説明

メラニン生成抑制剤及びそれを含有してなる皮膚外用剤

【課題】
新規の美白素材を提供すること、及びこれを利用して、皮膚色素沈着症の予防、改善に対して優れた効果を発揮するばかりでなく、皮膚に対する安全性上の懸念がなく、安全に使用することができる皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(I)で表されるナフタレン誘導体を含有させることにより、美白効果を有する皮膚外用剤を得ることができる。
【化1】


(但し、式中のRは水素原子、アルキル基、アシル基又は糖残基を表わし;R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン生成抑制剤及びそれを含有してなる皮膚外用剤に関する。詳しくは、本発明は、美白用の該皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚におけるシミ、ソバカスや日焼け後の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。これらの皮膚色素トラブルを防止又は改善する目的で、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、又はカテコール等を配合した皮膚外用剤(特に美白剤)が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、このような美白剤の中には、安定性や安全性等の面から問題のあるものもある。すなわち、色素沈着症の予防又は改善に関し、アスコルビン酸類は、含水化粧料の如き水分を多く含む系においては、酸化されやすく不安定なことがあり、皮膚外用剤(美白剤)を変色させる原因となり得る。また、過酸化水素は保存上の安定性ならびに安全性上の問題があり、グルタチオンやコロイド硫黄は著しい異臭を放つため美白剤の成分として使用することは制約される。さらに、ハイドロキノン、カテコールは、皮膚刺激性、アレルギー性等の安全性に問題がある場合がある。また、これらの美白剤は何れも、有効に作用する場合があると同時に、作用しない場合があることが知られている。さらに、その原因については、詳細に知られていないのが現状である。
【0004】
このような状況の中、種々の色素沈着症に対応すべく、新規な骨格を有する美白素材の探索が行われ、ナフタレン骨格を有する化合物(以下、「ナフタレン類」とも称する)の中にも、メラニン生成を抑制する作用を持つものがあることが報告されている(特許文献1〜3を参照)。しかしながら、これらのナフタレン類を用いても、ヒトでの効果が充分でない等の問題があり、いまだ充分に満足すべき前記皮膚色素トラブルを防止又は改善する皮膚外用剤は得られていない。
【0005】
これらの目的のために、種々の植物からの抽出液を利用することも行われている。メキシカンアルニカ(Heterothca Inuloides)には、種々のセスキテルペン類が含有していることは報告されており、これらの中では、ナフタレン骨格を有する7−ヒドロキシ−カダレンについては、抗酸化作用、抗菌作用等があることが知られていた(非特許文献2及び3を参照)。また、その環系の還元体である7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンについては、メラニン生成抑制作用を有していることが報告されている(特許文献4を参照)。
【0006】
また、メキシカンアルニカを配合した化粧料等に関しては、メキシカンアルニカからの抽出物を0.001〜5質量%含有した美白化粧料(特許文献5を参照)、抽出物を0.00001〜10質量%含有させた抗炎症皮膚外用剤(特許文献6を参照)が知られている。
【0007】
しかしながら、このようなメキシカンアルニカからの抽出物を含有した美白化粧料でも、充分な効果が得られておらず、充分に満足すべき前記皮膚色素トラブルを防止又は改善する皮膚外用剤は得られていない。
【0008】
【特許文献1】特開平09−87127号公報
【特許文献2】特開2003−137716号公報
【特許文献3】特開2003−238585号公報
【特許文献4】特開2000−344619号公報
【特許文献5】特開平7−118139号公報
【特許文献6】特開平11−1080886号公報
【非特許文献1】武田克之ら監修、「化粧品の有用性 評価技術と将来展望」、薬事日報社刊(2001年)
【非特許文献2】Planta Medica、60,218−221、(1994)
【非特許文献3】J Natural Products、64,861−864、(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、1)新規の美白素材を提供すること、及び2)これを利用して、皮膚色素沈着症の予防、改善に好適な皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の置換基を有するナフタレン誘導体(具体的には一般式(I)で表される化合物及び/又はその塩)が、色素細胞のメラニン生成に対して強力な抑制効果を有することを見出した。さらに、上記ナフタレン誘導体を皮膚外用剤中に配合せしめた場合に、皮膚に対する優れた色素沈着症の予防及び改善効果を発現し、かつ安定性にも優れることを見い出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1) 下記一般式(I)で表される化合物及びその塩より選ばれる1種又は2種以上からなるメラニン生成抑制剤。
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、式中のRは水素原子、アルキル基、アシル基又は糖残基を表わし;R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
(2) 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である、(1)に記載のメラニン生成抑制剤。
【0014】
【化2】

【0015】
(但し、式中のRは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアシル基又は糖残基を表わす。)
(3) 前記一般式(I)で表される化合物が、7−ヒドロキシ−カダレンである、(1)に記載のメラニン生成抑制剤。
(4) 下記一般式(I)で表される化合物及びその塩から選択される1種又は2種以上と、皮膚外用剤基材を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【0016】
【化3】

【0017】
(但し、式中のRは水素原子、アルキル基、アシル基又は糖残基を表わし;R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
(5) 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)に表される化合物である、(4)に記載の皮膚外用剤。
【0018】
【化4】

【0019】
(但し、式中のRは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアシル基又は糖残基を表わす。)
(6) 前記一般式(I)で表される化合物が、7−ヒドロキシ−カダレンである、(4)に記載の皮膚外用剤。
(7) 前記一般式(I)で表される化合物及びその塩の含有率が、外用剤全体に対して0.02〜10質量%である、(4)〜(6)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(8) 医薬部外品であることを特徴とする、(4)〜(7)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(9) 美白化粧料であることを特徴とする、(4)〜(8)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(10) 前記一般式(I)に表される化合物及びその塩より選ばれる1種又は2種以上の単離物と、皮膚外用剤基材を混合する工程を含む、皮膚外用剤の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、新規なメラニン生成抑制素材が提供され、これにより美白化粧料に好適な皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(1)本発明のメラニン生成抑制剤
本発明のメラニン生成抑制剤は、ナフタレン骨格を有する一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」とも称する)及び/又はその塩からなる。
【0022】
本発明のメラニン生成抑制剤である化合物(I)の代表的な化合物として7−ヒドロキシ−カダレンが挙げられる。この7−ヒドロキシ−カダレンを含む各種セスキテルペン類は、メキシカンアルニカ中に含まれていることが報告されている。このようなセスキテルペン類の内、7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンが美白作用を有することは知られていた(特開2000−344619号公報)。しかしながら、7−ヒドロキシ−カダレンについては抗酸化作用、抗菌作用等があることが知られていたものの、強力なメラニン生成抑制作用を有し、美白剤として有用であることに関しては全く知られていなかった。また、7−ヒドロキシ−カダレンが優れた安定性を有することに関しても知られていなかった。
【0023】
本発明は、7−ヒドロキシ−カダレンが7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン等と比較して強力なメラニン生成抑制作用を有し、かつ、安定性に優れることを見出し、完成されたものである。
【0024】
文献(J Natural Products, 64, 861−864, (2001))によれば、メキシカンアルニカの地上部全草には、7−ヒドロキシ−カダレンが0.001質量%、その花部には0.00225質量%含有されていると報告されているが、その含有量は何れも微量である。したがって、メキシカンアルニカの抽出物をメラニン生成抑制剤として皮膚外用剤に使用しても、抽出物中に含まれる7−ヒドロキシ−カダレンは非常に微量であるため、外用剤に含まれる有効成分が充分ではなく、充分な効果が得られない。
【0025】
本発明では、化合物(I)及びその塩がメラニン生成抑制剤として好適であることが見出されたため、メラニン生成抑制剤を有効量含む皮膚外用剤の製造が可能となった。
【0026】
一般式(I)において、Rが水素原子であるものの他には、アルキル基、アシル基、糖残基であるものが挙げられる。
【0027】
アルキル基としては、炭素数1〜24のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が例示できる。
【0028】
アシル基としては、炭素数2〜24のアシル基が挙げられ、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、2−エチルヘキサノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基等例示できる。
【0029】
糖残基としては、一般的なグリコシド結合を形成しうる糖であれば使用可能であるが、グルコシル基、ガラクトシル基、マンノシル基、マルトシル基、ラクトシル基等が例示できる。
【0030】
これらの内では、水素原子であるものが好ましい。これは、活性を示す最小単位であり、単位質量当たりの比活性が最も強いからである。
【0031】
一般式(I)において、R〜Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表し、具体的には、前記アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が例示でき、これらの内ではメチル基が特に好ましい。
【0032】
すなわち、化合物(I)としては、Rが水素原子であり、R、R、R、Rが全てメチル基である化合物が最も好ましい。このような化合物は、7−ヒドロキシ−カダレンとして知られている化合物であり、メキシカンアルニカ等に含まれることが知られている。また、その合成法等も公知である(J. Org. Chem., 49, 34, (1984); J. Chem. Soc., 3319, (1965); J. Org. Chem., 52, 1072, (1987))。
【0033】
一般式(I)において、Rが水素原子であるものは、水酸基を形成しており、フリー体として本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリ等を用いて塩と為し、塩として使用することも可能である。このような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0034】
上記のように、化合物(I)は、メキシカンアルニカ等に含まれている。したがって、化合物(I)は、これらの植物体から得ることができる。具体的には、例えば、以下のようにして化合物(I)を得ることができる。メキシカンアルニカ等の植物体にメタノールなどの溶媒を加え、室温であれば数日、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、濾過した後濃縮する。この濃縮残渣を、酢酸エチルなどの水−非混和性有機溶媒と水で液−液抽出し、酢酸エチル層を濃縮する。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法(例えば、溶出溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=100/0→40/60)で分画・精製し、当該画分を濃縮する。このようにして精製したものには、化合物(I)が1〜10質量%含有しており、このものをメラニン生成抑制剤として使用することも可能である。さらに、酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1より再結晶化して、化合物(I)を単離することができる。しかし、1Kgの植物体から得られる化合物(I)は10〜20mgであり、以下に述べる化学合成法で得る方が、効率等の点で好ましい。
【0035】
化合物(I)は、化学合成によって製造することもでき、任意の方法で製造することができるが、例えば、下記のスキーム(スキーム1)で概略される方法に従って製造することが好ましい。また、当業者は、以下の方法を適宜変更して目的とする化合物を製造することができる。
【0036】
【化5】

【0037】
前記スキーム1における各反応について簡単に説明する。
o−メチルアニソールのベンゼン核に対して、コハク酸無水物をFriedel−Crafts反応させることにより化合物(A)を合成することができる。ここで、種々のo−アルキル置換アニソールを用いることにより、化合物(I)のRの置換基が異なる化合物が合成可能である。例えば、o−エチルアニソールを用いると、化合物(I)のRがエチル基の化合物へ導くことができる。ここで、該反応においては、塩化アルミニウム、ポリリン酸等のルイス酸を用いることができる。
【0038】
次いで、化合物(A)に、アルコール中、硫酸を反応させて、カルボン酸のエステル体(化合物(B))を合成することができる。このエステル化反応で使用するアルコールには制限はないが、通常は低分子のメタノール、エタノールが好ましい。カルボン酸の活性化に使用できる酸としては硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸等が例示できるが、本目的に合致すればいかなる酸でもよい。また、カルボン酸の活性化に塩化チオニル等を用いて酸クロリド等へ誘導してからエステル化してもよい。
【0039】
化合物(B)に対して、イソプロピル−マグネシウムブロミドを反応させることにより化合物(C)を、次いで水素で還元することにより、化合物(D)を合成することができる。ここで、種々のグリニャール試薬が使用可能であるが、例えば、2−ブロモブタンから誘導されるイソブチル−マグネシウムブロミドを用いると、化合物(I)のR、Rがメチル基とエチル基からなる化合物へ導くことができる。
【0040】
化合物(D)に対してポリリン酸等により、分子内Friedel−Crafts反応を行うことにより、化合物(E)が合成できる。
【0041】
この化合物(E)にメチル−マグネシウムヨーダイドを反応させることにより、化合物(F)が合成できる。ここで、種々のグリニャール試薬が使用可能であるが、例えばエチル−マグネシウムブロミドを用いることにより化合物(I)のRがエチル基である化合物へ導くことができる。
【0042】
化合物(F)をパラジウム−炭素で処理することにより、芳香環化させて化合物(G)を合成することができる。ここで、環の芳香化反応には、DDQ(ジクロロジシアノキノン)や硫黄も用いることができる。
【0043】
最後に、三臭化ホウ素で処理して、メトキシ基の脱保護を行うことにより、7−ヒドロキシ−カダレン(化合物(H))を合成することができる。
【0044】
また、化合物(F)をDMF(ジメチルフォルムアミド)に溶解し、EtSNa(エチルスルフィドナトリウム)を加えて、130℃で処理することにより、7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンを合成することができる。
【0045】
さらに、このようにして合成可能な7−ヒドロキシ−カダレンは、その分子内に水酸基を有しているので、この部分に修飾を行うことが可能である。このような修飾の内、アルキルエーテル化、アシルオキシ化、グリコシル化等の修飾が好ましい。修飾に関しては、任意の方法で行うことができるが、具体的には、例えば、塩基性条件下水溶液中/又はピリジン等の塩基性溶媒中で、アルキルブロミドと反応させることにより、アルキルエーテル体を合成することができる。また、塩基性条件下水溶液中/又はピリジン等の塩基性溶媒中で、ラウロイルクロリド等の酸塩化物と反応させることによりカルボン酸エステル体を合成することができる。また、カルボジイミド等の脱水縮合剤を用いることにより、カルボン酸類から直接カルボン酸エステル体とすることもできる。また、ペンタアセチルグルコシドやテトラアセチルグルコシルブロミドのようなアノメリック位の活性化されたグリコシド類と反応させることにより、グリコシド誘導体とすることができる。
【0046】
また、本発明のメラニン生成抑制剤としては、メキシカンアルニカ等の化合物(I)を含む植物の抽出物において、化合物(I)を選択的に濃縮した植物抽出物又は植物抽出物の分画物であってもよい。
【0047】
メキシカンアルニカ等には7−ヒドロキシ−カダレン以外に7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン等のメラニン生成抑制作用を有する化合物が存在する。例えば、メキ
シカンアルニカでは、7−ヒドロキシ−カダレンと7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンは、全草では1:1程度、花では1:10程度の質量比で含まれている。7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンに比べて、7−ヒドロキシ−カダレンは強力な活性を有し、かつ安定性にも優れるため、抽出物中に含まれる7−ヒドロキシ−カダレンを選択的に濃縮した植物抽出物又は植物抽出物の分画物は、メラニン生成抑制剤として有用である。すなわち、本発明のメラニン生成抑制剤において、例えば、シリカゲルカラムなどによる分画や酸化剤による芳香化等により、抽出物中の7−ヒドロキシ−カダレンの7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンに対する含有比が質量比で、通常1より大きくなるように、好ましくは3より大きくなるように、さらに好ましくは10より大きくなるように処理したものも好ましい形態の一つである。
【0048】
上記化合物(I)及びその塩は、下記の試験例にも示されているように、メラニン生成抑制作用を有する。したがって、化合物(I)及び/又はその塩を含む皮膚外用剤は皮膚に塗布された場合に、メラニン生成抑制作用に基づく優れた色素沈着症の予防及び改善、いわゆる美白効果を発揮する。したがって、化合物(I)及びその塩は、このような用途の皮膚外用剤の含有成分として用いることができる。
【0049】
また、かかる化合物(I)及びその塩は、メラニン生成抑制作用等の美白作用以外の作用、例えば、美肌作用や抗シワ作用等を発揮することがある。化合物(I)及びその塩を、この様な作用を目的として皮膚外用剤に含有させても、本発明の効果であるメラニン生成抑制作用等の美白作用を発揮することから、この様な用途の異なる配合技術も本発明の技術範囲に属する。
【0050】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記化合物(I)及び/又はそれらの塩を必須成分として含む。本外用剤に含まれる化合物(I)及び/又はそれらの塩は、一種類だけでもよく、二種類以上の組み合わせでもよい。
【0051】
本発明の皮膚外用剤は前述の通り、1種類又は2種類以上の上記化合物(I)及び/又はその塩を含む。該外用剤における上記化合物(I)及び/又はその塩の総含有率は、皮膚外用剤全体に対して、通常0.02質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0052】
化合物(I)において、Rが水素原子であり、R,R,R,Rがメチル基である化合物は7−ヒドロキシ−カダレンとして知られ、メキシカンアルニカに含有されていることが報告されている(その地上部全草には、7−ヒドロキシ−カダレンが0.001質量%含有されている)。また、メキシカンアルニカの抽出物を含有する化粧料も知られている。しかしながら、このような植物抽出物中に含有されている7−ヒドロキシ−カダレンの量は微量であり、このような植物抽出物を配合させるのみでは、本発明による0.02〜10質量%の7−ヒドロキシ−カダレンを皮膚外用剤中に含有させることは困難である。
【0053】
例えば、特開平07−118139号公報においては、メキシカンアルニカの茎葉100gより抽出物7.4gを得、これを皮膚外用剤に0.001〜5質量%含有させることが記載されている。この場合には、抽出物を5質量%濃度で配合しても、外用剤中に7−ヒドロキシ−カダレンは0.000675質量%しか含有されない。
【0054】
さらに、特開平11−1080886号公報には、メキシカンアルニカより抽出物を得、これを疎水性樹脂カラム精製した後、乾固したものを皮膚外用剤に0.0001〜10
質量%含有させることが記載されているが、この場合にも、抽出物を10質量%濃度で配合しても、外用剤中に7−ヒドロキシ−カダレンは0.00189質量%しか含有されない。
【0055】
いずれにしても、本発明の皮膚外用剤のように0.02質量%以上の7−ヒドロキシ−カダレンを含有させるには、一般的な植物抽出物を用いては不可能である。単純に考えても、7−ヒドロキシ−カダレンを0.02質量%以上含有した製剤を作製するには、製剤中にメキシカンアルニカ抽出乾固物を100質量%以上含有させなくてはならず、物理的に不可能である。したがって、7−ヒドロキシ−カダレンに着目して、その成分を濃縮するような製造工程を経るか、又は、有機合成にて純粋品を得て、配合する必要がある。
【0056】
本発明の皮膚外用剤に含まれる上記化合物(I)及び/又はその塩は、メラニン生成抑制作用を発揮し、該外用剤に優れた美白効果を発揮させうる。皮膚外用剤中の上記化合物(I)及び/又はその塩の含有率が、0.02質量%以上であれば、該外用剤に十分な美白効果を発揮させることができる。
【0057】
さらに、本発明の皮膚外用剤における上記化合物(I)及び/又はその塩の好ましい含有率は、該皮膚外用剤の用途、又は塗布される部位によって異なりうる。具体的に述べれば、本発明の皮膚外用剤を、日焼けによるシミ、ソバカス、色黒を予防することを目的とした化粧料の如き皮膚外用剤として用いる場合には、0.02質量%以上であることが好ましい。また、本発明の皮膚外用剤を、色素沈着症の改善を目的とした医薬部外品や皮膚外用医薬品として用いる場合には、0.05質量%以上、さらに言えば0.1質量%以上が有効含有率として望ましい。つまり、含有率が0.02質量%より少なくなると、後記試験例においても示されているように、メラニン生成抑制作用がかなり低下する傾向がある。一方、含有率を10質量%超としても効果が頭打ちになる。よって、本発明の皮膚化粧料は、上記化合物(I)及び/又はその塩を上記範囲で含有することが望ましい。
【0058】
本発明の皮膚外用剤は、上記化合物(I)及び/又はその塩の他に、皮膚外用剤基材を含む。皮膚外用剤基材としては、医薬品、化粧品等に一般的に用いられる各種成分、すなわち、油脂、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール、エステル類、油剤、水性成分、粉末成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、色剤(無機顔料、パール剤、有機色素類)、香料、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤等であり、紫外線防御剤、抗炎症剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材は、具体的には、例えば、
油脂、ロウ類及び炭化水素類としては、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ゲイロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類が挙げられ、
脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類が挙げられ、
高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられ、
エステル類としては、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコー
ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット等の合成エステル油類が挙げられ、
油剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0060】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
水性成分としては、フコインダン、魚類由来のコラーゲン加水分解液等が挙げられる。
【0061】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
粉末成分としては、表面を処理されていても良いマイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の無機粉体類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類が挙げられる。
【0062】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(POEモノラウレート、POEモノステアレート、POE(ポリエチレングリコール)モノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル、POEセチルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POP共重合体類(POEポリオキシプロピレングリコール等)、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類等が挙げられる。
【0063】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
保湿剤としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウ
ム等が挙げられ、
増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0064】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
色剤として、無機顔料としては、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、
パール剤類としては、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等が挙げられ、
有機色素類としては、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等が挙げられる。
【0065】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
香料としては、ビザボロール、オイゲノール、シネオール等が挙げられる。
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
抗酸化剤としては、BHT、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
キレート剤としては、エデト酸四ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸等が挙げられる。
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
防腐剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、イソプロピルパラベン、フェノキシエタノール、ヒビテン、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0066】
本発明の皮膚外用剤に含まれる皮膚外用剤基材の内、
紫外線防護剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等が挙げられ、
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム塩、グリチルレチン酸ステアリル等が挙げられる。
【0067】
さらに本発明の皮膚外用剤は、低級アルコール類(エタノール、イソプロパノール等)、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエート、ビタミンB又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタ
ミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等を含みうる。
【0068】
また、本発明の皮膚外用剤は、上記化合物(I)及びその塩の効果を損ねない限り、化合物(I)及び/又はその塩以外の美白成分又は美白剤をさらに配合されても良い。そのような美白成分又は美白剤としては、例えば、パンテテイン−S−スルホン酸、イソフェルラ酸、アスコルビン酸リン酸塩、ルシノール、アルブチン、コウジ酸、リノール酸、リノール酸メチル等が挙げられる。
【0069】
本発明の化合物(I)及びその塩は、皮膚に吸収されてその効果を発揮するので、皮膚への吸収促進効果の強い成分を併用することが好ましい。そのような吸収促進作用を有するものとしては、低分子量で皮膚への馴染みのよい多価アルコール等が好ましく挙げられる。その中でも皮膚への親和性、安全性、溶解性の面から、1,3−ブチレングリコールが特に好ましい。
【0070】
本発明の皮膚外用剤の剤型は任意であり、通常皮膚外用剤に用いられる剤型であれば何れでも良く、例えば化粧水、乳液、軟膏、クリーム、ローション、パック等の剤型が挙げられる。
【0071】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚に連続して貯留する形態で使用される形態、例えば化粧水、乳液、軟膏、クリーム、ローションであることが望ましい。また、パック料等は連続する作用時間が短いが、閉塞による効果があるので好ましい形態の一つである。一方、洗浄剤等の一過性の処置において使用されるものは好ましくない形態である可能性がある。これは本発明の皮膚外用剤に含まれる上記化合物(I)及び/又はその塩が、皮膚内に浸透して、メラニン生成抑制作用を示すからである。
【0072】
本発明の皮膚外用剤は、医療用、非医療用(化粧用を含む)のいずれの皮膚外用剤であってもよいが、好ましくは非医療用である。したがって、本発明の皮膚外用剤は医薬部外品に分類されることが望ましく、パッケージに「医薬部外品」である旨の表示が付されていることが好ましい。該パッケージには、医薬部外品としての使用態様を明確に記して、通常の化粧料と区別できるようにすることが、医薬部外品としての効果をより向上できるために好ましい。この様な使用態様に係わる表示としては、本医薬部外品がメラニンの生成を抑制し、以て美白作用を発現する旨の表示、1日1回乃至数回、シミ、そばかすの気になる部位の周囲に適量を塗布する旨の表示、塗布部位に異常を感じた場合には、速やかに使用を中止、皮膚科医に相談すべき旨の表示等が好ましく例示できる。
【0073】
本発明の皮膚外用剤は、上記化合物(I)及び/又はその塩を含むこと以外は、通常の皮膚外用剤の製造と同様にして製造することができる。
【0074】
以下に実施例及び試験例を示して、本発明についてさらに詳細に説明を加えるが、本発明がこれらの実施例及び試験例によって限定を受けないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0075】
<7−ヒドロキシ−カダレンの合成>
なお、以下の実施例中、化合物(A)〜(H)は、前記スキーム1における化合物を示す。
【0076】
(化合物(A)の合成)
窒素雰囲気下、500ml4つ口フラスコに1、2−ジクロロエタン(127ml)、o−メチルアニソール(15.9g;0.130mol)及びコハク酸無水物(15.0
g;0.150mol)を加えた懸濁液に氷冷下、塩化アルミニウム(34.7g;0.260mol)を少しずつ加えた。常温で、一晩撹拌後、氷水(400ml)に加えた。濃塩酸(15ml)を加え、pH1にし、酢酸エチルにて抽出した。酢酸エチル層を、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、化合物(A)を白色結晶(31.0g;0.139mol)として得た。
【0077】
(化合物(B)の合成)
窒素雰囲気下、200ml4つ口フラスコにメタノール(130ml)、化合物(A)(31.0g;0.139mol)及び硫酸(6.5ml)を加え、還流下4時間撹拌した。反応液を氷冷し、析出した結晶を濾過、冷メタノールで洗浄後、乾燥し、化合物(B)を白色結晶(29.2g;0.124mol)として得た。
【0078】
(化合物(C)の合成)
窒素雰囲気下、500ml4つ口フラスコにベンゼン(145ml)及び化合物(B)(29.0g;0.123mol)を加えた懸濁液に、イソプロピル−マグネシウムブロミド−THF(テトラヒドロフラン)溶液(160ml)を氷冷下滴下した。滴下終了後、還流下Dean−Starktrapにて、THFを留去しながら外温95℃で4時間撹拌した。氷冷した反応液に0.5M−硫酸(220ml)を滴下し、その後ジエチルエーテル(150ml)にて抽出した。ジエチルエーテル層を10%炭酸ナトリウム(200ml)で抽出し、水層をジエチルエーテルで洗浄後、5M−塩酸(100ml)を加えた。ジエチルエーテル(200ml)で抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、化合物(C)を褐色油状物(15.4g;62mmol)として得た。
【0079】
(化合物(D)の合成)
300mlオートクレーブにエタノール(150ml)、化合物(C)(11.0g;44.3mmol)、10%水酸化カリウム水溶液(1.1ml)及び10%パラジウム炭素(0.8g)を加えた後、水素を添加し、0.4MPa、40℃にて1日攪拌した。ろ過後、濾液に1N−塩酸(1.7ml)を加え、減圧濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで溶かし、希塩酸及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することにより化合物(D)を淡黄色油状物(10.0g;40.0mmol)として得た。
【0080】
(化合物(E)の合成)
500mlナス型フラスコに化合物(D)(20.0g;79.9mmol)及びポリリン酸135gを加え、87℃で30分間撹拌した。放冷後、氷水(300ml)を加え、ジエチルエーテル(200ml)で抽出した。水層を酢酸エチル(500ml)にて再度抽出し、有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮し、褐色油状物(20g)を得た。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1〜20/1)で精製し、化合物(E)を褐色油状物(6.2g;26.7mmol)として得た。
【0081】
(化合物(F)の合成)
窒素雰囲気下、300ml4つ口フラスコに乾燥ジエチルエーテル(30ml)及びメチル−マグネシウムヨーダイド−ジエチルエーテル溶液(33.9ml)を加え、−10℃で化合物(E)(6.2g;26.7mmol)のジエチルエーテル溶液(33.9ml)を滴下した。室温で30分間撹拌後、還流下Dean−Starktrapにて、ジエチルエーテルを1時間かけて、留去した。残渣にベンゼン(80ml)、水(80ml)及び4M−塩酸(60ml)を加え、10分間、室温で撹拌した。反応液をイソプロピルエーテルで抽出し、飽和重曹水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥
した。イソプロピルエーテル層を減圧濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1〜20/1)で精製し、化合物(F)を黄色油状物(5.6g;24.3mmol)として得た。
【0082】
(化合物(G)の合成)
窒素雰囲気下、300ml4つ口フラスコにデカリン(35ml)、化合物(F)(1.5g;6.51mmol)及び10%パラジウム炭素を加え、加熱還流下10時間撹拌した。放冷後、濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1〜10/1)で精製し、化合物(G)を白色結晶(1.5g;6.57mmol)として得た。
【0083】
(化合物(H;7−ヒドロキシ−カダレン)の合成)
窒素雰囲気下、300mlナス型フラスコにジクロロメタン(62ml)及び化合物(G)(1.5g;6.57mmol)を加え、氷冷下、三臭化ホウ素(2.2ml)を滴下した。室温で2時間撹拌後、氷水(200ml)に加えた。イソプロピルエーテルで抽出後、水、2%重曹水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、濃縮して得られた結晶を、ヘキサンにて洗浄し、化合物(H;7−ヒドロキシ−カダレン)を白色結晶(1.08g;5.04mmol)として得た。
【0084】
H−NMR(CDCl);1.36(6H、s)、2.41(3H、s)、2.59(3H、s)、3.67(1H、m)、7.14(1H、s)、7.15(2H、s)、7.7(1H、s)、7.87(1H、s)
【0085】
<7−ヒドロキシ−カダレンの各種誘導体の合成>
7−ヒドロキシ−カダレンの各種誘導体の合成に関して、以下に実施例を示す。
【実施例2】
【0086】
(7−ヒドロキシ−カダレンの2−エチルヘキシルエーテル体の合成)
7−ヒドロキシ−カダレン(100mg;0.467mmol)をピリジンに溶解し、2−エチルヘキシルブロミド(100mg;0.518mmol)を加えて、3時間加熱還流した。減圧下、濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1〜20/1)で精製し、2−エチルヘキシルエーテル体を無色油状物(114mg;0.442mmol)として得た。
【実施例3】
【0087】
(7−ヒドロキシ−カダレンのラウリン酸エステル体の合成)
7−ヒドロキシ−カダレン(100mg;0.467mmol)をピリジンに溶解し、ラウロイルブロミド(140mg;0.533mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。減圧下、濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40/1〜20/1)で精製し、ラウリン酸エステル体を白色結晶(175mg;0.442mmol)として得た。
【実施例4】
【0088】
(7−ヒドロキシ−カダレンのグルコシル体の合成)
7−ヒドロキシ−カダレン(100mg;0.467mmol)を1,2−ジクロロエタンに溶解し、テトラアセチルグルコシルブロミド(230mg;0.660mmol)及び酸化銀(100mg)を加えて、遮光下、室温で一晩撹拌した。濾過後、濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をメタノールに溶解し、1N−ナトリウムメトキシドを加えて、30分間室温で撹拌した。反応液を濃縮後、カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=98/2〜80/20)で精製し、グルコシル体を白色結晶(140mg;
0.372mmol)として得た。
【0089】
<本発明の化粧料>
以下に、本発明の化粧料の製造例(実施例5〜8)を示す。
【実施例5】
【0090】
下記に示す処方に従って水中油クリームを作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し、80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却した。
【0091】
(A)
POE(30)セチルエーテル 2.0 質量%
モノステアリン酸グリセリン 10.0 質量%
流動パラフィン 10.0 質量%
ワセリン 4.0 質量%
セチルアルコール 5.0 質量%
γ−トコフェロール 0.05質量%
BHT 0.01質量%
ブチルパラベン 0.1 質量%
7−ヒドロキシ−カダレン 1.0 質量%
(B)
1,3−ブチレングリコール 10.0 質量%
精製水 57.84質量%
【実施例6】
【0092】
下記に示す処方に従って乳液を作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、70℃に加熱した。一方、(B)の各成分を混合し、70℃に加熱した。(B)の混合物に、(A)の混合物を加えて予備乳化を行い、さらにホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かき混ぜながら30℃にまで冷却して、乳液を得た。
【0093】
(A)
合成ゲイロウ 2.5 質量%
セチルアルコール 1.0 質量%
スクワラン 4.0 質量%
ステアリン酸 1.0 質量%
POEモノステアレート(25EO) 2.2 質量%
モノステアリン酸グリセリン 0.5 質量%
γ−トコフェロール 0.05質量%
BHT 0.01質量%
ブチルパラベン 0.1 質量%
7−ヒドロキシ−カダレン 0.1 質量%
(B)
1,3−ブチレングリコール 3.0 質量%
プロピレングリコール 7.0 質量%
キサンタンガム 0.1 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
水酸化カリウム 0.2 質量%
精製水 78.04質量%
【実施例7】
【0094】
下記に示す処方に従って化粧水を作製した。すなわち、(A)の各成分を混合し、室温下で溶解させた。一方(B)の各成分を室温下で混合し、溶解させた。(B)の混合物に、(A)の混合物を加えて可溶化させた。
【0095】
(A)
POE(20)ソルビタンモノラウレート 1.5質量%
POE(20)モノラウレート 0.5 質量%
エタノール 10.0 質量%
γ−トコフェロール 0.02質量%
(B)
7−ヒドロキシ−カダレン−グルコシド 0.02質量%
グリセリン 5.0 質量%
プロピレングリコール 4.0 質量%
イソフェルラ酸ナトリウム 0.05質量%
クエン酸 0.15質量%
クエン酸ナトリウム 0.1 質量%
精製水 78.66質量%
【実施例8】
【0096】
下記に示す処方に従ってパック料を作製した。すなわち、(A)の各成分を室温にて分散溶解させ、これに(B)の混合物を加えて均一に溶解させた。
(A)
ポリビニルアルコール 15.0 質量%
精製水 40.0 質量%
(B)
ビザボロール 0.5 質量%
γ−トコフェロール 0.02質量%
エタノール 4.0 質量%
7−ヒドロキシ−カダレン−ラウリルエステル 3.0 質量%
POE(8)ポリオキシプロピレングリコール 3.0 質量%
精製水 34.48質量%
【0097】
<本発明のナフタレン誘導体の色素細胞の淡色化試験>
<試験例1>
プラスチック培養フラスコ(25cm)24本それぞれに、10%牛胎児血清を含むイーグルMEM培地を5ml入れ、このフラスコ内の培地にそれぞれ培地1ml当たり1.8×10個のマウスメラノーマ細胞(B−16細胞)を播種し、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で一昼夜培養を行った。その後、前記フラスコを3本ずつ8組に分け、そのうち4組には実施例1で合成した7−ヒドロキシ−カダレンのDMSO(ジメチルスルフォキシド)溶液を、培地中における7−ヒドロキシ−カダレンの濃度が2,5,10,20μMとなるように添加し、また別の3組にはチロシナーゼ阻害剤として知られるフェニルチオウレアのDMSO溶液を、培地中におけるフェニルチオウレアの濃度がそれぞれ20,50,100μMとなるように添加し、さらに残りの1組にはDMSO溶液のみを添加し、上記培養と同様の条件(37℃、5%CO)でさらに2日間培養した。なお、7−ヒドロキシ−カダレンの濃度2μMは0.0000428質量%に該当する。
【0098】
培養終了後、上記各培養フラスコから培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水溶液)で洗浄後、トリプシン及びEDTA含有溶液を使用してフラスコ壁面より細胞を剥離し細胞懸濁液とし、遠心分離にて細胞を回収した。この際、各フラスコ毎に、回収した細胞の数量をコールターカウンターで測定した。
【0099】
DMSO溶液のみを添加した場合の細胞量に対する、7−ヒドロキシ−カダレンを添加したフラスコにおける細胞量の百分率をそれぞれ求め、さらに各濃度においてフラスコ3本の平均値を求めた。得られた値を以下の評価基準によって評価した。結果を表1に示す。
【0100】
(評価基準)
→ :100%(コントロールと同等)
↓ :80%以上100%未満
↓↓:50%以上80%未満
↓↓↓:50%未満
死滅 :細胞が確認できない
【0101】
また、上記回収された7−ヒドロキシ−カダレン添加の各フラスコにおける細胞について、その色調を、コントロール及びフェニルチオウレア添加のフラスコにおける回収細胞の各添加濃度毎の平均的な色調と比較して、以下の評価基準により評価した。この結果も表1に示す。
【0102】
(評価基準)
− :コントロールの細胞と同等の色調
± :フェニルチオウレア20.0μM添加の細胞と同等の色調
+ :フェニルチオウレア50.0μM添加の細胞と同等の色調
++:フェニルチオウレア100.0μM添加の細胞と同等の色調
ここで、マウスメラノーマ培養細胞の色調は、培養の際に添加されたフェニルチオウレアの量が多いほど、淡色化の度合いが大きい。
【0103】
【表1】

【0104】
細胞量は、7−ヒドロキシ−カダレンの何れの濃度においてもコントロールと同等であった。また、色調に関して、例えば、7−ヒドロキシ−カダレン10μM添加で、フェニルチオウレア100μM添加と同等の効果が見られた。すなわち、7−ヒドロキシ−カダレンはフェニルチオウレアの10倍以上のメラニン生成抑制作用を有する。
【0105】
<試験例2>
試験例1と同様の試験を、試験例1における7−ヒドロキシ−カダレンを、実施例2〜4で合成した、エーテル体、エステル体、グリコシル体にそれぞれ置換して行った。その結果を表2から表4に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
細胞量は、エステル体20μMを除き、コントロールと同等であった。なお、エステル体20μMでもほぼコントロールと同等であった。また、色調に関して、7−ヒドロキシ−カダレン誘導体のほとんどの濃度において、フェニルチオウレアより高い効果が見られた。
【0110】
<本発明の化粧料の実使用テスト>
<試験例3>
次に、上記の結果を踏まえ、本発明の皮膚外用剤の皮膚色素沈着症の予防及び改善に対する効果を調べた。実施例5で製造した水中油型クリーム及び実施例7で製造した化粧水を用いて、長期連続使用による実使用テストを行い、その効力を確認した。比較品としては、実施例5における7−ヒドロキシ−カダレンを精製水に置き換えて調製した水中油型クリームを用いた。
【0111】
すなわち、色黒、シミ、ソバカスに悩む女性ボランティア60名を、統計的に同等な3群に分け、A群の顔面には、本発明品である実施例5の水中油型クリームを、B群の顔面には、実施例7の化粧水を、C群の顔面には比較品の水中油型クリームをそれぞれ3ヶ月間使用してもらった。3ヶ月後の色素沈着に対する改善効果を肉眼観察により評価し、群間比較を行った。その結果を表5に示す。なお、有効率はやや改善以上の効果が認められた場合を有効とした。
【0112】
【表5】

【0113】
表5の結果に示されるように、本発明の皮膚外用剤である実施例5の水中油型クリームの有効率は85%であり、比較品の皮膚外用剤の有効率10%に比べて、格段に有効な色素沈着症の予防及び改善効果を有することが証明された。また、実施例7の化粧水においても実施例5ほどではないが、改善効果が認められた。なお、本発明品の塗布部位において好ましくない反応は観察されず、本発明品の外用剤は、安全性の高いことも併せて確認された。
【0114】
<7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンのメラニン生成抑制作用及び細胞毒性の評価>
<試験例4>
メラニン合成過程に特異的に細胞に取り込まれるチオウラシル(試験では14Cラベルしたチオウラシルを使用)を用いて、7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンのメラニン生成抑制作用を評価した。12ウェルのマイクロタイタープレートを2枚使用し、その各ウェルにメラノサイト培養用完全培地(倉敷紡績株式会社製)を入れ、各ウェルにそれぞれ1×10cells/cm2の濃度でヒト正常メラノサイト細胞(倉敷紡績株式会社製)を播種し、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で一昼夜培養を行った。その後、すべての培地を以下の条件で培地交換した。すなわち3ウェルは新しい培地(コントロール)、別の3ウェルは 50μMルシノール(4−n−ブチルレゾルシノール:株式会社クラレ製)含有培地(ポジティブコントロール)を、別の9ウェルは、1,5,10μM 7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン含有培地(各濃度n=3)、別の9ウェルは、1,5,10μM 7−ヒドロキシ−カダレン含有培地(各濃度n=3)である。さらにすべてのウェルに14Cラベル−チオウラシルを0.1マイクロCi添加した。そして、上記培養条件と同様の条件でさらに4日間培養した。
【0115】
培養終了後、上記各ウェルから培養液を除去し、PBSで洗浄後、トリプシン及びEDTA含有溶液を使用してウェル壁面より細胞を剥離し細胞懸濁液とし、遠心分離にて細胞を回収した。その後、各ウェルの回収した細胞における14C−チオウラシルの量を液体シンチレーションカウンターで測定した。
【0116】
DMSO溶液のみを添加した細胞における放射線量に対する、各種化合物を添加した細胞における放射線量の百分率をそれぞれ求めた。結果を図1に示す。なお、実験は2回繰り返して行ったが、ほぼ同様の結果が得られたため、図1にはその内の一回の結果を示す。
【0117】
メラニン生成抑制作用に関し、7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン,7−ヒドロキシ−カダレンともに濃度依存的なメラニン生成抑制作用が見られた。なお、ポジティブコントロールであるルシノール50μMと、7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン10μM、7−ヒドロキシ−カダレン5μMが同等のメラニン生成抑制力価を示した。すなわち、7−ヒドロキシ−カダレンは7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレ
ンの約2倍の抑制力価を有することが示された。
【0118】
また、上記培養系において、培養終了後の4時間前に各ウェルにWST−8試薬を添加した(細胞数測定用WST−8キット(ナカライテスク社製))。そして培養終了時に培養液をマイクロプレートリーダーにて吸光度(450nm)を測定し、コントロールに対する生細胞数の割合を算出した、結果を図2に示す。
【0119】
7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレン,7−ヒドロキシ−カダレンのいずれの濃度でも細胞毒性は観察されなかった。
【0120】
<7−ヒドロキシ−カダレン,7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンの安定性の評価>
<試験例5>
7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンの室温・露光条件での安定性を評価した。7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンを70%アセトニトリル水溶液に各々11.4mg/20ml(0.057%)、12.8mg/20ml(0.064%)となるよう溶解した。5μlをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)(HPLC機器:ヒューレットパッカード社製HP1090 seriesII及び同社製HP3396 seriesIIインテグレーター,カラム:TSK-gel ODS80Ts(4.6mm×15cm)及び同ガードカラム(3.2mm×1.5cm),検出:UV254nm)により分析した。
【0121】
7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンの70%アセトニトリル溶液を、メスフラスコのままパラフィルムで密封し、外部から直射日光が当たらない状態で放置した。色調の変化を観察するとともに(調製直後はいずれも無色透明、判定基準は下記表6による)、一定量サンプリングしてHPLC分析を行った。
【0122】
【表6】

【0123】
残存率を図3に、色調の経時変化を図4に示した。7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンは放置2週間後から急激に残存率が低下するとともに黄色化が進行したのに対し、7−ヒドロキシ−カダレンは放置3週間後から残存率が低下するとともに黄色化が進行した。この結果より、7−ヒドロキシ−カダレンは7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンと比較するとより安定であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のメラニン生成抑制剤は、美白用の化粧料等の皮膚外用剤に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンによるメラニン生成抑制作用評価の結果を示す図である。
【図2】図2は、7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンによる細胞毒性評価の結果を示す図である。
【図3】図3は、7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンの安定性試験(残存率)の結果を示す図である。
【図4】図4は、7−ヒドロキシ−カダレン及び7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−カダレンの安定性試験(色調変化)の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物及びその塩より選ばれる1種又は2種以上からなるメラニン生成抑制剤。
【化1】

(但し、式中のRは水素原子、アルキル基、アシル基又は糖残基を表わし;R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1に記載のメラニン生成抑制剤。
【化2】

(但し、式中のRは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアシル基又は糖残基を表わす。)
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物が、7−ヒドロキシ−カダレンである、請求項1に記載のメラニン生成抑制剤。
【請求項4】
下記一般式(I)で表される化合物及びその塩から選択される1種又は2種以上と、皮膚外用剤基材を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【化3】

(但し、式中のRは水素原子、アルキル基、アシル基又は糖残基を表わし;R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表わす。)
【請求項5】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)に表される化合物である、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【化4】

(但し、式中のRは水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアシル基又は糖残基を表わす。)
【請求項6】
前記一般式(I)で表される化合物が、7−ヒドロキシ−カダレンである、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記一般式(I)で表される化合物及びその塩の含有率が、外用剤全体に対して0.02〜10質量%である、請求項4〜6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
医薬部外品であることを特徴とする、請求項4〜7の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
美白化粧料であることを特徴とする、請求項4〜8の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
前記一般式(I)に表される化合物及びその塩より選ばれる1種又は2種以上の単離物と、皮膚外用剤基材を混合する工程を含む、皮膚外用剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182689(P2006−182689A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377149(P2004−377149)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】