説明

マルチパス通信端末、その制御方法及びシステム

【課題】マルチパス通信の通信性能を向上する。
【解決手段】本発明のマルチパス通信端末は、通信相手との間で複数の通信パスを形成する複数の通信機器と複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベースとを有する。そして通信履歴を用いて複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、予測した各々の通信性能に応じて複数の通信機器の各々の送信量を制御する制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信パスを併用して通信するマルチパス通信に係る。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワーク技術の発展に伴い、通信装置として携帯電話、PHS、無線LANなどを用い、種別の異なる複数のネットワークを利用することが可能となってきている。しかしながら、移動を前提としたモバイル端末のような通信装置においては、複数のネットワークに接続し通信先との間に複数の通信パスが存在していても、アプリケーション層で使用する通信パスは、利用者が選択した、いずれかのネットワークを経由する一つの通信パスに限られていた。これに対し、複数の通信パスを併用して通信するマルチパス通信であっても、アプリケーション層には従来どおり一つの通信として提供するために、トランスポート層で複数の通信をまとめる技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-319006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術で示した通り、複数の通信システムを併用するマルチパス通信技術がある。マルチパス通信とは、携帯電話、PHS、無線LANなどの複数の通信機器ないし通信システムを併用した複数の経路(通信パス)を並行して用いる通信である。
【0005】
マルチパス通信を使用する場合は、通信パケットを複数の経路、すなわち通信機器、通信システムに振り分ける。また、通信パケットの振り分け方でマルチパス通信としての通信性能が変化する。通信性能とは通信スループット、遅延、パケット到達率などである。通信性能向上のため、パケットの適切な振り分けが必要がある。
【0006】
パケットの振り分けには、主に2つの手法が用いられる。1番目は、通信機器および/または通信システムの性能に応じてパケット割り振り率(振り分ける比率)を固定とする手法である。2番目は定期的に通信機器および/または通信システムの性能を含む状況を測定し、パケット割り振り率を動的に変化する手法である。以下これらの手法についての課題を示す。
【0007】
1番目の通信性能に応じてパケット割り振り率を固定する場合の課題は、通信性能の理論値または予測値で通信が常に可能にならない場合、通信性能向上の余地を残すことである。通信性能に応じたパケット割り振り率の固定化とは、通信機器の性能および/または通信システムの許容される通信品質が必ず提供されると仮定していることを示す。したがって、有線通信の多くにはこの手法を適用できる。しかし、たとえば無線LANにおいて、理論上または実測を踏まえて54Mbpsの性能の通信が可能であるとしても、特に無線LANを使用する通信端末が移動すると、通信端末の移動に伴って通信性能は変化する。特に通信端末の移動中の通信における通信品質は時々刻々変化し、その変化の大きさも変化する。また通信端末が静止している場合においても、同一基地局に多数の通信端末が接続していると、通信が混雑して個々の通信端末の通信性能が低下する。
【0008】
2番目の通信状況に応じてパケット割り振り率を動的に変更する場合の課題は、現在の通信状況が今後も継続するとは限らない、または劇的な通信変化に追随できない場合が発生し、通信性能向上が限定的となることである。通信状況に応じたパケット割り振り率の動的変化とは、現在の通信機器の性能および/または通信システム通信品質が、次の通信状況測定までの一定期間継続すると仮定していることを示す。たとえば、無線LANにおいて、通信開始時に24Mbpsの通信性能を測定し、24Mbpsの通信性能と設定し、その1分後には2Mbpsを測定し、2Mbpsの通信性能と設定し、設定した通信性能に応じたパケット割り振り率を決定する。しかしながら、2Mbpsを測定した直前までは24Mbpsの通信性能が確保されていることが保証されないので、決定したパケット割り振り率は通信性能を最大限に発揮させるものであるとは言えない。特に通信端末の移動を伴う場合は、通信端末の移動に伴い通信状況は劇的に変化する。たとえば無線LANの通信圏外への移動や、携帯電話網の通信圏内への移動などを伴うと、現在の通信状況を測定しても、その通信状況は劇的に変化する可能性がある。また劇的な通信状況の変化に対応するために、通信性能の測定間隔を短くすると、通信機器および/または通信端末のリソースを浪費して非効率である。
【0009】
以上のように、マルチパス通信を用いたパケット振り分けでは、2つの手法のいずれを用いた場合でも、特に通信端末の移動を伴う場合に、通信性能の向上を図ることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下のような本発明のマルチパス通信端末、その制御方法、さらにマルチパス通信端末によるマルチパス通信システムによって解決される。そのマルチパス通信端末は、通信相手との間で複数の通信パスを形成する複数の通信機器と複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベースとを有する。そして通信履歴を用いて複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、予測した各々の通信性能に応じて複数の通信機器の各々の送信量を制御する制御部を有する。
【0011】
本発明の他の態様は、通信履歴は、該マルチパス通信端末を用いた通信を実行した時間帯及び位置の少なくとも一方と通信品質とを対応させた情報である。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、送信量は、予測した各々の通信性能の比率に応じて制御される。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、通信相手が予測した、通信相手が有する複数の通信機器の各々の通信性能を通信相手から受信し、受信した通信性能と自ら予測した通信性能との比較結果に応じて自ら予測した通信性能を調整する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マルチパス通信において、通信状況の変化を予測し、通信性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のシステム構成図である。
【図2】通信端末の通信量履歴データベースの例である。
【図3】通信端末の通信機器状態履歴データベースの例である。
【図4】通信端末の通信速度予測テーブルの例である。
【図5】通信端末のパケット通信割り振り率テーブルの例である。
【図6】実施例1に係る処理フローチャートである。
【図7】通信端末の位置情報履歴データベースの例である。
【図8】移動情報履歴データベースの例である。
【図9】移動履歴の検索処理のフローチャートである。
【図10】実施例3に係るシステム構成図である。
【図11】送受信スループットテーブルの例である。
【図12】パケット割り振り率テーブルの例である。
【図13】パケット送受信スループットテーブルの例である。
【図14】パケット割り振り率テーブルの例である。
【図15】実施例3の主要部の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態では、各通信端末は複数の通信機器を有し、複数の通信用ネットワークを介して通信相手のサーバや通信端末と通信する。すなわち、複数の通信機器対応に通信相手との間に複数のパスが存在し、この複数のパス(マルチパス)を用いて通信する。これらのパスは、通信用ネットワークの物理的なパスを共用する場合もあるが、通信端末から見た論理的なパスは複数の通信機器対応に複数あるように見える。また通信端末のアプリケーションから見た論理的なパスは一つに見える。通信端末が通信する相手通信端末のアドレスは、通信端末に既に保持されている、DNSなどを用いて検索するなどによる。
【0017】
通信機器は有線、無線を問わず通信可能であればよい。また、通信端末は静止していても、移動していても良い。移動する場合は、移動に伴い通信経路は変化をする。そのような場合においても、アプリケーションは、マルチパス通信による通信経路の変更などの影響を受けずに、一つの論理パスの使用を継続する。
【0018】
本実施形態は、複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベースを用いる。データベースに格納されている通信履歴を用いて複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、予測した各々の通信性能の比率に応じて複数の通信機器の各々の送信量を制御する。
【0019】
以下、通信履歴としてマルチパス通信端末を用いた通信を実行した時間帯と通信品質とを対応させた情報を利用する例を実施例1、通信履歴としてマルチパス通信端末を用いた通信を実行した位置と通信品質とを対応させた情報を利用する例を実施例2として説明する。さらに、予測した通信性能の情報を交換し、通信相手の通信性能と自らの通信性能との比較結果に応じて自らの通信性能を調整する例を実施例3として説明する。なお、実施例中で通信端末の通信相手としてサーバや他の通信端末を例示しているが、マルチパス通信を実行できる装置であれば、他の装置でも良い。
【実施例1】
【0020】
図1に、本実施例のシステム構成例を示す。本実施例では、複数の通信用ネットワーク120〜121に接続可能な通信端末100と、インターネットもしくはイントラネットなどのネットワーク130に接続可能な複数のサーバ151〜152よりシステムを構成する。複数の通信用ネットワーク120〜121とネットワーク130とは相互に接続している。
【0021】
通信端末100には、中央演算処理装置(CPU)102、メモリ103、記憶装置106、入出力インターフェース104を有するコンピュータを用いる。通信端末100は、CPU102が記憶装置106またはメモリ103に格納されているプログラムを実行することによりその機能を遂行する。
【0022】
通信端末100は、さらに通信機器制御部101を有し、複数の通信用ネットワーク120〜121に並列的に接続する。これらの通信用ネットワーク120〜121とは、たとえば、携帯電話通信網や公衆無線LANネットワークであり、ルータを介して更に別のネットワーク、たとえばインターネットなどに接続する。図示を省略しているが、通信用ネットワーク120〜121の各々への接続のために、通信機器制御部101は通信機器を有している。たとえば、通信用ネットワークが携帯電話通信網であれば、通信機器として携帯電話インターフェースを備えている。通信用ネットワークが公衆無線LANネットワークであれば、通信機器として公衆無線LANインターフェースを備えている。すなわち、各通信機器に対応して、通信相手との間に通信パスを設けることができ、これらを併用することによりマルチパス通信を実現する。したがって、マルチパスの各通信パスの状況(通信性能や通信の断続状況など)は各通信機器の状況として反映される。通信機器制御部101は、複数の通信用ネットワーク120〜121の各々への接続、切断、パケット送信、パケット受信、通信可否判定、通信量の測定などの制御を実行する。これらの制御はOSI7階層での第1層から第2層部分を示しているが、同様の制御が可能であればどの層で実現しても良い。通信端末100は、通信機器制御部101と複数の通信用ネットワーク120〜121を介して複数のサーバ151〜152の各々へ接続可能である。
【0023】
通信端末100は、さらに位置情報把握装置105を有し、通信端末100の現在位置を把握する。これはGPSなどの衛星を用いた位置情報把握や、基地局や入出力インターフェース104を通じて現在位置を入手しても良い。
【0024】
記憶装置106には、パケット振り分け制御部107および通信量監視制御部108があり、処理プログラムとして格納している。また制御に用いるパケット割り振り率テーブル109および通信速度予測テーブル110を格納している。更に通信履歴を格納するデータベースとして、通信機器状態履歴113、通信量履歴111、位置情報112および移動情報履歴114を格納している。
【0025】
パケット振り分け制御部107は、マルチパス通信制御と履歴の格納処理、履歴に基づく通信速度の予測処理、パケット割り振り率の決定処理、およびパケット割り振り率に基づくパケット振り分け処理の各処理を実行する。
【0026】
履歴の格納処理は、通信量監視制御部108からの情報に基づき、通信端末100が各通信機器を用いて通信した通信量を通信量履歴111として整理し記録する。各通信機器を用いた通信量は、その通信機器による通信パスの通信量を示している。また位置情報把握装置105からの情報に基づき、通信端末100の位置情報や移動情報を位置情報112および移動情報履歴114として記録する。さらに入出力I/F104の情報から得られる移動情報などがあれば、履歴として記録して良い。
【0027】
履歴に基づく通信速度の予測処理は、データベースに格納された履歴情報に基づき、通信速度予測テーブル110を作成する。
【0028】
パケット割り振り率の決定処理は、通信速度予測テーブル110に基づき、パケットの割り振り率を決定し、パケット割り振り率テーブル109を作成する。なおパケット割り振り率テーブル109の作成には、通信速度予測テーブル110以外の情報、たとえばサーバ151からの詳細なネットワーク情報や、入出力I/F104から得られる追加情報などがあれば、それらを利用して良い。
【0029】
パケット割り振り率に基づくパケット振り分け処理とは、パケット割り振り率テーブル109の割り振り率に基づき、通信機器(通信パス)毎にパケットを振り分ける。振り分けられたパケットは通信機器制御部101に送られ、通信機器毎にパケットが送信される。なおパケット振り分け処理は、OSI7階層の第3階層を想定しているが、同様の処理を実行できるのであれば、第2階層、もしくはそれ以外の階層でも良い。
【0030】
通信量監視制御部110は、通信量を監視し、通信量データを通信機器状態履歴113、通信量監視履歴111に格納、もしくはパケット振り分け制御部107に通信量データを送信する。通信量として、通信機器制御部101からの通信機器毎の通信量情報を用いる。もしくは通信量監視制御部110が通信機器毎に送受信されるパケット量を直接監視しても良い。
【0031】
通信量監視制御部110は、通信品質を監視もしくは算出しても良い。通信品質は通信機器制御部101の通信機器毎の通信品質情報を利用しても良い、もしくは通信量監視制御部110自身が通信機器毎の通信を監視して通信品質を算出しても良い。
【0032】
本実施例では、パケット振り分け制御部107および通信量監視制御部108は、処理プログラムとして記憶装置106に格納され、中央演算処理装置102が実行することにより具現化している。本処理はプログラムではなく、専用のハードウェア装置として実現しても良い。
【0033】
サーバ151は、CPU155、内蔵メモリ153、記憶装置156を有する一般的なコンピュータを用いて構成する。サーバ151は、CPU155が記憶装置156またはメモリ153に格納されているプログラムを実行することにより、その機能を遂行する。
【0034】
サーバ151は、さらに通信機器制御部154を有し、ネットワーク130に接続する。このネットワーク130は、インターネットもしくはイントラネットである。図示を省略しているが、通信用ネットワーク130への接続のために、通信機器制御部154は通信機器を有している。たとえば、ネットワーク130がインターネットであれば、通信機器としてインターネットと接続するLANインターフェースを備えている。図1に示すように、サーバ151は通信端末100との間で、通信用ネットワーク120及びネットワーク130を介した通信パスと通信用ネットワーク121及びネットワーク130を介した通信パスとによるマルチパスが形成される。すなわち、サーバ151から見ると、ネットワーク130の通信機器に複数のパスを収容していることになる。実際には、ハードウェアとして1台の通信機器を時間的に切り替えて使用することにより複数の通信パスによる通信を実現する。この時間的に切り替える一つ一つのパスに対応して、論理的な通信機器をハードウェアとして1台の通信機器に対応させることにより、通信機器制御部154による制御は、通信端末100の通信機器制御部101による制御と同様に実現できる。通信機器制御部154は、ネットワーク130への接続、切断、パケット送信、パケット受信、通信可否判定、通信量の測定などの制御を実行する。これらの制御はOSI7階層での第1層から第2層部分を示しているが、同様の制御が可能であればどの層で実現しても良い。
【0035】
記憶装置156には、パケット振り分け制御部157および通信量監視制御部158があり、処理プログラムとして格納している。また通信履歴が格納する通信履歴データベース159を格納している。
【0036】
パケット振り分け制御部157は、通信端末100との通信を、各通信経路への通信として実行する。またマルチパスでの通信制御を実行する。
【0037】
通信量監視制御部158は、通信端末100からの通信量(送信通信量、受信通信量)や通信品質を監視して、通信履歴データベース159へ監視結果を記録する。
【0038】
本実施例では、パケット振り分け制御部157および通信量監視制御部158は、処理プログラムとして記憶装置156に格納され、中央演算処理装置155が実行することにより具現化している。本処理はプログラムではなく、専用のハードウェア装置として実現しても良い。
【0039】
通信端末100及びサーバ151の各処理プログラムは、あらかじめ、通信端末100及びサーバ151の各々を構成するコンピュータ内の記憶装置に格納されていても良いし、必要なときに、入出力インターフェースと上ンピュータが利用可能な記憶媒体や通信媒体を介して、他の装置から記憶装置に格納されてもよい
図1では、通信用ネットワーク120〜121は、たとえば、携帯電話通信網や公衆無線LANネットワークのような無線ネットワークとして説明したが、本実施例では無線に限らず有線ネットワークであっても良いことが、以下の説明から明らかになる。したがって、通信端末100は必ずしも移動を伴わなくても良い。
【0040】
図2に、通信量履歴データベース111の例を示す。通信量履歴データベース111は、通信機器毎に時間当たりの通信量を記録する。通信量履歴データベース111は、記録開始日時201、記録終了日時202、通信機器名203、通信量の具体的な数値であるスループット204としての送信スループット値205および受信スループット値206、通信品質207を含む。
【0041】
通信機器名203には通信量を測定した通信機器名称を保存する。値は具体的な名称でなくても、通信機器を特定できる固有値や識別子などでも良い。
【0042】
通信量として、ここではスループット204で表し、単位時間当たりにどの程度のパケットが送信および/または受信されたかを記録する。通信量の値はスループット以外でも通信量を示す値、たとえばパケット数や送信、受信したデータ量などでも良い。
【0043】
通信品質207として、測定時間における電波強度を記録する。値は電波強度でなくても通信品質を示す値、たとえばS/N比やパケット損失率、ビット誤り率などでも良い。通信品質は、図2に示す記録開始日時201と記録終了日時202とのたとえ10秒の間でも変動するので、その間の平均値、最大値、最小値、記録開始時刻の値、記録終了時刻の値などのいずれかを用いる。ただし、パケット損失率、ビット誤り率などのように測定時間を要する値を用いる場合は、記録開始日時201と記録終了日時202との間隔を測定時間として得られる値を用いる。
【0044】
なお、通信品質として通信量を用いても良い。通信量は通信端末のアプリケーションに依存するが、通信機器(通信パス)のそのときの性能をフルに使用する通信量があれば、その通信量は通信品質を表していることになる。
【0045】
図2には、通信機器として無線LANを示しているが、通信量履歴データベース111は、通信機器毎に通信量を記録する。通信量履歴データベース111には、後述の説明から明らかになるように、現在に至る長期間に亘る、通信機器毎の通信量を記録している。
【0046】
図3に、通信機器状態履歴データベース113の例を示す。通信機器状態履歴データベース113は通信機器毎に時間当たりの通信機器の接続状態を記録する。通信量履歴データベース113は、記録開始日時301、記録終了日時302、通信機器名303、機器状態304を含む。
【0047】
通信機器名303には機器状態を測定した通信機器名称を保存する。値は具体的な名称でなくても、通信機器が特定できる固有値や識別子などでも良い。
【0048】
機器状態304として、通信機器を用いた通信が可能であったか、たとえば圏内であったか圏外であったか、電波強度がどの程度あったかなどを記録する。図3では、簡単に説明するために、通信可能をON、通信不可能をOFFで表している。
【0049】
図3には、通信機器としてWiMAXを示しているが、通信機器状態履歴データベース113は、通信機器毎に通信機器状態を記録する。通信機器状態履歴データベース113には、後述の説明から明らかになるように、現在に至る長期間に亘る、通信機器毎の通信機器状態を記録している。
【0050】
図4に、通信速度予測テーブル110を示す。通信速度予測テーブル110は、通信予定開始時日時401における各通信機器を用いた通信の可能な通信速度を予測したデータである。通信速度予測テーブル110は、通信予定開始時日時401に対応した、通信機器名402とその予測送信スループット403との組のデータを含む。
【0051】
送信予定開始日時401により、次のテーブルデータ、すなわち次段にある送信予定開始日時までの期間において、各通信機器の送信可能なスループットを予測する。
【0052】
通信速度予測テーブル110は、通信端末100が有している通信機器毎の予測送信スループットを記録する。この予測送信スループットを用いて、各通信機器の送信可能なスループットの比を把握する。
【0053】
図5に、パケット割り振り率テーブル109を示す。パケット割り振り率テーブル109は、送信パケットをどのような比で各通信機器に振り分けるかを示すデータである。パケット割り振り率テーブル109は、通信予定開始時日時501に対応した、通信機器名502と、この通信機器へのパケット割り振り率503との組のデータを含む。
【0054】
送信予定開始日時501により、次のテーブルデータ、すなわち次段にある送信予定開始日時までの期間において、各通信機器のパケット割り振り率を決定する。
【0055】
パケット割り振り率テーブル109の値に基づき、パケット振り分け制御部107が通信機器毎にパケットを振り分け、通信制御部101よりパケットが送信される。通信機器毎に振り分けられ、送信されるパケットは、マルチパスの中の、各通信機器に対応した各通信パスに振り分けられ、送信されることになる。
【0056】
図6に、パケット振り分け制御部107の処理フローチャートを示す。パケット振り分け制御部107は、パケット割り振り率の予測の要否を判定する(S601)。パケット割り振り率を一定時間毎に予測する。この一定時間を区間時間と呼ぶ。区間時間の開始時刻が、通信速度予測テーブル110の通信予定開始時日時401およびパケット割り振り率テーブル109の通信予定開始時日時501に相当する。次回の予測は、現在の予測された区間時間が終了する直前、もしくは予測された区間時間が終了する一定時間前に開始する。
【0057】
なお、予測する区間時間を1区間とすることにより処理が簡単になるが、複数区間の予測をしても良い。たとえば、区間時間を1分として3区間分を予測したり、区間時間を30秒として6区間分を予測したりする。前者の例により予測した結果として、図4の通信速度予測テーブル110及び図5のパケット割り振り率テーブル109を示している。図4及び図5に示す例では、予測した時刻、すなわち現在時刻は2008/08/08(Fri)14:00:00の直前である。このように複数区間を予測する場合も、1区間時間毎に予測処理を実行する。つまり、現在時刻直後の区間時間が終了する直前に、次の区間時間から、予め定めた複数の区間時間の予測を実行する。複数時間を予測することにより、通信端末100の他の処理の負荷により、予測すべき時刻にパケット割り振り率の予測を実行できなくても、予め予測されたパケット割り振り率に基づいて、マルチパス通信を実行できる。
【0058】
パケット割り振り率の予測を開始すべき時刻に到達しても、通信機器(通信パス)が意図的に切断されている場合などの特別な条件がある場合、予測しなくても良い。その場合は、パケット割り振り率に予め定めた値を使用するか、通信の実行を終了する。
【0059】
パケット割り振り率の予測が不要の場合は、既に予測すべき区間時間のパケット割り振り率があるものとして、ステップ611へ進む。
【0060】
パケット割り振り率の予測が要の場合は、通信機器状態履歴データベース113に、通信速度の予測に使用可能な通信機器状態履歴があるならば(S602)、通信機器状態履歴からパケット割り振り率を予測する区間時間毎の使用可能な通信機器を決定する(S603)。通信機器状態履歴がないならば、現在使用可能な通信機器がそのまま使用可能とする(S604)。通信機器状態履歴の有無については後述する。
【0061】
通信速度予測テーブル110に区間時間毎の使用可能な通信機器を格納する(S605)。図4は、通信機器名1(402)〜通信機器名N(404)の通信機器が使用可能であると決定した通信速度予測テーブル110の状態を示す。
【0062】
通信速度の予測に使用可能な通信機器状態履歴があるとは、たとえば図3に示した通信機器状態履歴データベース113に、予測する区間時間と同じ時間および同じ曜日の通信機器状態履歴があり、その機器状態304が通信可能(ON)を示していることである。このような通信機器状態履歴が無ければ、同じ時間および異なる曜日における通信機器状態履歴、同じ曜日の通信機器状態履歴を参照する。通信機器状態履歴データベース113に、予測する区間時間と同じ曜日および同じ時間などの通信機器状態履歴が複数ある場合は、現在時刻に近い通信機器状態履歴を用いる。このような通信機器状態履歴が無ければ履歴が無いとする。
【0063】
なお、通信機器状態履歴データベース113に示す記録開始日時301と記録終了日時302との間の時間は、予測する区間時間よりは短いので、予測する区間時間に対応する通信機器状態履歴データベース113の機器状態304のデータが複数得られる。機器状態304として、通信可否(ON/OFF)を表すような場合は現在時刻に近いデータを参照し、電波強度そのもののような数値を表すような場合は複数のデータの平均値や最小値を用いる。
【0064】
通信量履歴データベース111に、通信速度の予測に使用可能な通信量履歴があるならば(S606)、通信量履歴からスループット値を決定する(S607)。通信量履歴がないならば、通信機器にデフォルト値として設定しているスループット値とする(S608)。通信量履歴の有無およびスループット値の平均値や最小値を用いることについては、前述の通信機器状態履歴の場合と同様である。
【0065】
通信速度予測テーブル110に区間時間毎のスループット値を格納する(S609)。図4は、区間時間に対応して、通信機器名1(402)の予測送信スループット403から、通信機器名N(404)の予測送信スループット405が決定した通信速度予測テーブル110の状態を示す。
パケット割り振り率テーブル109を、通信速度予測テーブル110から各通信機器へのパケット割り振り率を求め、作成する(S610)。
【0066】
パケット割り振り率503や505は、対応する予測通信スループット403や405より、通信機器毎の比として求める。したがって、パケット割り振り率テーブル109の各通信予定開始時日時501に対応した、通信機器名1(402)や通信機器名N(404)のパケット割り振り率503や505の合計が100%となる。ここでは、図5に示すように、パーセントで求めているが、2:1:・・・:2などの比を用いてもよい。
作成されたパケット割り振り率テーブル109のパケット割り振り率503や505に基づき、通信機器毎に送信パケット数の割り振る(S611)。割り振られたパケットは、通信機器制御部101から各通信機器(各通信パス)に送出される。
【0067】
パケット送出に伴う通信機器状態履歴及び通信量履歴を、通信機器状態履歴データベース113および通信量履歴データベース111に保存する(S612)。履歴の記録には、それ以外の項目、たとえば、通信品質、通信遅延時間、劇的な通信変化があった場合の特別な記録などがあっても良い。
【0068】
なお、履歴、予測、およびパケット割り振り率の作成に用いる単位時間は通信状況によって変更しても良い。たとえば通信状況の変化がほとんど無い場合、もしくは変化がないことを予測できる場合は、単位時間を長くして予測に費やすコストを低減する。一方、通信状況の変化が激しい場合、もしくは激しい変化を予測できる場合は、単位時間を短くして予測精度の向上を図る。
【0069】
また履歴の保存は、記憶装置106の記憶容量に応じて、保存期間を変更したり、類似度が高いものを求めて、最新のデータ以外を削除してもよい。
【0070】
本実施例によれば、マルチパス通信において、通信状況の変化を予測し、通信性能を向上することが可能となる。
【0071】
現在の通信状況を測定し、その測定結果に応じてパケット割り振り率を動的に変更しても、現在の通信状況が今後も継続するとは限らない、また無線LANの通信圏外への移動や携帯電話網の通信圏内への移動などに伴う劇的な通信変化に追随できない場合が発生し、通信性能向上が限定的となることを発明が解決しようとする課題で説明した。ところが、通信状況の劇的な変化は、類似の時間帯において発生する場合も多い。本実施例では、この点に着目し、パケット割り振り率を予測する時間帯と(履歴として蓄積している過去の)類似の時間帯の通信状況の変化に対応してパケット割り振り率を予測することにより、予測したパケット割り振り率を用いたマルチパス通信の通信性能を向上させている。
【0072】
マルチパスの通信性能は、使用可能な各パスの時間的な使用率が均等なときに最も高くなる。たとえば、1.5Mbpsの第1のパスと3.0Mbpsの第2のパスとによるマルチパスにおいては、固定長パケットであることを前提にすれば、1:2の比率のパケット数を第1のパスと第2のパスとに送出すれば、各々のパスがパケット転送に使用される時間がほぼ均等(ヘッダ処理など他の要因により必ずしも均等にはならない。)になり、マルチパスとしての通信性能が最高になる。本実施例によれば、通信状況の変化に対応した各パスのスループットを予測し、各パスにパケットを振り分けるので、マルチパスの通信性能が向上する。
【実施例2】
【0073】
本実施例は、実施例1に加え、位置情報履歴を用いて更にスループットの予測精度を向上させる例である。したがって実施例1で説明した内容の説明は省く。
【0074】
図7に、位置情報履歴データベース112の例を示す。位置情報履歴データベース112には、一定時間毎に計測された位置情報を記録する。位置情報履歴データベースは、記録開始日時701、記録終了日時702、位置情報703、地名情報704を含む。
【0075】
位置情報703には通信端末100の位置情報の値を記録する。ここでは経度および緯度の値が格納されているが、地域メッシュコード(JISX0410)のような値であっても位置情報を把握できる値であれば良い。
【0076】
地名情報704には、位置情報703に対応して付随した情報がある場合に記録する。ここでは駅名が格納されているが、それ以外の値においても特別な位置情報として判断可能な値であればあれば良い。
【0077】
図8に、移動情報履歴データベース114の例を示す。移動情報履歴データベース114は一定時間毎に把握した出発地と移動先の移動情報を記録する。移動情報履歴データベース114は、記録開始日時801、記録終了日時802、位置情報803、出発地804、目的地805を含む。
【0078】
出発地803には通信端末100が移動を開始した出発地を記録する。ここでは駅名が格納されているが、それ以外の値においても出発地の位置情報として判断可能な値であればあれば良い。目的地804には通信端末100の移動の目的地を記録する。ここでは駅名が格納されているが、それ以外の値においても目的地の位置情報として判断可能な値であればあれば良い。
【0079】
本実施例の処理として、図6に示したパケット振り分け制御部107のS605とS606との間で実行する移動履歴の検索処理を説明する。図9に、移動履歴の検索処理のフローチャートを示す。
移動情報履歴が移動情報履歴データベース114にあるならば(S901)、その移動履歴を示す出発地804と目的地805の組を得る(S902)。ないならば、位置情報履歴データベース112の現在の位置情報703に至る現在移動経路情報が、位置情報履歴データベース112にあるかを判定し(S903)、あるならば、現在移動経路情報に対応する過去の位置情報履歴を得る(S904)。
【0080】
移動情報履歴があるかは、たとえば次のように判定する。出発地および目的地の情報として、入出力インターフェース104を介して、車両搭載の、または携帯電話によるナビゲーションシステムや種々の案内システムに設定された現在地および目的地の情報が得られる。得られた出発地および目的地の情報に基づいて、移動情報履歴データベース114に格納されている出発地804と目的地805の組を検索する。
【0081】
出発地および目的地の情報が得られないような場合を含めて現在移動経路情報があるかは、たとえば次のように判定する。位置情報履歴データベース112に格納されている最新の記録日時(現在)の位置情報703に至る位置情報703の履歴から、時間経過に伴って、位置情報703が変化している場合に移動していると見なす。このとき、位置情報の変化を示す履歴は移動経路であり、現在位置に至る履歴が現在移動経路である。移動していると見なせるときに、現在移動経路を含む、または現在移動経路に近い、過去の位置情報履歴が位置情報履歴データベース112に格納されているかを検索する。
【0082】
このようにして検索した出発地804と目的地805の組、または過去の位置情報履歴の中で、現在時刻に最も近い時間帯のものを選択する。最も近い時間帯の選択とは、たとえば、同じ時間および同じ曜日、同じ時間および異なる曜日、同じ曜日という順に選択していく。
【0083】
以上のようにして選択した時間帯は、現在の移動情報および位置と時間帯とに整合しているので、図6のS606からの、スループットを決定するための通信量履歴データベース111の検索対象を、この選択した時間帯に限定する。結果として、通信速度予測テーブル110に格納されるスループットは、現在の移動情報および位置と時間帯とに整合したものになる。パケットの送出に至る以降の処理は実施例1と同様である。
【0084】
次に、図6のS612の処理の一環として、位置情報把握装置105から得られた通信端末100の位置情報を位置情報履歴データベース112に、入出力インターフェース104を介して又は位置情報把握装置105から得られた位置情報を移動情報履歴データベース114に格納する。
【0085】
本実施例によれば、通信状況の劇的な変化が、通信端末位置が過去にあった類似の位置において発生する場合も多いことに着目し、パケット割り振り率を予測する通信端末の位置と(履歴として蓄積している過去の)類似の位置の通信状況の変化に対応してパケット割り振り率を予測することにより、予測したパケット割り振り率を用いたマルチパス通信の通信性能を向上させている。
【0086】
なお、本実施例では位置と時間帯との類似性を用いた説明をしたが、時間帯を用いなくても良いことは容易に理解されるだろう。
【0087】
本実施例によれば、マルチパス通信において、特に通学/通勤などのような移動経路を同じにする移動を伴い通信端末を使用する場合、位置に対応した通信状況の変化を予測し、通信性能を向上することが可能となる。
【実施例3】
【0088】
本実施例は、通信端末同士の通信の場合である。本実施例では、通信する互いの通信端末が、通信を開始する前に、通信量を予測し、その予測結果を相互に交換し、交換した相手通信端末の予測結果を参照して最適な通信量を再度算出した上で、パケット振り分け率を決定して、マルチパス通信を開始する。
【0089】
図10に、本実施例のシステム構成を示す。通信端末1001の構成のほとんどは、図1の通信端末100として説明済みである。本実施例では、新たに送受信スループットテーブル1010をシステム構成に追加する。
【0090】
また図示する各ネットワークは、図1の同じ符号のネットワークと同様である。なお、通信端末B1102に接続するネットワーク122及び123は、ネットワーク120及び121と同様である。
【0091】
図11に、通信端末A1001の送受信スループットテーブル1010を示す。送受信スループットテーブル1010は、ある一定時間内で、マルチパスを構成する各通信機器において、それぞれの通信相手先の通信機器に対する通信量をスループットとして予測したデータを示す。送受信スループットテーブル1010は、通信予定開始日時1101に対応して、通信機器名1(1102)、通信機器名1(1102)の送信先アドレス1103、その通信量としての受信スループット1105及び送信スループット1106のスループット1104のように、通信機器名N(1107)までの送信先アドレス及びスループットを含む。
【0092】
通信機器名1102や1107には、通信量を測定した通信機器名称を格納する。通信機器名称でなくても、通信機器が区別できるような固有値や識別子などでも良い。
【0093】
通信量として、ここではスループット1104で表し、単位時間当たりに送信量、受信量を示すが、スループット以外でも通信量を表現できるパケット数や送信、受信したデータ量(バイト数)などでも良い。
【0094】
以上の説明から明らかなように、送受信スループットテーブル1010は、実施例1で説明した通信速度予測テーブル110に受信スループット1105を項目として追加したものである。したがって、実施例1で説明したように、送受信スループットテーブル1010があれば、パケット割り振り率を決定でき、パケット割り振り率テーブルを作成できる。図12に通信端末A1001のパケット割り振り率テーブル109を示す。本実施例は、交換した相手通信端末の通信量予測結果(送受信スループットテーブル1010)を参照して最適な通信量を再度算出した上で、パケット割り振り率を再決定するので、再度算出した通信量を示す送受信スループットテーブル1010と再決定したパケット割り振り率を示すパケット割り振り率テーブル109がある。図13に、通信端末B1002の送受信スループットテーブル1010を示し、図14に、通信端末A1001の再決定したパケット割り振り率を示すパケット割り振り率テーブル109を示す。図12〜図14の説明は既に説明した内容と重複するので省略し、後に説明する動作例示の中で引用する。
【0095】
互いに通信する通信端末を、それぞれ通信端末A1001および通信端末B1002として、ここでは通信端末A1001を主体として説明する。本実施例の動作の主要部は、前述のように交換した相手通信端末の通信量予測結果を参照して最適な通信量を再度算出した上で、パケット割り振り率を再決定するところにあり、他の動作は実施例1および実施例2と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
図15に、本実施例の主要部の処理フローチャートを示す。本処理の実行主体はパケット振り分け制御部107である。
【0097】
図11に示す送受信スループットテーブル1010を参照して、パケット割り振り率を決定する(S1501、S1503)ことは、実施例1および実施例2で説明済みである。送受信スループットテーブル1010を、通信相手である通信端末B1002と交換する(S1502,S1504)。図15では、通信端末A1001が送受信スループットテーブル1010を、通信相手である通信端末B1002に送信した後に、通信端末B1002がパケット割り振り率を決定し、送受信スループットテーブル1010を通信端末A1001に送信するように示しているが、互いの送受信スループットテーブル1010を交換できればよい。
【0098】
なお、送受信スループットテーブル1010の送信には、通信端末が使用可能な無線通信機器を用いて送信すると、マルチパスにより冗長性が確保され、確実に交換できる。
【0099】
通信端末A1001の送信スループットと、通信端末B1002から受信した受信スループットを比較する(S1505)。送信スループット値が、送信相手先の受信スループット値よりも高いならば(S1506)、送信スループットテーブル1010の送信スループット値を受信スループット値以下に設定し(S1507)、パケット割り振り率テーブル109を再設定する(S1508)。この比較および再設定を通信端末Bとの間でパスを構成可能な全ての通信機器に関して実行する。
【0100】
具体的に図11〜図14を用いて説明する。通信端末A1001は、図13に示す通信相手の通信端末B1002の送受信スループットテーブルを受信する。送受信スループットテーブルが通信端末B1002から受信したことを、送受信スループットテーブル内の送信先アドレスが通信端末A1001の通信機器のアドレスを示していることで確認する。通信端末A1001は、一例として、通信端末A1001の送信スループット値5.0Mbps(1131)と、通信端末B1002の受信スループット値2.0Mbps(1301)とを比較する。同様に、他の通信端末A1001の送信スループット値と通信端末B1002の受信スループット値とを比較する。送信スループット値5.0Mbps(1131)と受信スループット値2.0Mbps(1301)との比較のように、通信端末B1002の受信スループット値より通信端末A1001の送信スループット値が大きい場合、通信端末A1001の送信スループット値を通信端末B1002の受信スループット値に再設定する。
【0101】
通信端末A1001は、送受信スループットテーブル1010の再設定の基づいて、パケット割り振り率テーブル109を再設定する。図14は再設定した通信端末Aのパケット送信割り振り率テーブル109である。図12に示す再設定前のパケット送信割り振り率と比較すると、符号で示す1201から1401へ、1202から1402へ、1203から1403へ、それぞれ再設定している。
【0102】
なお、パケット送受信スループットテーブルは実施例1および実施例2で示した一定時間毎に交換する。
【0103】
本実施例によれば、マルチパス通信において、通信端末が互いの通信状況を把握し、その通信量を調整することで、通信性能を向上することが可能となる。
【0104】
本実施形態によれば、マルチパス通信を用いてパケットを割り振る場合、特に移動を伴う通信を行う場合に、通信性能を向上できる。
【符号の説明】
【0105】
100、1001、1002…通信端末、101、154…通信機器制御部、107、157…パケット振り分け制御部、108、158…通信量監視制御部、120、121、122、123…無線通信用ネットワーク、130…インターネット、151、152…サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手との間で複数の通信パスを形成する複数の通信機器、
前記複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベース、及び
前記通信履歴を用いて前記複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、前記予測した各々の通信性能に応じて前記複数の通信機器の各々の送信量を制御する制御部を有することを特徴とするマルチパス通信端末。
【請求項2】
前記通信履歴は、該マルチパス通信端末を用いた通信を実行した時間帯及び位置の少なくとも一方と通信品質とを対応させた情報であることを特徴とする請求項1記載のマルチパス通信端末。
【請求項3】
前記送信量は、前記予測した各々の通信性能の比率に応じて制御されることを特徴とする請求項2記載のマルチパス通信端末。
【請求項4】
前記通信相手が予測した、前記通信相手が有する複数の通信機器の各々の通信性能を前記通信相手から受信し、前記制御部は、前記受信した通信性能と該マルチパス通信端末が予測した前記通信性能との比較結果に応じて該マルチパス通信端末が予測した前記通信性能を調整することを特徴とする請求項2記載のマルチパス通信端末。
【請求項5】
マルチパス通信端末の制御方法であって、該マルチパス通信端末は通信相手との間で複数の通信パスを形成する複数の通信機器及び前記複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベースを有し、
前記通信履歴を用いて前記複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、前記予測した各々の通信性能に応じて前記複数の通信機器の各々の送信量を制御することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記通信履歴は、該マルチパス通信端末を用いた通信を実行した時間帯及び位置の少なくとも一方と通信品質とを対応させた情報であることを特徴とする請求項5記載の制御方法。
【請求項7】
前記送信量は、前記予測した各々の通信性能の比率に応じて制御されることを特徴とする請求項6記載の制御方法。
【請求項8】
前記通信相手が予測した、前記通信相手が有する複数の通信機器の各々の通信性能を前記通信相手から受信し、前記受信した通信性能と該マルチパス通信端末が予測した前記通信性能との比較結果に応じて該マルチパス通信端末が予測した前記通信性能を調整することを特徴とする請求項6記載の制御方法。
【請求項9】
複数の通信機器、
前記複数の通信機器の各々の通信履歴を格納するデータベース、及び
前記通信履歴を用いて前記複数の通信機器の各々の通信性能を予測し、前記予測した各々の通信性能に応じて前記複数の通信機器の各々の送信量を制御する制御部を有する複数の通信端末を含み、
前記複数の通信端末のある通信端末が有する前記複数の通信機器と前記複数の通信端末の他の通信端末が有する前記複数の通信機器との間で複数の通信パスを形成することを特徴とするマルチパス通信システム。
【請求項10】
前記通信履歴は、前記通信端末を用いた通信を実行した時間帯及び位置の少なくとも一方と通信品質とを対応させた情報であることを特徴とする請求項9記載のマルチパス通信システム。
【請求項11】
前記送信量は、前記予測した各々の通信性能の比率に応じて制御されることを特徴とする請求項10記載のマルチパス通信システム。
【請求項12】
前記ある通信端末と前記他の通信端末とは、前記複数の通信機器の各々の通信性能を互いに交換し、受け取った通信性能と自らが予測した前記通信性能との比較結果に応じて自らが予測した前記通信性能を調整することを特徴とする請求項10記載のマルチパス通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−166137(P2010−166137A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4625(P2009−4625)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(500194887)日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社 (9)
【Fターム(参考)】