説明

メイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料

【課題】みずみずしく優れた使用感を有し、汗をかくような高温下でも化粧持ちがよく、加えて耐摩擦性にも優れた水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子の水溶液を、該温度感受性高分子のゾル−ゲル転移温度より低温の条件下で混合して製造することを特徴とする、メイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、みずみずしく優れた使用感を有し、汗をかくような高温下でも化粧持ちがよく、加えて耐摩擦性にも優れたメイクアップ用又は日焼け止め用化粧料に関する。更に詳しくは、転移温度を境にゾル−ゲル転移を示し皮膜形成が可能な温度感受性高分子の水溶液を、転移温度よりも低温の条件下で混合することにより得られる、メイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水性の水白粉等の化粧料や水中油型リクイドファンデーション、日焼け止め化粧料等は、水分の配合量が多く、非常にみずみずしい感触を有するため、夏季等の高温下で感触的に非常に好ましい製剤である。最近、特に使用感に優れた水中油型メイクアップ化粧料や水中油型日焼け止め乳化化粧料も多く提案されている。しかしながら、処方系内における親水性物質の割合が多く、一般的に耐水性、耐汗性といった化粧持ちが劣るという欠点を有している。そのため該化粧料の特徴を十分に発揮し得る製剤は未だ市場に見られない。また、配合成分の皮膚上への定着保持性も低く、リクイドファンデーション等の化粧料にした場合、衣類等と化粧面が接触するために衣類面が着色される、所謂、色移り現象も生じやすい。
【0003】
製剤の化粧持ちを高めるものとして、シリコーン油などの油剤を多く使用し、耐水性、耐汗性に優れた油中水型製剤が広く普及してきている(例えば、特許文献1、2参照)。さらに、油中水型製剤では、近年、樹脂等の皮膜形成成分の配合により飛躍的に耐摩擦性を高め、色移り現象を解決することが可能となってきている。しかし、これら油中水型製剤は、塗布時の肌なじみが悪いため、水中油型化粧料と比較すると使用感触に劣る。
【0004】
一方、ゾル−ゲル転移の特性を示す温度感受性高分子を、香粧品基剤として適用する発明が開示されている(特許文献3)。該発明は、温度感受性高分子のゾル−ゲル転移という特性に着目して、コスメティック・パックや脱毛剤等の、肌上で温度感受性高分子がゲル化したあとに剥離させるような外用香粧品への適用を指向したものであって、化粧持ちや耐摩擦性などの観点からの温度感受性高分子の利用については、何も示唆されていない。
【0005】
以上の背景から、優れた使用感を維持しながら、欠点である耐水性、耐汗性といった化粧持ちに劣る点、さらには摩擦等による色移り現象を解決する水性もしくは水中油型乳化化粧料タイプのメイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−114663号公報
【特許文献2】特開2003−277248号公報
【特許文献3】特開平9−227329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、みずみずしく優れた使用感を有し、汗をかくような高温下でも化粧持ちがよく、加えて耐摩擦性にも優れたメイクアップ用もしくは日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情において、鋭意研究を行った結果、温度依存的にゾル−ゲル転移特性を示す
温度感受性高分子の水溶液を、転移温度よりも低温条件下で混合することにより得られる水性化粧料又は水中油型乳化化粧料が、保存時には流動性が高く、肌上に適用した後は、体温等による温度上昇により温度感受性高分子がゲル化して強固な皮膜として化粧膜を形成し得るため、優れた使用感を維持しながら、欠点である耐水性、耐汗性といった化粧持ちに劣る点、さらには摩擦等による色移り現象を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本願発明は、10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子の水溶液を、該温度感受性高分子のゾル−ゲル転移温度より低温の条件下で混合して製造することを特徴とする、メイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料にある。
【0010】
また、本願第2の発明は、更にグリセリンを配合してなることを特徴とする上記のメイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧料は、10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子が配合されており、転移温度より低温の保存時には流動性が高く、操作性に優れ、みずみずしく優れた使用感を有し、塗布後においては体温等による温度上昇により温度感受性高分子がゲル化して強固な化粧膜を形成するため、汗をかくような高温下でも化粧持ちがよく、加えて耐摩擦性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。本発明では、10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子を、本発明の化粧料を構成する必須の成分として使用する。このような温度感受性高分子としては、文献(柴山充弘、梶原莞爾監修、「高分子ゲルの最新動向」、株式会社シーエムシー出版、2004年4月発行、第7頁)に記載された物質及び構造が例示される。即ち、温度応答性高分子と親水性高分子からなるブロックポリマー水溶液を昇温すると、温度応答性高分子の相分離温度で速やかにゲル化し、相分離温度以下に戻すと瞬時に元の溶液状態に戻る特性が得られることが示されている。ここで言う「相分離温度」とは、ある種の高分子(ポリマー)がある臨界温度以上になると、急激な脱水和を起こし、疎水性相互作用により凝集し不溶化する現象として定義されている。このような「相分離特性」を示す温度応答性ポリマーとしてはポリN−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)が有名である。温度応答性高分子部分(ブロック)と、親水性高分子部分とを結合するようにして得られた高分子化合物が、本発明を実施する上で好ましく、さらに温度応答性高分子部分が1分子中に複数存在する高分子化合物であることが更に好ましい。
【0013】
本発明において、温度感受性高分子は温度依存性のゾル−ゲル転移の特性を示すことが必要であり、その臨界温度は10℃から40℃の範囲であり、好ましくは15℃から35℃の範囲である。この温度依存性のゾル−ゲル転移特性は、回転型レオメーターを用いた動的粘弾性の測定より求めることが可能である。測定条件としては、例えば、1Hzの観測周波数における試料の動的弾性率を低温から高温へ変化させて測定し、該試料の貯蔵弾性率(G'、弾性項)が損失弾性率(G''、粘性項)を上回る点の温度をゾル−ゲル転移温度とする。一般に、G''>G'の状態がゾルであり、G''<G'の状態がゲルであると定義される。このゾル−ゲル転移温度の測定に際しては、下記の測定条件が好適に使用可能である。
【0014】
(ゾル−ゲル転移温度測定法の条件)
測定機器:回転型レオメーターPhysica MCR−301(Anton Paar社製)
温度感受性高分子水溶液の濃度:10質量%
測定用セルの形状・寸法:直径25mmパラレルプレート、ギャップ1mm
適用応力orひずみ:線形領域の範囲内
適用周波数:1Hz
昇温速度:1℃/分
【0015】
上記の「ゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物」は、その水溶液または水分散液が上記ゾル−ゲル転移温度より高い温度では流動性の乏しいゲル状(ハイドロゲル)となり、一方、該温度より低い温度ではゾル(ないし液状)となる特性を有する。
【0016】
本発明において、好適なゾル−ゲル転移温度を有する高分子化合物は、通常の化粧品にゲル形成成分として使用可能な(前述した一般的特性を有する)種々の高分子化合物の中から、上記したスクリーニング方法(ゾル−ゲル転移温度測定法)に従って容易に選択することができる。
【0017】
本発明に用いられる温度感受性高分子中の温度応答性高分子部分の化合物としては、特に好ましいものとして、例えば、ポリN−置換アクリルアミド誘導体、ポリN−置換メタアクリルアミド誘導体、これらの共重合体;ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。上記の高分子は単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、また上記重合体を構成する単量体と、他の単量体との共重合体であってもよい。このような共重合体を構成する他の単量体としては、親水性単量体、疎水性単量体のいずれを用いることもできる。
【0018】
上記親水性単量体としては、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等、並びに塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの塩等が挙げられる。
【0019】
一方、上記疎水性単量体としては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアクリレート誘導体およびメタクリレート誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミド等のN−置換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0020】
とりわけ好ましい成分として、温度応答性高分子部分の化合物が、ポリプロピレンオキサイド、プロピレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化物;または、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−n−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N、N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミドの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0021】
一方、本発明において温度応答性高分子と結合させる親水性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる温度感受性高分子化合物の含有量は、実質的にゾル−ゲル転移が生じる濃度範囲内であれば特に制限されないが、通常、化粧料の総量を基準として、0.5〜50.0質量%(以下、%と略記する)の範囲が好ましく、特に好ましくは2.0〜20.0%である。0.5%未満ではゲル形成が悪く本発明の効果を発揮するゲル強度が得られにくい場合があり、また50.0%を超えると水への膨潤性が抑制され、長期保存安定性に難がある場合がある。
【0023】
本発明ではさらに、グリセリンを併用し配合することができる。本発明で用いられるグリセリンの含有量は、通常、化粧料の総量を基準として、50.0%以下が好ましく、特に好ましくは0.1〜20.0%である。50.0%を超えて配合する場合、ハイドロゲルの水への膨潤性が抑制され、長期保存安定性に難がある場合がある。
【0024】
本発明の化粧料は、上述した成分を必須の構成成分とするが、当該組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、本発明に係るメイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料を調製するために必要な他の成分、例えば、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、粘剤、油剤、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、パール化剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、酵素等の成分を適宜配合することができる。以下に他の配合成分の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0025】
陰イオン性界面活性剤としては、直鎖あるいは分岐鎖脂肪酸塩、α−アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、スルホコハク酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0026】
両性界面活性剤としては、グリシン型、アミノプロピオン酸型、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、スルホン酸型、硫酸型、リン酸型等が挙げられる。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0028】
油剤としては、通常化粧料に用いられる揮発性、不揮発性の油剤、溶剤または前記樹脂以外の樹脂が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体であっても構わないが、ハンドリングに優れる液体が好ましい。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミリス
チン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリブ油等の油脂、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー等が挙げられる。
【0029】
また、別の形態の油剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、ジメチコノール、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコーン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等のシリコーン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール等のフッ素化合物が挙げられる。
【0030】
粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、アラビアガム、アルギン酸またはその塩、カラギーナン、寒天、グアーガム、クインスシード、タマリンドガム、デキストリン、デキストラン、デンプン、ローカストビーンガム、カラヤガム、トラガカントガム、ペクチン、マルメロ、キトサン、キサンタンガム、ジェランガム、ヒアルロン酸又はその塩、プルラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等が挙げられる。
【0031】
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収能を有する従来公知の化粧品原料から選択される。具体的には、パラメトキシケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、ヒドロキメトキシベンゾフェノン、ヒドロキメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンジフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、アントラニル酸メンチル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸等を挙げることができ、1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニア等の金属酸化物が挙げられる。このうち平均1次粒子径として5〜100nmの範囲にある微粒子金属酸化物の1種以上から選ばれることが特に好ましい。これらの金属酸化物は、従来公知の表面処理、例えば、フッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理
やパーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理が好ましい)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理が好ましい)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理が好ましい)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖等を付加する方法)、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、シラン処理(アルキルシランやアルキルシラザン処理が好ましい)、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸やミリスチン酸塩が好ましい)、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理等で表面処理が行ってあることが好ましく、更に好ましくはこれらの処理を複数組み合わせて用いることが好ましい。例えば、微粒子酸化チタン表面をシランやアルミナ等の金属酸化物で被覆した後、アルキルシランで表面処理すること等が挙げられる。
【0033】
粉体の例としては、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の樹脂、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料等の顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)及び粒径に特に制限はない。
【0034】
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、老化防止剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。本発明では、これらの生理活性成分を1種または2種以上配合することができる。
【0035】
本発明の化粧料は、温度感受性高分子水溶液のゾル−ゲル転移温度より低い温度条件で混合することにより製造することができる。製造には、特殊な機器を使用することなく、通常の化粧品製造に用いているものを使用することができる。製造方法としては、水性化粧料であれば、温度感受性高分子又はその水溶液に他の成分を加え、ゾルーゲル転移温度より低い温度条件で、温度感受性高分子を膨潤させながら混合を行なう方法により得ることができる。水中油型乳化化粧料であれば、先に油相と温度感受性高分子を含まない水相とで水中油型乳化化粧料を作成し、これをゾル−ゲル転移温度より低い温度条件で、ゾル−ゲル転移温度より低い温度状態にある温度感受性高分子又はその水溶液を加えて混合する方法、あるいは一般的にコールドプロセスと呼ばれる加温を行なわない乳化方法により、油相と温度感受性高分子を含む水相とを、ゾル−ゲル転移温度より低い温度条件下で乳化させる方法などにより、目的の化粧料を得ることができるが、これら方法に限定されるものではない。低粘度の水性化粧料や乳液等の場合では、ゾル−ゲル転移温度より低い温度条件にて処理することにより容易に混合できる場合があるが、クリーム等の粘性の高い化粧料製剤においては、温度感受性高分子やその水溶液を高配合する場合、ゾル−ゲル転移温度より低い温度でゾル状態である温度感受性高分子を機械的な力を用いて混合することが好ましい。
【0036】
本発明の化粧料の剤型としては、目的により任意に選択できるものであり、例えば、化粧水状、クリーム状、ジェル状、乳液状、エアゾール状等のものが挙げられる。また、本発明の化粧料は、一般の化粧料に限定されるものではなく、医薬部外品、指定医薬部外品、外用医薬品等を包含するものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0038】
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す各組成の温度感受性水中油型乳化化粧料(クリームチーク)を調製した。また、実施例及び比較例で得られた化粧料について官能評価(みずみずしさ、化粧仕上り等)及び化粧持ちの評価を行った。以下に評価の手法を示す。
【0039】
(官能評価)
20名の専門パネラーが各試料を顔面に塗布した時の、塗布時及び塗布後の感触に関する評価項目(みずみずしさ、塗布しやすさ、肌なじみの良さ、化粧効果)について、以下の5段階で評価し、その平均点を求め、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を○、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
5:大変好ましい
4:好ましい
3:どちらともいえない
2:好ましくない
1:大変好ましくない
【0040】
(化粧持ち評価)
さらに、3時間経過後に専門評価者により化粧状態を観察し、化粧持ちを下記の3段階で評価した。
○:化粧持ちが良く、ほとんど変化しない。
△:化粧持ちは普通で、少し崩れている。
×:化粧持ちが悪く、容易に崩れてしまった。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の官能評価、化粧持ち評価の結果から判るように、温度感受性高分子を、そのゾル−ゲル転移温度よりも低い条件で混合して調製した、実施例1〜4の化粧料は、良好な使用感に加え、化粧持ちを向上させていた。
【0043】
実施例5、比較例4
表2に示す配合処方に従い、温度感受性水中油型乳化化粧料(リクイドファンデーション)を調製した。尚、10%温度感受性高分子水溶液は10℃の条件で投入した。調製した化粧料の化粧持続性を。下記方法により評価した。
【0044】
(化粧持ち)
専門評価パネラーに実施例5、比較例4の化粧料を半顔づつ塗布してもらい、化粧持ちを下記の3段階で評価した。
○:化粧持ちが良く、ほとんど変化しない。
△:化粧持ちは普通で、少し崩れている。
×:化粧持ちが悪く、容易に崩れてしまった。
【0045】
(化粧膜の色移り防止効果)
化粧料を左前腕部に5μl/cmとなるように塗布し、乾燥させて化粧膜を作成した。この化粧膜に対して、500gの荷重をかけてティッシュペーパーを押し付けた時、ティッシュペーパーに転写される着色度合を、下記基準で評価し、色移り防止効果を比較した。
○:色移りによる着色がほとんど見られなかった。
△:極微小に色移りが生じているのがわかる。
×:色移りがはっきり認識できた。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の化粧持続性評価結果から判るように、実施例5の本願化粧料は、化粧持ちに優れ、ティッシュペーパーへの転移もなく色移り防止効果に優れていた。
【0048】
実施例6(サンスクリーン剤)
下記に示す配合処方に従い、サンスクリーン剤を調製した。尚、10%温度感受性高分子水溶液は10℃の条件下で投入した。該サンスクリーンは、感触のみずみずしさに加え、化粧持ち、効果の持続性ともにより優れたものであった。
【0049】
(成分) (質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 2.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
エタノール 2.0
エデト酸二ナトリウム 0.02
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
10%温度感受性高分子水溶液(注3) 30.0
(ゾル−ゲル転移温度:33℃)
グリセリン 5.0
ポリアクリル酸アミド(注11) 1.0
メチルパラベン 0.2
精製水 残 量
(注11)セピゲル501(SEPPIC社)
【0050】
実施例7(サンスクリーン剤)
下記に示す配合処方に従い、サンスクリーン剤を調製した。尚、10%温度感受性高分子水溶液は10℃の条件下で投入した。該サンスクリーン剤は、感触のみずみずしさに加え、化粧持ち、効果の持続性ともにより優れたものであった。
【0051】
(成分) (質量%)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7.5
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1.0
ミリスチン酸イソセチル 3.0
シリコーン処理酸化亜鉛 5.0
オクチルシリル化酸化チタン 3.0
スクワラン 5.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
アクリル酸ナトリウム 2.5
/アクリルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体(注9)
10%温度感受性高分子水溶液(注4) 30.0
(ゾル−ゲル転移温度:20℃)
エタノール 3.0
エデト酸二ナトリウム 0.01
キサンタンガム 0.1
ニコチン酸アミド 0.1
精製水 残 量
【0052】
実施例8(水白粉)
下記に示す配合処方に従い、水白粉を10℃の条件下で調製した。該水白粉は、感触のみずみずしさに加え、化粧持ち、保湿性ともにより優れたものであった。
【0053】
(成分) (質量%)
グリセリン 7.0
エタノール 4.0
1,3−ブチレングリコール 1.0
フェノキシエタノール 1.0
メチルパラベン 0.1
ベントナイト 0.15
酸化亜鉛 9.0
酸化チタン 2.0
タルク 3.0
カオリン 0.2
ベンガラ 0.2
黄酸化鉄 0.5
黒酸化鉄 0.1
10%温度感受性高分子水溶液(注3) 60.0
(ゾル−ゲル転移温度:33℃)
精製水 残 量
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の化粧料は、10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子の水溶液を、該温度感受性高分子のゾル−ゲル転移温度より低温の条件下で混合して製造することを特徴とする化粧料である。本発明により、塗布時の肌なじみや塗布感が良く、みずみずしく優れた使用感を有し、汗をかくような高温下でも化粧持ちが良く、加えて耐摩擦性にも優れたメイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10℃から40℃の範囲にある臨界温度より低温ではゾルであり、臨界温度以上の高温でハイドロゲルを形成する、可逆的なゾル−ゲル転移の特性を示し、皮膜形成が可能な温度感受性高分子の水溶液を、該温度感受性高分子のゾル−ゲル転移温度より低温の条件下で混合して製造することを特徴とする、メイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料。
【請求項2】
更にグリセリンを配合してなることを特徴とする、請求項1に記載のメイクアップ用もしくは日焼け止め用化粧料。

【公開番号】特開2007−269713(P2007−269713A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98494(P2006−98494)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】