説明

モリンガ種の完全な種子の抽出物並びに化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物におけるその使用

本発明は、(トリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質を含む)オイルと、ポリフェノールとを含むモリンガ種の完全な種子の抽出物に関するものであり、また、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物における前記抽出物の使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル(すなわちトリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質)及びポリフェノールを含むモリンガ種(Moringa sp.)の完全な種子の抽出物と、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
モリンガは、インド原産の小さな木であるが、世界の至る所で栽培され、また、極めて一般的な多くの環境で帰化している。ワサビノキ科(Moringaceae family)に属するモリンガには13種あり、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)(同義語:モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)が最も公知である。
【0003】
モリンガ・オレイフェラは、傘状に広がっている、開いた樹冠を有する高さ4〜8メートルの小さい木である。葉は、落葉性で、長さ30〜70cmであり、花は、白色で非常に芳香性であり、果実は、線形で細長く、三角状で革質、そして垂れ下がったカプセルであり、長さが30〜40cmに達する。種子は、丸みを帯びた三角形であり、長さ1.2cm及び幅1cmであって、種子から延びている長さ2cmの3つの膜状の種子翼を有している。
【0004】
熱帯の、湿った気候又は非常に乾燥した気候で、野生でも栽培でも、木は、極限条件下でも生き残ることができ、急速に成長する。その根が非常に深く張ることから、数カ月間、水なしで耐えることができる。
【0005】
モリンガ・オレイフェラには、ベンツリー(Ben tree)、ウィングベン(Winged Ben)、ネヴェルディエ(neverdie)、アナマンボ(Anamambo)、ホースラディッシュツリー(Horseradish tree)、ドラムスティックツリー(Drumstick tree)などの非常に多くの俗名があって、更に、決して死ぬことのない木「奇跡の木」とも称される。実際に、極めて高い栄養価を有することに加えて、300の疾患を治療することは、アーユルヴェーダ医学では公知である。果実は、火を通して食べられ、葉は、野菜として消費され、いくつかの国では栄養失調症の解決法となるような栄養価を有する。
【0006】
オレイン酸が豊富な食用油は、水を浄化するために凝集剤としても使用される種子から得られる。オイルは、外皮が取り除かれた種子の圧力抽出又はヘキサン抽出によって得られる。凝集特性の利用のため、圧搾後に回収された搾りかすを使用する。
【0007】
その種子は、まだ熟していない場合は、豆のように食べることができる。成熟した種子は、約40%のオイルを含む。モリンガ種は、(オリーブ油と同様の)良好な品質の食用油であり、また、化粧品の製造工場において石鹸の製造のために、又は(酸化に対して非常に安定である)灯油としても使用される。
【0008】
従来の医薬品では、オイルは、痛風又はリウマチの発作中の痛みを緩和する用途で使用されている(The Indian Materia Medica,pp 811−816)。経口での摂取では、種子は、解熱剤として使用される(Hukkeriら,Indian J.Pharm.Sci.(2006)68,pp.124−126)。
【0009】
圧搾によって又は(特にヘキサンによる)極めて非極性の抽出によって得られる種子由来のオイルは、それが含むトリグリセリドに起因して、その栄養特性の故に化粧品で広範に使用される。
【0010】
化粧品における種子の水性抽出物の使用を説明する:該抽出物が含むペプチド及びタンパク質は、抗シワ特性及び美化特性を有し:種子は、最初に脱皮そして脱脂される(米国特許第6500470号明細書及び米国特許出願公開第2006/0275247号明細書)。モリンガ種の完全な種子又は脱皮された種子から抽出された、水性の、そして脱脂されたタンパク質画分は、皮膚への水分補給、リペア及び抗シワの効果を有する(欧州特許第1064008号明細書)。種子の前記タンパク質画分は、「極めて極性」であると特徴付けられる。
【0011】
文献によると、種子は、ステロール(カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロール、Δ5―アベナステロール、クレロステロールなど)、脂肪酸(C18:1(オレイン酸)が68〜76%、C16:0が6〜7.8%、C18:0が4〜7.6%、C20:0が2.8〜4%及びC22:0が5〜6.7%)、タンパク質(26〜32%)、繊維、トコフェロール(α、γ、δそれぞれオイル1kg当たり134、93及び48mg/kg)から構成されている。
【0012】
種子は、4−(α―L―ラムノピラノシルオキシ)ベンジルグルコシノレートを含むグルコシノレートも含む。モリンガ種の葉及び種子が、サイトカイニン、例えばゼアチン、ジヒドロゼアチン及びイソペンチルアデニンを含むことも記載された(米国特許出願公開第2006/0222682号明細書)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人は、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物における、オイル(すなわちトリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質)を含むモリンガ種の完全な種子の特定の抽出物の使用と、有効成分としてのポリフェノールの使用を明らかにした。
【0014】
また、本発明の目的は、オイル(すなわちトリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質)及びポリフェノールを含むモリンガ種の完全な種子の抽出物である。本発明の文脈では、「完全な種子」とは、外皮が取り除かれていない種子と理解しなければならない。
【0015】
モリンガ種の完全な種子の抽出物は、(乾燥抽出物の重量と比較した重量%で)、
−(i)2%〜10%のトリグリセリド及び脂肪酸と、(ii)5%〜15%の極性脂質を含む、5%〜50%のオイル含量、
−0.01%〜5%の総ポリフェノール含量(100gの乾燥抽出物当たりのピロガロールのg数で表される)
によって特徴付けられる。
【0016】
本発明の特徴によれば、前記抽出物は、25%〜40%(乾燥抽出物の重量と比較した重量%)のオイル含量を有する。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、モリンガ種は、好ましくは、モリンガ・オレイフェラ又はモリンガ・ドロウハルディ(Moringa drouhardii)である。
【0018】
化粧品そして皮膚科学への活用が明らかにされた、本発明によるモリンガ種の前記抽出物は、有利には乾燥し、粉砕し、次いで適度に極性の溶媒による少なくとも1回の抽出を行った、モリンガ種の完全な種子から得られる。
【0019】
本発明の文脈において、「適度に極性の溶媒」とは、単独で又は組み合わせて使用される、C1〜C4アルコール、アセトン、水/アルコール混合物及びアセトン/水混合物から成る群から選択される溶媒であると理解しなければならない。
【0020】
好ましくは、エタノール/水混合物である。有利には、このエタノール/水混合物は、9/1から7/3(v/v)の様々な割合のエタノール/水によって特徴付けられる。
【0021】
また更に有利には、適度に極性の溶媒は、9/1又は3/1(v/v)のエタノール/水混合物である。
【0022】
抽出は、30分〜48時間、1/5〜1/20まで変えることができる植物/溶媒体積比において、撹拌下又は静止状態下で、還流又は室温で行う。抽出は、2回又は3回繰り返すことができる。
【0023】
次いで、遠心分離又は濾過によって抽出物から絞りかすを分離し、そして溶液を、5%〜10%の収率の乾燥抽出物が得られるまで多少濃縮する。得られた抽出物は、あまり均一ではなく、乾燥工程中に担体を、抽出された乾燥物質に対し1%〜75%で変化する質量比で加えることができる。担体は、マルトデキストリン、乳糖、シリカ又は化粧品として許容可能であり、かつ抽出物を可溶化する、例えば、プロピレングリコール/エトキシル化オレイックアルコールの様々な割合の混合物のような任意の他の担体であることができる。
【0024】
得られたモリンガ種抽出物は、そのオイル(すなわちトリグリセリド、脂肪酸及び極性脂質)及びポリフェノールの含量によって特徴付けられる。
【0025】
本発明の別の目的は、老化防止の有効成分としてのモリンガ種のこのような抽出物の使用に関する。
【0026】
好ましくは、前記抽出物は、成熟した皮膚を有する人の皮膚老化のすべての徴候に対処することを目的としている。本発明の文脈では、「成熟した皮膚」とは、一般的には55歳を超えている、好ましくは60歳を超えている人々の皮膚と理解しなければならない。
【0027】
皮膚の老化の徴候は、皮膚のハリ及び/又は弾力及び/又は張性及び/又は柔軟性によって、また、シワや小ジワの形成によって、特に特徴付けられる。
【0028】
したがって、本発明の目的は、保護、水分補給及び栄養補給を同時に表皮/成熟した皮膚にもたらすことが可能な新たな有効成分を提供することにあり、またその結果として、滑らかさ、たるみ防止、再構成効果を皮膚に付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
異なるタイプの試験により、本出願人は、本発明によるモリンガ種抽出物の老化防止の総合的な活性を評価した。
【0030】
この新規な抽出物は、以下の様々な望ましい活性、すなわち、
−内因性及び外因性の老化と関連がある酸化プロセスを制限する抗酸化、抗ラジカル作用、
−歳と共に変化する皮膚のバリヤ機能(表皮のタンパク質構造及び脂質構造)の回復に及ぼす作用(前記抽出物を使用すると、皮膚の乾燥を抑えることができるので、皮膚が保護される)、
−成熟した皮膚の機械的性質(ハリ、弾力、張性)を高める細胞外マトリックスに及ぼす作用。
を同時にもたらすことが分かった。
【0031】
本発明による抽出物は、皮膚の水分補給、滑らかさ、たるみ防止及び再構成を促進する。このように、本発明による抽出物は、皮膚の色調を美しくし、均一化することができる。
【0032】
本発明の別の目的は、例えば、皮膚のバリヤ機能を強化し、且つ回復するように規定された抽出物の使用に関する。
【0033】
本発明の文脈において、「皮膚のバリヤ機能を強化する」とは、皮膚のバリヤ機能を向上させることを意味している。
【0034】
皮膚の基本的な機能の一つは、一方では周囲の菌類、細菌及びアレルゲンによる表皮の侵入に対して(外から内《outside−in》)、そして、もう一方の方向では水分の喪失に対して(内から外《inside−out》)、人体と外部環境との間にバリヤを確保することである。
【0035】
表皮は、恒常的に再生する、外胚葉由来の重層上皮である。異なる形態学的性質と細胞構成のいくつかの層を、基底層、ケラチノサイトが表皮の自動再生を可能にする非常に高い増殖能力を有する細胞層、基底上層(顆粒層、有棘層)、そして最後に角質層(Stratum Corneum,SC)と、内から外へと識別する。これらの段階は、なお一層進んだレベルのケラチノサイト分化に対応している。基底層のケラチノサイトは、表皮の表面への移行プロセスを開始するやいなや、それらの増殖能力を失い、その間、ケラチノサイトは、プログラム化された細胞死のプロセスである角質化へと誘導する分化プログラムを発現する。皮膚バリヤ機能は、最初に、角層によって、すなわち以下に示した2つの区画で形成される強固で隙のない集合体によって実行される:
−脂質に富む角質細胞間接合質:シート状に組織され、且つ細胞に共有結合している脂質は、分子が角層を侵入するのを制限する;
−ケラチノサイト分化の最終段階に対応している、死んだ、且つオルガナイト(organites)(角質細胞)から取り除かれた、角化した細胞の層。
【0036】
細胞外の脂質接合質及び角層のすべての細胞要素の完全性、並びにケラチノサイトの増殖と分化との間のバランスは、機能的な表皮のバリヤ機能を維持するために重要である。
【0037】
慢性又は急性のバリヤ機能の混乱により、外部のストレスや乾燥に身体が影響され易くなる。
【0038】
皮膚のバリヤ機能が変性し、そして回復しなければならない時に、バリヤ機能の改善が特に決定的である。これは、一定の数の生理的状態において、時間(皮膚の老化)に応じて、又はホルモンの状況若しくはストレスと関連して起こる。ホメオスタシスの復帰を可能にするこの回復速度は、遅くなる。更に、皮膚バリヤ機能は、炎症性要素(皮膚の乾燥など)をしばしば伴う、個体群における最も一般的な皮膚の病理の大多数において変性する。
【0039】
晒され得る外部ストレス、とりわけ環境タイプの外部ストレス(紫外線、湿度レベル、外気温度、汚染、日焼け)に対して申し分の無い抵抗性を身体に付与するために、皮膚に元々備わっている機能を強化する場合には、バリヤ機能を高めることは有利でもあり得る。皮膚のバリヤ機能は、見舞われがちなストレスに対する先天的な防御メカニズムをすべてを含む。この機能を実行する重要な要素は、表皮の一番表面にある部分、角質層と呼ばれる角層の領域にある。
【0040】
このように規定された抽出物が、表皮の脂質構造及びタンパク質構造を修復する作用を有利に示すことが様々な試験により証明された。
【0041】
本発明による抽出物の使用は、皮膚バリヤ機能の強化及び回復にとって特に有効である。
【0042】
本発明の別の目的は、有効成分として、本発明によるモリンガ種の完全な種子の抽出物と、化粧品及び/又は皮膚科学的に許容可能な少なくとも1種の賦形剤とを含む、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物に関する。
【0043】
本発明による前記化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物は、前記組成物100g当たり0.1g〜5gの分量のモリンガ種の完全な種子の乾燥抽出物を含む。
【0044】
有利には、モリンガ種抽出物の前記分量は、化粧組成物及び/又は皮膚科学的組成物100g当たり0.25g〜1g含まれる。
【0045】
より詳細には、本発明は、老化防止の化粧品組成物に関する。好ましくは、前記化粧品組成物は、成熟した皮膚を有する人の皮膚老化のすべての徴候に対処することを目的としている。
【0046】
本発明による老化防止の化粧品組成物は、一つ又は複数の有効成分、例えば太陽光からの保護を目的とした有効成分及び/又は皮膚の色素脱失を目的とした有効成分を更に含むことができる。
【0047】
太陽光からの保護を目的とした有効成分は、その抗UVA作用と抗UVB作用で知られている化学合成分子、例えばオクトクリレン及び/又はジオクチルブタミドトリアゾン及び/又はビス−エチルヘキシルオキシフェニルメトキシフェニルトリアジンの中から更に選択される。
【0048】
皮膚の色素脱失を目的とした有効成分は、皮膚の色調を明るくするために、更に、ナイアシンアミド、ビタミンC及びその誘導体であることができる。
【0049】
老化防止の化粧品組成物を得ることを考慮して、化粧品に許容可能な賦形剤は、局所投与又は経口投与を可能にするように選択される。
【0050】
有利には、局所用の形態は、ミルク、クリーム、バルサム、オイル、ローション、ゲル、フォーミングゲル、ポマード、スプレーなどから成る群より選択される。
【0051】
有利には、経口用の形態は、錠剤、カプセル、トローチ、粉末、顆粒、溶液又は内用懸濁液から成る群より選択される。
【0052】
より詳細には、本発明は、皮膚のバリヤ機能を強化し、且つ回復させることを目的とする化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物にも関する。
【0053】
皮膚のバリヤ機能を強化し、且つ回復させる化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物を得ることを考慮した、化粧品及び/又は皮膚科学的に許容可能な賦形剤は、局所投与を可能にするように選択される。
【0054】
有利には、局所用の形態は、ミルク、クリーム、バルサム、オイル、ローション、ゲル、フォーミングゲル、ポマード、スプレーなどから成る群より選択される。
【0055】
本発明の別の目的は、本発明によるモリンガ種の完全な種子の抽出物の局所投与又は経口投与での使用を含むことを特徴とする、成熟した皮膚を有する人の、皮膚の老化のすべての徴候に対処する美容法に関する。
【0056】
以下の調製物及び組成物は、例証及び非限定的な例として与えられる。
【実施例】
【0057】
植物抽出物の調製に関する実施例
実施例1
乾燥され且つ粉砕された2.5kgのモリンガ・オレイフェラの完全な種子を、80℃での2回の向流抽出によって、17.5Lのエタノール90(エタノール/水の割合=9/1)で抽出する。媒質を50℃に冷却した後、抽出された溶液を、固体/液体分離によって回収する。サンプルを乾燥させると、243gの抽出物が得られる。この抽出物は、(i)10%のトリグリセリド及び脂肪酸及び(ii)10%の極性脂質を含む36%のオイル含量並びに0.02%の総ポリフェノール含量(100gの乾燥抽出物当たりのピロガロールのg数として表される)によって特徴付けられる。
【0058】
実施例2
乾燥され且つ粉砕された20gのモリンガ・オレイフェラの完全な種子を、100mlの75:25のエタノール/水混合物で1時間還流抽出する。抽出された溶液を、固体/液体分離によって回収し、そして50℃で回転乾燥機で乾燥させる。このようにして1.66gの抽出物が、茶色のペーストの形態で得られ、滴定すると、オイルは5%であり、ピロガロールとして表される総ポリフェノールは0.68%である。
【0059】
実施例3
乾燥され且つ粉砕された20gのモリンガ・ドロウハルディの完全な種子を、90:10の200mlのエタノール/水混合物で1時間還流抽出する。抽出された溶液を、固体/液体分離によって回収し、そして50℃で回転乾燥機で乾燥させる。このようにして1.29gの抽出物が、黄褐色のペーストの形態で得られ、滴定すると、オイルは35%であり(トリグリセリド、脂肪酸、及び極性脂質)、ピロガロールとして表される総ポリフェノールは1.3%である。
【0060】
化粧品組成物の実施例
実施例4:アイケア
化合物 量
モリンガ種種子の乾燥抽出物 0.5g
酢酸トコフェロール(アルファ) 0.5g
硫酸デキストラン 0.3g
ジオクチルブタミドトリアゾン 1〜10g
オクトクリレン 1〜10g
ビス−エチルヘキシルオキシフェニルメトキシフェニルトリアジン 1〜10g
ワックスグルコシド 202 1〜5g
ステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG−100 1〜5g
C12〜C15ベンゾエート 5g
ペンタノエート(ネオ)イソデシル 1〜8g
シロキサン(シトクロペンタ)デカメチル 1〜8g
グリセロール99.5% 1〜5g
ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー 1g
キサンタンガム TF 0.3g
カプリルグリコール 適量
ソルビン酸カリウム 適量
精製水 全体を100gにするのに充分な量
【0061】
実施例5:ブライトニング・リバイタライジング・クリーム
化合物 量
モリンガ種種子の乾燥抽出物 0.5g
酢酸トコフェロール(アルファ) 0.1g
ナイアシンアミド 2g
メトキシシンナメート(p)エチルヘキシル 1〜10g
オクトクリレン 1〜10g
ビス−エチルヘキシルオキシフェニルメトキシフェニルトリアジン 1〜10g
ベヘニン(トリ)/PEG−20 1〜8g
セチルアルコール>95% 1g
パルミチン酸グリコール 2g
シロキサン(シトクロペンタ)デカメチル 1〜5g
メチコーン(ジ)200FL 1〜5g
カプリル酸カプリン酸/トリグリセリド30 70 1〜5g
メチコーン(シクロ)Mel.9040 1〜5g
キサンタンガムTF 0.3g
ヒドキロシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー 0.7g
グリセロール 99.5% 1〜5g
カプリルグリコール 適量
ソルビン酸 適量
ブチルヒドロキシトルエン 0.01g
酸化チタン/AI/セリサイトMel 1〜5g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全体を100gにするのに充分な量
【0062】
抗酸化活性の評価
DPPH試験
本発明によるモリンガ・オレイフェラの種子抽出物の抗酸化活性を、DPPH試験によって評価した。この試験は、安定したラジカル2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(DPPH)の酸化防止剤を捕捉する能力を測定することに基づいている。517nmでの吸光を有するこの安定ラジカルは、水素供与体と反応すると、対応するヒドラジンへと還元される。
【0063】
結果:
得られた結果は、0.06mMのDPPHメタノール溶液の吸光度が50%減少する濃度に対応するIC50で表されている。
【表1】

【0064】
本発明による抽出物は、外皮に存在する分子によって主として提供される抗酸化活性を有する。
【0065】
化学発光法
化学発光法は、光化学的信号によってフリーラジカル(スーパーオキシドラジカルO°)を生成する方法である。酸化の強度は、通常状態下で得られる強度に比べて1000倍強い。その検出は、化学発光によって行われ、抗酸化の脂溶性又は水溶性の抽出物又は分子を評価できる。その結果は、ビタミンC又はトロロクス(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)の等量でそれぞれ表される。感受性は、ナノモルの桁である。
【数1】

【0066】
結果:
1μgのトロロクスに対して検出される活性と同等の活性、すなわち、抗酸化活性で知られている分子であるリコピンと同等の活性を得るためには、実施例1による抽出物は65μg必要である。
【0067】
この試験では、観察された抗酸化活性は、外皮の分子によって主としてもたらされたことも確認された。すなわち、1μgのトロロクス(ゲニステインと等価の活性)に対して、90%エタノールによる外皮抽出物の場合は、必要な量はわずか4.7μgだけである。これは、モリンガ種の完全な種子を本発明に従って使用することの重要性を立証している。
【0068】
外部ストレス(寒さ、汚染、タバコ、UV)に起因して生成量が増加するフリーラジカルは、皮膚細胞のDNAの変性のみならず、細胞膜及びミトコンドリアの変性の原因でもある。実施例1に従って調製された抽出物の抗ラジカル活性により、内因性及び外因性の皮膚の老化に対処することができる。
【0069】
バリヤ機能の回復に関する活性の評価
表皮は、化学的及び機械的バリヤを身体に付与することにより、主要な保護的役割を果たす。表皮は、シーリング、すなわち皮膚バリヤ機能が維持されることを保証する。脂質マトリックスと関連のある角層の角質細胞、ケラチノサイトは、この機能の大部分を保証する。しかしながら、より深い層が、この機能の作用主体を適所に設定する際に協働する。表皮のケラチノサイトの分化能力は、機能的な選択透過性タイプのバリヤを適所に設定することを保証する(Elias PM. J Invest Dermatol 125 183−200(2005))。
【0070】
タンパク質の観点からは、表皮の分化は、ケラチンであって且つ表皮の構造的完全性に寄与する構造タンパク質の漸進的変化に多く依拠する。構造タンパク質の発現は、ケラチノサイトの成熟程度に応じて変化する。塩基性ケラチン1及び酸性ケラチン10は、表皮の基底層から存在する、ケラチノサイト分化の初期のマーカーである。この生物学的プロセスの他のマーカー(後期のマーカー)の発現、例えば、インボルクリンのような角質肥厚膜のタンパク質の発現、ならびに、構造タンパク質同士及び構造タンパク質とケラチノサイト脂質とを架橋する開始点における特定の主要な酵素、すなわちトランスグルタミナーゼ1(TG1)のようなトランスグルタミナーゼの発現が続いて起こり得る(Houben E.ら、Skin Pharmacol Physiol.; 20(3):122−32(2007))。
【0071】
同時に、ケラチノサイト脂質の合成及び輸送は、皮膚バリヤにとって不可欠な角質細胞間接合脂質の開始点であり、そして前記角質細胞間接合脂質の形成は、最終表皮分化の最後の段階を意味している。この細胞外の脂質マトリックスは、水及び電解質の経皮移動に対して主要なバリヤを提供する(Mizutani Y.ら、FEBS Lett.563: 93(2004))。こうして、特定数の酵素及び脂質輸送体は、分化によってケラチノサイト発現が増大される。特に、ABC輸送体(アデノシントリホスフェート結合カセット輸送体)ファミリーの特定のメンバーは、脂質バリヤを適所に設定する工程において主要な役割を果たす。したがって、特にグリセロールを輸送するABC G1と、ラメラ体における脂質前駆体の輸送にとって不可欠なABC A12は、高感度のマーカーである。表皮のセラミドは、主要な特定の役割を果たし、皮膚バリヤの機能性レベルに関する必須のマーカーである。したがって、皮膚セラミドの合成において協働する酵素は、表皮バリヤ機能の破壊の際に、及び表皮分化レベルに従って、酵素発現及び酵素活性が特に増大する。これは、特に、そのジヒドロセラミド水酸化酵素活性がヒトにおける皮膚フィトセラミドの合成に寄与する、スフィンゴ脂質C4―水酸化酵素/デルタ−4不飽和化酵素又はhDES2の場合である(Feingold,K.R.J Lipid Res 48:2531−2546(2007))。
【0072】
最初に、本発明による抽出物の効果を、分化した通常のヒトケラチノサイト(NHK)モデルで研究した。
【0073】
続いて、この効果を、ケラチノサイト老化モデルで研究した。
【0074】
通常のヒトケラチノサイトの分化モデル
表皮脂質、ABC G1、及びhDES2の合成又は輸送に関係する、異なるタンパク質の遺伝子発現に関するモリンガ種の抽出物の効果を分析した。
【0075】
結果:
結果は、未処置細胞と比較した、NHKによって発現される表皮分化の異なるマーカーの遺伝子発現(mRNA)の刺激の%で表している。
有意な正の効果は、100%の刺激に基づいて考慮される。得られた結果を下表に示す。
【表2】

【0076】
実施例1に従って調製された20μg/mlの抽出物では、hDES2及びABC G1の遺伝子発現が誘発される。実施例1に従って調製された抽出物は、成熟した皮膚で特に認められる皮膚の乾燥を制限することを可能にする疎水バリヤを適所に設定する開始点において、脂質表皮分化を回復させることができる。
【0077】
ケラチノサイト老化のモデル
皮膚バリヤの再生能力は、成熟被験者では低下しており(Tagami,Arch.Derm.Res.2007)、我々は、Hで処理されたヒトケラチノサイトHaCaTの系統からケラチノサイト老化プロセスを模倣しているモデルを使用した。我々は、K1及びインボルクリンのような、細胞の老化によって発現が阻害されたタンパク質分化のマーカーの発現(mRNA)の回復に関するモリンガ種抽出物の効果を分析した。
【0078】
結果:
実施例1による、1及び10μg/mlの抽出物は、K1(それぞれ11%及び35%)及びインボルクリン(10μg/mlの場合15%)の発現を回復できる。
【0079】
結論
2つのモデルから得られた結果は、本発明による抽出物の(脂質構造の回復と表皮のタンパク質構造の回復との両方に関する)作用の相補性をよく示している。
【0080】
細胞外マトリックスの活性の評価
細胞外マトリックス(ECM)は、組織のために構造的及び調整的役割を有する動的構造体である。細胞外マトリックスは、皮膚に、膨張状態及び力学的性質、すなわち、ハリ、弾力、及び張性を付与する。表皮の領域では、細胞外マトリックスは、細胞間隙を占有し、表皮構造を維持する役割を果たす。また、細胞外マトリックスは、表皮の細胞間のやりとりを保証し、細胞活性で役割を果たす。表皮のECMは、特に、IV型コラーゲン(繊維状タンパク質)から構成される。細胞が老化すると、ECMの成分は、マトリックスメタロプロテイナーゼ又はMMPと呼ばれる亜鉛エンドペプチダーゼ型酵素によって主に分解される。この酵素は活発に瘢痕形成プロセスに関与するが、またそれらは、皮膚のたるみの原因であり、皮膚老化の第一徴候であるしわの出現の原因でもある。それらの中で、MMP−9は、変性したコラーゲン分子(ゼラチン)に対して活性を有するが、IV、V及びVII型のコラーゲンの天然分子を切断することもできるゼラチナーゼである。
【0081】
MMP−9のmRNAの発現に関するモリンガ種抽出物の効果を、細胞老化のプロセスを模倣しているHで処理されたヒトケラチノサイトHaCaTの系統に関して分析した。
【0082】
結果:
実施例1に従って調製された抽出物は、三つの濃度で、詳しくは1、10、及び30μg/mlで、MMP−9の遺伝子発現を有意に阻害する。
【0083】
実施例1に従って調製された抽出物は、ECMの力学的性質、すなわち、皮膚のECMのハリ、弾力及び張性を回復させることができ、また、表皮のタンパク質構造を回復させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】米国特許第6500470号明細書
【特許文献2】欧州特許第1064008号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0222682号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−(i)2%〜10%のトリグリセリド及び脂肪酸と、(ii)5%〜15%の極性脂質を含む、5%〜50%のオイル含量、
−0.01%〜5%の総ポリフェノール含量(100gの乾燥抽出物当たりのピロガロールのg数として表される)
を有する(乾燥抽出物の重量と比較した重量%で)、モリンガ種の完全な種子の抽出物。
【請求項2】
適度に極性の溶媒から得られる抽出物であることを特徴とする、請求項1記載の抽出物。
【請求項3】
より詳細には、モリンガ・オレイフェラ又はモリンガ・ドロウハルディの抽出であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモリンガ種の完全な種子の抽出物。
【請求項4】
老化防止の有効成分としての、請求項1〜3のいずれか一つに記載のモリンガ種の完全な種子の抽出物の使用。
【請求項5】
前記有効成分が、成熟した皮膚を有する人の皮膚の老化のすべての徴候に対処することを目的としていることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
皮膚のバリヤ機能を強化し、且つ回復させる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の、モリンガ種の完全な種子の抽出物の使用。
【請求項7】
有効成分として、請求項1〜3のいずれか一つに記載のモリンガ種の完全な種子の抽出物と、少なくとも一つの化粧品及び/又は皮膚科学的に許容可能な賦形剤とを含む、化粧品組成物及び/又は皮膚科学的組成物。
【請求項8】
前記組成物100g当たり0.1g〜5gに含む分量でモリンガ種の完全な種子の乾燥抽出物を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
太陽光からの保護及び皮膚の色素脱失を目的とした一つ又は複数の有効成分を更に含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一つに規定されている、モリンガ種の完全な種子の抽出物の局所投与又は経口投与での使用を含むことを特徴とする、成熟した皮膚を有する人の、皮膚の老化のすべての徴候に対処する美容法。
【請求項11】
以下の工程、すなわち、
−完全な種子の粉砕、
−適度に極性の溶媒による少なくとも1回の抽出、
−遠心分離又は濾過、
−そして、乾燥
によって特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか一つに記載のモリンガ種の完全な種子の抽出物を調製する方法。
【請求項12】
適度に極性の溶媒が、C1〜C4アルコール、アセトン、水/アルコール混合物及びアセトン/水混合物から成る群から選択され、単独で又は組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
適度に極性の溶媒がエタノール/水混合物であり、好ましくはエタノール/水の割合が9/1〜7/3(v/v)に含まれることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−530769(P2012−530769A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516818(P2012−516818)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051207
【国際公開番号】WO2010/149895
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506260401)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【Fターム(参考)】