説明

マーク付きのプラスチック気泡シートおよびその製造装置

【課題】
プラスチックのフィルムを成形してキャップ状の突起を多数形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底面に平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなるプラスチック気泡シートにおいて、特定のキャップ(3)がマークの役割を果たすことにより、さまざまな機能をもつものを提供する。
【解決手段】
特定の位置にあるキャップ(3)に、残りのキャップ(4)とは別の特異な形状をあたえるか、またはキャップの高さを明確に低くすることにより、マークの役割をさせる。特異な形状は、ハート型そのほか、任意に選択することができる。プラスチック気泡シート製造の常用手段である真空成形ロールを使用する製造装置においては、外側(51)の形状が他のキャビティの形状に合致し、内側(52)が特異な形状であって、真空成形ロール上で任意のキャビティに嵌め込んで固定し、また抜き出すことが可能であるプラグ(5)を使用するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック気泡シートにおいて、特定の位置のキャップが他のキャップとは別の特異な形状をしていることにより、マークとしての役割を果たすプラスチック気泡シートに関し、その製造装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックのフィルムを成形して規則的に配置された同形のキャップ状突起を多数形成したキャップフィルムの、キャップの底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせてなるプラスチック気泡シート(以下「気泡シート」と略称する)が、さまざまな商品の包装をする緩衝材、建築物の断熱材、さらには建築や模様替え、引越しの際の養生材として使用されている。
【0003】
この種の気泡シートを製造する技術として現在主流を占めている方法は、真空成形ロールを使用する連続的な製造方法であって、それによって長尺の製品が得られる。製造装置の具体的構成部分は、プラスチックフィルムを溶融押出しする2個のT−ダイ、溶融押出しされたプラスチックフィルムの一方を連続的にキャップフィルムに成形するための、回転可能に支持され、キャップの形状に応じたキャビティを多数そなえた真空成形ロール、溶融押出しされたプラスチックフィルムの他方をバックフィルムとしてキャップフィルムの底面に貼り合わせるための押圧ロール、および貼り合わせにより形成されたプラスチック気泡シートを連続的に引き取るための引取手段から本質的に構成され、これらに対して、真空成形ロールの回転駆動手段および真空源を付加して、装置が組み立てられる。
【0004】
従来、キャップの形状はほとんどが低い円柱状であって、かつ、その配置は、真空成形ロールの軸方向(製品気泡シートにとっては幅方向)に一定間隔でならび、円周方向(長手方向)には半ピッチずつずれた、千鳥状にすることが普通であった。円柱状のキャップ形状は、主として真空成形ロールの製作の容易さに基づいて選択されたものであり、千鳥状の配置は、それがキャップ部分の密度をもっとも高くすることができるからである。いうまでもなく、気泡シートの緩衝や断熱の能力は、単位面積あたりの空気室の容積を大きくとることにより、高くできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、気泡シートのキャップのうち、特定の位置にあるものの形状を他のキャップの形状と異ならせることによって、ある種のマークとしての役割を果たさせることが可能である、ということを着想し、そのような気泡シートを試作した。このようなわけで、本発明の目的は、マーク付きの気泡シートを実現し、そのマークにさまざまなメッセージを託したものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマーク付きのプラスチック気泡シートは、図1および図2に示すように、プラスチックのフィルムを成形して規則的に配置された同形のキャップ状突起を多数形成したキャップフィルム(1)の、キャップの底面に平坦なバックフィルム(2)を貼り合わせてなるプラスチック気泡シートにおいて、特定の位置にあるキャップ(3)が、残りのキャップ(4)とは別の特異な形状をしているか、またはキャップ高さが明確に低いことにより、マークの役割を果たすことを特徴とする。図示した例では、特定の位置にあるキャップ(3)が、高さが低く、小さいハート型をしていて、他のキャップがすべて円柱状であるのと異なっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマーク付きのプラスチック気泡シートは、特定の位置にあって特異な形状をしたキャップがマークの役割を果たし、つぎのようなメッセージを伝えることができる。
【0008】
1)その製品の使用に役立つ目印となる
マークの位置が、長尺の気泡シートにおいて単位長さ、たとえば1mごとに設けられて いれば、気泡シート使用時に好都合である。
【0009】
2)製品の品質管理が容易になる
たとえばキャップにつぶれがみられた場合、その位置のチェックを、マークを基準とする座標により容易に決定することができ、対応策がとりやすくなる。(キャップのつぶれは目詰まりに起因するので、目詰まりを生じたキャビティを見出すことが先決である。)
【0010】
3)製品にトレーサビリティを与える
マークとなるキャップの形状にそれぞれ意味をもたせることにより、どの工場でいつ生産したものか、どのラインか、さらにはロット番号などを示すことができる。製品の原反であれば、添付の伝票に記載されるが、加工してしまえば、それらの情報は分からなくなるところ、本発明によれば、よほど小さく裁断されない限り、追跡することができる。使用の態様が分かっている場合は、それに応じてマークの密度を高めることで、ある程度対処することができる。
【0011】
4)顧客にメッセージを伝えたり、当たりくじの役をさせたりすることができる
マークとなるキャップの形状に文字の役をさせて、一定の意味を伝えることができる。この場合、マークは、ある程度の数が連続的に、または断続的に並ぶ必要があり、本発明はそのような態様も含む。販売促進手段として抽選により賞品を与えるような場合、気泡シートをカットしたものを商品に入れておき、ハートのマークがついた気泡シート片であったならば当たりとする、というように利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記のようなプラスチック気泡シートを製造する本発明の装置は、装置全体の構成は従来から使用しているものと同様である。すなわち、プラスチックフィルムを溶融押出しする2個のT−ダイ、溶融押出しされたプラスチックフィルムの一方を連続的にキャップフィルムに成形するための、回転可能に支持され、キャップの形状に応じたキャビティを多数そなえた真空成形ロール、溶融押出しされたプラスチックフィルムの他方をバックフィルムとしてキャップフィルムの底面に貼り合わせるための押圧ロール、および貼り合わせにより形成されたプラスチック気泡シートを連続的に引き取るための引取手段から本質的に構成され、これらに真空成形ロールの回転駆動手段および真空源を付加してなる装置である。本発明の特徴は、真空成形ロール上の特定の位置におけるキャビティの形状を、他のキャビティの形状とは別の特異な形状にして、マークとなるキャップを成形するようにした点にある。
【0013】
気泡シートのキャップの形状は、はじめに述べたように円柱形が圧倒的であり、マークとなる、他のキャップと異なる形状のキャップとしては、断面が小円形、楕円形、小判型、ひょうたん型、三角形、正方形、五角形以上の多角形の柱状体とするか、それに底部に向かって縮小するテーパが付いた形状とするか、さまざまな可能性があり、それらの中から任意に選択することができる。マークとなるキャップの形状としては、他のキャップのそれと断面が同じであって、単に高さを低くしたものもあり得るが、目立ちやすさは若干低いことに留意すべきである。
【0014】
マークとなるキャップを成形する方法は、いうまでもなく、気泡シート製造装置の真空成形ロールに設けるキャビティ形状を、他のキャップのためのキャビティ形状と異なるものにすることであり、特定の位置が一定であり、かつキャップ形状が定まっている場合は、真空成形ロールに直接所定の形状のキャビティを設ければよい。しかし、多くの場合、マークの位置を変更したり、数を増減させたり、キャップの形状を変化させたり、またそれらを組み合わせて実施することが容易であることが望ましい。
【0015】
このような要望に応える手段として、本発明は、真空成形ロールのすべてのキャビティを同一の形状で製作し、所望の位置にあるキャビティの形状だけを、抜き差し可能なアタッチメントを使用して、容易に変更可能にする。そのようなアタッチメントとしては、図3に示すような、外側(51)の形状が他のキャビティの形状に合致し、内側(52)の形状が上に列挙したような形状であって、真空成形ロール上の任意の位置において、他のキャビティに嵌め込んで固定するとともに、抜き出すことが可能であるようにしたプラグ(5)がある。このプラグは、熱伝導がよいことが必要であるから、金属製とする。図3Bにおいて、符号(53)は、真空源に連なる空気通路であり、(6)は真空成形ロールのキャビティである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従うマーク付きのプラスチック気泡シートの例を示す平面図。
【図2】図1のプラスチック気泡シートのマーク部分を詳細に示す図であって、Aは図1の部分拡大図、BはAのI−I方向の断面図。
【図3】本発明のプラスチック気泡シートの製造装置に使用するプラグの例を示す図であって、Aは平面図、Bは真空成形ロールとの関係を示す断面図。
【符号の説明】
【0017】
1 キャップフィルム
2 バックフィルム
3 特定の位置にあるキャップ
4 残りのキャップ
5 プラグ
51 プラグの外側 52 プラグの内側 53 空気通路
6 真空成形ロールのキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックのフィルムを成形して規則的に配置された同形のキャップ状突起を多数形成したキャップフィルムの、キャップの底面に平坦なバックフィルムを貼り合わせてなるプラスチック気泡シートにおいて、特定の位置にあるキャップが、残りのキャップとは別の特異な形状をしているか、またはキャップ高さが明確に低いことにより、マークの役割を果たすことを特徴とするマーク付きのプラスチック気泡シート。
【請求項2】
請求項1に記載されたプラスチック気泡シートを製造する装置であって、プラスチックフィルムを溶融押出しする2個のT−ダイ、溶融押出しされたプラスチックフィルムの一方を連続的にキャップフィルムに成形するための、回転可能に支持され、キャップの形状に応じたキャビティを多数そなえた真空成形ロール、溶融押出しされたプラスチックフィルムの他方をバックフィルムとしてキャップフィルムの底面に貼り合わせるための押圧ロール、および貼り合わせにより形成されたプラスチック気泡シートを連続的に引き取るための引取手段から本質的に構成され、真空成形ロールの回転駆動手段および真空源を付加してなる装置において、真空成形ロール上の特定の位置におけるキャビティの形状を、他のキャビティの形状とは別の特異な形状にしたことを特徴とするマーク付きのプラスチック気泡シートの製造装置。
【請求項3】
真空成形ロール上において、他のキャビティの形状がほぼ円柱状であり、特定の位置におけるキャビティの形状が、断面が小円形、楕円形、小判型、ひょうたん型、三角形、正方形、五角形以上の多角形の柱状体であるか、それに底部に向かって縮小するテーパが付いた形状であるか、または深さが浅いものである請求項2の製造装置。
【請求項4】
外側の形状が他のキャビティの形状に合致し、内部の形状が請求項3に列挙した形状であって、真空成形ロール上の任意の位置において、他のキャビティに嵌め込んで固定するとともに、抜き出すことが可能である、請求項3の製造装置に使用するためのプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−159745(P2006−159745A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356498(P2004−356498)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】