説明

モータ及び液体ポンプ

【課題】モータにおいて、鉄損の低減、発熱の抑制等を図る。
【解決手段】励磁用のコイル60、コイルを保持するホルダ50,30、所定軸線L回りに回転自在に支持されたロータ40を備え、ロータ40は、所定の極配置に着磁された内側ロータ41、内側ロータの外側に配置されて内側ロータと同軸上で一体的に回転すると共に所定の極配置に着磁された円筒状の外側ロータ42を含み、励磁用のコイル60は、内側ロータと外側ロータの間において周方向に複数に分割して配列された複数のコイル60を含む。これによれば、全体としての磁路の長さを短くすることができ、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率の高い高性能のモータを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子として励磁用のコイル又はコイルを巻回するコア(鉄芯)等のホルダ、可動子として所定軸回りに回転するマグネットロータを含むモータ及びこのモータを駆動源とする液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータとしては、略円筒状のステータコア、ステータコアに対して周方向に複数の巻線を配列するように巻回された励磁用のコイル、ステータコアの内側に配置されて所定軸回りに回転する円柱状のロータを備えたインナーロータ型のモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このモータにおいて、ステータコアは、略T字状の断面をなすセグメントが連続的に繋がった状態となるように磁性鋼板を打ち抜いてコア素材を形成し、このコア素材を複数積層した状態で、セグメント毎に巻線を設けかつセグメント同士の間に渡り線を設けて接続するようにコイルをステータコアに巻回し、コイルを巻回したステータコアを環状に折り曲げて円筒状のステータコアを形成している。
【0003】
しかしながら、このモータにおいては、ステータコアを形成する複数のセグメント同士が周方向において連結され、又、セグメント毎に巻回された巻線同士が渡り線を介して相互に連結されているため、磁路(磁力線を通す磁気回路)が長くなり、鉄損が増大し、磁気効率の低下、発熱の増大等を招く傾向にある。
【0004】
また、従来の他のモータとしては、内側に複数の第1励磁極及び外側に複数の第2励磁極を画定するように形成された略円筒状のステータコア、ステータコアのそれぞれの第1励磁極に対して巻線を設けるように巻回された第1励磁コイル、ステータコアのそれぞれの第2励磁極に対して巻線を設けるように巻回された第2励磁コイル、ステータコアの内側に配置された第1ロータ、ステータコアの外側に配置されかつ第1ロータと一体的に回転するように連結された第2ロータを備えた二重ロータ型のモータが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このモータにおいては、ステータコアが円筒状に形成されているため、前述のモータと同様に、磁路が長くなり、鉄損が増大し、磁気効率の低下、発熱の増大等を招く傾向にある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−160170号公報
【特許文献2】特開平7−163105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の装置の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を図りつつ、コイルの高密度巻線を可能にして、組立工数を簡素化でき、磁路を短縮でき、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率を高めて、高性能で高効率のモータ及びこのモータを用いた液体ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータは、励磁用のコイルと、コイルを保持するホルダと、所定軸線回りに回転自在に支持されたロータを備えたモータであって、上記ロータは、所定の極配置に着磁された内側ロータと、内側ロータの外側に配置されて内側ロータと同軸上で一体的に回転すると共に所定の極配置に着磁された円筒状の外側ロータを含み、上記励磁用のコイルは、内側ロータと外側ロータの間において周方向に複数に分割して配列された複数のコイルを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、コイルが配置された領域を通過して、内側ロータから外側ロータに又は外側ロータから内側ロータに向う磁路が短く形成されるため、全体としての磁路の長さを短くすることができる。これにより、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率の高い高性能のモータを得ることができる。
【0008】
上記構成のモータにおいて、ホルダは、複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、各々のコイルが周方向に分割して配列されたステータコアにそれぞれ巻回されているため、内側ロータ〜ステータコア〜外側ロータの間において磁路が形成され、全体としての磁路を短くすることができる。これにより、従来のように全体が連結された円筒状のステータコアを用いる場合に比べて、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気漏れをさらに抑制して磁気効率をより高くすることができ、高性能のモータを得ることができる。
【0009】
上記構成のモータにおいて、複数のコイルは、それぞれ、絶縁性の部材を介して電気的に絶縁されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイル相互間における磁力線の影響を防止でき、高性能で高効率のモータを得ることができる。
【0010】
上記構成のモータにおいて、内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、組み付ける際に、内側ロータと外側ロータの位置合わせが不要になり、組付け工数の簡素化、低コスト化、組付けの高精度化等を達成することができる。
【0011】
上記構成のモータにおいて、内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結され、内側ロータは、円筒状に形成され、内側ロータには、所定の回転軸が一体的に回転するように嵌合されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、内側ロータの貫通孔に回転軸を嵌合して固着することで、回転軸と内側ロータ(及び外側ロータ)を容易に組み付けることができる。
【0012】
上記構成のモータにおいて、ホルダは、複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアと、複数のステータコアを収容して内側ロータ及び外側ロータから遮断する遮断壁をもつホルダハウジングを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイルが巻回された複数のステータコアは、ホルダハウジングに収容されて保持され、遮断壁を介して、内側ロータ及び外側ロータから遮断されるため、内側ロータ及び外側ロータが液体に曝される構成を採用することもでき、種々の形態に適用することができる。
【0013】
上記構成のモータにおいて、複数のコイルは、空中配線にて又は基板上の配線を介して、同相励磁されるもの同士が電気的に接続されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、同相にて駆動されるコイル同士を空中配線又は基板上にて接続することにより、配線及びコネクタの端子を簡素化することができる。
【0014】
本発明の液体ポンプは、吸引口及び吐出口を画定するポンプハウジングと、ポンプハウジング内に配置されたインペラと、励磁用のコイル,コイルを保持するホルダ,及びインペラに連結されたロータを含みインペラに回転駆動力を及ぼすモータと、を備えた液体ポンプであって、上記ロータは、所定の極配置に着磁された内側ロータと、内側ロータの外側に配置されて内側ロータと同軸上で一体的に回転すると共に所定の極配置に着磁された円筒状の外側ロータを含み、上記励磁用のコイルは、内側ロータと外側ロータの間において周方向に複数に分割して配列された複数のコイルを含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、励磁用のコイルが適宜通電されてロータが回転すると、ロータと一体的にインペラが回転して、吸引口から液体が吸引され吐出口から吐出される。
ここで、コイルが配置された領域を通過して内側ロータから外側ロータに又は外側ロータから内側ロータに向う短い磁路が形成されるため、全体としての磁路の長さを短くすることができる。これにより、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率の高い高性能のモータを得ることができ、このモータを用いることでポンプ性能の高い液体ポンプを得ることができる。
【0015】
上記構成の液体ポンプにおいて、ホルダは、複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、各々のコイルが周方向に分割して配列されたステータコアにそれぞれ巻回されているため、内側ロータ〜ステータコア〜外側ロータの間において磁路が形成され、全体としての磁路を短くすることができる。これにより、従来のように全体が連結された円筒状のステータコアを用いる場合に比べて、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気漏れをさらに抑制して磁気効率をより高くすることができ、高性能のモータを得ることができ、このモータを用いることでポンプ性能の高い液体ポンプを得ることができる。
【0016】
上記構成の液体ポンプにおいて、複数のコイルは、それぞれ、絶縁性の部材を介して電気的に絶縁されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイル相互間における磁力線の影響を防止でき、高性能で高効率のモータを得ることができ、このモータを用いることでポンプ性能の高い液体ポンプを得ることができる。
【0017】
上記構成の液体ポンプにおいて、内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、組み付ける際に、内側ロータと外側ロータの位置合わせが不要になり、組付け工数の簡素化、低コスト化、組付けの高精度化等を達成することができ、全体として、低コストで組付け精度の高い液体ポンプを得ることができる。
【0018】
上記構成の液体ポンプにおいて、内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結され、内側ロータは、円筒状に形成され、内側ロータには、インペラに形成された回転軸が一体的に回転するように嵌合されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、内側ロータの貫通孔に回転軸を嵌合して固着することで、インペラと内側ロータ(及び外側ロータ)を容易に組み付けることができる。
【0019】
上記構成の液体ポンプにおいて、ホルダは、複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアと、複数のステータコアを収容して内側ロータ及び外側ロータから遮断する遮断壁をもつホルダハウジングを含み、ホルダハウジングは、ポンプハウジングに連結されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイルが巻回された複数のステータコアは、ホルダハウジングに収容されて保持され、遮断壁を介して内側ロータ及び外側ロータから遮断されるため、内側ロータ及び外側ロータをポンプハウジング内に導かれた液体に曝して、液体による冷却作用(例えば、液体が水の場合に水冷作用)を得ることができ、発熱を効率よく抑制することができる。
【0020】
上記構成の液体ポンプにおいて、複数のコイルは、空中配線にて又は基板上の配線を介して、同相励磁されるもの同士が電気的に接続されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、同相にて駆動されるコイル同士を空中配線又は基板上にて接続することにより、配線及びコネクタの端子を簡素化することができ、液体ポンプの小型化、簡素化を達成することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記構成をなすモータ及び液体ポンプによれば、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成しつつ、コイルの高密度巻線を可能にして、組立工数を簡素化でき、磁路を短縮でき、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率を高めて、高性能で高効率のモータ及び液体ポンプを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図10は、本発明に係るモータを備えた液体ポンプ(ここでは、ウォータポンプ)の一実施形態を示すものであり、図1は液体ポンプの外観図、図2は液体ポンプの縦断面図、図3は液体ポンプの横断面図、図4ないし図6は液体ポンプの内部を示す分解斜視図、図7及び図8はモータのホルダハウジングを示す斜視図、図9はモータの一部をなす内側ロータ及び外側ロータを示す斜視図、図10はモータのロータにおける磁束の流れを示す模式図である。
【0023】
この液体ポンプは、図2ないし図6に示すように、吸引口11a及び吐出口12aを画定するポンプハウジング10、ポンプハウジング10内に配置されたインペラ20、ホルダハウジング30、ポンプハウジング10とホルダハウジング30により画定される空間に配置されると共に内側ロータ41及び外側ロータ42を有し所定軸線L回りに回転する二重円筒状のロータ40、ホルダハウジング30内に収容(保持)された6個のステータコア50、各々のステータコア50に巻回された6個の励磁用のコイル60、ホルダハウジング30内に嵌め込まれて固定される基板としてのホルダプレート70、ホルダハウジング30を覆うように連結されるカバー80等を備えている。
【0024】
そして、二重円筒状のロータ40、ステータコア50に巻回されたコイル60等により、インペラ20に回転駆動力を及ぼすモータが構成されている。ここで、ホルダハウジング30、ステータコア40、及びホルダプレート70は、コイル60を保持するホルダとして機能するものである。
【0025】
ポンプハウジング10は、図1、図2、図4に示すように、液体(ここでは水)を吸引する吸引口11aを画定する吸引パイプ11、液体(水)を吐出する吐出口12aを画定する吐出パイプ12、インペラ20を回転自在に収容する収容室13、インペラ20の回動自在に支持する支軸14、ホルダハウジング30を嵌合させて連結する円筒状の嵌合部15、嵌合部15の周りに形成されたネジ孔16等を備えている。
【0026】
インペラ20は、その回転により、液体(水)を吸引して吐出する作用をなすものであり、図1及び図5に示すように、羽根21、回転軸22、回転軸22の先端に形成された4つの掛止爪23、回転軸22の先端に形成された軸受穴24等を備えている。
回転軸22は、円柱状に形成されて、後述する内側ロータ41の貫通孔41aに密接して嵌合されるようになっている。
掛止爪23は、後述する内側ロータ41の掛止凹部41bに掛止されて、回転軸22(すなわちインペラ20)と内側ロータ41を一体的に回転させるものである。
軸受穴24は、回転軸22の先端を回動自在に支持するべく、後述するホルダハウジング30の支軸36を受け入れるようになっている。
【0027】
ホルダハウジング30は、図1、図2、図4、図7、図8に示すように、電気的な絶縁性をもつ樹脂材料を用いて成形されており、ポンプハウジング10に連結される円筒状の外壁部31、外壁部31の周りに形成されたネジ孔32、外壁部31の周りに形成されて後述するカバー80の掛止片83を掛止する複数(ここでは4つ)の掛止凹部33、ロータ40とコイル60を巻回したステータコア50を分離して遮断する遮断壁34、遮断壁34の内側において周方向に6等分された収容室34aを画定する6つの分離壁35、インペラ20の回転軸22の先端に形成された軸受穴24に嵌合される支軸36、支軸36の反対側に形成されたネジ穴37、後述するホルダプレート70の外縁部71を当接させて位置決めする環状段差部38、カバー80を嵌合して連結する円筒端部39等を備えている。
【0028】
遮断壁34は、収容室34aに収容された(コイル60を巻回した)ステータコア50を、内側ロータ41及び外側ロータ42から遮断するように、すなわち、内側ロータ41と外側ロータ42の間に非接触にて入り込むように環状でかつ凸状をなすように形成されている。
このように、コイル60が巻回された6つステータコア50は、ホルダハウジング30に収容されて保持され、遮断壁34を介して、ロータ40(内側ロータ41及び外側ロータ42)から遮断されるため、ロータ40(内側ロータ41及び外側ロータ42)が液体(水)に曝される状態であっても、コイル60及びステータコア50を液体(水)から遮断して、液体(水)に浸るのを防止することができる。
6つの収容室34aには、それぞれ、図7に示すように、ステータコア50を固定する固定部34bが設けられている。尚、固定部34bとしては、ステータコア50の一部を嵌合する嵌合穴又は嵌合突起等が適用される。
分離壁35は、ホルダハウジング30を形成する樹脂材料すなわち絶縁性の部材により形成されて、図3に示すように、それぞれの収容室34aに収容されてステータコア50により保持されたコイル60を、電気的に絶縁するようになっている。
このように、分離壁35を設けることで、コイル60相互間における磁力線の影響を防止でき、高性能で高効率のモータを得ることができる。
【0029】
ロータ40は、図2ないし図5、図9に示すように、円筒状の内側ロータ41、内側ロータ41の径方向外側に所定間隔をおいて同軸上に形成された円筒状の外側ロータ42、内側ロータ41と外側ロータ42のそれぞれの端部同士を連結する連結部43を備えている。
内側ロータ41は、図3及び図9に示すように、周方向に4等分してN極とS極に交互に着磁され、中心軸線Lを通る貫通孔41a、その先端部において4つの掛止凹部41bを備えるように形成されている。
外側ロータ42は、図3及び図9に示すように、周方向に4等分してS極とN極に交互に着磁されている。ここで、外側ロータ42のN極は、径方向において内側ロータ41のS極と対向し、外側ロータ42のS極は、径方向において内側ロータ41のN極と対向するようになっている。
そして、外側ロータ42は、連結部43を介して、内側ロータ41と同軸上で一体的に回転するようになっている。
このように、内側ロータ41及び外側ロータ42は、同軸上に中心軸線をもつように一体的に形成されているため、組み付ける際に、内側ロータ41と外側ロータ42の位置合わせが不要になり、組付け工数の簡素化、低コスト化、組付けの高精度化等を達成することができる。
【0030】
すなわち、ロータ40において発生する磁力線は、内側ロータ41のS極→外側ロータ42のN極→外側ロータ42のS極→内側ロータ41のN極→内側ロータ41のS極→外側ロータ42のN極という経路を辿って流れるようになっている。
また、ロータ40は、ホルダハウジング30の遮断壁34とポンプハウジング10により画定される収容空間に配置され、内側ロータ41と外側ロータ42の間に遮断壁34が非接触にて入り込むように組み込まれる。
さらに、ロータ40は、内側ロータ41の貫通孔41aにインペラ20の回転軸22が連結されて、インペラ20と一体的に回転するように組み付けられるようになっている。
【0031】
6つのステータコア50は、それぞれ磁力線を通す磁路を形成するものであり、図2、図3、図6に示すように、薄板状の磁性板を打ち抜いたものを複数枚積み重ねて形成されており、コイル60を巻回する中央部51、巻回したコイル60の両端を規制する長腕部52及び短腕部53、コイル60の両端を接続する2つの端子部54、固定部55,56等を備えている。
中央部51は、内側ロータ41と外側ロータ41の間において磁力線を通す実質的な磁路をなす部分である。このように、6つのステータコア50は、従来のように円筒状に連続的に形成されるのではなくて、それぞれ分割して形成されているため、コイル60の高密度巻線を可能にしつつ、磁路を短くでき、それ故に、鉄損及び発熱を低減あるいは抑制でき、磁気効率を高めることができる。
【0032】
そして、各々のステータコア50は、コイル60が巻回された状態で、収容室34aに挿入されて、その固定部55が収容室34aの固定部34bに嵌合により固定され、固定部56が後述するホルダプレート70の押圧突起73により押圧されて固定されるようになっている。
2つの端子部54は、後述するホルダプレート70の嵌合部に嵌合されて、その表面に設けられた配線に接続されるようになっている。
ここでは、6つのコイル60が2つずつ3つのグループに分けられて、三相励磁されるようになっている。したがって、6つのコイル60は、180度離れて配置された2つのコイル60同士が同相励磁されるように、ホルダプレート70上の配線を介して、電気的に接続されるようになっている。
【0033】
6つのコイル60は、ステータコア50にそれぞれ巻回されて、ホルダハウジング30の6つの収容室34aにそれぞれ収容され、その両端がステータコア50の端子部54に接続されている。
すなわち、6つのコイル60は、内側ロータ41と外側ロータ42の間において、周方向に複数に分割して配列され、分離壁35を介して、それぞれ電気的に絶縁された状態となっている。このように、6つのコイル60が、6つのステータコア50にそれぞれ巻回されて分割配置されているため、磁路を短縮でき、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率を高めることができる。
【0034】
ホルダプレート70は、図2及び図6に示すように、略円盤状に形成され、ホルダハウジング30の環状段差部38に当接される外縁部71、締結用のネジSを通す中心孔72、6つのステータコア50の固定部56を押圧する6つの押圧突起73、端子部54を通して電気的に接続する嵌合部(不図示)、カバー80と対向する表面上に設けられた配線(不図示)及び種々の電子部品(不図示)、カバー80のコネクタ82に連結される端子部74等を備えている。
そして、ホルダプレート70は、コイル60を巻回した6つのステータコア50をホルダハウジング30と協働して保持すると共に、同相関係にあるコイル60同士を電気的に接続する役割をなすものである。
このように、ホルダプレート70を介して、同相にて駆動されるコイル60同士が接続されるため、最初から連続するコイルを巻回する場合に比べて、組付け作業が簡単になり、又、コネクタの端子構造を簡素化することができる。
【0035】
カバー80は、樹脂材料を用いて形成されており、図1、図2、図4、図6に示すように、ホルダハウジング30の円筒端部39に嵌合される環状凸部81、端子部74が導かれて収容されるコネクタ82、ホルダハウジング30の掛止凹部33に対してスナップフィットにより掛止される複数(ここでは、4つ)の掛止片83等を備えている。
そして、カバー80は、6つのコイル60を巻回したステータコア50、ホルダプレート70が組み込まれた状態で、ホルダハウジング30の円筒端部39に連結されて全体を覆うようになっている。
【0036】
上記構成によれば、コイル60が適宜通電されてロータ40が回転すると、ロータ40と一体的にインペラ20が回転して、液体(水)が吸引口11aから吸引され吐出口12aから吐出される。
ここで、6つのコイル60が周方向に分割して配置された領域を通過して内側ロータ41から外側ロータ42に又は外側ロータ42から内側ロータ41に向う磁路が短くなるため、全体としての磁路の長さを短くすることができ、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率の高い高性能のモータを得ることができる。
また、上記構成をなすモータを用いた液体ポンプによれば、構造の簡素化、部品点数の削減、軽量化、低コスト化等を達成しつつ、コイル60の高密度巻線を可能にして、組立工数を簡素化でき、磁路を短縮でき、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率を高めて、高性能で高効率の液体ポンプを得ることができる。
【0037】
また、上記構成をなす液体ポンプによれば、6つのコイル60をそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された6つステータコア50を収容する収容室34aが、遮断壁34を介して、ロータ40(内側ロータ41及び外側ロータ42)が配置される空間から遮断されているため、ロータ40(内側ロータ41及び外側ロータ42)をポンプハウジング10内に導かれた液体(水)に曝して、液体(水)による冷却作用(水冷作用)を得ることができ、発熱を効率よく抑制することができる。
【0038】
次に、上記構成をなす液体ポンプの組付け手順について説明する。
先ず、図5に示すように、遮磁板45を挟み込むようにして、回転軸22を貫通孔41aに嵌合すると共に掛止爪23を掛止凹部41bに掛止する。これにより、インペラ20とロータ40が一体的に回転するように組み付けられる。
続いて、インペラ20を支軸14にて支持するように、ポンプハウジング10内に、(ロータ40を組み付けた)インペラ20を取り付ける。
【0039】
続いて、必要に応じてシールリングRを組み付け、ホルダハウジング30をポンプハウジング10に連結して、ネジSにより締結する。このとき、支軸36が軸受穴24に嵌合するように嵌め込む。
続いて、コイル60をそれぞれ巻回した6つのステータコア50を、ホルダハウジング30の収容室34a内に挿入し、固定部55を固定部34bに嵌合して固定する。
続いて、端子部54を嵌合部に嵌合して電気的に接続するように、かつ、押圧突起73が固定部56を押圧するようにして、ホルダプレート70をホルダハウジング30に嵌め込み、中心孔72を通して、ネジSをネジ穴37に締結する。
【0040】
続いて、必要に応じてシールリングRを組み付け、端子部74をコネクタ82に位置付けし、環状凸部81を円筒端部39に嵌合し、掛止片83を掛止凹部33にスナップフィットにより掛止して、カバー80をホルダハウジング30に連結する。
以上の手順により、液体ポンプの組付けが完了する。
このように、液体ポンプにおいて、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成しつつ、組立工数を簡素化することができる。
【0041】
上記実施形態においては、ロータとして、内側ロータ41と外側ロータ42が一体的に形成されたロータ40を示したが、これに限定されるものではなく、内側ロータと外側ロータを別々に形成してもよい。この場合、内側ロータと外側ロータは、別々に回転軸に連結される。
上記実施形態においては、内側ロータとして円筒状の内側ロータ41を示したが、これに限定されるものではなく、インペラの回転軸が連結されれば、円柱状の内側ロータを採用してもよい。
【0042】
上記実施形態においては、ステータコア50に巻回されたコイル60の両端を端子部54として形成し、ホルダプレート70上の配線を介して電気的に接続した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ホルダハウジング30の空間において空中配線にて電気的に接続してもよい。
上記実施形態においては、コイル60を保持するホルダとして、ステータコア50を設けた場合を示したが、これに限定されるものではなく、複数のコイル60が周方向に分割配列して保持される限り、ステータコア50を廃止したコアレスタイプのモータとして構成することも可能である。
【0043】
上記実施形態においては、ロータ40が4極かつコイル60が6個で三相励磁の場合を示したが、着磁される磁極対及びコイル60の個数は、これに限定されるものではなく、その他の個数を採用することができる。
上記実施形態においては、液体ポンプとして、水を適用するウォータポンプを示したが、これに限定されるものではなく、その他の液体を供給する液体ポンプに適用することができる。
上記実施形態においては、モータを液体ポンプに適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、その他の駆動源としても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上述べたように、本発明のモータは、構造の簡素化、軽量化、低コスト化等を達成しつつ、コイルの高密度巻線を可能にして、組立工数を簡素化でき、磁路を短縮でき、鉄損を低減でき、発熱を抑制でき、磁気効率を高めることができるため、液体ポンプの駆動源としては勿論のこと、その他の電気分野及び機械分野の機器の駆動源としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るモータを備えた液体ポンプの一実施形態を示す外観図である。
【図2】図1に示す液体ポンプの内部を示す縦断面図である。
【図3】図2中のE−Eにおける横断面図である。
【図4】図1に示す液体ポンプの分解斜視図である。
【図5】図1に示す液体ポンプの一部を示す分解斜視図である。
【図6】図1に示す液体ポンプの分解斜視図である。
【図7】図1に示す液体ポンプの一部を示すホルダハウジングの斜視図である
【図8】図1に示す液体ポンプの一部を示すホルダハウジングの斜視図である
【図9】図1に示す液体ポンプに含まれるモータの一部を示すロータ(内側ロータ及び外側ロータ)の斜視図である
【図10】図1に示す液体ポンプに含まれるモータのロータにおける磁束の流れを示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
L 所定軸線
S ネジ
10 ポンプハウジング
11 吸引パイプ
11a 吸引口
12 吐出パイプ
12a 吐出口
13 収容室
14 支軸
15 嵌合部
16 ネジ孔
20 インペラ
21 羽根
22 回転軸
23 掛止爪
24 軸受穴
30 ホルダハウジング
31 外壁部
32 ネジ孔
33 掛止凹部
34 遮断壁
34a 収容室
34b 固定部
35 分離壁
36 支軸
37 ネジ穴
38 環状段差部
39 円筒端部
40 ロータ
41 内側ロータ
41a 貫通孔
41b 掛止凹部
42 外側ロータ
43 連結部
50 ステータコア
51 中央部
52 長腕部
53 短腕部
54 端子部
55,56 固定部
60 励磁用のコイル
70 ホルダプレート(基板)
71 外縁部
72 中心孔
73 押圧突起
74 端子部
80 カバー
81 環状凸部
82 コネクタ
83 掛止片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁用のコイルと、前記コイルを保持するホルダと、所定軸線回りに回転自在に支持されたロータを備えたモータであって、
前記ロータは、所定の極配置に着磁された内側ロータと、前記内側ロータの外側に配置されて前記内側ロータと同軸上で一体的に回転すると共に所定の極配置に着磁された円筒状の外側ロータを含み、
前記励磁用のコイルは、前記内側ロータと前記外側ロータの間において周方向に複数に分割して配列された複数のコイルを含む、
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記ホルダは、前記複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記複数のコイルは、それぞれ、絶縁性の部材を介して電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載のモータ。
【請求項5】
前記内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結され、
前記内側ロータは、円筒状に形成され、
前記内側ロータには、所定の回転軸が一体的に回転するように嵌合されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のモータ。
【請求項6】
前記ホルダは、前記複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアと、前記複数のステータコアを収容して前記内側ロータ及び外側ロータから遮断する遮断壁をもつホルダハウジングを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載のモータ。
【請求項7】
前記複数のコイルは、空中配線にて又は基板上の配線を介して、同相励磁されるもの同士が電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載のモータ。
【請求項8】
吸引口及び吐出口を画定するポンプハウジングと、前記ポンプハウジング内に配置されたインペラと、励磁用のコイル,前記コイルを保持するホルダ,及び前記インペラに連結されたロータを含み前記インペラに回転駆動力を及ぼすモータと、を備えた液体ポンプであって、
前記ロータは、所定の極配置に着磁された内側ロータと、前記内側ロータの外側に配置されて前記内側ロータと同軸上で一体的に回転すると共に所定の極配置に着磁された円筒状の外側ロータを含み、
前記励磁用のコイルは、前記内側ロータと前記外側ロータの間において周方向に複数に分割して配列された複数のコイルを含む、
ことを特徴とする液体ポンプ。
【請求項9】
前記ホルダは、前記複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアを含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体ポンプ。
【請求項10】
前記複数のコイルは、それぞれ、絶縁性の部材を介して電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の液体ポンプ。
【請求項11】
前記内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結されている、
ことを特徴とする請求項8ないし10いずれか一つに記載の液体ポンプ。
【請求項12】
前記内側ロータ及び外側ロータは、それぞれの端部同士が連結され、
前記内側ロータは、円筒状に形成され、
前記内側ロータには、前記インペラに形成された回転軸が一体的に回転するように嵌合されている、
ことを特徴とする請求項8ないし11いずれか一つに記載の液体ポンプ。
【請求項13】
前記ホルダは、前記複数のコイルをそれぞれ巻回するべく周方向に分割して配列された複数のステータコアと、前記複数のステータコアを収容して前記内側ロータ及び外側ロータから遮断する遮断壁をもつホルダハウジングを含み、
前記ホルダハウジングは、前記ポンプハウジングに連結されている、
ことを特徴とする請求項8ないし12いずれか一つに記載の液体ポンプ。
【請求項14】
前記複数のコイルは、空中配線にて又は基板上の配線を介して、同相励磁されるもの同士が電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項8ないし13いずれか一つに記載の液体ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−106088(P2009−106088A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275951(P2007−275951)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】