説明

メモリカード用コネクタ

【課題】構造が簡単で、スライドカバー30の移動操作で破壊し難く、基板へのコネクタ半田付け部が剥離し難いメモリカード用コネクタ1を提供すること。
【解決手段】ハウジング10と、ハウジング10上に前後方向へ移動可能に取り付けられてカード挿入スロット20を形成するスライドカバー30と、ハウジング10に固定された接続用端子50及び固定用端子60とから成り、固定用端子60がハウジング10の側板13から外側へ突出する水平部61を備え、スライドカバー30が、ハウジング10上を覆うスライドカバー本体32と、スライドカバー本体32の両側に連設され、水平部61と係合してスライドカバー30を前後方向へ移動可能に案内するとともに、スライドカバー30の後方への移動を制限する第1ガイド片45と、第1ガイド片45に連設されてスライドカバー30の前方への移動を制限するストッパー爪37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等の小型電子機器に用いられるICカードのようなメモリカードにデータを書き込んだり、メモリカードからデータを読み出すために使用されるメモリカード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のメモリカード用コネクタには、図13〜図16に示すようなメモリカード用コネクタ100が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−66586号公報
【0003】
すなわち、メモリカード用コネクタ100は、図16に示すように、ハウジング110と、ハウジング110上に取り付けられ、ハウジング110との間にカード挿入スロット120を形成するカバー130と、ハウジング110に固定され、カード挿入スロット120に挿入されたメモリカード200の電極部と接触可能な接触部150を有する複数の端子150と、カバー130の上面に沿って移動可能に取り付けられたスライダ160とから成り、これらを組み立てて図13及び図15に示すように形成される。
【0004】
スライダ160には、カバー130の両側に形成されたガイド131、131に係合するガイド部161、161が形成され、スライダ160がメモリカード200の挿抜方向に沿って移動可能に案内される。また、ハウジング110には、スライダ160の前方への移動時にガイド部161、161に当接して前方への移動を制限する前方ストッパー段部111、111が形成されるとともに、後方への移動時にガイド部161、161に当接して後方への移動を制限する後方ストッパー段部112、112が形成され、スライダ160の前後方向の移動がこれらのストッパー段部111,111、112,112の間に制限される。
【0005】
そして、メモリカード用コネクタ100のカード挿入スロット120に挿入されたメモリカード200を抜き出す場合には、スライダ160の前端に設けられた取っ手162を持ってスライダ160を前方に引き出す。このスライダ160の引き出しによってスライダ160の後端に設けられたイジェクト爪163、163がメモリカード200をカード挿入スロット120から引き出す。ついでスライダ160を後方へ押し込む。このスライダ160の押し込みでメモリカード200のみが前方に引き出された状態で残され、このメモリカード200を掴んで引き出すことによってメモリカード200がメモリカード用コネクタ100のカード挿入スロット120から抜き出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図13〜図16に示した従来のメモリカード用コネクタ100は、ハウジング110と、カバー130と、複数の端子150と、スライダ160とから成っているので、構造が複雑になるという問題点があった。
また、スライダ160に形成されたガイド部161、161を合成樹脂製のハウジング110に形成された前方ストッパー段部111、111と後方ストッパー段部112、112に当接してスライダ160の前後方向の移動範囲を制限しているので、スライダ160を引き抜く際の抜け強度(抜けに対する強度)が弱く、スライダ160の移動操作(摺動操作)でハウジング110が壊れ易いという問題点があった。
また、カバー130のガイド片131、131にスライダ160のガイド部161、161を係合してスライダ160をメモリカード200の前後方向(挿抜方向)に移動する構造のため、メモリカード200の抜去時にスライダ160もメモリカード200とともに前方に引き出されているので、メモリカード200でスライダ160がコネクタ上下方向にあおられた場合に、コネクタ半田付け部の剥離方向に直接負荷が加わり、コネクタ半田付け部が剥離し易いという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、構造が簡単で、スライドカバーの移動操作等で破壊し難く、しかも基板へのコネクタ半田付け部が剥離し難いメモリカード用コネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ハウジングと、前記ハウジング上に前後方向へ移動可能に取り付けられ、前記ハウジングとの間に前方を挿入口とするカード挿入スロットを形成する金属製のスライドカバーと、前記ハウジングに固定され、前記カード挿入スロットに挿入されたメモリカードの電極部と接触可能な接触部を有する接続用端子とから成るメモリカード用コネクタであって、前記ハウジングは、略矩形板状に形成された底板と、前記底板の両側から上方へ立設された側板とを備え、前記ハウジングの両側の外側面から略水平に外側へ突出する水平部と、前記水平部に連結して基板に接続される接続部とを有する固定用端子を備え、前記スライドカバーが、前記ハウジング上を覆うスライドカバー本体と、前記スライドカバー本体の両側に連設され、前記固定用端子の水平部と係合して前記スライドカバーを前後方向へ移動可能に案内するとともに、前記スライドカバーの後方への移動を制限する第1ガイド片と、前記スライドカバーと前記第1ガイド片の一方に連設され、前記スライドカバーの前方への移動を制限するストッパー爪とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、第1ガイド片は、スライドカバー本体の両側から下方へ垂設され、スライドカバーが後方へ移動したときに前記スライドカバーの後方への移動を制限するストッパー片部と、前記ストッパー片部の先端側から後方へ向けて連設され、前記スライドカバー本体との間に後方側を開口した案内用間隙を形成し、この案内用間隙に固定用端子の水平部を移動可能に係合させるアーム片部とで形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、アーム片部が幅広に形成され、ストッパー爪が前記アーム片部の先端部から上方へ突設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、アーム片部が幅狭に形成され、ストッパー爪がスライドカバー本体の両側であって案内用間隙の開口部近傍から下方へ突設されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいづれかに記載の発明において、スライドカバーに、カード挿入スロットへ挿入されたメモリカードを手で持つことの可能な把持領域を露出させる切欠きが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいづれかに記載の発明において、基板の端部に形成された取付用切欠き又は基板に形成された取付用貫通孔に実装されるメモリカード用コネクタであって、ハウジングが複数の接続用端子を固定する底板を備え、前記底板には、カード挿入スロットに挿入されメモリカードで弾性変形した接続用端子の接触部を遊嵌する逃げ孔が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいづれかに記載の発明において、複数の接続用端子は、前後方向に沿って少なくとも2列であって各列に複数形成されるとともに、その固定部がハウジングのカード挿入奥側に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、メモリカード用コネクタを、ハウジング、スライドカバー、接続用端子及び固定用端子で構成し、従来例のカバーとスライダの2部品をスライドカバーの1部品で兼用しているので、部品点数を減らして構造を簡単にすることができる。
さらに、ハウジングに固定された固定用端子が水平部を備え、スライドカバーに形成された第1ガイド片が、固定用端子の水平部と係合してスライドカバーを前後方向へ移動可能に案内するとともに、スライドカバーの後方への移動を制限し、ストッパー爪がスライドカバーの前方への移動を制限しているので、メモリカードの排出操作時にスライドカバーに加えられる力を金属製の固定用端子で受け止めることができ、コネクタ強度を向上させることができるとともに、スライドカバーのハウジングからの抜けに対する強度を向上させることができる。
しかも、スライドカバーに形成された第1ガイド片が固定用端子の水平部と係合してスライドカバーを前後方向へ移動可能に案内しているので、メモリカード抜去時にメモリカードでスライドカバーがコネクタ上下方向にあおられた場合に、コネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和して半田付け部を剥離し難くすることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1ガイド片をストッパー片部とアーム片部で形成し、ストッパー爪をスライドカバー本体とアーム片部の一方に連設形成したので、第1ガイド片とストッパー爪の構成を簡単にすることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発明において、第1ガイド片のアーム片部を幅広に形成し、ストッパー爪をアーム片部の先端部から上方へ突設したので、アーム片部のばね定数を大きくして、スライドカバーの移動時(摺動時)におけるスライドカバー本体とアーム片部の間に形成された案内用間隙によるスライドカバーのガイド規制力を大きくしてコネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和することができ、スライドカバーの移動操作性(摺動操作性)を向上させることができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載の発明において、第1ガイド片のアーム片部を幅狭に形成し、ストッパー爪がスライドカバー本体の両側であって案内用間隙の開口部近傍から下方へ突設したので、アーム片部のばね定数を小さくしてアーム片部にばね性をもたせ、メモリカードの抜去時にスライドカバーがメモリカードでコネクタ上下方向にあおられた場合にコネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和することができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいづれかに記載の発明において、スライドカバーに切欠きを形成してカード挿入スロットに挿入されたメモリカードの把持領域を露出させているので、メモリカードの取り出しを、スライドカバーを引き出してメモリカードをカード挿入スロットから引き出す操作と、露出した把持領域を手で持ってメモリカードを引き出す操作の2段階の操作で行うことができ、メモリカードの排出操作を従来例より容易にすることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいづれかに記載の発明において、基板にメモリカード用コネクタを実装する取付用切欠きを形成し、底板に逃げ孔を形成してメモリカードで弾性変形した接続用端子の接触部を遊嵌する構成としたので、メモリカードの挿入で弾性変形する接続用端子の接触部の先端部をコネクタ底面より突出させることができ、接触部の先端部を長くしてメモリカードの挿入時に接続用端子が座屈するのを防止することができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいづれかに記載の発明において、複数の接続用端子が、前後方向に沿って少なくとも2列であって各列に複数形式されるとともに、その固定部がハウジングのカード挿入奥側に固定されているので、コネクタ前後方向の全長を短かくしてコネクタの基板占有面積を小さくすることができる。
【実施例】
【0022】
図1〜図6は本発明によるメモリカード用コネクタの一実施例を示すもので、これらの図において、1は、プリント配線基板2(以下単に基板2という。)の取付用切欠き3に実装されるメモリーカード用コネクタである。
メモリカード用コネクタ1は、絶縁ハウジング(以下単にハウジングという。)10と、ハウジング10上に前後方向へ移動可能に取り付けられてハウジング10との間にカード挿入スロット20を形成するスライドカバー30と、ハウジング10に固定されて接触部をカード挿入スロット20内に臨ませた6個の接続用端子50と、ハウジング10に固定された2個の第1固定用端子60及び第2固定用端子70とからなっている。
【0023】
ハウジング10は、絶縁性合成樹脂で成形され、図3に示すように、平面視で略矩形板状に形成された底板12と、底板12の両側から上方へ立設された側板13、13と、底板12の後側から上方へ立設されるとともに側板13、13に連設された背板15とで形成されている。
底板12には、接続用端子50〜50の接触部53〜53を遊嵌する逃げ孔11〜11が形成されている。
側板13、13は、その後方部が前方部及び中間部と比べて幅広に形成され、その後方部と中間部の境い目に形成された段部14、14の前方へ向いた段面がストッパー段面17、17となっている。
側板13、13の幅狭の前方部及び中間部の外側面には、スライドカバー30が取り付けられたときにスライドカバー30を前後方向に案内する案内段部16、16が形成されている。
【0024】
6個の接続用端子50、2個の第1固定用端子60及び第2固定用端子70は、導電性金属板の打ち抜き、折り曲げ等で一体に連結して形成され、ハウジング10の成形時にインサート成形によってハウジング10に組み込まれる。
端子50〜50、60、60、70、70間の連結部は、インサート成形後にハウジング10の所定箇所18〜18を打ち抜くことによって切断される。
【0025】
6個の接続用端子50は、その固定部51がハウジング10のカード挿入奥側に固定され、その接続部52がハウジング10の背板15の外側面から後方へ突設され、その接触部53がカード挿入スロット20内に臨設されている。
2個の第1固定用端子60及び第2固定用端子70の固定部67、67はハウジング10の底板12及び側板13、13に固定されている。
第1固定用端子60、60の接続部側には、側板13、13の前方側の外側面上部から外側へ略水平に突設する水平部61、61と、水平部61、61に連結部62、62を介して連結されて基板2上の接続用ランドに半田接続される接続部63、63とが形成されている。
第2固定用端子70、70の接続側には、側板13、13の後方側の外側面上部から外側へ略水平に突出する水平部71、71と、水平部71、71に連結部72、72を介して連結されて基板2上の接続用ランドに半田接続される接続部73、73とが形成されている。
【0026】
スライドカバー30は、導電性金属板の打ち抜き、折り曲げ等で形成され、図3に示すように、平面視で略矩形板状に形成されるとともに前端側に切欠き31が形成されたスライドカバー本体32と、スライドカバー本体32の前端から上方へ立設された取っ手33と、スライドカバー本体32の両側に連設された第1、第2ガイド片45,45、38,38と、第1ガイド片45、45に連設されたストッパー爪37、37と、スライドカバー本体32の後端に連設されてスライドカバー30の前方への移動を制限するイジェクト爪39、39とを備えている。
【0027】
スライドカバー30の切欠き31は、メモリカード200をメモリカード用コネクタ1のカード挿入スロット20に挿入したときに、メモリカード200の把持領域201を露出させるためのものである。
イジェクト爪39、39は、スライドカバー本体32の後端から下方へ垂設され、スライドカバー30がハウジング10に取り付けられたときにハウジング10内に突出して、カード挿入スロット20に挿入されたメモリカード200の先端部に当接する位置に形成されている。
【0028】
第1ガイド片45、45は、ストッパー片部34、34とアーム片部36、36で形成され、第1固定用端子60、60の水平部61、61と係合してスライドカバー30を前後方向へ移動可能に案内するとともに、スライドカバー30の後方への移動を制限する。
ストッパー片部34、34は、スライドカバー本体32の両側の前方から下方へ垂設され、スライドカバー30がハウジング10に取り付けられたときに第1固定用端子60、60の水平部61、61に当接してスライドカバー30の後方への移動を制限し、アーム片部36、36は、ストッパー片部34、34の先端部から後方へ向かって片持ち板片状に連設され、スライドカバー本体32との間に後方側を開口した案内用間隙35、35を形成し、この案内用間隙35、35に第1固定用端子60、60の水平部61、61を前後方向へ移動可能に係合させている。
ストッパー爪37、37は、アーム片部36、36の先端側から上方へ突設され、第1固定用端子60、60の水平部61、61に当接することによって、スライドカバー30の前方への移動を制限する。
【0029】
第2ガイド片38、38は、スライドカバー本体32の両側の後方から下方へ垂設され、ハウジング10の案内段部16、16と係合してスライドカバー30を前後方向へ移動可能に案内するとともに、段部14、14のストッパー段面17、17に当接してスライドカバー30の後方への移動を制限している。
【0030】
つぎに、メモリカード用コネクタ1の組立について説明する。
(1)合成樹脂成形によってハウジング10が形成され、このハウジング10の成形時に一連に形成された端子群50〜50、60、60、70、70がインサート成形でハウジング10に組み込み固定され、ついで所定箇所18〜18の打ち抜きで各端子間の連結部が切断され、図3の下側に示すような端子群50〜50、60、60、70、70が組み込まれたハウジング10が形成される。
【0031】
(2)導電性金属板の打ち抜き、折り曲げ等で形成された図3の上側に示すスライドカバー30を、図3の下側に示すハウジング10上に取り付け、スライドカバー30とハウジング10の間にカード挿入スロット20を形成する、図1及び図2に示すようなメモリカード用コネクタ1を形成する。
このスライドカバー30のハウジング10上への取り付けは、まず、スライドカバー30のストッパー爪37、37がハウジング10の第1固定用端子60、60より前方側の上部に位置するとともに、スライドカバー30の第2ガイド片38、38がハウジング10の案内段部16、16の上部に位置するように位置合わせをして、矢印aに示すようにスライドカバー30をハウジング10上に被せて第2ガイド片38、38を案内段部16、16に係合し、ついで矢印bに示すようにスライドカバー30を後方へ移動してスライドカバー30の案内用間隙35、35にハウジング10の第1固定用端子60、60の水平部61、61、61を係合する。
【0032】
(3)前記(1)(2)により、スライドカバー30は、ハウジング10上に前後方向へ移動可能に取り付けられるとともに、その移動範囲が制限される。具体的には、第1ガイド片45、45の案内用間隙35、35に第1固定用端子60、60の水平部61、61が係合することによってスライドカバー30が前後方向へ移動可能に案内されるとともに、第1ガイド片45、45のストッパー片部34、34とストッパー爪37、37が水平部61、61に当接することによってスライドカバー30の前後方向への移動が制限され、さらに、スライドカバー30の第2ガイド片38、38がハウジング10の段部14、14のストッパー段面17、17の当接によってスライドカバー30の後方への移動が制限されている。
【0033】
つぎに、前記実施例の作用について、図7〜図11を併用して説明する。
メモリカード用コネクタ1の下側部を基板2の取付用切欠き3に挿入し、メモリカード用コネクタ1の端子50〜50、60、60、70、70の接続部52〜52、63、63、73、73を基板2上の対応する接続用ランド(図示省略)に半田接続することによって、図7に示すように、メモリカード用コネクタ1が基板2に実装される。
以下、基板2に実装されたメモリカード用コネクタ1へのカード挿入時、カード嵌合時、カード取り出し時に分けて説明する。
【0034】
(1)カード挿入時
メモリカード200の挿入時には、メモリカード200を把持して図7に矢印で示す方向に移動させ、メモリカード用コネクタ1のカード挿入スロット20に挿入し、メモリカード200の先端部をハウジング10の背板15の内側面に当接させることにより、図8に示すようなカード嵌合状態となる。
【0035】
(2)カード嵌合時
前記(1)のカード挿入で図8に示すようなカード嵌合状態になると、図10に示すような接続用端子50〜50の接触部53〜53がメモリカード200の電極部202〜202と弾性接触し、基板2上の電気回路と電気的に接続される。
このとき、接続用端子50〜50の接触部53〜53は、図9に示すようにハウジング10の底板12の逃げ孔11〜11に遊嵌されているので、カード嵌合時には、端子50〜50接触部53〜53が弾性変形してメモリカード200の電極部202〜202と接触するが、メモリカード用コネクタ1が基板2の取付用切欠き3に実装されているので、接触部53〜53の先端部がコネクタ底面4より距離T(例えば0.12mm)突出しても問題とならない。
【0036】
(3)カード取り出し時
メモリカード200をカード挿入スロット20から排出するためにスライドカバー30の取っ手33をもってスライドカバー30を前方へ引き出すと、図11に示すような状態となる。
すなわち、スライドカバー30を前方へ引き出すと、スライドカバー30のイジェクト爪39、39によってメモリカード200が前方へ引き出され、スライドカバー30のストッパー爪37、37が第1固定用端子60、60の水平部61、61に当接して前方への移動が制限され、図11に示すような状態となる。
このとき、スライドカバー30に形成された第1ガイド片45、45が第1固定用端子60、60の水平部61、61と係合してスライドカバー30を前後方向へ移動可能に案内しているので、メモリカード200の抜去時にメモリカード200でスライドカバー30がコネクタ上下方向にあおられた場合に、コネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和して半田付け部を剥離し難くすることができる。
その上、メモリカード200のイジェクト操作時にスライドカバー30に加えられる力を金属製の第1固定用端子60で受け止めることができ、コネクタ強度を向上させることができるとともに、スライドカバー30のハウジング10からの抜けに対する強度を向上させることができる。
さらに、メモリカード200は、スライドカバー30と一緒に移動し、メモリカード200の上面がスライドカバー30の内面と摺動接触しないので、メモリカード200のイジェクト操作を円滑にすることができる。
そして、スライドカバー30の切欠き11で露出しているメモリカード200の把持領域201を手で持ち、メモリカード200を引き出すことができる。
【0037】
前記実施例では、第1ガイド片のアーム片部を幅広に形成してアーム片部のばね定数を大きくするとともに、アーム片部の先端部からストッパー爪を突設し、スライドカバーの移動時における案内用間隙によるスライドカバーのガイド規制力を大きくしてコネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和し、スライドカバーの摺動操作性を向上させるようにしたが、本発明はこれに限るものでなく、第1ガイド片のアーム片部を幅狭に形成してアーム片部のばね定数を小さくするとともに、スライドカバー本体側にストッパー爪を設けた場合についても利用することができる。
例えば、図12に示したものについても利用することができる。
すなわち、アーム片部36、36を幅狭に形成してアーム片部36、36のばね定数を小さくしてアーム片部36、36にばね性をもたせ、イジェクト爪39、39をスライドカバー本体32の両側であって、案内用間隙35、35の開口部近傍から下方へ突設した場合についても利用することができる。この場合、アーム片部36、36のばね定数を小さくしてアーム片部36、36にばね性をもたせているので、メモリカード200の抜去時にスライドカバー30がメモリカード200でコネクタ上下方向にあおられた場合に、コネクタ半田付け部に加わる剥離方向の負荷を緩和することができる。
【0038】
前記実施例では、第1ガイド片とストッパー爪の構成を簡単にするために、第1ガイド片をストッパー片部とアーム片部で形成し、ストッパー爪を、スライドカバー本体の案内用間隙の開口部近傍から下方へ突設するストッパー爪と、アーム片部の先端部から上方へ突設するストッパー爪のいずれか一方で形成した場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、第1ガイド片が、スライドカバー本体の両側に連設され、固定用端子の水平部と係合してスライドカバーを前後方向へ移動可能に案内するとともに、スライドカバーの後方への移動を制限し、ストッパー爪が、スライドカバー本体と第1ガイド片の一方に連設されてスライドカバーの前方への移動を制限するように構成した場合についても利用することができる。
【0039】
前記実施例では、メモリカードの排出操作を容易にするために、スライドカバーに切欠きを形成し、カード挿入スロットに挿入されたメモリカードの把持領域を露出させるようにしたが、本発明はこれに限るものでなく、スライドカバーに切欠きを形成しない場合についても利用することができる。
この場合のメモリカードの排出操作は、スライドカバーを前方へ引き出してメモリカードを前方へ引き出した後に、スライドカバーのみを後方へ押し込んでメモリカードを前方へ残し、メモリカードを抜去することになる。
【0040】
前記実施例では、基板にメモリカード用コネクタを実装する取付用切欠きを形成し、底板に逃げ孔を形成してメモリカードの挿入で弾性変形した接続用端子の接触部を遊嵌する構成とした場合について説明したが、基板にメモリカード用コネクタを実装する取付用貫通孔を形成し、底板に逃げ孔を形成してメモリカードの挿入で弾性変形した接続用端子の接触部を遊嵌する構成とした場合についても利用することができる。
【0041】
前記実施例では、基板上からのコネクタ突出高さを低く抑えることができ、接続用端子の接触部の先端部をコネクタ底面より突出でき、接続用端子の座屈防止を容易にできるようにするため、基板にメモリカード用コネクタを実装する取付用切欠き又は取付用貫通孔を形成し、底板に逃げ孔を形成してメモリカードの挿入で弾性変形した接続用端子の接触部を遊嵌する構成とした場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、基板上に直接メモリカード用コネクタを実装する場合や、底板に逃げ孔を形成しない場合についても利用することができる。
【0042】
前記実施例では、コネクタの前後方向の全長を短くしてコネクタの基板占有面積を小さくするために、接続用端子の固定部がハウジングのカード挿入奥側に固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、接続用端子の固定部の一部が、ハウジングのカード挿入奥側で残りがハウジングのカード挿入口側に固定される場合や、接続用端子の全部がハウジングのカード挿入口側に固定されている場合についても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるメモリカード用コネクタ1の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1のメモリカード用コネクタ1の一部を図1とは異なる視点から見た部分拡大斜視図である。
【図3】メモリカード用コネクタ1の分解斜視図である。
【図4】図1〜図3中の端子50、60、70を示す斜視図である。
【図5】メモリカード用コネクタ1を基板2の取付用切欠き3に実装した状態を示す斜視図である。
【図6】図5をカード挿入スロット20のカード挿入口側から見た正面図である。
【図7】メモリカード用コネクタ1に対するメモリカード200の挿入操作を説明する斜視図である。
【図8】メモリカード用コネクタ1に対するメモリカード200の嵌合状態を示す斜視図である。
【図9】図1〜図3中のハウジング10に接続用端子50〜50及び固定用端子60、60、70、70が固定されている状態を示すもので、一部を断面で示した部分斜視図である。
【図10】図8のカード嵌合状態において、メモリカード200の電極部202に接続用端子50の接触部53が弾性接触している状態を示す部分断面図である。
【図11】メモリカード用コネクタ1からメモリカード200を取り出すために、スライドカバー30を引き出した状態を示す斜視図である。
【図12】他の実施例を示す斜視図である。
【図13】従来例を示す平面図である。
【図14】図13のメモリカード用コネクタ100においてカバー130及びスライダ160を取り付ける前の状態を示すもので、複数の端子150が組み込まれたハウジング110の平面図である。
【図15】メモリカード用コネクタ100を前後方向に沿って切断した拡大断面図である。
【図16】メモリカード用コネクタ100の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1…メモリカード用コネクタ
2…基板(プリント配線基板)
3…取付用切欠き
10…ハウジング
12…底板
13…側板
20…カード挿入スロット
30…スライドカバー
32…スライドカバー本体
33…取っ手
34…ストッパー片部
35…案内用間隙
36…アーム片部
37…ストッパー爪
38…第2ガイド片
39…イジェクト爪
45…第1ガイド片
50…接続用端子
51…端子50の固定部
52…端子50の接続部
53…端子50の接触部
60…第1固定用端子
61…端子60の水平部
63…端子60の接続部
70…第2固定用端子
200…メモリカード
201…カード200の把持領域
202…カード200の接触部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)と、ハウジング(10)上に前後方向へ移動可能に取り付けられ、ハウジング(10)との間に前方を挿入口とするカード挿入スロット(20)を形成する金属製のスライドカバー(30)と、ハウジング(10)に固定され、カード挿入スロット(20)に挿入されたメモリカード(200)の電極部(202)と接触可能な接触部(53)を有する接続用端子(50)と、ハウジング(10)に固定された固定用端子(60)(60)とから成り、ハウジング(10)は、略矩形板状に形成された底板(12)と、底板(12)の両側から上方へ立設された側板(13)(13)とを備え、固定用端子(60)(60)は、ハウジング(10)の両側の外側面から略水平に外側へ突出する水平部(61)(61)と、水平部(61)(61)に連結して基板に接続される接続部(63)(63)とを備え、スライドカバー(30)は、ハウジング(10)上を覆うスライドカバー本体(32)と、スライドカバー本体(32)の両側に連設され、固定用端子(60)(60)の水平部(61)(61)と係合してスライドカバー(30)を前後方向へ移動可能に案内するとともに、スライドカバー(30)の後方への移動を制限する第1ガイド片(45)(45)と、スライドカバー本体(32)と第1ガイド片(45)(45)の一方に連設され、スライドカバー(30)の前方への移動を制限するストッパー爪(37)(37)とを備えたことを特徴とするメモリカード用コネクタ。
【請求項2】
第1ガイド片(45)(45)は、スライドカバー本体(32)の両側から下方へ垂設され、スライドカバー(30)が後方へ移動したときに固定用端子(60)(60)の水平部(61)(61)に当接してスライドカバー(30)の後方への移動を制限するストッパー片部(34)(34)と、ストッパー片部(34)(34)の先端側から後方へ向けて連設され、スライドカバー本体(32)との間に後方側を開口した案内用間隙(35)(35)を形成し、この案内用間隙(35)(35)に固定用端子(60)(60)の水平部(61)(61)移動可能に係合させるアーム片部(36)(36)とで形成されていることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用コネクタ。
【請求項3】
アーム片部(36)(36)が幅広に形成され、ストッパー爪(37)(37)がアーム片部(36)(36)の先端部から上方へ突設されていることを特徴とする請求項2記載のメモリカード用コネクタ。
【請求項4】
アーム片部(36)(36)が幅狭に形成され、ストッパー爪(37)(37)がスライドカバー本体(32)の両側であって案内用間隙(35)(35)の開口部近傍から下方へ突設されていることを特徴とする請求項2記載のメモリカード用コネクタ。
【請求項5】
スライドカバー(30)には、カード挿入スロット(20)に挿入されたメモリカード(200)の把持領域(201)を露出させるための切欠き(31)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいづれかに記載のメモリカード用コネクタ。
【請求項6】
基板(2)の端部に形成された取付用切欠き(3)や基板(2)に形成された取付用貫通孔に実装されるメモリカード用コネクタであって、ハウジング(10)は複数の接続用端子(50)を固定する底板(12)を備え、底板(12)には、カード挿入スロット(20)に挿入されメモリカード(200)で弾性変形した接続用端子(50)の接触部(202)を遊嵌する逃げ孔(11)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいづれかに記載のメモリカード用コネクタ。
【請求項7】
接続用端子(50)は、前後方向に沿って少なくとも2列であって各列に複数形式されるとともに、その固定部(51)がハウジング(10)のカード挿入奥側に固定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載のメモリカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−21192(P2009−21192A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184922(P2007−184922)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】