説明

ミシンの布押さえ装置

【課題】ボタンホール用の布押さえの着脱の際におけるユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上すること。
【解決手段】布を押さえる布押さえ11と、布押さえを支持し、布押さえが布を押さえる押圧位置と布の押さえを解除する解除位置との間で昇降する押さえ棒12と、押さえ棒を下方に付勢する付勢部材19と、押さえ棒に係合し、押さえ棒を付勢力に抗して上昇させる押さえ棒駆動機構20と、縫製を行う模様を選択する設定手段40と、を備えるミシンの布押さえ装置1において、押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されているか否かを検出する検出手段50と、ボタンホール縫いを行う設定がされている場合において、押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていないことを検出したときに、押さえ棒駆動機構を動作させて押さえ棒を上昇させる制御手段60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの布押さえ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンには、縫製時に布を上方から押さえつける布押さえが設けられている。布押さえは、バネにより針板に向けて付勢された押さえ棒の下端に設けられている。縫製を行う際には押さえ棒を下降させ、押さえ棒に作用するバネの付勢力により布押さえが布を押さえつける。一方、布押さえを上昇させる際には、バネの付勢力に抗して押さえ棒を上昇させることにより、布押さえを布から引き離すことができる。押さえ棒の上昇は、ユーザによるレバー操作や、ソレノイド等の駆動装置により行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2008−000422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、布押さえは、縫製の模様に合わせてそれぞれ適したものが用いられ、例えば、ボタンホール縫いを行うならば、ボタンホール縫い用の布押さえが用いられる。ボタンホール縫い用の布押さえは、ボタンホール縫いにのみ使用することができ、他に転用がきかないことから、ボタンホール縫いと他の縫いとを切り替える際には、布押さえの交換作業を必要とする。
ここで、ボタンホール縫いの着脱にあたっては、押さえ棒を上昇させた状態で作業を行わなければならないため、ユーザはレバー操作又はソレノイドを駆動させる操作が必要であり、この操作が煩わしかった。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ボタンホール用の布押さえの着脱の際におけるユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上することができるミシンの布押さえ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
針板(9)上に載置された布を押さえる布押さえ(11)と、
前記布押さえが着脱自在に装着され、前記布押さえが布を押さえる押圧位置と布の押さえを解除する解除位置との間で昇降する押さえ棒(12)と、
前記押さえ棒を針板に向けて下方に付勢する付勢部材(19)と、
前記押さえ棒に係合し、押さえ棒を付勢力に抗して上昇させる押さえ棒駆動機構(30)と、
ボタンホール縫いを含む複数の縫い模様から所望の縫い模様を選択する設定手段(40)と、を備えるミシンの布押さえ装置(1)において、
前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されているか否かを検出する検出手段(50)と、
前記設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされている場合において、前記検出手段が前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていないことを検出したときに、前記押さえ棒駆動機構を動作させて前記押さえ棒を上昇させる制御手段(60)と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシンの布押さえ装置において、
前記制御手段は、前記設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされていない場合において、前記検出手段が前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていることを検出したときに、前記押さえ棒駆動機構を動作させて前記押さえ棒を上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされている場合において、検出手段が押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていないことを検出したときに、制御手段は、押さえ棒駆動機構を動作させて押さえ棒を上昇させる。
これにより、検出手段により装着されている布押さえを判断し、制御手段により押さえ棒を上昇させることができるので、押さえ棒にボタンホール用の布押さえを取り付けるときのユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上できる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされていない場合において、検出手段が押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていることを検出したときに、制御手段は、押さえ棒駆動機構を動作させて押さえ棒を上昇させる。
これにより、検出手段により装着されている布押さえを判断し、制御手段により押さえ棒を上昇させることができるので、押さえ棒からボタンホール用の布押さえを取り外すときのユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの布押さえ装置の最良の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態においては、各図中に示したXYZ軸を基準にしてミシンの各部の方向を定めるものとする。ミシンを水平面に設置した状態において、Z軸方向は鉛直方向となる上下方向を示し、Y軸方向はミシンアーム部の長手方向と一致する左右方向を示し、X軸方向は水平且つY軸方向に直交する前後方向を示す。
【0010】
<ミシンの布押さえ装置の構成>
(全体構成)
図1、図2に示すように、ミシンの布押さえ装置1は、ミシン100のアーム部101の先端部近傍に設けられている。
ミシンの布押さえ装置1は、針板9上に載置された被縫製物たる布を押さえる下位置Lと非縫製時に上方にて待機する上位置Hとに布押さえ11を昇降自在に支持する押さえ棒駆動機構としての布押さえ昇降機構10と、オペレータの操作により布押さえ11を下位置L及び上位置Hに移動させる第1操作機構20と、ソレノイド等の駆動装置の駆動により布押さえ11を下位置L及び上位置Hに移動させる押さえ棒駆動機構としての第2操作機構30と、ボタンホール縫いを含む複数の縫い模様から所望の縫い模様を選択する設定手段としての操作パネル40と、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえが装着されているか否かを検出する検出手段としての検出部50と、操作パネル40によりボタンホール縫いを行う選択がされている場合において、検出部50が押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていないことを検出したときに、第2操作機構30を動作させて押さえ棒12を上昇させる制御手段としての制御装置60(図8参照)と、を備えている。
【0011】
(布押さえ昇降機構)
布押さえ昇降機構10は、図1及び図2に示すように、針板9上に載置された布を上方から押さえつける布押さえ11と、この布押さえ11を下端に支持する押さえ棒12と、この押さえ棒12に固定され水平方向に伸びた延出部13aを有する押さえ棒抱き13と、押さえ棒12を常時下方に付勢する付勢部材としての押さえばね19と、下位置Lに向かう途中の位置から布押さえ11を下方に付勢すると共に上位置Hに向かう途中の位置から布押さえ11を上方に付勢する付勢方向切替え機構14とを備えている。
【0012】
布押さえ11は、ミシンアーム101の先端で上下動可能に支持された押さえ棒12の下端に支持されており、縫製中は、後述するミシンモータ90(図8参照)によって回転される上軸の回転に応じて図示しない針駆動機構と同期して下位置Lの近傍において上下動を行う。また、布押さえ11は、例えば、被縫製物を取り出す際などの非縫製時には、上記縫製中における上下動範囲である下位置L近傍の高さよりも上方の上位置Hに退避される他、第1操作機構20を介して上位置Hよりもさらに上方の最上位位置Tに移動可能となっている。この最上位位置Tは、オペレータが押さえばね19の付勢力に抗して後述する手動操作レバー21を持ち上げることで布押さえ11が上昇可能となる位置であって、例えば、布厚の厚い被縫製物を針板9上に載置したり取り外したりする場合等に布押さえ11を上方に逃がす退避部となっている。そして、布押さえ11は、オペレータの手動操作によって最上位位置Tに上昇された後、オペレータが手動操作レバー21を放した際には下降して上位置Hに配置されるようになっている。
【0013】
押さえ棒12にはコイル状の圧縮ばねである押さえばね19が装備されており、該押さえばね19の上端はミシンアーム部3に固定された係止部材17に係止され、下端は押さえ棒抱き13の上面に係止されている。
【0014】
付勢方向切替え機構14は、軸15を介してミシンアーム部101に回動自在に支持された突起部16を有する。この突起部16は後述する手動操作レバー21の基端部に設けられており、押さえばね19の付勢力により常時下方に付勢される押さえ棒抱き13を下方から支持することで布押さえ11の高さを規定している。つまり、手動操作レバー21が下位置Lに配置されるときは図2における当該突起部16の左側の傾斜部が押さえ棒抱き13の下面に当接されることで布押さえ11を下位置Lに配置する高さに押さえ棒抱き13を支持する。ここで、手動操作レバー21が図2における反時計回り方向に回動されて上位置Hに移動される際に、突起部16の頂点が押さえ棒抱き13の下面に沿って移動され該突起部16の右側の傾斜部が押さえ棒抱き13の下面に接近すると、押さえ棒抱き13が常時下方に付勢されていることにより、上記右側の傾斜部が押さえ棒抱き13の下面と接する方向、すなわち、布押さえ11が上位置Hに配置される方向に付勢方向が切替わることとなる。また、手動操作レバー21が時計回り方向に回動されて下位置Lに移動される際には、突起部16の頂点が押さえ棒抱き13の下面に沿って移動され、該突起部16の左側の傾斜部が押さえ棒抱き13の下面と接近すると、左側の傾斜部が押さえ棒抱き13の下面と接する方向、すなわち、布押さえ11が下位置Lに配置される方向に付勢方向が切替わることとなる。そして、布押さえ11は、所定の保持力をもって下位置L又は上位置Hに維持される。
【0015】
(第1操作機構)
第1操作機構20は、オペレータの手操作によって布押さえ11を昇降させる手動操作レバー21と、オペレータの膝操作によって布押さえ11を昇降させる図示しない膝上げレバーとを備えている。手動操作レバー21は、図1及び図2に示すように、軸15を介して上記突起部16の他端側に設けられ、ミシンアーム部101の下方に延出されている。また、この手動操作レバー21には、軸15に固定された腕部材24を介して布押さえ昇降リンク25が回動自在に連結されている。そして、布押さえ昇降リンク25を縦胴部側(図2における右側)に移動することで布押さえ11が下位置Lに配置され、逆に、布押さえ昇降リンク25をミシン頭部側(同左側)に移動することで布押さえ11が上位置Hに配置されるようになっている。
【0016】
(第2操作機構)
第2操作機構30は、布押さえ昇降リンク25に連結された複数のリンク部材26,27と、このリンク部材27に連結されるソレノイド31(図2,8参照)と、このソレノイド31を駆動及び停止させるスイッチ32と、を備えている。
スイッチ32は、ミシンアーム101の正面に設けられており、このスイッチ32の押下によりソレノイド31を駆動させることができる。ソレノイド31の駆動により、その出力軸の駆動はリンク26,27を動作させ、その動作により、布押さえ昇降リンク25を移動させることができる。
【0017】
(操作パネル)
操作パネル40は、図1に示すように、ミシンアーム101の胴部の正面に設けられている。操作パネル40は、ユーザに報知する情報を表示する表示部と、表示部上に設けられたタッチスイッチとを備えており、タッチスイッチからユーザにより複数の縫い模様が表示されている中から所望の縫い模様を選択する入力がなされ、この入力信号が制御部60に送信される。
【0018】
(検出部)
検出部50は、ミシンアーム101の側面に形成され、制御部60に接続された入力部51を備えている。この入力部51には、ボタンホール縫い用の布押さえが押さえ棒12に装着された際に、ボタンホール縫い用の布押さえからのボタン径の信号、送り量の信号がコネクタ86を介して入力される。すなわち、ボタンホール縫い用の布押さえのコネクタ86が接続されたときだけ各信号が制御部60に送信されるので、この信号の受信の有無を判断することで、制御部60は、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえが装着されているか否かを判断することができる。
【0019】
(ボタンホール縫い用の布押さえ)
ここで、ボタンホール縫い用の布押さえについて説明する。
ボタンホール縫い用の布押さえ8は、その下面が布の載置される針板の上面に対向するように配置されている。
図2、図3に示すように、ボタンホール縫い用の布押さえ8は、押さえ棒12の下端に取り付けられた押さえ体81と、押さえ体81に摺動自在に保持され、布を上方から押さえるとともに縫製動作中に布の布送りに伴って移動しながら布を押さえる押さえ枠82と、押さえ体81と一体に設けられたボタン保持部としてのボタン保持装置83と、ボタンホール縫いにおける縫製開始位置からの変位量を随時検出する位置検出装置84(図7参照)と、ボタン保持装置83により挟持されたボタンの径を検出するボタン径検出装置85(図6参照)と、を備えている。
【0020】
(押さえ体)
図3に示すように、押さえ体81の上面には、押さえ棒12が押さえ体81を把持して連結するための連結棒81aが設けられている。従って、押さえ棒12による連結棒81aの把持及び解放により押さえ体81を押さえ棒12に着脱自在とすることができる。
押さえ体81は、押さえ枠82の一端に設けられたうず巻きばね82aに連結されており、押さえ枠82に外部から力を与えて移動させない限り、押さえ体81は、押さえ枠82の一端に設けられたストッパ82sに当接するように付勢されている。なお、うず巻きばね82aが押さえ体81をストッパ82s側に引き寄せる方向を布送りにおける正送り方向とし、うず巻きばね82aに抗して押さえ体81をストッパ82sから引き離す方向を布送りにおける逆送り方向とする。
【0021】
(押さえ枠)
図3,4に示すように、押さえ枠82は、長手方向が布送り方向に沿うような略長方形状の板材から形成され、押さえ体81に対して摺動するために押さえ体81を嵌め込むガイド82bがその長手方向に沿って形成されている。押さえ枠82には、ボタンホール縫いを行うための開口82cが形成されている。押さえ枠82の一端に設けられたストッパ82sの内部には、押さえ枠82のストッパ82sを押さえ体81に向けて付勢するうず巻きばね82aが設けられている。このうず巻きばね82aにより、縫製開始前の押さえ枠82に設けられたストッパ82sは押さえ体81に当接した状態とされている。
押さえ枠82の長手方向両端部には、鳩目ボタンホール縫いの際に、かかる鳩目ボタンホール縫い目を補強するために用いられる芯紐の各端部側を係止する芯紐係止部としての係止溝82dが形成されている。係止溝82dは、それぞれの端部において二つずつ形成されている。係止溝82dは、押さえ枠82における針落ち位置を通り、かつ、縫製時に布送り方向に沿った直線状に位置するように形成されている。
【0022】
(位置検出装置)
図4、図7に示すように、位置検出装置84は、いわゆるスライドボリュームで構成されている。位置検出装置84は、押さえ体81の上面に固定され、布送り方向に沿って延びる可変抵抗器84aと、可変抵抗器84a上で布送り方向に沿って摺動自在に設けられたボリュームレバー84bと、を備えている。
可変抵抗器84aは、押さえ枠82の長手方向に沿ってほぼ平行、言い換えると布送り方向に沿って設けられている。そして、可変抵抗器84a上のボリュームレバー84bの位置により可変抵抗器84aの抵抗値が変化する。
ボリュームレバー84bは、押さえ枠82に取り付けられた把持部材84cによってその移動方向両側が挟み込まれるように把持されている。そして、押さえ体81は押さえ棒12に固定されていることから、押さえ枠82が布送り方向に沿って移動することにより、把持部材84cも布送り方向に沿って移動することとなり、把持部材84cに把持されているボリュームレバー84bも布送り方向に沿って可変抵抗器84a上を移動する。従って、押さえ枠82の送り量に応じて可変抵抗器84aの抵抗値が変化し、検出される電圧値が変化する。押さえ枠82は縫いの送り動作に応じて移動を行うことから、これを利用することで、検出される電圧値の大きさで押さえ枠82の布送り方向における位置、言い換えると、ボタンホール縫いを行った縫い長さを計測することができる。
なお、可変抵抗器84aにかかる電圧値は、制御部60で検出することができるようになっている。制御部60は、押さえ枠82が押さえ体81に対して縫製開始位置にある状態、すなわち、押さえ枠82の一端と押さえ体81とが当接している状態からの押さえ枠82の布送り方向における位置を随時検出することができるようになっている。
【0023】
(ボタン保持装置)
図2,5,6に示すように、ボタン保持装置83は、押さえ体81及び位置検出装置84の上方に固定され、ボタンの外周の一部を保持する固定部83aと、この固定部83aに対向配置されるとともに押さえ体81に移動調節可能に設けられ、固定部83aとでボタンを挟持する摺動部83bと、を備えている。固定部83a及び摺動部83bはボタンの任意の直径の両端部を挟持するようになっている。そして、摺動部83bは、押さえ体81及び固定部83aに対して移動調節可能となっているが、外力を加えない限り一定の位置でとどまるように構成され、ボタンの大きさに合わせて摺動部83bを移動させることにより、ボタンを安定した状態で挟持することができるように構成されている。
【0024】
(ボタン径検出装置)
図2,5,6,7に示すように、ボタン径検出装置85は、ボタン保持装置83の摺動部83bに固定装備されたラック85aと、ラック85aに噛合するピニオン85bと、押さえ体81に支持されているポテンショメータ85cと、ポテンショメータ85cの出力信号を制御部60に出力するリード線85dとを備えている。
ピニオン85bは、ポテンショメータ85cの回転量検出軸に装備されており、摺動部83bが挟持されるボタンの大きさに応じて布送り方向に沿って移動すると、摺動部83bに固定されているラック85aも同方向に移動し、その移動はピニオン85bを回転させるので、ポテンショメータ85cの回転量検出軸が回転し、摺動部83bの移動量に応じた検出信号を制御部60に出力することが可能となっている。
リード線85dは、可変抵抗器84aにより検出された電圧値信号とポテンショメータ85cの出力信号とを制御部60に出力するものであり、その先端には制御部60に接続された入力部51に着脱自在とされたコネクタ86が設けられている。
従って、ミシンアーム101に設けられた入力部51とコネクタ86を備えることにより検出部50が構成される。
【0025】
(制御部)
図8に示すように、制御部60は、各部の動作制御を行うCPU61と、CPU61の作業エリアとなるRAM62、縫製プログラム及び複数の縫い模様データが記憶されたROM63と、を備えている。
RAM62には、操作パネル40により選択された縫い模様データが記憶される。
ROM63には、操作パネル40によりボタンホール縫いを行う設定がされている場合において、検出部50が押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていないことを検出したときに、第2操作機構30を動作させて押さえ棒12を上昇させるプログラムが記憶されている。すなわち、ボタンホール縫いを行う設定がされている場合において、CPU61がこのプログラムを実行すると、ミシンアーム101の入力部51にコネクタ86が差し込まれていないときに、第2操作機構30を動作させて押さえ棒12を上昇させる。従って、制御部60は、制御手段として機能する。
ROM63には、操作パネル40によりボタンホール縫いを行う設定がされていない場合において、検出部50が押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていることを検出したときに、第2動作機構30を動作させて押さえ棒12を上昇させるプログラムが記憶されている。すなわち、ボタンホール縫いを行う設定がされていない場合において、CPU61がこのプログラムを実行すると、ミシンアーム101の入力部51にコネクタ86が差し込まれているときに、第2操作機構30を動作させて押さえ棒12を上昇させる。従って、制御部60は、制御手段として機能する。
制御部60には、ミシンモータ90、入力部51、操作パネル40、ソレノイド31、スイッチ32、縫製の開始及び停止の入力を行う縫製スイッチ91が接続されている。
【0026】
<布押さえの昇降制御について>
図9に示すように、ユーザによる操作パネル40の操作により縫い模様の選択がなされると(ステップS1)、CPU61は、ボタンホール縫いが設定されたか否かを判断する(ステップS2)。
ステップS2において、CPU61は、ボタンホール縫いが設定されたと判断した場合(ステップS2:YES)、CPU61は、入力部51にコネクタ86が接続されているか、すなわち、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されているか否かをボタンホール縫い用の布押さえ8からの信号の受信の有無により判断する(ステップS3)。
【0027】
ステップS3において、CPU61は、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていないと判断した場合(ステップS3:NO)、CPU61は、ソレノイド31を駆動させて押さえ棒12を上昇させる(ステップS4)。ここで、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていないと判断した場合とは、押さえ棒12に布押さえが何も装着されていない場合及び押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ以外の布押さえが装着されている場合である。
【0028】
ステップS4において、CPU61は、押さえ棒12を上昇させた後、ユーザは布押さえを交換する(ステップS5)。そして、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたか否かを判断する(ステップS6)。そして、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたと判断した場合(ステップS6:YES)、CPU61は、押さえ棒12を下降させ(ステップS7)、縫製を開始する(ステップS11)。
【0029】
ステップS3において、CPU61は、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていると判断した場合(ステップS3:YES)、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたか否かを判断する(ステップS8)。そして、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたと判断した場合(ステップS8:YES)、CPU61は、縫製を開始する(ステップS11)。
【0030】
ステップS2において、CPU61は、ボタンホール縫いが設定されていないと判断した場合(ステップS2:NO)、CPU61は、入力部51にコネクタ86が接続されているか、すなわち、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されているか否かをボタンホール縫い用の布押さえ8からの信号の受信の有無により判断する(ステップS9)。
【0031】
ステップS9において、CPU61は、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていると判断した場合(ステップS9:YES)、CPU61は、ステップS4の処理に移行する。一方、ステップS9において、CPU61は、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていないと判断した場合(ステップS9:NO)、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたか否かを判断する(ステップS10)。そして、CPU61は、縫製スイッチ91の入力がなされたと判断した場合(ステップS10:YES)、CPU61は、縫製を開始する(ステップS11)。
【0032】
ステップS11において、CPU61は、ROM63に記憶された縫製プログラムに沿って縫製を行っている間、CPU61は、縫製が終了したか否かを判断する(ステップS12)。そして、CPU61は、縫製が終了したと判断した場合(ステップS12:YES)、CPU61は、これをもって本処理を終了する。
【0033】
<作用効果>
上記構成を有するミシンの布押さえ装置1によれば、操作パネル40によりボタンホール縫いを行う設定がされている場合において、コネクタ86の入力部51への挿入がされていない、すなわち、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていないことを検出したときに、制御部60は、ソレノイド31を動作させて押さえ棒12を上昇させる。
これにより、コネクタ86と入力部51との接続の有無により装着されている布押さえを判断し、制御部60により押さえ棒12を上昇させることができるので、押さえ棒12にボタンホール用の布押さえ8を取り付けるときのユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上できる。
【0034】
また、操作パネル40によりボタンホール縫いを行う設定がされていない場合において、コネクタ86の入力部51への挿入がされている、すなわち、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されていることを検出したときに、制御部60は、ソレノイド31を動作させて押さえ棒12を上昇させる。
これにより、コネクタ86と入力部51との接続の有無により装着されている布押さえを判断し、制御部60により押さえ棒12を上昇させることができるので、押さえ棒12からボタンホール用の布押さえ8を取り外すときのユーザの操作を省くことができ、作業効率を向上できる。
【0035】
<その他>
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態においては、操作パネル40により選択された縫い模様がボタンホール縫いであるか否かと、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されているか否かによって、押さえ棒12の上下動を制御していたが、操作パネル40の設定に関係なく、押さえ棒12にボタンホール縫い用の布押さえ8が装着されているか否かだけをもって押さえ棒12の昇降を制御することもできる。
すなわち、ミシンアーム101の入力部51にコネクタ86が差し込まれているか否かの判断だけで押さえ棒12の昇降を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ミシンの概略を示す正面図。
【図2】ミシンアーム内部に設けられる布押さえ装置の正面図。
【図3】ボタンホール縫い用の布押さえの平面図。
【図4】ボタンホール縫い用の布押さえにおける押さえ枠の斜視図。
【図5】ボタン保持装置の平面図。
【図6】ボタン径検出装置の平面図。
【図7】位置検出装置の斜視図。
【図8】ミシンの制御装置まわりの構成を示すブロック図。
【図9】押さえ棒の昇降処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0037】
1 ミシンの布押さえ装置
8 ボタンホール縫い用の布押さえ
9 針板
11 布押さえ
12 押さえ棒
19 押さえバネ(付勢部材)
30 第2操作機構(押さえ棒駆動機構)
40 操作パネル(設定手段)
50 検出部(検出手段)
51 入力部(検出手段)
60 制御部(制御手段)
86 コネクタ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針板上に載置された布を押さえる布押さえと、
前記布押さえが着脱自在に装着され、前記布押さえが布を押さえる押圧位置と布の押さえを解除する解除位置との間で昇降する押さえ棒と、
前記押さえ棒を針板に向けて下方に付勢する付勢部材と、
前記押さえ棒に係合し、押さえ棒を付勢力に抗して上昇させる押さえ棒駆動機構と、
ボタンホール縫いを含む複数の縫い模様から所望の縫い模様を選択する設定手段と、を備えるミシンの布押さえ装置において、
前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されているか否かを検出する検出手段と、
前記設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされている場合において、前記検出手段が前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていないことを検出したときに、前記押さえ棒駆動機構を動作させて前記押さえ棒を上昇させる制御手段と、
を備えることを特徴とするミシンの布押さえ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記設定手段によりボタンホール縫いを行う選択がされていない場合において、前記検出手段が前記押さえ棒にボタンホール縫い用の布押さえが装着されていることを検出したときに、前記押さえ棒駆動機構を動作させて前記押さえ棒を上昇させることを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押さえ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−81990(P2010−81990A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251452(P2008−251452)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】