説明

メソ多孔質活性炭素

【解決手段】 触媒により活性化される炭素材料と、それらを調製するための方法について説明されている。活性炭素材料は、メソ細孔用の活性化触媒として金属を含有しているナノ粒子を使って、具体的な用途に合わせて容易に最適化される、制御された多孔率分布を有するように設計される。活性炭素材料は、限定するわけではないが、様々な電気化学装置(例えば、コンデンサ、バッテリー、燃料電池など)、水素貯蔵装置、濾過装置、触媒基質、および同類のものを含め、炭素材料を含有している全ての方式の装置に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭素と、その調製方法に関する。活性炭素は、制御されたメソ多孔性を有するように作られており、限定するわけではないが、各種電気化学装置(例えば、コンデンサ、バッテリー、燃料電池など)、水素貯蔵装置、濾過装置、触媒担体などを含め、活性炭素材料が中に入っている全ての様式の装置で用いることができる。
【背景技術】
【0002】
多くの先端技術、電気自動車及びハイブリッド自動車では、高エネルギー及び高パワー密度の両方を備えたコンデンサが緊急に必要とされている。多くの研究がこの領域に捧げられてきたが、例えば、ハイブリッド電気自動車、燃料電池駆動自動車、及び電力マイクログリッドなど、多くの実用的用途では、目下の技術は、性能的に、そしてコストが高すぎるために、不十分であるか又は受け入れられないものである。これは、例えば米国エネルギー省の支援を受けているなど、非常に活発な研究領域に留まっており、例えば、「DOE Progress Report for Energy Storage Research and Development fy2005(Jan 2006)及び Utility Scale Electricity Storage by Gyuk、manager of the Energy Storage Research Program、DOE(speaker4、slides13−15、Advanced Capacitors World Summit 2006)」を参照されたい。
【0003】
電気二重層コンデンサ(EDLC又はウルトラキャパシタ)と擬似コンデンサ(pseudocapacitors)(PC又はスーパーキャパシタ)は、その様な用途に向けて研究されてきた2つの型式のコンデンサ技術である。これらの技術の両方を進化させる際の主な課題には、エネルギー密度を改良すること、装置の内部抵抗(等価直列抵抗(equivalent series resitance)即ちESRとしてモデル化されている)を下げて効率とパワー密度を改良すること、及びコストを下げることが含まれている。これら両方の静電容量現象について、以下に簡単に紹介する。
【0004】
電気二重層コンデンサの設計は、非常に広い電極表面積を当てにしており、普通は、例えばアルミニウム又は銅の箔など、良導体で作られた電流コレクタに被覆した「ナノスケールで粗い」金属酸化物又は活性炭素で作られており、イオンを、導電性の電解質から、電極表面に直接隣接して形成されるヘルムホルツ層として知られている領域へ物理的に分離することによって、電荷を蓄える。米国特許第3288641号参照。EDLC内には明確な物理的誘電体は無い。とは言え、キャパシタンスは、相変わらず、電界を横切る物理的な電荷分離に基づいている。電池の両側にあり、多孔質膜によって分離されている電極は、電解質溶液と接触している表面の二重層に、等価で逆極性のイオン電荷を蓄えるが、事実上、両電極にとって従来のコンデンサの反対プレートになる。しかしながら、大きな市販のEDLCは、現在は高価すぎるし、ハイブリッド車の様な多くの用途にはエネルギー密度が不十分であり、代わりに、小型のものが、フェールソフトメモリバックアップのために、家庭用電子機器で主に用いられている。
【0005】
EDLC細孔は、各電解質イオンの溶媒和の球体を受け入れて、細孔がヘルムホルツ二重層のキャパシタンスとしてそれらの表面が寄与するためには、水性の電解質で少なくとも約1−2nm、有機電解質では少なくとも約2−3nmでなければならないと一般的に理解されている。「J.Electrochem.Soc.148(8)A910−A914(2001)」と「Electrochem&Solid State Letter8(7)A357−A360(2005)」を参照されたい。細孔は、また、閉じていて内部にあるというよりはむしろ、外側の電極表面からアクセス可能で電解質に曝され濡れるようになっていなければならない。この閾値寸法より一寸大きなアクセス可能な細孔の総数が多いほど、総表面積が最大限に増えるので望ましい。大幅に大きな細孔は、総有効表面を比較的に減らすことになるので、望ましくない。13nmよりずっと大きい細孔は、キャパシタンスには貢献するが、総面積を減らすことが示されている。「Carbon 39 937−950(2001)」と「Eurocarbon Abstracts(1998)841−842」を参照されたい。その様なELDC装置に用いられている従来の活性炭素は、多くの電気化学的に役に立たないミクロ細孔(即ち、IUPAC(国際純正・応用化学連合)の定義によれば2nm未満)を有している。細孔の寸法は、ヘルムホルツ層を形成するのに必要な溶媒和電解質イオンを受け入れるために、電解質イオンの溶媒和の球体とほぼ同じか、もっと大きくなければならない。米国特許第6491789号を参照されたい。有機電解質では、溶媒和電解質イオンは大きさが1.7nmから2nm程度で、細孔の「両側」は潜在的に使用可能な表面を有しているので、これらの細孔は、理想的には3−4nmより大きくなければならない。例えば、「Carbon 40(2002)2613」を参照されたい。文献で報告されている最高に活性化された電気化学的炭素では、実際に測定されたEDLCは、次善の細孔分布であるために(BET測定の総面積に基づいた)理論値より20%少なく、ミクロ細孔の割合が大きい(通常、三分の一以上二分の一まで)。米国特許第6737445号を参照されたい。電気化学装置内での高度に活性化された炭素に関する別の問題は、脆性が増すことと、導電性が低いことであり、実験によって測定された導電率は7S/cmと低かった。
【0006】
擬似コンデンサは、3つの形態の内の1つの電気化学擬似キャパシタンスに基づいて作ることができる;即ち、電解質イオンを電極の表面に電気収着させるか、電極表面で酸化/還元(レドックス)反応させるか、又は導電性ポリマーをイオンドーピング/空乏化させる。これらは全て、EDLCにおける純粋に非ファラデー的静電気電荷分離プロセスと比べれば、ファラデー的プロセスであり、電荷交換が関わっている。擬似コンデンサは、電荷貯蔵機構の可逆的な電気化学的性質のために、EDLCより高いRC(response curve:応答曲線)定数を有する傾向があり、従ってコンデンサよりはバッテリーに近い。本装置は、数秒から数百秒の範囲のRC定数を有している。レドックス擬似キャパシタンス装置(超コンデンサと呼ばれる)は、軍事使用のために商業的に開発されてきたが、構成要素である希土類酸化物(RuO)及び他の金属のコストのため非常に高価である。
【0007】
市販のEDLCは、例えばハイブリッド車などの用途には現在高価すぎるし、エネルギー密度が不十分である。PC(pseudocapacitor:擬似キャパシタ)は、その様な用途には更に高価すぎる。両方の電荷貯蔵機構が両方の型式のコンデンサ内で共存することができるが、現在の市販の装置では、どちらかが優勢である。2つの機構をコスト効率よく大規模に1つの装置内で結合することができれば、装置は、パワーキャパシタとバッテリーの両方の特性を有することになり、ハイブリッド電気自動車の様な用途に、大きな市場を見出すことができるであろう。
【0008】
望ましい高い作動電圧で有機電解質とともにEDLC作用をするのに適した高表面積炭素材料を作る幾通りかの取り組みが始められている。これらには、二酸化炭素、蒸気、又は空気を使った物理的活性化、例えばKOH、NaOH、又はHPO、炭素エーロゲル、各種テンプレーティング法、及び炭素ナノチューブ又は同等物を使った化学的活性化が含まれる。
【0009】
物理的及び化学的活性化の両方ともが2種類の表面を作ることは証明されている。従来、殆どの表面の強化は、不規則なグラフェン(graphene)微結晶(又は同等物)の炭素のミクロ構造によって生じる既存のミクロ孔を拡大することによって得られると考えられてきた。通常の6員環(グラファイト、ベンゼン)だけでなく5及び7員環の構成でSP結合が存在しているので、多くの炭素の実際のミクロ構造の中に入っているグラフェンは驚くほど少なく、従って、曲がりを誘発する。最新の概要については、Harrisの「Critical Reviews in Solid State and Mat. Sci. 30:235−253(2005)」を参照されたい。従って、それらは、前駆物質の炭素が、KYNOL(商標)(ニューヨーク州プレザントビルのAmerican Kynol社から販売されている)の様な例えばフェノールノボロイド樹脂など、非常に規則的なポリマーであっても、ミクロスリット細孔としては、殆んど含んでいない。「Proceedings of 8th Polymers for Advanced Technology International Symposium in Budapest 11−14 Sept.2005」を参照されたい。非常に曲がりくねった内部細孔構造は、炭素のサブユニットを腐食して活性化させることによって広げられ、或る寸法を超えると、溶媒和イオンが中に入って内部細孔表面の少なくとも一部分を二重層キャパシタンスとして使用できるようになる。「J.Phys. Chem. B105(29)6880−6887(2001)」を参照されたい。これらの細孔は、少なくとも全ての乱層状の非黒鉛化炭素では、ランダムに分布している。ランダム性は、X線結晶学で容易に示される。Harrisの「Critical Reviews in Solid State and Mat.Sci.30:235−253(2005)」を参照されたい。
【0010】
炭素のナノ粒子は、活性化されたミクロ細孔が集中することによって砕けるか、又はエッチングされるので、第2の種類の表面は付加された外部表面である。これらの形状は、直径が10nm未満(個々の炭素サブユニットのピッチング破壊)から100nm未満(サブユニットが凝集破壊)になる傾向があり、破片は、大きな炭素粒子(通常、直径数ミクロン)の外部表面を「装飾する」凝集体を形成する傾向がある。「DOE Project DE−FG−26 03NT41796,June2005」を参照されたい。同様の炭素「装飾」ナノ粒子は、化学的活性化に観察されてきた。「J.Electrochem.Soc.151(6)E199−205(2004)」を参照されたい。結果として、相当量の外部表面は、単純に割れとピッチング破壊から生まれる粗さによって生じ、IUPACの皺の定義に従って定量化することができる。この皺は、極めて実質的なものとなり得て、グラム当たり表面が百平方メートルを越えることもあり、二重層の総キャパシタンスに相当に貢献している(通常、ほぼ全てから三分の一までの範囲)。「J.Power Sources154(2006)314−320」を参照されたい。外部炭素表面は、STMとTEMを使って顕微鏡写真が撮られており、活性化されていない炭素前駆物質に勝る多くのひだ増加を示している。「Proceedings of 8th Polymers for Advanced Technology International Symposium in Budapest11−14Sept.2005」を参照されたい。長年に亘り、内部ミクロ/メソ細孔を有していない「化学的に粗された」金属電極が、皺を、30(金)から100(アルミニウムの低電圧電解質コンデンサ「利得」)ひだも増やすことは知られている。ケースウエスタンリザーブ大学イエーガー電気化学センター(YCES)のElectrochemistry Encyclopedia maintained by the Electrochemical Science and Technology information Resource(ESTIR)(www.electrochem.cwru.edu)に所蔵されている「J.Electroanal.Chem.367:59−70(1994)」及び「Electrolytic Capacitors(Brian Conway著,University of Ottawa,2003)」を参照されたい。
【0011】
その様な皺の多い炭素外部表面は、従来の物理的又は化学的活性化によって自己再生することになり、従って、自己制限することになる。ナノ粒子の炭素サブユニット集塊の剥離と、個別炭素サブユニットレベルでの残った表面のピッチングは、両方共に、前の段落で直接的に描写して言及することにより論証したが、それを超えて更に剥離又はピッチングが生じても、実質的に古い表面と同等の新しい表面にしかならない程に皺が最大の状態に到達する。単純な例えとして、礫浜から1つの石を、又は1枚のサンドペーパーから1つの砂粒を取り除いても、礫浜又はサンドペーパー表面の全体を実質的に変えることにはならないのと同様、前と同じく皺が多いままである。その様な表面でも、塊及び個々のサブユニット自体が活性化の影響を受けるときには、高度な活性化によって皺が少なくなる可能性がある。外面の皺の自己再生の実験的な証明は、市販の炭化したカイノール(KYNOL)を、30%の蒸気/窒素内で、900℃で、15分から1時間活性化させ、でき上がった外部表面を、標準的なBETの等温吸着式、DFT等温線、及びSEM画像を使って検査することによって(ここに開示されているメソ多孔質炭素を活性化させる方法までの研究の過程で)得られた。先行炭化カイノールは、ミクロ多孔率が非常に限定されているので、その後に活性化させるのは難しいことが知られている。従って、1時間活性化させても、活性化による影響を受けたカイノール炭素は、13ミクロン(μm)の直径の材料へ500ナノメートル以上には伸長しなかった。15分で得られた表面は、110.6平方メートルであり、4.6から7.2%の質量損失だったが、1時間で得られた表面は、112.2平方メートルであり、8から10%の質量損失だった。質量損失がほぼ2倍で活性化時間が4倍の後では、それがほぼ理想的な表面である。2つの表面は、20,000倍に拡大すると、見た目には同様であり、平均すると直径が100nm未満で深さが少なくとも100nmの剥離を示している。実験に用いられたSEMマシンによる拡大は、剥離の中の表面のピッチングを、TEMとSTMを使った他者の実験によって撮像された様な5−10nm程度で解像するには不十分であるが、メソ及びマクロ多孔率のDET推定値は、それらが存在することを示唆している。
【0012】
少なくともある種の炭素では、外部表面は、内部細孔表面の1平方メートルの表面当たりのキャパシタンスの数倍貢献できることが知られている。「Electrochimica Acta41(10)1633−1630(1966)」を参照されたい。これは、2つの基本的な理由で意味を成す。第1は、内部メソ細孔へ接近できる確率である。細孔は、或るランダムな寸法分布で存在しているが、活性化と共に、分布の頂点は大きな細孔側へ移行し、分布形状も変化する。例えば、「Electrochimica Acta 41(10)1633−1630(1996)」と、「J.Electrochem.Soc.149(11)A1473−1480(2002)」及び、「J.Electrochem.Soc.151(6)E199−E205(2004)」を参照されたい。通常は、実質的な分布の大部分は2nm未満のミクロ細孔に留まっており、高度に活性化させても、幾らかは1nm未満の細孔を含んでいる。有機電解質中の溶媒和イオンの寸法は、塩と溶剤次第で、直径が約11.9から16.3乃至約19.6オングストロームの範囲にある(「J.Electrochem.Soc.148(8)A910−914(2001)」及び「Carbon 40 2623−2626(2002)」を参照されたい)ので、これらのイオンは、介在するミクロ細孔によって遮断又は篩い分け(分子篩い分け)されて、キャパシタンスのために内部メソ細孔表面に接近するのを阻止されることになる。2つの溶媒和電解質イオンの内の一方が上手く篩い分けされず、他方はほぼ完全に篩い分けされるイオンの篩い分けは、水性電解質(「J.Phys.Chem.B2001,105(29)6880−6887」参照)と、有機電解質(「Carbon 2005,43:1303−1310」参照)の両方で良く例証されている。大きな(篩い分けされた)イオンは、二重層キャパシタンスの動力学的制御になる。臨界寸法を下回る細孔はいずれも、全ての細孔表面の内部を、そこを通過すれば接近できるポイントまで遮断(選別又は篩い分け)し、従って、接近できる確率は、見方によれば細孔の分布に確率的に依存して、深さと共に低下する。従って、介在する一般的な細孔構造を介して内部メソ細孔に接近できる確率は、細孔寸法の分布(厳格な組み合わせ確率論理)、及び細孔が相互接続を増やす度合い(浸透の論理)の一次関数である。最も活性化された炭素細孔の寸法分布では、かなりの割合は溶媒和電解質イオンの通過を妨げる篩い分け細孔であり、従って、細孔内部表面の大部分には、確率的には接近できない。実験が証明する様に、篩い分け孔を含んでいない例外的な材料は、又、それらの炭素表面及び電解質システムの理論的最大値又はその非常に近くの、例外的な二重層のキャパシタンスを示す。水酸化カリウム電解質中の活性化電気紡糸パーオキシアセチル・ナイトレート(PAN)に関しては「Applied Physics Letters 2003,83(6):1216−1218」を、水酸化カリウム中の単一壁の炭素ナノチューブに関しては「Adv.Funct.Mater.2001,11(5):387−392」を、硫酸内の炭化PVDCコポリマーに関しては「J.Electrochem.Soc.2002.149(11):A1473−1480」を、及び、硫酸で剥脱した炭素繊維に関しては「Carbon 2003,41:2680−2682」及び「ABST642、206th meeting of the Electrochemical Society」を参照されたい。
【0013】
皺の多い外部表面の実質的且つ相対的に不変の貢献に関する直接的な実証は、ゼロから外部以上にまで変化する(ただし、炭素の活性化、平均的細孔寸法、及び電解質に依存)接近可能な内部メソ多孔率の付加的貢献とともに、19Fの核磁気共鳴を使って既に得られている。外部表面と内部多孔率の相対的貢献は、区別できる。EDLC炭素は、プロピレンカーボネート溶剤中のトリエチルメチルアンモニウムフルオロホウ酸(TEMA/BF)塩を電解質システムとして使って評価された。アニオンBFの内部多孔部のイオン群〔従って、容量での貢献〕は、炭素平均細孔寸法0.89nmでのゼロから、炭素平均細孔寸法1.27nmでの総量の約半分、炭素平均細孔寸法1.64nmでの総量の約3分の2まで変化した。Ikeda(旭硝子株式会社、研究センター)の「16th International Seminar on DLC,5December2006」とYamada他の「Denki Dagaku,spring2002」を参照されたい。
【0014】
皺を多くして増すことのできる炭素粒子の実際の外部表面と、活性化によって増すことのできる内部細孔の内の接近可能な割合を組み合わせた貢献を、発明人は類似的外部と称してきた。真の外部に合理的に類似しており、従って、篩い分けのために電解質が接近できないというよりはむしろ、接近できるという合理的な確率を有する内部細孔だけが、キャパシタンスに対して或る程度それらの表面を提供することができる。この画期的であるが単純な洞察は、以下に示すように、数学的にモデル化することができ、全様式の活性炭素の実際のEDLCの性能を概算するのに用いることができる。
【0015】
内部メソ細孔が問題含みであるという第2のより微妙な理由がある。溶媒和電解質イオンが、十分に大きな一連の絞り(孔隙と孔隙の間の開口部)を通って接近することができたとしても、キャパシタ手段を充電するために一旦電界を加えた吸着ヘルムホルツ層の堅い組織は、全ての絞りがヘルムホルツ層の大きさの約2.5倍から3倍より大きくなければ(つまり、細孔のそれぞれの側に少なくとも1つの吸着された溶媒和イオンと、加えて、更なる溶媒和イオンが、更なる質量移行のために間を通過するための空間)、それ以上の電解質が内部に拡散できない。溶媒和イオンの直径の関数としての実際の最小絞りは、細孔の形状によって変わり、球体と等価な位相幾何学的パッキングの単純な結果として、円形の絞りでは3.0であり、方形の絞りでは2.43である。Weissteinの「CRC Concise Encyclopedia of Mathematics,2nd Ed.」とWeissteinの「MathWorld(Wolfram Research,Inc)」を参照されたい。構成要素である溶媒和イオンは1から2nm程度なので、約3から6nmより小さな絞りは、電解質によっては「詰まる」ことになる。最も単純な炭素のナノ発泡体又はそれらと等価な球体のシリカテンプレートの場合を考えてみる。ORNL(オークリッジ国立研究所)及びLLNL(米国国立研究所)が提供している顕微鏡写真と市販の供給元は、球体の細孔の「バブル」は、それらの間に、細孔自体の直径の約5分の1であり、「バブル」が接触する場所に作られたオリフィス又は絞りを有していることを一様に示している。米国特許第6673328号と、「Langmuir 2002,18(6):2141−2151」を参照されたい。直径が30nm未満のその様な細孔は、非プロトン性の電解質とともに充電されると、その絞りが詰まる。20nm未満のその様な細孔は、殆どそうなる。一旦充電電圧が加えられると入るのが更に難しくなるので、既にそのポイントの内部に入っている電解質イオンだけが、キャパシタンスに貢献することができる。球状の細孔は、容積を最大にして、表面を最小にするので、最適であり、従って、最も多い溶媒和イオンが入ることになり、その結果最大のキャパシタンスになる。このプロセスの合理的で正確な数学的モデルは、解析幾何学と、0.74のケプラー限界における球体の理想的なパッキング密度(電解質内のイオンを真の溶媒和球体と想定している)と、ランダムにパッキングされた球体細孔のケージング、接点、及び接触数を使って構築されてきており、絞りの最終的な数及び相対寸法について、顕微鏡写真に基づいて概算する。20nmの球体細孔では、最大表面カバレッジでは、必要な溶媒和イオンの107%しか入っておらず(1モル濃度のアセトニトリル(AN)溶剤中の標準的なEtN BF塩を使って計算される)、15nmの球体の場合は80%しか有していない。10nmの球体は、必要なイオンの53%しか有しておらず、8nmの球体の場合は43%しか有していない。これは、充電すると、絞りが封鎖され、有効表面が失われるために、局所的空乏状態になる。それは、大部分のテンプレート型炭素のコストが非常に高いにもかかわらず、比キャパシタンスは残念ながら低いということを説明している。ほぼ球体の細孔構造を有するテンプレート法炭素の場合、数学的モデルは、非プロトン性及び水性の両方の電解質で、驚異的な実験結果をほぼ正確に再現する。例えば、Fuertesの「Electrochimica Acta 2005,50(14):2799−2805」を参照されたい。
【0016】
活性炭素(物理的又は化学的活性化の何れか)は、内部細孔表面に関して篩い分けと空乏化の両方の問題を有しているので、それらの外部粒子表面は、比べ物にならないほど重要である。例えばエーロゲル又はテンプレートなどの炭素材料は、より大きくて均一な細孔寸法分布を備えることにより、接近の確率を実質的に解決するが、多くの表面は、帯電すると局所的空乏状態になり、内部表面を一杯に利用することができなくなる、絞りの制約を有している。
【0017】
Kyotaniは「Carbon(2000)38:269−286」で、メソ多孔質炭素を得るのに有効な方法を要約している。Lee他は、「Chem.Commun.(1999)2177−2178」で、電気化学二重層コンデンサでの使用のためのメソ多孔質炭素フィルムについて述べている。例えば日本のクラレ(BP20)、韓国のKansai Coke(MSP20)、又はMeadWestvaco(バージニア州グレンアレン)などの供給元から供給されている電気炭素(electrocarbons)の大部分は、従来の物理的又は化学的活性化を使用している。EDLC電気炭素用の化学的活性化の1つの例が、水酸化カリウムである。米国特許第5,877,935号と、市販のメソピッチのKOH活性化に関しては「Carbon 2002,40(14)2616−2626」と、及びPVDCのKOH活性化に関しては「J.Electrochem.Soc.2004,151(6):E199−E2105」を参照されたい。しかしながら、これらの炭素は、30−35F/g(2電極セルベース)のキャパシタンス、又は120−140F/g(3電極の標準システムベース)の比キャパシタンスを発生する。それは、キャパシタンス(3電極基準ベース)が100から140F/gで、BET表面積が約1500から2000平方メートルの、最良の従来型の物理的に活性化された炭素と、はっきり認識できるほど違ってはいない。「Reports of Res.Lab.Asahi Glass Co LTD,2004,54:35」は、ホンダ自動車向けの実験的なウルトラキャパシタの開発について報告している。ホンダ自身は、クラレとの連係の中で、米国特許第6,660,583号に基づく前駆物質メソピッチを使った米国特許第5,877,935号に基づく活性化によるKOH活性メソピッチの商業的な導入を宣言した。この材料は、2電極電池では40F/gまでを有し、3電極基準システムで約160F/gの比キャパシタンスを有するのと等価であると報告されている。しかしながら、これは、単純な物理的活性化より高価であり、観察される電荷の一部分は、インターカレーション擬似キャパシタンス(リチウムイオンバッテリー内と同様)から生じ、サイクル寿命の限界を導入する可能性がある。2006年7月17−19日の「Advanced Capacitors World Summit」での、ホンダ材料に関するFujinoの論文(speaker10、slide12)を参照されたい。
【0018】
第2の方法は、様々な形状の炭素エーロゲルであった。米国特許第5,626,977号を参照されたい。しかしながら、二酸化炭素、イソプロピルアルコール、又は極低温抽出(フリーズドライ)の何れかによる超臨界乾燥処置は、これらの炭素を比較的高価にしているが、せいぜい適度に性能が改良されているだけである。(「J.Appl.Polym.Sci.2004,91:3060−3067」及び、Smith(U.S.Naval Surface Warfare Center)の「Proceedings of the 16th International Seminar on DLC4−6 December 2006 pp277−284」を参照されたい)。炭素エーロゲルは、普通は、表面積が約400から700平方メートルの間に限定されるが、この表面の多くは、電解質が接近できるものである。細孔分布次第で、相当な部分(半分超)が局所的窮乏化を被りかねない。活性化して、水性の電解質であっても、最良の炭素エーロゲルは、従来の物理的活性炭素と実質的には変わらない。「J.Power Sources,2002、105:189−194」を参照されたい。
【0019】
第3の方法は、或る種のテンプレート又は構造を使って、適した寸法と接続形状の細孔を形成することである。1つの方法は、例えば米国公開特許第2004/0091415号に記載されている様な、種々のタイプのアルミノ珪酸塩のナノ粒子を使用している。これらは、テンプレートを調製し、最後に、普通はそれをフッ酸中に溶かすことによって取り除くので、現在はエーロゲルより高価である。これらの炭素の多くは、硫酸水溶液内では期待はずれのキャパシタンスを示しており、より大きな溶媒和イオンを有する有機電解質では言うまでもない。「J.Mater.Chem.2004,14:476−486」の韓国の実験報告に関するHyeonの概括を参照されたい。この方法による最良の実験炭素の1つは、平均8nmのアルミノ珪酸塩テンプレートを使用しており、この炭素は、TEA/AN電解質でBET表面が1510mであったにも関わらず、残念ながら90F/gの比キャパシタンスを達成しており、それは、絞り制約と局所的空乏化で完全に説明することができる。「Electrochimica Acta 2005,50(14):2799−2805」を参照されたい。
【0020】
もう1つの方法は、カーバイド粒子を使用し、金属は、後で高温の塩素又はフッ素によって溶出されるもので、例えば「Electrochem.and Solid State Letters 2005,8(7):A357−A360」及びArulepp他の「J.Power Sources(2006)」(印刷中)に記載されている通りである。このカーバイド法(PCT/EE2005/000007に記載)の1つの変形によって作られた炭素は、比キャパシタンスが115から122F/gであった。「Proceedings of the 15th International Seminar on Double Layer Capacitors Dec5−7,2005,pp.249−260」を参照されたい。同様の方法を使った別のグループは、135F/gを達成したが、いくらかのインターカレーション擬似キャパシタンスが伴っていた。「Electrochemical and Solid State letters2005,8(7):A357−A360」と「J.Power Sources 2006,158(1)765−772」を参照されたい。一般的には異常と思われている、推定では1nm未満の細孔で二重層キャパシタンスを可能にする、例外と言われていること(Chmiola他の「Science Express,17 August 2006 page1(10.1126/science.1132195,the immediate online publication service of the Journal Science (www.scienceexpress.org))」を参照されたい)は、粒子の皺によって、簡単且つ完全に説明され、材料の内部のミクロ孔は、実際にはキャパシタンスには全く貢献しない。むしろ、前駆物質の粒子は並外れて小さく、直径が1から3ミクロン(μm)なので、所与の体積の材料では不釣合いなほど外部表面が大きく、従って、飛び抜けた近接外面を有する。下記の例4を参照されたい。
【0021】
更に別の方法は、界面活性剤ナノミセルを使用している。米国特許第6,737,445号に従って作られたTDA炭素は、「2002 National Science Foundation Proceedings」で僅かに81F/gから108F/g(局所的空乏化のため)を有することが報告されており、事実上の連邦資金支援にも関わらず、商業的量に達するのは難しいことが証明された。関連する方法は、前駆物質の炭水化物溶液のナノミセル脱水に続いて、熱処理を使用している。でき上がった電気炭素は、1500を越えるBET表面を有しているが、比キャパシタンスは僅かに約94F/gから97F/gである。その利点は、安価で化学的に純粋な前駆物質(砂糖)を使用していることである。米国公開特許第2005/0207962号と、「Advanced Capacitors World Summit2006」で報告されているMeadWestvacoの最終的な比キャパシタンス(「speaker20、slide14」)を参照されたい。
【0022】
更に別の方法は、米国特許第6,503,382号による炭素電気堆積で液体結晶材料を使用している。しかしながら、これらの炭素は、比較的大きな細孔を有する薄いフィルムであり、そのため表面積とキャパシタンスが制限されるという欠点を有している。
【0023】
更に別の方法は、単一壁又は多重壁の何れかで、個別に成長して絡まった繊維材料として適用されるか、又は原位置で垂直整列方式で成長するかの何れかである、或る形態のカーボンナノチューブ(carbon nanotube)(フィブリルとしても知られている)を使用する。個別のフィブリルから作られた電極の例は、米国特許第6,491,789号である。別の例は、米国特許第6,934,144号である。垂直整列炭素ナノチューブ超コンデンサは、フォード自動車社の支援を受けて、特にMITによって研究されている。絡まったCNTは、2つの深刻な欠陥を有している。第1に、この材料は、キログラム当たり40ドルから100ドルの電気炭素に比べて、グラム当たり数ドルと非常に高価である。第2に、この材料は、ダイヤモンドの弾性ヤング率とほぼ等しい約1200(非常に堅い)であり、従って、密度を上げ、非常に細い繊維によって提供される表面を最大限に利用するのは極めて難しい。驚くことではないが、Frackowiak他は、多重壁の炭素ナノチューブの「絡み」から作られたメソ細孔を使ったELDC装置が、多重壁の炭素ナノチューブの密度と後処理(更なる高密度化)に大きく依存するが、水性電解質内で4から135F/gの幅広い範囲のキャパシタンスを有することを報告している。「Applied Phyしcs Letters,Oct9 2000,77(15):2421−2423」を参照されたい。最大の報告されたキャパシタンスは、活性炭素ほどではない。「J.Mater.Chem.2005,15(5):548−550」を参照されたい。真空中でCVDを使って原位置で成長した垂直整列CNTは、ヤング率のパッキング問題を克服しているが、個々のナノチューブ間の間隔が広いため、グラム当たり約500平方メートルのBET表面を達成したに過ぎず、現在の半導体様の製造技術では、非常に高価であると同時に容積が少ない。「MIT report paper number2,16th International Seminar on DLC,pp15−22」を参照されたい。他にも、コストを下げるために、例えば、米国特許出願第2005/0025974号では、炭素ナノチューブの相当物として炭化した電気紡糸繊維を使って研究してきたが、電気紡糸は、未だに、商業的な量の炭化可能な繊維を作ることができない。他に、例えば、米国特許第6,697,249号では、フィブリル構造を持たない多孔質炭素材料の原位置蒸着が検討された。
【0024】
他にも、従来型の物理的活性化の間にメソ多孔率を高めるため触媒を使用する試みが行われている。Oya他は、「Carbon(1995)33(8):1085−1090」で、コバルトアセチルアセトネートをフェノール樹脂及びメタノール溶剤と混ぜ合わせ、次に、大きな直径の繊維を紡ぎ、硬化させ、炭化させ、活性化させて、従来の活性化と比べて適度な表面積の炭素繊維を得たが、コバルトによって生成された幾つかの大きな(数十nm)メソ細孔が、圧倒的多数のミクロ孔と共に含まれていた。これらの実験では、コバルトを混ぜ合わせた材料で得られた最高総表面は、コバルトを混ぜ合わせない場合は1900平方メートル/グラムもあるのに比べて、1000平方メートル/グラム未満と低い。メソ細孔の総表面の総表面に占める割合は、40%バーンオフの最良の場合でさえ27%(僅か170平方メートル/グラム)を超えなかった。Oyaは、活性化された繊維は、内部炭素材料の触媒による黒鉛化のために非常に脆くなるので、問題があることを発見した。Oyaは、彼のプロセスから生じるコバルト粒子の寸法については、殆ど何も観察されなかったので、考慮も報告もしなかったが、これは、溶液中の有機金属と溶けているフェノール前駆物質樹脂が混合するという分子の性質によるものである。
【0025】
Hong他は、「Korean J.Chem.Eng.(2000)17(2):237−240」で、既に活性かされている炭素繊維の、更なる触媒ガス化による第2活性化について述べている。Hongは、僅か11.9%のメソ細孔で1711平方メートル/グラムの表面積(大部分が2nm未満のミクロ細孔)を有する、通常の市販されている活性炭素繊維を使って着手した。彼は、溶液に浸して被覆されたコバルト塩化物の前駆物質を用いて、コバルトが入っていない同等の第2活性化の場合の約23%に比べて、56%ものメソ細孔量を有する材料を触媒によって生成した。しかしながら、追加されたメソ細孔寸法の分布は、約2nmにピークがあり、約4nmを上回るメソ細孔の割合には、認識できる差異はなかった。従って、総表面積は、コバルト無しの第2活性化後の1780平方メートル/グラムに比べて、1984平方メートル/グラムに増えたに過ぎない(2nmメソ細孔の200平方メートルの増加)。Hongは、Oyaの結果とは違って、脆さが増していないことを具体的に発見した。Hongは、彼のプロセスによって形成されたコバルト粒子の寸法を考慮も報告もしなかったが、幾らかでも形成されていれば、彼のデータの最終的なメソ細孔分布で、2nm以下となったはずである。
【0026】
Tamaiと同僚は、前駆ピッチと共に溶けている希土類酸化物の前駆物質を使用して、メソ多孔質活性濾過炭素を作る方法を開発した。「Chem.Mater.1996,(8)454−462」。彼のグループは、その後この方法を使ってEDLC電気炭素を調べた。Tamaiは、3%までのイットリウムアセチルアセトネートを、ポリビニルジエン塩化物(PVDC即ちサラン)/アクリロニトリル又はメチルアクリレートコポリマーと共に、テトラヒドロフラン(THF)溶剤内に溶かし、でき上がった炭素化合物を高度(70%のバーンオフ)に物理的(蒸気)活性化させることによって、4nmから7.5nmにピークを有するメソ細孔分布を作ることができることを発見した。「Carbon41(8)1678−1681(2003)」を参照されたい。PVDCコポリマーは、活性化前の炭化多孔率が格別高く、細孔分布が良好に特徴付けられており、活性化しなくても硫酸電解質内でキャパシタンスが高いので、望ましいEDLC炭素前駆物質として日本で良く研究されてきた。例えば、「J.Electrochem.Soc.149(11)A1479−A1480(2002)」と「J.Electrochem.Soc.(2004)151(6):E199−E205」を参照されたい。Tamaiの最良の結果であるイットリウム触媒を使った炭素は、驚くことに、34から35F/gのキャパシタンス(2電極電池)、即ち、3電極基準システムでは136から140F/gの比キャパシタンスと等価なキャパシタンスしか有しなかった。格別に高いメソ細孔分布に関する従来の知識を前提にすればこの驚くほど残念なEDLC結果に対する説明は、既に述べた。Tamaiのプロセスが材料内に細孔を形成したので、でき上がった内部メソ細孔は、活性炭素の内部接近の確率問題を有しており、従って残りの篩い分けミクロ細孔の割合を前提にすれば、かろうじて接近できるだけである。内部メソ多孔率の多くは、確率的には有効でなく、残りの殆どは、局所的空乏化に曝される。大部分のEDLCは、近接外面から生じ、材料がドープ処理されていてもいなくても実質的に変わらない。
【0027】
内部に作られた触媒メソ細孔に接近できない別の例として、Oyaと同僚達は、THF溶剤中のニッケルアセチルアセトネートを前駆物質のフェノール樹脂に0.1重量%の濃度で混ぜ合わせたものを使って、Tamaiの一般的な方法を行った。炭化と蒸気活性化によって、彼らは、非常に大きなメソ細孔(幾つかの材料は平均的細孔半径(直径ではない)が10nmを超えている)を有する或る範囲の活性炭素繊維を生成した。しかも、でき上がった材料は、ニッケル無しで同様に作られて活性化された炭素繊維より僅かに良いだけであった。リチウム過塩素酸塩/プロピレン炭酸塩電解質内で、キャパシタンスは約80から約100F/gの範囲にあり、総表面は、約1000平方メートルから約1700平方メートルまで広がった。「J.Electrochem Soc.2002,149(7):A855−A861」を参照されたい。
【0028】
EdieとBesovaは、金属アセチルアセトネート又は他の金属塩を細かく砕き、それらを前駆物質のメソピッチと混ぜ合わせ、粒子が入った繊維を溶融紡糸し、それから繊維を炭化させて、活性化させた。彼らは、有機金属材料が、約10nmから約100nmの範囲のナノ粒子を形成し、活性化中に、これらの粒子は、材料全体に虫食い穴に似た大きなチャネルをエッチングし、その幾つかは、表面まで達していることを発見した。その様な粒子とチャネルは、SEM顕微鏡写真で容易に見ることができるほど大きかった。これらのチャネルは、大幅に水素を貯蔵し易くした。しかしながら、これらの粒子は、電気炭素に最適な粒子より大きく、数が比較的少なく、非常に高度な活性化(55%のバーンオフ)を必要とし、炭素表面をグラム当たり100平方メートル増やしたに過ぎない。様々な有機金属及び金属塩とそれらの組み合わせは、様々な細孔分布と総表面積を作り出した。しかしながら、報告された材料は、全て、内部メソ細孔への接近を阻止する篩い分けミクロ細孔を或る割合で含んでいる。「Carbon2005,43(7):1533−1545」を参照されたい。従って、この方法は、EDLCの様な電気化学用途に対し有効なメソ表面を十分に強化するものではない。
【0029】
Trimmel他は、「New Journal of Chemistry 2002、26(2):759−765」で、様々な有機金属前駆物質から、前駆物質の状態を変えることによって、シリカ内及びシリカ上に、平均直径が3nmの小さいものから数nmまで様々な、ニッケル酸化物ナノ粒子を作った。Parkと同僚達は、この場合もプロセス条件を変えることによって、前駆物質の有機金属から、2nmから7nmの範囲の自立ニッケルナノ粒子を作るためのプロセスを示した。「Adv.Mater.2005,17(4):429−434」を参照されたい。日本の組織NIRE(資源環境技術総合研究所)は、1997年と1998年に年次報告書で、彼らの石炭研究者が、THF内に溶けている有機金属の金属アセチルアセトネートを使って、粒子状褐炭を被覆し次いで溶剤を瞬間的に蒸発させるだけで、直径が約5から10nmの範囲の様々な金属酸化物ナノ粒子を形成することができたことを報告した。これらのナノ粒子は、その後、蒸気活性された石炭内のメソ細孔に触媒作用を及ぼし、潜在的なメソ多孔質濾過炭素を作った。「Energy and Fuels 11 327−330(1997)」を参照されたい。これらの研究者は、近接外面の論理を欠き、内部のメソ細孔を理想的には2から3nmよりそれほど大きくならないように最大にすることに関する従来の知識に従ったために、電気炭素に潜在的に密接に関係しているとは考えなかった。以上の議論、並びに改良された電気炭素を発見するための多くの現在の研究努力から、これらの本質的な物理的限界を克服する優れた炭素材料が、大きな満たされていない要求であることは明らかである。
【特許文献1】米国特許第3,288,641号
【特許文献2】米国特許第6,491,789号
【特許文献3】米国特許第6,737,445号
【特許文献4】米国特許第6,673,328号
【特許文献5】米国特許第5,877,935号
【特許文献6】米国特許第6,660,583号
【特許文献7】米国特許公告第2004/0091415号
【特許文献8】PCT/EE2005/000007
【特許文献9】米国特許第6,737,445号
【特許文献10】米国公告第2005/0207962号
【特許文献11】米国特許第6,503,382号
【特許文献12】米国特許第6,491,789号
【特許文献13】米国特許第6,934,144号
【特許文献14】米国特許出願第2005/0025974号
【特許文献15】米国特許第6,697,249号
【特許文献16】米国特許第5,963,417号
【特許文献17】米国特許第6,627,252号
【特許文献18】米国特許第6,631,074号
【特許文献19】米国特許第5,990,041号
【特許文献20】米国特許第6,024,899号
【特許文献21】米国特許第6,248,691号
【特許文献22】米国特許第6,228,803号
【特許文献23】米国特許第6,205,016号
【特許文献24】米国特許第5,488,023号
【特許文献25】米国特許公告第2004/0047798A1号
【特許文献26】米国特許公告第2004/0024074A1号
【特許文献27】米国特許公告第2004/0091415A1号
【特許文献28】米国特許出願第2004/0097369号
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【非特許文献67】Electrochem.Solid State Letter2002,5(12)A283−A285
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【非特許文献71】Science Express 17 August 2006,page1
【非特許文献72】Smith、Proceedings of the 16th International Seminar on DLC pages 277−284
【非特許文献73】Walmet(MeadWestvaco)、Proceedings of the 16th International Seminar on DLC page139
【非特許文献74】Walmet、Proceedings of the 16th International Seminar on DLC at 139−140
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定められるのであって、この発明の開示に記載されていることによって何ら影響を受けるものではない。
【0031】
本発明の1つの実施形態は、近接外面が強化されているメソ多孔質炭素を調製する方法であって、少なくともミクロン(μm)寸法の炭素粒子を準備する段階と、粒子に有機金属の前駆物質又は何らかのやり方で誘導された金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子を被覆する段階と、ナノ粒子が粒子の表面にメソ細孔を選択的にエッチングするように炭素粒子を活性化する段階と、を含んでいる。これらのメソ細孔は、粒子の外部から内部に形成されており、外部表面の皺を増やして幾重にもし、最小閾値を超えた場合には、開口を有していないがための充電されたときの局所的空乏化をされることなく、隣接する規則的に活性化された細孔に接近できる確率を改善する。近接外面も増やす。
【0032】
本発明の別の実施形態は、有機金属の前駆物質又は何らかのやり方で誘導されたナノ粒子を、溶融紡糸ピッチ繊維、ポリマー繊維、又は、例えば出来上がったままの生のPVDCなどの重合粒子の様な炭素前駆物質の上に被覆し、活性化の前に炭素前駆物質を炭化して、近接外面が増大した材料にすることである。
【0033】
本発明の別の実施形態は、本発明のメソ多孔質炭素粒子を、望ましくは被覆及び活性化の前に、最終的に望む形状及び寸法分布になるまで更に粉砕することである。ここで用いる「本発明のメソ多孔質炭素材料」は、本発明の方法により形成されるメソ多孔質炭素粒子、又はそこから粉砕されるメソ多孔質炭素粒子のことを指す。
【0034】
本発明の別の実施形態は、結合剤と、本発明のメソ多孔質炭素材料を含む層を更に形成することである。
【0035】
本発明の別の実施形態は、複数の本発明のメソ多孔質炭素材料を含む炭素の粉末である。
【0036】
本発明の別の実施形態は、結合剤と、本発明のメソ多孔質炭素材料を含む材料である。
【0037】
本発明の別の実施形態は、電流コレクタと、電流コレクタと電気的に接触している本発明のメソ多孔質炭素材料とを含む電極である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、本発明のメソ多孔質炭素材料を含むコンデンサである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
詳細に設計されたメソ多孔質の活性炭素材料が見つけ出され、ここに説明される。本材料は、二重層のコンデンサ又は燃料電池、バッテリー、及び他の電気化学用途で使用するのに特に良く適している非常に大きな近接外面メソ表面を有しており、平均直径が2nmを超えるナノ粒子を使った触媒活性化が関わる方法によって調製することができる。ここに記載している調製方法は、炭素材料の皺、細孔の形状、及び近接外面を制御し、接近の確率と、他の炭素材料の局所的な空乏化限界の両方を解決する。皺が増やされた活性炭素、従来の活性細孔、及び本発明による構造は、限定するわけではないが、電気二重層コンデンサ、或る種のバッテリー電極、及び燃料電池電極を含む特定な用途に合わせて特別に作られた比較的高い近接外面特性を有している。更に、或る種の金属酸化物触媒ナノ粒子を追加することによって、これらの材料は、活性炭素表面からのヘルムホルツ層のキャパシタンスに加えて、選択された金属酸化物から、或る種の電解質による擬似キャパシタンスに随意的に貢献して、ハイブリッドコンデンサ電池のエネルギー密度を高めるという、コンデンサにおける更なる利点を有する。
【0040】
この説明と特許請求の範囲を通して、以下の定義を理解されたい。
【0041】
「炭素」に関連して用いている「メソ多孔質」という用語は、細孔寸法の分布で、全細孔容積の少なくとも約30%が、標準的なIUPAC定義で、約2から約50nmの寸法を有している細孔寸法の分布のことである。従来の活性電気炭素では代表的なメソ細孔の割合は、下は5%から上は22%のメソ細孔の範囲に亘っていることもある。Walmet(MeadWestvaco)の「16th International Seminar on DLC」を参照されたい。
【0042】
炭素に関連して用いている「触媒により活性化された」という用語は、その多孔質の表面のことで、メソ細孔が、触媒によって制御された活性化差異(例えば、エッチング)プロセスによって、炭素粒子又は繊維の外部表面から内部に向かって導入されているものを指す。或る実施形態では、選択された平均寸法の金属酸化物粒子が適した触媒として作用し、金属酸化物の少なくとも一部分は、活性化処理後も、炭素内又は炭素上に残る。
【0043】
ポリマーと炭素に関連して用いている「粒子」という用語は、例えば、米国特許第5,877,935号に記載されている、従来は物理的又は化学的活性化の前に調製される様な、通常は直径が約1ミクロンから約100ミクロンの前駆物質材料の分布を指す。
【0044】
ポリマーと炭素に関連して用いている「繊維」という用語は、従来型の溶剤又は溶融紡糸プロセス、又は、例えば電気紡績の様な従来型でない紡績プロセスを使って得ることのできる種類などの、直径が約20ミクロン未満、望ましくは約10ミクロン未満の微細な直径のフィラメント材料を指す。
【0045】
触媒粒子に関連して用いている「ナノ粒子」という用語は、平均粒子直径が2nmより大きく50nmより小さいナノスケールの材料を意味している。
【0046】
目下好適な実施形態では、前駆物質炭素は、石炭、植物材(木、ココヤシの皮、食品加工残留物(パルプ、ピス、バガス)又は砂糖)、各種石油、又はコールタールピッチ、例えば米国特許第6,660,583号に記載されている特殊なピッチ前駆物質など、自然界にある材料を含めて、電気炭素として使用できるだけの純度を有するあらゆるソース(酸洗浄の様な追加の最終的化学純化段階有り又は無しの何れでも)から、或いはポリアクリロニトリル(PAN)又はポリビニルジエン塩化物(PVDC)などの合成ポリマー材料から作ることができる。特殊な炭素前駆物質材料は、通常は純粋であるのが望ましいが、本発明は、それに限定されず、炭化させ、活性化できるあらゆる化学的に適した前駆物質を含む。
【0047】
有機金属ナノ粒子は、単独で作られる金属又は金属酸化物ナノ粒子でも、その化学的前駆物質の何れでもよい。これらのナノ粒子は、後で、活性化段階の間に炭素の外部から内部に向けて細孔をエッチングするために炭素粒子表面に触媒部位を提供し、及び/又は、所望の電気化学的活性を提供するため、1つ又は複数の処理段階の間に導入される。金属又は金属含有材料の金属は、その触媒及び/又は電気化学的活性に基づいて選択される。
【0048】
或る実施形態では、有機金属ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子、異なる金属酸化物ナノ粒子の組み合わせ、又はそれらの合金を含んでいる。或る実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は、約50nmを含めそこまでの直径を有しており、別の実施形態では、約15nmを含めそこまでの直径を有しており、別の実施形態では、約8nmを含めそこまでの直径を有しており、別の実施形態では、約4nmを含めそこまでの直径を有しており、別の実施形態では、約3nmを含めそこまでの直径を有ており、別の実施形態では、約2nmを含めそこまでの直径を有している。好適な粒子寸法の最頻値は、電解質の選択によって変わるが、動力学的に制御する溶媒和電解質イオンの直径の少なくとも3倍であるのが望ましい。
【0049】
或る実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は、鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、イットリウム、パラジウム、プラチナ、又はそれらの組み合わせを含んでいる。或る実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は、ニッケル酸化物を含んでいる。或る実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は、鉄酸化物を含んでいる。或る実施形態では、ナノ粒子は、例えばニッケルと鉄など2つ以上の金属の合金を含んでいる。或る実施形態では、金属/金属酸化物ナノ粒子は、トルエン又はヘキサンの様な無極性有機溶剤内で懸濁している。
【0050】
或る実施形態では、有機金属ナノ粒子は、有機金属の金属酸化物前駆物質又はその様な前駆物質の混合物を含んでいる。或る実施形態では、金属酸化物前駆物質は、THFを含む金属アセチルアセトネート、トルエン、べンゼン、ベンジルアルコール、又はメタノールを溶剤として含んでいる。或る実施形態では、ナノ粒子前駆物質は、ニッケル又は鉄アセチルアセトネートを含んでいる。或る実施形態では、前駆物質は、金属アセテートを、例えば溶剤としてのエタノールなどアルコールと共に含んでいる。或る実施形態では、前駆物質は、ニッケル又は鉄アセテートである。
【0051】
有機金属の金属酸化物前駆物質、その様な前駆物質の混合物、又はその様な前駆物質と1つ又は複数の金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子の混合物が、炭素に又はその前駆物質に用いられる実施形態では、有機金属前駆物質は、炭化又は活性化の間に(例えば、制御された温度/酸化処置を通して)、適した粒子寸法の金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子に変換することができる。
【0052】
有機金属前駆物質又はその様な前駆物質が炭素材料に適用される実施形態では、有機金属前駆物質は、活性化プロセスの最初の部分で温度が上昇する間に、そして空気、蒸気、又は二酸化炭素の様なエッチング剤が導入される前に、限定するわけではないが、例えば「Chem.Eur.J.2006,12:7282−7302」及び「J.Am.Ceram.Soc.2006,89(6):1801−1808」に記載されている方法によって、適した粒子寸法及び担保範囲のナノ粒子に変換することができる。
【0053】
或る実施形態では、金属又は金属酸化物ナノ粒子は、限定するわけではないが、例えば「Adv.Mater.2005,17(4):429−434」に記載されている方法によって、別に調製又は入手される。例えば、2、5、又は7nmサイズのニッケルナノ粒子の合理的に均一なモノ分散を調製し、被覆溶液内にヘキサン又はトルエンの様な無極性溶剤を使って容易に再分散させることができる。その溶液は、後で、例えば、炭化の前又は活性化の前に、ナノ粒子を炭素材料又はその前駆物質に被覆するのに用いることができる。
【0054】
密度が制御され寸法分布が制御されている金属又は金属酸化物ナノ粒子(又は、好適な実施形態では、それらの有機金属前駆物質)を、適した形状及び/又は粒子寸法の炭素質材料の上に置き、その後、触媒、ナノ粒子寸法、及び活性化状態によって、制御された方式で触媒によって活性化すると、二重層コンデンサの様な電気化学的用途に良く適した大きな近接外部表面のメソ多孔質材料がもたらされる。それに比較し、電気炭素として提案されているメソ多孔質のココヤシ殻の炭素は、メソ細孔表面が、1850平方メートルの総BET表面の内の345平方メートル(19%)であるが、比キャパシタンスは、他の非常に良好な従来の市販の電気炭素と同様に135F/gに過ぎない。900℃で30%の蒸気を使うと、僅か3から25分後に、外部ナノ粒子による活性化は、メソ多孔性が、5から10nmの間に撮像されたメソ細孔として、僅か967平方メートルの総表面の内735平方メートル(76%)にもなることが示された、。これは、メソ多孔性が、総表面の半分だけより2倍以上多く、このメソ多孔性の大部分は、充電されても、篩い分け又は局所的に空乏化されないので接近することができる。
【0055】
従来の活性化とも、ピッチの様な炭素前駆物質材料に溶けているか又は混ぜ合わされている触媒前駆物質を使用する触媒活性化とも異なり、この発明によるメソ細孔の大部分は、外部に配置されたナノ粒子によって作られ、従って、少なくとも材料の表面から始まるナノ粒子触媒ほどの大きさの実質的に連続するメソ細孔である。これらは、近接外面を効果的に増やし、篩状にされず、絞りを有していない。
【0056】
単独に入手される、適した寸法の金属又は金属酸化物ナノ粒子の懸濁液を直接被覆するか、又はそれらを電気めっきの様な手段によって堆積させることはできるが、これらのナノ粒子は、炭化/活性化段階の間に、当技術では既知の金属アセチルアセトネート及び金属アセテート複合体の様な被覆された前駆物質ゾルから作られるのが望ましい。
【0057】
THF又はトルエン又はベンジルアルコールの様な適切な溶媒内のニッケル又は鉄アセチルアセトネート(又はそれらの同等物)の様な有機金属複合体は、任意の所望の希釈度で炭素材料に被覆し、その後、例えば普通の又は瞬間蒸発によって溶剤を除去し(そして随意に回復され)、有機金属の残留被覆を、当技術では既知の制御された熱分解プロセスを使って、どの様な所望の程度にでも炭素の表面を覆う合理的に制御されたナノ粒子寸法分布の金属/酸化物ナノ粒子に変換することができる。
【0058】
或る実施形態では、ニッケル及び/又はニッケル酸化物は、望ましい金属/酸化物である。ニッケルは、当技術では既知の様に、様々な前駆物質有機金属ゾルから、約2nmから数nmの寸法のナノ粒子を形成する証明済みの能力を有している。更に、ニッケル酸化物は、擬似キャパシタンスを呈し、KOH電解質内の総キャパシタンスを高め、炭素基質、及び超コンデンサに用いられる水性及び有機電解質の一般的な化学的性質の両方と適合することが知られている。例えば、「Tai’s Masters Thesis,etd−0725105−163206,(2002)in the Department of Chemical Engineering,National Cheng Kung University,Taiwan」、及び米国特許第5,963,417号、及び「J.Electrochem.Soc.2002,149(7):A855−A861」を参照されたい。
【0059】
ニッケルが好都合であるにも関わらず、例えばコバルト又は鉄など他の金属も、活性化プロセスと電解質次第で、本発明による方法に特に有用な場合もある。コバルトも擬似キャパシタンスに貢献し、触媒としてニッケルより反応性が良く、例えば富士重工業の「LiC」などハイブリッド装置のリチウムイオンバッテリーの化学的性質に適合している。鉄は、コバルトよりも、蒸気活性化による炭素との触媒反応が良いので、低温で、少ない活性化時間で、近接外面を多く作り出す。
【0060】
様々な金属/金属酸化物の混合物も使用することができる。触媒ナノ粒子から得られる最終的な細孔密度(及び総表面多孔性)と平均メソ細孔寸法は、金属又は金属酸化物の種類(触媒的潜在能力)、ナノ粒子寸法、粒子ローディング、及び温度、中性の(例えば、窒素)雰囲気の百分率としてのエッチング剤濃度、及び持続時間の様な炭素活性化条件の関数である。
【0061】
電解質システム、装置の作動電圧の範囲、及びパワー又はエネルギー密度の最適化次第で、触媒金属ナノ粒子を残したままにせず炭素から取り除くのが望ましいこともある。それらは、当技術で既知のように、簡単な酸洗浄、例えば、塩酸又は硫酸内での酸洗浄の様な手段で随意的に除去することができる。
【0062】
この一般的なプロセスは、米国特許第6,627,252号と第6,631,074号に記載されている様な従来の粒子状炭素電極製造プロセスに適合する、本発明による材料を提供することができ、両特許の内容全体を参考文献としてここに援用するが、開示又は定義が本出願と矛盾する場合は、ここに記載する開示又は定義を優先させるものとする。随意的に、材料は、望ましくは活性化前に、具体的な電極製造プロセス又は装置の要件に最適な粒子寸法分布に、粉砕し、又は別のやり方で処理してもよい。
【0063】
本発明の特徴を具現化している電極は、コンデンサ又は他の電気化学装置で用いるのに適しており、実質的なメソ多孔質触媒ナノ粒子で活性化された炭素材料で覆われた電流コレクタ箔を含んでいる。EDLC電極は、通常、活性炭素を金属箔の電流コレクタ上に直接又は間接的に結合させて作られるが、金属酸化物と導電性炭素を使用するか、又は混ぜ合わせてもよい(例えば、米国特許第6,491,789号参照)。本発明によれば、ここに記載されている方法によって調製される活性炭素材料を、擬似キャパシタンスを高めることを含めハイブリッド特性を高めるために、追加の金属酸化物、導電性炭素、グラファイトなどと共に電流コレクタに適用してもよい。
【0064】
本発明の特徴を具現化しているコンデンサは、ここに記載している型式の少なくとも1つの電極を含んでいる。或る実施形態では、コンデンサは、或る実施形態では水性で、別の実施形態では有機質の電解質を更に含んでいる。或る実施形態では、コンデンサは、電気二重層キャパシタンスを呈する。或る実施形態では、特に、残留触媒金属酸化物が活性炭素繊維材料の表面上に在るか又はそれと接続しているときに、コンデンサは、更に、或る電解質システム内で追加の擬似キャパシタンスを呈する。
【0065】
有機電解質を有する従来型の炭素EDLCは、プロピレンカーボネート又はアセトニトリル有機溶剤の何れかと、テトラエチルアンモニウム(TEA)又はトリエチルメチルアンモニウム(TEMA)の様な標準的なアンモニウムフルオロホウ酸塩を使用する。或る種の炭素及び大部分の市販の金属酸化物EDLCは、硫酸(HSO)又は水酸化カリウム(KOH)をベースにしている水性電解質を使用する。本発明によれば、これらの電解質などの何れを用いてもよい。
【0066】
有機電解質は水性電解質より導電性が低いので、RC特性が遅く、ESR貢献が高い。しかしながら、それらは、水性電解質の約1.2Vに比べて約3Vを越える降伏電圧を有しているので、有機化合物は、総エネルギーが電圧×電圧の関数であるために、より高い総エネルギー密度を作り出す。有機化合物に合わせて最適化された細孔は、水性溶媒和球体が小さいので、水性電解質でも随意的に作用する。代わりに、本発明による小さい触媒ナノ粒子を用いて、水性電解質に最適化されたメソ多孔質炭素材料を生成することもできる。メソ多孔性は、水性システムのより小さい溶媒和イオンにとっても望ましいことが知られている。「Electrochem.Solid State Letter2002,5(12)A283−A285」を参照されたい。
【0067】
本発明の特徴を具現化している活性メソ多孔質炭素材料又はそれらの各粒子又は断片は、従来型の活性炭素材料を組み込むか、又は活性メソ多孔質炭素材料を組み込むよう有利に修正することのできる全ての方式の装置に組み込むことができる。代表的な装置には、限定するわけではないが、全ての方式の電気化学装置(例えば、限定するわけではないが、コンデンサ、富士重工業のリチウムイオンコンデンサ(LIC)の様なハイブリッド非対称のバッテリーの片側を含むバッテリー、燃料電池その他)が含まれる。その様な装置は、限定するわけではないが高エネルギー及び高パワー密度などからの潜在的に便益を得ることのできる用途を含む全ての方式の用途で制約無しに用いることができる。実例として、本発明の特徴を具現化している活性炭素が入っている装置は、全ての方式の自動車(例えば、限定するわけではないが、コンデンサ、バッテリー、燃料電池又は同様のものを含む1つ又は複数の追加構成要素に随意的に連結することのできるコンデンサ及び/又はバッテリーの要素、又はそれらの電気的組み合わせとして);電子装置(例えば、コンピューター、携帯電話、携帯情報端末、電子ゲームなど)、電力サージを調整し停電を乗り切るための無停電電源装置(uninterrupted power supply)(UPS)、コードレスドリルなどを含むバッテリーとコンデンサの特徴を組み合わせるのが望ましいあらゆる装置(バッテリーのエネルギー密度をコンデンサのパワー密度と組み合わせる);従来型のバットキャップ(batcap)(即ち、並列に接続されている、パワー密度を担うコンデンサとエネルギー密度を担うバッテリーを提供する装置のシステム)を有利に含むことのできるあらゆる装置;スタットコム及び電圧低下補償器の様な電気的ユーティリティグリッド装置などに含まれていてもよい。或る実施形態では、本発明の特徴を具現化している装置は、限定するわけではないが、電気自動車とそのハイブリッド車を含む自動車で、又は、エンジンスターターバッテリーの代わりに又はその補助として従来型の内燃機関車両で、使用されるコンデンサを含んでいる。本発明に従って使用する代表的な車両には、限定するわけではないが、自動車、オートバイ、スクーター、ボート、飛行機、ヘリコプター、飛行船、スペースシャトル、Segway LLC(ニューハンプシャー州マンチェスター)からSEGWAYという商標で販売されている様な人間輸送器などが含まれる。
【0068】
本発明の特徴を採用した方法で用いられる個々の処理行為、即ち、有機金属溶剤の被覆、金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子の生成、炭化、活性化、及び炭素粒子の粉砕は、当技術分野では良く理解されており、ここに述べている参考文献で十分に説明されてきた。特許、特許公報、及び引用されている非特許参考文献それぞれの全体を、参考文献としてここに援用し、開示又は定義が本出願と矛盾する場合は、ここに記載されている開示又は定義を優先させるものとする。
【0069】
上記の炭化及び活性化の技法は、文献に記載されている何れの周知の技法を使って実施してもよい。例えば、本発明に従って用いることのできる様々なプロセスには、限定するわけではないが、Bell他への米国特許第6,737,445号、Chung他への米国特許第5,990,041号、Peng他への米国特許第6,024,899号、Gadkaree他への米国特許第6,248,691号、Gadkaree他への米国特許第6,228,803号、Niuへの米国特許第6,205,016号、Niuへの米国特許第6,491,789号、Gadkaree他への米国特許第5,488,023号、並びにOh他への米国特許公告第2004/0047798A1号、Yh他への米国特許公告第2004/0091415A1号、及びTennison他への米国特許公告第2004/0024074A1号に記載されているプロセスが含まれる。追加的説明が、「Chemical Communications,1999,2177−2178」と「Journal of Power Sources,2004,134,No.2,324−330」に提供されている。
【0070】
ここに記載されている本発明の有用性の実例としては、ELDCの総キャパシタンスは、電解質内の溶媒和イオンの少なくとも1つより大きい、完全被覆のためには溶媒和球体の少なくとも2倍、即ち約2から3nmより大きい、表面の微細形状の総面積として定義されている、接近可能な表面積の一次関数であることが知られている。支配方程式は、
【0071】
C/A=e/(4*Π*d) (式1)
であり、
【0072】
ここに、Cはキャパシタンス、Aは使用可能な表面積、eは電解質の相対誘電率、dは電解質内の表面からイオン(ヘルムホルツ)層の中心までの距離である。任意の所与の電解質溶剤と塩では、eとdは一定なので、式の右側は或る定数kである。代入して整理すると、
【0073】
C=kA (式2)
【0074】
従って、使用可能な表面積を2倍にすると、キャパシタンスが事実上2倍になる。
【0075】
韓国の実験者は、平均直径が200から400nmの蒸気活性化の電気紡糸PAN繊維とKOH電解質を使って、632F/gに相当する比キャパシタンスを実現した。彼らは、僅か830平方メートルであるが、ほぼ全てが近接外面であるBET表面を実現した。繊維は、平均3.2nmの62%のメソ細孔を有していた(繊維直径が比較的小さく、外部に比べると内部は限られており、KOH水性電解質の小さいイオン寸法が使用されたことを考えると、接近の確率が非常に高い)。「Applied Physics Letters(2003)83(6)1216−1218」を参照されたい。測定された76μF/cmは、水酸化カリウム電解質内で力学的に制御されているイオンに関する溶媒和の球体が2つの場合の、ほぼ理論的に最大可能な値である。(ヘルムホルツ層に関する)位相幾何学の計算から、円又は球体の周知の最大平面パッキング限界は、(1/6)π√3、即ち0.9068996821であり、溶媒和カリウムイオンの寸法が約10オングストロームとすれば、6.241250969...E+18を電気素量とする代替のクーロンの国際定義より、キャパシタンスは、1ボルトで74μF/cmと計算される(外側Stern即ちヘルムホルツ面を越えるデバイ距離の拡散領域における指数関数的衰退の寄与を無視している)。従って、表面が殆ど外部にあり(この例では、非常に微細な直径であるため)、充電によるイオンの篩い分け又は局所的空乏化無しに内部細孔が外部の電解質に接近できる確率が高いので、理論上の最大値に近づくことが可能である。
【0076】
アセトニトリル溶剤中の最も一般的な電解質塩であるTEAに関する等価理論最大計算値は、24.4μF/cmである。プロピレンカーボネートの等価理論最大値は、約19μF/cmであり、プロピレンカーボネート電解質での滴下水銀電極に関して報告された比キャパシタンスとほぼ同じである(米国特許第5,877,935号を参照されたい)。
【0077】
メソ粒子触媒活性化によって作られる1000平方メートルの近接外面は、従って、驚くことに、TEA/ANで約245F/g、TEA/PCで190F/gの二重層キャパシタンスを有し、全ての信頼できる報告された炭素を実質的に上回っている。市販されている何れよりも実質的に高い比キャパシタンスは、驚くことに、ここに記載されている単純で安価なプロセスから生まれる。
【0078】
本発明の有用性の例を更に挙げると、多数の独立プロセス変数の影響を計算できるよう開発されたロバストな電極材料の数学的モデルは、どの様な電解質システムの場合も、どの様な粒子又は繊維断片の電子炭素に関するEDLCキャパシタンスでも、第1原理から容易に計算する。近接炭素表面の使用可能な平方cm当たりの最大理論電解質キャパシタンスは、溶媒和イオンのパッキングと、上記クーロンの代替定義から計算可能である。外部の活性炭素表面にある皺は、公表されているデータから見積もりできるか、又は測定することができる(例えば、「Carbon,1999,37:1809−1816」にある様に、AFMによって)。粒子のマクロ皺(球状)は、標準的な基準材料(例えば、粉体工学の校正用粉体)から見積もることができるが、これは、繊維材料用の因子ではない。細孔寸法分布は、先に述べた様々な数学的方法によって、内部メソ細孔接近の確率と、従って、接近可能であると思われる内部メソ細孔(大部分は外部表面に近い)の割合を計算できるようにする。既知のランダムパッキングの数学は、粒子又は繊維粒子何れかの形態、及びあらゆる粒子寸法分布に対して、最終的な電極材料の密度(そして、粒子の数と、電極の重量又は体積当たりの表面も)を計算する。炭素粒子当たりの触媒ナノ粒子が直接貢献する追加の使用可能な皺は、どの様なナノ粒子寸法、被覆率、及び平均活性化細孔深さ(触媒によって穿孔されたた円筒形の「虫食い穴」としてモデル化される)でも、解析幾何学を使って計算可能である。以下の例は、幾つかの計算された結果を、測定された等価な材料と比較して示している。
【0079】
例1:平均直径8ミクロン(μm)の粒子状の炭素、触媒ナノ粒子誘導メソ多孔性無し。第1原理と平均的に化学的活性化(KOH)されたメソピッチ細孔分布から計算した比キャパシタンス:130F/g。MeadWestvaco社がアルカリ活性樹脂に関して報告した実際の値:133F/g。
【0080】
例2:平均直径9ミクロン(μm)の粒子状の炭素、触媒ナノ粒子誘導のメソ多孔性無し。第1原理とピッチの平均的に物理的活性化された細孔分布から計算した値:91.8F/g。市販の熱活性MeadWestvaco社の樹脂に関して報告された実際の値:97F/g。Kuraray社のBP20の実際の値:100F/g。
【0081】
例3:KYNOL2600から誘導された直径8.5ミクロンの繊維炭素、触媒ナノ粒子誘導のメソ多孔性無し。第1原理と公表されている細孔分布(30%>1.7nm、総細孔容積1cc/g)から計算した値:76.8F/g。測定された実験値87.8F/g;実験用電極材料は炭素織布なのでランダムパッキングされたモデルより密度が高く、従って、計算は過小評価している。「Carbon 2005,43:1303−1310」を参照されたい。
【0082】
例4:平均粒子直径2ミクロンの粒子状カーバイド誘導炭素、全細孔が1nm未満、外部皺は従来の活性炭素の40%。第1原理から計算した値:123F/g(全外部表面)。塩素化温度500℃から800℃で平均粒子2nmのカーバイド誘導炭素で報告されたキャパシタンス:125F/gから138F/g。「Science Express 17 August 2006,page1」を参照されたい。
【0083】
例5:平均直径10ミクロン(μm)の粒子状炭素で触媒ナノ粒子の被覆率40%、平均ナノ粒子6nm、平均虫食い穴長さ(深さ)は粒子幅の15倍:206F/g。
【0084】
例6:平均10ミクロン(μm)の粒子状炭素、触媒ナノ粒子の被覆率30%、平均ナノ粒子8nm、平均虫食い穴深さは粒子幅の20倍:200F/g。
【0085】
本発明の有用性の例を更に挙げると、一連の実験は、2つの炭素材料、即ち、平均直径約13ミクロン(μm)の活性化されていないが完全に炭化されたKYNOL繊維と、平均直径約4.7ミクロン(μm)で純度が高く導電性が良好な無煙炭「Minus100」の微粒子粉末と、を使って行われた。鉄とニッケルのナノ粒子が用いられた。ナノ粒子は、2つの手段、即ち、テトラヒドロフラン中に溶けている金属アセチルアセトネートの溶媒沈澱法と、電着プロセスによって形成された。
【0086】
炭化KYNOL(フェノールノボロイド樹脂)は、900℃の蒸気で一時間では十分には活性化されない。製造元によれば、活性化は、普通は、800℃の蒸気中で炭化と同時に実施される。炭化だけが終った後では、材料は、物理的活性化ガスに対し比較的非浸透性である(その有用な商業的特性の1つ)。製造元が供給した炭化材料は、そのBET測定表面を0.096平方メートル/グラムから112−113m/gに高めており、外部表面は、900℃で15分乃至1時間持続の従来型の蒸気活性化によって、自己生成している(質量損失の増加は時間経過に対してほぼ一定)ことが示された。
【0087】
テトラヒドロフランに溶かした0.1重量%の金属/炭素アセチルアセトネートナノ粒子前駆物質で溶剤被覆され、次いで室温で溶剤を蒸発させた炭化KYNOLは、ニッケル/酸化物又は鉄/酸化物ナノ粒子になり、幾つかの実験では、40−60nmの直径で撮像された。この比較的大きなナノ粒子は、溶剤が比較的ゆっくり蒸発することと、そのミクロ細孔がアニールされるので、炭化KYNOL表面の核形成部位が少ないことに起因している。これらのナノ粒子は、キャパシタンスに最適な粒子より大きいが、利用可能なSEM計器で撮像できるほど大きかったので、有用な実験媒介物として機能した。
【0088】
1つの実験では、触媒によって活性化された表面は、0.1%のニッケルアセチルアセトネートナノ粒子前駆物質をKYNOLに噴霧被覆したものを使用して900℃で1時間蒸気処理したところ、309.4m/gまで増大したが、有機金属被覆無しでは、112m/gであった。DFTで見積もった総細孔容積は、僅か0.17cc/gであった。この炭素の比キャパシタンスは、1.8モルのTEMA/PCを使用し3電極基準システムで測定すると26.2F/gであり、ここに記載している方法によって計算した真性キャパシタンスは21.4μF/cmであった。従って、約122平方メートルの総表面即ち40%が活用されていた。これは、少ない総表面の炭素を有する非プロトン性電解質としては非常に高い。それに比べて、240m/gのBETを有する標準的Vulcan XC−72カーボンブラックは、TEA/ANで12.6F/gと測定され、即ち、ここに記載している方法によって22%の表面活用率と計算された。「Carbon2005,43:1303−1310」を参照されたい。更に比較すると、400m/gのBet表面を有する市販のMarketech炭素エーロゲルは、AN中で2モル濃度のLiBFを使って、28F/gと測定され、ここに記載している方法によって22%の表面活用率と計算された。Smithの「Proceedings of the 16th International Seminar on DLC pages 277−284」を参照されたい。この様に、本発明のプロセスは、厄介なKYNOL炭素を穏やかに活性化させると、表面積が小さくても、等価な表面の従来型の炭素より基準化キャパシタンス(μF/cm)が70%も良好な、電気化学的な表面活用率がほぼ2倍の材料を作りだした。
【0089】
第2の実験は、炭化KYNOLに0.1重量%のニッケルアセチルアセトネート溶剤浸漬被覆を施し、次いで室温で溶剤を蒸発させた。材料には、次に2段階の処理を施した。段階1では、有機金属で被覆した炭素を空中で60分350℃でか焼し、次いで従来通り、900℃の蒸気で1時間活性化させた。同様に作られた材料の断面のSEM画像は、温度と持続時間に依って、1.5から2ミクロン(μm)まで(2000nmまで)のナノ粒子の貫通を示す。最適なナノ粒子より大きな粒子で触媒作用を受けた「虫食い穴」は、40−60nmの撮像可能なナノ粒子から生じ、これらの形状は、SEM計器の解像度の限界より小さいものから、直径150nmのものにまで及んだ(割合はニッケル又は鉄に依る)。実験の電極として作られたこの炭素のBET表面は僅か83.3平方メートルであり、総細孔容積は僅か0.04887cc/gであり、DFTの計算では、その内の57.7%がメソ/マクロ細孔であった。全ての測定値は、Micrometrics社のASAP2010計器を使って測定された。機能する2電極コンデンサ電池の比キャパシタンスは、20mV/sから2ボルトの掃引速度でサイクリックボルタンメトリーによって求められ、1ボルトで20.0F/gであった。従って、電池は約24μF/cmと測定されたので、実際に、この炭素から作られ測定されたBET電極表面全体が、キャパシタンスに貢献することができていた。本発明による驚くべき結果は、従来は、キャパシタンスに貢献する表面が10%(米国特許第6,491,789号)から20%(米国特許第6,737,445号)であるのに比べて、活性炭素の表面の実質的に大部分がキャパシタンスに貢献するように、活性炭素を作ることができることである。
【0090】
本発明による材料の商業的経済的重要性の例を挙げると、第3の実験は、0.1%の鉄アセチルアセトネートを粒子状無煙炭「Minus100」に噴霧被覆し、次いで900℃で20分間だけ蒸気活性化した。活性化段階の後でのSEMでは、計器の解像度の限界でナノ粒子は全く見えなかった。蒸気活性化後に測定されたBET表面は、842.8m/gであった。DFTで測定した総細孔容積は、0.460cc/gで、DFTで計算すると77.4%のミクロ細孔と、22.6%のメソ/マクロ細孔で構成されていた。全ての測定値は、Micrometrics社のASAP2010を使って測定した。これは、最適な電気炭素に望ましいメソ細孔率より低く、0.1%という低い金属/炭素ローディングと、核生成部位が豊富なことからくる非常に小さいナノ粒子とに起因している。しかしながら、従来型の活性電気炭素に関する代表的なメソ細孔の割合は、下が5%から上が22%のメソ細孔に亘っている。Walmet(MeadWestvaco)の「Proceedings of the 16th International Seminar on DLC page139」を参照されたい。それに比べて、従来通り900℃の蒸気で1時間活性化された「Minus100」無煙炭は、BET表面が僅かに801平方メートルであり、総細孔容積は0.406cc/gであった。この少量の外部の非常に細かな直径の粒子状触媒でも、半分未満の活性化時間で、総表面と細孔容積量はもっと大きかった。
【0091】
このナノ粒子で活性化した「Minus100」炭素から作られている2電極電池は、サイクリックボルタンメトリーによって20mV/sの掃引速度で測定され、1.8mのTEMA/PC電解質を使って、1ボルト(最大2ボルトを使用)で65.65F/gと測定された。驚くことに、ここに記載している方法によって計算して、この電解質では従来はキャパシタンスに殆ど貢献していない77%のミクロ細孔を最適ではなく有しているにもかかわらず、この炭素のBET電極表面の307m、即ち36%が活用されている。この様に、本発明の方法は、活用化可能な電気化学表面の割合が、従来の活性化時間及びコストの半分以下で、従来の電気炭素より少なくとも75%良くなる(36%対10%−20%)。それに比べて、物理的活性化は、従来通りだと2時間も掛かり(米国特許第5,990,041号及び米国特許出願第2004/0097369号)、化学的活性化は20時間も掛かり(米国特許第5,877,935号)、従来通りだと少なくとも2時間である。
【0092】
第4の実験は、より速くより低いコストのプロセスによって高められた電気化学表面の有用性の組み合わせを示している。粒子状の無煙炭「Minus100」は、THFに溶解した1.5%の鉄アセチルアセトネートで噴霧被覆され、次いで900℃で1対1の空気対窒素で10分間活性化され、その後、900℃で20分間蒸気活性化された。材料のBET表面は760.3m/gで、総細孔容積は0.30429cc/gであったが、どちらもMicrometrics社のASAP2010を使って測定したものである。実験第3の0.1%のニッケル材料との違いは、より触媒的に活性な鉄を別に処理することと、利用可能なSEM計器の解像度限界にはなお達しないが、より大きなナノ粒子のための有機金属のローディングが高いことに起因する。1.8mのTEMA/PC電解質での比キャパシタンスは、理想的に成形され純粋な二重層キャパシタンスを示すCVで、2.0ボルトまでの20mV/sの掃引速度を使って測定して、1ボルトで100.0F/g、2ボルトで約108F/gであった。これは、100%から150%も多いBET表面を有し、少なくとも2倍の時間活性化される、市販の電気炭素に匹敵する。この炭素は、13.16μF/cmで、市販のMeadWestvacoの電子炭素の標準化した値の約2倍である(Walmetは、「Proceedings of the 16th International Seminar on DLC at 139−140」で5.14μF/cmから7.11μF/cmと報告している)。
【0093】
以上の詳細な説明は、分かり易く説明するために提供されており、特許請求の範囲を限定するものではない。ここに示している目下好適な実施形態の多くの変更は、当業者には明白であり、特許請求の範囲及びそれらの等価物に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ多孔質炭素粒子を調製する方法であって、
炭素又は炭素前駆物質の何れかである少なくとも1つの粒子を準備する段階と、
前記炭素粒子又はその前駆物質を、金属及び/又は金属酸化物ナノ粒子又はそれらの前駆物質で被覆する段階と、
前記被覆がナノ粒子前駆物質の場合は、前記前駆物質を熱によって分解してナノ粒子を形成する段階と、
前記粒子が炭素前駆物質の場合は、前記粒子を炭化する段階と、
前記炭素を少なくとも1つの活性化プロセスで触媒により活性化して寸法が約2nmから約50nmの範囲にある外部メソ細孔を有するメソ多孔質炭素粒子を形成する段階と、を含む方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子は金属酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物は、ニッケル、鉄、コバルト、又はチタンの酸化物、又はそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒により活性化する段階は、加熱した炭素粒子を蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、又はそれらの組み合わせによって処理する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メソ細孔の大部分は、寸法が約2から約50nmの範囲にある、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記活性化する段階は、約50%を越えるメソ細孔で構成された空隙容積を有する前記メソ多孔質炭素粒子を形成する、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記活性化する段階は、約35%を越えるメソ細孔で構成された空隙容積を有する前記メソ多孔質炭素粒子を形成する、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記金属/金属酸化物ナノ粒子又はそれらの前駆物質は、溶剤中に懸濁しており、前記方法は、前記触媒により活性化する段階の前に、前記溶剤を蒸発させる段階を更に含んでいる、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
複数の炭素粒子がもたらされる、請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記メソ多孔質炭素粒子を粉砕する段階を更に含んでいる、請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
複数のメソ多孔質炭素粒子のスラリー又は溶液と、結合剤を表面上に堆積させることによって層を形成し、液体キャリアを取り除く段階を更に含んでいる、請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記層を圧密化する段階を更に含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
メソ多孔質炭素粒子を調製する方法であって、
炭素又は炭素前駆物質の何れかである少なくとも1つの粒子を準備する段階と、
前記炭素粒子を、有機金属ナノ粒子への前駆物質で被覆する段階と、
前記粒子が炭素前駆物質の場合は、前記粒子を炭化して、有機金属ナノ粒子で被覆された炭素粒子を形成し、次いで前記炭素を触媒によって活性化し、寸法が約2nmから約50nmの範囲にあるメソ細孔を含むメソ多孔質炭素粒子を形成する段階、又は
前記粒子が炭素粒子の場合は、前記粒子を活性化するのと同時に有機金属ナノ粒子を形成するが、この有機金属ナノ粒子が、寸法が約2nmから約50nmの範囲にあるメソ細孔を有するメソ多孔質炭素粒子を形成することになる段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記有機金属前駆物質は、金属アセチルアセトネート又は金属アセテートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被覆する段階において、前記前駆物質は溶剤内に懸濁している、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
基本的に、寸法が約2nmから約50nmの範囲にあるメソ細孔を有する実質的に同様な寸法のメソ多孔質炭素粒子の第1集団で構成されている炭素材料。
【請求項17】
前記材料は、結合剤を更に含んでいる、請求項16に記載の材料。
【請求項18】
電流コレクタと、
前記電流コレクタと電気的に接触している請求項16又は17に記載の材料と、を含む電極。
【請求項19】
電気化学装置、水素貯蔵装置、濾過装置、又は触媒基質の中での、請求項16に記載の材料の使用。
【請求項20】
コンデンサ、バッテリー、又は燃料電池の中での、請求項16に記載の材料の使用。

【公表番号】特表2009−526743(P2009−526743A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555389(P2008−555389)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/004182
【国際公開番号】WO2007/120386
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508057416)
【Fターム(参考)】