説明

メモリ素子スイッチング層形成用組成物、メモリ素子及びメモリ素子スイッチング層形成用重合体

【課題】良好なスイッチング特性を発現するとともに、塗布性に優れたメモリ素子スイッチング層形成用組成物を提供する。
【解決手段】メモリ素子の陽極層と陰極層との間に配置されたスイッチング層を形成するのに用いるメモリ素子スイッチング層形成用組成物において、下記式(P−1)で表される繰り返し単位及び下記式(P−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p1)を有する重合体を含むものとする。


(式(P−1)及び式(P−2)中、Rは脂環式構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリ素子スイッチング層形成用組成物、メモリ素子及びメモリ素子スイッチング層形成用重合体に関し、詳しくは、抵抗変化型の有機メモリ素子のスイッチング層を形成するのに使用されるメモリ素子スイッチング層形成用組成物、当該組成物を用いて作製されたメモリ素子、及び当該組成物に好適に含有されるメモリ素子スイッチング層形成用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印加電圧に応じて高抵抗状態と低抵抗状態とが切り替わる有機材料のスイッチング特性に着目し、この特性を利用して有機メモリ素子を構築する試みがいくつか検討されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、陽極層と陰極層との間に、電気絶縁性のラジカルポリマーからなるスイッチング層を備えるメモリ素子が提案されている。この特許文献1によれば、スピンコーティング等の湿式法によってスイッチング層を形成することができ、膜質の均一性を維持することができるとされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のようにラジカルポリマーを用いた場合、ポリマー構造が化学的に不安定であり、メモリ素子としての信頼性が十分であるとは必ずしも言えない。
【0004】
これに対し、化学的に安定なポリイミドに着目し、電子供与(ドナー)性を有するジアミンと、電子受容(アクセプター)性を有する酸二無水物との組合せによって合成されるポリイミドを用いた有機メモリ素子が種々提案されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。非特許文献1には、トリフェニルアミン構造及び1,3,4−オキサジアゾール構造を有するジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリイミドをメモリ用ポリマーとして用いることが開示されている。また、非特許文献2には、トリフェニルアミン構造及びトリアゾール構造を有するジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリイミドについて、非特許文献3には、2つのトリフェニルアミン構造を有するジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応により得られるポリイミドについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/49261号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マクロモレキュルズ(Macromolecules)、2010年、43巻、p.7159−7164
【非特許文献2】ジャーナルオブポリマーサイエンス:パートA:ポリマーケミストリー(Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry)、2010年、48巻、p.5790−5800
【非特許文献3】アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters)、2010年、96巻、p.213305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1〜3のポリイミドはいずれも溶媒に対する溶解性が低く、例えばスピンコート法や印刷法などの塗布法によって基板上に有機薄膜を形成する際に、印刷ムラやピンホールなどの塗布不良が生じやすくなってしまう。この場合、製品歩留まりの低下が懸念される。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、良好なスイッチング機能を発現でき、しかも塗布性に優れたメモリ素子スイッチング層形成用組成物を提供することを一つの目的とする。また、膜厚が均一な薄膜により形成されたスイッチング層を有するメモリ素子、及び溶媒に対する溶解性に優れたメモリ素子スイッチング層形成用重合体を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のような従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定構造の繰り返し単位を有するポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかをメモリ用ポリマーとして用いることで上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により、以下のメモリ素子スイッチング層形成用組成物、メモリ素子及びメモリ素子スイッチング層形成用重合体が提供される。
【0010】
本発明は、メモリ素子の陽極層と陰極層との間に配置されたスイッチング層を形成するのに用いるメモリ素子スイッチング層形成用組成物であって、下記式(P−1)で表される繰り返し単位及び下記式(P−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p1)を有する重合体を含むことを特徴とする。
【化1】

(式(P−1)及び式(P−2)中、Rは脂環式構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0011】
本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物は、ポリマー主鎖中に脂環式構造を有するポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかを含んでいる。この重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れており、このような重合体を含む本組成物によれば、スピンコート法や印刷法などの塗布法を用いて膜厚が均一な薄膜を形成することができる。また、印加電圧に応じた高抵抗状態と低抵抗状態とのスイッチング機能についても好適に発現され、メモリ素子の材料として有用である。
【0012】
上記式(P−1)及び上記式(P−2)におけるRは、シクロペンタン構造又はビシクロ[3.3.0]オクタン構造を有する基とするとよく、例えば下記式(A−1)〜(A−6)からなる群より選ばれる少なくとも1種で表される基が好ましい。
【化2】

(式(A−1)〜(A−6)中、「*1」及び「*2」は、それぞれ異なる炭素原子に結合する結合手を示す。但し、上記式(P−1)において、2つの「*1」の一方と2つの「*2」の一方とがそれぞれ異なるアミド基に結合し、上記式(P−2)において、2つの「*1」が一方のイミド基に結合し、2つの「*2」が他方のイミド基に結合する。)
が好ましい。
【0013】
本発明において、上記式(P−1)及び上記式(P−2)におけるRは、下記式(D−1)で表される基とするとよい。
【化3】

(式(D−1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、又は炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、kは0〜5の整数であり、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。但し、k、m、nが2以上の場合、複数のR〜Rは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【0014】
また、本発明によれば、上記重合体は、該重合体を構成する繰り返し単位として、繰り返し単位(p1)に加え、下記式(P−3)で表される繰り返し単位及び下記式(P−4)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p2)を有する組成物が提供される。この場合、繰り返し単位(p2)としては、例えば下記式(P−3−1)又は式(P−4−1)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化4】

(式(P−3)及び式(P−4)中、Rは芳香環構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0015】
【化5】

(式(P−3−1)及び式(P−4−1)中、Zは、−CO−、−O−、−SO−、−C(CF−又は−C(CH−であり、Rは、トリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0016】
本発明によれば、上記重合体を構成する全繰り返し単位に対する繰り返し単位(p1)の含有割合が5〜50モル%であるメモリ素子スイッチング層形成用組成物が提供される。また、溶剤として、非プロトン性極性溶媒とエーテルとを含み、該溶剤の全量に対し、非プロトン性極性溶媒の含有割合が70〜95重量%であり、エーテルの含有割合が5〜30重量%であるメモリ素子スイッチング層形成用組成物が提供される。
【0017】
さらに、本発明によれば、上記のいずれかに記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物により形成されたスイッチング層を有するメモリ素子が提供される。このメモリ素子は、上記重合体によりメモリ素子スイッチング層が形成されていることから、スイッチング層を均一な薄膜にて構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】正バイアス電圧を0Vから4Vまで印加したときのメモリ素子の電流−電圧特性を示す図。
【図2】低抵抗状態において正バイアス電圧を印加したときのメモリ素子の電流−電圧特性を示す図。
【図3】負バイアス電圧を0Vから−4Vまで印加したときのメモリ素子の電流−電圧特性を示す図。
【図4】低抵抗状態において負バイアス電圧を印加したときのメモリ素子の電流−電圧特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[メモリ素子スイッチング層形成用組成物]
本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物は、重合体成分として、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により得られるポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかの重合体(メモリ素子スイッチング層形成用重合体)を含有する。以下、本組成物について詳細に説明する。
【0020】
[メモリ素子スイッチング層形成用重合体]
本発明におけるメモリ素子スイッチング層形成用重合体(以下、特定重合体とも言う。)は、下記式(P−1)で表される繰り返し単位、及び下記式(P−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p1)を有している。
【化6】

(式(P−1)及び式(P−2)中、Rは脂環式構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0021】
<脂環式構造部分>
上記式(P−1)及び(P−2)において、Rで表される脂環式構造を有する4価の基としては、炭素数4〜12の脂肪族環を有する4価の基が好ましく、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンなどの単環の炭化水素;ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エンなどの多環の炭化水素;これら脂肪族環に1つ以上の鎖状構造が結合した炭化水素;等に由来する4価の基が挙げられる。なお、Rとしては、環構造として脂肪族環のみを有しているものに限らず、上記式(P−1)及び式(P−2)中の−C(=O)−が、脂肪族環又は脂肪族環に結合する鎖状部分に結合している限り、芳香環構造を有していてもよい。また、Rは、炭素原子に結合する水素原子が、例えばフッ素原子などのハロゲン原子等で置換されてもよい。
【0022】
上記例示した4価の基のうち、Rとしては、シクロペンタン構造又はビシクロ[3.3.0]オクタン構造を有する4価の基が好ましく、例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルエチルシクロペンタン、ビシクロ[3.3.0]オクタン、メチルビシクロ[3.3.0]オクタン、エチルビシクロ[3.3.0]オクタン、ジメチルビシクロ[3.3.0]オクタンなどから4つの水素原子を取り除いた4価の基が挙げられる。なお、取り除く水素原子は、脂肪族環を構成する炭素原子に結合する水素原子のみであってもよいし、鎖状構造に結合する炭素原子に結合する水素原子を含んでいてもよい。また、1つの炭素原子から複数の水素原子を取り除いてもよい。
【0023】
として具体的には、下記式(A−1)〜(A−6)からなる群より選ばれる少なくとも1種で表される基が特に好ましい。
【化7】

(式(A−1)〜(A−6)中、「*1」及び「*2」は、それぞれ異なる炭素原子に結合する結合手を示す。但し、上記式(P−1)において、2つの「*1」の一方と2つの「*2」の一方とがそれぞれ異なるアミド基に結合し、上記式(P−2)において、2つの「*1」が1つのイミド基に結合し、2つの「*2」が他方のイミド基に結合する。)
【0024】
上記式(P−1)及び式(P−2)において、Rは、例えばテトラカルボン酸二無水物としてRの構造を有する化合物を用いて上記重合体の合成を行うことにより繰り返し単位(p1)中に導入される。ここで、特定重合体を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、少なくとも脂環式テトラカルボン酸を含み、具体的には、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、2’H,4’H−スピロ[フラン−3,6’−[3]オキサビシクロ[3.2.1]オクタン]−2,2’,4’,5(4H)−テトロン、2H,4H,4’H−スピロ[3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6,3’−ピラン]−2,2’,4,6’(5’H)−テトロン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。その他、特開2010−97188号公報に記載の脂環式のテトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。なお、上記の脂環式テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
<他のテトラカルボン酸二無水物>
本発明における特定重合体の合成に際しては、脂環式テトラカルボン酸二無水物のみを用いてもよいが、脂環式テトラカルボン酸二無水物とともに、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の少なくともいずれか(他のテトラカルボン酸二無水物)を用いてもよい。
【0026】
ここで、他のテトラカルボン酸二無水物について具体的には、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、その他、特開2010−97188号公報に記載の芳香族テトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。なお、上記の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明における特定重合体を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、良好なスイッチング特性(メモリ特性)を発現させる観点から、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせて用いるのが好ましい。つまり、特定重合体は、上記繰り返し単位(p1)とともに、下記式(P−3)で表される繰り返し単位、及び下記式(P−4)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p2)を有するのが好ましい。
【化8】

(式(P−3)及び式(P−4)中、Rは芳香環構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0028】
上記式(P−3)及び(P−4)において、Rで表される芳香環構造を有する4価の基としては、例えば、上記例示した芳香族テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた構造部分を挙げることができる。ただし、溶媒に対する溶解性をより良好にするには、繰り返し単位(p2)としては、下記式(P−3−1)又は式(P−4−1)で表される構造が特に好ましい。
【化9】

(式(P−3−1)及び式(P−4−1)中、Zは、−CO−、−O−、−SO−、−C(CF−又は−C(CH−であり、Rは、トリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【0029】
上記式(P−3−1)及び式(P−4−1)におけるZとしては、溶媒に対する溶解性をより良好にできる点において、−C(CF−が特に好ましい。
【0030】
特定重合体における繰り返し単位(p1)の含有割合は、特定重合体を構成する全繰り返し単位に対して、5〜50モル%であるのが好ましく、10〜50モル%であるのがより好ましく、20〜40モル%であるのが更に好ましい。また、特定重合体が繰り返し単位(p2)を更に有する場合、繰り返し単位(p2)の含有割合は、特定重合体を構成する全繰り返し単位に対して、50〜95モル%であるのが好ましく、50〜90モル%であるのがより好ましく、60〜80モル%であるのが更に好ましい。それぞれ上記範囲とすることにより、有機溶媒に対する溶解性とスイッチング特性とに優れた重合体を得ることができる。
【0031】
<トリフェニルアミン構造部分>
上記のR及びRで表されるトリフェニルアミン構造を有する2価の基としては、例えば、(a)トリフェニルアミンを構成するベンゼン環が、上記式(P−1)〜(P−4)の窒素原子に結合される2価の基、(b)トリフェニルアミンを構成するベンゼン環以外において、上記式(P−1)〜(P−4)の窒素原子に結合される2価の基等が挙げられる。上記(a)の場合の具体例としては、例えば下記式(D−1)や下記式(D−2)で表される2価の基を、上記(b)の場合の具体例としては、例えば下記式(D−3)〜(D−5)で表される2価の基を挙げることができる。
【化10】

(式(D−1)〜(D−5)中、R〜R、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、又は炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、Rは、トリフェニルアミン構造を有する1価の基である。k、k1及びk2は、それぞれ独立に0〜5の整数であり、m及びnは、それぞれ独立に0〜4の整数である。但し、k、k1、k2、m、nが2以上の場合、複数のR〜R及びR〜Rは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【0032】
上記式(D−1)及び(D−2)のR〜R及びR〜Rにおいて、炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0033】
炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、上記の炭素数1〜12のアルキル基として挙げた基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換したものが挙げられる。また、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、上記の炭素数1〜12のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合したものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基やエトキシ基等が挙げられる。
【0034】
、Rとしては、中でも上記式(D−1)で表される基が特に好ましい。また、上記式(D−1)で表される2価の基としては、R〜Rが、水酸基又は炭素数1〜8のアルキル基、フルオロアルキル基若しくはアルコキシ基であるのが好ましく、水酸基又は炭素数1〜4のアルキル基、フルオロアルキル基若しくはアルコキシ基であるのがより好ましい。
【0035】
上記式(P−1)〜式(P−4)において、R、Rは、例えばジアミンとしてR、Rの構造を有する化合物を用いて上記重合体の合成を行うことにより繰り返し単位(p2)中に導入することができる。ここで、本発明における重合体を合成するのに用いるジアミンとしては、少なくともトリフェニルアミン構造を有するジアミン(以下、特定ジアミンとも言う。)を含み、具体的には、例えば、4,4’−ジアミノトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−メチルトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−エチルトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−プロピルトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−イソプロピルトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−tert−ブチルトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−ヒドロキシトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−メトキシトリフェニルアミン、4,4’−ジアミノ−4’’−エトキシトリフェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−N’,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−N’,N’−ジ(メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミン、5−(5−(4−ジフェニルアミノ)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、4−(3,5−ビス(4−アミノフェニル)−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)−N,N−ジフェニル−ベンゼンアミン、4,4’−ビス(4−メトキシトリフェニルアミン)−3,3’−ビフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
<他のジアミン>
本発明の重合体を合成するためのジアミンとしては、上記の特定ジアミンのみを使用してもよいし、特定ジアミンとともにその他のジアミンを併用してもよい。
【0037】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなど種々のジアミンを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0038】
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン、及び下記式(A−1)
【0039】
【化11】

(式中、XI及びXIIは、それぞれ、単結合、*−O−、*−COO−又は*−OCO−(但し、「*」を付した結合手がベンゼン環に結合する。)であり、Rは、単結合、メチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。ただし、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
【0040】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンのうち上記以外のものを用いることができる。
【0041】
上記式(A−1)における「−X−R−XII−」で表される2価の基としては、メチレン基、炭素数2若しくは3のアルキレン基、*−O−、*−COO−又は*−O−CHCH−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0042】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【化12】

【0043】
特定ジアミンと共に上記のその他のジアミンを使用する場合、その他のジアミンの使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とするとよい。上記範囲とすることにより、スイッチング機能を好適に発現させることができる。
【0044】
<分子量調節剤>
ポリアミック酸を合成するに際しては、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物の塗布性(印刷性)を更に改善することができる。
【0045】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0046】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0047】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合が更に好ましい。
【0048】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0049】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0050】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
【0051】
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0052】
これらの有機溶媒のうち、(I)非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上;又は(II)第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物;を使用することが好ましい。後者(II)の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0053】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのままメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上でメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製した上でメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0054】
<ポリイミドの合成>
本発明におけるポリイミドは、上記方法で合成したポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。この場合、ポリアミック酸を溶解してなる上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
【0055】
上記ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、スイッチング層の化学的安定性やメモリ素子としての信頼性の観点から、イミド化率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0056】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0057】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0058】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのままメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえでメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよい。あるいは、ポリイミドを単離したうえでメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえでメモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0059】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られるポリアミック酸及びポリイミドは、ポリアミック酸については、これを濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましく、50〜150mPa・sの溶液粘度を持つものであることが更に好ましい。また、ポリイミドについては、これを濃度5重量%の溶液としたときに、1〜100mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、5〜50mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
【0060】
なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%又は濃度5重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0061】
[その他の添加剤]
本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物は上記の特定重合体を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記の特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物などを挙げることができる。
【0062】
<その他の重合体>
上記その他の重合体は、溶液特性及び電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えばトリフェニルアミン構造を有さないジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、該他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なお、他のポリアミック酸及び他のポリイミドを合成するために用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、上記特定重合体を合成するために用いる化合物として例示したうちの該当する化合物を挙げることができる。
【0063】
その他の重合体をメモリ素子スイッチング層形成用組成物に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
【0064】
<エポキシ化合物>
エポキシ化合物は、塗膜の機械的強度の向上や基材との接着性向上等を目的として使用することができる。このようなエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンなどを好ましいものとして挙げることができる。
【0065】
これらエポキシ化合物をメモリ素子スイッチング層形成用組成物に添加する場合、その配合比率は、該組成物中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0066】
<官能性シラン化合物>
官能性シラン化合物は、基板表面に対する接着性を向上させる等を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0067】
これら官能性シラン化合物をメモリ素子スイッチング層形成用組成物に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0068】
[溶剤]
本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物は、該組成物に含有される重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解されて構成される。
【0069】
本組成物に使用される有機溶媒(溶剤)としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどの非プロトン性極性溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、などのエーテル;乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−トなどのエステル;のほか、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
これらの有機溶媒のうち、本組成物に含有させる溶剤としては、少なくとも非プロトン性極性溶媒の1種以上とエーテルの1種以上とを含む混合溶媒を使用することが好ましい。この場合、本組成物中に含有される溶剤の全量に対し、非プロトン性極性溶媒の含有割合が80〜99重量%が好ましく、85〜95重量%がより好ましく、85〜90重量%が更に好ましい。また、本組成物中に含有される溶剤の全量に対するエーテルの含有割合は、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは5〜15重量%であり、更に好ましくは10〜15重量%である。
溶剤として使用する非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドのうちの少なくとも1種が好ましく、エーテルとしては、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルのうちの少なくとも1種が好ましい。
【0071】
メモリ素子スイッチング層形成用組成物における固形分濃度(当該組成物の溶媒以外の成分の合計重量が当該組成物の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることによりスイッチング層となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好なスイッチング特性が得られにくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好なスイッチング特性が得られにくいとともに、組成物の粘性が増大して塗布特性が劣るおそれがある。
【0072】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に本組成物を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンコート法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。オフセット印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット印刷法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0073】
[メモリ素子]
本発明のメモリ素子は、上記のメモリ素子スイッチング層形成用組成物を用いて形成された有機薄膜(スイッチング層)を具備するものである。当該スイッチング層は、印加電圧に応じて低抵抗状態と高抵抗状態とが切り替わるスイッチング機能(メモリ特性)を有している。したがって、このようなスイッチング層を具備する本発明のメモリ素子は、例えば抵抗変化型の不揮発性メモリとして好適に使用することができる。本発明のメモリ素子は、例えば以下の工程により製造することができる。
【0074】
<塗膜の形成>
先ず、基板上に設けられた導電膜(下層電極)上に本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物により構成される有機薄膜を基板上に形成する。
【0075】
詳しくは、先ず下層電極上に、本発明のメモリ素子スイッチング層形成用組成物を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法又はインクジェット印刷法により塗布し、次いで、各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチック等からなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる下層電極としては、アルミニウムの他、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。好ましくは、アルミニウム又はITO膜である。パターニングされた下層電極を得るには、例えばパターンなし下層電極を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、下層電極を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。メモリ素子スイッチング層形成用組成物の塗布に際しては、下層電極と塗膜との接着性をさらに良好にするために、下層電極表面を予め研磨、洗浄しておいてもよい。
【0076】
<加熱処理>
メモリ素子スイッチング層形成用組成物を塗布後、塗布した組成物の液垂れ防止等の目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じてポリアミック酸を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。この焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、閾値電圧(スイッチング層の抵抗値が変化する電圧)に応じて適宜設定すればよいが、例えば用途に合わせて15nm〜80nmの範囲で任意に設定することができる。
【0077】
<対向電極の形成>
次に、形成したスイッチング層としての有機薄膜の上に対向電極を形成する。対向電極としては、アルミニウムなどが用いられる。対向電極の形成方法はとくに制限されないが、例えば真空蒸着やスパッタリングなどにより必要に応じて所定のマスクを介して対抗電極を形成することができる。これにより、電極層(陽極層)/スイッチング層/電極層(陰極層)の三層積層構造を有するメモリ素子が構築される。
なお、本発明のメモリ素子は、上記の三層積層構造に限定せず、例えば電極層とスイッチング層との間に金属アルミニウムなどの導電層が設けられた構成、スイッチング層内に金属中間層が設けられた構成としてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0079】
以下の各合成例における重合体の溶液粘度は、いずれもE型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。また、ポリイミドのイミド化率は、次のようにして測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0080】
[ジアミンの合成]
<4,4’−ジアミノ−4’’−メチルトリフェニルアミン(ジアミン1)の合成>
先行文献(Sheng-Huei Hsiaoら J. Polymer Science, PartA Polymer Chem. Vol44, 4579 (2006))の方法を参考として、本文献に記載の4−tert−ブチルアニリンを4−メチルアニリンに置き換えた他は、本文献に記載の方法に従って下記スキーム(1)により合成を行った。
【化13】

【0081】
<4,4’−ジアミノトリフェニルアミン(ジアミン2)の合成>
先行文献(Cha-Wen Changら J. Polymer Science, PartA Polymer Chem. Vol46, 7937 (2008))の合成方法に従い、下記スキーム(2)により合成を行った。
【化14】

【0082】
<4,4’−ジアミノ−4’’−ヒドロキシトリフェニルアミン(ジアミン3)の合成>
先行文献(Dong Min KimらLangmuir, Vol.25, (19) 11713 (2009))の合成方法に従い、下記スキーム(3)により合成を行った。
【化15】

【0083】
<4,4’−ジアミノ−4’’−メトキシトリフェニルアミン(ジアミン4)の合成>
先行文献(Cha-Wen Changら J. Polymer Science, PartA Polymer Chem. Vol46, 7937 (2008))の合成方法に従い、下記スキーム(4)により合成を行った。
【化16】

【0084】
[重合体の合成]
<重合実施例1;ポリアミック酸(PAA−1)及びポリイミド(PI−1)の合成>
【化17】

【0085】
上記式(a−1)に示す如く、テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)4.5g(0.02モル)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)35.5g(0.08モル)、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノ−4’’−メチルトリフェニルアミン(ジアミン1)28.9g(0.1モル)に対し、全体の固形分濃度が10wt%になるようN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、溶解させ、60℃で6時間反応させることによりポリアミック酸(PAA−1)を得た。得られたポリアミック酸溶液を小量分取し、粘度を測定したところ、80mPa・sであった。
【0086】
得られたポリアミック酸溶液に、全体の固形分濃度が5wt%になるようNMPを追加し、ピリジン40g及び無水酢酸41gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなNMPで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、イミド化率約90%のポリイミド(PI−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度5重量%の溶液として測定した溶液粘度は10mPa・sであった。
【0087】
<重合実施例2;ポリアミック酸(PAA−2)及びポリイミド(PI−2)の合成>
【化18】

【0088】
上記式(a−2)に示す如く、上記重合実施例1において、テトラカルボン酸二無水物としてTCAの代わりにビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物(BODA)5g(0.02モル)を使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−2)及びポリイミド(PI−2)を得た。
【0089】
<重合実施例3;ポリアミック酸(PAA−3)及びポリイミド(PI−3)の合成>
【化19】

【0090】
上記式(a−3)に示す如く、上記重合実施例1において、テトラカルボン酸二無水物としてTCAの代わりに2’H,4’H−スピロ[フラン−3,6’−[3]オキサビシクロ[3.2.1]オクタン]−2,2’,4’,5(4H)−テトロン(DAN)4.5g(0.02モル)を使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−3)及びポリイミド(PI−3)を得た。
【0091】
<重合実施例4;ポリアミック酸(PAA−4)及びポリイミド(PI−4)の合成>
【化20】

【0092】
上記式(a−4)に示す如く、上記重合実施例1において、テトラカルボン酸二無水物としてTCAの代わりに2H,4H,4’H−スピロ[3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−6,3’−ピラン]−2,2’,4,6’(5’H)−テトロン(DCAP)4.8g(0.02モル)を使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−4)及びポリイミド(PI−4)を得た。
【0093】
<重合実施例5;ポリアミック酸(PAA−5)及びポリイミド(PI−5)の合成>
上記重合実施例1において、4,4’−ジアミノ−4’’−メチルトリフェニルアミン(ジアミン1)の代わりに4,4’−ジアミノトリフェニルアミン(ジアミン2)を28g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−5)及びポリイミド(PI−5)を得た。なお、得られたポリアミック酸(PAA−5)の濃度10重量%NMP溶液の粘度、ポリイミド(PI−5)の濃度5重量%NMP溶液の粘度及びポリイミド(PI−5)のイミド化率を下記表1に記す(以下の重合実施例6〜20についても同じ。)。
【0094】
<重合実施例6;ポリアミック酸(PAA−6)及びポリイミド(PI−6)の合成>
上記重合実施例2において、ジアミン1の代わりにジアミン2を28g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−6)及びポリイミド(PI−6)を合成した。
【0095】
<重合実施例7;ポリアミック酸(PAA−7)及びポリイミド(PI−7)の合成>
上記重合実施例3において、ジアミン1の代わりにジアミン2を28g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−7)及びポリイミド(PI−7)を合成した。
【0096】
<重合実施例8;ポリアミック酸(PAA−8)及びポリイミド(PI−8)の合成>
上記重合実施例4において、ジアミン1の代わりにジアミン2を28g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−8)及びポリイミド(PI−8)を合成した。
【0097】
<重合実施例9;ポリアミック酸(PAA−9)及びポリイミド(PI−9)の合成>
上記重合実施例1において、ジアミン1の代わりに4,4’−ジアミノ−4’’−ヒドロキシトリフェニルアミン(ジアミン3)を29g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−9)及びポリイミド(PI−9)を合成した。
【0098】
<重合実施例10;ポリアミック酸(PAA−10)及びポリイミド(PI−10)の合成>
上記重合実施例2において、ジアミン1の代わりにジアミン3を29g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−10)及びポリイミド(PI−10)を合成した。
【0099】
<重合実施例11;ポリアミック酸(PAA−11)及びポリイミド(PI−11)の合成>
上記重合実施例3において、ジアミン1の代わりにジアミン3を29g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−11)及びポリイミド(PI−11)を合成した。
【0100】
<重合実施例12;ポリアミック酸(PAA−12)及びポリイミド(PI−12)の合成>
上記重合実施例4において、ジアミン1の代わりにジアミン3を29g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−12)及びポリイミド(PI−12)を合成した。
【0101】
<重合実施例13;ポリアミック酸(PAA−13)及びポリイミド(PI−13)の合成>
上記重合実施例1において、ジアミン1の代わりにジアミン4を31g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−13)及びポリイミド(PI−13)を合成した。
【0102】
<重合実施例14;ポリアミック酸(PAA−14)及びポリイミド(PI−14)の合成>
上記重合実施例2において、ジアミン1の代わりにジアミン4を31g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−14)及びポリイミド(PI−14)を合成した。
【0103】
<重合実施例15;ポリアミック酸(PAA−15)及びポリイミド(PI−15)の合成>
上記重合実施例3において、ジアミン1の代わりにジアミン4を31g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−15)及びポリイミド(PI−15)を合成した。
【0104】
<重合実施例16;ポリアミック酸(PAA−16)及びポリイミド(PI−16)の合成>
上記重合実施例4において、ジアミン1の代わりにジアミン4を31g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−16)及びポリイミド(PI−16)を合成した。
【0105】
<重合実施例17;ポリアミック酸(PAA−17)及びポリイミド(PI−17)の合成>
上記重合実施例1において、TCAを9.0g(0.04モル)、6FDAを26.7g(0.06モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−17)及びポリイミド(PI−17)を合成した。
【0106】
<重合実施例18;ポリアミック酸(PAA−18)及びポリイミド(PI−18)の合成>
上記重合実施例1において、TCAの代わりにBODAを10g(0.04モル)使用し、6FDAを26.7g(0.06モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−18)及びポリイミド(PI−18)を合成した。
【0107】
<重合実施例19;ポリアミック酸(PAA−19)及びポリイミド(PI−19)の合成>
上記重合実施例1において、TCAの代わりにDANを9g(0.04モル)使用し、6FDAを26.7g(0.06モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−19)及びポリイミド(PI−19)を合成した。
【0108】
<重合実施例20;ポリアミック酸(PAA−20)及びポリイミド(PI−20)の合成>
上記重合実施例1において、TCAの代わりにDCAPを9.5g(0.04モル)使用し、6FDAを26.7g(0.06モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−20)及びポリイミド(PI−20)を合成した。
【0109】
<重合比較例1;ポリアミック酸(PAA−21)及びポリイミド(PI−21)の合成>
テトラカルボン酸二無水物として4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)44g(0.1モル)、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノ−4’’−メチルトリフェニルアミン(ジアミン1) 28.9g(0.1モル)に対し、全体の固形分濃度が10wt%になるようNMPを加え、溶解させ、60℃で6時間反応させることによりポリアミック酸(PAA−21)を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、粘度を測定したところ、70mPa・sであった。
また、得られたポリアミック酸溶液について、重合実施例1にて述べた方法に従いイミド化反応を行い、これによりポリイミド(PI−21)を得た。得られたポリイミド(PI−21)の濃度5重量%NMP溶液の粘度及びポリイミド(PI−21)のイミド化率を下記表1に記す。
【0110】
<重合比較例2;ポリアミック酸(PAA−22)及びポリイミド(PI−22)の合成>
上記重合比較例1において、ジアミン1の代わりに4,4’−ジアミノトリフェニルアミン(ジアミン2)を28g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−22)及びポリイミド(PI−22)を合成した。なお、得られたポリアミック酸(PAA−22)の濃度10重量%NMP溶液の粘度、ポリイミド(PI−22)の濃度5重量%NMP溶液の粘度、及びポリイミド(PI−22)のイミド化率を下記表1に記す(以下の重合比較例3,4についても同じ。)
【0111】
<重合比較例3;ポリアミック酸(PAA−23)及びポリイミド(PI−23)の合成>
上記重合比較例1において、ジアミン1の代わりに4,4’−ジアミノ−4’’−ヒドロキシトリフェニルアミン(ジアミン3)を29g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−23)及びポリイミド(PI−23)を合成した。
【0112】
<重合比較例4;ポリアミック酸(PAA−24)及びポリイミド(PI−24)の合成>
上記重合比較例1において、ジアミン1の代わりに4,4’−ジアミノ−4’’−メトキシトリフェニルアミン(ジアミン4)を31g(0.1モル)使用した他は、重合実施例1の方法に従い、ポリアミック酸(PAA−24)及びポリイミド(PI−24)を合成した。
【表1】

【0113】
[メモリ素子スイッチング層形成用組成物の調製]
<調製実施例1;組成物(S−1)の調製>
上記重合実施例1で得られたポリイミド(PI−1)を、γ−ブチロラクトン(GBL)/N−メチルピロリドン(NMP)/ブチルセロソルブ(BC)に、各溶剤の混合重量比が73/15/12になるよう溶解させて固形分濃度4重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−1)を調製した。
【0114】
<調製実施例2〜20及び調製比較例1〜4;組成物(S−2)〜(S−24)の調製>
上記調製実施例1において、ポリイミド(PI−1)の代わりに、重合実施例2〜20及び重合比較例1〜4で得られたポリイミド(PI−2)〜(PI−24)をそれぞれ使用した他は、調製実施例1にて述べた方法に従い行い、これにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−2)〜(S−24)をそれぞれ調製した。各組成物(S−2)〜(S−24)の組成を下記表2に示す。
【0115】
<調製実施例21;組成物(S−25)の調製>
上記重合実施例1で得られたポリイミド(PI−1)を、γ−ブチロラクトン/N−メチルピロリドン/ブチルセロソルブに、各溶剤の混合重量比が80/15/5になるよう溶解させて固形分濃度4重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−25)を調製した。
【0116】
<調製実施例22〜40及び調製比較例5〜8;組成物(S−26)〜(S−48)の調製>
上記調製実施例1において、ポリイミド(PI−1)の代わりに、重合実施例2〜20及び重合比較例1〜4で得られたポリイミド(PI−2)〜(PI−24)をそれぞれ使用した他は、調製実施例21にて述べた方法に従い行い、これにより、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−25)〜(S−48)をそれぞれ調製した。各組成物(S−26)〜(S−48)の組成を下記表3に示す。
【0117】
[塗布性及びメモリ特性の評価]
<メモリ素子スイッチング層形成用組成物の塗布性の評価>
塗布性の評価用試料を以下の方法で作製した。先ず、片面全面にITO膜が形成された127mm(D)×127mm(W)×1.1mm(H)のガラス基板を用意し、このガラス基板に25℃の環境で印刷機(日本写真印刷株式会社製 オングストローマー S−40L)を用いて、調製実施例1〜40及び調製比較例1〜8にて調製された各組成物(S−1)〜(S−48)を、それぞれ孔径0.2μmのマイクロフィルターで濾過した後、透明電極面に塗布した。
【0118】
続いて、80℃に設定したホットプレート密着式予備乾燥機を用いて80℃で5分間予備乾燥し、次いでホットプレート密着式乾燥機を用いて220℃で20分間焼成し、ITO膜付きガラス基板上にメモリ素子スイッチング層を形成した。得られた膜の中央部10cm内における塗膜状態を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷ムラ及びピンホールの有無を調べ、これにより塗布性を評価した。評価結果を下記の表2及び表3に示す。塗布性評価は、印刷ムラが少なくピンホール発生数が0〜2個の場合を「優良」、印刷ムラがわずかに見られピンホール発生数が3個〜10個の場合を「良」、印刷ムラが顕著に見られピンホール発生数が11個〜50個の場合を「不良」として行った。
【表2】

【表3】

【0119】
表2に示すように、調製実施例1〜20では、いずれも溶剤に対するポリイミドの溶解性が良好であり、ポリマーの析出が見られなかった。また、ガラス基板上に塗布した場合に印刷ムラやピンホールがほとんど見られず、優れた塗布性を示した。
また、溶剤組成を変えた調製実施例25〜44についても、表3に示すように、いずれの組成物もポリマーの析出は見られなかった。これらのうち、調製実施例41〜44では、印刷ムラやピンホールがほとんど見られず、優れた塗布性を示した。また、調製実施例25〜40では、印刷ムラ及びピンホールがわずかに見られたものの、製品として十分に良好な塗布性を示した。
一方、比較調製例1〜8では、いずれもポリマーの析出は見られなかったが、基板上に塗布した際に印刷ムラが顕著に見られ、またピンホールも多く見られた。
【0120】
<スイッチング層のメモリ特性の評価>
電流−電圧特性の評価用試料としてメモリ素子を以下の方法で作製した。先ず、ガラス基板上にITO層(500nm)が予め形成された基板(25mm×25mm×1mm、旭硝子社製)をスピンコーターに設置した。次に、基板上に、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−1)を載せ、回転数800〜1500回転/秒にて60秒スピンコートした後、ホットプレート上にて80℃で3分間乾燥した。これにより、基板上にメモリ素子スイッチング層を約55nmの厚さで作製した。
【0121】
続いて、ITO/メモリ素子スイッチング層が形成された基板を真空蒸着器のチャンバ内の基板ホルダに設置した。チャンバ内の電極に、アルミニウムを巻き付けたフィラメントを取り付け、チャンバ内を減圧し、真空度1×10−5〜3×10−5Paの範囲、蒸着速度5〜7Å/秒の条件にて、陰極となるアルミニウムを膜厚300nmとなるように蒸着を行った。蒸着終了後はチャンバ内を大気圧に戻し、その後、基板を取り出した。以上のようにして、ガラス基板上にITO(500nm)/メモリ素子スイッチング層(55nm)/Al(300nm)の3層積層構造を有するメモリ素子を作製した。
また、ここでは、メモリ素子スイッチング層形成用組成物(S−2)〜(S−24)についても上記と同様の方法により評価試料用のメモリ素子を作製した。
【0122】
作製したメモリ素子について、デジタルソース・メータ(2400-C Source Meter、KEITHLEY社製)を用いて、メモリ素子のITOを陽極、Alを陰極として電流−電圧測定を行った。具体的には、先ず、メモリ素子の電極間に印加する電圧を0Vから4Vまで0.1Vずつ上昇させて電流−電圧測定を行い、続いて、印加電圧を4Vから0Vまで0.1Vずつ降下させて電流−電圧測定を行った。ポリイミド(PI−21)を含む組成物(S−21)を用いて作製したメモリ素子の測定結果を図1〜図4に示すとともに、それぞれのメモリ素子における電流−電圧特性の測定結果を下記表4に示す。
【表4】

【0123】
(組成物(S−21)のメモリ特性評価)
電極層間に印加される電圧を0Vから4Vまで0.1Vずつ上昇させて電流−電圧測定を行った結果を図1に示す。図1に示すように、正バイアス印加電圧2Vまでは、電流値がおよそ10−11Aの高抵抗状態を示したが、印加電圧2〜3Vにおいて電流値が急上昇し、印加電圧3Vでは、電流値がおよそ10−4Aと107倍大きくなり低抵抗状態に変化した。なお、それ以上の電圧印加でも同様の低抵抗状態が維持された。また、正バイアス電圧を再度印加したところ、図2に示すように低抵抗状態が維持され、繰り返し正バイアス電圧を4Vから0Vまで印加しても電流値10−4〜10−6Aが維持された。
【0124】
次に、電極層間に印加される電圧を0Vから−4Vまで0.1Vずつ降下させて電流−電圧測定を行った結果を図3に示す。図3に示すように、負バイアス印加電圧−2Vまでは、電流値がおよそ10−11Aの高抵抗状態を示したが、印加電圧−2V〜−3Vにおいて電流値が急上昇し、印加電圧−3Vでは、電流値がおよそ10−4Aと107倍大きくなり低抵抗状態に変化した。なお、更なる電圧印加でも同様の低抵抗状態が維持された。また、負バイアス電圧を再度印加したところ、図4に示すように低抵抗状態が維持され、繰り返し負バイアス電圧を0Vから−4Vまで印加しても電流値10−4〜10−6Aが維持された。これらのことから、組成物(S−21)を用いて作製したメモリ素子は良好なメモリ特性を有していることが分かった。なお、組成物(S−22)〜(S−24)についても同様の結果が得られた(表4参照)。
【0125】
(組成物(S−1)〜(S−20)のメモリ特性評価)
ポリイミド(PI−1)〜(PI−20)を含む組成物(S−1)〜(S−20)を用いて作製したメモリ素子についても、上記の図1〜図4と同様の電流−電圧特性を示した(表4参照)。このことから、組成物(S−1)〜(S−20)を用いて作製したメモリ素子についても良好なメモリ特性を示すことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ素子の陽極層と陰極層との間に配置されたスイッチング層を形成するのに用いるメモリ素子スイッチング層形成用組成物であって、
下記式(P−1)で表される繰り返し単位及び下記式(P−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p1)を有する重合体を含むことを特徴とするメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【化1】

(式(P−1)及び式(P−2)中、Rは脂環式構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【請求項2】
前記式(P−1)及び前記式(P−2)におけるRは、シクロペンタン構造又はビシクロ[3.3.0]オクタン構造を有する請求項1に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【請求項3】
前記式(P−1)及び前記式(P−2)におけるRは、下記式(A−1)〜(A−6)からなる群より選ばれる少なくとも1種で表される基である請求項2に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【化2】

(式(A−1)〜(A−6)中、「*1」及び「*2」は、それぞれ異なる炭素原子に結合する結合手を示す。但し、上記式(P−1)において、2つの「*1」の一方と2つの「*2」の一方とがそれぞれ異なるアミド基に結合し、上記式(P−2)において、2つの「*1」が一方のイミド基に結合し、2つの「*2」が他方のイミド基に結合する。)
【請求項4】
前記式(P−1)及び前記式(P−2)におけるRは、下記式(D−1)で表される基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【化3】

(式(D−1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、又は炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、kは0〜5の整数であり、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。但し、k、m、nが2以上の場合、複数のR〜Rは、それぞれ独立して上記定義を有する。)
【請求項5】
前記重合体は、該重合体を構成する繰り返し単位として、前記繰り返し単位(p1)と、下記式(P−3)で表される繰り返し単位及び下記式(P−4)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかの繰り返し単位(p2)と、を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【化4】

(式(P−3)及び式(P−4)中、Rは芳香環構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【請求項6】
前記繰り返し単位(p2)は、下記式(P−3−1)又は式(P−4−1)で表される請求項5に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【化5】

(式(P−3−1)及び式(P−4−1)中、Zは、−CO−、−O−、−SO−、−C(CF−又は−C(CH−であり、Rは、トリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)
【請求項7】
前記重合体を構成する全繰り返し単位に対する前記繰り返し単位(p1)の含有割合が、5〜50モル%である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【請求項8】
溶剤として、非プロトン性極性溶媒とエーテルとを含み、
前記溶剤の全量に対し、非プロトン性極性溶媒の含有割合が70〜95重量%であり、エーテルの含有割合が5〜30重量%である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のメモリ素子スイッチング層形成用組成物により形成されたスイッチング層を有するメモリ素子。
【請求項10】
メモリ素子の陽極層と陰極層との間に配置されたスイッチング層を形成するのに用いるメモリ素子スイッチング層形成用重合体であって、
下記式(P−1)で表される繰り返し単位及び下記式(P−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有するメモリ素子スイッチング層形成用重合体。
【化6】

(式(P−1)及び式(P−2)中、Rは脂環式構造を有する4価の基であり、Rはトリフェニルアミン構造を有する2価の基である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229322(P2012−229322A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98026(P2011−98026)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】