説明

メモリカード記録装置

【課題】記録途中にメモリカードを強制的に取り出された場合に発生する書き込み情報の欠陥を、時間経過があっても、修復前にファイルを記録されても修復できるメモリカード記録装置を、安価に提供することである。
【解決手段】本発明は、メモリカードへの書き込みと同時に、該メモリカードの情報記録単位毎のデータの上書き禁止を示す情報を記録するファイル配置テーブルを有し、該メモリカード内の書き込み済みデータの上書きを防止し、書き込みエラー発生以降は、補助記憶装置に残りの書き込みコマンド又は残りの書き込みデータなどの修復情報をメモリカードの個体識別情報とセットで保存する手段を有することを主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き込みの信頼性を向上するSDカード等のメモリカードの記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SDカード 、メモリスティック等の各種メモリカードは、小型軽量で可搬性を有し、かつ容量が16GB、32GBと大容量化が進み、携帯電話、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなど各種機器の記録媒体として広く利用されてきている。
このようなメモリカードは、機器に挿抜して使用する形態になっているため、取り扱いは簡単だが、メモリカードのアクセス中の不意な引き抜きが可能であるという欠点がある。この欠点は、誤記録やファイルシステムの破壊などを引き起こし、メモリカードに記録したはずの情報が読み出せなくなるとか、ファイルシステム自信に不整合が発生してメモリカード全体が読み出せなくなるなどの問題があった。
【0003】
この改善策として、デジタルカメラなどの装置側でメモリカードの挿入口に蓋を付けて、
メモリカードアクセス中の引き抜きを禁止する方法があるが、装置側のコストが増える課題や、意図的に引き抜かれた場合は対応できない課題がある。また、一般のパソコンのように、市販のメモリカードリーダーライターが使われる環境では、蓋付きのメモリカードリーダーが必ずしも使用されず、メモリカードアクセス中の引き抜きの危険性は高い。
そのため、データ転送アクセス中に抜き取られても再度挿入されるとデータ転送処理を自動的に再開する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
図8はこの方法を実現する電子機器のブロック図である。図8で、電子機器1は、制御回路7に着脱可能に挿入されたSDカード10にアクセスしてデータの書き込み/読み出しを行う際に、SDカード10へのアクセス中にSDカード10が制御回路7から抜き取られると、当該アクセス中のデータ転送を中断して一定時間待機し、再度、SDカード10が挿入されると、中断したデータ転送を再開するカードアクセス制御処理を行っている。したがって、利用者がデータの書き込みに必要な同じ操作を繰り返し行うことなく自動的に再開することができ、かつすでに記録したデータを再度書き込む必要もないので修復時間も短縮できる。しかしながらこの方法は、一定時間内に使用者が誤操作に気がついた場合は修復可能だが、メモリカードが引き抜かれた後、書き込みの処理途中であることを気付かずに放置し装置の電源を切ったり、メモリカードに別のデータを記録したりした場合は、書き込み処理の継続ができなく修復が不可能になることや、該当のメモリカードを再度入れて修復が完了するまで、別のメモリカードの読み込みや書き込みができないという課題がある。
【特許文献1】特開2004−220496号公報(第15頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、記録途中にメモリカードを強制的に取り出された場合に発生する書き込み情報の欠陥を、いつでも修復できるメモリカード記録装置を、安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、メモリカードへの書き込みと同時に、該メモリカードの情報記録単位毎のデータの上書き禁止を示す情報を記録するデータ配置テーブルを有し、該メモリカード内の書き込み済みデータの上書きを防止し、書き込みエラー発生以降は、補助記憶装置に残りの書き込みコマンド又は残りの書き込みデータなどの修復情報をメモリカードの個体識別情報とセットで保存する手段を有することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のメモリカード記録装置は、書き込み中にメモリカードが抜かれた場合、該メモリカードの代わりに、パソコンなどに標準で搭載されているハードディスクのような、別の補助記憶手段にデータの書き込みを継続することで、メモリカードに記録されなかった情報を該補助記憶手段に該メモリカードの識別番号と関連づけて保存することで、メモリカードの修復を可能にする。修復も書き込みが出来なかった差分データの書き込みで済むので時間短縮をはかれる。さらに、該メモリカードへの書き込み処理も擬似的に正常終了することができるので、装置は別のメモリカードの書き込みなど、別の処理を実行することが出来る。
また、データ書き込み時に、メモリカードのデータ書き込み単位毎に上書き禁止の情報を記載するので、書き込みが中断されたメモリカードに別のファイルデータを書き込まれても、中断されたファイルのデータへの上書きを防ぎ、修復可能な状態を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
記録途中にメモリカードを強制的に取り出されても、書き込み情報の不完全性をいつでも修復するという目的を、パソコンの通常所有するハードウェアを使い安価に実現した。
【0008】
(実施の形態)
図1は、本発明装置の実施の形態のメモリカード記録装置のブロック図であって、1は固有のメモリカードを識別する識別情報11とデータ書き込み単位毎の上書き禁止情報を有するメモリカード、2はメモリカード1とは別の記憶媒体である補助記憶手段、3はメモリカード1のリーダーライター装置や補助記憶手段2に用いるハードディスクなどの装置を制御するドライブ制御部、4はメモリカード1の識別情報11を取得する取得手段、5はメモリカード1にデータを書き込む手段で、書き込みエラー発生以降の記録コマンドを修復情報として、メモリカード1の識別情報と関連づけて補助記憶手段2に記録する記録手段、6は取得手段4でメモリカード6の識別情報11を再度取得した場合には、補助記憶手段2で記憶された該修復情報21を用いて、該エラー発生以降のデータを追記するようにする修復手段である。
図2は、補助記憶手段2として使われたハードディスクドライブ(以降HDDと略す)に記録された修復情報21であり、メモリカード1の識別情報11と同名のフォルダの下の階層に、書き込み中のメモリカード抜き取りにより書き込みが中断した以降の差分データを保持するファイルA1や、ファイルA1以降に書き込む予定だったファイルA2を修復情報として保存している。ここでは、メモリカードAとメモリカードBの修復情報を記載しているが、ここにはHDDの容量が許容できる範囲で複数のメモリカードの修復情報を格納できる。
図3は、書き込みが中断したファイルA1のメモリカード内のデータの書き込み位置を示すファイル配置テーブル12であり、記録開始位置121とそこからの連続したデータの記録長122が記載されている。また、該記録開始位置121から記録長122のデータ領域が書き込み済みであり上書き禁止を示す属性フラッグ123がセットされている。該属性フラッグ123により、書き込み処理が中断しファイルが正式にファイルシステムに登録されていなくても、ファイルシステムが空き領域と認識することがないので、該メモリカードに誤って別データを書き込んでも、上書きされることはなくなる。
【0009】
取得手段4、記録手段5と修復手段6はソフトウェアで実現されており、図4、図5、図6で説明する。図4は、メモリカード1の固有部分に記録されている識別情報11を取得する取得手段4のフローを示す。該取得手段4は、専用のスレッドで動作しており、常時メモリカード1の挿入を監視しており、ステップ401、ステップ402でパソコンOSの周辺装置の変化を検出するAPIを使い、メモリカード1が挿入されたことを検出する。メモリカード1が挿入されたらステップ403でメモリカード1の識別情報11の有無を確認し、識別情報11が記録されている場合は、ステップ404で識別情報11を読み込み、ステップ406で該識別情報11をレジストリに記憶する。該メモリカード1に識別情報11がない場合は、ステップ405でGUIDや日時などの固有の識別情報11を該メモリカードの固有の場所に書き込み、ステップ406で該識別情報11をレジストリに記憶する。ステップ407で該識別情報11と同名のフォルダが補助記憶手段2の修復情報21から検出した場合は、修復手段6を実行する。
図5は、メモリカードにデータを書き込む記録手段5のフローを示し、書き込みエラー検出以降は、書き込みを中断したファイルのメモリカードに記録されなかった残りのデータのファイルや、中断したファイル以降に書き込み予定だったファイルを補助記憶装置2としてHDDに記録する。最初にステップ501で書き込みエラーフラッグをクリアする。新規ファイルをメモリカード1に書き込むときは、ステップ504でファイルを作成する。その後、ステップ505でメモリカード1に決められたブロック単位分データを書き込む。書き込みが成功した場合は、ステップ507でメモリカード1のファイル配置テーブル12へ図3で説明した記録開始位置121と記録長122と属性フラッグ123を書き込む。書き込みエラーが発生するまでは、ステップ502からステップ508を繰り返しメモリカード1にファイルを書き込む。書き込み中にメモリカード1が抜かれると、ステップ506で書き込みエラーを検出し、ステップ509で書き込みエラーフラッグをセットし、ステップ510で、レジストリからメモリカード1の識別情報11を読み込み、ステップ511でHDDに識別情報11をフォルダ名にしたフォルダと書き込みを中断したファイルと同名の修復情報ファイルA1を作成する。ステップ512で修復情報ファイルA1にエラー発生したデータをブロック単位で書き込む。書き込みエラーが発生した以降は、ステップ502で該HDDへの記録に分岐し、ステップ515で、ステップ511で作成した書き込むべきフォルダ名を取得して、ステップ516で該フォルダの修復情報ファイルにデータを書き込む。該書き込みを中断したファイルの残りのデータを修復情報ファイルA1に全て書き込むまでステップ502、ステップ513,ステップ515,ステップ516、ステップ508を繰り返し実行する。その後、ステップ513、ステップ514で中断したファイル以降に書き込み予定だったファイルを、該HDDの修復情報ファイルA1と同じ階層に修復情報ファイルA2として作成し、データを書き込む。
図6は、書き込み中に引き抜かれ不正な情報が残っているメモリカード1の修復手段6の
フローを示す。メモリカード1が挿入され、取得手段4がメモリカード1の識別情報11を読み込み、この識別情報と同じフォルダが該HDDにあることを検出すると、該メモリカード1の修復情報があると判断して修復手段6を起動する。修復手段6は、ステップ601で最初は書き込みが中断された1番目の修復情報ファイルA1を読み込み、ステップ604で該メモリカード1の同名のファイルにブロック単位でデータを追記する。書き込みエラーがなければ、ステップ606で該メモリカード1のファイル配置テーブル12にデータの書き込み位置情報を記録し、ステップ607で追記したデータをHDD内の修復情報ファイルA1から削除する。ステップ604からステップ607を修復データがなくなるまで繰り返し、書き込み中断したファイルを修復し、ステップ609で修復ファイルA1を修復情報から削除する。ステップ605で再度書き込みエラーを検出した場合は、修復を中止するが、残りの修復情報はHDDに残っているので、再度メモリカードが挿入された場合は、修復手段6が起動する。ステップ610で残ファイルがある場合は、ステップ611で次のファイルを指定して、ステップ601で次の修復ファイルA2を読み込む。修復ファイルA2はメモリカード1には、全く書き込んでいないので、ステップ603でメモリカード1に同じ名前のファイルを作成してから、データの書き込みを開始する。
このようにして、修復すべき全ファイルを記録し終わった場合は、ステップ612で、メモリカード1の識別情報11と同名のフォルダを削除する。以降は、該メモリカード1が
挿入されても修復手段6は起動しない。
【0010】
なお、本発明のメモリカード記録装置は、図7に示すように、修復情報として書き込みを失敗したコマンドとそれ以降のコマンドを記録するようにしても良い。これにより、復旧時に、中断した記録動作をそのまま継続することができるので、SD−VideoやAVCHDなどのアプリケーションフォーマットデータの復旧時に、アプリケーションフォーマット固有の管理情報も管理情報の再構築処理なしで自動的に復旧することができる。したがって、復旧処理システムの簡素化と復旧時間短縮の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明にかかる記録装置は、SDカードやUSBメモリなどのメモリカード以外にも、取り外し可能なHDDやDVD−RAM、BD−REなどの追記可能なリムーバル媒体にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に於けるメモリカード記録装置の実施方法を示した説明図
【図2】図1の補助記憶装置2の修復情報21の実施例を示した説明図
【図3】図1のメモリカード1のファイル配置テーブルの実施例を示した説明図
【図4】図1の取得手段4の実施例を示したフローチャート
【図5】図1の記録手段5の実施例を示したフローチャート
【図6】図1の修復手段6の実施例を示したフローチャート
【図7】図1の補助記憶装置2の修復情報21の実施例を示した説明図
【図8】従来例を示した説明図
【符号の説明】
【0013】
1 メモリカード
2 補助記憶手段
3 ドライブ制御部
4 取得手段
5 記録手段
6 修復手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入されるリムーバブルな媒体の識別情報を取得する取得手段と、
該媒体の識別情報毎のデータを記憶する領域を持つ補助記憶手段と、
該媒体にデータを書き込み、書き込みエラーが発生した以降は、前記補助記憶手段に、エラー発生以降のデータに係わる修復情報を、取得手段で取得した該媒体の識別情報と関連づけて記録する記録手段と、
前記取得手段で該媒体の識別情報を再度取得した場合には、前記記録手段によって前記補助記憶手段に記録された情報を用いて、該媒体に該エラー発生以降のデータを記録するようにする修復手段とを備えることを特徴とするメモリカード記録装置。
【請求項2】
前記記録手段は、前記補助記憶手段に修復情報として、エラー発生以降の該媒体に発行する書き込みコマンドを記録することを特徴とする、請求項1に記載のメモリカード記録装置。
【請求項3】
前記記録手段は、該媒体のファイル配置テーブルに、情報記録単位毎に上書き禁止を示す情報を記録することを特徴とする、請求項1に記載のメモリカード記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−113633(P2010−113633A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287322(P2008−287322)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】