説明

ミスト化粧料

【課題】
噴霧時の液滴の均一性に優れ、液だれ等の問題を解消し、薄く、均一で、密着感があり、肌保護能に優れる被膜を形成することができるミスト化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)ないし(d);
(a)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)エタノール
(c)多価アルコール系保湿剤及び/または糖系保湿剤
(d)水
を含有することを特徴とするミスト化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度応答性高分子を含有する化粧料をミスト状に噴霧することで、みずみずしい使用感と共に、すばやく、手軽に、広範囲にわたって肌に塗布し、肌上の温度に応答しゾル−ゲル転移を生じさせることによって、液だれ等の問題を解消し、薄く、均一で、密着感に優れる被膜を形成することができるミスト化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト化粧料は、化粧水、ボディローション、ヘアローションや、毛髪用セッティング剤、トリートメント剤、かゆみ止め剤などの化粧料を、ミスト状(霧状)に噴霧して使用するものである。噴霧の方法としては、エアゾールタイプとポンプ式ディスペンサータイプを利用する方法が挙げられる。どちらも化粧料を吐出する際に、細かいミスト状に噴射するが、窒素ガス、LPGなどと共に充填し、その噴射力でミスト状にする前者の方が、その噴射力が強く、より細かいミストを形成させることができる。ミスト状とすることで、特に簡便な使用性という点で優れている製品形態ではあるが、液だれの問題や、粘性の高い化粧料は噴霧することが困難であるなどの問題があった。液だれとは、上記化粧料を肌に噴霧した後に、肌になじむことなくたれ落ちてしまうことを言い、主に噴霧する化粧料の粘性の低さによるものである。この問題を解決するため、粘性を高めた化粧料をミスト状にする工夫が様々になされてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、原液が増粘剤0.1〜20重量%及び、アルコール類50〜99.9重量%を含有することを特徴とするジェルスプレー組成物が開示されているが、これは含有するアルコール成分が非常に高く、塗布後に肌からアルコール類が気化する際に肌自体の水分も奪ってしまい、その結果肌の潤いが損なわれてしまうといった問題があった。また、特許文献2には、水膨潤粘土鉱物と水を含有するゲル状組成物が開示されており、特許文献3には、水50重量%以上と、増粘剤と界面活性剤を含有し、粘度が1000〜20000mPa・sであり、噴霧時にミスト状で吐出し、塗布面でジェル状に戻るミスト化粧料が開示されている。しかしながら、これらは適度なミストの形成、皮膚への密着性などの点において、充分ではない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−101851号公報
【特許文献2】特開平9−241115号公報
【特許文献3】特開2004−107305号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、みずみずしい使用感と共に、すばやく、手軽に、広範囲にわたって肌に塗布することが可能であり、肌上の温度に応答しゾル−ゲル転移を生じさせることによって、液だれ等の問題を解消し、薄く、均一で、密着感があり、肌保護能に優れる被膜を形成することができるミスト化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、0〜37℃の温度範囲で水溶液がゾル状態からゲル状態に転移を起こす高分子化合物と、エタノール、多価アルコール系保湿剤及び/または糖系保湿剤、水を組み合わせたミスト化粧料が、噴霧時に均一なミストを生成し、かつ液だれしない使用性に優れたものであることを見出した。すなわち、このミスト化粧料は、噴霧容器中では流動性が高く噴霧時に目詰まりを起こさないため、細かく均一な液滴を生成することが可能であり、肌へ噴射直後はみずみずしい感触で、その後すぐに体温によって化粧料がゲル化し、液だれを起こさないとともに、薄く、均一で、密着感があり、肌保護能に優れる被膜を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
次の成分(a)ないし(d);
(a)0℃より高く37℃より低いLCSTを有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合した分子量10万以上のブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)エタノール
(c)多価アルコール系保湿剤及び/または糖系保湿剤
(d)水
を含有することを特徴とするミスト化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のミスト化粧料は、噴霧時に均一な液滴を生成させることができ、みずみずしい使用感と共に、すばやく、手軽に、広範囲にわたって肌に塗布することが可能である。また、肌上の温度に応答しゾル−ゲル転移を生じさせることによって、液だれ等の問題を解消し、薄く、均一で、密着感があり、肌保護能に優れる被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、下限臨界溶液温度(LCST;Lower Critical Solution Temperature)とは、この温度よりも低い温度では高分子が水に溶解して透明の溶液となるが、この温度よりも高い温度では不溶化して白濁するか沈殿が生じ、相分離する温度である。
【0010】
本発明のミスト化粧料は、0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度を有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物(成分(a))を必須成分として用いる。
【0011】
この成分(a)の高分子化合物は、その水溶液が固有のゾル−ゲル転移温度を有するものであり、ゾルーゲル転移温度より低い温度では流動性を有するゾル状であるが、ゾル−ゲル転移温度よりも高い温度では流動性を失ってゲル化する性質を持つものである。
【0012】
このような高分子化合物は公知の化合物であり、例えば、特許第3585309号公報にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物として記載されているものである。またこの高分子化合物の製造も、この特許第3585309号公報の実施例1ないし6等の明細書中の記載に従って行うことができる。
【0013】
上記成分(a)の高分子化合物は、複数の0℃よりも高く37℃よりも低いLCSTを有する高分子部分(以下、「LCST高分子部分」ということがある)を含むものである。このLCST高分子部分には、LCST挙動を示す温度応答性高分子が含まれる。LCST挙動を示す温度応答性高分子としては、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタクリルアミド誘導体及びこれらの共重合体、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。より具体的には、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミドなどが挙げられ、特にポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0014】
上記LCST高分子部分は、前記LCST挙動を示す温度応答性高分子のみから構成されるホモポリマーであってもよいが、さらに他のモノマーと共重合させたコポリマーであってもよい。このようなコポリマーを構成する他のモノマーとして、親水性モノマー及び疎水性モノマーのいずれも用いることができる。
【0015】
親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等、並びに塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩等が例示できる。
【0016】
一方、上記疎水性モノマーとしては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレート誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミド等のN−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる成分(a)の高分子化合物を構成する上記LCST高分子部分は、LCSTが0℃より高く37℃よりも低い範囲にあるものである。このLCST高分子部分をホモポリマーとする場合は、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミドやポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミドなど、固有のLCSTが0〜37℃の範囲にあるものを適宜選択することができる。一方、LCST高分子部分をコポリマーとする場合には、一般的にLCSTを有する高分子に親水性モノマーを共重合することにより、コポリマーのLCSTを上昇させることが可能となり、また疎水性モノマーを共重合することにより、LCSTを下降させることが可能となるため、LCST挙動を示す温度応答性高分子と共重合させるモノマーの組み合わせを選択し、組成比等を調整することによって、0〜37℃の範囲で高分子部分のLCSTを調整することができる。
【0018】
また、本発明に用いる成分(a)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分の他に、親水性高分子部分を含有するものである。この親水性高分子部分を構成する高分子としては、例えば、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる成分(a)の高分子化合物は、上記LCST高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト重合体である。グラフト重合体の場合は、主鎖であるLCST高分子部分に親水性高分子部分が側鎖として結合したものであっても、主鎖である親水性高分子部分に、側鎖としてLCST高分子部分が結合したものであってもよい。
【0020】
上記LCST高分子部分と、親水性高分子部分とのブロック共重合体は、例えば予め両者に反応活性な官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等)を複数導入し、両者を化学反応により結合させることによって得ることができる。例えば、親水性高分子であるポリエチレンオキサイドの両末端に重合性官能基であるメタクリロイル基を導入し、LCSTを有する高分子を構成するモノマーであるN−イソプロピルアクリルアミドと共重合させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0021】
また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−アクリロキシスクシンイミドを共重合させて1級アミンと反応する基を導入した高分子を合成し、これと末端に1級アミノ基を導入したポリエチレンオキサイドを反応させることによって、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドから構成されるLCST高分子部分とポリエチレンオキサイドからなる親水性高分子部分とのブロック共重合体を得ることができる。
【0022】
一方、上記LCSTを有する高分子部分と親水性高分子部分とのグラフト共重合体は、通常のグラフト重合法を用いることができ、重合体の連鎖移動反応を利用する方法、幹重合体に遊離基に分裂し得る官能基を導入し、該官能基から重合を開始する方法、幹重合体からイオン重合を開始せしめる方法等を用いることができるが、側鎖の重合度を制御するという観点からは、LCST高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、親水性高分子部分を与えるモノマーと共重合させる方法や、親水性高分子部分中に1個の重合性官能基を導入し、LCST高分子部分を構成するモノマーと共重合させる方法などが好ましく用いられる。
【0023】
本発明に用いられる成分(a)の高分子化合物の分子量は1万以上が好ましく、特に10万以上であると、ゾル−ゲル転移温度より高い場合に良好にゲルが形成されるので好ましい。このような分子量のものは、上記のようにして得られたブロック共重合体やグラフト共重合体から、限外ろ過などの通常の分離精製手段を用いて得ることができる。また分子量の測定は、特許第3585309号公報に記載の方法に従って行うことができる。
【0024】
以上のようにして、LCST高分子部分と親水性高分子部分の組成や、両高分子部分の疎水度および親水度、分子量等によって、成分(a)の高分子化合物の水溶液のゾルーゲル転移温度を0℃よりも高く37℃よりも低い範囲に調整し、好ましくは20℃以上37℃未満の範囲とする。ゾル−ゲル転移温度がこの範囲にあると、使用時は均一なミスト状に噴霧することが可能であり、塗布後に肌の温度に応答しゾル−ゲル転移することで、液だれを生じさせず、指やパフによる摩擦を伴う塗布行為を必要とせず均一な被膜を形成させることができる。また、ファンデーション等の化粧をした上からでも化粧を崩さずに、皮膚の水分及び有効成分を補給、保持でき、さらには化粧持続性向上にも寄与するものを得ることができる。
【0025】
このような高分子化合物として、市販されているメビジェル−32(ゾル−ゲル転移温度32℃)やメビジェル−20(ゾル−ゲル転移温度20℃;いずれも一丸ファルコス社製)を用いることもできる。このメビジェル−32および20は、N−イソプロピルアクリルアミド・n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジメタアクリレート共重合体の15w/w%水溶液である。本発明のミスト化粧料に用いられる高分子化合物の水溶液のゾル−ゲル転移温度は、噴霧容器中でミスト化粧料の流動性が保てるように、使用する環境の温度に合わせて適宜設定すればよく、例えば、上記市販品を利用して温度応答性高分子化合物の水溶液のゾル−ゲル転移温度を20℃より高く32℃より低い温度に調整したものを用いることができる。
【0026】
本発明に用いられる成分(a)の配合量は目的や他成分の配合によって異なり、特に限定されるものではないが、全組成中0.01〜7.5重量%(以下、単に「%」と記す)、より好ましくは、0.1〜5.0%である。この範囲で用いれば噴霧時の均一な液滴の生成と液だれのなさにおいて非常に良好であり、さらに噴霧直後のみずみずしさ、その後の密着感、なじみ感をより良好に発現させることができる。
【0027】
また本発明に用いられる成分(b)のエタノールは、肌に塗布した際に清涼感を与えるだけでなく、肌上に噴霧された化粧料の水分蒸発を適度に促進することで、肌への密着感、なじみ感を良好にするものである。
【0028】
本発明に用いられる成分(b)の配合量は目的や他成分の配合によって異なり、特に限定されるものではないが、全組成中1.0〜50.0重量%、より好ましくは、5.0〜30.0%である。この範囲で用いれば清涼感、密着感、なじみ感をより良好に発現することができる。
【0029】
本発明に用いられる成分(c)の多価アルコール系保湿剤は、分子内に水酸基を2個以上有するものであればよく、具体的にはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールなどのブチレングリコール、また1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオールなどのペンタンジオール、また分子内に水酸基を3つ以上含むものとしてグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリンが挙げられる。また、糖系保湿剤としては、マルチトース、マルチトール、ショ糖、フラクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトオール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルグリコシド等のグルコース誘導体等が挙げられる。これらは、必要に応じて一種、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、より優れた保湿性を得るために、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシドが好ましい。
【0030】
本発明のミスト化粧料における成分(c)の配合量は、1.0〜20.0質量%が好ましく、5.0〜15.0質量%が更に好ましい。この範囲で用いれば清涼感、密着感、なじみ感をより良好に発現することができる。
【0031】
本発明のミスト化粧料に用いられる成分(d)の水は、例えば、精製水、イオン交換水、蒸留水等、通常の化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。
【0032】
本発明のミスト化粧料は、噴霧前の静置状態では、液状または粘性が低く流動性のあるゲル状であることが好ましい。すなわち、噴霧時は容易に均一で微細な液滴を生成させるために低粘性であり、噴霧後肌上で増粘ゲル化することが好ましい。
【0033】
本発明のミスト化粧料には、上記必須成分(a)〜(d)に加え、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で更に任意成分を配合することができる。この任意成分としては、(a)成分以外の水溶性高分子、pH調整剤、水性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、油剤、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミン類、美容成分、保湿剤、香料、殺菌剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0034】
また、本発明のミスト化粧料の製造は常法に従って行うことができ、噴霧方法としては、例えば、加圧により噴霧するポンプ式ディスペンサーを用いる、あるいは噴射剤と共に充填してエアゾールタイプとすることが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0036】
実施例1〜6および比較例1〜3
ミスト化粧料:
下記表1に示す組成のミスト化粧料を下記製造方法に従って調製した。得られたミスト化粧料について、下記評価方法により評価した。その結果を併せて表1に示す。
【0037】
【表1】

※1:N−イソプロピルアクリルアミド・メタクリル酸n−ブチル・ポリ(2〜20)アルキレン(C2〜3)グリコールジメタアクリレート共重合体水溶液(固形分15%;ゾル−ゲル転移温度32℃:一丸ファルコス社製)
【0038】
(製造方法)
A:1〜4、7〜10を均一に混合溶解する。(20℃)
B:5、6を加え、均一に混合溶解する。(20℃)
C:噴霧用容器(噴霧チップ口径:φ0.4mm)に充填し、目的であるミスト化粧料を得る。
【0039】
(評価方法)
女性専門パネル20名により官能評価を行った。評価項目は、(1)均一な噴霧性、(2)塗布時の液だれのなさ、(3)肌なじみ・密着感、(4)肌保護効果の各項目についてであり、下記基準に従って判定を行った。
【0040】
(1)均一な噴霧性
<評価基準>
4点…化粧料は非常に細かく、均一に噴霧された。
3点…化粧料は細かく、均一に噴霧された。
2点…化粧料は若干荒く、均一に噴霧された。
1点…化粧料は荒く、不均一に噴霧された。
【0041】
(2)塗布時の液だれのなさ
<評価基準>
4点…化粧料は液だれなく、非常に塗布性に優れていた。
3点…化粧料は液だれなく、塗布性に優れていた。
2点…化粧料は若干液だれし、塗布性は普通であった。
1点…化粧料は液だれし、塗布性に劣っていた。
【0042】
(3)肌なじみ・密着感
<評価基準>
4点…肌なじみ・密着感に非常に優れていた。
3点…肌なじみ・密着感に優れていた。
2点…肌なじみ・密着感は普通であった。
1点…肌なじみ・密着感に劣っていた。
【0043】
(4)肌保護効果
4点…塗布膜は、非常に肌を保護する効果に優れていた。
3点…塗布膜は、肌を保護する効果に優れていた。
2点…塗布膜の肌を保護する効果は普通であった。
1点…塗布膜は、肌を保護する効果に劣っていた。
【0044】
各評価項目の判定は、それぞれの評価項目ごとに点数を合計し、以下の基準により判定した。
<判定>
点数の合計 判定
66〜80点 : ◎
51〜65点 : ○
36〜50点 : △
20〜35点 : ×
【0045】
この結果から明らかなように、実施例1ないし6のミスト化粧料はいずれも均一な噴霧性、塗布時の液だれのなさ、肌なじみ・密着感、肌保護効果においても良好なものであった。一方、比較例1、2、3は塗布時に液だれが生じやすかったり、肌への密着感や肌保護効果に乏しいものであった。
【0046】
実施例7
ミスト化粧水:
下記の処方および製法によりミスト化粧水を製造した。
(処方) (質量%)
(1)メビジェル−32(※1) 1.0
(2)アスコルビン酸2−グルコシド 1.0
(3)クエン酸 0.01
(4)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(5)精製水 残量
(6)エタノール 15.0
(7)1,3−ブチレングリコール 10.0
(8)POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル 0.3
(9)防腐剤 適量
(10)香料 適量
【0047】
(製法)
1〜5に6〜10を加え、均一に攪拌し、可溶化を行う。得られた化粧水をミスト容器に充填する。
【0048】
得られたミスト化粧水は、みずみずしく、均一な噴霧性に優れ、塗布後肌上では、液だれのなさ、肌なじみ・密着感、肌保護効果においても良好なものであった。
【0049】
実施例8
ミスト乳液:
下記処方および製法によりミスト乳液を製造した。
(処方) (質量%)
(1)モノステアリン酸POE(20)ソルビタン 1.0
(2)テトラオレイン酸POE(40)ソルビトール 1.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 1.5
(6)スクワラン 1.0
(7)2−エチルヘキサン酸セチル 1.0
(8)メチルポリシロキサン 0.5
(9)メビジェル−32(※1) 2.0
(10)クエン酸 0.01
(11)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(12)1,3−ブチレングリコール 15.0
(13)エタノール 3.0
(14)防腐剤 適量
(15)精製水 残量
【0050】
(製法)
1〜8、10〜15を共に80℃に加温し、攪拌しながら乳化する。続いて、攪拌・冷却し、20℃にて9を加え、均一に攪拌混合した後、目的である乳化物を得る。得られた乳化物を充填剤(窒素ガス)とともにエアゾール容器に充填する。
【0051】
得られたミスト乳液は、みずみずしく、均一な噴霧性に優れ、塗布後肌上では、液だれのなさ、肌なじみ・密着感、さらに配合されている油分によるエモリエント効果も加わり、肌保護効果においても良好なものであった。
【0052】
実施例9
ミストファンデーション:
下記処方および製法によりミストファンデーションを製造した。
(処方) (質量%)
(1)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(2)ステアリン酸 3.0
(3)ベヘニルアルコール 0.5
(4)セタノール 0.5
(5)スクワラン 3.0
(6)酸化チタン 1.0
(7)ベンガラ 適量
(8)黄酸化鉄 適量
(9)黒酸化鉄 適量
(10)タルク 1.0
(11)大豆リン脂質 0.3
(12)1,3−ブチレングリコール 13.0
(13)トリエタノールアミン 1.5
(14)エタノール 5.0
(15)精製水 残量
(16)メビジェル−32(※1) 2.0
【0053】
(製法)
1〜10、11〜15を共に80℃に加温し、混合する。続いて、攪拌しながら冷却し、20℃にて16を加え、更に均一に混合攪拌し、目的であるリキッドファンデーションを得る。得られたリキッドファンデーションを充填剤(窒素ガス)とともにエアゾール容器に充填する。
【0054】
得られたミストファンデーションは、みずみずしく、均一な噴霧性に優れ、塗布後肌上では、液だれのなさ、肌なじみ・密着感、さらに配合されている油分によるエモリエント効果も加わり、肌保護効果においても、メークアップ効果においても良好なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)ないし(d);
(a)0℃より高く37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する複数の高分子部分と親水性高分子部分が結合したブロック共重合体またはグラフト共重合体であって、その水溶液が0℃より高く37℃より低い温度にゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物
(b)エタノール
(c)多価アルコール系保湿剤及び/または糖系保湿剤
(d)水
を含有することを特徴とするミスト化粧料。
【請求項2】
成分(a)の高分子化合物のゾル−ゲル転移温度が20℃以上37℃未満であることを特徴とする請求項1記載のミスト化粧料。
【請求項3】
成分(a)の高分子化合物を0.01〜7.5質量%、成分(b)のエタノールを1.0〜50.0質量%、成分(c)の保湿剤を1.0〜20.0質量%含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のミスト化粧料。

【公開番号】特開2009−235025(P2009−235025A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85673(P2008−85673)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】