関して上述された実施例は、デュアルバンド・インダクタであるが、マルチバンド・インダクタもまた可能である。非常に直接的な実施は、例えば、図28に示されたような形式で、多重インダクタ・ステップを設けることである。再び、2つの螺旋状金属ライン281及び282が、それらの第1の端部がコモン・モード・ノードCMに接続されるように設けられる。ライン281及び282の外側端は、差動インダクタの差動出力部Diffm及びDiffpを形成する。第1のスイッチング・ノード対SWp3及びSWm3は、インダクタの最内側の巻きの1つから引き出される。第2のスイッチング・ノード対SWp1及びSWm1は、インダクタの中間の巻きの1つから引き出される。第3のスイッチング・ノード対SWp2及びSWm2は、インダクタの最外側の巻きの1つから引き出される。本発明によるスイッチング機能は、スイッチング・ノードの対の各々に設けられて選択的なショートカットをもたらす。ショートカットがないときには、インダクタは最も低い周波数帯域で動作する。第1のスイッチング・ノード対SWp3及びSWm3がショートカットされるときには、次に高い周波数帯域が用いられる。第2のスイッチング・ノード対SWp1及びSWm1がショートカットされるときには、さらに高い周波数帯域が用いられる。最後に、第3のスイッチング・ノード対SWp2及びSWm2がショートカットされるときには、最も高い周波数帯域が用いられる。典型的な例は、例えば2GHz、900MHz、及び450MHzなどのオクターブ規模の周波数ステップを有するマルチバンド設計ブロックである。現在存在するスイッチング・デバイスのスイッチング・ダイナミクスは比較的小さいので、非常に小さな周波数ステップは可能ではない。図28においては、2つのスイッチング・デバイスはデバイス外部に設計され、1つの例示的なスイッチング・デバイスはインダクタ・デバイス内部に設計される。
【0041】
図29に示された回路構成を用いてプログラム可能な利得増幅器(PGA)を実施することができる。AC結合された入力トランジスタQpHB1〜QpHBn、QmHB1〜QmHBn、QpLB1〜QpLBn、及びQmLB1〜QmLBnのマトリックスが、入力部LBとHBの両方に設けられる。異なる寄与を有する入力段に(バイアス電圧Vb1〜Vbnにより)バイアスを印加することによって、異なる利得コードを選択することができる。LB入力部に接続されたトランジスタのみがバイアスを印加される場合には、低利得モードが達成される。従来の「一定IM3」ギルバート・セルVGAに比べて明らかな利点は、一定のOIP3をもたらすことができる点である。
【0042】
技術の発展に伴って、本発明の構想を種々の仕方で実施できることは当業者には明白であろう。本発明及びその実施形態は、上記の実施例には限定されず、添付の特許請求の範囲内で変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】インダクタンス・ステップを有するインダクタ・デバイスの原理を示す概略図である。
【図2】図1の差動インダクタに関する簡略化されたレイアウト専用の実施の一例を示す。
【図3】本発明による別のインダクタ・デバイスの概略図を示す。
【図4】本発明による別のインダクタ・デバイスのレイアウト実施を示す。
【図5】本発明による更に別のインダクタ・デバイスの概略図を示す。
【図6】本発明による更に別のインダクタ・デバイスのレイアウト実施を示す。
【図7】分散型3nH/18nHインダクタと、2つの分離した3nH及び18nH従来型インダクタとを比較するグラフである。
【図8】NMOS及びPMOSスイッチング・デバイスのスイッチング・ダイナミクス(SD)を示す。
【図9】電流リーク型バイポーラ・スイッチ・デバイスを示す概略図である。
【図10】図9のバイポーラ・スイッチの特性を示すグラフである。
【図11】図1及び図2に示された分散インダクタに基づく負荷共振器構成のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】図1及び図2に示された分散インダクタに基づく負荷共振器構成のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】高帯域と低帯域の動作において、それぞれ異なるNMOSデバイス寸法を有する図1及び図2の理想的なインダクタのQ値への共振減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rparの影響を示す。
【図14】高帯域と低帯域の動作において、それぞれ異なるNMOSデバイス寸法を有する図1及び図2の理想的なインダクタのQ値への共振減衰抵抗Rres及び寄生抵抗Rparの影響を示す。
【図15】本発明による電流リーク型バイポーラ・スイッチング・デバイスを用いた別の負荷共振器構成の概略図である。
【図16】本発明による電流リーク型バイポーラ・スイッチング・デバイスを用いた別の負荷共振器構成のレイアウト実施を示す。
【図17】出力部において低コモン・モード・レベルで動作するための変換トポロジーを有する更に別の負荷共振器構成の概略図である。
【図18】出力部において低コモン・モード・レベルで動作するための変換トポロジーを有する更に別の負荷共振器構成のレイアウト実施を示す。
【図19】スイッチング機能のために入力段のトランジスタを用いる構成の概略図である。
【図20】スイッチング機能のために入力段のトランジスタを用いる構成のレイアウト実施を示す。
【図21】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタとNMOSトランジスタを用いる更なる構成を示す。
【図22】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタとNMOSトランジスタを用いる更なる構成を示す。
【図23】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタと電流リーク型バイポーラ・スイッチを用いる更なる構成を示す。
【図24】スイッチング機能のために入力段の入力トランジスタと電流リーク型バイポーラ・スイッチを用いる更なる構成を示す。
【図25】本発明によるマルチバンドLNAの一実施例を示す概略図である。
【図26】本発明による折畳みカスコード構成の一実施例を示すブロック図である。
【図27】分離平面インダクタを用いる分散インダクタのレイアウト実施を示す。
【図28】本発明によるマルチバンド分散インダクタのレイアウト実施の一実施例を示す。
【図29】多重利得増幅器の概略図及びレイアウト実施である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)におけるマルチバンド動作のためのモノリシック・インダクタ・デバイスであって、
モノリシック平面インダクタであって、前記インダクタを差動インダクタ・デバイスとして機能させるカスコード構成における4つ又はそれ以上のより小さなインダクタ部分に分散されており、中間インダクタ部分の第1の端部の間にある中間ノードがコモン・モード・ポイントを形成し、外側インダクタ部分の外側端部が前記差動インダクタの差動モード出力部を形成し、少なくとも低周波数帯域において動作することを特徴とするモノリシック平面インダクタと、
1つ又はそれ以上のより高い無線周波数帯域における動作のために、前記インダクタ部分のうちの幾つかを、1つ又はそれ以上のステップにおける前記コモン・モード・ポイントに関して対称的にバイパスする手段と、
を備えることを特徴とするモノリシック・インダクタ・デバイス。
【請求項2】
前記手段は、前記中間インダクタ部分の第2の端部の間に接続されたスイッチ手段を備え、高無線周波数帯域における動作のためには前記中間インダクタ部分をバイパスし、低周波数帯域における動作のためには前記中間インダクタ部分を通る信号経路を与えることを特徴とする、請求項1に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項3】
前記モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状導電性ライン及び左回り螺旋状導電性ラインから形成され、これらのラインは互いの内部に交互に配置され、それらの一方の端部で相互接続されて中間ノードを形成し、反対側の端部は差動出力部を形成することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項4】
前記モノリシック平面インダクタの前記部分は、2つ又はそれ以上の実質的に分離した平面インダクタ区域をカスコード構成の形式で含み、各々の区域は右回り螺旋状導電性ライン及び左回り螺旋状導電性ラインで形成されることを特徴とする、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項5】
前記中間インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最内側の1巻き又は複数巻きによって形成され、前記外側インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最外側の1巻き又は複数巻きによって形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項6】
前記中間インダクタ部分は前記平面インダクタの最外側の1巻き又は複数巻きによって形成され、前記外側インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最内側の1巻き又は複数巻きによって形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項7】
前記中間インダクタ部分の前記最内側の巻きと、前記外側インダクタ部分の前記最外側の巻きとの間の間隔は広くされることを特徴とする、請求項6に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項8】
前記手段は、相補型金属オン・シリコン(CMOS)トランジスタ・スイッチ、バイポーラ・トランジスタ・スイッチ、分離スイッチ、ピン・ダイオード・ベースのスイッチ、電界効果トランジスタ(FET)ベースのスイッチ、電気機械式スイッチ、機械式スイッチのうちの1つ又はそれ以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項9】
前記手段は電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項10】
前記手段は、第1の電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチを含み、前記インダクタ・デバイスは、前記中間部分の間のコモン・ノードにおいて第2の電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチをさらに含むことを特徴とする、共振器回路のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項11】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段のトランジスタと、前記中間インダクタ部分の相互接続ノードと次の外側インダクタ部分の相互接続ノードとの間に接続された高周波数入力段のトランジスタと、を含むことを特徴とする、低周波数入力段及び高周波数入力段のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項12】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段のトランジスタと、前記中間インダクタ部分と次の外側インダクタ部分の相互接続ノードに接続された金属オン・シリコン(MOS)又は電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチと、を含むことを特徴とする、マルチバンド入力段のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項13】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段の独立に制御されるトランジスタのマトリックスと、前記中間インダクタ部分と次の外側インダクタ部分の相互接続ノードに接続された高周波数入力段の独立に制御されるトランジスタのマトリックスと、を含むことを特徴とする、プログラム可能な利得増幅器のための、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項14】
前記平面インダクタは、カスコード構成における6つ又はそれ以上のより小さなインダクタ部分に分散され、前記手段は、前記インダクタ部分の各々の相互接続ノードに接続され、前記インダクタ部分を選択的にバイパスしてマルチバンド動作のための複数のインダクタ・ステップをもたらすことを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とする負荷共振器回路。
【請求項16】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とするマルチバンド低雑音増幅器。
【請求項17】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とする縮退入力段。
【請求項18】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とするプログラム可能な利得増幅器。
【請求項19】
入力段と、折畳みインダクタンスと、カスコード段と、前記カスコード段の出力部における請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタと、を備えることを特徴とする折畳みカスコード回路。
【請求項1】
無線周波数(RF)におけるマルチバンド動作のためのモノリシック・インダクタ・デバイスであって、
モノリシック平面インダクタであって、前記インダクタを差動インダクタ・デバイスとして機能させるカスコード構成における4つ又はそれ以上のより小さなインダクタ部分に分散されており、中間インダクタ部分の第1の端部の間にある中間ノードがコモン・モード・ポイントを形成し、外側インダクタ部分の外側端部が前記差動インダクタの差動モード出力部を形成し、少なくとも低周波数帯域において動作することを特徴とするモノリシック平面インダクタと、
1つ又はそれ以上のより高い無線周波数帯域における動作のために、前記インダクタ部分のうちの幾つかを、1つ又はそれ以上のステップにおける前記コモン・モード・ポイントに関して対称的にバイパスする手段と、
を備えることを特徴とするモノリシック・インダクタ・デバイス。
【請求項2】
前記手段は、前記中間インダクタ部分の第2の端部の間に接続されたスイッチ手段を備え、高無線周波数帯域における動作のためには前記中間インダクタ部分をバイパスし、低周波数帯域における動作のためには前記中間インダクタ部分を通る信号経路を与えることを特徴とする、請求項1に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項3】
前記モノリシック平面インダクタは、右回り螺旋状導電性ライン及び左回り螺旋状導電性ラインから形成され、これらのラインは互いの内部に交互に配置され、それらの一方の端部で相互接続されて中間ノードを形成し、反対側の端部は差動出力部を形成することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項4】
前記モノリシック平面インダクタの前記部分は、2つ又はそれ以上の実質的に分離した平面インダクタ区域をカスコード構成の形式で含み、各々の区域は右回り螺旋状導電性ライン及び左回り螺旋状導電性ラインで形成されることを特徴とする、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項5】
前記中間インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最内側の1巻き又は複数巻きによって形成され、前記外側インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最外側の1巻き又は複数巻きによって形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項6】
前記中間インダクタ部分は前記平面インダクタの最外側の1巻き又は複数巻きによって形成され、前記外側インダクタ部分は前記螺旋状導電性ラインの最内側の1巻き又は複数巻きによって形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項7】
前記中間インダクタ部分の前記最内側の巻きと、前記外側インダクタ部分の前記最外側の巻きとの間の間隔は広くされることを特徴とする、請求項6に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項8】
前記手段は、相補型金属オン・シリコン(CMOS)トランジスタ・スイッチ、バイポーラ・トランジスタ・スイッチ、分離スイッチ、ピン・ダイオード・ベースのスイッチ、電界効果トランジスタ(FET)ベースのスイッチ、電気機械式スイッチ、機械式スイッチのうちの1つ又はそれ以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項9】
前記手段は電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項10】
前記手段は、第1の電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチを含み、前記インダクタ・デバイスは、前記中間部分の間のコモン・ノードにおいて第2の電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチをさらに含むことを特徴とする、共振器回路のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項11】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段のトランジスタと、前記中間インダクタ部分の相互接続ノードと次の外側インダクタ部分の相互接続ノードとの間に接続された高周波数入力段のトランジスタと、を含むことを特徴とする、低周波数入力段及び高周波数入力段のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項12】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段のトランジスタと、前記中間インダクタ部分と次の外側インダクタ部分の相互接続ノードに接続された金属オン・シリコン(MOS)又は電流リーク型バイポーラ・トランジスタ・スイッチと、を含むことを特徴とする、マルチバンド入力段のための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項13】
前記手段は、前記インダクタの前記差動出力ノードに接続された周波数入力段の独立に制御されるトランジスタのマトリックスと、前記中間インダクタ部分と次の外側インダクタ部分の相互接続ノードに接続された高周波数入力段の独立に制御されるトランジスタのマトリックスと、を含むことを特徴とする、プログラム可能な利得増幅器のための、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項14】
前記平面インダクタは、カスコード構成における6つ又はそれ以上のより小さなインダクタ部分に分散され、前記手段は、前記インダクタ部分の各々の相互接続ノードに接続され、前記インダクタ部分を選択的にバイパスしてマルチバンド動作のための複数のインダクタ・ステップをもたらすことを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタ・デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とする負荷共振器回路。
【請求項16】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とするマルチバンド低雑音増幅器。
【請求項17】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とする縮退入力段。
【請求項18】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタを備えることを特徴とするプログラム可能な利得増幅器。
【請求項19】
入力段と、折畳みインダクタンスと、カスコード段と、前記カスコード段の出力部における請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のインダクタと、を備えることを特徴とする折畳みカスコード回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2009−500860(P2009−500860A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520901(P2008−520901)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050328
【国際公開番号】WO2007/006867
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050328
【国際公開番号】WO2007/006867
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]