説明

マンノオリゴ糖類を含有する抗アレルゲン組成物

【課題】
通常の食生活習慣の大幅な変更を伴うことなく、しかも抗アレルゲン効果に優れ経済的かつ簡便な飲食物を提供すること。
【解決手段】
1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする、抗アレルゲン性組成物およびこの組成物を添加した飲食物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンノースを主体とする構成糖からなるオリゴ糖類を主成分とする抗アレルゲン作用を有する組成物、およびその組成物を用いた経口摂取可能な組成物、特に飲料、食物および飼料に関するものである。また、本発明は未利用資源の有効活用にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーの抽出残渣は従来、そのほとんどが焼却あるいは産業廃棄物として処理されてきた。近年になり、コーヒー抽出残渣が堆肥原料あるいは活性炭原料として利用されるようになってきたが、それらは未利用資源の高度利用という観点からは十分とはいえず、更なるコーヒー抽出残渣の高度利用の方法を確立することは重要課題となっている。
【0003】
さらに、現代においては花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギーに由来すると考えられる疾患が増加の一途をたどっている。アレルギー反応において、IgEが最も重要な役割を担っている抗体として良く知られている。アレルゲンが体内に侵入するとIgEが産生され、肥満細胞上のレセプターと結合する。その結果、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの化合物が作り出され、組織の炎症、血管透過性亢進などが引き起こされアレルギー疾患へと繋がっていく。鼻の粘膜に作用するとアレルギー性鼻炎、皮膚で炎症が起こるとアトピー性皮膚炎などの疾患となる。そのため種々の食品中からIgEを低減させる成分の探索やその作用機作についての研究が行われている(特許文献1、2及び3)。各種の健康補助食品が開発・販売されているが、日常の食生活で手軽にそして経済的に抗アレルゲン効果を期待出来る飲食品の開発には至っていない。
【特許文献1】特開2000−290189号
【特許文献2】特開2003−55233号
【特許文献3】特開平9−12464号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、通常の食生活習慣の大幅な変更を伴うことなく、しかも抗アレルゲン効果に優れ経済的かつ簡便な飲食物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらのような課題を解決するために鋭意検討の結果、マンナンを多く含む食品素材、主に、コーヒー抽出粕加水分解物から、糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1以上10以下のマンノオリゴ糖類、すなわちマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが1以上10分子以下結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類に抗アレルゲン作用を見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、無着色、無酸の糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1以上10以下のマンノオリゴ糖類を得ることで、食品への適用範囲を飛躍的に広げることができることを見いだした。
【0006】
したがって、本発明の態様は、以下の通りである。
1.1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする、抗アレルゲン性組成物。
2.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、1以上10分子以下のマンノースが結合したオリゴ糖類であることを特徴とする、上記1に記載の抗アレルゲン性組成物。
3.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンノースと、グルコース、ガラクトース、フルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖とが、合計で1以上10分子以下結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類であることを特徴とする、上記1に記載の抗アレルゲン性組成物。
4.前記マンノースを主体としたオリゴ糖の含有割合が、組成物中の総固形分に対して60重量%以上である、上記1〜3のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
5.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70重量%以上である、上記1〜4のいずれか1つに記載の抗アレルゲン性組成物。
6.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、分子中のマンノース単位の数が2〜6のオリゴ糖であることを特徴とする、上記1〜5のいずれか1つに記載の抗アレルゲン性組成物。
7.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンナンを加水分解処理することによって得られるものであることを特徴とする、上記1〜6のいずれか1つに記載の抗アレルゲン性組成物。
8.前記マンナンが、コーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣から得られるものである、上記7に記載の抗アレルゲン性組成物。
9.前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、β−1,4−マンノオリゴ糖であることを特徴とする、上記1〜8のいずれか1つに記載の抗アレルゲン性組成物。
10.上記1〜9のいずれか1つに記載の抗アレルゲン性組成物を含有する経口摂取可能な組成物。
11.前記経口摂取可能な組成物が飲料である、上記10に記載の組成物。
12.前記飲料が、液体コーヒー、インスタントコーヒー飲料またはコーヒーミックス飲料である、上記11に記載の組成物。
13.前記経口摂取可能な組成物が食品である、上記10に記載の組成物。
14.前記経口摂取可能な組成物が飼料である、上記10に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
抗アレルゲン性を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類を飲食物に添加することにより、これを日常の食生活で手軽にそして経済的に摂取可能となり、抗アレルゲン効果を期待することが出来る。抗アレルゲン性を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類は、コーヒー抽出残渣のような、廃棄物からも入手可能であるため、従来利用されていない資源を有効活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明において「マンノースを主体としたオリゴ糖類」とは、単糖であるマンノースを主たる構成要素とするオリゴ糖類を意味する。ここで「オリゴ糖類」なる語は、一般に単糖類と多糖類との間に位し、一定の少数量の単糖類分子のグリコシル結合からなる物質を指す。すなわち、結合している単糖の数が比較的少ないポリマーのことである。オリゴ糖「類」という場合、構成単糖の数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物であることを意味する。そしてマンノースを主体としたオリゴ糖「類」という場合は、構成単糖の種類や数が種々のオリゴ糖が複数含まれる組成物を指す。本明細書において「マンノオリゴ糖類」の語は、「マンノースを主体としたオリゴ糖類」の語と同様の意味において用いられる。
【0009】
本明細書において、オリゴ糖類の重合度を表すために「DP」と記載することがある。DPとは、オリゴ糖類を構成している単糖の数を意味する。すなわち単糖であるマンノースは「DP1」と表され、4つのマンノースから構成されたマンノオリゴ糖は重合度4、すなわち「DP4」と表される。学術的観点からは、重合度1(DP1)の糖は単糖であって、オリゴ糖ではない。しかし、本発明に用いるオリゴ糖類(組成物)中には、わずかに単糖が含まれる場合があるので、本明細書においてはこのような場合であっても総称して「オリゴ糖類」と呼ぶものとする。すなわち、「1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類」と言う場合には、この糖組成物中には重合度1の単糖も含まれている場合があると理解されたい。
【0010】
本発明において用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した複数種類のオリゴ糖の組成物であることが好ましい。特に好ましいオリゴ糖類は、マンノースが1以上10分子以下結合したオリゴ糖類か、あるいはマンノースと、グルコース、ガラクトース、フルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖とが、合計で1以上10分子以下結合した、複数種類のオリゴ糖の組成物である。さらに特に好ましくは、β−1,4−マンノオリゴ糖類である。また「マンノースを主体とした」という場合、オリゴ糖類中のマンノース残基の構成割合が70重量%以上であることを指し、特に80重量%以上であることが好ましい。マンノース残基の割合が70%に満たないと、抗アレルゲン性効果が大きく期待できないとともに、甘味度も増し、組成物の適用の幅が狭まる場合がある。
【0011】
また、本発明において用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、その分子中のマンノース単位の数が2〜9、特に2〜6であることが好ましい。
本発明の一の態様は、上述のマンノースを主体としたオリゴ糖類を含む、抗アレルゲン性組成物である。ここで「抗アレルゲン性組成物」という語は、広く一般にアレルゲン性作用を有する組成物を意味するが、本明細書では特に体内のIgEを低減させることにより、IgE由来のアレルギー疾患の発生を低減させうる物質を含む混合物を意味する。上述のとおり、本発明者らは、マンノースを主体としたオリゴ糖類が、体内のIgEを低減させる効果を有することを見いだしている。したがって、かかる抗アレルゲン性を有するオリゴ糖類を用いて抗アレルゲン性組成物を製造することができる。
【0012】
さて、本発明に用いられるマンノースを主体としたオリゴ糖類は、マンナンを加水分解することにより製造することができる。ここで原料のマンナンは、たとえばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。かかる当混合物中には、上述した、抗アレルゲン性のマンノースを主体としたオリゴ糖類が含まれている。したがって、このように得た組成物は、本発明の抗アレルゲン性組成物となる。さらに、本発明の抗アレルゲン性組成物は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。したがって、本明細書において単に「マンナン」という場合は、d−マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトースまたはグルコースとを構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含むものとする。なお、d−マンノースとは、アルドヘキソースであり、d−グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0013】
さらに本発明の抗アレルゲン性組成物は、コーヒー生豆または焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みコーヒー残渣を、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選ばれる1種または2種以上の方法で可溶化処理した水溶液を活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である。一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解したりして可溶化する。従って、コーヒー残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖類を得ることができる。
【0014】
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸および/または高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これに限定されない。酸および/または高温により加水分解する方法としては特開昭61−96947号、特開平2−200147号等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもできるし、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用するのが便利であるが比較的高温で短時間の反応を行わせるのに向いているものならば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10〜40のマンナンをDP1〜10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得ることができる。なお、ここでコーヒー抽出残渣とは、大気中で焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後の、いわゆるコーヒー抽出粕のことである。
【0015】
本発明の抗アレルゲン性組成物を、コーヒー豆(焙煎コーヒー豆、及び焙煎粉砕コーヒー豆を含む)及び/又はコーヒー抽出残渣の加水分解処理により得る場合、使用するコーヒー豆の種類や産地に特に制限はなく、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等いずれのコーヒー豆でもよく、さらにブラジル、コロンビア産等いずれの産地のコーヒー豆も使用することができ、一種類の豆のみを単独で使用しても、ブレンドした二種以上の豆を使用しても良い。通常、商品価値がないとして廃棄処分されるような品質の悪いコーヒー豆または小粒のコーヒー豆であっても使用することができる。上記コーヒー豆を一般的に用いられている焙煎機(直下・熱風・遠赤・炭火式など)により極浅炒り、浅炒り、中炒り、深炒りに焙煎した焙煎コーヒー豆、及びこの焙煎コーヒー豆を、一般的な粉砕器、ミル(グラインディングミル、カッティングミル、ミキサーミル、ロールミルなど)等を用いて粉砕することにより得た、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を用いることができる。
【0016】
また、コーヒー抽出残渣は、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において、焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後のものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0017】
ここで、上記加水分解処理について、いくつか詳細に説明する。酵素により分解する方法としては、たとえばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへたとえば市販のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度およびその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であればとくに問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件およびその他の要因によって適宜選択すればよい。
【0018】
微生物発酵により分解する方法としては、たとえば水性媒体に懸濁させたコーヒー抽出残渣にセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを産出する微生物を植菌して培養させればよい。使用する微生物は、細菌類や担子菌類などコーヒー抽出残渣中のマンナンを分解する酵素を産出するものであれば良く、使用する微生物によって培養条件などは適宜選択すればよい。
【0019】
上記の方法によって得られたマンノースを主体とするオリゴ糖類を含む抗アレルゲン性組成物を含む反応液は、必要に応じて精製を行うことができる。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法、溶剤抽出法等で脱色・脱臭を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うことが挙げられる。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
また、本発明は、上記に説明した本発明に係る抗アレルゲン性組成物を含有する経口摂取可能な組成物、特に飲料、食物および飼料にも関する。さらに、本発明の抗アレルゲン性組成物は、上記飲食物、飼料のみならず、化粧品、医薬品等幅広い分野で使用することも可能である。本発明の抗アレルゲン性組成物は、特に飲食物として人が口から摂取することにより抗アレルゲン性効果を発揮する。
【0021】
例えば、コーヒー抽出残渣を酸および/または熱により加水分解しオリゴ糖類を高純度に含むように調製した抗アレルゲン性組成物を液体コーヒー、インスタントコーヒー等にそのまま添加して使用することができる。必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂、溶剤等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理をした組成物を添加した方が、コーヒー本来の味、香りのより豊かなコーヒーを提供することができる。ここで、液体コーヒーとしては、一般にレギュラーコーヒーと呼ばれるものが挙げられ、インスタントコーヒーとしては、可溶性粉末コーヒーを水に溶解した可溶性粉末コーヒー飲料や、可溶性粉末コーヒーに砂糖、クリーミングパウダーなどを添加して製造したコーヒーミックス飲料などが挙げられる。
【0022】
(発明の効果)
本発明の抗アレルゲン性組成物を含む飲食物を日常的に摂取することにより、前記体内のIgEレベルを低下させ、もって抗アレルゲン作用の発現を期待することができる。
【実施例】
【0023】
本発明の抗アレルゲン性組成物、およびこれを含むコーヒーミックス飲料を以下のように調製し、この飲料の抗アレルゲン効果を調べた。本実施例は本発明の実施の態様を具体的に説明したものであって、本発明の範囲を限定することを意図しない。
実施例1
マンノオリゴ糖の調製
常法により得た焙煎粉砕コーヒーを、商業上使用されるパーコレーション系にて抽出し、後に残ったコーヒー抽出残渣を得た。このコーヒー抽出残渣を反応器に送りやすくするために、まず粉砕して粒径を約1mmにした。次いで、水と、この粉砕物からなる総固形分濃度約14w/w%のスラリーを調製し、4mの熱栓流反応器内において熱処理した。滞留時間8分に対応する速度で高圧蒸気とともに栓流反応器にポンプ輸送し、6.35mmφオリフィスを用いて約210℃に維持した。その後、大気圧下に噴出することによって、反応を急止した。できたスラリーを濾過して、不溶性固形分から可溶性固形分を含む液を分離した。この可溶性固形分含有液を活性炭、吸着樹脂で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した後、濃縮、乾燥してマンノースを主体とするオリゴ糖類を含有する組成物を収率14%で得た。
【0024】
このようにして得られた抗アレルゲン作用を有する組成物中に含まれるオリゴ糖類のDP分布は、DP1;2.4%、DP2;26.6%、DP3;20.2%、DP4;17.8%、DP5;10.9%、DP6;8.9%、DP7;6.0%、DP8;3.6%、DP9;1.9%、DP10;1.7%で、糖鎖中のマンノース残基の含有量は90%であった。オリゴ糖のDP1としてはマンノース等、DP2としてはマンノビオース等、DP3としてはマンノトリオース等、DP4としてはマンノテトラオース等、DP5としてはマンノペンタオース等、DP6としてはマンノヘキサオース等、DP7としてはマンノヘプタオース等、DP8としてはマンノオクタオース等、DP9としてはマンノノナオース等、DP10としてはマンノデカオース等で、結合様式はβ−1,4結合である。このようにして得たマンノオリゴ糖類を用いて以下の抗アレルゲン実験を行った。
IgE測定用コーヒーミックスの調製
マンノオリゴ糖類を含む組成物3gにインスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ(株)、商品名:ブレンディ)1.5g、クリーミングパウダー(味の素ゼネラルフーヅ(株)、商品名:マリーム)3gおよび砂糖(新三井製糖(株)、商品名:グラニュー糖)5gとを混合してコーヒーミックスを調製したこのミックスをお湯150mLで溶かし、官能評価した結果、従来のインスタントコーヒーの味を十分維持し、しかも、より濃厚で味わい深いコーヒー飲料であった。
コーヒーミックスのIgE抑制効果
12人の被験者が、前記コーヒーミックス12.5gをお湯150mLで溶かして毎日一杯ずつ4週間連続摂取した。摂取開始日及び摂取4週間後に採血した。血清中のIgEをFEIA法にて測定した。結果を以下の表1に示す。マンノオリゴ糖類を含むコーヒーミックス飲料の摂取により血液中のIgEが有意に低下することを確認した。この結果よりマンノオリゴ糖を含む食品を摂取することにより日常の食習慣を変えることなく抗アレルギー効果が期待できる。
【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の抗アレルゲン性組成物は、抗アレルゲン性を有するマンノースを主体としたオリゴ糖類を含み、具体的にはマンナンを加水分解することにより製造することができる。本発明の抗アレルゲン性組成物を飲食物、飼料などに添加して日常的に摂取することによって、抗アレルゲン効果を期待できる。本発明の抗アレルゲン性組成物の原料として、例えばコーヒー豆やコーヒー抽出残渣を利用することができる。すなわち、従来は廃棄物として処理されていたコーヒー抽出残渣から抗アレルゲン効果のある組成物を調製し、これを飲食物などと共に摂取することが可能となるため、健康改善効果に加えて廃棄資源の再利用という観点からも非常に有用な発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上10分子以下の、マンノースを主体とした単糖類が結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類を含むことを特徴とする、抗アレルゲン性組成物。
【請求項2】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、1以上10分子以下のマンノースが結合したオリゴ糖類であることを特徴とする、請求項1に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項3】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンノースと、グルコース、ガラクトース、フルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種の単糖とが、合計で1以上10分子以下結合した、マンノースを主体としたオリゴ糖類であることを特徴とする、請求項1に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項4】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類の含有割合が、組成物中の総固形分に対して60重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項5】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類中のマンノース残基の割合が、70重量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項6】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、分子中のマンノース単位の数が2〜6のオリゴ糖類であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項7】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンナンを加水分解処理することによって得られるものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項8】
前記マンナンが、コーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣から得られるものである、請求項7に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項9】
前記マンノースを主体としたオリゴ糖類が、β−1,4−マンノオリゴ糖であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗アレルゲン性組成物を含有する経口摂取可能な組成物。
【請求項11】
前記経口摂取可能な組成物が飲料である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記飲料が、液体コーヒー、インスタントコーヒー飲料またはコーヒーミックス飲料である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記経口摂取可能な組成物が食品である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記経口摂取可能な組成物が飼料である、請求項10に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−169135(P2006−169135A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360681(P2004−360681)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000243766)味の素ゼネラルフーヅ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】