説明

マルチビームを用いて無線局の位置を推定する方法及び装置

【課題】無線局のサイズや重量を増やすことなく無線局の位置を適切に判定できるようにすること。
【解決手段】無線通信システムにおける無線局の位置を推定する方法及び装置が提供される。マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度と、無線局が受信した信号の特性とに基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置からの方位角を推定することが行われる。無線局が受信した信号の特性は、複数のビーム角度の各々により、マルチビームアンテナパターンのビーム各々から送信された複数の無線信号各々についての特性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、無線通信の技術分野に関連し、特に無線局の位置を推定する方法及びシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衛星の無線伝送信号からのグローバルポジショニングシステム(GPS)信号を受信するような、無線通信ネットワーク内の無線局の位置を無線により判別する従来の技術は、受信信号が弱いことや、マルチパス信号伝搬特性の影響等に起因して、多数の場所で有効でないことがしばしば起こり、屋内や高い建物による「都市の谷間(urban canyons)」において特にそのような不都合が生じ、その場合、無線信号は環境内の多数の障害物により散乱されてしまうのが一般的である。そのようなマルチパス散乱は、端末やネットワークアクセスポイント(例えば、基地局)に到着する複数の信号に起因して、従来の多くの位置判定技術を妨げている。
【0003】
地上送信機からの到着時間(time−of−arrival)又は信号の強度(又は、複数の信号による到着時間差)を測定するような、従来の他の位置判定技術も、マルチパス伝搬の影響を被り、無線局に特殊な測定装置を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その結果、従来の位置判定技術を使用する通信システムは、特殊な受信器や信号測定装置を無線局各々に設けることに起因して、高価であることが一般的である。無線局における追加的な受信や測定は、追加的な電力を消費することにもなり、その結果、バッテリの寿命を短くしてしまう。例えば、GPS信号を受信するには、追加的なアンテナ及び受信器を無線局内に設ける必要があり、これは無線局のサイズや重量を増やしてしまう。
【0005】
本願の課題は、無線局のサイズや重量を増やすことなく無線局の位置を適切に判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例による方法は、
マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度と、無線局が受信した信号の特性とに基づいて、前記マルチビームアンテナパターンの基準位置から前記無線局までの方位角を推定するステップを有し、前記無線局が受信した信号の前記特性は、前記複数のビーム角度の各々により、前記マルチビームアンテナパターンのビーム各々から送信された複数の無線信号各々についての特性である、方法である。
【発明の効果】
【0007】
一実施例によれば、無線局のサイズや重量を増やすことなく無線局の位置を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願による何らかの実施例を使用する無線通信システムの平面図。
【図2】OFDMに基づく本願による実施例において実現される送信及び受信信号電力レベルを示す図。
【図3】本願による実施例にしたがって無線局の位置を推定するためのアクセスポイントにおける方法を示すフローチャート。
【図4】本願による実施例にしたがって無線局の位置を推定するための無線局における方法を示すフローチャート。
【図5】本願による実施例において使用されるアクセスポイントのブロック図。
【図6】本願による実施例が使用されているセルラ通信システムを示すブロック図。
【図7】本願による実施例において使用される基地局のブロック図。
【図8】本願による実施例において使用される無線局のブロック図。
【図9】本願による実施例において使用される中継局のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)一形態による方法は、マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度と、該複数のビーム角度各々においてマルチビームアンテナパターンのビーム各々から送信された複数の無線信号各々の無線局で受信された信号の特性とに基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角(bearing angle)を推定するステップを有する。
【0010】
(2)一形態における方法は、マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度各々により、複数の無線信号の内の無線信号各々を、マルチビームアンテナパターンのビーム各々により送信するステップをさらに有する。
【0011】
(3)一形態における方法は、無線局と通信するために、無線局の推定された方位角に基づいて、マルチビームアンテナパターンのビームを無線局に向けるステップをさらに有する。
【0012】
(4)一形態において、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定する際、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信される少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、所定値に実質的に等しくなるビーム角度を求める。
【0013】
(5)一形態において、マルチビームアンテナパターンの各ビームから送信される複数の無線信号各々に関し、無線局における受信信号特性は、ビーム各々から送信された無線信号の受信レベルを含み、該無線信号は、マルチビームアンテナパターンの他のビームから送信された無線信号と異なる。
【0014】
(6)一形態において、所定値は実質的に1に等しい。
【0015】
(7)一形態において、マルチビームアンテナパターンは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームを含み、上記の方位角を推定する際、第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、実質的に所定値になるビーム角度を判別する。
【0016】
(8)一形態において、マルチビームアンテナパターンは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームの中間の第3のアンテナビームを含み、上記の方位角を推定する際、第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第2の所定値に実質的に等しくなり、かつ第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第3の所定値に実質的に等しくなる方位角を求める。
【0017】
(9)一形態において、第3のアンテナビームは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームの実質的に中間にあり、第2の所定値は、第3の所定値に実質的に等しい。
【0018】
(10)一形態において、本方法は、各ビーム角度について、ビーム角度を表すコードを無線局に送信するステップをさらに有する。
【0019】
(11)一形態における本方法は、マルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信される少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値になるビーム角度を表すコードを、無線局から受信するステップをさらに含む。
【0020】
(13)一形態において、複数の無線信号は、直交周波数分割多重(OFDM)信号、符号分割多元接続(CDMA)信号、時分割多元接続(TDMA)信号及びパルスベースウルトラワイドバンド(UWB)信号の内の何れかを含む。
【0021】
一形態において、複数の無線信号は、直交周波数分割多重(OFDM)信号を含み、各ビームからの各無線信号の個々の成分は、他のビームから送信されたサブキャリアとは異なるサブキャリアを少なくとも1つ含み、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信レベルの比率は、マルチビームアンテナパターンの少なくとも2つのビームの個々のサブキャリアに関する無線局における受信信号電力の間の比率により表現される。
【0022】
一形態において、複数の無線信号は、符号分割多元接続(CDMA)信号を含み、各ビームからの各無線信号の個々の成分は、送信バーストの開始時における各々のプリアンブル部分を有し、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームが、その各々のプリアンブルの部分の間に送信されるようにし、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信レベルの比率は、各々のプリアンブルの部分の無線局における受信信号電力同士の比率により表現される。
【0023】
一形態において、複数の無線信号は、符号分割多元接続(CDMA)信号を含み、各ビーム角度において、同じ無線信号が、ビーム間のタイミングオフセットとともに、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームにより送信され、各アンテナビームの無線信号が、受信できるようにし、かつ無線局において個々の成分に分解できるようにし、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信レベルの比率は、マルチビームアンテナパターン内の少なくとも2つのビームから送信され受信され分析された時間オフセットCDMA信号の受信信号電力同士の比率により表現される。
【0024】
一形態において、複数の無線信号は、時分割多元接続(TDMA)信号を含み、各ビームの各無線信号の個々の成分は、フレーム各々のプリアンブル部分を有し、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームが、そのフレーム各々のプリアンブル部分の間に送信されるようにし、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信レベルの比率は、フレーム各々のプリアンブル部分に関する無線局における受信信号電力同士の比率により表現される。
【0025】
一形態において、複数の無線信号は、パルスベースウルトラワイドバンド(UWB)信号を含み、各ビームの各無線信号の個々の成分は、複数のUWBパルスの一部をふくみ、マルチビームアンテナパターンの各ビームは、複数のUWBパルスの一部を送信し、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信レベルの比率は、マルチビームアンテナパターンの少なくとも2つのビームから送信されたUWBパルスの一部に関する無線局における受信信号電力同士の比率により表現される。
【0026】
(14)一形態における本方法は、少なくとも1つの追加的なマルチビームアンテナパターンの各々について、追加的なマルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度各々について、複数の無線信号を、追加的なマルチビームアンテナパターンの各アンテナビームにより送信するステップと、追加的なマルチビームアンテナパターンの内の複数のビーム角度各々について、追加的なマルチビームアンテナパターンの各ビームから送信された複数の無線信号各々に関する無線局で受信された信号の特性に基づいて、追加的なマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するステップをさらに有する。
【0027】
(15)一形態における方法は、第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置からの無線局の推定された方位角と、少なくとも1つの追加的なマルチビームアンテナパターンの各々の基準位置からの無線局の推定された方位角各々との交わる位置に基づいて、無線局の位置を推定するステップをさらに有する。
【0028】
(16)一形態において、無線局の位置を推定する際、複数のマルチビームアンテナパターンからの推定された無線局の方位角と、複数のマルチビームアンテナパターンの少なくとも一部の基準位置各々と無線局との間の推定された半径方向距離を表す双曲線との交わりに基づいて、無線局の位置が決定される。
【0029】
(17)一形態における方法は、ビーム角度各々について、ビーム角度を表すコードを受信するステップをさらに有する。
【0030】
(18)一形態における方法は、マルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信される少なくとも2つの無線信号各々の受信信号特性の比率が実質的に所定値に等しくなるビーム角度を表すコードを報告するステップをさらに有する。
【0031】
(19)一形態における方法は、第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置からの無線局の推定された方位角と、少なくとも2つのマルチビームアンテナパターン各々の基準位置からの無線局の推定された方位角との交わる位置に基づいて、無線局の位置を推定するステップをさらに有する。
【0032】
(20)一形態により提供される装置は、マルチビームアンテナパターンを生成するマルチビームアンテナシステムと、マルチビームアンテナシステムを複数のビーム角度に合わせて方向付けるビームステアリング制御部(beam steerer)と、複数のビーム角度の内の各ビーム角度において複数の無線信号を生成し、各ビーム角度において、複数の無線信号の内の各無線信号が、マルチビームアンテナシステムにより生成されたマルチビームアンテナパターンの内の何れかのアンテナビームにより送信されるようにする無線周波数(RF)送信部と、位置推定制御部とを有し、該位置推定制御部は、複数のビーム角度と、該複数のビーム角度各々においてマルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信された複数の無線信号各々の無線局で測定された受信信号特性とに基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定する。
【0033】
(21)一形態において、位置推定制御部は、複数の角度の各々について、複数の無線信号各々の受信信号特性を、無線局から受信する。
【0034】
(22)一形態において、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信された少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値に等しくなるビーム角度を判別することで、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するように、位置推定制御部は構築されている。
【0035】
(23)一形態において、RF送信部は、複数のビーム角度各々について、複数のビーム角度の内の現在のビーム角度を表すコードを送信する。
【0036】
(24)一形態において、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信された少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値に等しくなるビーム角度を表すコードを、無線局から受信するように構築されている。
【0037】
一形態において、位置推定制御部は、無線局と通信するために、無線局の推定された方位角に基づいて、マルチビームアンテナパターンのビームを無線局に向けるようにビームステアリング制御部を動作させる。
【0038】
一形態において、位置推定制御部は、複数のビーム角度各々により生成された複数の無線信号を送信するようにRF送信部を制御し、ビーム角度各々について生成される複数の無線信号中の各無線信号は、同じビーム角度で生成された複数の無線信号の内の別の無線信号とことなる。
【0039】
一形態において、位置推定制御部は、所定値を決定する校正アルゴリズムを実行する。
【0040】
一形態において、所定値は実質的に1に等しい。
【0041】
一形態において、マルチビームアンテナパターンは、マルチビームアンテナパターンが第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームを含むように構築され、位置推定制御部は、第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信特性と、第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信特性との比率が、実質的に所定値に等しくなるビーム角度を判別することで、ビーム角度を推定する。
【0042】
一形態において、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームは、実質的に90度離れている。
【0043】
一形態において、マルチビームアンテナパターンは、第1のアンテナビームと第2のアンテナビームとの中間にある第3のアンテナビームを含むように、マルチビームアンテナパターンが構築され、上記の方位角を推定する際、第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第2の所定値に実質的に等しくなり、かつ第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第3の所定値に実質的に等しくなる方位角を求める。
【0044】
一形態において、第3のアンテナビームは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームの実質的に中間にあり、第2の所定値は、第3の所定値に実質的に等しい。
【0045】
一形態において、位置推定制御部は、無線局から受信した受信信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも一方に基づいて、無線局とマルチビームアンテナパターンの基準位置との間の半径方向距離を推定し、マルチビームアンテナパターンの基準位置からの無線局の推定された方位角と、マルチビームアンテナパターンの基準位置及び無線局間の推定された半径方向距離とに基づいて、無線局の位置を推定する。
【0046】
一形態において、ビーム角度各々について、RF送信部は、符号分割多元接続(CDMA)信号を時間的にオフセットさせたものを、複数の無線信号として複数個生成し、マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信された無線信号が、無線局において受信され及び個々の成分に分解されるようにする。
【0047】
一形態における本装置は、第2のマルチビームアンテナパターンを生成する第2のマルチビームアンテナシステムと、第2のマルチビームアンテナシステムを第2の複数のビーム角度に向ける第2のビームステアリング制御部と、第2の無線周波数(RF)送信部とを有し、マルチビームアンテナシステムは、別の場所に設けられており、第2のRF送信部は、第2の複数のビーム角度の内の各ビーム角度において、第2の複数の無線信号を生成し、第2の複数のビーム角度の内の各ビーム角度において、第2の複数の無線信号の内の各無線信号が、第2のマルチビームアンテナシステムにより生成された第2のマルチビームアンテナパターンの内のアンテナビームにより送信され、位置推定制御部は、第2の複数のビーム角度と受信信号特性とに基づいて、第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定し、その受信信号特性は、第2の複数のビーム角度のの内の複数のビーム角度各々について、第2のマルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信された第2の複数の無線信号の無線局で測定されたものである。
【0048】
一形態において、位置推定制御部は、第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置からの無線局の推定された方位角と、第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置からの無線局の推定された方位角との交わる位置に基づいて、無線局の位置を推定する。
【0049】
一形態において、位置推定制御部は、受信信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも一方に基づいて、無線局から第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置までの半径方向距離と、無線局から第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置までの半径方向距離とを推定する。
【0050】
一形態において、位置推定制御部は、第1及び第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置各々からの無線局の推定された方位角と、第1及び第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置各々と無線局との間の推定された半径方向距離を表す双曲線との交わる位置に基づいて、無線局の位置を推定する。
【0051】
一形態において、第1のマルチビームアンテナシステム及び第2のマルチビームアンテナシステムが、異なる高度に設けられ、位置推定制御部は、複数のマルチビームアンテナパターンの基準位置に対する無線局の推定された半径方向距離及び推定された方位角と、第1及び第2のマルチビームアンテナシステムの高度とに基づいて、無線局の高度を推定する。
【0052】
一形態における本装置は、無線局の推定された位置に基づいて、無線通信システムリソースに対する無線局のアクセスを制限するアクセスコントローラをさらに有する。
【0053】
一形態における本装置は、無線通信システムのアクセスポイントに設けられている。
【0054】
さらに別の形態により提供される方法は、複数の無線信号を送信し(無線信号の各々は、マルチビームアンテナパターンの内の各ビームにより送信される)、マルチビームアンテナパターンの各ビームから送信された複数の無線信号の無線局における受信信号特性に基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するステップを有する。
【0055】
一形態における本方法は、マルチビームアンテナシステムの各ビームから送信された複数の無線信号各々の受信信号特性を、無線局から受信するステップをさらに有する。
【0056】
一形態における本方法は、所定値を決定する校正アルゴリズムを実行するステップをさらに有する。
【0057】
一形態における本方法は、マルチビームアンテナパターンの基準位置と無線局との間の半径方向距離を推定するステップと、マルチビームアンテナパターンの基準位置からの推定された無線局の方位角と、マルチビームアンテナパターンの基準位置及び無線局間の推定された半径方向距離とに基づいて、無線局の位置を推定するステップをさらに有する。
【0058】
一形態において、マルチビームアンテナパターンの基準位置と無線局との間の半径方向距離を推定する際、受信信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも1つに基づく。
【0059】
一形態において、マルチビームアンテナパターンの少なくとも2つのビームの異なるサブキャリアに関する無線局における受信信号電力同士の比率が、隣接するサブキャリア対に関する受信信号電力の比率である。
【0060】
一形態において、複数の無線信号が符号分割多元接続(CDMA)信号を含み、各ビームにおける各無線信号の個々の成分が、各々の拡散コードにより拡散された信号部分を有し、マルチビームアンテナのビーム各々が、各々の拡散符号により拡散された信号部分を送信し、マルチビームアンテナパターンの少なくとも2つのビームの個々の成分の受信電力レベルの比率が、無線局における拡散コード各々の受信信号電力同士の比率により表現される。
【0061】
一形態において、複数の無線信号が時間分割多元接続(TDMA)信号を含み、各ビームの無線信号各々の個々の成分が、各々のTDMAタイムスロットを有し、マルチビームアンテナの各ビームが、各々のTDMAタイムスロットにおいて送信され、マルチビームアンテナパターンの内の少なくとも2つのビームの個々の成分の受信電力レベル同士の比率は、マルチビームアンテナパターンの少なくとも2つのビームのTDMAタイムスロット各々において無線局が受信した受信信号電力同士の比率により表現される。
【0062】
一形態における本方法は、無線局における受信信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも1つに基づいて、無線局から、複数のマルチビームアンテナパターンの各基準位置の内の少なくとも1つまでの半径方向距離を推定するステップをさらに有する。
【0063】
一形態において、無線局の位置を推定する際、複数のマルチビームアンテナパターンからの推定された無線局の方位角と、複数のマルチビームアンテナパターンの少なくとも一部の基準位置各々と無線局との間の推定された半径方向距離を表す双曲線とが交わる位置に基づいて、無線局の位置が決定される。
【0064】
一形態において、複数のマルチビームアンテナパターンは全てが同じ高度には設けられておらず、複数のマルチビームアンテナパターンの基準位置に対する無線局の推定された半径方向距離及び推定された方位角と、複数のマルチビームアンテナパターンの高度とに基づいて、無線局の高度を推定する。
【0065】
一形態における本方法は、無線局の推定された位置と、無線局に関連付けられている識別情報とに基づいて、無線通信システムリソースに対する無線局のアクセスを制限するステップをさらに有する。
【0066】
さらに別の形態により提供される方法は、マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度の各々について、複数の無線信号の各々を受信するステップを有し、無線信号の各々は、マルチビームアンテナパターンに属する各ビームにより送信され、本方法は、複数のビーム角度各々について、マルチビームアンテナパターンのビーム各々により送信された複数の無線信号各々に関する無線局における受信信号特性に基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するステップを有する。
【0067】
一形態における本方法は、複数のビーム角度各々について、マルチビームアンテナパターンのビーム各々により送信された複数の無線信号各々の受信信号特性を、無線局から送信するステップをさらに有する。
【0068】
一形態において、マルチビームアンテナパターンは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームの中間の第3のアンテナビームを含み、上記の方位角を推定する際、第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第2の所定値に実質的に等しくなり、かつ第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第3の所定値に実質的に等しくなる方位角を求める。
【0069】
一形態において、第3のアンテナビームは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームの実質的に中間にあり、第2の所定値は、第3の所定値に実質的に等しい。
【0070】
一形態における本方法は、無線局とマルチビームアンテナパターンの基準位置との間の距離を推定するステップと、マルチビームアンテナパターンの基準位置からの推定された方位角と、マルチビームアンテナパターンの基準位置及び無線局間の推定された距離とに基づいて、無線局の位置を推定するステップをさらに有する。
【0071】
一形態において、無線局及びマルチビームアンテナパターンの基準位置間の距離を推定する際、無線局における受信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも1つに基づく。
【0072】
一形態における本方法は、少なくとも1つの追加的なマルチビームアンテナパターンの各々について、追加的なマルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度各々について、複数の無線信号を、追加的なマルチビームアンテナパターンの各アンテナビームにより送信するステップと、追加的なマルチビームアンテナパターンの内の複数のビーム角度各々について、追加的なマルチビームアンテナパターンの各ビームから送信された複数の無線信号各々に関する無線局で受信された信号の特性に基づいて、追加的なマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するステップをさらに有する。
【0073】
一形態における方法は、無線局の推定位置を少なくとも1つのアクセスポイントに報告するステップをさらに有する。
【0074】
一形態における本方法は、無線局における受信信号強度及びタイミング同期情報の内の少なくとも1つに基づいて、無線局から、複数のマルチビームアンテナパターンの各基準位置の内の少なくとも1つまでの半径方向距離を推定するステップをさらに有する。
【0075】
一形態において、無線局の位置を推定する際、複数のマルチビームアンテナパターンからの推定された無線局の方位角と、複数のマルチビームアンテナパターンの少なくとも一部の基準位置各々と無線局との間の推定された半径方向距離を表す双曲線とが交わる位置に基づいて、無線局の位置が決定される。
【0076】
一形態において、複数のマルチビームアンテナパターンは全てが同じ高度には設けられておらず、無線局の位置を推定する際、複数のマルチビームアンテナパターンの基準位置に対する無線局の推定された半径方向距離及び推定された方位角と、複数のマルチビームアンテナパターンの高度とに基づいて、無線局の高度を推定する。
【0077】
一形態においては、マルチパス伝搬環境における無線局(トランシーバ)の位置を推定する。
【0078】
一形態においては、既存の送信信号フォーマット及び無線トランシーバ装置を利用及び/又は再利用する。
【0079】
一形態においては、無線局に存在するアンテナ及び装置を減らすことで、GPS信号を受信するようなジュライの位置推定技術によるコストと比較して、位置推定システムを実現するコストを減らすことができる。
【0080】
一形態においては、推定された位置情報を利用して、システム状態及び端末の識別子に基づいて、無線局にアクセスリソースを割り当てることができる。
【0081】
本願による以下の具体的な実施例の説明を理解することで、本願による実施例に関する他の形態及び特徴は、当業者にとって明らかになるであろう。
【0082】
本願による実施例は、添付図面とともに単なる例示として以下において説明される。
【実施例1】
【0083】
本願による実施例は、マルチパス又はマルチパスでない無線伝搬環境において、無線トランシーバを備えた無線局の位置を推定するための方法及び装置を提供する。本システムは、例えば基地局であるアクセスポイントにおいて、マルチビームアンテナパターンを利用し、アクセスポイントに対する無線局の方位角が、マルチビームアンテナの各アンテナビームにより送信された個々の信号成分の比率により判別される。「無線局」という用語は、無線トランシーバを含む如何なる装置をも言及するために使用されることが、理解されるべきである。無線局の具体例は、基地局、中継局、移動局等を含むが、これらに限定されない。
【0084】
本願による実施例は、無線局と通信するために既に使用されている既存の無線信号を利用する。本願による実施例は、少なくとも1つのアクセスポイントからのマルチビームアンテナパターンを利用し、そのアクセスポイントは、マルチビームの各々により通常の通信信号の部分を送信する。通常の動作において、これらの交番する送信は、無線局にとっては透明である。しかしながら、マルチビームアンテナパターンを複数のビーム角度にわたって変更しながら、複数のビームアングルにおいて、マルチビームアンテナパターンの各ビームから送信される信号の受信信号特性を報告することで、アクセスポイント及び無線局間の方位角を算出することができる。受信信号強度の情報及び/又はタイミング同期情報(例えば、多くの移動通信プロトコルに固有のタイミングオフセット補正の範囲)をも利用することで、アクセスポイント及び無線局間の半径方向距離を推定することもできる。方位角及び半径方向距離双方により、無線局の位置は、アクセスポイントの位置に対して求めることができる。一実施例において、無線局の位置は、複数のアクセスポイントに対する複数の方位角の交わりにより推定される。
【0085】
一実施例において、推定され決定された無線局の位置は、推定された各々の位置に基づいて、無線局によるネットワークへのアクセスを制限するために使用される。例えば、企業において、ある公のエリアでは任意の端末によるアクセスを許可しているが、別の制限されたエリアでは、特別に認可された端末によるネットワークアクセスしか許可されていないようにしてもよい。別の例として、無線局の場所は、トラフィック負荷のバランスを保つこと等のようにネットワークリソースを割り当てる際に使用されてもよい。例えば、これは、カバレッジ領域内のあるエリアにおいて、訪問者のゲストアクセスを許可することを含む。
【0086】
本願による実施例は、既存の移動通信技術及びサービス(例えば、IEEE802.11、IEEE802.16、ETSI/3GPP LTE及びGSM等を含む)による信号及び伝送フォーマットに基づいている。
【0087】
本願による実施例は、例えば屋内環境においてしばしば生じるマルチパス環境において、改善された位置推定精度をもたらす。
【0088】
一実施例において、無線局の位置を推定する際に、無線局の中に特別な装置を設ける必要は一切ない。
【0089】
図1は、本願による実施例を使用する無線通信システムのブロック平面図を示す。
【0090】
図1に示されている無線通信システムは、第1のアクセスポイント200、第2のアクセセスポイント220、ネットワークサーバ233及び無線局206を含む。
【0091】
無線局206の位置を推定するため、アクセスピント200及び220のアンテナは、マルチビームアンテナパターン群を組み込むように構築される。第1のアクセスポイント200は、第1のアンテナビーム202及び第2のアンテナビーム204を有する。第2のアクセスポイント220は、第1のアンテナビーム222及び第2のアンテナビーム224を有する。図示の例の場合、第1のアクセスポイント200は、第1のアンテナビーム202及び第2のアンテナビーム204の中間にある第3のアンテナビーム208も有する。この第3のアンテナビーム208の役割については後述する。
【0092】
第1のアクセスポイント200における第1のアンテナビーム202及び第2のアンテナビーム204は、第1のアクセスポイント200のカバレッジエリアの中で重複しているが、それらは異なる角度で指定され、無線端末206のような無線局が、アンテナビーム202及び204から異なる信号強度を受ける。この点については、第2のアクセスポイント202のアンテナビーム222及び224についても同じである。このようなマルチビームアンテナパターン群は、例えば、2つのダイポールアンテナによって生成されてもよく、それらのダイポールアンテナの中心及びアンテナ同士の角度差(アングルオフセット)は共通している。
【0093】
一実施例において、第1のアクセスポイントのアンテナビーム202及び204は、機械的な走査装置を利用して(すなわち、アンテナ要素を回転させることで)又は電子ビーム制御部(電子ビームステアリング制御部)等を介して(例えば、「電子ステアリング」と言及するように、アンテナ要素の給電部において可変位相シフタを利用することで)、ビーム角度を360度にわたって時間的にともに回転するようになっている。第2のアクセセスポイント220のアンテナビーム222及び224も同様に構成される。第1のアクセスポイント200のアンテナビーム202、204及び第2のアクセスポイント220のアンテナビーム222、224は、時間とともに連続的に回転してもよいし(すなわち、灯台のように周囲を掃引する)、段階的にステップ毎に回転してもよいし(例えば、一度刻みずつ)、あるいは全ての可能なビーム角度の一部に向けて不連続的な方法で(例えば、電子ステアリングとともに)異なる位置に方向付けてもよい。
【0094】
動作の際、第1のアクセスポイント200の場合、各アンテナビームがビーム角度各々に向くように回転する間に、第1のアクセスポイント200の複数のビーム角度各々について、第1のアクセスポイント200は、第1のアンテナビーム202により無線信号を送信し、かつ第2のアンテナビームにより無線信号を送信する。ビーム角度の各々に関し、第1のアンテナビーム202から送信された無線信号は、第2のアンテナビーム204から送信された無線信号の成分とは異なる成分を有し、これにより、無線端末は、各アンテナビーム202、204から送信された個々の無線信号の成分について、受信信号強度のような受信信号特性を判別することができるようになる。第1のアンテナビーム202及び第2のアンテナビーム204に対する無線端末の位置は、無線端末により測定される、第1及び第2のアンテナビーム204から送信された無線信号の受信信号特性に影響を及ぼす。無線局206が、第1及び第2のアンテナビーム202、204の間の実質的に中間に位置する場合、例えば図1に示すような場合、無線局は、第1及び第2のアンテナビームから送信された各無線信号それぞれについて、実質的に等しい受信信号特性(例えば、受信信号強度)を測定するかもしれない。
【0095】
一実施例において、アクセスポイントのビーム角度は、アクセスポイントの基準角度(reference angle)を基準に測定される。図1の場合、第1のアクセスポイント200の基準角度は、210により示されており、第2のアクセスポイント220の基準角度は、230により示されている。第1及び第2のアクセスピントの基準角度210、230は、図1に示す例の場合、同じ方向を向いているが(図示の特定の実施例の場合、磁気的な北「N」に対応するようにしている)、別の実施例では、各アクセスポイントの基準角度は任意に選択されてよく、他のアクセスポイントの基準角度と異なっていてもよい。ただし、基準角度の相違(差分)は考慮される。
【0096】
システム内の全てのアクセスポイントが、同じ基準角度(例えば、「北」)を使用することは有益である。なぜならそれは、複数のアクセスポイントからの信号により測定された方位角を、簡易に比較できるからである。複数の基地局に対する方位角を測定することで、無線局の位置を、複数の方位角の交わりとして推定してもよい。
【0097】
第1及び第2のアンテナビーム202、204により規定されるマルチビームアンテナパターンのビーム角度が、第1のアクセスポイント200の基準角度210から測定され、かつ第1のアンテナビーム202及び第2のアンテナビーム204により形成されるマルチビームアンテナパターンのビーム角度が、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームのなす角度を実質的に二分する「方位線(bearing line)」に合致していた場合(図1に示す例の場合、90度の方向であるが、より一般的には、マルチビームパターンのアンテナビームの少なくともいくつかが重複している任意の角度である)、第1のアクセスポイント200の基準位置から無線局206に至るまでの推定された方位角は(基準位置はアクセスポイントと同じ場所にあることが通常仮定される)、あるビーム角度に対応し、そのビーム角度の場合、第1のアンテナビームから送信された無線信号及び第2のアンテナビームから送信された無線信号の受信信号特性(例えば、受信信号強度)は、実質的に等しい。したがって、マルチビームアンテナパターンのアクセスポイント(例えば、図1に示されているようなアクセスポイント200、220)からの無線局206の方位角は、マルチビームアンテナパターンのビーム角度と、マルチビームアンテナパターンの各ビームから送信された無線信号の受信信号特性とに基づいて判別できる。
【0098】
図1において、第1のアクセスポイント200が第1のアクセスポイント200の基準角度210から見た無線局206の推定された方位角は、第1のアクセスポイント200の基準位置から方位線212に至るθB1により示されている。同様に、第2のアクセスポイント220が第2のアクセスポイントの基準角度230から見た無線局206の推定された方位角は、第2のアクセスポイントの基準位置から方位線232に至るθB2により示されている。
【0099】
1つのアクセスポイント200又は202と無線局206とのなす方位角は、無線局の位置を示す座標(coordinate)の1つになる。無線局は、アクセスポイントから伸びる方位角方向に沿う何処かに位置している。第2の座標(又は、3次元におけるさらなる座標)を判別し、無線局206の位置を推定するため、本願の実施例では、アクセスポイント200又は202から無線局206に至る半径方向距離、又は複数のアクセスポイントによる複数の方位角方向の交わりが使用される。例えば、図1の場合、無線局206の位置は、方位角θB1及びθB2に対応する方位線212及び232の交わる位置に基づいて、推定されてもよい。
【0100】
一実施例において、水平成分及び垂直成分を有するマルチビームアンテナを使用して、3次元における無線局の位置を推定してもよい。例えば、一実施例において、2つの水平ビーム成分と2つの垂直ビーム成分とを有するマルチビームアンテナが使用され、2つの水平ビーム成分により生成される無線信号の受信信号レベル各々を利用して、水平面内における無線局の方位角を先ず推定し、その後に、2つの垂直ビーム成分により生成される無線信号の受信信号レベルを利用して、垂直面内における無線局の方位角を推定してもよい(その垂直面は、水平面内の方位角により規定される方位線に沿っている。)。
【0101】
マルチビームパターンは水平面内で回転するので、在圏している無線局は、例えば、2つの水平ビーム成分からの2つの信号成分が実質的に等しくなる水平ビーム角度に沿う方位角を求める。その同じ水平ビーム角度において、無線局は、ビームパターンに属する2つの水平ビーム成分による2つの垂直信号成分を測定する。垂直方位角の判別は、本願で説明される水平方位角の判別に応じて行われる。無線局の位置は、これら2つの3次元方位角が交わる位置として推定される。
【0102】
以下、1つのアクセスポイントから無線局までの距離の推定精度を改善するいくつかの技法を説明する。その技法は、アクセスポイントからの方位角に関連して使用され、無線局の推定位置を判別するために使用される。
【0103】
[距離の判別]
距離の測定を行う場合、いくつかの方法により距離を決定することができる。例えば、以下の4つの方法がある。
【0104】
<受信信号強度インジケータ(RSSI)>
この技術は、無線局及び/又はアクセスポイントにおいて測定された受信信号電力レベルを利用して、アクセスポイント及び無線局間の距離を推定する。しかしながら、この技術は、フェージングや反射による被害を被ってしまう。環境に対する構成技術を利用することで、例えば、カバレッジエリア内を歩き回り、位置と信号強度とを記録し、後の動作の校正に使用することで、有効に対処できる。さらに、動的なアルゴリズムを利用して距離推定を支援してもよい。例えば、建物の中にいる人物が1秒間に50メートル移動することは通常起こり得ないことが考慮される。RSSIによるこの技術は、環境の中の既知の場所にある追加的なセンサを利用することで改善され、そのセンサは、信号強度を報告し、測定動作に対する校正能力を維持する。
【0105】
<タイミングアドバンス>
多くの移動通信システムは無線端末トランシーバからの送信に同期し、それらの送信が無線信号の伝搬時間(time−of−flight)について補償されるようにする(複数の端末からの信号全てが、基地局のようなアクセスポイントに、指定された時間に届くようにする。)。したがって、無線局は、信号の伝搬時間の基地局による測定に応じて、無線局の送信タイミングを正確に調整するように装備されている。このプロセスは、「タイムレンジング(time−ranging)」又は「タイミングアドバンス(timing−advance)」としてしばしば言及される。無線局の送信信号各々が、基地局において同期して到着するように調整されている場合、無線局の送信を調整するために送信される算出されたタイミングアドバンスの指示は、基地局及び無線局間の信号伝搬時間を示すラウンドトリップ時間に相当する。この時間の半分に光速(すなわち、伝送媒体の中で「c」)を乗算したものは、無線局及び基地局間の半径方向距離になる。タイミングアドバンスの測定値を利用することで、基地局からの半径という形式で第2の座標を得ることができ、無線局の位置を推定することができる。
【0106】
一実施例において、推定位置情報の所望の精度に依存して、タイミングアドバンス制御信号の分解能は適切でないかもしれない。しかしながら、一実施例において、その分解能は追加的な処理とともに改善される。例えば、アクセスポイントはある装置を備え、その装置は、タイミングアドバンスの増加/減少の指示に関する情報を使用して、より正確な時間を求める。しばしば、タイミング制御ループは装置を補償するためにタイミングを進ませたり遅らせたりして、装置の信号がシグナリングステップ同士の間にあるようにする。例えば、進めるのにかかる時間と遅らせるのにかかる時間との比率は、信号のタイミングの推定精度を、タイミングアドバンス信号のステップサイズ未満に及ぶものにするために使用される。これは、「超分解能(super−resolution)」となる。
【0107】
一実施例において、追加的なハードウェア又はソフトウェアの処理が、無線局のトランシーバに追加される。例えば、シンボルタイミングを判別する一形態による受信機は、受信信号タイミングを調整するのに使用されるそれらの計算結果を報告することができ、これは、本来のタイミングアドバンス制御ループで使用されるものよりも優れた分解能をもたらすタイミングアドバンスを表す。この場合、アクセスポイント及び無線局間の正確な時間を判別するように、ハードウェアが設計される。これにより、正確な距離を推定することができる。この原理は、GPSチップをセルラ電話機に導入することに似ている。
【0108】
<装置に存在するハードウェアを用いた時間の取り扱い>
この技術は、無線局において、ファームウェア、ハードウェア又はそれら2つの組み合わせについて比較的些細な変更を加えることしか必要としない。この技術の場合、無線局の受信機のハードウェアは、アクセスポイントのクロックに同期する。ある受信機の場合、追加的なハードウェアを利用して、回路をサブクロックの精度に同期させる
一実施例において、無線局206が、複数のアクセスポイント(例えば、第1のアクセスポイント200及び第2のアクセスポイント220の双方)から信号を受信することができる場合、方位角及び各アクセスポイントに至るまでの半径方向距離が判定され、無線局の位置は、一群の方位角及び半径方向距離の交わりとして推定される。
【0109】
一実施例において、複数のアクセスポイントに同期するのに必要な無線局の信号のタイミングアドバンスの差分は、各基地局に対する方位角方向が交わる位置の無線局とともに、アクセスポイント同士の間に双曲線を規定する。この技術を利用することで、位置の推定精度を潜在的に改善することができる。多くの場合、基地局のようなアクセスポイントは、移動通信システムの標準的な構成の一部として、各自のタイミングに同期し、各自の送信同士の間の干渉を最小化している。一実施例において、アクセスポイントが各自のタイミングに同期していなかった場合、それらのタイミングオフセットの別の測定が行われ、それを利用して異なる局からのタイミングアドバンス測定値を補償する。
【0110】
このシステムにおけるビームの回転は、連続的である必要も、常に同じ方向である必要もない。一実施例において、各々の角度から送信される信号は、ビームの角度を示す「角度コード又は角度情報(angle code)」を含み、したがって、それぞれの角度が連続的に増加したり減少したりする必要はなく、一定のパターンで変化する必要もない。ビームの角度は、(例えば、電子ビーム制御部又は電子ビームステアリング制御部を用いることで)任意の順序で任意の角度に移ってよい。ビームパターンを示すビームパターン信号が、ビーム以外の拡散符号(sign)により表現されてもよい。例えば、基地局の動作は、各システムフレームインターバルの開始時点において、ビーム信号を送信するように選択されてもよい。
【0111】
一実施例において、ビーム角度を表すコード(符号)は、アクセスポイントから送信されなくてもよい。例えば、無線局は、ビーム角度各々に対する受信信号特性の測定結果を単に報告し、アクセスポイント又はネットワークサーバが、方位角を推定してもよく、そのアクセスポイント又はネットワークサーバは、無線局が報告した測定値に対応する方位角を求めることができる。
【0112】
無線局の方位角及び/又は位置を判定するための演算処理は、1つ以上のアクセスポイントにより行われてもよいし、基地局と通信するネットワークに付随するネットワークサーバにより行われてもよいし、無線局自身により行われてもよいし、それらの要素の組み合わせにより行われた計算/測定の結果でもよい。
【0113】
一実施例において、簡易かつ安価なシステムの場合、図1に示される無線局206のような無線局は、(移動通信システムにおけるシグナリング又はメッセージチャネルを利用して)第1のアクセスポイント200のようなアクセスポイントに対して、ビーム角度コード及びある比率を報告し、その報告は、第1のアクセスポイントの第1及び第2のアンテナビームから送信された無線信号各々に関する無線局で測定された受信信号電力同士の比率が、1に近い場合に行われ、すなわち、そのビーム角度の場合、第1のアクセスポイントの第1及び第2のアンテナビームからの信号電力が無線局において実質的に等しく受信される。図1に示される例の場合、移動局についての方位角θB1をアクセスポイント200に通知することになる。例えば、RSSI及び/又はタイミング同期情報に基づいて、アクセスポイントから無線局までの半径方向距離の推定値とともに、上記の方位角を使用することで、アクセスポイントは、無線局の位置を推定することができる。
【0114】
この構成の場合、無線局に追加的な装置は一切不要である。無線局が複数のアクセスポイントからの信号を受信できる場合、無線局は各アクセスポイントと通信し、それらのアクセスポイントは、個々の位置推定結果の交わりを判別し、推定値に対する制度を改善してもよい。この方法は有利であり、基地局は、近辺のローカルエリアのマッピング情報を各自の計算結果に含め、近辺のローカルな地図(例えば、建物の間取り図や近隣の地図)にその位置情報を加えることができる。
【0115】
別の実施例において、より高性能な演算能力を備えた無線局は、信号の測定を行い、各自の位置を自身で算出してもよい。この代替例の場合、無線局は、通信プロトコルの一部として、タイミングアドバンスを測定する標準的なアクセスポイントの処理を当てにし、基地局は、無線局に演算結果を通知し、無線局が自身のタイミングアドバンスを適切に設定できるようにする。無線局における処理は、基準角度に対する複数の測定結果と複数の基地局に対するタイミングアドバンスとを利用して、位置の推定をさらに改善する。
【0116】
一実施例において、「ユーザフレンドリ」な方法で推定位置の情報を提供するため、無線局は、アクセスポイントの位置及び近隣の地図(例えば、間取り図、平面図、見取り図)のデータベースを含んでもよいし、あるいは、そのような情報及びアクセスポイントの位置を、ネットワーク内の何処かに保存されているデータベースから取得してもよい。
【0117】
無線局における演算処理を支援するため、アクセスポイントは、各自の位置座標及び基準角度をブロードキャスト(報知)してもよい。一実施例において、無線局は、例えば、システムデータベースに問い合わせることで、アクセスポイントにおけるこの必要な情報(基準角度及びアクセスポイントの位置)を要求する、あるいは、これは、無線通信システムに固有のデータ通信施設を利用する第三者のアプリケーションにより行われてもよい。
【0118】
複数のビームを形成するアンテナシステムの設計に依存して、ビーム角度及び分解能にいくらかの曖昧さが生じる。基地局近辺の障害物(反射物)に近いアンテナ要素及び付属物の構成は、ビームを劣化させ、あるいはサイドローブ(又はバックローブ)を生じさせてしまう。過剰に多くの散乱障害物が存在する場合、ビーム形状の分解能も劣化してしまう。これらの影響により、ビームが回転する際、いくつかのビーム角度から等しい振幅(強度)のいくつもの信号を、無線局がマルチビームアクセスポイントから受信することを引き起こす。その場合、最も多い数のサブキャリアが1に近く、最も強い信号振幅を有するビーム角度コードを利用することで、ある程度の曖昧さをなくすことができる。これらの場合における位置推定精度をさらに改善するには、追加的なビームを導入することが望ましい。無線局は、複数のビームにわたって受信信号特性を測定し、いくつかの曖昧さをなくす。
【0119】
ビームパターンが実際には明確でない場合、これらの追加的な測定は、角度の分解能を改善する。例えば、図1の場合、第3のアンテナビーム208が破線で示されている。第1、第2のアンテナビーム202、204及びこの追加的なビーム208についての受信信号特性の測定値を利用して、どのビームペアが測定されているかを判別し、さらに、それらのビーム同士の信号比率の精度を改善する。例えば、図1における第3のアンテナビーム208を利用して、ビーム202及びビーム204から送信される無線信号の等しい受信信号特性に加えて、さらなる角度の分解能をもたらす。第3のマルチビームパターンのビーム角度が、第1のアクセスポイント200から見た無線局の方位角方向に整合している場合、第3のアンテナビーム208は第1及び第2のアンテナビームの中央の角度に位置するので、ビーム202及び208による受信信号強度の比率と、ビーム204及び208による受信信号強度の比率とは共通することになる。
【0120】
通信に関するシステムのパフォーマンスをさらに改善するため、アクセスポイントは、無線局から報告されたビーム角度を保存し、その無線局と通信するために送信(及び受信)にその角度を利用(再利用)する。このように、無線局に対するサービスに関し、基地局は信号強度(リンクバジェット(link budget)を改善する機会を有する。
【0121】
図示の都合上、ただ1つの無線局と2つのアクセスポイントしか図1に示されていない。しかしながら、より一般的には、本発明の実施例は、マルチビームアンテナパターンを生成することが可能な任意の数のアクセスポイントを利用して、任意の数の無線局を追跡するように実現可能である。
【0122】
一実施例において、無線局の方位角及び/又は位置の推定は、ネットワークサーバ233において判別される。
【0123】
一実施例において、ネットワークサーバ233は、位置情報と、無線局に関する識別情報とを保存する情報格納部を含む。
【0124】
一実施例において、ネットワークサーバ233は、各アクセスポイントの方位角情報を通知し、1つ以上のアクセスポイントが、各無線局の2以上の方位角の交わる位置に基づいて、無線局の位置を推定できるようにする。
【0125】
本願による実施例は、OFDM、CDMA、TDMA及びUWB等に基づくシグナリングフォーマットのような多種多様なシグナリングフォーマットとともに動作する無線通信システムにおいて実現されてよい。
【0126】
図2は、OFDMに基づく本願による非常に具体的な実施例において観測される送信及び受信信号電力を示す。図2は例示的に示されているにすぎず、本願による開示範囲を限定するように解釈されてはならない。図2において、OFDM信号のあるサブキャリア群が第1のアンテナから送信され、OFDM信号の別のサブキャリア群が第2のアンテナから送信されることが仮定されており、サブキャリア番号1、2、4、5、7、9、10に対応するサブキャリアが、第1のアンテナから送信され、サブキャリア番号1、3、4、5、6、8、10に対応するサブキャリアが、第2のアンテナから送信される。第1及び第2のアンテナから送信されるサブキャリアの送信電力レベルは、図2の240、242においてそれぞれ示されている。
【0127】
図2に示される例の場合、サブキャリア1、2、4、5、10は2つのビームで共通しているが、サブキャリア2、3、6、7、8、9は異なる(サブキャリア2、7、9のみが第1のアンテナから送信され、サブキャリア3、8のみが第2のアンテナから送信される。)。図示の例は、直交周波数分割多重(OFDM)無線システムにおいて使用されるようなサブキャリアに関連するが、本願は、時分割多元接続(TDMA)方式において使用されるタイムスロット、符号分割多元接続(CDMA)方式において使用されるコード、及びパルスベースのウルトラワイドバンドUWBにおいて使用されるパルス等に対しても等しく適用可能である。
【0128】
OFDM通信システムの場合、アンテナビーム同士で異なるサブキャリアは、パイロットサブキャリアの一部であってもよい。TDMAシステムの場合、近接するタイムスロットやシンボルについて異なるアンテナビームが使用されてもよい。CDMAシステムの場合、等しい電力で拡散コードを近接して送信する際に、異なるアンテナビームが使用されてもよい。
【0129】
図2の244、246、248により示されているものは、第1、第2のアンテナビームを受信する3つの場所において、第1、第2のアンテナビームから送信されたOFDM信号を受信した無線局が観測する受信信号電力レベルに対応する。
【0130】
無線局の受信機は、双方のアンテナ(図1の例の場合、アクセスポイント200の双方のアンテナ202、204)から送信された信号を検出する。検出プロセスの一部として、無線局の受信機は、各サブキャリアの強度を判定する。あるビームから送信された個々のサブキャリアの強度と、別のビームにおける個々のサブキャリアの強度との比率は、アクセスポイントからの各ビームのビーム角度とともに、無線局の位置の測定値をもたらす。例えば、2つのビームからのサブキャリアが、同一又は類似する強度であるように測定された場合、その無線局は、2つのビームの中央線上に位置している。ビーム同士の間の中間の角度付近の角度範囲に対して、受信信号強度比率に対する線形関係により、オフセット角度が高精度に近似される。
【0131】
244により示されている受信信号電力レベルは、第2のアンテナビームよりも第1のアンテナビームに接近している無線局が観測する受信信号電力レベルに対応する。一般に、受信信号電力は、ビーム角度から角度がずれると落ち込むので、無線局が、第2のアンテナビームよりも第1のアンテナビームの角度付近に位置する場合、第2のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア3、6、8)は、第1のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア2、7、9)と比較して弱い電力レベルで受信される。
【0132】
246により示されている受信信号電力レベルは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームに対して等距離に位置している無線局が観測する受信信号電力レベルに対応する。無線局が、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームに対して等距離に位置する場合、第2のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア3、6、8)は、第1のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア2、7、9)と実質的に同じ強さの電力レベルで受信される。
【0133】
248により示されている受信信号電力レベルは、第1のアンテナビームの角度よりも第2のアンテナビームの角度に接近している無線局が観測する受信信号電力レベルに対応する。無線局が、第1のアンテナビームの角度よりも第2のアンテナビームの角度付近に位置する場合、第1のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア2、7、9)は、第2のアンテナビームのみから送信されるサブキャリア(サブキャリア3、6、8)と比較して弱い電力レベルで受信される。
【0134】
アクセスポイントからのビームが複数のビーム角度にわたって回転する場合に、無線局が、時間とともに変化する一連のサブキャリア比率の測定値を生成するならば、それらの測定値は、ビーム角度が無線局の方を向いている場合(又はほぼその方向を向いている場合)に、等しい値(又はほぼ等しい値)を示すであろう。図2に示されているように、無線局がビーム同士の間で等距離に位置している場合、2つのビームから送信されたサブキャリアの受信信号強度の比率は、ほぼ等しい。無線局が、第2のアンテナビームよりも第1のアンテナビームの方に近かった場合、第1のアンテナビームからのサブキャリア信号は、第2のアンテナビームのものより大きく、第1のアンテナビームの個々のサブキャリアの受信信号電力と、第2のアンテナビームにおけるものとの比率は、1より大きくなる(すなわち、サブキャリア2/サブキャリア3>1、サブキャリア7/サブキャリア6>1、サブキャリア9/サブキャリア8>1となる。)。無線局が、第1のアンテナビームよりも第2のアンテナビームの方に近かった場合、第2のアンテナビームからのサブキャリア信号は、第1のアンテナビームのものより大きく、第1のアンテナビームの個々のサブキャリアの受信信号電力と、第2のアンテナビームにおけるものとの比率は、1より小さくなる(すなわち、サブキャリア2/サブキャリア3<1、サブキャリア7/サブキャリア6<1、サブキャリア9/サブキャリア8<1となる。)。したがって、2つのビームの角度に関連する無線局の位置は、サブキャリア信号電力の比率から推定することができる。サブキャリアは、同じシンボルにより送信され、同じフェージング及びマルチパスを被るので、(たとえ個々の信号が伝搬に影響されたとしても)この比率の測定値は、伝搬の影響に敏感ではない。以上の考察は、(TDMA及びCDMAシステムに関する)個々のアンテナから、TDMAタイムスロットを比較することや、CDMAコード送信を比較することに使用されてもよい。
【0135】
同じ基地局からの送信信号の一部として送信された2つ(又はそれ以上)のサブキャリア強度の比率を測定し、(近似的に)等しい強度になるまで待機することで、その環境におけるマルチパス伝搬の影響は緩和される。なぜなら、双方のビームからの信号に対して、同じ伝搬条件が等しく影響するからである。このように、多重のビーム(又は複数ビームによる方法)は、散乱性が強いマルチパス伝搬環境において有用であり、受信機は2つの近接したサブキャリア(又はタイムスロット)の信号強度を比較することができ、マルチパス伝搬環境で見受けられる信号強度の著しい変動による影響を受けずに済む。したがって、本願による実施例は、1つのビームの最大値を監視する従来のシステムを上回る改善された精度をもたらす。
【0136】
上述したように、本願による実施例は、図2を参照しながら説明したもののようなOFDM方式の実施例に限定されない。例えば、本発明の実施例は、時分割多元接続(TDMA)、符号分割多元接続(CDMA)及び/又はウルトラワイドバンド(UWB)方式のシグナリング技術等を利用する無線通信システムにおいて実現されてもよい。
【0137】
以下、例示の観点から、CDMA、TDMA及びUMB通信システムにおいて本願の実施例がどのように実現されるかについて概説する。
【0138】
<CDMAの場合>
CDMAシステムにおいて本願の実施例を利用する一例は、送信バース各々の始めのプリアンブルを利用して、アンテナビーム各々について異なる信号を生成する。これらのプリアンブルは、各バーストの始めに設けられ、受信機によるチャネル推定及びトレーニングを可能にする。CDMA応用例における本実施例の場合、一部のプリアンブル(例えば、1/2)が、あるアンテナパターンで送信され、他の部分が他の者により送信される(すなわち、あるアンテナにより半分が送信され、他の半分が別のものにより送信される)。ただし、説明の便宜上、マルチビームアンテナは、2つのアンテナを含むものとする。受信機は、プリアンブルの2つの部分の信号強度の比率から、アンテナパターンとビーム角度の関係を判別する。
【0139】
CDMAの代替例において、本願の他の実施例によれば、アンテナパターン各々により同時に送信される送信信号の一部に異なるCDMA拡散コードが使用される。受信機は、その2つのコードの信号の比率を測定し、ビーム角度の関係を判別する。2つが同じ強度で受信された場合、例えば、受信機は2つのビームの中間に位置することになる。多くのCDMAシステムにおいて、2つのアンテナパターンについて2つのコードを使用することは必須ではない。あるアンテナが、他のアンテナからの信号よりも送れて送信することが考えられる。2つの信号(一方は所定の期間だけ送れている)は、受信され、例えばレイク(Rake)受信機により各自の成分に分解される。2つの成分の信号強度の比率は、受信機によるビームの角度の推定値に使用される。例えば、所定の時間オフセット(タイムオフセット)を伴う2つの成分が同じ強度であった場合、その受信機は、送信ビーム同士の中間に位置している。
【0140】
<TDMAの場合>
アンテナコードを送信する際に、タイムスロットを使用することもできる。タイムスロット全体が各アンテナに割り当てられてもよいが、それは効率的でない(リソースを浪費してしまう。)。可能な方法の1つは、フレームのプリアンブルを使用し、半分を一方のアンテナに使用し、半分を他のアンテナに使用することである。無線局がアンテナビーム同士の中間に位置していた場合、プリアンブルは等しい電力をもたらす。無線局が、プリアンブルの最初の半分に使用されているアンテナビームに近接していた場合、その受信信号は、プリアンブルの最初の半分において、より高くなる。(上記のCDMA技術におけるバーストプリアンブルを使用する場合と同様である。)。
【0141】
<UWBの場合(パルスベースのUWBシステム>
ぱるすべーすのUWBシステムは、非常に短い送信パルスにより特徴付けられる。「UWB」システムは、事実上、OFDM波形を使用するので、上記のOFDMの実施例に関する議論をそのまま適用できる。パルスベースのUWBシステムに関する本実施例の場合、代替的なパルス群が代替的なアンテナビーム群から送信される。受信機は、一連のパルスの信号強度の比率により、ビーム角度に対する関連性を測定する。例えば、等しい振幅の複数のパルスは、その無線局がビーム間の中間に位置していることを示す。交番するパルスにより、パルスをもたらすアンテナビームがどれであるかが受信機において曖昧になってしまうが、この曖昧さは、1つのアンテナビームから到来するパルスを指定するのに使用されるシグナリングチャネルによる通信を利用することで、解消される。受信機は、比率を計算するサインどのパルスを分母に使用するかを判別する。マルチパス伝搬状況に起因して、信号強度は変化するので、受信機は、(マルチパス信号の中で)最も早期に受信したパルスを測定し、多数のパルスの中でその信号強度を平均化する。
【0142】
図3は、本願による実施例にしたがって、マルチビームアクセスポイントにおいて使用される非常に具体的な方法例を示す。図3のフローチャートは、例示目的としてのみ使用され、本願の範囲を限定するように解釈されてはならない。図3に示されるフローチャートは、6つのステップ300、302、304、306、308、310を含む。
【0143】
ステップ300において、複数の無線信号が送信され、無線信号の各々は、マルチビームアンテナパターンに属する各自のビームにより送信される。
【0144】
ステップ302において、マルチビームアンテナパターンに属する各自のビームにより送信された複数の無線信号の各々について、無線局が測定した受信信号特性の測定値が、受信される。
【0145】
ステップ304において、マルチビームアンテナパターンのビーム角度と、無線局における受信信号特性の測定値とに基づいて、マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局に至る方位角の推定が行われ、その受信信号特性は、マルチビームアンテナパターンに属する各自のビームにより送信された複数の無線信号に関するものである。
【0146】
ステップ306において、追加的なマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの推定された方位角が、受信される。この推定値はアクセスポイントにより算出されてもよく、そのアクセスポイントは、追加的なマルチビームアンテナパターンを生成し、上記のステップ300、302、304にしたがって追加的な推定された方位角を判定する。
【0147】
ステップ308において、マルチビームアンテナパターンの基準位置の方向と、無線局の推定された方位角方向とが交わる位置に基づいて、無線局の位置が推定される。
【0148】
ステップ310において、無線局の推定された位置が、無線局及び/又は他のユーザやネットワークサービスに提供される。
【0149】
図4は、本願による実施例にしたがって無線局において使用される非常に具体的な方法例を示す。図4のフローチャートは、例示目的としてのみ使用され、本願の範囲を限定するように解釈されてはならない。図4に示されるフローチャートは、8つのステップ400、402、404、406、408、410、412、414を含む。
【0150】
ステップ400において、無線局は、第1のマルチビームアンテナパターンによる第1の複数の無線信号を受信し、その第1の複数の無線信号の各々は、第1のマルチビームアンテナパターンに属する各自のビームにより送信される。
【0151】
ステップ402において、無線局は、第1の複数の無線信号各々の受信信号特性を測定する。
【0152】
ステップ404において、無線局は、第2のマルチビームアンテナパターンによる第2の複数の無線信号を受信し、その第2の複数の無線信号の各々は、第2のマルチビームアンテナパターンに属する各自のビームにより送信される。
【0153】
ステップ406において、無線局は、第2の複数の無線信号各々の受信信号特性を測定する。
【0154】
ステップ408において、第1のマルチビームアンテナパターンのビーム角度と、第1の複数の無線信号の受信信号特性の測定値とに基づいて、無線局は、第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの第1の方位角を推定する。
【0155】
ステップ410において、第2のマルチビームアンテナパターンのビーム角度と、第2の複数の無線信号の受信信号特性の測定値とに基づいて、無線局は、第2のマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの第2の方位角を推定する。
【0156】
ステップ412において、第1の方位角及び第2の方位角の推定値の交わる場所に基づいて、無線局は無線局の位置を推定する。
【0157】
ステップ414において、無線局は、推定された無線局の位置を、アクセスポイント及び/又は他のユーザ又はネットワークサービス(例えば、無線局におけるアプリケーションを含む)に提供する。
【0158】
図5は、本願による実施例において使用される無線アクセスポイント500のブロック図を示す。図5に示されるアクセスポイント500は、概して502及び504により示されている2つのダイポールアンテナを含むマルチビームアンテナシステムと、ビームステアリング制御部506と、無線周波数(RF)送信部(図示せず)を含むアクセスポイント部508と、位置推定制御部512と、アクセス制御部514と、情報格納部515とを含む。
【0159】
ビームステアリング制御部506は、ビームステアリング制御装置510を含み、ビームステアリング制御装置510は、位置推定制御部512に機能的に結合し、可変位相シフタ503−1、503−2、505−1、505−2の2組の入力を制御し、可変位相シフタは、ダイポールアンテナ502、504の入力にそれぞれ結合されている。
【0160】
アクセスポイント部508は2つの出力を有する。一方の出力は、位相シフタ503−1、505−1の入力に接続され、他方の出力は、位相シフタ503−2、505−2に接続されている。
【0161】
位置推定制御部は、情報格納部515及びアクセス制御部514に機能的に接続されている。
【0162】
アクセスポイント部508、アクセス制御部514及び情報格納部515は、通信ネットワーク(図示せず)に機能的にそれぞれ接続されている。
【0163】
ダイポールアンテナ502、504は、マルチビームアンテナパターンを生成するように構築されている。
【0164】
ビームステアリング制御部506は、2つのダイポールアンテナ502、504により生成されるアンテナを、複数のビーム角度に方向付けるように構築されている。
【0165】
アクセスポイント部508における無線周波数(RF)送信部は、複数のビーム角度に属するビーム角度各々により複数の無線信号を生成し、各ビーム角度における複数の無線信号に属する無線信号各々は、2つのダイポールアンテナ502、504により生成されるマルチビームアンテナパターンに属する各自のアンテナビームにより送信される。
【0166】
位置推定制御部512は、複数のビーム角度及び無線局により測定された受信信号特性に基づいて、2つのダイポールアンテナ502、504により生成されたマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局に至るまでの方位角を推定するように構築され、その受信信号特性は、複数のビーム角度各々の各自のアンテナビームから送信された複数の無線信号各々の受信信号特性である。
【0167】
一実施例において、アクセス制御部514及び/又は情報格納部515は、アクセスポイント500の一部分でなくてもよく、その場合は、例えば、アクセスポイント500と通信するネットワークサーバ内に実現される。
【0168】
図5に示されているアクセスポイント500は、2つのダイポールアンテナを含み、2つのアンテナビームを含むマルチビームアンテナパターンを生成しているが、本発明の実施例によるより一般的なアクセスポイントは、マルチビームアンテナパターンを生成することが可能な如何なる数の如何なるタイプのアンテナを含んでもよい。
【0169】
一実施例において、位置推定制御部512は、アクセスポイントにより推定された無線局の方位角に基づいて、ビームステアリング制御部506を制御し、無線局と通信するためにマルチビームアンテナパターンのビームを無線局の方向に向ける。
【0170】
一実施例において、位置推定制御部512は、あるビーム角度を決定することで、2つのダイポールアンテナ502、504により生成されたマルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局に至るまでの方位角を推定し、そのビーム角度では、マルチビームアンテナパターンに属する各自のアンテナビームにより送信された無線信号の受信信号特性同士の比率が、実質的に所定値に等しくなる。一例において、所定値は、例えば「歩行テスト(walk−test)」のような初期の校正ステップにより決定されてもよい。
【0171】
一実施例において、2つのダイポールアンテナは、各アンテナにより生成される第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームが、90度より少ない角度だけ離れているように構築されてもよい。一実施例において、各アンテナにより生成される各アンテナビームは、45度より少ない角度だけ離れている。一実施例において、各アンテナビームは、30度だけ又は30度より少ない角度だけ離れている。一般に、無線局の位置を判別できることが望まれる領域において、アンテナビーム同士がある程度の重複をもたらす任意の角度だけ離れているように、アンテナビーム群が選択される。
【0172】
一実施例において、位置推定制御部512は、無線局の方位角の推定値を他のアクセスポイントから受信するように構築され、自身の基準位置による無線局の方位角の推定値と、他のアクセスポイントの基準位置による無線局の方位角の推定値とが交わる位置に基づいて、位置推定制御部512は無線局の位置を推定する。
【0173】
情報格納部515は、無線局に関する推定された位置情報及び識別情報を保存する。情報格納部は、例えば地図や間取り図のような、位置情報の提示を促す近隣の状況に関する情報を保存してもよい。その情報は、推定された位置に基づいて、及び/又は無線局による要求により、又は他のアプリケーションにより無線局に提供されてもよい。
【0174】
アクセス制御部514は、位置推定制御部512により判定された無線局の推定位置に基づいて、無線局による無線通信システムリソースのアクセスを制御するよう構築される。アクセス制御部514はスクリーニングプロセスを行い、そのスクリーニングプロセスは、無線局の位置及び他の判断基準(アカウントの状態又は他の識別情報等)に基づいて、アクセスポイントに対する無線局のアクセスを遮る(そのような判断基準は、情報格納部515又は他の場所に保存されている。)。そして、アクセスポイントは、推定した位置を利用して、ある公の会議室内の移動ゲストトランシーバからのアクセスを許可するが、企業の他の場所に居るゲストトランシーバからのアクセスを排除する。
【0175】
本願による実施例は、マルチパスが強い伝搬環境における無線局の位置を特定する改善された精度をもたらす方法を提供する。そのような改善された位置情報は、通信システムのユーザに提供されるさらなるサービス、又はコンピュータ同士の通信やサービスに対する基礎をもたらすことができる。本願による実施例は、(標準的な無線システムの機能をサポートするのに必要なこと以外に)無線局内に如何なる追加的な装置も必要とせず、低コストで提供可能である。このことは、低コスト化を要する屋内環境におけるコンピュータ同士の通信にとって特に重要である。本発明を用いることで、訪問者や社員が企業のネットワークにアクセスすることを位置により制限できるようになる。一実施例において、このアクセス制御プロセスのための無線局のドライバは、企業のセキュリティ機器の一部に含めることができる。
【0176】
<通信システム要素の説明>
図6を参照するに、図6は、複数のセル12の中で無線通信を制御する基地局コントローラ(BSC)を示し、各セルでは対応する基地局(BS)14によりサービス提供される。一形態において、各セルは複数のセクタ13又は(不図示の)ゾーンにさらに分割される。一般に、各基地局14は、各基地局14に関連するセル12に在圏する移動局及び/又は無線局16との通信を支援する。基地局14に関わる無線局16が移動すると、チャネル状態は激しく変動する。図示されているように、基地局14及び無線局16は、複数のアンテナを有し、通信に関する空間ダイバーシチを行う。一形態において、中継局15は、基地局14及び無線局16の間の通信を支援する。無線局16は、任意のセル12、セクタ14、(不図示の)ゾーン、基地局14又は中継局15から、他のセル12、セクタ13、(不図示の)ゾーン、基地局14又は中継局15へハンドオフ(ハンドオーバ)することができる。一形態において、基地局14同士は互いに通信し、かつバックホール(backhaul)ネットワーク11を通じて他のネットワーク(例えば、コアネットワーク、インターネット等であるが、これらはともに図示されていない)とも通信する。一形態において、基地局コントローラ10は不要である。
【0177】
図7を参照するに、基地局14の具体例が示されている。概して、基地局14は、制御部20、ベースバンドプロセッサ22、送信回路24、受信回路26、複数のアンテナ28及びネットワークインターフェース30を含む。受信回路26は、(図8に示される)無線局16により提供される無線周波数信号伝送情報を、1つ以上の遠隔送信部から及び(図9に示される)中継局15から受信する。低雑音増幅器及びフィルタ(図示せず)は、処理する信号を増幅し、処理する信号からブロードバンド干渉を除去するように協働する。ダウンコンバージョン及びディジタルか回路(図示せず)は、受信されフィルタリングされた信号を、中間周波数又はベースバンドの信号にダウンコンバートし、その信号は1つ以上のディジタルストリームにディジタル化される。
【0178】
ベースバンドプロセッサ22は、受信されディジタル化された信号を処理し、受信信号により搬送された情報又はデータビットを抽出する。この処理は、典型的には、復調、復号及び誤り訂正処理を含む。したがって、ベースバンドプロセッサ22は、一般的には、1つ以上のディジタル信号プロセッサ(DSP)又は特定用途集積回路(ASIC)により実現される。そして、受信信号は、ネットワークインターフェース30を介して無線ネットワークを介して送信され、あるいは基地局14に関わっている他の無線局16へ、直接的に又は中継局15の支援を受けて送信される。
【0179】
送信する場合、ベースバンドプロセッサ22は、音声、データ又は制御情報を表すディジタル化されたデータを、制御部20による制御の下でネットワークインターフェース30から受信し、送信するためのデータにエンコードする。エンコードされたデータは、送信回路24に出力され、所望の単独の送信周波数又は複数の周波数における1つ以上のキャリア信号に変調される。(不図示の)電力増幅器は、変調されたキャリア信号を、送信に相応しいレベルに増幅し、その変調されたキャリア信号を、マッチング回路(図示せず)を介してアンテナ28に運ぶ。典型的には、デュプレクサ及び/又は他の装置(図示せず)は、送信回路24及び受信回路26をアンテナ28に接続され、送信回路24により生成され送信される信号が、受信回路26に進入してしまうことを防ぐ。一形態において、送信及び受信にダイバーシチ法が使用され、複数のアンテナを使用して、通信信号を受信及び/又は送信する。変調及び処理の詳細は、以下において説明される。
【0180】
図8を参照するに、無線局16の具体例が示されている。基地局14と同様に、無線局16は、制御部32、ベースバンドプロセッサ34、送信回路36、受信回路38、複数のアンテナ40、及びユーザインターフェース回路42を有する。受信回路38は、1つ以上の基地局14及び中継局15から、無線周波数伝送情報を受信する。低雑音増幅器及びフィルタ(図示せず)は、処理する信号を増幅し、処理する信号からブロードバンド干渉を除去するように協働する。ダウンコンバージョン及びディジタルか回路(図示せず)は、受信されフィルタリングされた信号を、中間周波数又はベースバンドの信号にダウンコンバートし、その信号は1つ以上のディジタルストリームにディジタル化される。
【0181】
ベースバンドプロセッサ34は、受信されディジタル化された信号を処理し、受信信号により搬送された情報又はデータビットを抽出する。この処理は、典型的には、復調、復号及び誤り訂正処理を含む。ベースバンドプロセッサ34は、一般的には、1つ以上のディジタル信号プロセッサ(DSP)又は特定用途集積回路(ASIC)により実現される。
【0182】
送信する場合、ベースバンドプロセッサ34は、音声、データ又は制御情報を表すディジタル化されたデータを、制御部32による制御の下でネットワークインターフェース42から受信し、送信するためのデータにエンコードする。エンコードされたデータは、送信回路36に出力され、所望の単独の送信周波数又は複数の周波数における1つ以上のキャリア信号に変調される。(不図示の)電力増幅器は、変調されたキャリア信号を、送信に相応しいレベルに増幅し、その変調されたキャリア信号を、マッチング回路(図示せず)を介してアンテナ40に運ぶ。当業者が利用可能な様々な変調及び処理の技術が、直接的な又は中継局を経由する無線局及び基地局間の信号送信に使用される。
【0183】
図9を参照するに、中継局15の具体例が示されている。基地局14及び無線局16と同様に、中継局15は、制御部132、ベースバンドプロセッサ134、送信回路136、受信回路138、複数のアンテナ130及び中継回路142を含む。中継回路142は、基地局14及び無線局16の間の通信を中継局15が支援できるようにする。受信回路138は、1つ以上の基地局14及び無線局16から、無線周波数伝送情報を受信する。低雑音増幅器及びフィルタ(図示せず)は、処理する信号を増幅し、処理する信号からブロードバンド干渉を除去するように協働する。ダウンコンバージョン及びディジタルか回路(図示せず)は、受信されフィルタリングされた信号を、中間周波数又はベースバンドの信号にダウンコンバートし、その信号は1つ以上のディジタルストリームにディジタル化される。
【0184】
ベースバンドプロセッサ134は、受信されディジタル化された信号を処理し、受信信号により搬送された情報又はデータビットを抽出する。この処理は、典型的には、復調、復号及び誤り訂正処理を含む。ベースバンドプロセッサ134は、一般的には、1つ以上のディジタル信号プロセッサ(DSP)又は特定用途集積回路(ASIC)により実現される。
【0185】
送信する場合、ベースバンドプロセッサ134は、音声、データ又は制御情報を表すディジタル化されたデータを、制御部132から受信し、送信するためにエンコードする。エンコードされたデータは、送信回路136に出力され、所望の単独の送信周波数又は複数の周波数における1つ以上のキャリア信号に変調される。(不図示の)電力増幅器は、変調されたキャリア信号を、送信に相応しいレベルに増幅し、その変調されたキャリア信号を、マッチング回路(図示せず)を介してアンテナ40に運ぶ。上述したように、当業者が利用可能な様々な変調及び処理の技術が、直接的な又は中継局を経由する無線局及び基地局間の信号送信に使用される。
【0186】
中継局の上記の説明は、本願の実施例において使用可能な中継局の内の非常に限定的な一例を述べていることに留意することは、重要である。本願の実施例で使用されてもよい別の形態を有する他の多くのタイプ及び処理が存在する。
【0187】
以上の説明は、単なる一例として提供された多くの具体的な実施例を含み、本発明の範囲を限定するように実施例を解釈してはならない。代替例、修正例及び変形例は、特許請求の範囲によって規定されている本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって上記の特定の実施例から得られる。
【符号の説明】
【0188】
200、220 アクセスポイント
202、204、222、224 アンテナビーム
206 無線局
210、230 基準方向
212、232 方位線
233 ネットワークサーバ
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0189】
【非特許文献1】3GPP,TS36.300,V8.8.0(2009−03)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度と、無線局が受信した信号の特性とに基づいて、前記マルチビームアンテナパターンの基準位置から前記無線局までの方位角を推定するステップを有し、前記無線局が受信した信号の前記特性は、前記複数のビーム角度の各々により、前記マルチビームアンテナパターンのビーム各々から送信された複数の無線信号各々についての特性である、方法。
【請求項2】
前記マルチビームアンテナパターンの前記複数のビーム角度の各々により、複数の無線信号に属する無線信号各々を、前記マルチビームアンテナパターンのビーム各々により送信するステップをさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記無線局と通信するために、前記無線局の推定された前記方位角に基づいて、前記マルチビームアンテナパターンのビームを前記無線局に向けるステップをさらに有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチビームアンテナパターンの基準位置から前記無線局までの方位角を推定する際、前記マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信される少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、所定値に実質的に等しくなるビーム角度を求める、請求項1−3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記所定値が実質的に1に等しい、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記マルチビームアンテナパターンの各ビームから送信される前記複数の無線信号各々に関する前記無線局における受信信号特性は、ビーム各々から送信された無線信号の受信レベルを含み、該無線信号は、前記マルチビームアンテナパターンの他のビームから送信された無線信号と異なる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記マルチビームアンテナパターンは、第1のアンテナビーム及び第2のアンテナビームを含み、
前記方位角を推定する際、前記第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、前記第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、実質的に所定値になるビーム角度を判別する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記マルチビームアンテナパターンは、前記第1のアンテナビーム及び前記第2のアンテナビームの中間の第3のアンテナビームを含み、
前記方位角を推定する際、
前記第1のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、前記第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第2の所定値に実質的に等しくなり、かつ
前記第2のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性と、前記第3のアンテナビームから送信された各無線信号の受信信号特性との比率が、第3の所定値に実質的に等しくなる方位角を求める、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第3のアンテナビームは、前記第1のアンテナビーム及び前記第2のアンテナビームの実質的に中間にあり、前記第2の所定値は、前記第3の所定値に実質的に等しい、請求項8記載の方法。
【請求項10】
各ビーム角度について、該ビーム角度を表すコードを前記無線局に送信するステップをさらに有する、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記マルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信される少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値になるビーム角度を表すコードを、前記無線局から受信するステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記無線局と前記マルチビームアンテナパターンの前記基準位置との間の半径方向距離を推定するステップと、
前記マルチビームアンテナパターンの前記基準位置から推定された前記無線局の方位角と、前記マルチビームアンテナパターンの前記基準位置及び前記無線局間の推定された半径方向距離とに基づいて、前記無線局の位置を推定するステップと
をさらに有する、請求項6記載の方法。
【請求項13】
前記複数の無線信号は、
直交周波数分割多重(OFDM)信号、
符号分割多元接続(CDMA)信号、
時分割多元接続(TDMA)信号及び
パルスベースウルトラワイドバンド(UWB)信号
の内の何れかを含む、請求項6−12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの追加的なマルチビームアンテナパターンの各々において、
前記追加的なマルチビームアンテナパターンの前記複数のビーム角度各々について、複数の無線信号を、前記追加的なマルチビームアンテナパターンに属するアンテナビーム各々により送信するステップと、
前記無線局が受信した信号の特性に基づいて、前記追加的なマルチビームアンテナパターンの基準位置から前記無線局までの方位角を推定するステップと
を有し、前記無線局が受信した特性は、前記追加的なマルチビームアンテナパターンの複数のビーム角度の各々により、前記追加的なマルチビームアンテナパターンのビーム各々から送信された前記複数の信号各々の特性である、請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置により推定された前記無線局の方位角方向と、少なくとも1つの追加的なマルチビームアンテナパターンの各々の基準位置により推定された前記無線局の方位角方向の各々とが交わる位置に基づいて、前記無線局の位置を推定するステップをさらに有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記無線局の位置を推定する際、前記複数のマルチビームアンテナパターンから推定された前記無線局の方位角と、前記複数のマルチビームアンテナパターンの少なくとも一部の基準位置各々と前記無線局との間の推定された半径方向距離を表す双曲線とが交わる位置に基づいて、前記無線局の位置を決定する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ビーム角度各々について、該ビーム角度を表すコードを受信するステップをさらに有する、請求項4記載の方法。
【請求項18】
前記マルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信される少なくとも2つの無線信号各々の受信信号特性の比率が実質的に所定値に等しくなるビーム角度を表すコードを報告するステップをさらに有する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記第1のマルチビームアンテナパターンの基準位置から推定された前記無線局の方位角と、少なくとも2つのマルチビームアンテナパターン各々の基準位置から推定された前記無線局の方位角とが交わる位置に基づいて、前記無線局の位置を推定するステップをさらに有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
マルチビームアンテナパターンを生成するマルチビームアンテナシステムと、
前記マルチビームアンテナシステムを複数のビーム角度に合わせて方向付けるビームステアリング制御部と、
前記複数のビーム角度の内の各ビーム角度において複数の無線信号を生成し、各ビーム角度において、前記複数の無線信号の内の各無線信号が、前記マルチビームアンテナシステムにより生成された前記マルチビームアンテナパターンの内の何れかのアンテナビームにより送信されるようにする無線周波数(RF)送信部と、
複数のビーム角度と、前記無線局で測定された受信信号特性とに基づいて、前記マルチビームアンテナパターンの基準位置から前記無線局までの方位角を推定する位置推定制御部と
を有し、前記受信信号特性は、前記複数のビーム角度各々により、前記マルチビームアンテナパターンのアンテナビーム各々から送信された複数の無線信号各々の特性である、装置。
【請求項21】
前記位置推定制御部は、前記複数のビーム角度の各々について、前記複数の無線信号各々の受信信号特性を、前記無線局から受信する、請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信された少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値に等しくなるビーム角度を判別することで、前記マルチビームアンテナパターンの基準位置から無線局までの方位角を推定するように、前記位置推定制御部が構築されている、請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記RF送信部は、前記複数のビーム角度各々について、前記複数のビーム角度の内の現在のビーム角度を表すコードを送信する、請求項22記載の装置。
【請求項24】
前記マルチビームアンテナパターンの各アンテナビームから送信された少なくとも2つの無線信号の受信信号特性の比率が、実質的に所定値に等しくなるビーム角度を表すコードを、前記無線局から受信するように、前記位置推定制御部が構築されている、請求項23記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−50043(P2011−50043A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−163333(P2010−163333)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(390023157)ノーテル・ネットワークス・リミテッド (153)
【Fターム(参考)】