説明

モリブデン金属を製造する方法及びモリブデン金属

モリブデン金属(12)、その製造のための装置(10)及び方法の新規な形態を開示する。モリブデン金属(12)の新規な形態は、好ましくは、実質的に約2.1m2/g〜実質的に約4.1m2/gの表面積により特徴付けられる。また、モリブデン金属(12)の新規な形態は、好ましくは、相対的に均一な寸法により特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、モリブデンに関し、より具体的には、モリブデン金属及びその製造に関する。
【0002】
背景技術
モリブデン(Mo)は、銀色又は白金色の金属化学元素であり、硬質であり、展性、延性があり、他の所望な特性のなかでも、高い融点を有する。したがって、モリブデンは、金属合金に種々の特性を付与するため、また、その諸特性を向上するために、金属合金の添加剤として広く使用されている。例えば、モリブデンは、特に高温用途に関して、硬化剤として使用することができる。しかし、モリブデンは、天然では純粋な形態で存在しない。その代わりに、モリブデンは複合状態で存在する。例えば、モリブデン鉱石は、典型的には、モリブデン鉱(二硫化モリブデン,MoS)として存在する。モリブデン鉱石は、焙焼することにより処理して、酸化モリブデン,MoOを形成することができる。
【0003】
酸化モリブデンは、直接、鋼鉄又は鉄のような他の金属と組み合わせて、その合金を形成することができ、あるいは、酸化モリブデンを更に処理して、純粋なモリブデンを形成することができる。その純粋な状態では、モリブデン金属は、強靭であり、延性があり、中程度の硬さ、高い熱伝導性、高い耐腐食性、及び低い膨張係数により特徴付けられる。したがって、モリブデン金属は、電気的に加熱されたガラス炉の電極、核エネルギー用途に使用することができ、また、ミサイル、ロケット、及び航空機に使用される部品を鋳造するために使用することができる。更に、モリブデン金属は、X線管、電子管、及び電気炉などの高温に曝される種々の電気的用途においてフィラメント材料として使用することもできる。また、モリブデン金属は、他の使用又は用途の中では、多くの場合(例えば、石油精製において)触媒として使用される。
【0004】
モリブデン金属をその純粋な状態で製造するための方法が開発されてきた。かかる方法は、二工程の処理を必要とする。第一の工程では、三酸化モリブデンと二モリブデン酸アンモニウムの混合物を第一の炉(例えば、回転炉又は流動床炉)に導入して、次式に表されるように、二酸化モリブデンを産する:
(1)2(NH)MoO+2MoO→3MoO+4HO+N(g)
第二の工程では、二酸化モリブデンを第二の炉(例えば、プッシャー(pusher)炉)に移し、例えば、次式に表されるように、水素と反応させて、モリブデン粉末を形成する:
(2)MoO+2H(g)→Mo+2H
しかし、このモリブデン金属を製造するための方法は、多数のバッチ工程を必要とするので、労働集約的であり、製造を遅らせ、製造コストを高くする。更に、この方法は、各々の工程について別々の処理装置(例えば、炉)を必要とするので、資本コストと維持コストを高くする。そのうえ、これらの方法は、1グラム当たり約0.8平方メートル(m/g)の表面積を有するモリブデン金属を製造するだけであり、寸法は広く変動し得る。
【0005】
発明の開示
モリブデンの新規な形態は、BET分析にしたがって実質的に約2.1m/g〜実質的に約4.1m/gの表面積により特徴付けることができる。モリブデン金属の他の新規な形態は、走査型電子顕微鏡により測定して実質的に均一な寸法により特徴付けることができる。
【0006】
発明を実施するための最良の形態
モリブデン金属12を製造するために使用することができるので、装置10(図1)を示し、本明細書中に説明する。簡単には、モリブデン金属は、天然には存在しないが、鉱石などの組み合わされた状態で存在する。モリブデン鉱石を処理して、酸化モリブデン(MoO)を形成することができ、更に、酸化モリブデンを二モリブデン酸アンモニウム及び水素の存在下で処理して、純粋なモリブデン金属を形成することができる。モリブデン金属を製造するための慣用的なバッチ方法は、時間がかかり、比較的費用もかかる。その代わりとして、連続的に、特に工業的用途又は商業的用途のために、モリブデン金属を製造することが望ましいであろう。また、種々の用途について、相対的に均一な寸法を有する、及び/又は、慣用的に製造されるモリブデン金属より大きい表面積対質量比を有するモリブデン金属を製造することが望ましいであろう。
【0007】
本発明の教示にしたがえば、新規な形態のモリブデン金属12は、BET分析にしたがって実質的に2.5m/gの表面積対質量比を有するものとして特徴付けることができる。また、本発明の教示にしたがえば、新規な形態のモリブデン金属12は、寸法が実質的に均一であるものとして特徴付けることができる(図5を参照されたい)。
【0008】
本発明の態様にしたがって特徴付けられる新規な形態のモリブデン金属は、それ自体、種々の使用又は用途について有利である。例えば、比較的高い表面積対質量比により特徴付けられるモリブデン金属は、触媒として使用する場合に特に有利である。すなわち、触媒として使用する場合に、より小さい表面積対質量比により特徴付けられるモリブデン金属を同じ反応において触媒として使用する場合と同等か又は更によい結果を達成するために、必要とされるモリブデン金属は少なくてすむ。また、例えば、比較的大きい表面積対質量比及び/又は比較的均一な寸法により特徴付けられるモリブデン金属は、焼結剤として使用するのに有利である。すなわち、かかるモリブデン焼結剤は、慣用的なモリブデン焼結剤よりも大きい結合面積を有し、それにより、得られる焼結物は多くなる。また、これらの新規な形態のモリブデン金属は、本明細書中に具体的に表記しない他の使用又は用途についても特に有利である。
【0009】
更に、本発明の教示にしたがえば、モリブデン金属12を製造するための装置10の諸態様が開示される。装置10は、少なくとも2つ、好ましくは3つの加熱ゾーン20、21及び22を有する炉16を含むことができる。プロセス管34は、好ましくは、炉16を通って伸張し、その結果、前駆体材料14(例えば、MoO)をプロセス管34内に導入して、図1に示す矢印26で説明するように、炉16の加熱ゾーンを通して移動させることができる。また、好ましくは、図1に示す矢印28で説明するように、プロセスガス62をプロセス管34内に導入してもよい。結果的に、前駆体材料34は還元されて、モリブデン金属12が形成又は生成される。
【0010】
装置10は、前駆体材料14(例えば、酸化モリブデン(MoO))からモリブデン金属12を生成させるために、以下のとおりに運転することができる。方法の一つの工程として、前駆体材料を還元性ガス64の存在下で第一の温度まで加熱する(例えば、炉16の加熱ゾーン1において)。この第一の温度を少なくとも1回上昇させて(例えば、加熱ゾーン3において、また好ましくは、加熱ゾーン2において)、前駆体材料14を還元させてモリブデン金属12を形成する。
【0011】
結果的に、モリブデン金属12は連続的な様式で生成させることができる。好ましくは、モリブデン金属生成物12の生成の間に、中間の取扱いをまったく必要としない。すなわち、前駆体材料14を、好ましくは、炉16の生成物入口端部15へと供給し、モリブデン金属生成物12を炉16の生成物取出端部15から取り出す。このように、例えば、中間生成物30(図2)を、一つの炉又はバッチプロセスから取り出し、別の炉又はバッチプロセスへと移す必要がない。かくして、本発明の態様にしたがったモリブデン金属12の製造は労働集約的ではなく、製造コストは、モリブデン金属を製造するための慣用的な方法よりも低くなりうる。更に、大規模製造工場をより効率的に設計することができる。例えば、本発明の態様にしたがってモリブデン金属12を製造するためには、慣用的なバッチプロセスについて必要とされるよりも、必要とされる装置が少なくてすむ。また例えば、本発明の態様にしたがえば、中間の準備のための場所は必要ではない。新規な形態のモリブデン金属とその製造のための装置及び方法、ならびに本発明のより有意な特徴と利点のいくつかを一般的に説明してきたが、ここで、本発明の種々の態様を更に詳細に説明する。
【0012】
モリブデン金属を製造するための装置
図1は、本発明の態様にしたがった、モリブデン金属12を製造するための装置10の概略図である。概観として、装置10は、一般的には、炉16、移送系32、及びプロセスガス62を含むことができる。各々については以下に更に詳細に説明する。移送系32は、前駆体材料14を炉16内に導入して、例えば矢印26で示す方向に、炉16を通して移動させるために使用することができる。更に、プロセスガス62は、例えば矢印28で示す方向に、炉16内に導入することができる。本発明の方法の態様に関して以下により詳細に説明するように、結果的に、プロセスガス62は炉16中で前駆体材料14と反応して、モリブデン金属生成物12が形成される。
【0013】
装置10の好ましい態様を図1に示し、これについて説明する。装置10は、好ましくは、回転式管型炉16を含む。したがって、移送系32は、少なくとも、炉16の3つの加熱ゾーン20、21及び22を通り、更に冷却ゾーン23を通って伸張するプロセス管34を含むことができる。更に、移送系32は、前駆体材料14をプロセス管34内に供給するための供給系36、及び、プロセス管34中で製造されるモリブデン金属生成物12を収集するためのプロセス管34の遠位端にある排出ホッパー38も含むことができる。
【0014】
しかし、装置10の好ましい態様のより詳細な説明を始める前に、炉16及び移送系32の他の態様は、本発明の範囲内にあるものと企図されていることは明らかである。炉は、任意の適する炉又はその設計を含んでもよく、図1に示し、以下により詳細に説明する回転式管型炉16に限定されない。例えば、本発明の他の態様にしたがえば、炉16は、(例えば、耐熱性の障壁46及び47により画定された独立した加熱ゾーン20、21、22を有する単一の炉16の代わりに)これに限定されないが、1つより多い別個の炉を含んでもよい。同様に、図1に示し、以下により詳細に説明する移送系32は、前駆体材料14を炉16内に導入するため、前駆体材料14を炉16を通って移動させるため、及び/又は、モリブデン金属生成物12を炉16から収集するための種々の他の手段を含んでもよい。例えば、他の態様においては、移送系32は、前駆体材料14の炉16内への手動による導入(図示せず)、前駆体材料14を炉16を通って移動させるためのコンベヤーベルト(図示せず)、及び/又は、モリブデン金属生成物12を炉16から取り出すための機械的収集アーム(図示せず)を含んでもよい。以下の装置10の好ましい態様の具体的な説明から容易に明らかとなるように、現在知られている、又は後に開発される、炉16及び移送系32の他の態様も、本発明の範囲内にあるものと企図される。
【0015】
ここで装置10の好ましい態様の具体的な説明に戻ると、供給系36は、プロセス管34に機能的に結合することができる。供給系36は、前駆体材料14を炉16内に連続的に導入することができる。また、供給系36は、前駆体材料14を炉16内に一定の速度で導入することもできる。例えば、供給系36は、前駆体材料14をプロセス管34の一端に一定の速度で連続的に導入するためのロスインウェイト式供給系を含むことができる。
【0016】
本発明の他の態様にしたがえば、前駆体材料14は他のやり方で炉内に導入してもよいことは理解すべきである。例えば、供給系36は、前駆体材料14を炉16内に間欠的に、又はバッチで導入することができる。また、供給系36に関する他の設計も本発明の範囲内のものとして企図され、モリブデン金属生成物12の所望な製造速度などの設計考慮事項及びプロセスパラメータに依存して、異なることができる。
【0017】
とにかく、前駆体材料14は、好ましくは、プロセス管34へと供給することにより、炉16内に導入する。プロセス管34は、好ましくは、炉16の内部に形成されているチャンバーを通って伸張する。プロセス管34は、炉16の加熱ゾーン20,21及び22の各々を実質的に通って伸張するように、チャンバー44の内部に位置していてもよい。好ましくは、プロセス管34は、およそ等しい位置で加熱ゾーン20の各々を通って伸張するが、これは要求されない。また、プロセス管34は、更に、炉16の加熱ゾーン20,21及び22と、冷却ゾーン23とを越えて伸張してもよい。
【0018】
本発明の好ましい態様にしたがえば、プロセス管34は、気密性の高温(HT)合金製プロセス管である。また、プロセス管34は、好ましくは、約16.5センチメートル(cm)(約6.5インチ(in))の呼び外径、約15.2cm(約6in)の呼び内径を有し、長さは約305cm(約120in)である。好ましくは、プロセス管のうち約50.8cm(約20in)のセグメントが、それぞれ、炉16の三つの加熱ゾーン20,21及び22の各々を通って伸張し、プロセス管34の残りのおよそ152.4cm(60in)が冷却ゾーン23を通って伸張する。
【0019】
しかし、本発明の他の態様においては、プロセス管34は、任意の適する材料から製造されていてもよい。また、プロセス管34は、加熱ゾーン20,21及び22及び/又は冷却ゾーン23の各々を等しく通って伸張する必要はない。同様に、プロセス管34は、任意の適する長さ及び径であってもよい。プロセス管34の正確な設計は、代わりに、
本発明の教示に基づいて当業者にとって容易に明らかである他の設計考慮事項の中で、前駆体材料14の供給速度、モリブデン金属生成物12の所望の製造速度、各加熱ゾーン20,21及び22の温度などの設計考慮事項に依存するであろう。
【0020】
プロセス管34は、好ましくは、炉16のチャンバー44内部で回転させる。例えば、移送系32は、プロセス管34と機能的に結合された適する駆動アセンブリ含んでいてもよい。駆動アセンブリは、図1において矢印42により説明するように、時計回り又は反時計回りのいずれかの方向にプロセス管34を回転させるように運転することができる。好ましくは、プロセス管34は、一定の速度で回転させる。この速度は、好ましくは、1回転あたりおよそ18〜100秒の範囲から選択する。例えば、プロセス管34は、1回転あたり18秒の一定の速度で回転させてもよい。しかし、プロセス管34は、本発明の教示に精通するようになった後で当業者にとって明らかであるように、設計考慮事項、所望の生成物寸法、他のプロセス変数の設定点に依存して必要とされる、より速い、より遅い、及び/又は、可変の回転速度にて回転させてもよい。
【0021】
プロセス管34の回転42は、加熱ゾーン20,21及び22と冷却ゾーンとを通る前駆体材料14及び中間材料30(図2)の動きを促進させることができる。また、プロセス管34の回転42は、前駆体材料14と中間材料30の混合を促進させることができる。かくして、前駆体材料14と中間材料30の未反応部分は、プロセスガス62との接触のために連続的に暴露される。このように、混合により、前駆体材料14及び中間材料30とプロセスガス62との反応は更に高められる。
【0022】
また、プロセス管34は、好ましくは、炉16のチャンバー44内部で傾斜面40にて配置する。プロセス管34を傾斜させるための態様の一つを図1に説明する。本発明のこの態様にしたがえば、プロセス管34は、プラットフォーム55上に組み立ててることができ、プラットフォーム55は、軸54まわりに旋回できるように、基礎56に蝶番にて取り付けることができる。また、リフトアセンブリ58をプラットフォーム55に咬合させてもよい。リフトアセンブリ58は、プラットフォーム55の一端を基礎56に関して上昇させるか又は低下させるように運転することができる。プラットフォーム55を上昇又は低下させて、軸54のまわりを回転又は旋回させる。したがって、プラットフォーム55とこれによりプロセス管34とは、地面60に関して所望の傾斜面40まで調節することができる。
【0023】
プロセス管34の傾斜面40を調節するための好ましい態様は、本明細書中で図1において装置10に関して示し、説明するが、プロセス管34は、任意の適する様式で所望の傾斜面40に調節してもよいことは理解すべきである。例えば、プロセス管34を所望の傾斜面40に固定してもよく、そうすると調節可能なように傾斜させる必要がない。別の例としては、プロセス管34を、炉16、及び/又は装置10の他の構成要素(例えば、供給系36)と独立して傾斜させてもよい。また、プロセス管34を傾斜させるための他の態様も、本発明の精神の範囲内にあるものとして企図されており、本発明の理解に基づいて当業者にとっては容易に明らかとなるだろう。
【0024】
とにかく、プロセス管34の傾斜面40もまた、炉16の加熱ゾーン20,21及び22と冷却ゾーンとを通る前駆体材料14及び中間材料30の動きを促進させることができる。また、プロセス管34の傾斜面40もまた、プロセス管34内部の前駆体材料14と中間材料30の混合を促進させ、プロセスガス62との接触のために前駆体材料14と中間材料30を暴露させて、前駆体材料14及び/又は中間材料30とプロセスガス62との反応を高めることができる。実際に、プロセス管34の回転42と傾斜面40の組み合わせにより、更に、モリブデン金属生成物12を形成するための反応を高めることができる。
【0025】
これまでに説明したように、炉16は、好ましくは、炉内に形成されるチャンバー44を含む。チャンバー44は、炉16内部のプロセス管34を取り囲む、数多くの制御された温度ゾーンを規定する。一の態様においては、三つの温度ゾーン20,21及び22が、耐熱性の障壁46及び47により規定される。耐熱性の障壁46及び47は、好ましくは、温度ゾーンの間に対流流れが形成されるのを防ぐように、プロセス管34に対して近くに間隔をあけて配置される。一の態様においては、例えば、耐熱性の障壁46及び47は、プロセス管34からおよそ1.3〜1.9cm(0.5〜0.75in)の範囲内に達し、炉16中に三つの加熱ゾーン20,21及び22を規定する。とにかく、三つのゾーンの各々は、好ましくは、炉16のチャンバー44内部でそれぞれ所望の温度に維持される。これにより、プロセス管34の各々のセグメントも、以下に説明する図2により詳細に示すように、所望の温度に維持される。
【0026】
好ましくは、炉16のチャンバー44は、図1に関して本明細書中に示し説明する三つの加熱ゾーン20,21及び22を規定する。したがって、前駆体材料14は、プロセス管34中で加熱ゾーン20,21及び22の各々を通って移動しながら、異なる反応温度に供されることができる。すなわち、前駆体材料14は、プロセス管34を通って第一の加熱ゾーン20へと移動すると、第一の加熱ゾーン内部で維持された温度に供される。同様に、前駆体材料14は、プロセス管34を通って第一の加熱ゾーン20から第二の加熱ゾーン21へと移動すると、第二の加熱ゾーン内部で維持された温度に供される。
【0027】
加熱ゾーン20,21及び22は、任意の適する様式で規定してもよいことは理解すべきである。例えば、加熱ゾーン20,21及び22は、バッフル(図示せず)、数多くの独立したチャンバー(図示せず)等により規定してもよい。実際に、加熱ゾーン20,21及び22は、必ずしも耐熱性の障壁46,47等により規定する必要がない。一例として、プロセス管34は、独立した連続する複数の炉(図示せず)を通って伸張してもよい。別の例として、炉16のチャンバー44は開放していてもよく、その長さに沿って空間をあけて配置された独立した複数の加熱部材を用いて、チャンバー44の一の端部からチャンバー44の反対の端部まで伸張するように、チャンバー44の内部で温度勾配を発生させてもよい。
【0028】
また、三つより多い加熱ゾーン(図示せず)を炉16の内部に規定してもよいことは理解すべきである。本発明の更に他の態様にしたがえば、三つより少ない加熱ゾーン(これも図示せず)を炉16中に規定してもよい。更に他の態様は、本発明の教示に基づいて当業者が見出すだろうが、これらもまた本発明の精神の範囲内にあるものと企図されている。
【0029】
炉16は、適する温度制御手段を用いて、所望の温度に維持することができる。好ましい態様においては、炉16の加熱ゾーン20,21及び22の各々は、適する熱源、温度制御、及び過温保護を用いて、それぞれ、所望の温度に維持される。例えば、熱源は、炉16の加熱ゾーン20,21及び22の各々の内部に配置され、適する制御回路に連結された、独立して制御される加熱部材50,51及び52を含むことができる。
【0030】
一の好ましい態様においては、温度は、炉16の三つの加熱ゾーン20,21及び22の内部で、28個の炭化ケイ素電気抵抗加熱部材により調整する。加熱部材は、その温度を設定し制御するために、三つのHoneywell UDC3000 マイクロプロセッサ温度コントローラ(すなわち、三つの加熱ゾーン20,21及び22の各々について一つのコントローラ)に連結される。また、三つのHoneywell UDC3000 マイクロプロセッサ温度リミッタ(すなわち、同様に、三つの加熱ゾーン20,21及び22の各々について一つのコントローラ)が、過温保護のために提供される。しかし、炉16内部の所望の温度を設定し維持するために、任意の適する温度調整手段を使用してもよいことは理解すべきである。例えば、加熱部材は、必ずしも電気的に制御する必要はなく、代わりに手動で制御してもよい。
【0031】
各々の加熱ゾーンは、好ましくは、それぞれ比較的均一な温度に維持されるが、熱の伝導及び対流により、加熱ゾーン20,21及び22のうち一つ又はそれより多いゾーンの内部で温度勾配ができる原因となりうることは明らかである。例えば、耐熱性の障壁46,47は、プロセス管34からおよそ1.3〜1.9cm(0.5〜0.75in)間隔をあけて配置されて、加熱ゾーン20,21及び22の間での熱の移動又は交換を低減又は最小にするが、一部の熱交換は依然としてそれらの間で起こりうる。また、例えば、プロセス管34及び/又は前駆体材料及び/又は中間材料は、加熱ゾーン20,21及び22の間で熱を伝導しうる。したがって、加熱ゾーン20,21及び22の各々の内部で種々の地点において測定される温度は、加熱ゾーン20,21及び22の中心よりも数度冷たいか又は数度温かいことがありうる(例えば、約50〜100℃)。また、プロセス管34のまわりで耐熱性の障壁46,47を密封することなど、温度勾配の発生を更に提言するための他の設計も企図される。とにかく、加熱ゾーン20,21及び22の各々についての温度設定は、好ましくは、その中の所望の温度をより正確に維持するために、加熱ゾーン20,21及び22の各々の中心で維持される。
【0032】
好ましくは、冷却ゾーン(図1において輪郭23により示す)は、大気に開放しているプロセス管34の部分を含む。したがって、モリブデン金属生成物12を、収集ホッパー38中に集める前に冷やすことができる。しかし、本発明の他の態様にしたがえば、冷却ゾーン23は、装置10の一又はそれより多い閉鎖された部分であることができる。同様に、適する温度調整手段を使用して、閉鎖された冷却ゾーン23内部の所望の温度を設定し維持してもよい。例えば、ラジエータにより冷却ゾーン23中においてプロセス管34の周りの流体を循環させてもよい。あるいは、例えば、ファン又はブロワにより、冷却ガスを冷却ゾーン23中においてプロセス管34の周りに循環させてもよい。
プロセスガス62は、好ましくは、前駆体物質14及び中間生成物30との反応のために炉16内に導入する。本発明の好ましい態様にしたがえば、プロセスガス62は、還元性ガス64及び不活性キャリヤガス65を含むことができる。還元性ガス64及び不活性キャリヤガス65は、図1に示すように、プロセス管34の遠位端の近くで、独立したガスシリンダー中に貯蔵することができる。また、図1に示すように、個々のガスラインは、独立したガスシリンダーからプロセス管34の遠位端にあるガス入口25まで通じることができる。適するガスレギュレータ(図示せず)を提供して、還元性ガス64及び不活性キャリヤガス65を、それぞれのガスシリンダーからプロセス管34へと、所望の割合及び所望の速度で導入してもよい。
【0033】
本発明の態様にしたがえば、還元性ガス64は、水素ガスであってもよく、不活性キャリヤガス65は、窒素ガスであってもよい。しかし、任意の適する還元性ガス64、又はこれらの混合物を本発明の教示にしたがって使用してもよいことは理解すべきである。同様に、不活性キャリヤガス65は、任意の不活性キャリヤガス又はガスの混合物であってもよい。プロセスガス62の組成は、他の考慮事項の中でも、ガスのコストや入手可能性、安全性の問題、ならびに所望の製造速度などの設計の考慮事項に依存する。
【0034】
好ましくは、プロセスガス62を、プロセス管34内に導入し、前駆体材料14が炉16の加熱ゾーン20,21及び22の各々を通り、冷却ゾーン23を通って移動する方向と反対の方向(すなわち、矢印28により説明するように、向流)に、冷却ゾーン23を通り、そして加熱ゾーン20,21及び22の各々を通って指向させる。プロセスガス62を、前駆体材料14が炉16を通って移動する方向と反対又は向流の方向に指向させることにより、前駆体材料14及び中間材料30(図2)と還元性ガス64との反応の速度が増加しうる。すなわち、プロセスガス62は、はじめにプロセス管34へと導入したときには高濃度の還元性ガスを含むので、プロセス管34の遠位端で前駆体材料14及び/又は中間材料30の残り又は未反応部分とより容易に反応しやすい。
【0035】
プロセス管34の入口に向かって上流へと流れる未反応プロセスガス62は、したがって、低い濃度のプロセスガス64を含む。しかし、おそらくは、プロセス管34の入口又はその付近では、大きな表面積の前駆体材料14が利用可能である。かくして、プロセス管34の入口又はその付近では、前駆体材料14と反応するために必要とされる還元性ガス64の濃度は少なくてすむ。また、そのような様式で還元性ガス64を導入することにより、説明したのと同様の理由により、プロセスガス62との反応により還元性ガス64が消費される効率を高めることができる。
【0036】
本発明の他の態様においては、プロセスガス62を任意の適する様式で導入してもよいことは理解すべきである。例えば、プロセスガス62は、プロセス管34の長さに沿って多数の注入部位(図示せず)を通して導入してもよい。あるいは、例えば、プロセスガス62は、予混合し、その組み合わせた状態で、炉16内に導入するための一又はそれより多いガスシリンダー中に貯蔵してもよい。これらは単に例示的な態様であり、更に他の態様も本発明の範囲内にあるものと企図される。
【0037】
また、本発明の好ましい態様にしたがって所望されるように、プロセスガス62を使用して、プロセス管34の内部又は反応部分を実質的に一定の圧力に維持してもよい。実際に、本発明の一の好ましい態様にしたがえば、プロセス管34は、約8.9〜14cm(約3.5〜5.5in)の水圧(ゲージ)に維持される。プロセス管34は、本発明の一態様にしたがえば、プロセスガス62をあらかじめ決められた速度又は圧力でプロセス管34内に導入し、未反応プロセスガス62をあらかじめ決められた速度又は圧力でそこから排出して、プロセス管34内に所望の平衡圧力を確立することにより、一定の圧力に維持することができる。
【0038】
好ましくは、プロセスガス62(すなわち、不活性キャリヤガス65及び未反応還元性ガス64)は、プロセス管34を実質的に一定の圧力に維持するために、プロセス管34の入口又はその付近にあるスクラバー66を通ってプロセス管34から排出される。スクラバー66は、ドライポット67、ウェットポット68、及びフレア69を含むことができる。ドライポット67は、好ましくは、プロセス管34から排出されうる任意の乾燥材料を収集してウェットポット68の汚染を最小限にするために、ウェットポット68の上流に提供される。プロセスガス62は、ドライポット67を通って、ウェットポット68中に含有される水へと排出される。プロセスガス62がウェットポット68内部で輩出される水の深さにより、プロセス管34の圧力を制御する。あらゆる過剰なガスはフレア69で燃焼されうる。
【0039】
また、プロセス管34を実質的に一定の圧力に維持するための他の態様も、本発明の範囲内にあるものとして企図される。例えば、未反応プロセスガス62をプロセス管34から排出して、その中の所望の圧力を維持するため、排出開口部(図示せず)をプロセス管34の壁74(図2)の内部に形成してもよい。あるいは、例えば、そこから未反応プロセスガス62を調節可能なように放出又は排出するため、一又はそれより多いバルブ(図示せず)をプロセス管34の壁74(図2)に取り付けてもよい。また、プロセス管34の内部の圧力を維持するための更に他の態様も、本発明の範囲内にあるものとして企図される。
【0040】
図1に示し、前述の説明において説明したような、装置10の種々の構成部品は商業的に入手可能である。例えば、Harper回転型管炉(モデルNo. HOU-6D60-RTA-28-F)は、Harper International Corporation(ランカスター、ニューヨーク州)から商業的に入手可能であり、モリブデン金属生成物12を製造するために、本発明の教示にしたがって、少なくとも部分的に使用してもよい。
【0041】
Harper回転型管炉は、最大温度レートが1450℃である高熱チャンバーを特徴とする。数多くの耐熱性の障壁により、高熱チャンバーを三つの独立した温度制御ゾーンhwと分割している。三つの温度制御ゾーンは、28個の炭化ケイ素電気抵抗加熱部材を用いた別個の温度制御を特徴とする。炉の屋根の中心線に沿って、各々の制御ゾーンの中心に熱電対が提供されている。温度制御ゾーンは、三つのHoneywell UDC3000 マイクロプロセッサ温度コントローラ、及び、三つのHoneywell UDC3000 マイクロプロセッサ温度リミッタにより調整される。これらは各々、Honeywell International, Inc.(モーリスタウン、ニュージャージー州)から商業的に入手可能である。
【0042】
また、Harper回転型管炉は、最大レートが1100℃である気密性の高温合金プロセス管を特徴とする。このプロセス管は、15.2cm(6.0in)の呼び内径、16.5cm(6.5in)の呼び外径、及び305cm(120in)の全長を有する。このプロセス管は、等しいセグメント(各々が50.8cm(20in)の長さを有する)が各々の温度制御ゾーンを通って伸張し、152cm(60in)が冷却ゾーンを通って伸張する。
【0043】
Harper回転型管炉が提供されたプロセス管は、0〜5°の範囲内で傾斜させてもよい。また、Harper回転型管炉には、1分あたり1〜5回転(rpm)の回転速度でプロセス管を回転させるためのデジタルスピード制御を伴う可変直流電流(DC)ドライブを提供してもよい。
【0044】
また、Harper回転型管炉は、316リットルのステンレス鋼製で、不活性ガスパージに対して気密性である、排出ホッパーを特徴とする。また、Harper回転型管炉は、プロセス管内部で一定の圧力を維持するための雰囲気プロセスガス制御系を特徴とする。更に、炉を加熱し、プロセス管を駆動するために、45キロワット(kW)の電力供給源が提供されていてもよい。また、Harper回転型管炉には、C. W. Brabender Instruments, Inc.(サウスハッケンサック、ニュージャージー州)から商業的に入手可能なBrabenderロスインウェイト式供給系(モデルNo. H31-FW33/50)が取り付けられていてもよい。
【0045】
装置10の好ましい態様を図1に示し、これまで説明してきたが、装置10の他の態様も本発明の範囲内にあるものと企図されることは理解すべきである。更に、装置10は、種々の製造業者からの任意の適する構成要素を含んでもよく、本明細書中に提供されるものに限定されないことも理解すべきである。実際に、装置10を大規模又は工業規模の製造のために設計する場合、種々の構成要素は、具体的に製造されてもよく、その仕様は、これに限定されないが、その規模などの種々の設計事項に依存するだろう。
【0046】
モリブデン金属を製造するための方法
本発明にしたがってモリブデン金属生成物12を製造するために使用してもよい装置10とその好ましい態様を説明してきたが、ここで、モリブデン金属生成物12を製造するための方法の一態様に注目を向ける。概観として、図1に関して、前駆体材料14は、好ましくは、炉16内に導入し、その加熱ゾーン20,21及び22を通り、更にその冷却ゾーン23を通って移動させる。プロセスガス62は、好ましくは、前駆体材料14及び中間材料30との反応のために炉16内に導入する。前駆体材料14及び中間材料30は、本方法の好ましい態様に関して以下により詳細に説明するように、その中のプロセスガス62と反応して、モリブデン金属生成物12が製造される。
【0047】
好ましい態様にしたがえば、前駆体材料14は、酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子を含む。酸化モリブデンのナノ粒子は、好ましくは、約25〜30m/gの典型的な表面積対質量比を有する。これらの酸化モリブデンのナノ粒子を前駆体材料14として使用する場合、本発明の方法の態様にしたがって製造されるモリブデン金属生成物12は、約2.5m/gの表面積対質量比を有するものとして、特徴付けることができる。また、モリブデン金属生成物12は、寸法が均一であるものとして特徴付けることができる。
【0048】
上記説明した酸化モリブデンのナノ粒子は、本出願と同じ出願人により所有される2002年10月22日付けで発行された、Khan, et al.の米国特許第6,468,497号「酸化モリブデンのナノ粒子を製造するための方法」(この特許が開示するすべてについて本明細書中に援用される)に開示された発明の態様にしたがって製造することができる。酸化モリブデンのナノ粒子は、Climax Molybdenum Company(フォートマディソン、アイオワ州)により製造され、ここから商業的に入手可能である。
【0049】
しかし、本発明の他の態様にしたがえば、前駆体材料14は任意の適するグレード又は形態の酸化モリブデン(MoO)を含んでもよいことは理解すべきである。例えば、前駆体材料14は、0.5〜80m/gの寸法であってもよい。前駆体材料14の選択は、モリブデン金属生成物12の所望の特徴(例えば、表面積対質量比、寸法、純度、等)を含むがこれらに限定されない種々の設計考慮事項に依存しうる。一般的には、モリブデン金属生成物12の表面積対質量比は、前駆体材料14の表面積対質量比に比例し、典型的には1.5〜4.5m/gである。
【0050】
ここで図2をみると、プロセス管34(その壁74が図示されている)がプロセス管34の三つの断面部分において示されている。図2に示される各々の断面部分は、それぞれ、炉16の三つの加熱ゾーン20,21及び22の各々から採取されている。方法の好ましい態様にしたがえば、前駆体材料14は、プロセス管34内に導入され、炉16の三つの加熱ゾーン20,21及び22(すなわち、図2において、加熱ゾーン1、加熱ゾーン2及び加熱ゾーン3)の各々を通って移動する。プロセス管34は、装置10の態様に関してこれまでにより詳細に説明したように、回転及び/又は傾斜させて、その中の前駆体材料14の移動及び混合を促進させてもよい。更に、プロセスガス62もプロセス管34内に導入する。好ましくは、プロセスガス62は、これまでにより詳細に説明した装置10の態様にしたがって達成されるように、前駆体材料14がプロセス管34を通って移動する方向26に対して反対又は向流の方向28にプロセス管34を通って流れる。
【0051】
前駆体材料14が第一の加熱ゾーン20を通って移動すると、プロセスガス62と混合し、これと反応して、中間生成物30を形成する。この反応は、図2の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)において矢印70で説明する。より特定的には、第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)における反応は、固体の酸化モリブデン(MoO)がプロセスガス62中の還元性ガス64(例えば、水素ガス)により還元されて、固体の二酸化モリブデン(MoO)(すなわち、図2の中間生成物30)と、例えば、還元性ガス64が水素ガスの場合は水蒸気とを形成するものと説明される。前駆体材料14と還元性ガス64との間の反応は、次の化学式により表すことができる:
MoO(s)+H(g)→MoO(s)+HO(v)
第一の加熱ゾーン20における温度は、好ましくは、プロセス管34の内部の圧力に関して、前駆体材料14の蒸気温度、及び第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)において形成されるあらゆる中間材料30の蒸気温度よりも低い温度に維持される。前駆体材料14及び/又は中間材料30を過温することにより、反応はその表面のみで起こる可能性がある。得られる表面反応により、モリブデン金属のビーズが形成される原因となり、未反応の前駆体材料14及び/又は中間材料30をその中に封じ込めてしまう。これらのビーズは、純粋なモリブデン金属生成物12へと転化させるために、より長い時間及び/又はより高い加工温度を必要とするので、効率は低減し、製造のコストは増加する。
【0052】
第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)における前駆体材料14及び還元性ガス64の間の反応は発熱反応であることから、第一の加熱ゾーン20の温度は、好ましくは、他の二つの加熱ゾーン21及び22よりも低い温度に維持する。すなわち、第一の加熱ゾーン20における反応の間に熱が放出される。
【0053】
第二の加熱ゾーン21(加熱ゾーン2)は、好ましくは、第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)と第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)の間の遷移ゾーンとして提供される。すなわち、第二の加熱ゾーン21における温度は、第一の加熱ゾーン20より高い温度に維持されるが、好ましくは、第三の加熱ゾーン22より低い温度に維持される。かくして、中間材料30及び未反応前駆体材料14の温度は、第三の加熱ゾーン22への導入のために徐々に上昇していく。第二の加熱ゾーン21なしでは、中間材料30及び未反応前駆体材料14の第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)の低温から第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)の高温への中間的な移動により、未反応材料のビーズが形成される原因となりうる。これらのビーズの不利益はすでに説明した。また、モリブデン金属生成物が塊になり、不所望な生成物である「チャンク」がもたらされる場合がある。
【0054】
中間材料30が第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)内に移動すると、プロセスガス62と混合し続け、これと反応して、図2において矢印72で説明するように、モリブデン金属生成物12が形成される。より特定的には、第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)における反応は、固体の二酸化モリブデン(MoO)がプロセスガス62中の還元性ガス64(例えば、水素ガス)により還元されて、固体のモリブデン金属生成物(Mo)と、例えば、還元性ガス64が水素ガスの場合は水蒸気とを形成するものと説明される。中間材料30とプロセスガス62との間の反応は、次の化学式により表すことができる:
MoO(s)+2H(g)→Mo(s)+2HO(v)
第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)における中間材料30と還元性ガス64との間の反応は、吸熱反応である。すなわち、この反応の間に熱が消費される。したがって、第三の加熱ゾーン22のエネルギー入力は、好ましくは、第三の加熱ゾーン22における吸熱反応が必要とする追加の熱を提供するように調節される。
【0055】
これまでに説明した反応により製造されるモリブデン金属12を、まだ熱い間に(例えば、第三の加熱ゾーン22を出ると同時に)すぐに大気環境へと導入する場合、一又はそれより多い大気の構成要素と反応する可能性がある。例えば、熱いモリブデン金属12は、酸素環境に暴露されると再度酸化される場合がある。したがって、モリブデン金属生成物12は、好ましくは、冷却ゾーン23を通って移動させる。また、好ましくは、
プロセスガス62を冷却ゾーン23に流し、その結果、熱いモリブデン金属生成物12を還元性環境において冷却し、モリブデン金属生成物12の再度の酸化(例えば、MoO及び/又はMoOを形成する)の発生を少なくするか又は排除する。また、取り扱い目的のために、冷却ゾーン23を提供して、モリブデン金属生成物12を冷却してもよい。
【0056】
以下に説明するように、第一の加熱ゾーン20(加熱ゾーン1)における反応は、主として、前駆体材料14を還元して、中間材料30を形成するものである。また、これまでに説明したように、第二の加熱ゾーン21(加熱ゾーン2)は、主として、第一の加熱ゾーン20において生成された中間材料30のための第三の加熱ゾーン22(加熱ゾーン3)へと導入する前の遷移ゾーンとして提供される。更に、これまでに説明したように、第三の加熱ゾーン22における反応は、主として、中間材料30を更に還元して、モリブデン金属生成物12を形成するものである。しかし、図2に示す加熱ゾーン20,21及び22の各々における反応についてのこれまでの説明は、本発明の方法の単なる例示である。
【0057】
当業者にとっては容易に明らかであるように、これらの反応は、矢印70,71及び72で説明したように、三つの加熱ゾーン20,21及び22の各々において起こりうることは理解すべきである。すなわち、一部のモリブデン金属生成物12は、第一の加熱ゾーン20及び/又は第二の加熱ゾーン21において形成されうる。同様に、一部の未反応前駆体材料16が、第二の加熱ゾーン21及び/又は第三の加熱ゾーン22内に導入されうる。また、一部の反応は、冷却ゾーン23において更に起こりうる。
【0058】
当業者にとっては容易に明らかであるように、任意の未反応還元性ガス64及び不活性ガス65も排出物中に排出される。同様に、水素以外の還元性ガス64を使用する場合、酸化モリブデンから除かれた酸素と組み合わされた還元剤も排出物中に放出される。
【0059】
図2に説明した炉16の種々の部分における反応を説明してきたが、プロセスパラメータを表1に示す範囲内の値に設定した場合に、前駆体材料14のモリブデン金属生成物12への最適な転化が観察されたことは銘記すべきである。
【0060】
【表1】

【0061】
プロセスパラメータを、本発明の教示に基づいて当業者が容易に決定できるように、表1中で上に与えた範囲の外部に調節した場合も、モリブデン金属生成物12を製造できることは理解すべきである。
【0062】
本発明の好ましい態様にしたがえば、モリブデン金属生成物12は、前駆体材料14、中間材料30、及び/又は他の汚染材料(図示せず)を生成物から除去するために、必ずしもふるいにかけない。すなわち、好ましくは、前駆体材料14の100%を純粋なモリブデン金属生成物12へと完全に転化する。しかし、本発明の態様にしたがえば、モリブデン金属生成物12は、ふるいにかけて、方法の間に塊になりうる過大の粒子を生成物から除去してもよい。モリブデン金属生成物12をふるいにかけるか否かは、これらに限定されないが、モリブデン金属生成物12の最終用途、前駆体材料14の純度、及び/又は粒子寸法などの設計考慮事項に依存する。
【0063】
本発明の教示にしたがってモリブデン金属生成物12を製造するための方法の一態様を、図3に示すフローチャートにおいて工程として説明する。工程80において、前駆体材料14を炉内16に導入することができる。これまでに説明したように、前駆体材料14は、好ましくは、炉16を通って伸張するプロセス管34へと供給することにより、炉16内に導入する。工程82において、前駆体材料14を炉16を通って移動させる。これまでに説明したように、前駆体材料14は、好ましくは、炉16の三つの加熱ゾーン20,21及び22を通り、更に冷却ゾーン23を通って移動させる(例えば、プロセス管34の内部で)。工程84において、還元性ガス64を炉16内に導入することができる。また、これまでに説明したように、還元性ガス64は、好ましくは、プロセス管34内に導入し、好ましくは、前駆対材料14が炉16を通って移動する方向26と反対又は向流の方向28にプロセス管34内を流す。したがって、工程86により説明し、図2に関してこれまでにより詳細に説明したように、前駆対材料14が還元され、モリブデン金属12が生成される。
【0064】
図3に関して示し説明した工程は、モリブデン金属12を製造するための方法の一態様の単なる例示であることは理解すべきである。また、方法の他の態様も本発明の範囲内にあるものとして企図される。また、方法の別の態様は、前駆体材料14を炉16内に供給するためのプロセス管34を傾斜させる工程も含む。同様に、方法の別の態様は、装置10に関してより詳細にこれまでに説明したように、前駆体材料14を回転させて42、前駆体材料14がプロセス管34を通る移動を促進させ、また、その反応を高めてもよい。方法の更に別の態様は、炉16を一定の圧力に維持する工程を含んでもよい。例えば、そのような方法の態様は、プロセスガス62を炉16からスクラバー68を通して排出して、炉16を一定の圧力に維持する工程を含んでもよい。また、更に他の態様も本発明の範囲内にあるものとして企図される。実際に、モリブデン金属生成物を製造するための方法の更に他の態様は、本発明の教示に基づいて当業者には容易に明らかになるだろうことが予期される。
【0065】
モリブデン金属の特徴
本発明にしたがってモリブデン金属を製造するための方法及び装置10を説明してきたが、ここで、モリブデン金属の特徴を示し、更に詳細に説明する。
【0066】
従来技術
図4は、従来技術の方法にしたがって製造することができるモリブデン金属を示す。図4は、一般に走査型電子顕微鏡法と呼ばれる方法において、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてもたらされる像である。図4において容易にわかるように、モリブデン金属の個々の粒子は、寸法と形状が互いに広く変動している。モリブデン金属の寸法は、粒子の平均長さ又は平均径で表すことができるが(例えば、走査型電子顕微鏡により測定して)、一般的には、寸法と表面積との間の相関関係により、単位質量あたりの表面積でモリブデン金属の寸法を表すのがより有用である。
【0067】
単位重量あたりの粒子表面積の測定は、BET分析により得ることができる。よく知られているように、BET分析は、Brunauer, Emmett, 及びTeller(これにより、BET)により開発された多分子層吸着を用いたラングミュア等温式の拡張に関係する。
【0068】
図4に示し、従来技術の方法にしたがって製造されたモリブデン金属は、BET分析手法にしたがって測定して、約0.8平方メートル/グラム(m/g)の表面積を特徴とする。別の態様では、他のタイプの測定法を使用して、粒子特徴を測定してもよい。
【0069】
新規な形態のモリブデン金属生成物
図5は、本発明の一態様にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12の走査型電子顕微鏡像である。図5において容易にみられるように、モリブデン金属12の個々の粒子は、一般的には、細長いか、又はその平均径より大きい平均長さを有する円筒状の形状を含む。また、モリブデン金属生成物12は、実質的には、寸法及び形状が均一である。例えば、図5に示すふるいにかけていないモリブデン金属生成物12のうち50%は、24.8マイクロメートル(μm)の平均寸法を有し、図5に示すふるいにかけていないモリブデン金属生成物12のうち99%は、194μmより小さい平均寸法を有する。生成物の塊をばらばらになるまで粉砕したあと、ふるいにかけていないモリブデン金属生成物12は、1.302μmの全体平均寸法を有し、ふるいにかけていないモリブデン金属生成物12のうち50%は、1.214μmより小さい平均寸法を有し、ふるいにかけていないモリブデン金属生成物12のうち99%は、4.656μmより小さい平均寸法を有する。
【0070】
また、モリブデン金属生成物12の寸法は、粒子の平均長さ又は平均径で表すことができるが(例えば、走査型電子顕微鏡により測定して)、一般的には、寸法と表面積との間の相関関係により、単位質量あたりの表面積でモリブデン金属の寸法を表すのがより有用である。
【0071】
図5に関して示し説明するモリブデン金属生成物12は、本発明の方法及び装置の一態様にしたがって製造された。モリブデン金属生成物12は、BET分析手法にしたがって測定して、約2.5m/gの表面積を特徴とする。また、粒子特徴を決定するために他のタイプの測定法を使用してもよい。
【0072】
実施例1
この実施例1において、前駆体材料は、代表的寸法が25〜35m/gである酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子を含んでいた。かかる酸化モリブデンのナノ粒子は、本出願と同じ出願人により所有される2002年10月22日付けで発行された米国特許第6,468,497号「酸化モリブデンのナノ粒子を製造するための方法」に開示された発明の態様にしたがって製造することができる。この実施例において前駆体材料として使用される酸化モリブデンのナノ粒子は、Climax Molybdenum Company(フォートマディソン、アイオワ州)により製造され、ここから商業的に入手可能である。
【0073】
以下の装置をこの実施例のために使用する:C. W. Brabender Instruments, Inc.(サウスハッケンサック、ニュージャージー州)から商業的に入手可能なBrabenderロスインウェイト式供給系(モデルNo. H31-FW33/50);及びHarper International Corporation(ランカスター、ニューヨーク州)から商業的に入手可能なHarper回転型管炉(モデルNo. HOU-6D60-RTA-28-F)。Harper回転型管炉は、三つの独立して制御される長さ50.8cm(20in)の加熱ゾーンを含み、305cm(120in)のHT合金製の管がその加熱ゾーンの各々を通って伸張していた。したがって、この実施例では、全体で152cm(60in)の加熱と152cm(60in)の冷却が提供された。
【0074】
この実施例においては、Brabenderロスインウェイト式供給系を用いて、Harper回転型管炉のHT合金製の管へと前駆体材料を供給した。HT合金製管は、回転させ、また傾斜させて(以下、表2を参照のこと)、Harper回転型管炉を通る前駆体材料の移動を促進させ、前駆体材料とプロセスガスとの混合を促進させた。プロセスガスは、前駆体材料がHT合金製管を通って移動する方向に対して反対又は向流の方向に、HT合金製管を通して導入した。この実施例においては、プロセスガスは、還元剤としての水素ガスと不活性キャリヤガスとしての窒素ガスを含んでいた。排出ガスは、水スクラッバーを通して泡立たせて、およそ11.4cm(4.5in)の水圧(ゲージ)に炉の内部を維持した。
【0075】
パラメータを表2に示す値に設定した場合に、前駆体材料からモリブデン金属生成物への最適な転化が起こった。
【0076】
【表2】

【0077】
この実施例にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12は、図5に示し、この図に関してこれまでに説明している。具体的には、この実施例にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12は、2.5m/gの表面積対質量比を特徴とする。また、この実施例にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12は、均一な寸法を特徴とする。すなわち、図5に示すふるいにかけていないモリブデン金属生成物12の50%は、24.8μm未満の平均寸法を有し、図5に示すふるいにかけていないモリブデン金属生成物12の99%は、194μm未満の平均寸法を有していた。
【0078】
実施例2
この実施例においては、前駆体材料は、約30〜50m/gの代表寸法を有する酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子を含んでいた。かかる酸化モリブデンのナノ粒子は、本出願と同じ出願人により所有される2002年10月22日付けで発行された米国特許第6,468,497号「酸化モリブデンのナノ粒子を製造するための方法」に開示された発明の態様にしたがって製造することができる。この実施例において前駆体材料として使用される酸化モリブデンのナノ粒子は、Climax Molybdenum Company(フォートマディソン、アイオワ州)により製造され、ここから商業的に入手可能である。
【0079】
以下の装置をこの実施例のために使用する:C. W. Brabender Instruments, Inc.(サウスハッケンサック、ニュージャージー州)から商業的に入手可能なBrabenderロスインウェイト式供給系(モデルNo. H31-FW33/50);及びHarper International Corporation(ランカスター、ニューヨーク州)から商業的に入手可能なHarper回転型管炉(モデルNo. HOU-6D60-RTA-28-F)。Harper回転型管炉は、三つの独立して制御される長さ50.8cm(20in)の加熱ゾーンを含み、305cm(120in)のHT合金製の管がその加熱ゾーンの各々を通って伸張していた。したがって、この実施例では、全体で152cm(60in)の加熱と152cm(60in)の冷却が提供された。
【0080】
この実施例においては、Brabenderロスインウェイト式供給系を用いて、Harper回転型管炉のHT合金製の管へと前駆体材料を供給した。HT合金製管は、1回転あたり20秒で回転させ、また0.3°まで傾斜させて(以下、表3を参照のこと)、Harper回転型管炉を通る前駆体材料の移動を促進させ、前駆体材料とプロセスガスとの混合を促進させた。しかし、他の管傾斜の場合に申し分のない結果を得ることができる(例えば、約0.2°〜約0.4°)。プロセスガスは、前駆体材料がHT合金製管を通って移動する方向に対して反対又は向流の方向に、HT合金製管を通して導入した。この実施例においては、プロセスガスは、還元剤としての水素ガスと不活性キャリヤガスとしての窒素ガスを含んでいた。排出ガスは、水スクラッバーを通して泡立たせて、およそ11.4cm(4.5in)の水圧(ゲージ)に炉の内部を維持した。
【0081】
パラメータを表3に示す値に設定した場合に、前駆体材料からモリブデン金属生成物への最適な転化が起こった。
【0082】
【表3】

【0083】
この実施例2にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12は、2.0837m/g(BET)の表面積対質量比を特徴とする。生成物12の塊をばらばらになるまで粉砕したあとに、ふるいにかけていないモリブデン生成物12は、ホリバレーザー散乱分析器により測定して、1.598μmの全体平均寸法を有していた。
【0084】
実施例3
この実施例3において、前駆体材料は、代表的寸法が25〜35m/gである酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子を含んでいた。かかる酸化モリブデンのナノ粒子は、本出願と同じ出願人により所有される2002年10月22日付けで発行された米国特許第6,468,497号「酸化モリブデンのナノ粒子を製造するための方法」に開示された発明の態様にしたがって製造することができる。この実施例において前駆体材料として使用される酸化モリブデンのナノ粒子は、Climax Molybdenum Company(フォートマディソン、アイオワ州)により製造され、ここから商業的に入手可能である。
【0085】
以下の装置をこの実施例のために使用する:C. W. Brabender Instruments, Inc.(サウスハッケンサック、ニュージャージー州)から商業的に入手可能なBrabenderロスインウェイト式供給系(モデルNo. H31-FW33/50);及びHarper International Corporation(ランカスター、ニューヨーク州)から商業的に入手可能なHarper回転型管炉(モデルNo. HOU-6D60-RTA-28-F)。Harper回転型管炉は、三つの独立して制御される長さ50.8cm(20in)の加熱ゾーンを含み、305cm(120in)のHT合金製の管がその加熱ゾーンの各々を通って伸張していた。したがって、この実施例では、全体で152cm(60in)の加熱と152cm(60in)の冷却が提供された。
【0086】
この実施例においては、Brabenderロスインウェイト式供給系を用いて、Harper回転型管炉のHT合金製の管へと前駆体材料を供給した。HT合金製管は、1回転あたり20秒で回転させ、また0.3°まで傾斜させて(以下、表4を参照のこと)、Harper回転型管炉を通る前駆体材料の移動を促進させ、前駆体材料とプロセスガスとの混合を促進させた。しかし、他の管傾斜の場合に申し分のない結果を得ることができる(例えば、約0.2°〜約0.4°)。プロセスガスは、前駆体材料がHT合金製管を通って移動する方向に対して反対又は向流の方向に、HT合金製管を通して導入した。この実施例においては、プロセスガスは、還元剤としての水素ガスと不活性キャリヤガスとしての窒素ガスを含んでいた。排出ガスは、水スクラッバーを通して泡立たせて、およそ11.4cm(4.5in)の水圧(ゲージ)に炉の内部を維持した。
【0087】
パラメータを表4に示す値に設定した場合に、前駆体材料からモリブデン金属生成物への最適な転化が起こった。
【0088】
【表4】

【0089】
この実施例にしたがって製造されたモリブデン金属生成物12は、3.412m/g(BET)の表面積対質量比を特徴とする。生成物12の塊をばらばらになるまで粉砕したあとに、ふるいにかけていないモリブデン生成物12は、ホリバレーザー散乱分析器により測定して、1.019μmの全体平均寸法を有していた。
【0090】
実施例4
この実施例4において、前駆体材料は、代表的寸法が25〜35m/gである酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子を含んでいた。かかる酸化モリブデンのナノ粒子は、本出願と同じ出願人により所有される2002年10月22日付けで発行された米国特許第6,468,497号「酸化モリブデンのナノ粒子を製造するための方法」に開示された発明の態様にしたがって製造することができる。この実施例において前駆体材料として使用される酸化モリブデンのナノ粒子は、Climax Molybdenum Company(フォートマディソン、アイオワ州)により製造され、ここから商業的に入手可能である。
【0091】
以下の装置をこの実施例のために使用する:C. W. Brabender Instruments, Inc.(サウスハッケンサック、ニュージャージー州)から商業的に入手可能なBrabenderロスインウェイト式供給系(モデルNo. H31-FW33/50);及びHarper International Corporation(ランカスター、ニューヨーク州)から商業的に入手可能なHarper回転型管炉(モデルNo. HOU-6D60-RTA-28-F)。Harper回転型管炉は、三つの独立して制御される長さ50.8cm(20in)の加熱ゾーンを含み、305cm(120in)のHT合金製の管がその加熱ゾーンの各々を通って伸張していた。したがって、この実施例では、全体で152cm(60in)の加熱と152cm(60in)の冷却が提供された。
【0092】
この実施例においては、Brabenderロスインウェイト式供給系を用いて、Harper回転型管炉のHT合金製の管へと前駆体材料を供給した。HT合金製管は、1回転あたり20秒で回転させ、また0.3°まで傾斜させて(以下、表5を参照のこと)、Harper回転型管炉を通る前駆体材料の移動を促進させ、前駆体材料とプロセスガスとの混合を促進させた。しかし、他の管傾斜の場合に申し分のない結果を得ることができる(例えば、約0.2°〜約0.4°)。プロセスガスは、前駆体材料がHT合金製管を通って移動する方向に対して反対又は向流の方向に、HT合金製管を通して導入した。この実施例においては、プロセスガスは、還元剤としての水素ガスと不活性キャリヤガスとしての窒素ガスを含んでいた。排出ガスは、水スクラッバーを通して泡立たせて、およそ11.4cm(4.5in)の水圧(ゲージ)に炉の内部を維持した。
【0093】
パラメータを表5に示す値に設定した場合に、前駆体材料からモリブデン金属生成物への最適な転化が起こった。
【0094】
【表5】

【0095】
この実施例にしたがって製造されるモリブデン金属生成物12は、表面積対質量比が4.106m/g(BET)であることを特徴とする。生成物12の塊をばらばらになるまで粉砕したあと、ふるいにかけていないモリブデン金属生成物12は、ホリバ・レーザー散乱分析器により測定して、1.005μmの全体平均寸法を有していた。
【0096】
本明細書中に説明した新規な形態のモリブデン金属は、比較的大きい表面積対質量比を有し、寸法が比較的均一であることは明らかである。同様に、本明細書中に説明したモリブデン金属の製造のための装置及び方法を使用して、連続的な単一段階の様式でモリブデン金属を製造できることは明らかである。結果として、特許請求の範囲に記載された本発明は、モリブデン金属技術における重要な開発を示している。本明細書中に本発明の種々の好ましい態様を示してきたが、本発明に対しては、依然として本発明の範囲内にある適する変更が施されることが予期される。したがって、本発明は、本明細書中に示し説明した態様に限定されるものと考えるべきではなく、特許請求の範囲には、従来技術に限定される範囲を除外して、本発明の更なる他の態様が含まれるものと解釈すべきであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、本発明にしたがったモリブデン金属を製造するための装置の一態様の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明にしたがったモリブデン金属製造を説明する、プロセス管の3つの区画の断面図である。
【図3】図3は、本発明にしたがったモリブデン金属を製造するための方法の一態様を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、従来技術の方法にしたがって製造することができるモリブデン金属の走査型電子顕微鏡像である。
【図5】図5は、本発明の一態様にしたがって製造することができる新規な形態のモリブデン金属の走査型電子顕微鏡像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体材料を還元性ガスの存在下で第一の温度まで加熱し、前記第一の温度を少なくとも一回上昇させて、前記前駆体材料を還元し、モリブデン金属を形成し、そして前記モリブデン金属を実質的に一定の圧力にて冷却することを含む方法にしたがって製造されたモリブデン金属。
【請求項2】
BET分析にしたがって実質的に2.5m/gの表面積を有することを特徴とするモリブデン金属。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡により測定して実質的に均一な寸法を有することを特徴とするモリブデン金属。
【請求項4】
BET分析にしたがって約2.1m/g〜約4.1m/gの表面積を有することを特徴とするモリブデン金属。
【請求項5】
モリブデン金属が、還元された形態の酸化モリブデン(MoO)のナノ粒子である、請求項1、2、0、又は4に記載のモリブデン金属。
【請求項6】
前駆体材料を還元性ガスの存在下で一定の圧力にて第一の温度まで加熱し、前記第一の温度を少なくとも一回上昇させて、前記前駆体材料を還元し、モリブデン金属を形成することを含む方法にしたがって製造されたモリブデン金属。
【請求項7】
モリブデン金属を製造するための方法であって、前駆体材料を還元性ガスの存在下で第一の温度まで加熱し、前記第一の温度が約540℃〜約600℃の範囲であり、前記第一の温度を少なくとも一回上昇させて、前記前駆体材料を還元し、モリブデン金属を形成し、そして前記モリブデン金属を実質的に一定の圧力にて冷却することを含む前記方法。
【請求項8】
モリブデン金属を製造するための方法であって、前駆体材料を還元性ガスの存在下で一定の圧力にて第一の温度まで加熱し、前記第一の温度が約540℃〜600℃の範囲であり、前記第一の温度を少なくとも一回上昇させて、前記前駆体材料を還元し、モリブデン金属を形成することを含む前記方法。
【請求項9】
第一の温度を、約760℃〜約820℃の範囲の第二の温度まで上昇させる、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
第二の温度を、約980℃〜約1050℃の範囲の第三の温度まで上昇させる、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
第一の温度を、約750℃の第二の温度まで上昇させる、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項12】
第一の温度を、約750℃〜約820℃の範囲の第二の温度まで上昇させる、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項13】
第二の温度を、約850℃の第三の温度まで上昇させる、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
第二の温度を、約850℃〜約1050℃の範囲の第三の温度まで上昇させる、請求項12記載の製造方法。
【請求項15】
前駆体材料からモリブデン金属を製造するための装置であって:
少なくとも2つの加熱ゾーンを有する炉;
前記炉の前記少なくとも2つの加熱ゾーンの各々を貫通して伸びるプロセス管;前記プロセス管は、約0.2°〜約0.4°の範囲の傾きを有し、実質的に一定の圧力を有し、ここで、前記前駆体材料は、前記プロセス管中に導入され、そして前記炉の前記少なくとも2つの加熱ゾーンの各々を貫通して移動される;及び
前記プロセス管中に導入されるプロセスガス、ここで、前記前駆体材料は、前記炉内部で前記プロセスガスと反応して、モリブデン金属を形成する
を含む前記装置。
【請求項16】
前駆体材料からモリブデン金属を製造するための装置であって:
3つの加熱ゾーン及び1つの冷却ゾーンを有するプロセス管;及び
前記プロセス管中に導入されるプロセスガス
を含み、
前記プロセス管は、約0.2°〜約0.4°の範囲の傾きを有し、前記前駆体材料は、前記プロセス管中に導入され、そして前記3つの加熱ゾーンを貫通して移動され、
前記前駆体材料は、前記3つの加熱ゾーンにおいて前記プロセスガスと反応して、モリブデン金属を形成し、前記モリブデン金属は、前記冷却ゾーンにおいて一定圧力にて冷却される、前記装置。
【請求項17】
プロセス管が約0.3°の傾きを有する、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
更に、プロセス管に結合された供給系を含む、請求項15又は16に記載の装置であって、前駆体材料が、約9グラム/分の速度にて前記プロセス管中に導入される、前記装置。
【請求項19】
更に、プロセス管に結合された供給系を含む、請求項15又は16に記載の装置であって、前駆体材料が、約5グラム/分の速度にて前記プロセス管中に導入される、前記装置。
【請求項20】
更に、プロセス管に結合された供給系を含む、請求項15又は16に記載の装置であって、前駆体材料が、約5グラム/分〜約9グラム/分の範囲の速度にて前記プロセス管中に導入される、前記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512438(P2007−512438A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541548(P2006−541548)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/038963
【国際公開番号】WO2005/051580
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(500565755)サイプラス・アマックス・ミネラルズ・カンパニー (1)
【Fターム(参考)】