説明

モータ制御装置

【課題】 DCモータをスイッチング駆動する場合におけるスイッチング損失を低減すると共に、簡単な構成の制御駆動系でDCモータをスイッチング駆動する。
【解決手段】 直流電源から供給された直流電圧を所定のゲートパルスに基づいてスイッチングすることによりモータ駆動パルスを生成するスイッチング駆動手段と、モータ駆動パルスに基づくDCモータの回転状態を検出する状態検出センサと、モータ駆動パルスがDCモータの半回転毎に1パルス生成され、かつ、DCモータの回転状態に応じてモータ駆動パルスのパルス幅を可変設定するように、状態検出センサの検出結果に基づいてゲートパルスを生成するフィードバック制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DCモータの駆動方法として、PWM(Pulse Wide Modulation)駆動あるいはPAM(Pulse Amplitude Modulation)駆動等のスイッチング駆動方法が広く知られている。このようなスイッチング駆動方法は、従来のリニア駆動方法に比較して効率の高い駆動方法として各分野で利用されている。
一方、例えば特開平5−336781号公報には、バッテリを直流電源としてDCモータをPWM駆動する場合の技術として、バッテリ電圧を検出し、この検出されたバッテリ電圧に応じてスピンドルモータのフィードバック制御系におけるループゲインを変化させることにより、バッテリ電圧の変動(電源電圧変動)に拘わりなくスピンドルモータの回転数を適正に制御する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−336781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、PWM駆動は、高周波パルス電圧の組み合わせにより正弦波あるいは方形波の駆動電流を生成するので、スイッチング損失が増大するという問題がある。また、PAM駆動の場合には、直流電源の電圧を可変設定するためにチョッパ回路が必要であり、制御駆動系の構成が複雑になるという問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とするものである。
(1)DCモータをスイッチング駆動する場合におけるスイッチング損失を低減する。
(2)簡単な構成の制御駆動系でDCモータをスイッチング駆動する。
(3)直流電源の電圧変動に対してDCモータの回転を適正に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、直流電源から供給された直流電圧を所定のゲートパルスに基づいてスイッチングすることによりモータ駆動パルスを生成するスイッチング駆動手段と、モータ駆動パルスに基づくDCモータの回転状態を検出する状態検出センサと、モータ駆動パルスがDCモータの半回転毎に1パルス生成され、かつ、DCモータの回転状態に応じてモータ駆動パルスのパルス幅を可変設定するように、状態検出センサの検出結果に基づいて上記ゲートパルスを生成するフィードバック制御手段とを具備する、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、DCモータの回転周期の半周期毎に1パルス生成されるモータ駆動パルスのパルス幅を調節することによってDCモータが駆動されるので、従来のPWM駆動と比較してスイッチング損失を大幅に低減することが可能であり、またPAM駆動よりも制御駆動系の構成を大幅に簡単化することができる。
また、直流電源の直流電圧をも加味してモータ駆動パルスのパルス幅を調節することにより、直流電源の電圧変動に対してDCモータの回転を適正に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置のブロック図である。この図において、符号Xは3相ブラシレスモータ(DCモータ)、1はバッテリ、2は半導体スイッチモジュール、3は電圧センサ、4は電流センサ、5は速度センサ、6はフィードバック制御装置である。
【0008】
3相ブラシレスモータXは、半導体スイッチモジュール2から印加されたモータ駆動パルスPkによって3相(U相、V相及びW相)駆動されるDCモータである。バッテリ1は、周知のように直流電源であり、直流電圧を半導体スイッチモジュール2に供給する。半導体スイッチンジュール2は、フィードバック制御装置3から供給されたゲートパルスPg(スイッチングパルス)によってON/OFF動作すると共にU相、V相及びW相に各々対応する複数のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を備え、バッテリ1から供給された直流電圧を上記各IGBTでスイッチングすることによりU相、V相及びW相に各々対応するモータ駆動パルスPkを生成して上記3相ブラシレスモータXに供給する。
【0009】
電圧センサ3は、上記バッテリ1の出力端子間に介挿されており、バッテリ1の直流電圧を検出し電源電圧Vdcとしてフィードバック制御装置6に出力する。電流センサ4は、上記モータ駆動パルスPkによって3相ブラシレスモータXに通電される駆動電流を検出しモータ電流Iとしてフィードバック制御装置6に出力する。速度センサ5は、3相ブラシレスモータXの回転速度を検出しモータ速度ωとしてフィードバック制御装置6に出力する。
【0010】
フィードバック制御装置6は、上記電源電圧Vdc、モータ電流I及びモータ速度ωに基づいて半導体スイッチモジュール2を制御するためのゲートパルスPgを生成する。すなわち、フィードバック制御装置6は、モータ駆動パルスPkが3相ブラシレスモータXの回転周期の半周期毎に1パルス生成され、かつ、電源電圧Vdc並びに3相ブラシレスモータXの回転状態に応じてモータ駆動パルスPkのパルス幅を可変設定するようにゲートパルスPgを生成する。
【0011】
図2は、フィードバック制御装置6の制御機能を示すブロック図である。フィードバック制御装置6は、この図2に示すように減算器3a,3c、アンプ3b,3d、乗算器3e、三角波発生器3f及びコンパレータ3gから構成されている。減算器3aは、外部から設定された3相ブラシレスモータXの目標速度ωrefからモータ速度ωを減算することにより速度誤差Δωを生成してアンプ3bに出力する。アンプ3bは、上記速度誤差Δωを所定の制御ゲイン(ゲイン1)で増幅することにより目標電流Irefを生成して減算器3cに出力する。
【0012】
減算器3cは、上記目標電流Irefからモータ電流Iを減算することにより誤差電流ΔIを生成してアンプ3dに出力する。アンプ3dは、誤差電流ΔIを所定の制御ゲイン(ゲイン2)で増幅することにより目標電圧Vrefを生成して乗算器3eに出力する。乗算器3eは、上記目標電圧Vrefと電源電圧Vdcとを乗算することにより制御電圧Vsを生成してコンパレータ3gに出力する。三角波発生器3fは、モータ速度ω、より正確には当該モータ速度ωによって示される3相ブラシレスモータXの回転周期と同一周期の三角波信号を生成してコンパレータ3gに出力する。コンパレータ3gは、上記三角波信号と制御電圧Vsとを比較することによりゲートパルスPgを生成する。
【0013】
次に、このように構成された本モータ制御装置の動作について、図3をも参照して詳しく説明する。
【0014】
上記モータ制御装置では、例えばバッテリ1の直流電圧つまり電源電圧Vdcの変動に応じてゲートパルスPgのパルス幅が可変設定され、これに連動してモータ駆動パルスPkのパルス幅も可変される。図3の最上段の波形図は、上記三角波信号と制御電圧Vsとの関係を示している。
【0015】
すなわち、制御電圧Vsが実線で示す値にあるとき、ゲートパルスPgのパルス幅は、上から2段目の波形図に示すように実線で示す幅となる。これに対して、制御電圧Vsが一点鎖線で示すように実線よりも大きな値にあると、ゲートパルスPgのパルス幅は、一点鎖線で示すように実線よりも狭い幅となる。
【0016】
そして、半導体スイッチモジュール2において上記ゲートパルスPgに基づいてバッテリ1の直流電圧をスイッチングして生成されるモータ駆動パルスPkは、制御電圧Vsが実線で示す値にあるときは、上から3段目の波形図に示すようなパルス幅となり、またその電圧はバッテリ1の直流電圧に対応した値となる。一方、制御電圧Vsが一点鎖線で示す値にあるときには、モータ駆動パルスPkは、上から4段目(下から2段目)の波形図に示すように制御電圧Vsが実線で示す値にあるときよりも狭くなると共に、その電圧はバッテリ1の直流電圧に対応して大きな値となる。
【0017】
つまり、本モータ制御装置では、3相ブラシレスモータXの半回転(0°〜180°)毎に1パルス生成されるモータ駆動パルスPkのパルス幅を、バッテリ1の直流電圧つまり電源電圧Vdcが高くなると狭くなり、バッテリ1の直流電圧つまり電源電圧Vdcが低くなると広くなるように制御することによって3相ブラシレスモータXのモータ電流Iを制御し、以って3相ブラシレスモータXのモータ速度ωが目標速度ωrefに追従するように駆動する。
【0018】
このような本モータ制御装置によれば、以下のような効果を奏する。
(1)3相ブラシレスモータXの半回転(0°〜180°)毎に1パルス生成されるモータ駆動パルスPkによって3相ブラシレスモータXを駆動するので、PWM駆動よりもスイッチング周波数が大幅に低く、よってスイッチング損失を大幅に低減することができる。
(2)PAM駆動で必要となるチョッパ回路が不要なので、駆動装置の構成を簡単化することが可能である。
(3)さらに、バッテリ1の直流電圧つまり電源電圧Vdcが高くなると狭くなり、バッテリ1の直流電圧つまり電源電圧Vdcが低くなると広くなるように制御するので、バッテリ1の電圧変動に依らず3相ブラシレスモータXの回転を適正に制御することができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では3相ブラシレスモータXの駆動について説明したが、本発明は、3相ブラシレスモータXの駆動に限定されることなく、他の各種DCモータに適用可能である。
【0020】
(2)上記実施形態ではフィードバック制御装置6の制御機能を図2に示すように構成したが、フィードバック制御装置6の制御機能はこれに限定されるものではない。すなわち、電源電圧Vdc、モータ電流I及びモータ速度ωに基づいてゲートパルスPgを生成する制御機能の構成については他の構成方法も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係わるモータ制御装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるフィードバック制御装置6の制御機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係わるモータ制御装置の動作を示す波形図である。
【符号の説明】
【0022】
X…3相ブラシレスモータ(DCモータ)、1…バッテリ、2…半導体スイッチモジュール、3…電圧センサ、4…電流センサ、5…速度センサ、6…フィードバック制御装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給された直流電圧を所定のスイッチングパルスに基づいてスイッチングすることによりモータ駆動パルスを生成するスイッチング駆動手段と、
前記モータ駆動パルスに基づくDCモータの回転状態を検出する状態検出センサと、
前記モータ駆動パルスがDCモータの半回転毎に1パルス生成され、かつ、前記DCモータの回転状態に応じて前記モータ駆動パルスのパルス幅を可変設定するように、前記状態検出センサの検出結果に基づいて前記スイッチングパルスを生成するフィードバック制御手段と
を具備することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
直流電圧を検出する電圧センサをさらに備え、
フィードバック制御手段は、状態検出センサの検出結果に加えて前記電圧センサの検出結果にも基づいてモータ駆動パルスのパルス幅を可変設定するようにスイッチングパルスを生成する
ことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
状態検出センサは、DCモータの回転速度を検出する速度検出センサと、DCモータに給電される電流を検出する電流センサとである
ことを特徴とする請求項1または2記載のモータ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−67686(P2006−67686A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246560(P2004−246560)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】