モータ及び電動パワーステアリング装置
【課題】被取付体に振動が伝達されることを抑制できるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】モータケースは、環状のステータが内側に固定される円筒状のケース本体と、ハウジングへの取付部64,65が形成されたプレート62とを備えた。各取付部64,65は、ケース本体に外嵌される円環部63から径方向外側に延出されるとともに、締結ボルトが挿通される貫通孔64a,65aを有する。そして、取付部64,65に対して、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置にそれぞれ間隙Gを形成した。
【解決手段】モータケースは、環状のステータが内側に固定される円筒状のケース本体と、ハウジングへの取付部64,65が形成されたプレート62とを備えた。各取付部64,65は、ケース本体に外嵌される円環部63から径方向外側に延出されるとともに、締結ボルトが挿通される貫通孔64a,65aを有する。そして、取付部64,65に対して、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置にそれぞれ間隙Gを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のパワーステアリング装置には、モータを駆動源とした電動パワーステアリング装置(EPS)がある。こうしたEPSにおいて、駆動源であるモータは、例えば減速機構が収容されるハウジング等の車両本体に固定された被取付体に取り付けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、例えば図10に示すように、モータ91は、ステータ92が内側に固定される有底円筒状のケース本体93と、ケース本体93に外嵌される円環状のプレート94とを有するモータケース95を備えている。図11に示すように、プレート94は、円環状の円環部96、及び同円環部96から径方向外側に延出されるとともに貫通孔97aが形成された取付部97からなり、円環部96がケース本体93の外周に圧入されることで同ケース本体93に固定される。そして、図10に示すように、モータ91は、貫通孔97aに挿通される締結ボルト98によって被取付体99に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、モータ91で発生した振動がハウジング等の被取付体99を介して車室内に伝播することで操舵フィーリングが低下するといった問題があり、この点においてなお改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、被取付体に振動が伝達されることを抑制できるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、環状のステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、前記取付部には、前記貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、取付部には、貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されるため、取付部に間隙を形成しない場合に比べ、モータで発生した振動が貫通孔に伝達され難くなる。これにより、モータで発生した振動が貫通孔に挿通される締結部材を介して被取付体に伝達されることを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないように形成されたことを要旨とする。
【0010】
モータの回転駆動時において、ステータは、ロータとの間で吸引力及び反発力が作用することにより径方向に拡縮しており、こうしたステータの変形が振動の発生要因の1つとなっている。ここで、こうしたステータの振動モードは、モータの極数とスロット数との関係(極スロット数)により定まる。具体的には、モータの極数とスロット数の最大公約数を「n」とすると、ステータには、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部(拡径された部分)及び凹部(縮径された部分)が略等角度間隔で交互に生じるように変形する。例えば、最大公約数nが「2」の場合には、凸部及び凹部が90°間隔で交互に生じ、楕円形状に変形する。すなわち、ステータは、各凸部(各凹部)がステータの外周円の中心を通る直線上に生じるように変形する。
【0011】
この点を踏まえ、上記構成では、ステータの外周円の中心を通る任意の直線上に、各取付部の接続端の両方共は配置されないようにモータケースが形成される。そのため、モータケースがステータと一体的に楕円形状に変形する場合において、各凸部(各凹部)の頂点、すなわち変形量の最も大きな部分が、同時に各取付部の接続端に位置することが防止される。これにより、ステータが楕円形状に変形する場合において、各取付部が同時に大きく振動することが抑制され、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、極数とスロット数の最大公約数をnとし、前記ステータの外周円に内接するとともに、1つの頂点が前記各取付部のいずれか一方の接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、前記モータケースは、前記ステータの外周円の中心及び前記正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方の接続端が配置されないように形成されたことを要旨とする。
【0013】
上記のようにステータには、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部及び凹部が略等角度間隔で交互に生じるように変形する。つまり、最大公約数nが「2」よりも大きい場合には、ステータは、凸部(凹部)がステータの外周円の中心と外周円に内接する正n角形の頂点とを通る直線上に生じるように(n角形状に)変形する。
【0014】
この点を踏まえ、上記構成では、正n角形の各頂点及びステータの外周円の中心を通る直線上に、各取付部の接続端の両方共は配置されないようにモータケースが形成される。そのため、ステータの振動モードに応じて、変形量の最も大きな部分が同時に各取付部の接続端に位置することを防止でき、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、上記構成では、各取付部のいずれか一方の接続端及びステータの外周円の中心を通る直線上に、いずれか他方の接続端が配置されないため、同形状のモータケースを極スロット数の最大公約数nが「2」となる(ステータが楕円形状に変形する)モータに適用しても、各取付部が同時に大きく振動することが抑制される。従って、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のモータにおいて、前記一対の取付部は、それぞれの前記貫通孔が前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置されるように形成されたことを要旨とする。
【0016】
ここで、請求項2又は3のように、各取付部のいずれか一方の接続端及びステータの外周円の中心を通る直線上に、いずれか他方の接続端が配置されない構成では、モータは、その中心に対して非対称となる位置が支持された状態で被取付体に取り付けられることになる。また、一般にモータの重心はステータの外周円の中心と略一致するため、上記請求項2又は3の構成では、モータの被取付体に対する支持が不安定になる虞がある。
【0017】
この点を踏まえ、上記構成では、締結部材が挿通される貫通孔がステータの外周円の中心を通る直線上に配置される、すなわち貫通孔がモータの重心に対して対称となる位置に配置されるため、モータの被取付体に対する支持を安定させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
上記構成によれば、モータで発生した振動が伝達されることを抑制できるため、操舵フィーリングの優れた電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被取付体に振動が伝達されることを抑制可能なモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】本実施形態のEPSアクチュエータの概略構成を示す断面図。
【図3】モータの図2におけるA−A断面図。
【図4】本実施形態のプレートを示す正面図。
【図5】極数とスロット数の最大公約数nが「2」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図。
【図6】(a)極数とスロット数の最大公約数nが「3」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図、(b)別のプレートを示す正面図。
【図7】(a)極数とスロット数の最大公約数nが「4」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図、(b)別のプレートを示す正面図。
【図8】別のプレートを示す正面図。
【図9】別のプレートを示す正面図。
【図10】従来のモータの取付構造を示す断面図。
【図11】従来のプレートを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、ステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0022】
また、EPS1は、モータ21を駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ22を備えている。本実施形態のEPSアクチュエータ22は、所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されており、モータ21は、減速機構24を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。なお、減速機構24は、コラムシャフト8に連結されたホイールギア25と、モータ21に連結されたウォームギア26とを噛合することにより構成されている。そして、モータ21の回転を減速機構24により減速してコラムシャフト8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成になっている。
【0023】
次に、本実施形態におけるEPSアクチュエータの構成について説明する。
図2に示すように、EPSアクチュエータ22は、減速機構24を収容するハウジング31を備えている。モータ21は、ハウジング31に貫設されたステアリングシャフト3(コラムシャフト8)の軸線方向に対して、その出力軸21aの軸線方向が直交するように、被取付体としてのハウジング31に固定されている。そして、モータ21の出力軸21aに駆動連結されたウォームギア26は、その両端がハウジング31内に設けられた軸受32,33により回転可能に支持されるとともに、ステアリングシャフト3に連結されたホイールギア25に噛合されている。
【0024】
本実施形態のモータ21は、略円筒状のモータケース41内に収容されるステータ42と、同ステータ42の径方向内側において回転可能に支持されるロータ43とを備えたブラシレスモータとして構成されている。なお、本実施形態のモータケース41には、モータ21の作動を制御するECU(電子制御装置)44が固定されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、ステータ42は、モータケース41の内周に固定された円筒部45と、同円筒部45から径方向内側に向って延びる複数のティース46とを備えてなる。本実施形態のステータ42には、「12本」のティース46が円筒部45の全周に亘って均等に設けられている。そして、これら各ティース46には、それぞれインシュレータ47を介してコイル48が巻回されている。
【0026】
一方、ロータ43は、出力軸21aとともに一体回転するロータコア51の外周に複数のマグネット52を固着することにより形成される。ロータ43は、その出力軸21aの両端がモータケース41内に設けられた軸受53,54により回転可能に支持されることにより、上記ステータ42の内側において回転可能に設けられている。本実施形態のロータコア51には、その全周に亘り「10枚」のマグネット52が均等間隔で固着されている。そして、これら各マグネット52により、その周方向において隣り合う2つの極性(N極、S極)が異なる「10極」の磁極が形成されている。
【0027】
従って、モータ21は、「10」の磁極及び各ティース46間に形成される「12」のスロットを備えた所謂「10極12スロット」のモータとして構成されている。また、モータ21は、ステータ42の外周円42a(図4参照)の中心Oに関して略対称な形状に形成されており、その重心と中心Oとが略一致するように形成されている。なお、ステータ42の外周円42aとは、ステータ42の外径と等しい直径を有する円である。
【0028】
このように構成されたモータ21は、各ティース46に巻回されたコイル48に三相(U,V,W)の駆動電力が供給されることにより形成される磁界と、マグネット52との間に生じる磁気的な吸引力及び反発力によりロータ43が出力軸21aと一体回転する。そして、ロータ43の回転により生ずるモータトルクを操舵系に付与する構成となっている。
【0029】
(モータの取付構造)
次に、モータ21のハウジング31に対する取付構造について説明する。
モータケース41は、一端(図2における上端)が有底円筒状に形成されるとともにステータ42が固定されるケース本体61と、ケース本体61に外嵌される円環状のプレート62とを有している。図4に示すように、プレート62は、円環状の円環部63、及び同円環部63から径方向外側に延出される一対の取付部64,65からなり、円環部63がケース本体93の外周に圧入されることで同ケース本体61に固定される。各取付部64,65には、それぞれ貫通孔64a,65aが形成されている。そして、図2に示すように、モータ21は、締結部材としての締結ボルト66が貫通孔64a,65aを介してハウジング31に形成されたボルト孔67に螺合されることでハウジング31に取り付けられるようになっている。従って、本実施形態では、ケース本体61及びプレート62の円環部63により本体部が構成されている。
【0030】
ところで、モータ21の回転駆動時において、ステータ42は、ロータ43のマグネット52との間で吸引力及び反発力が作用することにより径方向に拡縮する。こうした変形に起因するステータ42の振動モードは、モータ21の極数とスロット数との関係(極スロット数)により定まる。具体的には、モータ21の極数とスロット数の最大公約数を「n」とすると、ステータ42には、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部(拡径された部分)と凹部(縮径された部分)とが等角度間隔で交互に生じるように変形する。本実施形態では、モータ21が10極12スロットの構成とされていることから最大公約数nが「2」となるため、図5に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に90°間隔で交互に生じ、楕円形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に生じるように変形する。
【0031】
この点を踏まえ、図4に示すように、プレート62は、取付部64の円環部63との接続部分である接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、取付部65の円環部63との接続部分である接続端65bが配置されないように形成されている。つまり、取付部65の接続端65b及び中心Oを通る直線L2上に、取付部64の接続端64bが配置されないように形成されている。換言すれば、プレート62は、ステータ42の外周円42aの中心Oを通る任意の直線上に、各取付部64,65の接続端64b,65bの両方共は配置されないように形成されている。
【0032】
また、各取付部64,65は、各接続端64b,65bからそれぞれ径方向外側に延びる直線状に形成されるとともに、その先端で略直角に曲折された略L字状に形成されており、各取付部64,65には、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に間隙Gが形成されている。さらに、各取付部64,65は、各貫通孔64a,65aの中心がステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置されるように形成されている。
【0033】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)モータケース41は、環状のステータ42が内側に固定される円筒状のケース本体61と、ハウジング31への取付部64,65が形成されたプレート62とを備えた。各取付部64,65は、ケース本体61に外嵌される円環部63から径方向外側に延出されるとともに、締結ボルト66が挿通される貫通孔64a,65aを有する。そして、取付部64,65に対して、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置にそれぞれ間隙Gを形成した。上記構成によれば、取付部64,65に間隙Gを形成しない場合に比べ、モータ21で発生した振動が貫通孔64a,65aに伝達され難くなる。これにより、モータ21で発生した振動が貫通孔64a,65aに挿通される締結ボルト66を介してハウジング31に伝達されることを抑制でき、操舵フィーリングや静粛性の優れたEPS1を提供することができる。
【0034】
(2)モータケース41のプレート62に、一対の取付部64,65を形成した。そして、取付部64の接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、取付部65の接続端65bが配置されないようにプレート62を形成した。
【0035】
上記構成では、本実施形態のモータ21のように極数とスロット数の最大公約数nが「2」であり、モータケース41がステータ42と一体的に楕円形状に変形する場合において、各凸部71(各凹部72)の頂点、すなわち変形量の最も大きな部分が、同時に各取付部64,65の接続端64b,65bに位置することが防止される。これにより、ステータ42が楕円形状に変形する場合において、各取付部64,65が同時に大きく振動することが抑制され、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【0036】
(3)一対の取付部64,65を、それぞれの貫通孔64a,65aがステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置されるように形成した。
ここで、本実施形態のように、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端64bが配置されない構成では、モータ21は、その重心に対して非対称となる位置が支持された状態でハウジング31に取り付けられることになるため、モータ21のハウジング31に対する支持が不安定になる。この点、上記構成によれば、各貫通孔64a,65aがステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置される、すなわち貫通孔64a,65aがモータ21の重心に対して対称となる位置に配置されるため、モータ21のハウジング31に対する支持を安定させることができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、モータ21を「10極12スロット」のモータとして構成としたが、これに限らず、極数とスロット数の関係は適宜変更してもよい。
【0038】
例えば、ロータ43の極数を「6」、ステータ42のスロット数を「9」とした「6極9スロット」のモータとしてもよい。この場合には、極数とスロット数の最大公約数nが「3」となるため、図6(a)に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に60°間隔で交互に生じ、略三角形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心O及び外周円42aに内接する正三角形の頂点を通る直線上に生じるように変形する。
【0039】
そこで、この場合には、図6(b)に示すように、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正三角形Tを想定した場合に、中心O及び正三角形Tのいずれかの頂点を通る直線L4,L5上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。
【0040】
この構成では、正三角形Tの各頂点及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に、各取付部64,65の接続端64b,65bの両方共は配置されないようにプレート62が形成されるため、ステータ42が略三角形状に変形する場合において、変形量の最も大きな部分が同時に各接続端64b,65bに位置することが防止される。これにより、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、この構成では、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないため、同形状のプレート62を、上記実施形態のように最大公約数nが「2」となるモータに適用しても、各取付部64,65が同時に大きく振動することが抑制される。従って、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0041】
また、ロータ43の極数が「8」、ステータ42のスロット数が「12」である「8極12スロット」のモータとしてもよい。この場合には、最大公約数nが「4」となるため、図7(a)に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に45°間隔で交互に生じ、略正方形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心O及び外周円42aに内接する正方形の頂点を通る直線上に生じるように変形する。
【0042】
そこで、この場合には、図7(b)に示すように、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正方形Sを想定した場合に、中心O及び正方形Sのいずれかの頂点を通るいずれかの直線L6〜L8上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。この構成では、ステータ42が略正方形状に変形する場合において、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、接続端64b及び外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないため、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0043】
さらに、極数とスロット数の最大公約数が「n」となるモータとして構成した場合には、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正n角形を想定した場合に、中心O及び正n角形のいずれかの頂点を通るいずれかの直線上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。このように構成することで、ステータ42の振動モードに応じてハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができるとともに、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0044】
・上記実施形態では、モータケース41をステータ42が固定されるケース本体61と、各取付部64,65を有するプレート62とに分割して形成したが、これに限らず、ケース本体61の外周に各取付部64,65を一体形成してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、各取付部64,65の貫通孔64a,65aが直線L3上に配置されるようにしたが、これに限らず、直線L3上に、各貫通孔64a,65aのいずれか一方のみが配置されるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、締結部材として締結ボルト66を用いたが、これに限らず、リベット等を用いてもよい。
・上記実施形態では、プレート62を、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないように形成した。しかし、これに限らず、例えば図8に示すように、各取付部64,65に対して各貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に、断面長方形状のスリット81を形成し、該スリット81の両端に設けられた各接続端64b、65bがそれぞれステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1,L2上に配置されるようにしてもよい。この場合には、スリット81により間隙Gが形成される。なお、スリット81の形状は、長方形状に限らず、円弧状等の他の形状でもよい。また、プレート62に取付部を1又は3以上設けるようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、各取付部64,65に対して貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に間隙Gを形成したが、これに限らず、例えば図9に示すように、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成するとともに、貫通孔64a,65aの径方向内側に間隙Gを形成しなくともよい。また、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、中心O及び同正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成するとともに、貫通孔64a,65aの径方向内側に間隙Gを形成しなくともよい。
【0048】
・上記実施形態では、モータ21をブラシレスモータとして構成したが、これに限らず、例えばブラシ付き直流モータ等の他のモータとしてもよい。
・上記実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、これに限らず、例えばピニオンシャフト10に対してアシスト力を付与する所謂ピニオン型のEPSに適用してもよい。また、ボール螺子機構を用いてモータ21の回転をラック軸5の往復動に変換して伝達することにより操舵系にアシスト力を付与する所謂ラックアシスト型のEPSや、その他のEPSに適用してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、本発明をEPS用のモータに具体化した。しかし、これに限らず、EPS以外の用途に用いられるモータに適用してもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0050】
(イ)ステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないことを特徴とするモータ。上記構成によれば、ステータが楕円形状に変形する場合において、各取付部が同時に大きく振動することが抑制され、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、21…モータ、22…EPSアクチュエータ、31…ハウジング、41…モータケース、42…ステータ、42a…外周円、43…ロータ、46…ティース、48…コイル、52…マグネット、61…ケース本体、62…プレート、63…円環部、64,65…取付部、64a,65a…貫通孔、64b,65b…接続端、66…締結ボルト、71…凸部、72…凹部、81…スリット、G…間隙、L1〜L8…直線、n…最大公約数、O…中心、T…正三角形、S…正四角形。
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のパワーステアリング装置には、モータを駆動源とした電動パワーステアリング装置(EPS)がある。こうしたEPSにおいて、駆動源であるモータは、例えば減速機構が収容されるハウジング等の車両本体に固定された被取付体に取り付けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、例えば図10に示すように、モータ91は、ステータ92が内側に固定される有底円筒状のケース本体93と、ケース本体93に外嵌される円環状のプレート94とを有するモータケース95を備えている。図11に示すように、プレート94は、円環状の円環部96、及び同円環部96から径方向外側に延出されるとともに貫通孔97aが形成された取付部97からなり、円環部96がケース本体93の外周に圧入されることで同ケース本体93に固定される。そして、図10に示すように、モータ91は、貫通孔97aに挿通される締結ボルト98によって被取付体99に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−100129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、モータ91で発生した振動がハウジング等の被取付体99を介して車室内に伝播することで操舵フィーリングが低下するといった問題があり、この点においてなお改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、被取付体に振動が伝達されることを抑制できるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、環状のステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、前記取付部には、前記貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、取付部には、貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されるため、取付部に間隙を形成しない場合に比べ、モータで発生した振動が貫通孔に伝達され難くなる。これにより、モータで発生した振動が貫通孔に挿通される締結部材を介して被取付体に伝達されることを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないように形成されたことを要旨とする。
【0010】
モータの回転駆動時において、ステータは、ロータとの間で吸引力及び反発力が作用することにより径方向に拡縮しており、こうしたステータの変形が振動の発生要因の1つとなっている。ここで、こうしたステータの振動モードは、モータの極数とスロット数との関係(極スロット数)により定まる。具体的には、モータの極数とスロット数の最大公約数を「n」とすると、ステータには、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部(拡径された部分)及び凹部(縮径された部分)が略等角度間隔で交互に生じるように変形する。例えば、最大公約数nが「2」の場合には、凸部及び凹部が90°間隔で交互に生じ、楕円形状に変形する。すなわち、ステータは、各凸部(各凹部)がステータの外周円の中心を通る直線上に生じるように変形する。
【0011】
この点を踏まえ、上記構成では、ステータの外周円の中心を通る任意の直線上に、各取付部の接続端の両方共は配置されないようにモータケースが形成される。そのため、モータケースがステータと一体的に楕円形状に変形する場合において、各凸部(各凹部)の頂点、すなわち変形量の最も大きな部分が、同時に各取付部の接続端に位置することが防止される。これにより、ステータが楕円形状に変形する場合において、各取付部が同時に大きく振動することが抑制され、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のモータにおいて、極数とスロット数の最大公約数をnとし、前記ステータの外周円に内接するとともに、1つの頂点が前記各取付部のいずれか一方の接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、前記モータケースは、前記ステータの外周円の中心及び前記正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方の接続端が配置されないように形成されたことを要旨とする。
【0013】
上記のようにステータには、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部及び凹部が略等角度間隔で交互に生じるように変形する。つまり、最大公約数nが「2」よりも大きい場合には、ステータは、凸部(凹部)がステータの外周円の中心と外周円に内接する正n角形の頂点とを通る直線上に生じるように(n角形状に)変形する。
【0014】
この点を踏まえ、上記構成では、正n角形の各頂点及びステータの外周円の中心を通る直線上に、各取付部の接続端の両方共は配置されないようにモータケースが形成される。そのため、ステータの振動モードに応じて、変形量の最も大きな部分が同時に各取付部の接続端に位置することを防止でき、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、上記構成では、各取付部のいずれか一方の接続端及びステータの外周円の中心を通る直線上に、いずれか他方の接続端が配置されないため、同形状のモータケースを極スロット数の最大公約数nが「2」となる(ステータが楕円形状に変形する)モータに適用しても、各取付部が同時に大きく振動することが抑制される。従って、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のモータにおいて、前記一対の取付部は、それぞれの前記貫通孔が前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置されるように形成されたことを要旨とする。
【0016】
ここで、請求項2又は3のように、各取付部のいずれか一方の接続端及びステータの外周円の中心を通る直線上に、いずれか他方の接続端が配置されない構成では、モータは、その中心に対して非対称となる位置が支持された状態で被取付体に取り付けられることになる。また、一般にモータの重心はステータの外周円の中心と略一致するため、上記請求項2又は3の構成では、モータの被取付体に対する支持が不安定になる虞がある。
【0017】
この点を踏まえ、上記構成では、締結部材が挿通される貫通孔がステータの外周円の中心を通る直線上に配置される、すなわち貫通孔がモータの重心に対して対称となる位置に配置されるため、モータの被取付体に対する支持を安定させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
上記構成によれば、モータで発生した振動が伝達されることを抑制できるため、操舵フィーリングの優れた電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被取付体に振動が伝達されることを抑制可能なモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】本実施形態のEPSアクチュエータの概略構成を示す断面図。
【図3】モータの図2におけるA−A断面図。
【図4】本実施形態のプレートを示す正面図。
【図5】極数とスロット数の最大公約数nが「2」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図。
【図6】(a)極数とスロット数の最大公約数nが「3」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図、(b)別のプレートを示す正面図。
【図7】(a)極数とスロット数の最大公約数nが「4」の場合におけるステータの振動モードを示す模式図、(b)別のプレートを示す正面図。
【図8】別のプレートを示す正面図。
【図9】別のプレートを示す正面図。
【図10】従来のモータの取付構造を示す断面図。
【図11】従来のプレートを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、ステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0022】
また、EPS1は、モータ21を駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ22を備えている。本実施形態のEPSアクチュエータ22は、所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されており、モータ21は、減速機構24を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。なお、減速機構24は、コラムシャフト8に連結されたホイールギア25と、モータ21に連結されたウォームギア26とを噛合することにより構成されている。そして、モータ21の回転を減速機構24により減速してコラムシャフト8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成になっている。
【0023】
次に、本実施形態におけるEPSアクチュエータの構成について説明する。
図2に示すように、EPSアクチュエータ22は、減速機構24を収容するハウジング31を備えている。モータ21は、ハウジング31に貫設されたステアリングシャフト3(コラムシャフト8)の軸線方向に対して、その出力軸21aの軸線方向が直交するように、被取付体としてのハウジング31に固定されている。そして、モータ21の出力軸21aに駆動連結されたウォームギア26は、その両端がハウジング31内に設けられた軸受32,33により回転可能に支持されるとともに、ステアリングシャフト3に連結されたホイールギア25に噛合されている。
【0024】
本実施形態のモータ21は、略円筒状のモータケース41内に収容されるステータ42と、同ステータ42の径方向内側において回転可能に支持されるロータ43とを備えたブラシレスモータとして構成されている。なお、本実施形態のモータケース41には、モータ21の作動を制御するECU(電子制御装置)44が固定されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、ステータ42は、モータケース41の内周に固定された円筒部45と、同円筒部45から径方向内側に向って延びる複数のティース46とを備えてなる。本実施形態のステータ42には、「12本」のティース46が円筒部45の全周に亘って均等に設けられている。そして、これら各ティース46には、それぞれインシュレータ47を介してコイル48が巻回されている。
【0026】
一方、ロータ43は、出力軸21aとともに一体回転するロータコア51の外周に複数のマグネット52を固着することにより形成される。ロータ43は、その出力軸21aの両端がモータケース41内に設けられた軸受53,54により回転可能に支持されることにより、上記ステータ42の内側において回転可能に設けられている。本実施形態のロータコア51には、その全周に亘り「10枚」のマグネット52が均等間隔で固着されている。そして、これら各マグネット52により、その周方向において隣り合う2つの極性(N極、S極)が異なる「10極」の磁極が形成されている。
【0027】
従って、モータ21は、「10」の磁極及び各ティース46間に形成される「12」のスロットを備えた所謂「10極12スロット」のモータとして構成されている。また、モータ21は、ステータ42の外周円42a(図4参照)の中心Oに関して略対称な形状に形成されており、その重心と中心Oとが略一致するように形成されている。なお、ステータ42の外周円42aとは、ステータ42の外径と等しい直径を有する円である。
【0028】
このように構成されたモータ21は、各ティース46に巻回されたコイル48に三相(U,V,W)の駆動電力が供給されることにより形成される磁界と、マグネット52との間に生じる磁気的な吸引力及び反発力によりロータ43が出力軸21aと一体回転する。そして、ロータ43の回転により生ずるモータトルクを操舵系に付与する構成となっている。
【0029】
(モータの取付構造)
次に、モータ21のハウジング31に対する取付構造について説明する。
モータケース41は、一端(図2における上端)が有底円筒状に形成されるとともにステータ42が固定されるケース本体61と、ケース本体61に外嵌される円環状のプレート62とを有している。図4に示すように、プレート62は、円環状の円環部63、及び同円環部63から径方向外側に延出される一対の取付部64,65からなり、円環部63がケース本体93の外周に圧入されることで同ケース本体61に固定される。各取付部64,65には、それぞれ貫通孔64a,65aが形成されている。そして、図2に示すように、モータ21は、締結部材としての締結ボルト66が貫通孔64a,65aを介してハウジング31に形成されたボルト孔67に螺合されることでハウジング31に取り付けられるようになっている。従って、本実施形態では、ケース本体61及びプレート62の円環部63により本体部が構成されている。
【0030】
ところで、モータ21の回転駆動時において、ステータ42は、ロータ43のマグネット52との間で吸引力及び反発力が作用することにより径方向に拡縮する。こうした変形に起因するステータ42の振動モードは、モータ21の極数とスロット数との関係(極スロット数)により定まる。具体的には、モータ21の極数とスロット数の最大公約数を「n」とすると、ステータ42には、その外周に最大公約数nと等しい数の凸部(拡径された部分)と凹部(縮径された部分)とが等角度間隔で交互に生じるように変形する。本実施形態では、モータ21が10極12スロットの構成とされていることから最大公約数nが「2」となるため、図5に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に90°間隔で交互に生じ、楕円形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に生じるように変形する。
【0031】
この点を踏まえ、図4に示すように、プレート62は、取付部64の円環部63との接続部分である接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、取付部65の円環部63との接続部分である接続端65bが配置されないように形成されている。つまり、取付部65の接続端65b及び中心Oを通る直線L2上に、取付部64の接続端64bが配置されないように形成されている。換言すれば、プレート62は、ステータ42の外周円42aの中心Oを通る任意の直線上に、各取付部64,65の接続端64b,65bの両方共は配置されないように形成されている。
【0032】
また、各取付部64,65は、各接続端64b,65bからそれぞれ径方向外側に延びる直線状に形成されるとともに、その先端で略直角に曲折された略L字状に形成されており、各取付部64,65には、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に間隙Gが形成されている。さらに、各取付部64,65は、各貫通孔64a,65aの中心がステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置されるように形成されている。
【0033】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)モータケース41は、環状のステータ42が内側に固定される円筒状のケース本体61と、ハウジング31への取付部64,65が形成されたプレート62とを備えた。各取付部64,65は、ケース本体61に外嵌される円環部63から径方向外側に延出されるとともに、締結ボルト66が挿通される貫通孔64a,65aを有する。そして、取付部64,65に対して、貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置にそれぞれ間隙Gを形成した。上記構成によれば、取付部64,65に間隙Gを形成しない場合に比べ、モータ21で発生した振動が貫通孔64a,65aに伝達され難くなる。これにより、モータ21で発生した振動が貫通孔64a,65aに挿通される締結ボルト66を介してハウジング31に伝達されることを抑制でき、操舵フィーリングや静粛性の優れたEPS1を提供することができる。
【0034】
(2)モータケース41のプレート62に、一対の取付部64,65を形成した。そして、取付部64の接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、取付部65の接続端65bが配置されないようにプレート62を形成した。
【0035】
上記構成では、本実施形態のモータ21のように極数とスロット数の最大公約数nが「2」であり、モータケース41がステータ42と一体的に楕円形状に変形する場合において、各凸部71(各凹部72)の頂点、すなわち変形量の最も大きな部分が、同時に各取付部64,65の接続端64b,65bに位置することが防止される。これにより、ステータ42が楕円形状に変形する場合において、各取付部64,65が同時に大きく振動することが抑制され、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【0036】
(3)一対の取付部64,65を、それぞれの貫通孔64a,65aがステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置されるように形成した。
ここで、本実施形態のように、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端64bが配置されない構成では、モータ21は、その重心に対して非対称となる位置が支持された状態でハウジング31に取り付けられることになるため、モータ21のハウジング31に対する支持が不安定になる。この点、上記構成によれば、各貫通孔64a,65aがステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L3上に配置される、すなわち貫通孔64a,65aがモータ21の重心に対して対称となる位置に配置されるため、モータ21のハウジング31に対する支持を安定させることができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、モータ21を「10極12スロット」のモータとして構成としたが、これに限らず、極数とスロット数の関係は適宜変更してもよい。
【0038】
例えば、ロータ43の極数を「6」、ステータ42のスロット数を「9」とした「6極9スロット」のモータとしてもよい。この場合には、極数とスロット数の最大公約数nが「3」となるため、図6(a)に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に60°間隔で交互に生じ、略三角形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心O及び外周円42aに内接する正三角形の頂点を通る直線上に生じるように変形する。
【0039】
そこで、この場合には、図6(b)に示すように、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正三角形Tを想定した場合に、中心O及び正三角形Tのいずれかの頂点を通る直線L4,L5上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。
【0040】
この構成では、正三角形Tの各頂点及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に、各取付部64,65の接続端64b,65bの両方共は配置されないようにプレート62が形成されるため、ステータ42が略三角形状に変形する場合において、変形量の最も大きな部分が同時に各接続端64b,65bに位置することが防止される。これにより、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、この構成では、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないため、同形状のプレート62を、上記実施形態のように最大公約数nが「2」となるモータに適用しても、各取付部64,65が同時に大きく振動することが抑制される。従って、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0041】
また、ロータ43の極数が「8」、ステータ42のスロット数が「12」である「8極12スロット」のモータとしてもよい。この場合には、最大公約数nが「4」となるため、図7(a)に示すように、凸部71及び凹部72がそれぞれステータ42の周方向に45°間隔で交互に生じ、略正方形状に変形する。すなわち、ステータ42は、各凸部71(各凹部72)がステータ42の外周円42aの中心O及び外周円42aに内接する正方形の頂点を通る直線上に生じるように変形する。
【0042】
そこで、この場合には、図7(b)に示すように、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正方形Sを想定した場合に、中心O及び正方形Sのいずれかの頂点を通るいずれかの直線L6〜L8上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。この構成では、ステータ42が略正方形状に変形する場合において、ハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができる。また、接続端64b及び外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないため、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0043】
さらに、極数とスロット数の最大公約数が「n」となるモータとして構成した場合には、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に配置される正n角形を想定した場合に、中心O及び正n角形のいずれかの頂点を通るいずれかの直線上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成する。このように構成することで、ステータ42の振動モードに応じてハウジング31に伝達される振動を効果的に抑制することができるとともに、振動モードの異なるモータ間で部品の共通化を図ることができる。
【0044】
・上記実施形態では、モータケース41をステータ42が固定されるケース本体61と、各取付部64,65を有するプレート62とに分割して形成したが、これに限らず、ケース本体61の外周に各取付部64,65を一体形成してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、各取付部64,65の貫通孔64a,65aが直線L3上に配置されるようにしたが、これに限らず、直線L3上に、各貫通孔64a,65aのいずれか一方のみが配置されるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、締結部材として締結ボルト66を用いたが、これに限らず、リベット等を用いてもよい。
・上記実施形態では、プレート62を、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないように形成した。しかし、これに限らず、例えば図8に示すように、各取付部64,65に対して各貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に、断面長方形状のスリット81を形成し、該スリット81の両端に設けられた各接続端64b、65bがそれぞれステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1,L2上に配置されるようにしてもよい。この場合には、スリット81により間隙Gが形成される。なお、スリット81の形状は、長方形状に限らず、円弧状等の他の形状でもよい。また、プレート62に取付部を1又は3以上設けるようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、各取付部64,65に対して貫通孔64a,65aよりも円環部63側の位置に間隙Gを形成したが、これに限らず、例えば図9に示すように、接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線L1上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成するとともに、貫通孔64a,65aの径方向内側に間隙Gを形成しなくともよい。また、1つの頂点が接続端64b及びステータ42の外周円42aの中心Oを通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、中心O及び同正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、接続端65bが配置されないようにプレート62を形成するとともに、貫通孔64a,65aの径方向内側に間隙Gを形成しなくともよい。
【0048】
・上記実施形態では、モータ21をブラシレスモータとして構成したが、これに限らず、例えばブラシ付き直流モータ等の他のモータとしてもよい。
・上記実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、これに限らず、例えばピニオンシャフト10に対してアシスト力を付与する所謂ピニオン型のEPSに適用してもよい。また、ボール螺子機構を用いてモータ21の回転をラック軸5の往復動に変換して伝達することにより操舵系にアシスト力を付与する所謂ラックアシスト型のEPSや、その他のEPSに適用してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、本発明をEPS用のモータに具体化した。しかし、これに限らず、EPS以外の用途に用いられるモータに適用してもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0050】
(イ)ステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないことを特徴とするモータ。上記構成によれば、ステータが楕円形状に変形する場合において、各取付部が同時に大きく振動することが抑制され、被取付体に伝達される振動を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、21…モータ、22…EPSアクチュエータ、31…ハウジング、41…モータケース、42…ステータ、42a…外周円、43…ロータ、46…ティース、48…コイル、52…マグネット、61…ケース本体、62…プレート、63…円環部、64,65…取付部、64a,65a…貫通孔、64b,65b…接続端、66…締結ボルト、71…凸部、72…凹部、81…スリット、G…間隙、L1〜L8…直線、n…最大公約数、O…中心、T…正三角形、S…正四角形。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、
前記取付部には、前記貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
極数とスロット数の最大公約数をnとし、前記ステータの外周円に内接するとともに、1つの頂点が前記各取付部のいずれか一方の接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、
前記モータケースは、前記ステータの外周円の中心及び前記正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方の接続端が配置されないように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータにおいて、
前記一対の取付部は、それぞれの前記貫通孔が前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置されるように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
環状のステータが内側に固定される筒状の本体部と、被取付体への取付部とを有するモータケースを備え、前記取付部は前記本体部から径方向外側に延出されるとともに、該取付部には締結部材が挿通される貫通孔が形成されたモータであって、
前記取付部には、前記貫通孔よりも本体部側の位置に間隙が形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記モータケースは、一対の前記取付部を有するとともに、前記各取付部のいずれか一方における前記本体部との接続部分である接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方における前記本体部との接続部分である接続端が配置されないように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
極数とスロット数の最大公約数をnとし、前記ステータの外周円に内接するとともに、1つの頂点が前記各取付部のいずれか一方の接続端及び前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置される正n角形を想定した場合に、
前記モータケースは、前記ステータの外周円の中心及び前記正n角形のいずれかの頂点を通る直線上に、前記各取付部のいずれか他方の接続端が配置されないように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のモータにおいて、
前記一対の取付部は、それぞれの前記貫通孔が前記ステータの外周円の中心を通る直線上に配置されるように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−90495(P2012−90495A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237423(P2010−237423)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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