説明

ミセル−シリカ複合カプセル、エマルション−シリカ複合カプセル及びそれらの製造方法

【課題】 簡易に調製することが可能な新規なシリカ複合カプセル及びその製造法、及びシリカ複合カプセルを含有する組成物を提供する。
【解決手段】 水中でミセルを形成し得る物質と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することにより、水系で且つ簡易に、ミセルの外周囲がシリカにより被覆されたミセル−シリカ複合カプセルが得られる。また、界面活性剤と、水と、油と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを混合することによって、内相のエマルション粒子の周囲がシリカで被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが、簡易に得られる。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミセル−シリカ複合カプセル、エマルション−シリカ複合カプセル及びそれらの製造方法、特にシリカ複合カプセルの製造方法の簡易化、さらにはシリカ複合カプセルを含有する組成物の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル内部に内包物質を有するマイクロカプセルについては、従来、記録・表示材料、薬物送達技術(DDS)、化粧品・香料、食品、農薬等の様々な分野で検討が行なわれている。その一例として、例えば、カプセル内部に薬剤を内包することにより、製品中での薬剤の安定性を改善しようとする試みがなされている。
【0003】
このようなマイクロカプセルの1つとして、シリカマイクロカプセルが知られている。従来、シリカマイクロカプセルの製造方法としては、相分離法、液中乾燥法、スプレードライング法、界面重合法、in−situ重合法等、数多くの報告がなされているものの、内包物質を有したシリカマイクロカプセルを得ようとした場合には、通常、内包物質を予め溶解させた溶液中に中空のシリカマイクロカプセルを含浸させる等の処理が別途必要であった。
【0004】
これに対して、予め内包物質を含む水相を分散させた油中水型(W/O型)エマルジョンを用いて、水−油界面でシリカの重合を行うことにより、一段階で内包物質を含むシリカ複合マイクロカプセルを調製する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、非水溶性のテトラアルコキシシランを用いていることから、反応系を油中水型(W/O型)とする必要があり、得られる製剤の剤型が限定されてしまうという欠点があった。
【特許文献1】特開2001−38193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて行われたものであり、その目的は、簡易に調製することが可能な新規なシリカ複合カプセル及びその製造法、及びシリカ複合カプセルを含有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来技術の課題に鑑み、本発明らが鋭意検討を行なった結果、水中でミセルを形成し得る物質と、特定構造の水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することにより、水系で且つ簡易に、ミセル−シリカ複合カプセルが得られ、これにより得られた水系組成物は、透明であり、組成物の外観も非常に優れていることを見出した。また、さらに、界面活性剤と、水と、油と、特定構造の水溶性シラン誘導体とを混合することによって、内相のエマルション粒子の周囲がシリカで被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが、簡易に得られることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかるミセル−シリカ複合カプセルは、水中でミセルを形成し得る物質からなるミセルの外周囲がシリカにより被覆されていることを特徴とするものである。
また、本発明にかかるミセル−シリカ複合カプセルの製造方法は、水中でミセルを形成し得る物質と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することを特徴とするものである。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)
また、本発明にかかる水系透明組成物は、前記ミセル−シリカ複合カプセルが水相中に分散していることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルは、界面活性剤と、水又は油とからなるエマルション粒子の周囲がシリカにより被覆されていることを特徴とするものである。
また、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルの製造方法は、界面活性剤と、水と、油と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを混合することを特徴とするものである。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)
また、本発明にかかるエマルション組成物は、前記エマルション−シリカ複合カプセルが外相中に乳化分散していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中でミセルを形成し得る物質と、特定の水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することにより、水系で且つ簡易に、ミセル−シリカ複合カプセルが得られ、これにより得られた水系組成物は、透明であり、組成物の外観も非常に優れている。さらに、本発明によれば、界面活性剤と、水と、油と、特定構造の水溶性シラン誘導体とを混合することによって、内相のエマルション粒子の周囲がシリカで被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが、簡易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ミセル−シリカ複合カプセル
本発明にかかるミセル−シリカ複合カプセルは、水中でミセルを形成し得る物質と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することにより得られるものである。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)
【0011】
ミセル形成性物質
水中でミセルを形成し得る物質(以下、単にミセル形成性物質という)は、特に限定されるものではないが、代表的なものとして、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。
【0012】
界面活性剤
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0013】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE−アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0014】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0015】
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0016】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等);POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等のPOE−モノオレエート等);POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE−アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POEコレステリルエーテル、POEフィトステロールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−水添ラノリン、POE・POP−グリセリンエーテル等);テトラ POE・テトラPOP−エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE−ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE−ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE−硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE−ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE−ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE−アルキルアミン;POE−脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0017】
また、本発明のミセル−シリカ複合カプセルにおいては、ミセル形成性物質として、非イオン性界面活性剤を好適に用いることができ、中でも、分岐鎖を持つ親水基を有する非イオン性界面活性剤を特に好適に用いることができる。分岐鎖を有する親水基としては、具体的には、例えば、ポリオキシプロピレン基が挙げられる。分岐鎖親水基を有する非イオン性界面活性剤を用いた場合には、例えば、ポリオキシエチレン基のような直鎖の親水基のみを有する非イオン性界面活性剤を用いた場合と比較して、バルク相の固化を生じにくく、より多量の水溶性シラン誘導体と反応させることが可能となる。
【0018】
本発明のミセル−シリカ複合カプセルにおいて、上記ミセル形成性物質は、水溶液中でミセルを形成し、且つ当該ミセルが透明に分散可能な濃度で用いられる必要がある。なお、ミセルを形成し始める濃度は、臨界ミセル濃度(C.M.C)と呼ばれ、各種のミセル形成性物質の種類に応じた固有の値である。例えば、任意の界面活性剤における臨界ミセル濃度(C.M.C)については、現在までに多数の報告がなされており、ほとんどの界面活性剤の場合、必要に応じて入手することが可能である。
【0019】
また、本発明のミセル−シリカ複合カプセルにおいては、任意の水不溶性成分がミセル中に可溶化されたミセル膨潤溶液の状態であっても構わない。例えば、ミセル形成性物質が界面活性剤である場合、界面活性剤ミセル中に油分を可溶化したミセル膨潤溶液とすることが可能であり、このような場合、ミセル内部に油分を内包したミセル−シリカ複合カプセルとして得られる。また、このカプセル内包成分としては、薬剤や塗料等、目的に合わせて適宜選択して配合することができる。
【0020】
なお、例えば、界面活性剤中に任意の不溶性成分を可溶化した場合、一般に、その可溶化系が熱力学的に安定(一相系)か不安定(二相系)かによって、ミセル膨潤溶液と、エマルションとに区別される。そして、本発明においては、上記ミセル−シリカ複合カプセルと同様にして、界面活性剤により形成したエマルションとして、エマルション−シリカ複合カプセルを形成することも可能である。
【0021】
エマルション−シリカ複合カプセル
すなわち、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルは、界面活性剤と、水と、油と、上記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを混合することにより得られるものである。
【0022】
また、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルに用いられる界面活性剤としては、以上に列挙したものを用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤を好適に用いることができ、中でも、分岐鎖を持つ親水基を有する非イオン性界面活性剤を特に好適に用いることができる。
【0023】
また、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルに用いられる油分は、特に限定されるものではなく、一般的な化粧料において用いられる油分を用いることができる。例えば、シリコーン油、合成、天然のエステル油、又は炭化水素類等が挙げられる。これらの油分は、単独で用いても2種以上を混合して用いても構わない。
【0024】
本発明のエマルション−シリカ複合カプセルにおいて、界面活性剤、水及び油は、それぞれエマルションを形成可能な濃度で用いられる。エマルションの形態は、外水相中に油相を乳化分散したO/Wエマルション、又は外油相中に水相を乳化分散したW/Oエマルションのいずれであっても構わないが、O/Wエマルションであることがより好ましい。O/Wエマルションの場合、内部に油性成分を含むエマルション粒子の外周囲がシリカで被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが得られ、他方、W/Oエマルションの場合、内部に水性成分を含むエマルション粒子の内周囲がシリカで被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが得られる。なお、これらのエマルションには、カプセル内包成分として、水性あるいは油性の薬剤や塗料等を適宜配合することができる。
【0025】
また、本発明の製造方法において、上記ミセル形成性物質(界面活性剤)の好適な濃度は、ミセル形成性物質(界面活性剤)の種類によっても異なるが、組成物全量中0.1〜30.0質量%の範囲で用いることが好ましい。ミセル(エマルション)の周囲においてシリカの重合を優先的に進行させ、シリカ複合カプセルを調製するためには、ある程度の数のミセル(エマルション粒子)が、ある程度の間隔を持って水溶液中に分散している必要がある。このため、0.1質量%未満であると、水溶液中のミセル(エマルション粒子)数が少なすぎ、余剰の水溶性シラン誘導体がバルク相で重合し、系全体を固化してしまう場合がある。また、30.0質量%を超えると、ミセル(エマルション)同士が近づきすぎてしまい、シリカ重合の過程で連結してネットワークを形成し、結果として系全体を固化してしまう場合がある。
【0026】
水溶性シラン誘導体
水溶性シラン誘導体は、上記一般式(1)に示されるものである。上記一般式(1)に示される水溶性シラン誘導体において、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。多価アルコール残基は、多価アルコールにおける1つの水酸基が除かれた形として示される。なお、水溶性シラン誘導体は、通常、テトラアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により調製することができ、Rの多価アルコール残基は、使用する多価アルコールの種類によって異なるが、例えば、多価アルコールとしてエチレングリコールを用いた場合、Rは−CH−CH−OHとなる。なお、Rの少なくとも1つが、置換多価アルコール残基であればよく、その他は未置換のアルキル基であってもよい。
【0027】
上記一般式(1)におけるRの多価アルコール残基としては、例えば、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ポリエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ブチレングリコール残基、ヘキシレングリコール残基、グリセリン残基、ジグリセリン残基、ポリグリセリン残基、ネオペンチルグリコール残基、トリメチロールプロパン残基、ペンタエリスリトール残基、マルチトール残基等が挙げられる。これらのうち、Rがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ブチレングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる水溶性シラン誘導体としては、より具体的には、Si−(O−CH−CH−OH)、Si−(O−CH−CH−CH−OH)、Si−(O−CH−CH−CHOH−CH、Si−(O−CH−CHOH−CH−OH)等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、例えば、テトラアルコキシシランと多価アルコールとを、固体触媒の共存下で反応させることにより調製することができる。
【0030】
テトラアルコキシシランは、ケイ素原子に4つのアルコキシ基が結合したものであればよく、特に限定されるものではない。水溶性シリケートモノマーの製造に用いるテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び反応副生成物の安全性の点から、テトラエトキシシランを用いるのが最も好ましい。
【0031】
なお、テトラアルコキシシランの代替化合物として、モノ、ジ、トリハロゲン化アルコキシシラン、例えばモノクロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、モノブロモトリエトキシシラン等、あるいはテトラハロゲン化シラン、例えばテトラクロロシラン等を用いる事も考えられるが、これらの化合物は、多価アルコールとの反応において、塩化水素、臭化水素などの強酸を生成するため、反応装置の腐食が生じたり、さらには反応後の分離除去が困難であるため、実用的であるとは言い難い。
【0032】
多価アルコールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。水溶性シリケートモノマーの製造に用いる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、マルチトール等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンのいずれかを用いるのが好ましい。
【0033】
固体触媒は、用いられる原料成分、反応溶媒、及び反応生成物に対して不溶な固体状の触媒であり、ケイ素原子上の置換基交換反応に対して活性を有する酸点及び/又は塩基点を有する固体であればよい。本発明に用いられる固体触媒としては、例えば、イオン交換樹脂、及び各種無機固体酸/塩基触媒が挙げられる。
【0034】
固体触媒として用いられるイオン交換樹脂としては、例えば、酸性陽イオン交換樹脂及び塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのイオン交換樹脂の基体をなす樹脂としてはスチレン系、アクリル系、メタクリル系樹脂等が挙げられ、また、触媒活性を示す官能基としてはスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、4級アンモニウム、3級アミン、1,2級ポリアミン等が挙げられる。また、イオン交換樹脂の基体構造としては、ゲル型、ポーラス型、バイポーラス型等から、目的に応じて選択することができる。
【0035】
酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRC76、FPC3500、IRC748、IRB120B Na、IR124 Na、200CT Na(以上、ロームアンドハース社製)、ダイヤイオン SK1B、PK208(以上、三菱化学社製)、Dow EX モノスフィア650C、マラソンC、HCR−S、マラソンMSC(以上、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。また、塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRA400J CL、IRA402BL CL、IRA410J CL、IRA411 CL、IRA458RF CL、IRA900J CL、IRA910CT CL、IRA67、IRA96SB(以上、ロームアンドハース社製)、ダイヤイオン SA10A、SAF11AL、SAF12A、PAF308L(以上、三菱化学社製)、Dow EX モノスフィア550A、マラソンA、マラソンA2、マラソンMSA(以上、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0036】
固体触媒として用いられる無機固体酸/塩基触媒としては、特に限定されるものではない。無機固体酸触媒としては、Al、SiO、ZrO、TiO、ZnO、MgO、Cr等の単元系金属酸化物、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−ZrO、TiO−ZrO、ZnO−Al、Cr−AlO3、SiO−MgO、ZnO−SiO等の複合系金属酸化物、NiSO、FeSO等の金属硫酸塩、FePO等の金属リン酸塩、HSO/SiO等の固定化硫酸、HPO/SiO等の固定化リン酸、HBO/SiO等の固定化ホウ酸、活性白土、ゼオライト、カオリン、モンモリロナイト等の天然鉱物又は層状化合物、AlPO−ゼオライト等の合成ゼオライト、HPW1240・5HO、HPW1240等のヘテロポリ酸等が挙げられる。また、無機固体塩基触媒としては、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO、La、ZrO、ThO等の単元系金属酸化物、NaCO、KCO、KHCO、KNaCO、CaCO、SrCO、BaCO、(NHCO、NaWO・2HO、KCN等の金属塩、Na−Al、K−SiO等のアルカリ金属担持金属酸化物、Na−モルデナイト等のアルカリ金属担持ゼオライト、SiO−MgO、SiO−CaO、SiO−SrO、SiO−ZnO、SiO−Al、SiO−ThO、SiO−TiO、SiO−ZrO、SiO−MoO、SiO−WO、Al−MgO、Al−ThO、Al−TiO、Al−ZrO、ZrO−ZnO、ZrO−TiO、TiO−MgO、ZrO−SnO等の複合系金属酸化物等が挙げられる。
【0037】
固体触媒は、反応終了後にろ過あるいはデカンテーション等の処理を行なうことによって、容易に生成物と分離することができる。
【0038】
なお、水溶性シラン誘導体の製造においては、反応時に溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて各種溶媒を用いても構わない。反応に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、セロソルブ、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエステル、エーテル、ケトン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、さらにはクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。ここで、原料として用いるテトラアルコキシシランの加水分解縮合反応を抑制するため、溶媒は予め脱水しておくことが好ましい。また、これらのうちで、反応時に副生成するエタノール等のアルコールと共沸混合物を形成して系外へと除去することで反応を促進することのできるアセトニトリル、トルエン等を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法において、上記水溶性シラン誘導体の濃度は、特に限定されるものではないが、組成物全量中、0.1〜20.0質量%の範囲で用いることが好ましい。0.1質量%未満であると、シリカによりミセル(エマルション)の周囲を被覆するのに十分でない場合があり、また、20.0質量%を超えると、バルク相でシリカの重合が生じ、系全体を固化してしまう場合がある。
【0040】
本発明のミセル−シリカ複合カプセルの製造方法においては、ミセル形成性物質からなるミセルの外周囲がシリカにより被覆されたミセル−シリカ複合カプセルが水相中に分散した水系透明組成物として得られる。なお、本発明の製造方法により得られるミセル−シリカ複合カプセルの粒径は、ミセル形成性物質の種類によっても異なるが、粒径4〜20nm程度である。また、本発明にかかるミセル−シリカ複合カプセルは、得られた水系透明組成物としてそのまま使用してもよく、あるいは、別途、ろ過操作等を行い、ミセル−シリカ複合カプセルのみを取り出して用いても構わない。
【0041】
同様に、本発明のエマルション−シリカ複合カプセルの製造方法においては、O/WあるいはW/Oエマルション粒子の周囲がシリカにより被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが外相中に乳化分散した透明又は白濁状のエマルション組成物として得られる。なお、本発明の製造方法により得られるエマルション−シリカ複合カプセルの粒径は、特に限定されるものではないが、通常、粒径0.1〜50μm程度である。また、本発明にかかるエマルション−シリカ複合カプセルは、エマルション組成物としてそのまま使用してもよく、あるいは、別途、ろ過操作等を行い、エマルション−シリカ複合カプセルのみを取り出して用いても構わない。
【0042】
本発明の製造方法において、水溶液中には、必須成分である上記ミセル形成性物質(界面活性剤)及び水溶性シラン誘導体のほか、本発明の効果を損なわない範囲、すなわち、本発明のシリカ複合カプセルを形成し得る範囲で、他の成分を配合していても構わない。例えば、本発明の製造方法により得られた水系透明組成物又はエマルション組成物を、そのまま化粧品や医薬品として用いる場合には、通常、化粧品、医薬品等の基剤成分あるいは添加剤成分として用いられている保湿剤、ゲル化剤、水溶性高分子、糖類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、薬剤、植物抽出物、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、清涼剤、香料、エモリエント剤、色素等を配合してもよい。また、化粧品等に機能性を賦与する目的で用いられる美白剤、抗しわ剤、抗老化剤、抗炎症剤、発毛剤、育毛促進剤、タンパク質分解酵素などの薬剤、および外用薬の薬効成分としてのステロイド剤、非ステロイド剤を含む抗炎症剤、免疫抑制剤、鎮痛消炎剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗潰瘍・褥瘡剤、創傷被覆剤、循環改善剤、止痒剤、局所麻酔剤、酔い止め剤、ニコチン剤、女性ホルモン剤等を配合してもよい。また、予め本発明の製造方法により調製した水系透明組成物又はエマルション組成物中に、上記各種成分を配合して、化粧品、医薬品等として用いても構わない。
【0043】
また、本発明にかかる水系透明組成物又はエマルション組成物においては、水溶性シラン誘導体の加水分解・脱水縮合過程で生成する多価アルコールが含まれることになる。多価アルコールとしては、使用される水溶性シラン誘導体の種類によって異なるが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、マルチトール等が挙げられる。なお、これらの多価アルコールは、例えば、保湿剤成分等として、化粧料、医薬品等に広く用いられているものであり、本発明にかかる水系透明組成物又はエマルション組成物は、特別な成分を別途配合することなく、シリカ重合過程で生成した多価アルコールに由来する保湿性等の諸効果を有している。
【0044】
なお、本発明にかかる水系透明組成物において、「透明」とは、当該組成物をある方向から観察した場合にその後方側を認識することのできる程度に光を透過していることをいう。本発明にかかる水系透明組成物は、完全に無色である必要はなく、染料、顔料などの色剤を除いた状態で透明であればよい。より具体的には、光路長10mmのセルに充填し、分光光度計で波長550nmの光の透過率を測定した場合に、透過率が少なくとも5%以上のものである。
【0045】
本発明にかかる水系透明組成物水系透明組成物又はエマルション組成物の使用用途は、特に限定されるものではないが、例えば、洗顔料、ファンデーション下地、美容液、乳液、クリーム、メークアップなどの化粧料、及びパップ剤、経皮吸収薬剤含有製剤等の他、種々の製品に応用することが可能である。
【実施例1】
【0046】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
まず最初に、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体の製造方法について説明する。
【0047】
合成例1:エチレングリコール置換シラン誘導体
テトラエトキシシラン20.8g(0.1モル)と、エチレングリコール24.9g(0.4モル)とをアセトニトリル150ml中に添加し、さらに固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.8gを添加した後、室温で混合攪拌した。当初、二層に分離していた反応液は約一時間後に均一に溶解した。その後、5日間攪拌を続けた後、固体触媒をろ過分離し、エタノールとアセトニトリルを減圧下留去して、透明の粘性液体39gを得た。H−NMR分析の結果、生成物が目的とするエチレングリコール置換体(テトラ(2−ヒドロキシエトキシ)シラン)であることを確認した(収率:72.5%)。
【0048】
合成例2:グリセリン置換シラン誘導体
テトラエトキシシラン60.1g(0.28モル)と、グリセリン106.33g(1.16モル)とを混合し、無溶媒下、固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.1gを添加した後、85℃で混合攪拌した。約3時間の後、混合物は一層透明溶液となった。さらに5時間30分反応を続けた後、得られた溶液を終夜静置した。減圧下、固体触媒をろ過分離した後、少量のエタノールで洗浄した。さらにこの溶液からエタノールを留去して、透明の粘性液体112gを得た。生成物は、同量の水と室温中で混合することにより、やや発熱し、均一で透明なゲルを形成した(収率:97%)
【0049】
本発明者らは、上記合成例に準じて多価アルコール置換水溶性シラン誘導体を調製し、各種界面活性剤と当該水溶性シラン誘導体とを水溶液中で混合し、得られた組成物についての検討を行なった。試験内容は以下のとおりである。結果を図1〜6に示す。
【0050】
〈試験内容〉
各種界面活性剤と多価アルコール置換シラン誘導体とを、下記(1)〜(6)に示す組み合わせで用い、それぞれの濃度を変化させて水溶液中で攪拌混合した後、4日後の組成物の状態を目視により観察した。
(1)界面活性剤:ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油(ニッコールHCO−60:日光ケミカルズ社製)
水溶性シラン誘導体:エチレングリコール置換シラン誘導体
(2)界面活性剤:ポリオキシエチレン(24モル)ポリオキシプロピレン(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル(エスセーフ1324(D):日本油脂社製)
水溶性シラン誘導体:グリセリン置換シラン誘導体
【0051】
(3)界面活性剤:ポリオキシエチレン(20モル)セチルエーテル(エマレックス120:日本エマルジョン社製)
水溶性シラン誘導体:グリセリン置換シラン誘導体
(4)界面活性剤:ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム(AKYPO PLM45NV:日光ケミカルズ社製)
水溶性シラン誘導体:グリセリン置換シラン誘導体
【0052】
(5)界面活性剤:ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチナールTC−25AQ:東邦化学工業社製)
水溶性シラン誘導体:グリセリン置換シラン誘導体
(6)界面活性剤:ポリオキシエチレン(12モル)変性ジメチルポリシロキサン※1(SH3773M:ダウ・コーニング シリコーン社製,HLB=8)
水溶性シラン誘導体:グリセリン置換シラン誘導体
※1:直鎖状ジメチルポリシロキサンの側鎖メチル基をポリオキシエチレン(12モル)基により置換したペンダント型のポリオキシアルキレン変性シリコーンであり、全分子量に占めるエチレンオキサイドの分子量は40%である。
【0053】
図1〜6に示されるように、各種の界面活性剤と多価アルコール置換水溶性シラン誘導体とを水溶液中で混合した場合、特定の濃度範囲において、ミセル−シリカ複合カプセルが水相中に分散した透明又は半透明の水系組成物が得られることが明らかとなった。これは、水溶性シラン誘導体の加水分解・脱水縮合によるシリカの重合反応が、ミセルの外周囲において優先的に進行するために、非常に微細なミセル−シリカ複合カプセルが形成されるものと考えられる。また、非イオン性界面活性剤(1)〜(3)、アニオン性界面活性剤(4)、カチオン性界面活性剤(5)、あるいはシリコーン系界面活性剤(6)のいずれの種類の界面活性剤においても、濃度範囲はそれぞれ異なっているものの、透明の水系組成物が得られることが確認された。
【0054】
また、本発明者らは、水溶性シラン誘導体の添加量に対するミセル−シリカ複合カプセルの粒径の変化を、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置を用いて調べた。なお、界面活性剤としてPOE(24モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル、水溶性シラン誘導体としてグリセリン置換シラン誘導体を用い、界面活性剤濃度5質量%,15質量%の各条件で試験を行なった。結果を図7に示す。
【0055】
図7に示されるように、水溶性シラン誘導体の添加量を変化させた場合、水溶性シラン誘導体の増加に伴って、組成物中に存在する粒子の粒径が段階的に増大していることが確認された。このことから、水溶液中に形成されたミセルの外周囲においてシリカの重合が進行することによって、当該ミセルがシリカにより被覆されたミセル−シリカ複合カプセルが形成されているものと認められる。
【0056】
つづいて、本発明者らは、種類の異なる界面活性剤を同一の濃度条件で用い、上記試験と同様にミセル−シリカ複合カプセルの粒径の変化を調べた。なお、界面活性剤としては、POE(24モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル及びPOE(20モル)セチルエーテル、水溶性シラン誘導体としてグリセリン置換シラン誘導体を用い、界面活性剤濃度5質量%の条件で試験を行なった。結果を図8に示す。
【0057】
図8に示されるように、POE(24モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテルを用いた場合には、同一濃度のPOE(20モル)セチルエーテルを用いた場合と比較して、バルク相のゲル化を生じにくく、約4倍量の水溶性シラン誘導体と反応させることが可能であった。なお、水溶液中のミセルは、親水基を外側にして形成されることから、上記の結果は、界面活性剤の親水基の構造が深く関係している。すなわち、POE(20モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテルは、親水基として、分岐鎖を持つポリオキシプロピレン基を有しており、この分岐鎖親水基を有することで、よりミセル外周囲におけるシリカの重合が進行しやすいものと考えられる。
【0058】
以上のように、界面活性剤と水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することにより、水系で簡易に、ミセル−シリカ複合カプセルが得られることが明らかとなった。また、各種の界面活性剤及び水溶性シラン誘導体を用いて、同様の試験を行った結果、得られたミセル−シリカ複合カプセルの粒子径は、4〜20nm程度であった。
【0059】
つづいて、本発明者らは、界面活性剤と、油分と、水とを混合したエマルション状態として、前記試験同様に水溶性シラン誘導体を混合して、シリカ複合カプセルの調製を試みた。試験内容は以下のとおりである。
【0060】
〈試験内容〉
ポリオキシエチレン(8モル)モノイソステアリン酸グリセリル(エマレックスGWIS−108:日本エマルジョン社製)3質量%、グリセリン置換シラン誘導体10質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン(エキセコールD−5:信越化学社製)5質量%、2−エチルヘキサン酸セチル(ニッコールCIO:日光ケミカルズ社製)5質量%、エタノール(試薬特級:和光純薬社製)11質量%、水66質量%をホモミキサー(特殊幾化工業社製)で攪拌混合(9000rpm、90秒間)し、白濁状のO/Wエマルション組成物を得た。
【0061】
以上で得られたO/Wエマルション組成物においては、上記したミセル−シリカ複合カプセルの場合と同様に、外水相中に乳化分散されたO/Wエマルション粒子の外周囲においてシリカの重合が進行することによって、当該O/Wエマルション粒子がシリカにより被覆されたエマルション−シリカ複合カプセルが形成されていると考えられる。
【実施例2】
【0062】
以下、本発明にかかる水系透明組成物及びエマルション組成物の他の実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例2−1 化粧水 (質量%)
水 88.045
グリセリン 2
1,3−ブチレングリコール 2
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.08
EDTA3Na・2HO 0.05
メチルパラベン 0.15
香料 0.005
ビタミンEアセテート 0.05
アスコルビン酸グルコシド 2
POE(60モル)硬化ヒマシ油 1.6
エチレングリコール置換水溶性シラン誘導体 4
【0063】
実施例2−2 化粧水 (質量%)
水 88.045
グリセリン 2
1,3−ブチレングリコール 2
クエン酸 0.02
クエン酸Na 0.08
EDTA3Na・2HO 0.05
メチルパラベン 0.15
香料 0.005
ビタミンEアセテート 0.05
アスコルビン酸グルコシド 2
POE(24モル)POP(13モル)
2−デシルテトラデシルエーテル 5
グリセリン置換水溶性シラン誘導体 5
【0064】
上記実施例2−1,2−2により得られた化粧水は、透明であり、且つミセル−シリカ複合カプセル粒子が水相中に分散しているものであった。
【0065】
実施例2−3 乳液 (質量%)
水 74.75
POE(20)ステアリルエーテル 2
デカメチルシクロペンタシロキサン 5
ジメチルシロキサン(6cs) 7
スクワラン 5
トリ2−エチルへキサン酸グリセリル 3
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.09
メチルパラベン 0.15
エチレングリコール置換水溶性シラン誘導体 3
【0066】
実施例2−4 乳液 (質量%)
水 71.25
POE(20)ステアリルエーテル 2
デカメチルシクロペンタシロキサン 5
ジメチルシロキサン(6cs) 7
スクワラン 5
トリ2−エチルへキサン酸グリセリル 3
オクチルメトキシシンナメート 3
t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.5
クエン酸 0.01
クエン酸ナトリウム 0.09
メチルパラベン 0.15
グリセリン置換水溶性シラン誘導体 3
【0067】
上記実施例2−3,2−4により得られた乳液は、いずれもO/Wエマルションであり、エマルション−シリカ複合カプセル粒子が外水相中に乳化分散しているものであった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油/エチレングリコール置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図2】ポリオキシエチレン(24モル)ポリオキシプロピレン(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル/グリセリン置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図3】ポリオキシエチレン(20モル)セチルエーテル/グリセリン置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図4】ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム/グリセリン置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図5】ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド/グリセリン置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図6】ポリオキシエチレン(12モル)変性ジメチルポリシロキサン/グリセリン置換シラン誘導体水溶液について、それぞれの濃度を各種変化させて得られた組成物の状態を観察した結果をまとめた図である。
【図7】POE(24モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル,グリセリン置換シラン誘導体を用い、界面活性剤濃度5質量%,15質量%の各条件で、水溶性シラン誘導体の添加量に対するミセル−シリカ複合カプセルの粒径の変化について調べた結果をまとめた図である。
【図8】POE(24モル)POP(13モル)2−デシルテトラデシルエーテル又はPOE(20モル)セチルエーテル、及びグリセリン置換シラン誘導体を用い、界面活性剤濃度5質量%の条件で、水溶性シラン誘導体の添加量に対するミセル−シリカ複合カプセルの粒径の変化について調べた結果をまとめた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中でミセルを形成し得る物質からなるミセルの外周囲がシリカにより被覆されていることを特徴とするミセル−シリカ複合カプセル。
【請求項2】
水中でミセルを形成し得る物質と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを、水溶液中で混合することを特徴とするミセル−シリカ複合カプセルの製造方法。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)
【請求項3】
請求項1に記載のミセル−シリカ複合カプセルが水相中に分散していることを特徴とする水系透明組成物。
【請求項4】
界面活性剤と、水又は油とからなるエマルション粒子の周囲がシリカにより被覆されていることを特徴とするエマルション−シリカ複合カプセル。
【請求項5】
界面活性剤と、水と、油と、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体とを混合することを特徴とするエマルション−シリカ複合カプセルの製造方法。
Si−(OR (1)
(式中、Rは少なくとも1つが多価アルコール残基であり、その他はアルキル基であってもよい。)
【請求項6】
請求項4に記載のエマルション−シリカ複合カプセルが外相中に乳化分散していることを特徴とするエマルション組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−94833(P2008−94833A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226830(P2007−226830)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】