説明

ムスカリン受容体アンタゴニストとして有用なビフェニル化合物

本発明は、式(I):


〔式中、a、b、c、p、W、A、X、R、R、R、R、R、およびRは明細書中に定義されるとおりである〕の化合物またはこれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を提供する。式Iの化合物はムスカリン受容体アンタゴニストである。本発明は、この化合物を含有する薬学的組成物、この化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および肺障害を処置するためにこの化合物を使用する方法も提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、また、長期間作用すると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ムスカリン受容体アンタゴニストであるかまたは抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物に関する。本発明はまた、このビフェニル化合物を含む薬学的組成物、このビフェニル化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および肺障害を処置するためにこのビフェニル化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
肺障害または呼吸器障害、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびぜんそくは、世界中で何百万人もの人々がかかる病気であり、この障害は罹患率および死亡率の主要因である。
【0003】
ムスカリン受容体アンタゴニストは気管支保護効果があることが知られており、そのため、この化合物は呼吸器障害(例えばCOPDおよびぜんそく)を処置するのに有用である。ムスカリン受容体アンタゴニストは、このような障害を処置するのに使用される場合、典型的には吸入によって投与される。しかし、吸入によって投与されたとしても、顕著な量のムスカリン受容体アンタゴニストが体循環で吸収されてしまい、全身性の副作用(例えば、口の乾き、散瞳および心血管系副作用)を生じることがよくある。
【0004】
さらに、吸入されたムスカリン受容体アンタゴニストの多くは比較的作用持続時間が短く、1日に数回投与することが必要である。このような1日に複数回投与する方法は不便であるだけではなく、頻繁な投薬スケジュールが必要であるということに対する患者のコンプライアンスのなさに起因して、処置が不十分になるという顕著なリスクが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、新規ムスカリン受容体アンタゴニストが必要とされている。特に、吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少ない新規ムスカリン受容体アンタゴニストが必要とされている。さらに、長期間作用して1日に1回または1週間に1回の投与でよい吸入用ムスカリン受容体アンタゴニストが必要とされている。このような化合物は、副作用(例えば口の渇きおよび便秘)を減らすかまたは排除しつつ、肺障害(例えば、COPDおよびぜんそく)の処置に特に有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、ムスカリン受容体アンタゴニストであるかまたは抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、また、長期間作用すると考えられる。
【0007】
本発明の1つの態様は、式I:
【0008】
【化17】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体に関する。
【0009】
式中、aは0または1〜5の整数であり;
各Rは(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから独立して選択され;R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1jおよびR1kはそれぞれ独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
bは0または1〜4の整数であり;
各Rは、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから独立して選択され;R2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2jおよびR2kはそれぞれ独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
WはOまたはNWをあらわし、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり;
cは0または1〜5の整数であり;
各Rは独立して(1〜4C)アルキルをあらわすか、または2個のR基が結合して(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
Aは:
【0010】
【化18】

からなる群より選択され、ここで、mは、0または1であり;rは、2、3または4であり;sは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;Rは、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜4C)シクロアルキルから選択され;そしてArは、フェニレン基、または1個もしくは2個のヘテロ原子を含む(3〜5C)ヘテロアリーレン基を表し、このヘテロ原子は、独立して、酸素、窒素および硫黄から選択され;ここで、このフェニレン基またはヘテロアリーレン基は、(Rで置換されており、ここで、qは、0または1〜4の整数であり、そして各Rは、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから選択され;
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンC(O)OR6a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンQ、−(1〜4C)アルキレンC(O)Z、−C(O)(1〜4C)アルキレンZ、および−S(O)(1〜4C)アルキレンZから選択され;ここで、Qは、−NR6b6cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基であり;Zは、−NR6d6eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基であり;R6aは、水素または(1〜4C)アルキルであり;R6b、R6c、R6dおよびR6eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキルまたはヒドロキシフェニルを表し、そしてここで、(1〜4C)アルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから選択され;このヘテロシクリルは、1個または2個の窒素原子を含み、そして非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR6f6gおよび−C(O)NR6h6iから選択されここで、R6f、R6g、R6hおよびR6iの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表し;そしてこのヘテロアリールは、1個または2個の窒素原子を含み;
は、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択され;任意のX中のアルキレン基は、(1〜4C)アルキルおよび−NRXaXbから独立して選択される1個または2個の置換基で場合により置換されており;RXaおよびRXbは、水素および(1〜4アルキル)から独立して選択され;
pは、0、1または2であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR7a、−C(O)OR7b、−SR7c、−S(O)R7d、−S(O)7eまたは−NR7f7gを表し;R7aは、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、そしてR7b、R7c、R7d、R7e、R7fおよびR7gの各々は、独立して水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、ここで、各フェニル基は、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、ハロ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから選択され;そして
は、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR8a8b、およびフェニルから選択され、R8aおよびR8bの各々は、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRは、Rと一緒になって、1個〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここで、この環は、非置換されているか、または1個もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基で置換されており;
ここで、R、R1a−1k、R、R2a−2k、R、R、R、R7a−7g、R、およびR8a−8bにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。
【0011】
本発明の別の局面は、薬学的に受容可能なキャリアと、治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体とを含有する、薬学的組成物に関する。本発明のなお別の局面は、1種以上の他の治療剤と組み合わせた、式Iの化合物を含有する組成物に関する。従って、1つの実施形態において、本発明は、(a)薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体と;(b)ステロイド系抗炎症薬剤(例えば、コルチコステロイド);βアドレナリン作用性受容体アゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4阻害剤;またはこれらの組み合わせから選択される、治療有効量の薬剤とを含有する組成物に関し、この組成物において、式Iの化合物とこの薬剤とは、一緒に処方されるか、または別々に処方される。この薬剤が別々に処方される場合、薬学的に受容可能なキャリアが含有され得る。
【0012】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有する。従って、式Iの化合物は、慢性閉塞性肺疾患および喘息などの、肺障害を処置するために有用であると予測される。
【0013】
本発明のなお別の局面は、肺障害を処置するための方法に関し、この方法は、患者に、治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。
【0014】
本発明のなお別の局面は、患者において気管支拡張を引き起こす方法に関し、この方法は、この患者に、気管支拡張を起こす量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。1つの実施形態において、この化合物は、吸入によって投与される。
【0015】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置する方法に関し、この方法は、患者に、治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。
【0016】
本発明の別の局面は、哺乳動物においてムスカリン受容体を拮抗するための方法に関し、この方法は、この哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物を投与する工程を包含する。
【0017】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有するので、このような化合物はまた、研究ツールとして有用である。従って、本発明の別の局面は、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を、生物学的系もしくは生物学的サンプルを研究するための研究ツールとして、またはムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有する新規化合物を発見するために、使用するための方法に関する。
【0018】
本発明はまた、式Iの化合物ならびにその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、および立体異性体を調製するために有用なプロセスおよび新規中間体に関する。従って、本発明の別の局面は、式Iの化合物を調製するプロセスに関し、このプロセスは、
(a)式IIの化合物を式IIIの化合物と反応させる工程;または
(b)式IVaの化合物を式Va’または式Va”の化合物とカップリングさせる工程あるいは式IVbの化合物を式Vb’または式Vb”の化合物とカップリングさせる工程;または
(c)式VIの化合物を式VIIの化合物と反応させる工程;または
(d)式IIの化合物を式VIIIの化合物と還元剤の存在下で反応させる工程;または
(e)式IXの化合物を式VIIの化合物と還元剤の存在下で反応させる工程;
および次いで、必要であれば、任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程を包含し、ここで、式I〜IXの化合物は、本明細書中で定義されるとおりである。
【0019】
1つの実施形態において、上記プロセスは、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程をさらに包含する。他の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される他のプロセス;および本明細書中に記載されるプロセスのいずれかによって調製される生成物に関する。
【0020】
本発明はまた、治療において使用するため、または医薬として使用するための、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体に関する。
【0021】
さらに、本発明は、医薬の製造のため、特に、肺障害の処置のため、または哺乳動物におけるムスカリン受容体を拮抗するための医薬の製造のための、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用に関する。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iの新規なビフェニル化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物または立体異性体に関する。これらの化合物は、1個以上のキラル中心を含み得、従って、本発明は、他に示されない限り、ラセミ混合物;純粋な立体異性体(すなわち、エナンチオマーもしくはジアステレオマー);立体異性体を濃縮された混合物などに関する。特定の立体異性体が、本明細書中で示されるかまたは名称を記載される場合、他に示されない限り、少量の他の立体異性体が、本発明の組成物中に存在し得るが、ただし、その組成物の全体としての所望の有用性は、このような他の異性体の存在によって排除されないことが、当業者によって理解される。
【0023】
式Iの化合物はまた、数個の塩基性基(例えば、アミノ基)を含み、従って、式Iの化合物は、遊離塩基形態として、または種々の塩形態で、存在し得る。このような全ての塩形態は、本発明の範囲内に含まれる。さらに、式Iの化合物の溶媒和物またはその塩が、本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
さらに、適用可能である場合、式Iの化合物の全てのシス−トランス異性体またはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性形態および位相異性体形態が、他に特定されない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
式Iの化合物、およびそれらの合成において使用される化合物はまた、同位体標識された化合物(すなわち、1個以上の原子が、天然に優位に見出される原子量とは異なる原子量を有する原子を濃縮されている化合物)を含み得る。式Iの化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の化合物を命名するために本明細書中で使用される命名法は、本明細書中の実施例に説明されている。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL,San Leandro,California)を使用して得られた。例えば、WがOである式Iの化合物は、代表的に、ビフェニル−2−イルカルバミン酸のエステル誘導体として命名されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(代表的な実施形態)
以下の置換基および値は、本発明の種々の局面および実施形態の代表的な例を提供することを意図されている。これらの代表的な値は、このような局面および実施形態をさらに定義および説明することを意図されており、他の実施形態を排除することも、本発明の範囲を限定することも、意図されない。この点に関して、特定の値または置換基が好ましいという表現は、具体的に示されない限り、本発明から他の値または置換基を、いかなる方法でも排除することを意図しない。
【0028】
aについての値は、0、1、2、3、4または5であり;特定すると、0、1または2であり、そしてなおより特定すると、0または1である。bについての値は、0、1、2、3または4であり;特定すると、0、1または2であり、そしてなおより特定すると、0または1である。1つの実施形態において、aは、0である。別の実施形態において、bは、0である。なお別の実施形態において、aとbとの両方が、0である。
【0029】
存在する場合、各Rは、そのRが結合しているフェニル環の、2位、3位、4位、5位または6位にあり得る。各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから選択され、これらの例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどが挙げられる。特定の実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、ハロ、−OR1aおよび−NR1f1gから選択される。Rについての特定の値は、フルオロまたはクロロである。
【0030】
存在する場合、各Rは、このRが結合しているフェニレン環の、3位、4位、5位または6位にあり得る(ここで、窒素原子に結合しているフェニレン環上の炭素原子が、1位である)。各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから選択され、これらの例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどが挙げられる。1つの実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、ハロ、−OR2aおよび−NR2f2gから選択される。Rについての特定の値は、フルオロまたはクロロである。
【0031】
およびRにおいてそれぞれ使用される場合、各R1a−1k基およびR2a−2k基は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、これらの例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはベンジルが挙げられる。1つの実施形態において、これらの基は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルである。別の実施形態において、これらの基は、独立して、水素、メチルまたはエチルである。さらに、R、R1a−1k、R、およびR2a−2kにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。
【0032】
Wは、OまたはNWであり得る。一般に、WがOを表す化合物は、ムスカリン受容体に対して特に高い親和性を示すことが見出された。従って、本発明の特定の実施形態において、Wは、Oを表す。
【0033】
WがNWである場合、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり、これらの例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。1つの実施形態において、Wは、水素または(1〜3C)アルキルである。別の実施形態において、Wは、水素、メチルまたはエチルであり、特に、水素またはメチルである。なお別の実施形態において、Wは、水素である。
【0034】
cについての値は、0、1、2、3、4、または5であり;特定すると、0、1、または2であり;そしてより特定すると、0または1である。1つの特定の実施形態において、cは、0である。
【0035】
1つの実施形態において、各Rは、ピペリジン環の3位、4位または5位にある(ここで、このピペリジン環の窒素原子が、1位である)。特定の実施形態において、Rは、このピペリジン環の4位にある。別の実施形態において、Rは、このピペリジン環の1位(すなわち、このピペリジン環に窒素原子)にあり、従って、第四級アミン塩を形成する。各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルであるか、または2つのR基が、一緒になって、(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成する。1つの実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチル)である。さらに、Rにおける各アルキル基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。1つの実施形態において、各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルであり、そして別の実施形態において、各Rは、独立して、メチルまたはエチルである。
【0036】
なお別の実施形態において、2つのR基が、一緒になって、(1〜3C)アルキレン基または(2〜3C)アルケニレン基を形成する。例えば、ピペリジン環の2位および6位2つのR基にあるは、一緒になって、エチレン架橋を形成し得る(すなわち、ピペリジン環とR基とが、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン環を形成する)か;またはピペリジン環の1位および4位の2つのR基が、一緒になって、エチレン架橋を形成し得る(すなわち、ピペリジン環とR基とが、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン環を形成する)。この実施形態において、本明細書中で定義されるもの以外のR基もまた、存在し得る。
【0037】
なお別の実施形態において、2つのR基が、一緒になって、オキシラン−2,3−ジイル基を形成する。例えば、ピペリジン環の2位および6位にある2つのR基が、一緒になって、3−オキサトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン環を形成し得る。この実施形態において、本明細書中に定義される以外のR基もまた、存在し得る。
【0038】
Aは:
【0039】
【化19】

からなる群より選択される。
【0040】
1つの特定の実施形態において、Aは、
【0041】
【化20】

である。
【0042】
別の特定の実施形態において、Aは、
【0043】
【化21】

である。
【0044】
なお別の特定の実施形態において、Aは、
【0045】
【化22】

である。
【0046】
mについての値は、0または1である。1つの実施形態において、mは、0である。
【0047】
rについての値は、2、3、または4である。1つの実施形態において、rは、3である。
【0048】
sについての値は、0、1または2である。sについての特定の値は、0である。
【0049】
tについての値は、0、1または2である。tについての特定の値は、1である。
【0050】
は、水素、(1〜4C)アルキル、または(3〜4C)シクロアルキルを表す。(1〜4C)アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。(3〜4C)シクロアルキル基の例としては、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。1つの実施形態において、Rは、水素または(1〜4C)アルキルを表す。特定の実施形態において、Rは、水素またはメチルである。別の実施形態において、Rは、水素である。
【0051】
Arは、フェニレン基、または1個もしくは2個のヘテロ原子を含む(3〜5C)ヘテロアリーレン基であり、このヘテロ原子は、独立して、酸素、窒素または硫黄から選択される。qについての値は、0、1、2、3、または4であり、特定すると、0、1、2または3である。1つの実施形態において、qは、0、1または2である。従って、このフェニレン基またはヘテロアリーレン基は、非置換(qが0)であっても、1個〜4個のR置換基で置換されていてもよく、この置換基は、ハロ、ヒドロキシ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから独立して選択される。さらに、Rにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。Arについての結合点は、任意の利用可能な炭素環原子またはヘテロ原子環原子である。特定の実施形態において、Arは、メタ位またはパラ位で結合した、フェニレン基である。
【0052】
一実施形態では、Arはフェン−1,3−イレンまたはフェン−1,4−イレンであり、ここで、フェニレン基は置換されていないか、または1個、2個または3個のR置換基で置換されている。代表的なR置換基としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよびトリフルオロメトキシが挙げられる。Ar基の特定の例としては、この実施形態では、2−フルオロフェン−1,4−イレン、3−フルオロフェン−1,4−イレン、2−クロロフェン−1,4−イレン、3−クロロフェン−1,4−イレン、2−メチルフェン−1,4−イレン、3−メチルフェン−1,4−イレン、2−メトキシフェン−1,4−イレン、3−メトキシフェン−1,4−イレン、2−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、3−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、2,3−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,5−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,6−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,3−ジクロロフェン−1,4−イレン、2,5−ジクロロフェン−1,4−イレン、2,6−ジクロロフェン−1,4−イレン、2−クロロ−5−メトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−6−メトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−5−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−6−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、および2,5−ジブロモフェン−1,4−イレンが挙げられる。
【0053】
別の実施形態では、Arは酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含有する(3〜5C)ヘテロアリーレン基であり;ここで、このヘテロアリーレン基は置換されていないか、または1個または2個のR置換基で置換されている。代表的なヘテロアリーレン基としては、二価の種であるピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンが挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。このAr基のさらに特定的な例としては、2,5−フリレン、2,4−チエニレン、2,5−チエニレン、2,5−ピリジレン、2,6−ピリジレン、および2,5−ピロリレンが挙げられる。代表的なR置換基としては、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよびトリフルオロメトキシが挙げられる。置換Ar基の特定的な例としては、3−フルオロ−2,5−チエニレン、3−クロロ−2,5−チエニレン、3−メチル−2,5−チエニレン、3−メトキシ−2,5−チエニレン、および3−メトキシ−6−クロロ−2,5−ピリジレンが挙げられる。
【0054】
1つの特定の実施形態では、Arは、フェン−1,3−イレン、フェン−1,4−イレン、2,4−チエニレンまたは2,5−チエニレンをあらわし;ここで、フェニレン基またはチエニレン基は1個または2個のR置換基で場合により置換されている。別の実施形態では、Arは、1個または2個のR置換基で場合により置換されたフェン−1,4−イレンまたは2,4−チエニレンである。
【0055】
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、(0〜3C)アルキレンC(O)OR6a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンQ、−(1〜4C)アルキレンC(O)Z、−C(O)(1〜4C)アルキレンZ、または−S(O)(1〜4C)アルキレンZを表す。Qは、−NR6b6cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基である。Zは、−NR6d6eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基である。R6aは、水素または(1〜4C)アルキルである。R6b、R6c、R6dおよびR6eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキルまたはヒドロキシフェニルを表し、そして(1〜4C)アルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから選択される。ヘテロシクリルは、1個または2個の窒素原子を含み、そして非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR6f6gおよび−C(O)NR6h6iから選択され、ここで、R6f、R6g、R6hおよびR6iの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表す。ヘテロシクリルは、1個または2個の窒素原子を含む。このヘテロシクリル基およびヘテロアリール基は、上記1個または2個の窒素原子に加えて、他のヘテロ原子を含み得る。例えば、このヘテロシクリルは、モルホリニル基であり得る。
【0056】
1つの実施形態において、Rは、水素、(1〜4C)アルキル、または(3〜4C)シクロアルキルを表し、これらの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。別の実施形態において、Rは、水素または(1〜4C)アルキル(特に、メチル)を表す。別の特定の実施形態において、Rは、メチルである。なお別の実施形態において、Rは、水素である。
【0057】
は、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択される。任意のXにおけるアルキレン基は、必要に応じて、1個もしくは2個の置換基で置換されており、この置換基は、独立して、(1〜4C)アルキルおよび−NRXaXbから選択され、ここで、RXaおよびRXbは、独立して、水素および(1〜4アルキル)から選択される。1つの実施形態において、Xは、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−または−SO−から選択される。別の実施形態において、Xは、(1〜3C)アルキレン(例えば、−CH−および−(CH−)である。なお別の実施形態において、Xは、−SO−である。
【0058】
pについての値は、0、1、または2である。pについての特定の値は、0または1である。1つの実施形態において、pは、0である。別の実施形態において、pは、1である。
【0059】
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR7a、−C(O)OR7b、−SR7c、−S(O)R7d、−S(O)7eまたは−NR7f7gである。R7aは、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルである。各R7b、R7c、R7d、R7e、R7fおよびR7gは、Rにおいて使用される場合、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルである。R7a−7gにおける各フェニル基は、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、この置換基は、独立して、ハロ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから選択される。さらに、RおよびR7a−7gにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。1つの実施形態において、各Rは、独立して、ハロ、(1〜4C)アルキル、または(1〜4C)アルコキシを表し、ここで、このアルキル基およびある古希式は、1個〜3個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。別の実施形態において、各Rは、独立して、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、メトキシ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシから選択される。別の実施形態において、各Rは、−OR7aであり、ここで、R7aは、(1〜4C)アルキル(例えば、メチル)または(3〜6C)シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)である。
【0060】
は、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR8a8b、およびフェニルから選択さるか;またはRは、Rと一緒になって、1個〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここで、この環は、非置換であるか、または1個もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基で置換されている。R8aおよびR8bの各々は、独立して、水素または(1〜4C)アルキルである。さらに、RおよびR8a−8bにおける各アルキル基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。1つの実施形態において、Rは、(1〜4C)アルキル(例えば、メチル、または2個もしくは3個のフルオロ置換基で置換されているメチル)である。別の実施形態において、Rは、(1〜4C)アルキレンNR8a8bであり、ここで、R8aおよびR8bの各々は、独立して、(1〜4C)アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、(1〜4C)アルキレンNR8a8bの例は、−(CHN(CHである。特定の実施形態において、Rは、フェニルである。1つの実施形態において、Rは、Rと一緒になって、1個〜2個の酸素原子を有する環を形成し、そしてこの環は、非置換であるか、または1個もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基で置換されている。例示的なR/R鎖としては、−O(CH)−、−(CH−C(CH−、−(CH−、および−O(CH−が挙げられる。
【0061】
式Iにおいて記載される場合、−OR基は、オルト位、メタ位またはパラ位に位置し得る。1つの実施形態において、−OR基は、メタ位またはパラ位に位置し;そして特定の実施形態において、−OR基は、パラ位に位置する。
【0062】
目的の化合物の特定の群は、a、bおよびcが0である、式Iの化合物である。目的の化合物の別の特定の群は、WがOを表す、式Iの化合物である。目的の化合物の別の特定の群は、mが0である、式Iの化合物である。他の目的の化合物は、pが1であり、そしてRが−OR7aであり、ここで、R7aが、(1〜4C)アルキルまたは(3〜6C)シクロアルキルである、化合物である。他の目的の化合物は、Rが、水素またはメチルである、化合物である。目的の化合物の特定の群は、Xが(1〜3C)アルキレンまたは−SO−である、式Iの化合物である。
【0063】
上記のものの組み合わせもまた、目的である。例えば、目的の化合物の1つの群は、上記置換基のうちのいずれかを有し、そしてAが、
【0064】
【化23】

であり、mが、0であり、そしてrが、3である、式Iの化合物である。目的の化合物の別の群は、上記置換基のうちのいずれかを有し、そしてAが、
【0065】
【化24】

であり、mが、0であり、sが、0であり、tが、1であり、そしてArが、フェニレンである、式Iの化合物である。目的の化合物の別の群は、上記置換基のうちのいずれかを有し、そしてAが、
【0066】
【化25】

であり、mが、0であり、sが、0であり、tが、1であり、そしてArが、フェニレンである、式Iの化合物である。
【0067】
目的の化合物の別の群は、式Ia:
【0068】
【化26】

の化合物である。式Iaにおいて、p、A、X、R、R、およびRは、上で定義されたとおりである。
【0069】
さらに、目的の式Iの特定の化合物としては、以下が挙げられる:
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−メトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(3,4−ジメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−ジフルオロメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−フェノキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]−エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,2−ジメチルクロマン−6−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[2−(4−メトキシフェニル)エチルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]メチル}フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−ジフルオロメトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−メトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)アミノ]メチル}フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−({4−[(4−メトキシベンジルアミノ)メチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−({4−[(2−メトキシベンジルアミノ)メチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【0070】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記載する場合、以下の用語は他に言及されない限り以下に示す意味を有する。
【0071】
用語「アルキル」は、一価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキル基は典型的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基としては、一例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0072】
用語「アルキレン」は、二価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキレン基は典型的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキレン基としては、一例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0073】
用語「アルコキシ」は、式(アルキル)−O−の一価の基を意味し、アルキルは上に定義されるとおりである。代表的なアルコキシ基としては、一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0074】
用語「アルケニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、典型的には1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合を有する一価の飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルケニル基は典型的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、一例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブタ−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。用語「アルケニレン」は、二価のアルケニル基を意味する。
【0075】
用語「アルキニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、典型的には1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価の不飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルキニル基は典型的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基としては、一例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。用語「アルキニレン」は、二価のアルキニル基を意味する。
【0076】
用語「アリール」は、単環(すなわちフェニル)または縮合環(すなわちナフタレン)を有する一価の芳香族炭化水素を意味する。他に定義されない限り、このアリール基は典型的には6〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアリール基としては、一例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。用語「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。
【0077】
用語「アザシクロアルキル」は、1個の窒素原子を有する一価のヘテロ環式環、すなわち、1個の炭素原子が窒素原子に変わったシクロアルキルを意味する。他に定義されないかぎり、このアザシクロアルキル基は典型的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なアザシクロアルキルの例は、ピロリジニルおよびピペリジニル基である。用語「アザシクロアルキレン」は、二価のアザシクロアルキル基を意味する。アザシクロアルキレン基の代表例は、ピロリジニレンおよびピペリジニレン基である。
【0078】
用語「シクロアルキル」は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このシクロアルキル基は典型的には3〜10個の炭素原子を含有する。代表的なシクロアルキル基としては、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。用語「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキル基を意味する。
【0079】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0080】
用語「ヘテロアリール」は、単環または2個の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(典型的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の芳香族基を意味する。他に定義されないかぎり、この基は典型的には5〜10個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロアリール基としては、一例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロアリーレン」は、二価のヘテロアリール基を意味する。
【0081】
用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」は、単環または複数の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(典型的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の飽和または不飽和(芳香族ではない)基を意味する。他に定義されない限り、この基は典型的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロ環基としては、一例として、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロシクレン」は、二価のヘテロシクリルまたはヘテロ環基を意味する。
【0082】
本明細書で使用される特定の用語に特定の数の炭素原子を入れようとする場合、炭素原子の数は用語の前に括弧書きで示される。例えば、用語「(1〜4C)アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0083】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、患者(例えば哺乳動物)に投与するのに受容可能な塩(例えば、所与の投薬法で哺乳動物への安全性が受容可能なものである塩)を意味する。この塩は、薬学的に受容可能な無機塩基または有機塩基と、薬学的に受容可能な無機酸または有機酸とから誘導することができる。薬学的に受容可能な無機塩基から誘導される塩としては、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(manganic)塩、マンガン(manganous)塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。特に好ましいのはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。薬学的に受容可能な有機塩基から誘導される塩としては、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンの塩が挙げられ、アミンとしては、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなど、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペリジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。薬学的に受容可能な酸から誘導される塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、エジシル酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩、グルタミン酸塩、馬尿酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシナホン酸塩(xinafoic)などが挙げられる。特に好ましいのは、クエン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩および酒石酸塩である。
【0084】
用語「それらの塩」は、酸の水素がカチオン(例えば金属カチオンまたは有機カチオンなど)と交換されて形成される化合物を意味する。好ましくは、この塩は薬学的に受容可能な塩である。しかし、いくつかの塩(例えば、中間体化合物の塩)は患者に投与することを意図していないので、薬学的に受容可能な塩である必要はない。
【0085】
用語「溶媒和物」は、1つ以上の溶質(すなわち、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩)と1つ以上の溶媒分子によって形成される複合体または凝集物を意味する。この溶媒和物は、典型的には、溶質および溶媒のモル比が実質的に固定した結晶性固体である。代表的な溶媒としては、一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0086】
用語「またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体」が、塩、溶媒和物および立体異性体のあらゆる組み合わせ(例えば、式Iの化合物の立体異性体の薬学的に受容可能な塩の溶媒和物)を含むことが意図されると理解される。
【0087】
用語「治療有効量」は、処置が必要な患者に投与したときに患者を処置するのに十分な量を意味する。例えば、ムスカリン受容体を拮抗するための治療有効量は、所望な拮抗効果を達成する量である。同様に、肺障害を処置するための治療有効量は、所望な治療結果を達成する量であり、この量は、以下に記載されるように、疾患を予防し、改善し、抑制するかまたは緩和させる量であってもよい。
【0088】
用語「処置する」または「処置」は、本明細書で使用される場合、患者(例えば哺乳動物、特にヒト)の疾患または医学状態(例えばCOPD)を処置することまたは処置を意味し、以下の内容を含む:
(a)疾患または医学状態が発症することを予防すること、すなわち、疾患または医学状態が発症するかまたは処置前の状態であるリスクがあると考えられる患者の予防的処置;
(b)疾患または医学状態を改善させること、すなわち、疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態を除去すせるか、または退縮させること;
(c)疾患または医学状態を抑制すること、すなわち、この疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の進行を遅らせるかまたは進行をとめること;または
(d)疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の症状を緩和すること。
【0089】
用語「単位投薬形態」は、患者に投与するのに適した物理的に別個の単位を指す。すなわち、それぞれの単位は、所望の治療効果を得るように計算された所定量の本発明の化合物を単独でまたは1つ以上のさらなる単位と組み合わせて含有する。例えば、この単位投薬形態は、カプセル、錠剤、丸薬などであってもよい。
【0090】
用語「薬学的に受容可能な」は、生物学的またはその他の要因で望ましくない材料ではない物質を指す。例えば、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、組成物に組み込み可能で、所望ではない生物学的影響を与えたり、組成物の他の成分に悪影響を与えないで患者に投与される物質を指す。この薬学的に受容可能な物質は、典型的には、必要な毒性試験標準および製造試験標準を満たし、米国食品医薬品局によって適切な不活性成分であると同定されている物質を含む。
【0091】
用語「脱離基」は、置換反応(例えば求核置換反応)で別の官能基または原子と交換可能な官能基または原子を意味する。一例として、代表的な脱離基としては、クロロ、ブロモおよびヨード基;スルホン酸エステル基、例えば、メシレート、トシレート、ブロシレート、ノシレートなど;およびアシルオキシ基、例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシなどが挙げられる。
【0092】
用語「それらの保護された誘導体」は、化合物の1つ以上の官能基を保護基またはブロッキング基で保護して望ましくない反応を防ぐようにした特定の化合物の誘導体を意味する。保護可能な官能基としては、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸の代表的な保護基としては、エステル(例えばp−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジド;アミノ基の保護基としては、カルバメート(例えばtert−ブトキシカルボニル)およびアミド;ヒドロキシル基の保護基としては、エーテルおよびエステル;チオール基の保護基としては、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニル基の保護基としては、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。この保護基は当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999および引用文献に記載されている。
【0093】
用語「アミノ保護基」は、アミノ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、限定されないが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0094】
用語「カルボキシ保護基」は、カルボキシ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基としては、限定されないが、エステル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。
【0095】
用語「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定されないが、シリル基、例えば、トリ(1〜6C)アルキルシリル基、例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)など;エステル(アシル基)、例えば、(1〜6C)アルカノイル基、例えば、ホルミル、アセチルなど;アリールメチル基、例えば、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。さらに、2個のヒドロキシル基は、例えば、ケトン(例えばアセトン)と反応させることによってアルキリデン基(例えばプロパ−2−イリデン)として保護して形成することもできる。
【0096】
(一般的な合成手順)
本発明のビフェニル化合物は、以下の一般的な方法、実施例に記載の手順を用いるか、または当業者が容易に入手可能な他の方法、試薬および出発物質を用いて容易に入手可能な出発物質から調製することができる。本発明の特定の実施形態が本明細書に示されるかまたは記載されるが、本発明のあらゆる実施形態または態様で容易に調製可能であることを当業者は認識する。典型的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、他に述べられていない限り、他のプロセス条件も使用可能であることが理解される。最適な反応条件は使用される特定の反応物または溶媒に依存して変わることがあるが、この条件は通常の最適化手順によって当業者は容易に決定することができる。
【0097】
さらに、当業者には明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を受けることを防ぐのに従来の保護基が必要であるか、または望ましいことがある。特定の官能基の適した保護基およびこのような官能基を保護し、脱保護するのに適した条件の選択は、当該技術分野で周知である。本明細書に記載の手順に説明されているもの以外の保護基も望ましい場合には使用してもよい。例えば、多くの保護基およびこの導入および除去は、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999および引用文献に記載されている。
【0098】
例示として、式Iの化合物は、以下を包含するプロセスによって、調製され得る:
(a)式IIの化合物:
【0099】
【化27】

またはその塩を、式IIIの化合物:
【0100】
【化28】

と反応させる工程であって、式IIIにおいて、Lは脱離基を表す、工程;または
(b)式IVaの化合物:
【0101】
【化29】

またはその反応性誘導体を、式Va’または式Va”の化合物:
【0102】
【化30】

とカップリングさせる工程、または式IVbの化合物:
【0103】
【化31】

を、式Vb’または式Vb”の化合物:
【0104】
【化32】

またはその反応性誘導体とカップリングさせる工程;または
(c)式VIの化合物:
【0105】
【化33】

(式VIにおいて、Lは、脱離基を表す)を、式VIIの化合物:
【0106】
【化34】

と反応させる工程、または
(d)式IIの化合物を、式VIIIの化合物:
【0107】
【化35】

(式VIIIにおいて、「A」は、1個少ない炭素、すなわち、m個ではなくm−1個の炭素を有する)と、還元剤の存在下で反応させる工程;または
(e)式IXの化合物:
【0108】
【化36】

(ここで、「A」は、1個少ない炭素、すなわち、r個ではなくr−1個、またはt個ではなくt−1個の炭素を有する)を、式VIIの化合物と、還元剤の存在下で反応させる工程;および
(f)存在し得る任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程;および必要に応じて、その薬学的に受容可能な塩を形成する工程。
【0109】
上記プロセスの1つの実施形態において、Rが水素である、式Iの化合物が、最初に合成される。すなわち、式III、Va’、Va”、Vb’、Vb”、VII、またはVIIIの化合物において、Rは、水素である。次いで、得られる化合物は、この水素を、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンC(O)OR6a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンQ、−(1〜4C)アルキレンC(O)Z、−C(O)(1〜4C)アルキレンZ、および−S(O)(1〜4C)アルキレンZから選択されるR置換基で置き換えるように、さらに反応させられ得る。
【0110】
一般に、出発物質のうちの1つの塩(例えば、酸付加塩)が、上記プロセスにおいて使用される場合、この塩は、代表的に、その反応プロセスの前または反応プロセス中に、中和される。この中和反応は、代表的に、この塩を、酸付加塩の各モル当量について1モル当量の塩基と接触させることによって、達成される。
【0111】
プロセス(a)(式IIの化合物と式IIIの化合物との間の反応)において、Lによって表される脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモもしくはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えば、メシレートもしくはトシレート)であり得る。この反応は、好都合には、塩基(例えば、第三級アミン(例えば、ジイソプロピルアミン))の存在下で行われる。好都合な溶媒としては、ニトリル(例えば、アセトニトリル)が挙げられる。この反応は、0℃〜100℃の範囲の温度で実施される。
【0112】
式IIの化合物は、当該分野において一般的に公知であるか、または式Xの化合物:
【0113】
【化37】

を脱保護することによって、調製され得る。式Xにおいて、Pは、アミノ保護基(例えば、ベンジル基)を表す。ベンジル基は、水素またはギ酸アンモニウムと、VIII族金属触媒(例えば、パラジウム)を使用する還元によって、好都合に除去される。WがNWを表す場合、その水素化反応は、Pearlman触媒(Pd(OH))を使用して、好都合に実施される。
【0114】
式Xの化合物は、式XI:
【0115】
【化38】

のイソシアネート化合物を、式XIIの化合物:
【0116】
【化39】

と反応させることによって、調製され得る。
【0117】
式IIIの化合物は、Lがヒドロキシル基を表す対応する化合物から出発して、例えば、ハロゲン化試薬(例えば、塩化チオニル)の反応によって、Lがハロ(例えば、クロロ)を表す式IIIの化合物を得ることによって、調製され得る。Lがヒドロキシル基を表し、そしてAが式:
【0118】
【化40】

を有する、式Iの化合物は、例えば、式Va’または式Va”の化合物を、適切なラクトン(例えば、γ−ブチロラクトン)と反応させることによって、調製され得る。Lがヒドロキシル基を表し、そしてAが式:
【0119】
【化41】

を有する、式Iの化合物は、例えば、式Vb’または式Vb”の化合物を、適切なアミノ置換されたアルコール(例えば、2−アミノエタノールまたは3−アミノプロパン−1−オール)と反応させることによって、調製され得る。
【0120】
プロセス(b)において、式IVaの化合物またはその反応性誘導体が、式Va’または式Va”の化合物と反応させられるか、あるいは式IVbの化合物が、式Vb’または式Vb”の化合物またはその反応性誘導体と反応させられる。化合物IVa、Vb’、またはVb”の「反応性誘導体」とは、そのカルボンさんが、例えば、無水物またはカルボン酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸塩化物)を形成することによって、活性化されていることを意味する。あるいは、カルボン酸は、従来のカルボン酸/アミンカップリング試薬(例えば、カルボジイミド、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)など)を使用して、活性化され得る。この反応は、好都合には、従来のアミド結合形成条件下で実施される。このプロセスは、好都合には、−10℃〜100℃の範囲の温度で実施される。
【0121】
式IVaの化合物は、式IIの化合物を、式XIIIaの化合物:
−CH(CHCHCOOP
XIIIa
と反応させることによって、調製され得る。式XIIIaにおいて、Lは、脱離基を表し、この脱離基としては、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモもしくはヨード)またはスルホン酸エステル基(例えば、メシレートもしくはトシレート)が挙げられ;そしてPは、水素原子、またはカルボキシル保護基(例えば、(1〜4C)アルキル基)を表す。必要であれば、このカルボキシ保護基Pは、引き続いて、例えば、従来の条件下での加水分解によって、例えば、水酸化リチウムを使用することによって、除去される。あるいは、mが0である場合、式IVaの化合物は、IIをCH=CHC(O)OPと反応させ、次いで、必要に応じてカルボキシル保護基Pを除去することによって、調製され得る。
【0122】
式IVbの化合物は、式IIの化合物を、式XIIIbの化合物:
OHC(CHCHNR
XIIIb
(式XIIIbにおいて、Pは、水素またはアミノ保護基(例えば、ベンジル)を表す)と、還元剤(例えば、トリアセトキシボロヒドリドナトリウム)の存在下で反応させ、必要であれば引き続いて、例えば、パラジウムの存在下での水素化によってアミノ保護基Pを除去することによって、調製され得る。
【0123】
式Va’の化合物は、式VIIの化合物を、式XIVaの化合物:
【0124】
【化42】

(式XIVaにおいて、Pは、水素またはアミノ保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル)を表し、そしてLは、脱離基(例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモ、もしくはヨード)またはスルホン酸エステル基(例えば、メシレートもしくはトシレート)が挙げられる)を表す)と反応させ;必要であれば、引き続いて、アミノ保護基Pを除去することによって、調製され得る。化合物Va”は、類似の様式で作製され得る。あるいは、このような化合物は、式XVaの化合物:
【0125】
【化43】

の、式VIIの化合物を用いる、従来の反応条件下(例えば、プロセス(d)および(e)について記載された条件)の還元的アミノ化によって、調製され得る。
【0126】
式Vb’の化合物は、式VIIの化合物を、式XIVbの化合物:
【0127】
【化44】

(式XIVbにおいて、Pは、水素またはカルボニル保護基(例えば、メチルもしくはエチル))を表し、そしてLは、脱離基を表す)と反応させ、必要であれば、引き続いて、カルボニル保護基Pを除去することによって、調製され得る。化合物Vb”は、類似の様式で作製され得る。あるいは、このような化合物は、式XVbの化合物:
【0128】
【化45】

の、式VIIの化合物を用いる、従来の反応条件下(例えば、プロセス(d)および(e)について記載された条件)での還元的アミノ化によって、調製され得る。
【0129】
プロセス(c)に関して、Lによって表される脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモもしくはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えば、メシレートもしくはメシレート)であり得る。この反応は、好都合には、塩基(例えば、第三級アミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン))の存在下で実施される。好都合な溶媒としては、ニトリル(例えば、アセトニトリル)が挙げられる。この反応は、好都合には、0℃〜100℃の範囲の温度で実施される。式VIの化合物は、式IVaの化合物を、式XVIa’または式XVIa”の化合物:
【0130】
【化46】

と反応させることによって、調製され得る。
【0131】
式VIの化合物はまた、式IVbの化合物を、式XVIb’または式XVIb”の化合物:
【0132】
【化47】

あるいはその反応性誘導体(例えば、酸塩化物または酸無水物)と反応させることによって、調製され得る。これらの反応は、好都合には、例えば、本明細書中に記載されるプロセス(b)に従って実施される。式VIIの化合物は、一般的に公知であるか、または周知の合成方法を使用して、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。
【0133】
プロセス(d)において、還元剤は、例えば、VIII族金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下の水素、または金属水素化物還元剤(例えば、ホウ素化水素(トリアセトキシボロヒドリドナトリウムが挙げられる))であり得る。好都合な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール)が挙げられる。この反応は、好都合には、0℃〜100℃の範囲の温度で実施される。式VIIIの化合物は、Lがヒドロキシル基を表す式IIIの化合物に対応する化合物を、酸化することによって調製され得る。このような酸化反応は、例えば、ジメチルスルホキシド中の二酸化硫黄ピリジン複合体を使用して、第三級アミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、実施され得る。
【0134】
プロセス(e)において、還元剤は、例えば、VIII族金属触媒(例えば、パラジウム)の存在下の水素、または金属水素化物還元剤(ホウ素化水素(例えば、トリアセトキシボロヒドリドナトリウム)が挙げられる)であり得、必要に応じて、チタンテトラアルコキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド)と組み合わせて使用される。好都合な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール)およびハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン)が挙げられる。この反応は、好都合には、0℃〜100℃の範囲の温度で実施される。式IXの化合物は、カルボン酸/アミンカップリング剤(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT)など)の存在下で、式IVaの化合物を、式XVIIa’または式XVIIa”の化合物:
【0135】
【化48】

と反応させること、あるいは式IVbの化合物を、式XVIIb’または式XVIIb”の化合物:
【0136】
【化49】

と反応させることによって、調製され得る。
【0137】
当業者に明らかであるように、本明細書中の工程(a)〜(e)のいずれかによって調製される、式Iの化合物は、当該分野において周知である方法および試薬を使用して、さらに誘導体化されて、式Iの他の化合物を形成し得る。例として、式Iの化合物は、臭素と反応して、Rが、例えば、ブロモ基を表す、式Iの対応する化合物を与え得る。さらに、Rが水素原子を表す式Iの化合物は、アルキル化されて、が(1〜4C)アルキル基を表す式Iの対応する化合物を与え得る。
【0138】
本発明の代表的な化合物またはその中間体を調製するための特定の反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、以下に記載の実施例に記載する。
【0139】
(薬学的組成物および処方物)
本発明のビフェニル化合物は、典型的には、薬学的組成物または処方物の形態で患者に投与される。この薬学的組成物は、任意の受容可能な投与経路で患者に投与されてもよい。投与経路としては、限定されないが、吸入、経口、経鼻、局所(経皮を含む)および非経口の投与形態が挙げられる。
【0140】
特定の投与形態に適した本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物など)が、本明細書で議論される薬学的組成物で使用可能であることが理解される。
【0141】
従って、本発明の一実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアまたは腑形剤と治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体とを含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、望ましい場合には他の治療薬剤および/または処方化剤を含有してもよい。
【0142】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を活性薬剤として含有する。典型的には、この薬学的組成物は、約0.01〜約95重量%の活性薬剤を含有し、例えば、約0.01〜約30重量%、例えば、約0.01〜約10重量%の活性薬剤を含有する。
【0143】
任意の従来のキャリアまたは腑形剤を本発明の薬学的組成物に使用してもよい。特定のキャリアまたは腑形剤の選択、またはキャリアまたは腑形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処理するために使用される投与形態または医学状態または疾患状態の種類に依存する。この観点で、特定の投与形態のための適切な薬学的組成物の調製は、薬学的分野の技術常識の範囲内にある。さらに、この組成物の成分は、例えば、Sigma(P.O.Box 14508,St. Louis,MO 63178)から市販されている。さらに説明すると、従来の処方化技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland (2000);およびH.C.Anselら,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,第7版,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland (1999)に記載されている。
【0144】
薬学的に受容可能なキャリアとして役立つ物質の代表例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;腑形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性食塩水;Ringer溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;圧縮噴射ガス、例えば、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン;および薬学的組成物に使用される他の毒性のない適合性基質。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物と薬学的に受容可能なキャリアおよび1つ以上の任意成分とを十分に混合またはブレンドすることによって調製される。必要な場合または望ましい場合には、得られた均一にブレンドされた混合物を従来の手順および装置を用いて、錠剤、カプセル、丸薬に成形するか、または小型缶、カートリッジ、ディスペンサーなどに入れることができる。
【0146】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、吸入による投与に適している。吸入による投与に適した薬学的組成物は、典型的にはエアロゾルまたは粉末の形態である。この組成物は、一般的に、周知の送達デバイス、例えば、噴霧吸入器、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)または同様の送達デバイスを用いて投与される。
【0147】
本発明の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物は、噴霧吸入器を用いて吸入によって投与される。この噴霧デバイスは、典型的には、高速の空気流を作り出し、活性薬剤を含む薬学的組成物を霧として噴霧し、患者の呼吸器に届ける。従って、噴霧吸入機器で用いるために処方化される場合、活性薬剤は、典型的には、適切なキャリアに溶解して溶液にする。または、活性薬剤を微粉化し、適切なキャリアを混合して呼吸可能な大きさの微粉末の懸濁物にする。この微粉化とは、約90%以上の粒子直径が約10μm未満の状態であると定義される。適切な噴霧デバイスは、例えば、PARI GmbH(Starnberg,German)から市販されている。他の噴霧デバイスとしては、Respimat(Boehringer Ingelheim)、および例えば、Lloydらに対する米国特許第6,123,068号およびWO 97/12687(Eicherら)に記載の物が挙げられる。これらの文献は、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0148】
噴霧吸入器に使用するための代表的な薬学的組成物は等張性水溶液を含み、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.05μg/mL〜約10mg/mL含む。
【0149】
本発明の別の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物はDPIを用いた吸入によって投与される。このDPIは、典型的には、活性薬剤を流動性のよい粉末として投与し、吸気中に患者が作った空気流で分散する。流動性のよい粉末を作るために、活性薬剤は、典型的には、適切な腑形剤(例えばラクトースまたはデンプン)とともに処方化される。微粉化は、肺送達に適した結晶サイズまで小さくする一般的な方法である。代表的に、活性薬剤は、微粉化され、そして適切なキャリアと混合されて、吸気可能な大きさの微粉化した粒子の懸濁物を形成する。ここで、「微粉化した粒子」または「微粉化形態」とは、それらの粒子のうちの少なくとも約90%が、約10μm未満の直径を有することを意味する。粒子サイズを小さくする他の方法を使用してもよく、例えば、所望な粒子サイズが得られるような微細粉砕、裁断、破砕、粉砕、磨り潰し、篩い分け、磨砕、粉状化などが挙げられる。
【0150】
DPIに使用するための代表的な薬学的組成物は、約1μm〜約100μmの粒子サイズを有する乾燥ラクトースと、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を微粉化した粒子とを含む。この乾燥粉末処方物は、例えば、ラクトースと活性薬剤とを混合し、これらの成分を乾燥ブレンドすることによって作製することができる。または、望ましい場合、活性薬剤を腑形剤なしで処方化することができる。この薬学的組成物は、典型的には乾燥粉末ディスペンサーに入れられるか、または乾燥粉末送達デバイスとともに使用するための吸入カートリッジまたはカプセルに入れられる。
【0151】
DPI送達デバイスの例としては、Diskhaler(GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC;例えば、米国特許第5,035,237号(Newellら)を参照);Diskus(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第6,378,519(Daviesら)を参照);Turbuhaler(AstraZeneca,Wilmington,DE(例えば、米国特許第4,524,769(Wetterlin)を参照);Rotahaler(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第4,353,365(Hallworthら)を参照)およびHandihaler(Boehringer Ingelheim)が挙げられる。適切なDPIデバイスのさらなる例は、米国特許第5,415,162号(Casperら)、同第5,239,993号(Evans)および同第5,715,810号(Armstrongら)およびこれらの引用文献である。上述の特許の開示内容は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0152】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物は、MDIを用いた吸入によって投与され、圧縮噴霧ガスを用いて所定量の活性薬剤またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体が放出される。従って、MDIを用いて投与される薬学的組成物は典型的には、液化噴射剤中に活性薬剤の溶液または懸濁物を含む。使用可能な任意の適切な液化噴射剤としては、クロロフルオロカーボン、例えば、CClF、およびハイドロフルオロアルカン(HFA)、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)が挙げられる。クロロフルオロカーボンはオゾン層に影響を与える懸念があるため、HFAを含有する処方物が一般的には好ましい。HFA処方物のさらなる任意成分としては、共溶媒(例えばエタノールまたはペンタン)および界面活性剤(例えばソルビタントリオレエート、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。例えば、米国特許第5,225,183号(Purewalら)、EP 0717987 A2(Minnesota Mining and Manufacturing Company)、およびWO 92/22286(Minnesota Mining and Manufacturing Company)を参照(これらの開示内容全体は本明細書に参考として組み込まれる)。
【0153】
定量吸入器で使用するための代表的な薬学的組成物は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.01〜約5重量%と;エタノールを約0〜約20重量%と;界面活性剤を約0〜約5重量%とを含み、残りの成分はHFA噴射剤である。
【0154】
この組成物は、典型的には、凍結または加圧したハイドロフルオロアルカンを、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適切な容器に加えることによって調製される。懸濁物を調製するために、活性薬剤を微粉化し、噴射剤と混合する。この処方物を定量吸入デバイスの一部分を構成するエアロゾル缶に入れる。HFA噴射剤とともに用いるために特別に開発された定量吸入デバイスの例としては、米国特許第6,006,745号(Marecki)および同第6,143,277号(Ashurst et al)に記載されるものが挙げられる。または、懸濁処方物は、活性薬剤の微粉化粒子に界面活性剤のコーティングをスプレー乾燥させることによって調製することができる。例えば、WO99/53901(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/61108(Glaxo Group Ltd.)。上記特許および刊行物の開示内容は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0155】
吸気可能な粒子を調製するプロセス、吸入投与に適した処方物およびデバイスのさらなる例は、米国特許第6,268,533号(Gaoら)、同第5,983,956号(Trofast);同第5,874,063号(Briggnerら);および同第6,221,398号(Jakupovicら);およびWO99/55319(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/30614(AstraZeneca AB)を参照のこと(これらの開示内容全体は参考として本明細書に組み込まれる)。
【0156】
別の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に適した薬学的組成物は、カプセル、錠剤、丸薬、トローチ剤、カシェ剤、糖衣錠、粉末、顆粒;または水性液体または非水液体の溶液または懸濁物;または水中油または油中水の液体エマルション;またはエリキシルまたはシロップなどの形態であってもよく、それぞれの形態は、所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する。薬学的組成物は、単位投薬形態で包装されてもよい。
【0157】
固体投薬形態(すなわち、カプセル、錠剤、丸薬など)で経口投与を目的とする場合、本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物を活性成分として含み、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)をさらに含む。場合により、または、固体投薬形態は、以下のものを含んでもよい:フィラーまたは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/、または炭酸ナトリウム;溶液緩染剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート;吸収剤、例えばカオリンおよび/またはベントナイトクレイ;滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはその混合物;着色剤;および緩衝剤。
【0158】
放出剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も本発明の薬学的組成物中に存在してもよい。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例としては、以下のものが挙げられる:水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。錠剤、カプセル、丸薬などのコーティング剤としては、腸溶性コーティングとして使用されるもの、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)などが挙げられる。
【0159】
望ましい場合、本発明の薬学的組成物は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを種々の比率で用いて、活性成分を遅延放出または制御放出するように処方化されてもよい。
【0160】
それに加えて、本発明の薬学的組成物は、乳白剤を場合により含有してもよく、活性成分を、胃腸管の特定部分にのみまたは胃腸管の特定部分に優先的に、場合により遅延様式で放出するように処方化されてもよい。使用可能な埋包組成物の例としては、ポリマー基質およびワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合、1つ以上の上述の腑形剤を含むマイクロカプセルの形態であってもよい。
【0161】
経口投与に適した液体投薬形態としては、一例として、薬学的に受容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。この液体投薬形態は、典型的には、活性成分と不活性希釈剤(例えば水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含む。懸濁物は、活性成分に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminium metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0162】
本発明の化合物は、既知の経皮送達系および腑形剤を用いて経皮投与することができる。例えば、本発明の化合物は、透過促進剤、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなどと混合することができ、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。望ましい場合には、さらなる腑形剤(ゲル化剤、乳化剤およびバッファーを含む)をこの経皮組成物に使用してもよい。
【0163】
本発明の化合物は、他の治療薬剤とともに投与することもできる。この組み合わせ治療は、本発明の化合物を1つ以上の第2の薬剤と組み合わせて、一緒に処方化する(例えば1個の処方物中に一緒に包装)か、または別個に処方化する(例えば別個の単位投薬形態として包装)かのいずれかで使用することを含む。同じ処方物または別個の単位投薬形態に複数の薬剤を処方化する方法は、当該技術分野で周知である。
【0164】
さらなる治療薬剤は、他の気管支拡張剤(例えば、PDE阻害剤、アデノシン2b調整剤およびβアドレナリン作用性受容体アゴニスト);抗炎症剤(例えば、ステロイド系抗炎症薬剤、例えばコルチコステロイド;非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)およびPDE阻害剤);他のムスカリン受容体アンタゴニスト(すなわち抗コリン作用性薬剤);抗炎症剤(例えば、グラム陽性抗生物質およびグラム陰性抗生物質または抗ウイルス剤);抗ヒスタミン剤;プロテアーゼ阻害剤;および求心性ブロッカー(afferent blocker)(例えば、Dアゴニストおよびニューロキニン調整剤)から選択することができる。
【0165】
本発明の1つの特定の実施形態は、(a)薬学的に受容可能なキャリアと治療有効量の式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と;および(b)薬学的に受容可能なキャリアと、ステロイド系抗炎症薬剤(例えばコルチコステロイド);βアドレナリン作用性受容体アゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4阻害剤;またはそれらの組み合わせから選択される治療有効量の薬剤とを含む組成物に関し、ここで、式Iの化合物および上記薬剤はともに処方化されるか、または別個に処方化される。別の実施形態では、(b)は薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量のβアドレナリン作用性受容体アゴニストおよびステロイド系抗炎症薬剤である。第2の薬剤は、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物の形態で使用することができ、適切な場合、光学的に純粋な立体異性体として使用することができる。
【0166】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なβアドレナリン作用性受容体アゴニストとしては、限定されないが、サルメテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメファモール、フェノテロール、テルブタリン、アルブテロール、イソエタリン(isoetharine)、メタプロテレノール、ビトルテロール、ピルブテロール、レバルブテロールなどまたはその薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用可能な他のβアドレナリン作用性受容体アゴニストとしては、限定されないが、3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}−アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/066422(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル]アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−フェニル]イミダゾリジン−2,4−ジオンおよびWO02/070490(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/076933(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよびWO03/024439(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよび米国特許第6,576,793号(Moranら)に記載の関連化合物;N−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび米国特許第6,653,323号(Moranら)に記載の関連化合物;およびこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。特定の実施形態では、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンの結晶性一塩酸塩である。使用される場合、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、治療有効量で薬学的組成物中に存在する。典型的には、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。上記特許および刊行物の開示内容全体は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0167】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なステロイド系抗炎症薬剤としては、限定されないが、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3S−イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17−プロピオン酸エステルまたは17,21−ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フランカルボン酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコルト(butixocort)、RPR−106541、ST−126など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用される場合、ステロイド系抗炎症薬剤は治療有効量でこの組成物中に存在する。典型的には、ステロイド系抗炎症薬剤は、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。
【0168】
例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性受容体アゴニストとしてサルメテロールおよびステロイド系抗炎症薬剤としてプロピオン酸フルチカゾンとがともに投与される組み合わせである。別の例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性受容体アゴニストとして塩N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよびステロイド系抗炎症薬剤として6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステルとがともに投与される組み合わせである。上述のように、これらの薬剤は、一緒に処方化されても別個に処方化されてもよい。
【0169】
他の適切な組み合わせとしては、例えば、他の抗炎症薬剤、例えば、NSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、およびホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤およびPDE3/PDE4阻害剤の混合物);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテロイカスト(monteleukast));ロイコトリエンの合成阻害剤;iNOS阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプターゼ阻害剤およびエラスターゼ阻害剤;β−2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシンレセプターアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト);サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト、例えば、インターロイキン抗体(αIL抗体)、特に、αIL−4治療およびαIL−13治療、またはこれらの組み合わせ);またはサイトカインの合成阻害剤が挙げられる。
【0170】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なホスホジエステラーゼ−4(PDE4)阻害剤またはPDE3/PDE4阻害剤混合物としては、限定されないが、シス4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン;シス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール];シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。他の代表的なPDE4阻害剤またはPDE4/PDE3阻害剤混合物としては、AWD−12−281(elbion);NCS−613(INSERM);D−4418(Chiroscience and Schering−Plough);CI−1018またはPD−168787(Pfizer);WO99/16766(Kyowa Hakko)に記載のベンゾジオキソール化合物;K−34(Kyowa Hakko);V−11294A(Napp);ロフルミラスト(Byk−Gulden);WO99/47505(Byk−Gulden)に記載のフタラジノン(pthalazinone)化合物;Pumafentrine(Byk−Gulden,現在はAltana);アロフィリン(arofylline)(Almirall−Prodesfarma);VM554/UM565(Vernalis);T−440(Tanabe Seiyaku);およびT2585(Tanabe Seiyaku)が挙げられる。
【0171】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なムスカリンアンタゴニスト(すなわち、抗コリン作用性薬剤)としては、限定されないが、アトロピン、硫酸アトロピン、アトロピンオキシド、硝酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒヨスチアミン(d,l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、コピロレート(copyrrolate)(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクタラミン(methoctramine)など、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0172】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的な抗ヒスタミン剤(すなわち、H−レセプターアンタゴニスト)としては、限定されないが、エタノールアミン、例えば、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナート;エチレンジアミン、例えば、マレイン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン;アルキルアミン、例えば、クロルフェニラミンおよびアクリバスチン;ピペラジン、例えば、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン;ピペリジン、例えば、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシアナログ、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン;塩酸アゼラスチンなど、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0173】
他に言及されない限り、本発明の化合物と組み合わせて投与される他の治療薬剤について例示的な適切な投薬量は、約0.05μg/日〜約100mg/日の範囲内である。
【0174】
以下の処方例は、代表的な本発明の薬学的処方物および例示的な調製方法を説明する。1つ以上の第2の薬剤は、本発明の化合物(第1の活性薬剤)とともに場合により処方化することができる。または、第2の薬剤は、同時または順次のいずれかで、第1の活性薬剤と別個に、およびともに投与することができる。例えば、一実施形態では、1個の乾燥粉末処方物が本発明の化合物と1つ以上の第2の薬剤を両方含むように製造することができる。別の実施形態では、本発明の化合物を含有する処方物が製造され、第2の薬剤を含有する別個の処方物が製造される。この乾燥粉末処方物を別個のブリスターパックに入れ、1個のDPIデバイスで投与することができる。
【0175】
(吸入によって投与するための例示的な乾燥粉末処方物)
0.2mgの本発明の化合物を微粉化し、次いで、25mgのラクトースと混合する。次いで、この混合した混合物を、ゼラチン吸入カートリッジに充填する。このカートリッジの内容物を、粉末吸入器を使用して噴霧する。
【0176】
(乾燥粉末吸入器によって投与するための例示的な乾燥粉末処方物)
本発明の微粉化した化合物(活性薬剤) 対 ラクトースの比率を1:200にしたバルク処方物を有する乾燥粉末を調製する。この粉末を乾燥粉末吸入デバイスに入れる。この乾燥粉末吸入デバイスは、投薬1回あたり活性薬剤を約10μg〜約100μg送達することができる。
【0177】
(定量吸入器によって投与するための例示的な処方物)
微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性薬剤の粒子10gを脱イオン水200mLにレシチン0.2gを溶解した溶液に分散させることによって、本発明の化合物(活性薬剤)5重量%およびレシチン0.1重量%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を1,1,1,2−テトラフルオロエタンで加圧したカートリッジに入れる。
【0178】
または、微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性薬剤の粒子5gを脱イオン水100mLにトレハロース0.5gおよびレシチン0.5gを溶解したコロイド溶液に分散させることによって、活性薬剤5重量%、レシチン0.5重量%およびトレハロース0.5重量%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を1,1,1,2−テトラフルオロエタンで加圧したカートリッジに入れる。
【0179】
(噴霧器によって投与するための例示的な水性エアロゾル処方物)
本発明の化合物(活性薬剤)0.5mgをクエン酸で酸性にした0.9%塩化ナトリウム溶液1mLに溶解して薬学的組成物を調製する。この混合物を攪拌し、活性薬剤が溶解するまで超音波にかける。NaOHをゆっくりと添加して溶液のpHを3〜8(典型的には約5)に調整する。
【0180】
(経口投与のための例示的な硬ゼラチンカプセル)
以下の成分を徹底的に混合し、次いで、硬ゼラチンカプセルに充填する:250mgの本発明の化合物、200mgのラクトース(噴霧乾燥されたもの)、および10mgのステアリン酸マグネシウム。1つのカプセルあたり合計460mg組成物にする。
【0181】
(経口投与のための例示的な懸濁処方物)
以下の成分を混合して、10mLの懸濁物あたり100mgの活性成分を含有する懸濁物を形成する。
【0182】
成分 量
本発明の化合物 1.0g
ギ酸 0.5g
塩化ナトリウム 2.0g
メチルパラベン 0.15g
プロピルパラベン 0.05g
グラニュー糖 25.5g
ソルビトール(70%溶液) 12.85g
Veegum k(Vanderbilt Co.) 1.0g
矯味矯臭剤 0.035mL
着色剤 0.5mg
蒸留水 100mLになるために充分な量。
【0183】
(例示的な注射可能処方物)
以下の成分を混合し、そして0.5N HClまたは0.5N NaOHを使用して、そのpHを4±0.5に調整する。
【0184】
成分 量
本発明の化合物 0.2g
酢酸ナトリウム緩衝液(0.4M) 2.0mL
HCl(0.5N)またはNaOH(0.5N) pH4になるために充分な量
水(蒸留、滅菌) 20mLになるために充分な量。
【0185】
(有用性)
本発明のビフェニル化合物はムスカリン受容体アンタゴニストとして有用であると考えられ、そのために、この化合物は、ムスカリン受容体によって媒介される医学状態、すなわち、ムスカリン受容体アンタゴニストで処置することによって改善される医学状態を処置するのに有用であると考えられる。この医学状態としては、一例として、可逆性軌道閉塞と関連する障害または疾患を含む肺障害または疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性および喘息様気管支炎および肺気腫)、ぜんそく、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏などが挙げられる。ムスカリン受容体アンタゴニストで処置され得る他の医学状態は、尿生殖路障害、例えば、過活動膀胱または排尿筋過活動(detrusor hyperactivity)およびその症状;胃腸管障害、例えば、過敏性腸症候群、憩室疾患、アカラシア、胃腸運動亢進障害および下痢;不整脈、例えば、洞性徐脈;パーキンソン病;認識障害、例えばAlzheimer病;月経困難症などである。
【0186】
一実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトおよびコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコなど)を含む)の平滑筋障害を処置するのに有用である。この平滑筋障害としては、一例として、過活動膀胱、慢性閉塞性肺疾患および過敏性腸症候群が挙げられる。
【0187】
本発明の化合物が平滑筋障害またはムスカリン受容体によって媒介される他の状態を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、1日に1回または1日に複数回、典型的には、経口、直腸内、非経口または吸入によって投与される。投薬1回あたり投与される活性薬剤の量または1日の投薬合計量は、典型的には、患者の担当医によって決定され、患者の状態の性質および重篤度、処置される状態、患者の年齢および全体的な健康度、患者の活性薬剤に対する耐性、投与経路などのような因子に依存する。
【0188】
典型的には、平滑筋障害またはムスカリン受容体によって媒介される他の障害を処置するのに適した投薬量は、活性薬剤として約0.14μg/kg/日〜約7mg/kg/日であり、例えば、約0.15μg/kg/日〜約5mg/kg/日である。平均70kgのヒトでは、適した投薬量は、活性薬剤として1日あたり約10μg〜500mgである。
【0189】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトを含む)の肺障害または呼吸器障害(例えばCOPDまたはぜんそく)を処置するのに有用である。本発明の化合物がこの障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に複数回、1日に1回、または1週間に1回、吸入によって投与される。一般的には、肺障害を処置するための投薬量は、約10μg/日〜約200μg/日である。本明細書で使用される場合、COPDは、慢性閉塞性気管支炎および肺気腫を含む(例えば、Barnes,Chronic Obstructive Pulmonary Disease,N Engl J Med 343:269−78 (2000)を参照)。
【0190】
本発明の化合物が肺障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、場合により他の治療薬剤、例えば、βアドレナリン作用性受容体アゴニスト;コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症薬剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0191】
吸入によって投与される場合、本発明の化合物は、典型的には、気管支を拡張させる効果を有する。従って、本発明の一実施形態は、気管支を拡張させる量の本発明の化合物を患者に投与する工程を含む、患者の気管支を拡張させる方法に関する。一般的に、気管支を拡張させるための治療有効量は、約10μg/日〜200μg/日である。
【0192】
別の実施形態では、本発明の化合物は、過活動膀胱を処置するために使用される。過活動膀胱を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に1回または1日に複数回、好ましくは1日に1回、経口投与される。一実施形態では、過活動膀胱を処置するための投薬量は、約1.0mg/日〜約500mg/日である。
【0193】
なお別の実施形態では、本発明の化合物は、過敏性腸症候群を処置するために使用される。過敏性腸症候群を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に1回または1日に複数回、経口投与または直腸内投与される。一実施形態では、過敏性腸症候群を処置するための投薬量は、約1.0〜約500mg/日である。
【0194】
本発明の化合物がムスカリン受容体アンタゴニストであるため、この化合物は、ムスカリン受容体を有する生体系またはサンプルを観察または試験するための研究ツールとしても有用である。この生体系またはサンプルは、M、M、M、Mおよび/またはMムスカリン受容体を含んでもよい。ムスカリン受容体を有する任意の適した生体系またはサンプルがこの試験に使用されてもよく、試験はインビトロまたはインビボのいずれで行われてもよい。この試験に適した代表的な生体系またはサンプルとしては、限定されないが、細胞、細胞抽出物、血漿膜、組織サンプル、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタなど)などが挙げられる。
【0195】
この実施形態では、ムスカリン受容体を含む生体系またはサンプルとムスカリン受容体を拮抗する量の本発明の化合物とを接触させる。ムスカリン受容体を拮抗する効果は、従来の手順および装置(例えば、放射性リガンド結合アッセイおよび機能アッセイ)を用いて決定される。この機能アッセイとしては、リガンドによって媒介される細胞内環状アデノシンモノフォスフェート(cAMP)の変化、リガンドによって媒介されるアデニリルシクラーゼ酵素(cAMPを合成する)の活性変化、レセプターにより触媒されるGDPへの[35S]GTPγSの交換を経るグアノシン5’−O−(γ−チオ)トリホスフェート([35S]GTPγS)の単離膜への組み込みのリガンドによって媒介される変化、リガンドによって媒介される細胞内遊離カルシウムイオンの変化(例えば、蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices,Inc.製のFLIPR(登録商標)を用いて測定)が挙げられる。本発明の化合物は、上に列挙した機能アッセイのいずれか、または同様の性質を有するアッセイでムスカリン受容体の活性を拮抗するかまたは減少させる。ムスカリン受容体を拮抗する量の本発明の化合物は、典型的には、約0.1〜100nMである。
【0196】
さらに、本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有する新規化合物を開発するための研究ツールとして使用することができる。この実施形態では、試験化合物または試験化合物群のムスカリン受容体結合データ(例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイで決定される)を本発明の化合物のムスカリン受容体結合データと比較して、この試験化合物が本発明の化合物とほぼ同等または優れたムスカリン受容体結合性を有するか否かを同定する。本発明のこの態様は、比較データの作成(適切なアッセイを用いて)および目的の試験化合物を同定するための試験データの分析の両方を別個の実施形態として含む。
【0197】
別の実施形態では、本発明の化合物は、生態系および哺乳動物(詳細には、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)のムスカリン受容体を拮抗するために使用される。この実施形態では、治療有効量の式Iの化合物が哺乳動物に投与される。ムスカリン受容体を拮抗する効果を従来の手順および装置(例は上述)を用いて決定する。
【0198】
特に、本発明の化合物は、Mムスカリン受容体活性の強力な阻害剤であることがわかった。従って、特定の実施形態では、本発明は、例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイによって決定される場合、Mレセプターサブタイプに対して10nM以下の阻害解離定数(K)を有する式Iの化合物に関する。一実施形態では、本発明の化合物は、Mレセプターサブタイプに対して5nM以下の値のKを有する。
【0199】
さらに、本発明の化合物は、所望な作用持続時間を有すると予想される。従って、別の特定の実施形態では、本発明は、約24時間以上の作用持続時間を有する式Iの化合物に関する。さらに、本発明の化合物は、他の既知のムスカリン受容体アンタゴニスト(例えばチオトロピウム)が吸入で投与される場合と比較して、有効量投与で副作用(例えば、口の乾き)が少ないと予想される。
【0200】
これらおよび他の性質、および本化合物の有用性は、当業者に周知の種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて示すことができる。例えば、代表的なアッセイは、以下の実施例の章にさらに詳細に記載される。
【実施例】
【0201】
以下の調製例および実施例は、本発明の特定の実施形態を説明する。以下の省略形は、他に言及されたり、本明細書中で任意の他の省略形が使用されたり、標準的な意味で定義されたりしない限り、以下に示す意味を有する。
【0202】
AC アデニリルシクラーゼ
ACh アセチルコリン
ACN アセトニトリル
BSA ウシ血清アルブミン
cAMP 3’−5’環状アデノシンモノホスフェート
CHO チャイニーズハムスター卵巣
cM クローン化チンパンジーMレセプター
DCM ジクロロメタン(すなわち塩化メチレン)
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
dPBS Dulbeccoホスフェート緩衝化食塩水
EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBSS Hank緩衝化塩溶液
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
hM クローン化ヒトMレセプター
HOAc 酢酸
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロパノール
MCh メチルコリン
MeOH メタノール
Na(OAc)BH トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン。
【0203】
他に示されない限り、全物質(例えば試薬、出発物質および溶媒)は、商業的な供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Flukaなど)から購入し、精製することなく使用した。
【0204】
他に言及されない限り、HPLC分析は、3.5ミクロンの粒子サイズを有するZorbax Bonus RP 2.1×50mmカラム(Agilent)を取り付けたAgilent(Palo Alto,CA)Series 1100装置を用いて行った。214nmのUV吸収を用いて検出した。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液はACN(2%)、水(98%)およびTFA(0.1%)であり、B液はACN(90%)、水(10%)およびTFA(0.1%)である。HPLC 10−70データは、0.5mL/分の流速で、B液を6分間で10〜70%まで変動させて得た(残りの%はA液である)。同様に、HPLC 5−35データおよびHPLC 10−90データは、B液を5分間で5〜35%まで変動させるか、またはB液を5分間で10〜90%まで変動させて得た。
【0205】
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)データはApplied Biosystems(Foster City,CA) Model API−150EX装置を用いて得た。LCMS 10−90データは、移動相B液を5分間で10〜90%まで変動させて得た。
【0206】
小スケールの精製は、Applied Biosystems製のAPI−150EX Prep Workstationシステムを用いて行った。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液は水および0.05%TFAであり、B液はACNおよび0.05%TFAである。アレイ(典型的には回収サンプルサイズが約3〜50mg)の場合、以下の条件を用いた:流速20mL/分;勾配15分および5ミクロン粒子の20mm×50mm Prism RPカラム(Thermo Hypersil−Keystone,Bellefonte,PA)。大スケールの精製(典型的には粗サンプルが100mgを超えるもの)については、以下の条件を用いた:流速60mL/分;勾配30分および10ミクロン粒子の41.4mm×250mm Microsorb BDSカラム(Varian,Palo Alto,CA)。
【0207】
(調製1 ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル)
ビフェニル−2−イソシアネート(97.5g,521mmol)および4−ヒドロキシ−N−ベンジルピペリジン(105g,549mmol)を、70℃で12時間一緒に加熱した。次いで、この反応混合物を50℃まで冷却し、そしてEtOH(1L)を添加し、次いで、6M HCl(191mL)をゆっくりと添加した。次いで、得られた混合物を周囲温度まで冷却し、そしてギ酸アンモニウム(98.5g,1.56mol)を添加し、次いで、窒素ガスを、このこの溶液に通して20分間激しくバブリングした。次いで、活性炭素担持パラジウム(20g,乾燥基準で10重量%)を添加し、そしてこの反応混合物を、40℃で12時間加熱し、次いで、セライトのパッドに通して濾過した。次いで、その溶媒を減圧下で除去し、そして1M HCl(40mL)をその粗製残渣に添加した。次いで、この混合物のpHを、10N NaOHを用いてpH12に調整した。水層をEtOAc(2×150mL)で抽出し、そしてその有機層を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、そしてその溶媒を減圧下で除去して、155gの表題中間体(収率100%)を得た。HPLC(10−70)R=2.52;m/z:[M+H]についての計算値C1820,297.15;実測値297.3。
【0208】
(調製2 3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸メチルエステル)
3−ブロモプロピオン酸メチル(553μL,5.07mmol)を、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(1.00g,3.38mmol;調製1に記載されるように調製した)およびDIPEA(1.76mL,10.1mmol)の、ACN(34mL)中50℃の攪拌溶液に添加し、そしてこの反応混合物を、50℃で一晩加熱した。次いで、その溶媒を減圧下で除去し、そしてその残渣を、DCM(30mL)に溶解した。得られた溶液を、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(10mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、そしてその溶媒を減圧下で除去した。その粗生成物をカラムクロマトグラフィー(5〜10% MeOH/DCM)により精製して、905mgの表題中間体(収率70%)を得た。
【0209】
(調製3 3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸メチルエステル(902mg,2.37mmol;調製2に記載されるように調製した)および水酸化リチウム(171mg,7.11mmol)の、50% THF:HO(24mL)中の攪拌溶液を、30℃で一晩加熱し、次いで、濃HClで酸性化し、そして凍結乾燥させて、表題中間体(収率約100%,LiCl塩もまた含有する)を得た。
【0210】
(調製3A 3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸)
丸底フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(50g,67.6mmol,1当量;調製1に記載されるように調製した)および500mLのDCMを入れた。アクリル酸(15.05mL,100mmol,1.3当量)を添加し、そしてこの反応物を、50℃(還流)で18時間加熱した。DCMを減圧下で除去し、そしてMeOH(600mL)を添加した。このMeOH溶液を75℃まで2時間加熱し、次いで、室温まで冷却させ、この冷却の間に、濃厚なスラリーが形成された。その沈殿物を減圧濾過により収集し、MeOH(50mL)で洗浄し、そしてそのフィルタ上で乾燥させて、61gの表題中間体(収率98%)を得た。
【0211】
(調製4 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−アミノペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(3g,8.15mmol;調製3に記載されるように調製した)、HATU(4.65g,12.2mmol)、N−tert−ブトキシカルボニル−1,5−ジアミノペンタン(2.47g,12.2mmol)およびDIPEA(4.25mL,24.52mmol)の、100mLのDCM中の混合物を、室温で1時間攪拌した。この反応混合物を、ブラインと1N HClとの1:1溶液(100mL)、水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。その残渣を、DCM(100mL)中20% TFAで、室温で2時間処理した。その溶媒およびTFAを、減圧下で除去した。その残渣を、100mLのDCMに溶解し、そして1N NaOH(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。その有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、4.36gの表題化合物を固体として得た。
【0212】
(調製4A ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−アミノペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(98.6g,267mmol,1.0当量;調製3Aに記載されるように調製した)、ジフェニルホスホリルアジド(69mL,321mmol,1.2当量)、N−tert−ブトキシカルボニル−1,5−ジアミノペンタン(65.0g,321mmol,1.2当量)およびDIPEA(93mL,534mmol,2.0当量)の、DCM(790mL)中の混合物を、室温で一晩攪拌した。カップリングが完了したら(HPLCにより決定した)、ジオキサン中4.0M HCl(267mL,1.068mol,4.0当量)を添加し、そしてその反応物を、一晩攪拌した。この反応物を、水(1.0L)で希釈し、そして分液漏斗に移した。DCM層を除去し、そしてその水層を、酢酸イソプロピル(200mL)で洗浄した。この水層のpHを、固体NaOHを用いて13〜14に調整し、そしてその塩基性の水層を、酢酸イソプロピル(250mL)で3回抽出した。合わせた有機層を飽和ブライン(500mL)で洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を除去して、126gの粗製の表題化合物を得た。これは、実施例1においてのように、引き続く合成工程において即座に使用するために適切であった。
【0213】
(実施例1 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル)
【0214】
【化50】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−アミノペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(45.2mg,0.1mmol;調製4に記載されるように調製した)を、1mLのMeOHに溶解した。この溶液に、[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)フェニル]アセトアルデヒド(0.1mmol)を室温で添加した。この反応物を、室温で30分間攪拌し、その後、Na(OAc)BH(64mg,0.3mmol)で処理した。攪拌を、さらに1時間続けた。この反応混合物を濃縮し、次いで、1mLの1:1 HOAc/HO溶液に溶解し、そして逆相HPLCで精製した。表題化合物を、トリ(トリフルオロ酢酸)塩として得た。MS m/z:[M+H]についての計算値C3853、644.42;実測値644.3.
表題化合物をまた、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−アミノペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(調製4Aに記載されるように調製した)を使用して、類似の様式で作製し得る。
【0215】
(実施例2)
【0216】
【化51】

実施例1に記載された方法に従い、そして適切な出発物質、試薬、およびアルデヒドを置き換えて、以下の化合物を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0217】
【化52】

(実施例3)
【0218】
【化53】

実施例1に記載された方法に従い、そして適切な出発物質、試薬、およびアルデヒドを置き換えて、以下の化合物を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0219】
【化54】

(実施例4 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル)
【0220】
【化55】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−アミノペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(45.2mg,0.1mmol;調製4に記載されるように調製した)を、0.5mLのACNに溶解した。この溶液に、DIPEA(52μL,0.3mmol)を添加し、続いて4−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(20.7mg,0.1mmol)を室温で添加した。この反応物を、室温で2時間攪拌し、その後、濃縮した。その残渣を、1mLの1:1 HOAc/HO溶液に溶解し、そして逆相HPLCで精製した。表題化合物を、トリフルオロ酢酸塩として得た。MS m/z:[M+H]C3342Sについての計算値623.29;実測値623.2。
【0221】
(調製5 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−オキソペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(5g,13.5mmol;調製3に記載されるように調製した)、HATU(10.3g,27 mmol)、5−アミノ−1−ペンタノール(1.67g,16.2mmol)およびDIPEA(7.04mL,40.5mmol)の、100mLのDCM中の混合物を、室温で1時間攪拌した。次いで、この反応混合物を、ブライン(100mL)、水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。その残渣を、DCM(100mL)に溶解し、氷水浴中で−5℃まで冷却した。DIPEA(7.04mL,40.5mmol)およびDMSO(10mL)を、この溶液に添加し、続いて、三酸化硫黄ピリジン錯体(6.45g,40.5mmol)を添加した。この反応混合物を、0℃で2時間攪拌し、次いで、水(100mL)およびブライン(2×100mL)で洗浄した。その有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、4.88gの表題中間体(収率80%)を、半固体として得た。
【0222】
(実施例5)
【0223】
【化56】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(5−オキソペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(45mg,0.1mmol;調製5に記載されるように調製した)を、1mLのMeOHに溶解した。この溶液に、2−(4−メトキシフェニル)エチルアミン(0.1mmol)を室温で添加した。この反応物を、室温で30分間攪拌し、その後、Na(OAc)BH(64mg,0.3mmol)で処理した。攪拌を、さらに1時間続けた。この反応混合物を濃縮し、次いで、1mLの1:1 HOAc/HO溶液に溶解し、そして逆相HPLCで精製した。化合物5−1を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0224】
同じ手順に従い、そして適切なアミンを置き換えて、化合物5−2を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0225】
【化57】

【0226】
【化58】

(調製6 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−アミノメチルフェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)アニリン(756mg,3.4mmol)、3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(1.5g,4.08mmol;調製3に記載されるように調製した)およびHATU(1.55g,4.08mmol)の、DMF(6.8mL)中の攪拌溶液に、DIPEA(770μL,4.42mmol)を添加した。この反応混合物を、50℃で一晩攪拌し、次いで、その溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を、DCM(20mL)に溶解し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(10mL)で洗浄した。次いで、その有機相を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、そしてその溶媒を減圧下で除去した。その粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(5〜10% MeOH/DCM)により精製して、固体を得、この固体を、TFA/DCM(25%,30mL)に溶解し、そして室温で2時間攪拌した。次いで、その溶媒を減圧下で除去し、そしてその粗製残渣を、DCM(30mL)に溶解し、そして1N NaOH(15mL)で洗浄した。その有機相を分離し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、そしてその溶媒を減圧下で除去して、1.5gの表題中間体を得た(2工程で収率94%)。
【0227】
(実施例6)
【0228】
【化59】

(ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−アミノメチルフェニルカルバモイル)エチル])
ピペリジン−4−イルエステル(47.2mg,0.1mmol;調製6に記載されるように調製した)を、1mLのMeOHに溶解した。この溶液に、4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンズアルデヒド(0.1mmol)を室温で添加した。この反応物を、室温で30分間攪拌し、その後、Na(OAc)BH(64mg,0.3mmol)で処理した。攪拌を、さらに1時間続けた。この反応混合物を濃縮し、次いで、1mLの1:1 HOAc/HO溶液に溶解し、そして逆相HPLCで精製した。化合物6−1を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0229】
化合物6−2〜6−6を、同じ手順に従い、適切なアルデヒドに置き換えて得た。
【0230】
【化60】

(調製7 N−ベンジル−N−メチルアミノアセトアルデヒド)
三口の2Lのフラスコに、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(30.5g,0.182 mol)、DCM(0.5L)、DIPEA(95mL,0.546mol)およびDMSO(41mL,0.728mol)を添加した。氷浴を使用して、この混合物を約−10℃まで冷却し、そして三酸化硫黄ピリジン錯体(87g,0.546mol)を、5分間の間隔で4回に分けて添加した。この反応物を、−10℃で2時間攪拌した。氷浴を除去する前に、水(0.5L)を添加することによって、この反応をクエンチした。その水層を分離し、そしてその有機相を水(0.5L)およびブライン(0.5L)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過して、表題化合物を得、これを、さらに精製せずに使用した。
【0231】
(調製8 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
DCM(0.5L)中のN−ベンジル−N−メチルアミノアセトアルデヒド(調製7から得た)を含む2Lのフラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(30g,0.101mol;調製1に記載されるように調製した)を添加し、続いてNa(OAc)BH(45g,0.202mol)を添加した。この反応混合物を、一晩攪拌し、次いで、激しく攪拌しながら1N HCl(0.5L)を添加することによって、クエンチした。3つの層が観察され、そして水層を除去した。1N NaOH(0.5L)で洗浄した後に、均質な有機層が得られ、これを次いで、NaCl(0.5L)の飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そしてその溶媒を減圧下で除去した。その残渣を、最小量のイソプロパノールに溶解し、そしてこの溶液を0℃に冷却して固体を形成させることによって、精製し、これを、収集して冷イソプロパノールで洗浄して、42.6gの表題化合物(収率95%)を得た。MS m/z:[M+H]C2833についての計算値444.3;実測値444.6。R=3.51分(10〜70 ACN:HO,逆相HPLC)。
【0232】
(調製8A ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンをメシル化し、これを次いで、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステルと、アルキル化反応で反応させることによって、表題化合物を調製した。
【0233】
500mLのフラスコ(反応フラスコ)に、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(24.5mL)、DCM(120mL)、NaOH(80mL;30重量%)およびテトラブチルアンモニウムクロリドを入れた。この反応の間にわたって低速で混合し、この混合物を−10℃まで冷却し(冷却浴)、そして添加漏斗に、DCM(30mL)および塩化メシル(15.85mL)を入れ、これを、30分間にわたって一定の速度で滴下した。この添加は発熱性であるので、温度を平衡化させて−10℃に戻す間、15分間攪拌を続けた。この反応を少なくとも10分間維持して、過剰な塩化メシルの完全な加水分解を確実にした。
【0234】
250mLのフラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(26g;調製1に記載されるように調製した)およびDCM(125mL)を入れ、室温で15分間攪拌し、そしてこの混合物を、10℃まで短時間冷却して、スラリーを形成させた。次いで、このスラリーを、添加漏斗を通して反応フラスコに入れた。冷却欲を除去し、そしてこの反応混合物を、5℃間で温めた。この混合物を分液漏斗に移し、層を沈降させ、そしてその水層を除去した。その有機層を反応フラスコに戻し、攪拌を再開し、この混合物を室温に維持し、そしてこの反応を、HPLCによって合計3.5時間監視した。
【0235】
この反応フラスコに、NaOH(1M溶液;100mL)を老いれ、攪拌し、そして層を沈降させた。その有機層を分離し、洗浄し(NaCl飽和溶液)、その体積を減圧下で部分的に減少させ、そしてIPAでの繰り返しの洗浄に供した。その固体を収集し、そして風乾させた(25.85g,純度98%)。母液のさらなる処理(体積減少、IPA、冷却)から、さらなる固体が得られた。
【0236】
(調製9 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−メチルアミノエチル)ピペリジン−4−イルエステル
Parr水素化フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(40g,0.09mol;調製8に記載されるように調製した)およびEtOH(0.5L)を入れた。このフラスコを窒素ガスでフラッシュし、そして活性炭素担持パラジウム(15g,10重量%(乾燥基準),37%wt/wt)を、HOAc(20mL)と一緒に添加した。この混合物を、Parr水素化器に、水素雰囲気下(約50psi)で3時間維持した。次いで、この混合物を濾過し、そしてEtOHで洗浄した。その濾液を濃縮し、そしてその残渣を、最小量のDCMに溶解した。酢酸イソプロピル(10体積)をゆっくりと添加して、固体を形成させ、この固体を収集して、22.0gの表題化合物(収率70%)を得た。MS m/z:[M+H]C2127についての計算値354.2;実測値354.3。R=2.96分(10〜70 ACN:HO,逆相HPLC)。
【0237】
(調製10 ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[(4−ホルミルベンゾイル)メチルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル)
1Lの三つ口フラスコに、4−カルボキシベンズアルデヒド(4.77g,31.8mmol)、EDC(6.64g,34.7mmol)、HOBT(1.91g,31.8mmol)、およびDCM(200mL)を添加した。この混合物が均質になったら、ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−メチルアミノエチル)ピペリジン−4−イルエステル(10g,31.8mmol;調製9に記載されるように調製した)のDCM(100mL)中の溶液をゆっくりと添加した。この反応混合物を、室温で16時間攪拌し、次いで、水(1×100mL)、1N HCl(5×60mL)、1N NaOH(1×100mL)、ブライン(1×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、12.6gの表題化合物(収率92%;HPLCに基づいて純度85%)を得た。MS m/z:[M+H]C2931についての計算値486.2;実測値486.4。R=3.12分(10〜70 ACN:HO,逆相HPLC)。
【0238】
(実施例7)
【0239】
【化61】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[(4−ホルミルベンゾイル)メチルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル(48mg,0.1mmol;調製1に記載されるように調製した0)の、1:1 DCM/MeOH溶液(1mL)中の攪拌溶液に、4−メトキシベンジルアルデヒド(16mg,0.12mmol)を添加し、次いで、トリアセトキシボロヒドリドナトリウム(27mg,0.12mmol)を添加した。この混合物を2時間攪拌し、次いで、その溶媒を減圧下で除去した。1:1 HOAc/HO溶液(1.5mL)を、この反応混合物に添加した。この混合物を、逆相HPLC(勾配溶出,10%〜50% ACN/HO)でのクロマトグラフィーで分離して、3.1mgの化合物7−1をビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0240】
化合物7−2を、類似の様式で合成した。
【0241】
【化62】

(アッセイ1 放射性リガンド結合アッセイ)
hM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプを発現する細胞からの膜調製
クローン化ヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプをそれぞれ安定に発現するCHO細胞株を10%FBSおよび250μg/mLのGeneticinを加えたHAMのF−12からなる培地中でほぼコンフルーエンシーまで成長させた。この細胞を5%CO、37℃インキュベーター中で成長させ、dPBS中の2mM EDTAで浮き上がらせた。650×gで5分間遠心分離して細胞を集め、細胞ペレットを−80℃で凍結させて保存するか、または膜をすぐに調製した。膜調製について、細胞ペレットを溶解バッファーに再懸濁させ、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG;20秒×2回破裂させる)で均質にした。粗膜を4℃で40,000×gで15分間遠心分離した。膜ペレットを再懸濁バッファーに再懸濁させ、Polytron組織破壊器で再び均質にした。膜懸濁物のタンパク質濃度をLowry,O.et al.,Journal of Biochemistry 193:265(1951)に記載の方法によって決定した。全膜を−80℃のアリコートで凍結保存するか、またはすぐに使用した。調製したhMレセプター膜のアリコートをPerkin Elmerから直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0242】
(ムスカリン受容体サブタイプhM、hM、hM、hMおよびhMの放射性リガンド結合アッセイ)
96ウェルマイクロタイタープレート中で全アッセイ量100μLで放射性リガンド結合アッセイを行った。hM、hM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプのいずれかを安定に発現するCHO細胞膜を、以下の特定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)になるようにアッセイバッファーで希釈した:hM 10μg;hM 10〜15μg、hM 10〜20μg、hM 10〜20μg、およびhM 10〜12μg。Polytron組織破壊器で(10秒)膜を簡単に均質化した後、アッセイプレートに添加した。放射性リガンドのK値を決定する飽和結合試験をL−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech、Buckinghamshire、England)を0.001nM〜20nMの濃度範囲で用いて行った。試験化合物のK値を決定するための交換アッセイを[H]−NMSを1nMの濃度で用いて11個の異なる試験化合物濃度で行った。試験化合物を希釈バッファーに400μMの濃度になるように希釈し、最終濃度が10pM〜100μMの範囲になるまで希釈バッファーで順次5倍希釈した。アッセイプレートへの添加順序および体積は以下のとおりであった:放射性リガンド25μL、希釈した試験化合物25μL、および膜50μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートした。1%BSAで前処理したGF/Bガラスファイバーろ過プレート(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で迅速にろ過して結合反応を終了させた。ろ過プレートを洗浄バッファー(10mM HEPES)で3回洗浄して結合していない放射能活性を除去した。プレートを風乾し、Microscint−20液体シンチレーション液(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)50μLを各ウェルに添加した。次いで、プレートをPerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で計測した。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析した。観察されたIC50値から試験化合物のK値を計算し、Cheng−Prusoff式(Cheng Y; Prusoff W. H. Biochemical Pharmacology 22(23):3099−108 (1973))を用いて放射性リガンドのK値を計算した。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定した。この統計結果をK値に戻し、データを報告した。
【0243】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターに高い結合アフィニティーを有することを示す。例えば、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された例示的な本発明の化合物は、代表的に、Mムスカリン受容体サブタイプについて約10nM未満のK値を有し、そして多くの化合物は、約5nM未満のK値を有することがわかっている。
【0244】
(アッセイ2 ムスカリン受容体機能効力アッセイ)
cAMP蓄積のアゴニストによって媒介される阻害の阻止。
【0245】
このアッセイでは、試験化合物がhMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力を測定することによって試験化合物の機能効力を決定する。125I−cAMP(NEN SMP004B,PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston,MA)を用いてFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを製造業者の指示に従って用いて、放射性免疫アッセイ形態でcAMPアッセイを行う。
【0246】
細胞培養および膜調製の章で上に記載されるように、細胞をdPBSで1回洗い、Trypsin−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mM EDTA)で浮き上がらせた。dPBS 50mL中で650×gで5分間遠心分離して、分離した細胞を2回洗浄する。細胞ペレットをdPBS 10mLに再懸濁させ、細胞をCoulter Z1 Dual Particle Counter(Beckman Coulter,Fullerton,CA)で計測した。細胞を650×gで5分間再び遠心分離して、1.6×10〜2.8×10細胞/mLのアッセイ濃度になるように刺激バッファーに再懸濁させる。試験化合物を希釈バッファー(1mg/mL BSA(0.1%)を加えたdPBS)に400μMの濃度になるように最初に溶解し、最終モル濃度が100μM〜0.1nMの範囲になるまで希釈バッファーで順次希釈する。オキソトレモリンを類似の様式で希釈する。
【0247】
アデニリルシクラーゼ(AC)活性のオキソトレモリンによる阻害を測定するために、ホルスコリン25μL(dPBSで最終濃度25μMまで希釈)、希釈したオキソトレモリン25μL、および細胞50μLをアゴニストアッセイウェルに添加する。試験化合物がオキソトレモリンによって阻害されるAC活性を阻止する能力を測定するために、ホルスコリン25μLおよびオキソトレモリン(dPBSでそれぞれ最終濃度25μMおよび5μMまで希釈)、希釈した試験化合物25μL、および細胞50μLを残りのアッセイウェルに添加する。反応物を37℃で10分間インキュベートし、100μLの氷冷検出バッファーを添加することによって反応を停止させる。プレートを密閉し、室温で一晩インキュベートし、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で次の朝に計測する。各サンプルの計測結果およびcAMP標準に基づいて、製造業者のユーザーマニュアルに記載されるように産生したcAMPの量(pmol/ウェル)を計算する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定する。この統計結果をK値に戻し、データを報告する。
【0248】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0249】
(アゴニストによって媒介される[35S]GTPγS結合の阻止)
第2の機能アッセイでは、試験化合物がhMレセプターを発現するCHO−K1細胞でオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力を測定することによって、試験化合物の機能効力を決定することができる。
【0250】
使用時に、凍結膜を解凍し、最終標的組織濃度が5〜10μgタンパク質/ウェルになるようにアッセイバッファーで希釈する。Polytron PT−2100組織破壊器で膜を均質にし、アッセイプレートに添加する。アゴニストオキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激についてEC90値(最大応答の90%となるのに有効な濃度)を各実験で決定する。
【0251】
試験化合物がオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻害する能力を決定するために、96ウェルの各ウェルに以下のものを添加する:[35S]GTPγS(0.4M)を含むアッセイバッファー25μL、オキソトレモリン(EC90)25μLおよびGDP(3μM)、希釈した試験化合物25μLおよびhMレセプターを発現するCHO細胞膜25μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートする。PerkinElmer 96ウェル収集器を用いてアッセイプレートを1% BSAで前処理したGF/Bフィルターでろ過する。プレートを氷冷洗浄バッファーで3×3秒洗い、風乾または減圧乾燥する。Microscint−20シンチレーション液体(50μL)を各ウェルに添加し、各プレートを密閉し、トップカウンター(PerkinElmer)で放射能活性を計測する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。
【0252】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0253】
(FLIPRアッセイを用いたアゴニストによって媒介されるカルシウム放出の阻止)
タンパク質にカップリングするムスカリン受容体サブタイプ(M、MおよびMレセプター)は、レセプターにアゴニストが結合する際にホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。結果として、活性化されたPLCは、ホスファチルイノシトールジホスフェート(PIP)を加水分解してジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジル−1,4,5−トリホスフェート(IP)にし、細胞内貯蔵庫(すなわち、小胞体および筋小胞体)からカルシウムが放出される。FLIPR(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)アッセイは、細胞内のカルシウム増加を利用して、遊離カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム感受性染料(Fluo−4AM、Molecular Probes,Eugene,OR)を用いる。この蛍光はFLIPRによってリアルタイムで測定され、ヒトMおよびMおよびチンパンジーMレセプターでクローン化した細胞の単一層からの蛍光変化を検出する。アンタゴニストの効力は、アゴニストによって媒介される細胞内でのカルシウム増加を阻害する能力によって決定される。
【0254】
FLIPRカルシウム刺激アッセイでは、hM、hMおよびcMレセプターを安定に発現するCHO細胞をアッセイ前日に96ウェルFLIPRプレートに接種する。接種した細胞をCellwash(MTX Labsystems,Inc.)でFLIPRバッファー(Hank緩衝化塩溶液(HBSS)中の10mM HEPES、pH7.4、2mM 塩化カルシウム、2.5mM プロベネシド、カルシウムおよびマグネシウムは含まない)を用いて2回洗浄して成長培地を除去し、FLIPRバッファー50μL/ウェルを残す。50μL/ウェルの4μM FLUO−4AM(2倍溶液を作製)とともに37℃で40分間、5%二酸化炭素中で細胞をインキュベートする。染料インキュベーション後、細胞をFLIPRバッファーで2回洗浄し、最終体積を50μL/ウェルにする。
【0255】
アンタゴニスト効力を決定するために、オキソトレモリンによる用量依存性の細胞内Ca2+放出の刺激を最初に決定し、その後にアンタゴニスト効力がEC90濃度でオキソトレモリン刺激に対して測定される。まず、細胞を化合物希釈バッファーを用いて20分間インキュベートし、その後にアゴニストを添加し、FLIPRを行う。オキソトレモリンのEC90値は、以下のFLIPR測定およびデータ変形の章で説明される方法に従って式EC=((F/100−F)^1/H)*EC50と組み合わせて与えられる。3×EC濃度のオキソトレモリンは、刺激プレート中で調製し、EC90濃度のオキソトレモリンをアンタゴニスト阻害アッセイプレートの各ウェルに添加する。
【0256】
FLIPRで使用されるパラメーターは以下のものである:露光長0.4秒、レーザー強度0.5ワット、励起波長488nm、および発光波長550nm。アゴニストを添加する10秒前の蛍光変化を測定することによってベースラインを決定する。アゴニスト刺激の後に、FLIPRによって1.5分間、0.5〜1秒ごとに連続して蛍光変化を測定して、最大蛍光変化点を探す。蛍光変化は、それぞれのウェルについて最大蛍光−ベースライン蛍光であらわされる。生データを薬物濃度の対数に対してGraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いてシグモイド型用量応答のビルトインモデルを用いて非線形で分析する。Cheng−Prusoff式(Cheng & Prusoff,1973)に従ってKおよびオキソトレモリンEC90と同様にアンタゴニストK値をPrismによってオキソトレモリンEC50値を用いて決定する。
【0257】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験されたレセプターで高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hMレセプターを安定に発現するCHO細胞でアゴニストによって媒介されるカルシウム放出を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0258】
(アッセイ3 アセチルコリンによって誘発される気管支収縮のモルモットモデルの気管支保護の持続時間の決定)
このインビボアッセイを使用してムスカリン受容体アンタゴニスト活性を示す試験化合物の気管支保護効果を評価する。250〜350g体重の6匹の雄モルモット群(Duncan−Hartley (HsdPoc:DH)Harlan,Madison,WI)をケージカードで個々を区別する。試験中、動物は餌および水を自由に摂取できる状態にある。
【0259】
全身露出投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で 試験化合物を吸入によって10分間かけて投与する。エアロゾルが中央マニホルドから6個の個々のチャンバに同時に送達されるように投薬チャンバを整列させる。モルモットに試験化合物またはビヒクル(WFI)のエアロゾルを与える。これらのエアロゾルはLC Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)を用いた水溶液から作られており、混合ガス(CO=5%、O=21%およびN=74%)を用いて圧力22psiで噴射される。この操作圧で噴霧器を通るガス流は、約3L/分である。発生したエアロゾルは加圧によってチャンバに運ばれる。エアロゾル化した溶液を送達する間、希釈空気は使用しない。10分間の噴霧中に溶液約1.8mLが噴霧される。この量は、充填された噴霧器の噴霧前と噴霧後の重量を比較することによって重量測定法で測定される。
【0260】
吸入によって投与された試験化合物の気管支保護効果を、投薬1.5時間後、24時間後、48時間後および72時間後に全身プレチスモグラフィーで評価する。肺の評価を開始する45分前に、各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を筋肉内注射して麻酔する。手術部位の毛を剃り、70%アルコールで洗浄した後、首の腹部を2〜3cm正中線切開する。次いで、頚部静脈を分離し、生理食塩水を満たしたポリエチレンカテーテル(PE−50,Becton Dickinson,Sparks,MD)を通し、生理食塩水中のACh(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を静脈に注入する。気管を解剖し、14Gテフロン(登録商標)管(#NE−014,Small Parts,Miami Lakes,FL)を通す。必要な場合、上述の麻酔薬混合物をさらに筋肉内注射して麻酔を維持する。麻酔の深さをモニタリングし、動物の挟んでいる足が反応したり、または呼吸速度が100呼吸/分を超えたら麻酔を調整する。
【0261】
挿管が終わったら、動物をプレチスモグラフ(#PLY3114,Buxco Electronics,Inc.,Sharon,CT)に置き、食道加圧カニューレ(PE−160,Becton Dickinson,Sparks,MD)を挿入して肺駆動圧(圧力)を測定する。テフロン(登録商標)製気管チューブをプレチスモグラフの開口部に取り付け、モルモットがチャンバの外から空気を吸えるようにする。チャンバを密閉する。加熱ランプを使用して体温を維持し、10mLのキャリブレーションシリンジ(#5520 Series,Hans Rudolph,Kansas City,MO)を用いてモルモットの肺を空気4mLで3回ふくらませ、下気道が崩壊しないように、動物が過呼吸にならないようにする。
【0262】
コンプライアンスのベースライン値が0.3〜0.9mL/cmHOの範囲内にあることを確認し、抵抗のベースラインが1秒あたり0.1〜0.199cmHO/mLの範囲内にあることを確認したら、肺の評価を開始する。Buxco肺測定コンピュータプログラムによって、肺の値を集め、導出することができる。
【0263】
このプログラムを開始して実験プロトコルを開始し、データを集める。呼吸時にプレチスモグラフ内で起こる時間経過にともなう体積変化をBuxco圧力トランスデューサで測定する。このシグナルを時間で積分して、呼吸ごとの流量測定値を計算する。このシグナルと、肺の駆動圧の変化とをSensym圧力トランスデューサ(#TRD4100)で集め、Buxco(MAX2270)プリアンプをデータ収集インターフェース(# SFT3400およびSFT3813)に接続する。他のすべての肺パラメーターを2つの入力から入れる。
【0264】
ベースライン値を5分間集め、その後、モルモットをAChでチャレンジする。ACh(0.1mg/mL)をシリンジポンプ(sp210iw,World Precision Instruments,Inc.,Sarasota,FL)から以下の投薬量および実験開始からの時間で、1分間静脈吸入する:5分に1.9μg/分、10分に3.8μg/分、15分に7.5μg/分、20分に15.0μg/分、25分に30μg/分、および30分に60μg/分。抵抗またはコンプライアンスが各ACh投薬3分後にベースラインに戻らない場合、モルモットの肺を10mLキャリブレーションシリンジで空気4mLで3回ふくらませる。記録した肺パラメーターは、呼吸頻度(呼吸/分)、コンプライアンス(mL/cmHO)および肺抵抗(1秒あたりのcmHO/mL)を含む。肺機能の測定がこのプロトコルで35分に終了したら、モルモットをプレチスモグラフからはずし、二酸化炭素で窒息させて安楽死させる。
【0265】
データを以下の様式のうち1つまたは両方で評価する:
(a)肺抵抗(R,1秒あたりのcmHO/mL)を「圧力変化」対「流量の変化」の比から計算する。RはACh(60μg/分、IH)に応答し、ビヒクルおよび試験化合物群で算出される。各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の平均ACh応答を計算し、各前処置時間で、試験化合物の各投薬量でのAch応答の阻害率%を算出するために使用する。「R」についての阻害用量−応答曲線をGraphPad Prism,バージョン3.00(for Windows(登録商標))(GraphPad Software,San Diego,California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、気管支保護ID50(ACh(60μg/分)での気管支収縮応答が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
Y=Min+(Max−Min)/(1+10((logID50−X)*Hillslope))
式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(AChの阻害がRの増加を誘発する割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0266】
(b)PD量(肺抵抗のベースラインを2倍にするのに必要なAChまたはヒスタミンの量として定義)を流量から誘導される肺抵抗値から計算し、AChまたはヒスタミンのチャレンジを行っている間の圧力を以下の式を用いて計算する(American Thoracic SocietyのGuidelines for methacholine and exercise challenge testing −1999.Am J Respir Crit Care Med. 161:309−329 (2000)):に記載されるPC20値を計算するために使用される式から誘導される)。
【0267】
【化63】

式中、CはCに進むAChまたはヒスタミンの濃度であり、Cは肺抵抗(R)を少なくとも2倍に増加させるAChまたはヒスタミンの濃度であり、RはベースラインR値であり、RはC後のR値であり、RはC後のR値である。有効な投薬量は、ACh50μg/mL投薬に対する気管支収縮を肺抵抗ベースラインの2倍(PD2(50))までに制限する用量であると定義される。
【0268】
両側Students t検定を用いてデータの統計分析を行う。P値<0.05で有意であるとみなされる。一般的に、このアッセイでAChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、AChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有すると予想される。
【0269】
(アッセイ4 吸入モルモット唾液分泌アッセイ)
200〜350g体重のモルモット(Charles River,Wilmington,MA)をインハウスモルモットコロニーに到着後少なくとも3日間順応させる。試験化合物またはビヒクルをパイ型投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で吸入(IH)によって10分間投薬する。試験溶液を滅菌水に溶解し、投薬溶液5.0mLを満たした噴霧器を用いて送達する。モルモットを吸入チャンバに30分間拘束する。この時間中、モルモットは約110平方センチメートルの面積に制限される。この空間は動物が自由に向きを変え、位置を変え、身づくろいをするのに十分な大きさである。順応させて20分後、LS Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)から22psiの圧力の空気によってエアロゾルを作製してモルモットに与える。噴霧が終わったら、モルモットを処置1.5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、または72時間後に評価する。
【0270】
各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を0.88mL/kgの体積で筋肉内(IM)注射して麻酔する。加温した(37℃)毛布に動物の腹側が接するように置き、下向きの傾斜に頭が20°の角度になるように置く。4層の2×2インチゲージパッド(Nu−Gauze General−use sponges,Johnson and Johnson,Arlington,TX)をモルモットの口に挿入する。5分後、ムスカリンアゴニストピロカルピン(3.0mg/kg,SC)を投与し、ゲージパッドをすぐに取り出し、新しい計量済みのゲージパッドと交換する。唾液を10分間集め、この時点でゲージパッドを秤量し、記録した重量差から集めた唾液の量(mg)を決定する。ビヒクルおよび各用量の試験化合物を投与した動物について集めた唾液の平均量を計算する。ビヒクル群の平均が唾液100%であるとする。結果の平均値を用いて結果を計算する(n=3以上)。信頼区間(95%)を両側ANOVAを用いて時間点ごと、用量ごとに計算する。このモデルはRechterの「Estimation of anticholinergic drug effects in mice by antagonism against pilocarpine−induced salivation」Ata Pharmacol Toxicol 24:243−254 (1996)に記載される手順の改変である。
【0271】
各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の唾液の平均重量を計算し、対応する前処置時間、各用量での唾液の阻害割合%を算出する。阻害用量−応答データをGraphPad Prism,バージョン3.00(for Windows(登録商標))(GraphPad Software,San Diego,California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、抗唾液分泌促進薬ID50(ピロカルビンによって誘発される唾液分泌が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
Y=Min+(Max−Min)/(1+10((logID50−X)*Hillslope))
式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(唾液分泌の阻害割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0272】
抗唾液分泌促進薬ID50 対 気管支保護ID50の比率を使用して試験化合物の見かけの肺選択性指数を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0273】
(アッセイ5 意識のあるモルモットでのメタコリンで誘発される降圧応答)
200〜300g体重の健康な雄の成体Sprague−Dawleyモルモット(Harlan,Indianapolis,IN)をこの試験に使用する。イソフルランで麻酔し、動物に一般的な頚動脈および頚部カテーテル(PE−50管)を取り付ける。カテーテルを皮下の穴を利用して肩甲下に露出させる。すべての手術による切開部を4−0 Ethicon Silkで縫い合わせ、カテーテルをヘパリン(1000単位/mL)で保護する。それぞれの動物に手術後に生理食塩水(3mL、SC)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg,IM)を投与する。それぞれの保持室に戻すまでは動物を加温パッドに戻しておく。
【0274】
手術の約18〜20時間後、動物の体重を測り、それぞれの動物の頚動脈カテーテルをトランスデューサに接続して動脈圧を記録する。動脈圧および心臓の脈拍をBiopac MP−100 Acquisition Systemを用いて記録する。動物を20分間順応させ、安定化させる。
【0275】
それぞれの動物に頚部静脈からMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、心臓血管の応答を10分間モニタリングする。動物を全身投薬チャンバに入れ、試験化合物またはビヒクル溶液を含有する噴霧器に接続する。呼吸可能な空気および5%二酸化炭素の混合ガスを用いて3L/分の流速でこの溶液を10分間噴霧する。この動物を全身チャンバから出し、それぞれのカゴに戻す。投薬1.5時間後および24時間後に、この動物に再びMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、血流応答を決定する。その後、この動物をナトリウムペントバルビタール(150mg/kg,IV)で安楽死させる。
【0276】
MChによって平均動脈圧(MAP)が減少し、心臓の脈拍が減少する(徐脈)。MAPのピークがベースラインよりも下にあること(低下応答)が各MCh投与時(IH投薬前および投薬後)に測定される。MCh応答に対する処置効果をコントロール低下応答の阻害率(平均±SEM)%であらわす。適切な試験の両側ANOVAを使用して処置時間および前処置時間の効果を試験する。MChに対する低下応答は、ビヒクルを吸入投薬した場合には1.5時間後および24時間後で相対的に変化しないと予想される。
【0277】
抗低下ID50 対気管支保護ID50の比率を使用して、試験化合物の見かけの肺選択性を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0278】
本発明が特定の態様または実施形態を参照して記載されたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更をほどこすことが可能であり、または交換することが可能であることが当業者には理解される。さらに、適用可能な特許の状態および規制で許される限り、本明細書に引用される特許および特許明細書は、まるで各文献が本明細書に参考として個々に組み込まれているかのように、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体であって、式Iにおいて:
aは、0または1〜5の整数であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから選択され;ここで、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1j、およびR1kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
bは、0または1〜4の整数であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから選択され;ここで、R2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2j、およびR2kの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり;
Wは、OまたはNWを表し、ここで、Wは、水素または(1〜4C)アルキルであり;
cは、0または1〜5の整数であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキルを表すか、または2つのR基が、一緒になって、(1〜3C)アルキレン、(2〜3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
Aは:
【化2】

からなる群より選択され、ここで、mは、0または1であり;rは、2〜4の整数であり;sは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;Rは、水素、(1〜4C)アルキル、および(3〜4C)シクロアルキルから選択され;そしてArは、フェニレン基、または1個もしくは2個のヘテロ原子を含む(3〜5C)ヘテロアリーレン基を表し、該ヘテロ原子は、独立して、酸素、窒素および硫黄から選択され;ここで、該フェニレン基またはヘテロアリーレン基は、(Rで置換され、ここで、qは、0または1〜4の整数であり、そして各Rは、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから選択され;
は、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜4C)シクロアルキル、−C(O)(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンC(O)OR6a、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)CH(NH)(1〜4C)アルキレンQ、−(1〜4C)アルキレンC(O)Z、−C(O)(1〜4C)アルキレンZ、および−S(O)(1〜4C)アルキレンZから選択され;ここで、Qは、−NR6b6cおよびヘテロアリールから選択される窒素含有置換基であり;Zは、−NR6d6eおよびヘテロシクリルから選択される窒素含有置換基であり;R6aは、水素または(1〜4C)アルキルであり;R6b、R6c、R6dおよびR6eの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキルまたはヒドロキシフェニルを表し、そしてここで、(1〜4C)アルキルは、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、該置換基は、独立して、アミド、シアノ、フリル、ヒドロキシル、およびメチルイミダゾリルから選択され;該ヘテロシクリルは、1個または2個の窒素原子を含み、そして非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、該置換基は、独立して、ヒドロキシル、アミド、(1〜4C)アルコキシ、オキソ、−S(O)(1〜4C)アルキル、−(CH)O(1〜4C)アルキル、−(1〜4C)アルキレンOH、−NR6f6gおよび−C(O)NR6h6iから選択され、ここで、R6f、R6g、R6hおよびR6iの各々、独立して、水素または(1〜4C)アルキルを表し;そして該ヘテロアリールは、1個または2個の窒素原子を含み;
は、(1〜3C)アルキレン、−C(O)(1〜3C)アルキレン、(1〜3C)アルキレンC(O)−、−SO−、−SO(1〜3C)アルキレンおよび(1〜3C)アルキレンSO−から選択され;ここで、いずれかのXにおけるアルキレン基は、必要に応じて、1個もしくは2個の置換基で置換されており、該置換基は、独立して、(1〜4C)アルキルおよび−NRXaXbから選択され;ここで、RXaおよびRXbは、独立して、水素および(1〜4アルキル)から選択され;
pは、0、1または2であり;
各Rは、独立して、(1〜4C)アルキル、(2〜4C)アルケニル、(2〜4C)アルキニル、(3〜6C)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ハロ、N,N−ジ(1〜4C)アルキルアミノ(2〜4C)アルコキシ、−OR7a、−C(O)OR7b、−SR7c、−S(O)R7d、−S(O)7eまたは−NR7f7gを表し;R7aは、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、そしてR7b、R7c、R7d、R7e、R7fおよびR7gの各々は、独立して、水素、(1〜4C)アルキル、(3〜6C)シクロアルキル、フェニルまたはフェニル(1〜4C)アルキルであり、ここで、各フェニル基は、非置換であるか、または1個もしくは2個の置換基により置換されており、該置換基は、独立して、ハロ、(1〜4C)アルキルおよび(1〜4C)アルコキシから選択され;そして
は、(1〜4C)アルキル、(1〜4C)アルキレンNR8a8b、およびフェニルから選択され、R8aおよびR8bの各々の各々は、水素または(1〜4C)アルキルであるか;あるいはRは、Rと一緒になって、1個〜2個の酸素原子を有する環を形成し、ここで、該環は、非置換されているか、または1個もしくは2個の(1〜4C)アルキル置換基で置換されており;
ここで、R、R1a−1k、R、R2a−2k、R、R、R、R7a−7g、R、およびR8a−8bにおける各アルキル基およびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている、
化合物。
【請求項2】
a、bおよびcが、各々0を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがOを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
pが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
pが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、−OR7aであり、ここで、R7aは、(1〜4C)アルキルまたは(3〜6C)シクロアルキルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記−OR基が、パラ位またはメタ位に位置している、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、2個〜3個のフルオロ置換基、(1〜4C)アルキレンNR8a8b、およびフェニルで必要に応じて置換されたメチルから選択され、R8aおよびR8bの各々は、独立して、メチルまたはエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、Rと一緒になって、1個の酸素原子を有する環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、Rと一緒になって、−(CH−C(CH−または−(CH−を形成する、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、Rと一緒になって、2個の酸素原子を有する環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が、Rと一緒になって、−O(CH)−または−O(CH−を形成する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、(1〜3C)アルキレンおよび−SO−から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
Aが、
【化3】

であり、mが、0であり、rが、3であり、そしてRが、水素またはメチルである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Aが、
【化4】

であり、mが、0であり、sが、0であり、tが、1であり、そしてArが、フェニレンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Aが、
【化5】

であり、mが、0であり、sが、0であり、tが、1であり、Rが、水素またはメチルであり、そしてArが、フェニレンである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
式:
【化6】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−メトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]−エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(3,4−ジメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−ジフルオロメトキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−フェノキシベンジルアミノ)ペンチルカルバモイル]−エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,2−ジメチルクロマン−6−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルメチル)アミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−{2−[5−(4−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[2−(4−メトキシフェニル)エチルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{5−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミノ]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[4−(3−ジメチルアミノプロポキシ)ベンジルアミノ]メチル}フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−トリフルオロメトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−ジフルオロメトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−(2−{4−[(4−メトキシベンジルアミノ)メチル]フェニルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−(4−{[(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル)アミノ]メチル}フェニルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−({4−[(4−メトキシベンジルアミノ)メチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸1−[2−({4−[(2−メトキシベンジルアミノ)メチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
またはこれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物、
から選択される、化合物。
【請求項20】
薬学的組成物であって、薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物を含有する、薬学的組成物。
【請求項21】
βアドレナリン作用性受容体アゴニスト、ステロイド系抗炎症薬剤、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、治療有効量の薬剤をさらに含有し、前記化合物と該薬剤とが、一緒に処方されているかまたは別々に処方されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
治療有効量の、βアドレナリン作用性受容体アゴニストおよびステロイド系抗炎症薬剤を含有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
(a)式IIの化合物:
【化7】

またはその塩を、式IIIの化合物:
【化8】

と反応させる工程であって、式IIIにおいて、Lは、脱離基を表す、工程;または
(b)式IVaの化合物:
【化9】

またはその反応性誘導体を、式Va’または式Va”の化合物:
【化10】

とカップリングさせる工程、もしくは
式IVbの化合物:
【化11】

を、式Vb’またはVb”の化合物:
【化12】

またはその反応性誘導体とカップリングさせる工程;または
(c)式VIの化合物:
【化13】

を、式VIIの化合物:
【化14】

と反応させる工程であって、式VIにおいて、Lは、脱離基を表す、工程;または
(d)式IIの化合物を、式VIIIの化合物:
【化15】

(式VIIIにおいて、「A」は、1個少ない炭素、すなわち、m個ではなくm−1個の炭素を有する)と、還元剤の存在下で反応させる工程;または
(e)式IXの化合物:
【化16】

(式IXにおいて、「A」1個少ない炭素、すなわち、r個ではなくr−1個、もしくはt個ではなくt−1個の炭素を有する)を、式VIIの化合物と、還元剤の存在下で反応させる工程;および
(f)存在し得る任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供する工程、
を包含する、プロセス。
【請求項24】
前記プロセスが、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程をさらに包含する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
請求項23または24のプロセスによって調製された、生成物。
【請求項26】
ムスカリン受容体を含む生物学的系または生物学的サンプルを研究する方法であって、該方法は、
(a)該生物学的系または生物学的サンプルを、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程;および
(b)該生物学的系または生物学的サンプルに対して、該化合物によって引き起こされる効果を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
治療において使用するため、または医薬として使用するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項29】
前記医薬が、哺乳動物におけるムスカリン受容体を拮抗するためのものである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記医薬が、肺障害の処置のためのものである、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記医薬が、気管支拡張を起こすためのものである、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬が、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置するためのためのものである、請求項28に記載の使用。

【公表番号】特表2008−538104(P2008−538104A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500976(P2008−500976)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/008646
【国際公開番号】WO2006/099167
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】