説明

モニタリング装置

【課題】制御伝送装置からのノッチ情報だけでなく、ブレーキ制御装置におけるノッチ情報の認識の適否を判定する機能を備えたモニタリング装置を提供する。
【解決手段】制御伝送中央装置20のノッチ情報取得手段21により、この入力されたノッチ情報を取得し、中央制御部22は、当該ノッチ情報を伝送処理手段23を通じてモニタリング中央装置10とブレーキ制御装置30に出力する。ブレーキ制御装置30は、このノッチ情報に従いブレーキ力データと、このノッチ情報をモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。モニタリング中央装置10では、検査制御部11のブレーキノッチ情報判定手段11cが、ブレーキ制御装置30が制御伝送端末装置20aから取得したノッチ情報を認識し、その適否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が搭載する各機器に対して行う各種の検査機能を備えたモニタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両が搭載する各種機器の検査をするための試験装置として、自動検査機能を搭載した車上の運転台に設置されるモニタリング装置が一般的に使用されている。また、このような自動検査機能を有するモニタリング装置は、従来から交番検査、全般検査等に用いられている。
【0003】
この自動検査機能とは、例えば、ブレーキ試験で言えば、車両からのブレーキノッチ、速度パルス等の情報を読取って所定の制御プログラムに基づいて演算処理を行い、走行条件に対応したブレーキ力データを車両へ出力し、このブレーキ力データと基準値とを対比することでブレーキ動作の適否を判断するものである。
【0004】
また、以前は手動によってもブレーキ試験を行っており周波数発生器で発生させた速度パルスを入力し、手動操作により模擬的にアナログ信号等を発生させることで、車両から出力されたブレーキ力データを測定し、当該測定値と所定の基準値とを照合させてブレーキ試験の適否を判断していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような自動検査機能のうち、制御装置を使用してブレーキ試験を実施する場合では、主幹制御装置であるマスコンからのノッチ情報を制御装置からブレーキ制御装置に送信することで当該ブレーキ制御装置の出力値であるブレーキ力データを試験の判定対象としていた。また、このような方法では、上記制御装置で取得したノッチ情報をモニタリング装置に送信する。
【0006】
そのため、モニタリング装置において、制御装置に接続されたマスコンから取得したノッチ情報の適否やブレーキ制御装置から出力されたブレーキ力データの適否を検査することは可能であった。
【0007】
また、上記制御装置には、列車を走行させるためのトルクを発生させる主変換装置が接続されているのが一般的であり、モニタリング装置上では、この主変換装置からの出力である電流データを表示させることでユーザに確認させていた。
【0008】
しかしながら、このようなモニタリング装置では、制御装置からのノッチ情報を直接認識することができる一方で、ブレーキ制御装置に送られた制御装置からのノッチ情報に関して、当該ブレーキ制御装置が適切に認識しているかの判断は行われていなかった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解消するために提案されたものであって、その目的は、制御伝送装置からのノッチ情報だけでなく、ブレーキ制御装置で認識したノッチ情報をも受け付け、当該ブレーキ制御装置における認識の適否を判定する機能を備えたモニタリング装置を提供することにある。また、主変換装置におけるノッチ情報の認識の適否を判定する機能を有することも本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、車両に搭載する機器に対して各種の検査を行い、検査結果を出力するモニタリング装置において、前記各機器を制御する制御装置からの前記車両に対する力行又はブレーキのノッチ情報を受け付け、検査対象の機器が認識した前記車両に対する力行又はブレーキのノッチ情報を受け付け、前記制御装置からのノッチ情報と、前記検査対象の機器が認識したノッチ情報と、が一致するかを判定する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記検査対象の機器は、前記車両のブレーキ機構を制御するブレーキ制御装置であり、前記ブレーキ制御装置からのブレーキ力の適否を判定するブレーキ力判定手段を備える点も一態様である。さらに、力行トルクを生じさせる主変換装置を検査対象の機器とし、この主変換装置からの出力電流の適否を判定することも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、制御伝送装置からのノッチ情報だけでなく、制御伝送装置からブレーキ制御装置に送られるノッチ情報も受け付けることができる。これにより、制御伝送装置からのノッチ情報と制御装置からのノッチ情報を対比することで、当該ブレーキ制御装置におけるノッチ情報の認識が適切に行われたかの判断が可能となる。すなわち、ブレーキ制御装置のノッチ認識機能の検査を行うことができる。
【0013】
また、主変換装置の検査時においても、当該主変換装置からのノッチ情報と制御伝送装置からのノッチ情報を対比することで、この主変換装置におけるノッチ情報の認識の適否を判定することができる。これにより、ブレーキ検査及び主変換装置の検査の精度を向上させると共に、従来と比較して、検修員の負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[本実施形態]
[1.第1の実施形態]
[1.1.全体構成]
次に、第1の実施形態に係る全体構成を図1を参照して以下に説明する。なお、図1は、列車の各車両が搭載する各種機器と当該機器の検査を行うモニタリング装置との接続を示したブロック構成図である。
【0015】
まず、本発明を含む全体のシステムの概略を説明すると、本システムは、各機器に種々の検査に必要な情報を送信し、応答情報から当該機器の検査結果を記憶すると共に通知するモニタリング中央装置10を備えている。そして、ユーザにより力行やブレーキ操作が行われるマスコン50を通じて列車の加速走行の要求があった場合に、列車に必要な力行トルクを演算したり、マスコン50からのノッチ情報をモニタリング中央装置10や後述するブレーキ制御装置30等に伝送するなど、列車内の種々の機器を制御する制御伝送中央装置20を有している。
【0016】
また、列車の各車両には、このモニタリング中央装置10の端末としてモニタリング端末装置10a(例えば、5車両の場合には、10a〜10e)と、制御伝送中央装置20の端末として制御伝送端末装置20a(例えば、5車両の場合には、20a〜20e)と、を各々備えている。そして、車上検査対象の機器として、ブレーキ制御装置30と主変換装置40が制御伝送端末装置20a及びモニタリング端末装置10aに各々接続されている。
【0017】
ブレーキ制御装置30は、制御伝送中央装置20、制御伝送端末装置20aを介して取得したノッチ情報に基づいてブレーキ力を発生させるものであり、主変換装置40は、同じく制御伝送中央装置20、制御伝送端末装置20aを介して取得したノッチ情報に基づいて列車を走行させる力行トルクと停止させる回生ブレーキトルクとを発生させるものである。
【0018】
[1.1.2.具体的な構成]
次に、図2を参照して、上記各機器をより詳細に説明する。
モニタリング中央装置10は、各機器からの応答情報に従い検査を行う検査制御部11を備え、この検査制御部11は、マスコン50を通じて入力された制御伝送中央装置20からのノッチ情報を認識し、その適否を判定する制御ノッチ情報判定手段11aを有している。具体的には、この制御ノッチ情報判定手段11aは、受信した制御伝送中央装置20からのノッチ情報が、入力されたノッチ情報と同一であるかを判断することで制御伝送装置20における認識の適否を判定する。
【0019】
また、検査制御部11は、ブレーキ制御装置30からの出力であるブレーキ力データを認識し、その適否を判定するブレーキ力判定手段11bを備えている。具体的には、検査制御部20に出力されたブレーキ力データが入力されたノッチ情報に対応する所定値と一致するかにより適否が判定される。
【0020】
そして、本実施形態では、特に、ブレーキ制御装置30において認識した制御伝送端末装置20aからのノッチ情報の適否を判定するブレーキノッチ情報判定手段11cを有する点に特徴がある。このブレーキノッチ情報判定手段11cは、ブレーキ制御装置30において認識したノッチ情報が、制御伝送装置20において認識したノッチ情報と一致するかを判断することで、当該ブレーキ制御装置30におけるノッチ情報の認識の適否が判定される。
【0021】
また、検査制御部11は、主変換装置40からの出力電流データを認識し、その適否を判定する電流値判定手段11dを備えている。具体的には、この電流値判定手段11dは、主変換装置40からの出力電流データが、入力されたノッチ情報に基づく所定の値と一致するかを判断することで当該出力電流データの適否を判定する。
【0022】
特に、本実施形態では、主変換装置40において認識した制御伝送端末装置20aからのノッチ情報の適否を判定する主変換ノッチ情報判定手段11eを有する点に特徴がある。この主変換ノッチ情報判定手段11eは、主変換装置40において認識したノッチ情報が、制御伝送装置20において認識したノッチ情報と一致するかを判断することで、当該主変換装置40におけるノッチ情報の認識の適否が判定される。
【0023】
また、モニタリング中央装置10は、データ伝送を行う伝送処理手段12と、タッチパネルや操作部を通じてユーザからの入力を処理する入力処理手段13と、種々の情報を表示させる表示手段14と、各機器に必要な検査プログラムが記憶され、さらに検査結果を記憶する記憶手段15と、を備えている。
【0024】
制御伝送中央装置20は、マスコン50を通じた力行やブレーキ操作により当該マスコン50からのノッチ情報を取得するノッチ情報取得手段21と、ノッチ情報取得手段21により取得したノッチ情報に基づいて力行トルクや回生ブレーキトルクを演算し、また各種機器を制御する中央制御部22と、を備えている。さらに、データの伝送を処理する伝送処理手段23を有している。
【0025】
なお、ブレーキ制御装置30の構成は一般的なものであるため説明は省略するが、本システムにおけるブレーキ制御装置30は、発生させたブレーキ力データだけでなく、認識したノッチ情報もモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。また、主変換装置40においても、出力電流データだけでなく、認識したノッチ情報をモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。
【0026】
[1.2.1.作用(1)]
次に、上記のような構成を有する第1の実施形態に係るブレーキ検査時の作用を以下に説明する。なお、下記の作用はブレーキ検査に関するものであるので、本システムにおいて構成上、主変換装置40を設けないものであってもよい。
【0027】
まず、ブレーキ検査を開始するにあたり、ユーザは、モニタリング中央装置10を立ち上げ、例えば、入力処理手段13を通じて車上検査のうちブレーキ検査を選択する。これにより、モニタリング中央装置10の伝送処理手段12を介して制御伝送中央装置20にブレーキ検査の開始指令が下され、当該指令は制御伝送中央装置20から制御伝送端末装置20aに送信される。
【0028】
ブレーキ検査の開始指令が制御伝送中央装置20、制御伝送端末装置20aに伝送されると、ユーザによりマスコン50を通じて設定されるノッチ情報が制御伝送中央装置20に入力される。制御伝送中央装置20のノッチ情報取得手段21により、この入力されたノッチ情報が取得され、中央制御部22は、当該ノッチ情報を伝送処理手段23を通じてモニタリング中央装置10とブレーキ制御装置30に出力する。なお、ブレーキ制御装置30にノッチ情報を出力する際は、当該ブレーキ制御装置30が設けられた車両内に配設される制御伝送端末装置20aを介して行われる。
【0029】
ブレーキ制御装置30は、このノッチ情報に従い、ブレーキ力データをモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に出力する。さらに、ブレーキ制御装置30は、当該ブレーキ制御装置30が認識したこのノッチ情報をモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。
【0030】
モニタリング中央装置10では、制御伝送中央装置20から送信されたノッチ情報を伝送処理手段12により受信し、検査制御部11の制御ノッチ情報判定手段11aにより当該ノッチ情報の適否が判定される。すなわち、制御ノッチ情報判定手段11aは、受信した制御伝送中央装置20からのノッチ情報がユーザにより入力されたノッチ情報と一致するかを判定する。一致すると判定された場合には、制御伝送中央装置20におけるノッチ情報の認識は適切であり、一致しない場合と判定された場合には、当該制御伝送中央装置20におけるノッチ情報の認識は不適切である。
【0031】
また、モニタリング中央装置10では、ブレーキ制御装置30から出力されたブレーキ力データを検査制御部11のブレーキ力判定手段11bが認識し、その適否を判断する。すなわち、ブレーキ力判定手段11bは、受信したブレーキ制御装置30からのブレーキ力データが、ユーザにより入力されたノッチ情報に対応する所定値と一致するかを判定する。
【0032】
一致すると判定された場合、ブレーキ制御装置30からの出力であるブレーキ力データは適切であり、一致しない場合と判定された場合、当該ブレーキ制御装置30からのブレーキ力データは不適切である。なお、ノッチ情報に対応する所定の電流値は、予めノッチ毎に記憶手段15に記憶されている。
【0033】
さらに、検査制御部11のブレーキノッチ情報判定手段11cが、ブレーキ制御装置30が制御伝送端末装置20aから取得したノッチ情報を認識し、その適否を判定する。具体的には、ブレーキノッチ情報判定手段11cは、ブレーキ制御装置30からノッチ情報を受信し、このノッチ情報が、受信した制御伝送装置20からのノッチ情報と一致するかを判定する。ブレーキノッチ情報判定手段11cにより一致すると判定された場合には、ブレーキ制御装置30におけるノッチ情報の認識は適切であり、一致しないと判定された場合には、当該ブレーキ制御装置30におけるノッチ情報の認識は不適切である。
【0034】
このように本実施形態では、モニタリング中央装置10では、制御伝送中央装置20からのノッチ情報と、ブレーキ制御装置30からのブレーキ力データに加え、当該ブレーキ制御装置30において認識したノッチ情報の適否も判定する。なお、これらの判定結果は検査結果として表示手段14に表示されると共に記憶手段15に記憶される。
【0035】
[1.2.2.作用(2)]
また、第1の実施形態では、検査対象機器を主変換装置40とする下記のような作用を有する。なお、下記では、主変換装置40の検査について説明するので、本システムの構成上、ブレーキ制御装置30を設けなくても構わない。
【0036】
まず、例えば、ブレーキ検査の代わりに、入力処理手段13を通じて車上検査のうち主変換装置検査を選択することで、当該検査は開始される。この選択により、モニタリング中央装置10の伝送処理手段12を介して制御伝送中央装置20に主変換装置検査の開始指令が下され、当該指令は制御伝送中央装置20から制御伝送端末装置20aに送信される。
【0037】
主変換装置検査の開始指令が制御伝送中央装置20、制御伝送端末装置20aに伝送されると、ユーザによりマスコン50を通じて設定されるノッチ情報が制御伝送中央装置20に入力される。制御伝送中央装置20のノッチ情報取得手段21によりこの入力されたノッチ情報が取得され、中央制御部22は、当該ノッチ情報を伝送処理手段23を通じてモニタリング中央装置10と主変換装置40に出力する。なお、主変換装置40に出力する際は、当該主変換装置40が設けられた車両内に配設される制御伝送端末装置20aを介してノッチ情報が送信される。
【0038】
主変換装置40は、このノッチ情報に従い、列車を走行させるトルクとなる電流データをモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に出力する。さらに、主変換装置40は、当該主変換装置40が認識したこのノッチ情報をモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。
【0039】
モニタリング中央装置10では、制御伝送中央装置20から出力されたノッチ情報を伝送処理手段12により受信し、検査制御部11の制御ノッチ情報判定手段11aにより当該ノッチ情報が認識され、適否が判定される。すなわち、上記[1.2.1.作用(1)]と同様に、制御ノッチ情報判定手段11aは、受信した制御伝送中央装置20からのノッチ情報がユーザにより入力されたノッチ情報と一致するかを判定する。
【0040】
また、モニタリング中央装置10は、主変換装置40から出力された電流データを検査制御部11の電流値判定手段11dが認識し、その適否を判断する。具体的には、電流値判定手段11dは、主変換装置40からの出力電流データが入力されたノッチ情報に基づく所定の電流値と一致するかを判定する。一致すると判定した場合には、主変換装置40による出力電流データは適切であり、一致しないと判定された場合には、主変換装置40による出力電流データは不適切であるため当該主変換装置40に異常が生じている。
【0041】
さらに、検査制御部11の主変換ノッチ情報判定手段11eは、主変換装置40が制御伝送端末装置20aから取得したノッチ情報を認識し、その適否を判定する。具体的には、主変換ノッチ情報判定手段11eは、主変換装置40からノッチ情報を受信し、このノッチ情報が、受信した制御伝送装置20からのノッチ情報と一致するかを判定する。主変換ノッチ情報判定手段11eにより一致すると判定された場合には、主変換装置40におけるノッチ情報の認識は適切であり、一致しないと判定された場合には、当該主変換装置40におけるノッチ情報の認識は不適切である。
【0042】
このようにモニタリング中央装置10では、制御伝送中央装置20からのノッチ情報と、主変換装置40からの出力電流データに加え、当該主変換装置40において認識したノッチ情報の適否も判定する。なお、これらの判定結果は検査結果として表示手段14に表示されると共に記憶手段15に記憶される。
【0043】
以上のような第1の実施形態によれば、制御伝送装置からのノッチ情報だけでなく、制御伝送装置からブレーキ制御装置に送られるノッチ情報も受け付けることができる。これにより、制御伝送装置からのノッチ情報と制御装置からのノッチ情報を対比することで、当該ブレーキ制御装置におけるノッチ情報の認識が適切に行われたかの判断が可能となる。すなわち、ブレーキ制御装置のノッチ認識機能の検査を行うことができる。
【0044】
また、主変換装置の検査時においても、当該主変換装置からのノッチ情報と制御伝送装置からのノッチ情報を対比することで、この主変換装置におけるノッチ情報の認識の適否を判定することができる。これにより、そのため、ブレーキ検査及び主変換装置の検査の精度を向上させると共に、従来と比較して、検修員の負荷を軽減することができる。
【0045】
[2.第2の実施形態]
[2.1.構成]
次に、図3を参照して、ブレーキ制御装置30において発生するブレーキ力データのバックアップ検査を行う第2の実施形態の構成について説明する。なお、第1の実施形態と共通する構成は同じ符号を付し説明は省略する。
【0046】
第2の実施形態では、図3の通り、第1の実施形態の構成において、制御伝送中央装置20に自動列車制御装置60(以下、ATC試験器と称する)を接続した点を特徴とする。これにより、ATC試験器60において制御された列車の速度情報をブレーキ制御装置30に送信することが可能となり、当該ブレーキ制御装置30では、この速度に対応して発生させたブレーキ力データをバックアップすることが可能となる。
【0047】
また、モニタリング中央装置10の検査制御部11は、ブレーキ制御装置30において行われたブレーキ力データのバックアップが適切に行われているかを判定するブレーキバックアップ判定手段11fを備えている。このブレーキバックアップ判定手段11fは、ブレーキ制御装置30においてバックアップされたブレーキ力データと、速度情報に対応して予め記憶手段15に記憶されているブレーキ力データとが一致するかを判断することで、当該ブレーキ制御装置30におけるバックアップが適切に行われているかを判定する。
【0048】
なお、それ以外の構成は、図1及び2に示した第1の実施形態のそれと同様であり、また、ブレーキ力データのバックアップ検査を実施しているのであるから、構成上、主変換装置40を設けないものであっても構わない。
【0049】
[2.2.作用]
次に、上記構成を有する第2の実施形態に係る作用を以下に説明する。
まず、モニタリング中央装置10において、例えば、入力処理手段13を通じて車上検査のうちブレーキバックアップ検査を選択することで、当該検査は開始される。
【0050】
この選択により、モニタリング中央装置10の伝送処理手段12を介して制御伝送中央装置20にブレーキバック検査の開始指令が下され、当該指令は制御伝送中央装置20から制御伝送端末装置20aに送信される。また、ブレーキ制御装置30に対しても、モニタリング端末装置10aを介してブレーキバックアップ検査の開始指令が送信される。そして、ATC試験器60で制御された実際に必要とするブレーキバックアップの条件となる列車の速度情報を制御伝送中央装置20、ブレーキ制御装置30及びモニタリング中央装置10に送信する。
【0051】
伝送処理手段23を通じて受信した制御伝送中央装置20では、中央制御部22が、当該速度情報に対応するノッチ情報をモニタリング中央装置10とブレーキ制御装置30に出力する。なお、ブレーキ制御装置30にノッチ情報を出力する際は、当該ブレーキ制御装置30が設けられた車両内に配設される制御伝送端末装置20aを介して行われる。
【0052】
ブレーキ制御装置30では、ATC試験器60から送られた速度情報に基づいてブレーキ力データを発生させ、このブレーキ力データを速度情報に対応させてバックアップする。なお、ATC試験器60からの速度を、必要とするブレーキ力に対応させて調整することで、種々の速度に対するブレーキ力データのバックアップが可能となる。
【0053】
また、ブレーキ制御装置30は、このバックアップされたブレーキ力データを速度情報に対応させてモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に出力する。さらに、ブレーキ制御装置30は、当該ブレーキ制御装置30が認識したノッチ情報をモニタリング端末装置10aを介してモニタリング中央装置10に送信する。
【0054】
そして、ブレーキバックアップ判定手段11fは、ATC試験器60からの速度情報に対応するブレーキ力データを記憶手段15から読み出し、受信したブレーキ制御装置30からのブレーキ力データと比較する。つまり、ブレーキバックアップ判定手段11fは、速度情報を共通にするブレーキ制御装置30からのブレーキ力データと、読出しだブレーキ力データとが一致するかを判定することでブレーキ制御装置30におけるバックアップの適否を判定する。一致すると判定された場合には、ブレーキ制御装置30におけるブレーキ力データのバックアップは適切に行われており、一致しないと判定された場合には、当該バックアップは適切に行われておらず、ブレーキ制御装置30のバックアップ機能に異常を検出する。
【0055】
また、第1の実施形態と同様に、モニタリング中央装置10では、制御伝送中央装置20から出力されたノッチ情報を伝送処理手段12により受信し、検査制御部11の制御ノッチ情報判定手段11aにより当該ノッチ情報が認識され、適否が判定される。また、検査制御部11のブレーキノッチ情報判定手段11cは、ブレーキ制御装置30が制御伝送端末装置20aから取得したノッチ情報を認識し、その適否を判定する。なお、これらの判定結果は検査結果として表示手段14に表示されると共に記憶手段15に記憶される。
【0056】
以上のような第2の実施形態によれば、従来では、モニタリング装置からブレーキ制御装置に検査情報を送ることで当該ブレーキ制御装置では模擬的にブレーキ力データを発生させ、そのデータのバックアップの適否を判定していたのに対し、ATC試験器を接続することで実際の速度情報に基づいてブレーキ力を発生させ、そのバックアップの適否を判定することが可能となる。そのため、より精度の高いバックアップ検査を実現することができる。
【0057】
[3.第3の実施形態]
[3.1.構成]
次に、ATCのブレーキ機能を検査する第3の実施形態の構成について、図4を参照して以下に説明する。なお、第1の実施形態と共通する構成は同じ符号を付し説明は省略する。
【0058】
図4の通り、第3の実施形態では、ATCによる各ブレーキノッチに対してブレーキ機能を検査することができるATCブレーキ試験器70を制御伝送中央装置20に接続することを特徴とする。すなわち、このATCブレーキ試験器70を設けることで、ATCブレーキノッチの全ての各ノッチに対してブレーキ機能の検査を行うことができる。
【0059】
実際には、ATCブレーキ試験器70内のブレーキノッチ模擬スイッチを操作することで各ノッチを指定し、このノッチ情報に基づいたブレーキ機能を検査することができる。なお、それ以外の構成は、図1及び2に示した第1の実施形態のそれと同様であり、また、構成上、主変換装置40を設けないものであっても構わない。
【0060】
[3.2.作用]
次に、上記構成を有する第3の実施形態に係る作用を以下に説明する。
第3の実施形態に係る作用は、マスコン50からのノッチ情報入力の代わりに、ATCブレーキ試験器70により各ブレーキノッチに対してブレーキ機能の検査が可能となるだけであって、このATCブレーキ試験器70で指定した各ブレーキノッチに対して検査を行うといった点以外、第1の実施形態の上記[1.2.1.作用(1)]で示したブレーキ検査と同様である。
【0061】
つまり、モニタリング中央装置10において、例えば、入力処理手段13を通じて車上検査のうちATCブレーキ検査を選択することで、当該検査は開始され、モニタリング中央装置10の伝送処理手段12を介して制御伝送中央装置20にATCブレーキ検査の開始指令が下され、当該指令は制御伝送中央装置20から制御伝送端末装置20aに送信される。また、ブレーキ制御装置30に対しても、モニタリング端末装置10aを介してATCブレーキ検査の開始指令が送信される。
【0062】
そして、ATCブレーキ試験器70において、ユーザはブレーキノッチ模擬スイッチを操作することで、全てのATCブレーキノッチのうち所望のブレーキノッチを指定し、当該指定されたブレーキノッチが制御伝送中央装置20に送信される。これ以降は、第1の実施形態の上記[1.2.1.作用(1)]と同様である。なお、各ノッチの指定は、ユーザにより例えば3〜9ノッチまで模擬的にON/OFFすることで設定される。
【0063】
以上のような第3の実施形態によれば、従来では、検査対象となるATCブレーキノッチは制限されていたのに対し、ATCブレーキ試験器を設けることで全てのブレーキノッチに対してブレーキ検査を実施することが可能となり、検査精度の向上と不良箇所の迅速な発見に寄与している。
【0064】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記のような実施形態に限定するものではなく、下記のような特高圧機器の駆動検査の結果を表示手段に表示する実施形態も包含する。すなわち、本発明は、モニタリング中央装置10の検査制御部11に、特高圧機器の駆動の適否を判定する特高圧機器駆動判定手段11gを備えている
【0065】
具体的には、この特高圧機器駆動判定手段11gは、車両の運転台に搭載されているVCB制御用スイッチやパンタグラフ上下駆動用スイッチを操作することで、この操作通りに特高圧機器が駆動しているかを判定する。特高圧機器駆動判定手段11gにより特高圧機器が上記スイッチの操作通りに動作していないと判定された場合には、その判定された機器に関する情報を自動的に表示手段14に表示させる。
【0066】
特に、この特高圧機器判定手段11gは、列車のどこの車両に操作通りに動作しない特高圧機器が搭載されているかも特定するので、その車両情報についても表示手段14に表示させる。これにより、ユーザは、適切に動作しない特高圧機器が搭載されている車両を迅速に判別することができ、その機器を容易に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る全体構成図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る具体的な構成を示すブロック構成図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る構成を示すブロック構成図
【図4】本発明の第3の実施形態に係る構成を示すブロック構成図
【符号の説明】
【0068】
10…モニタリング中央装置
10a〜10e…モニタリング端末装置
11…検査制御部
11a…制御ノッチ情報判定手段
11b…ブレーキ力判定手段
11c…ブレーキノッチ情報判定手段
11d…電流値判定手段
11e…主変換ノッチ情報判定手段
11f…ブレーキバックアップ判定手段
11g…特高圧機器駆動判定手段
12…伝送処理手段
13…入力処理手段
14…表示手段
15…記憶手段
20…制御伝送中央装置
20a〜20e…制御伝送端末装置
21…ノッチ情報取得手段
22…中央制御部
23…伝送処理手段
30…ブレーキ制御装置
40…主変換装置
50…マスコン
60…試験器
60…自動列車制御装置(ATC試験器)
70…ATCブレーキ試験器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する機器に対して各種の検査を行い、検査結果を出力するモニタリング装置において、
前記各機器を制御する制御装置からの前記車両に対する力行又はブレーキのノッチ情報を受け付け、
検査対象の機器が認識した前記車両に対する力行又はブレーキのノッチ情報を受け付け、
前記制御装置からのノッチ情報と、前記検査対象の機器が認識したノッチ情報と、が一致するかを判定する手段を備えることを特徴とするモニタリング装置。
【請求項2】
前記検査対象の機器は、前記車両のブレーキ機構を制御するブレーキ制御装置であり、
前記ブレーキ制御装置からのブレーキ力の適否を判定するブレーキ力判定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のモニタリング装置。
【請求項3】
前記検査対象の機器は、力行トルクを生じさせる主変換装置であり、
前記主変換装置からの出力電流の適否を判定することを特徴とする請求項1に記載のモニタリング装置。
【請求項4】
前記検査対象の機器は、特高圧機器であり、
正常に駆動しない前記特高圧機器に関する情報を自動的に出力することを特徴とする請求項1に記載のモニタリング装置。
【請求項5】
前記特高圧機器に関する情報は、当該機器が搭載された車両情報を含むことを特徴とする請求項4に記載のモニタリング装置。
【請求項6】
ATC試験器からの前記車両の速度情報に基いて前記ブレーキ制御装置に記憶されたブレーキ力と、前記速度情報に基づく適正ブレーキ力と、が一致するかを判定する手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のモニタリング装置。
【請求項7】
前記ブレーキ力判定手段は、ATCブレーキの各ノッチ動作時の前記ブレーキ力の適否を判定することを特徴とする請求項2に記載のモニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75023(P2010−75023A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243164(P2008−243164)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】