説明

モータ支持構造

【課題】パワートレインにモータを採用した場合の静粛性や制振性の低下を抑制する。
【解決手段】モータを採用したモータ3と、左右一対のフロントサイドメンバ1と、フロントサイドメンバ1の下方で、前側及び後側のクロスフレーム11、12、並びに左側及び右側のサイドフレーム13、14を連設して井桁状に形成されたサブフレーム4と、前側クロスフレーム11及びサイドフレーム13(14)の交差部16(17)で、フロントサイドメンバ1に対してサブフレーム4を弾性支持するインシュレータ15と、前側クロスフレーム11の中央と交差部16(17)との間、及びサイドフレーム13(14)の中央と交差部16(17)との間の、二点に対してモータ3を弾性支持するインシュレータ31(32)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン及びトランスミッションからなるパワートレインのマウント構造において、左右のサイドフレーム同士を、フロントクロスメンバ及びサスペンションクロスメンバで連結し、左右のサイドフレーム及びサスペンションクロスメンバに設けたエンジンマウントによってパワートレインを支持するものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−120770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンに比べるとモータの振動は、より高周波領域にまで及ぶ。したがって、エンジンを想定したマウント構造で、モータをマウントすると、エンジンでは発生しなかった高い周波数領域で、サイドフレームやサスペンションクロスメンバの固有振動が励起され、静粛性や制振性が低下する可能性がある。
本発明の課題は、パワートレインにモータを採用した場合の静粛性や制振性の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るモータ支持構造は、車体前後方向に延在する左側及び右側のサイドフレームと、車体左右方向に延在する前側及び後側のクロスフレームとを連結し、車体部材に固定したフレーム支持部材によってサイドフレームとクロスフレームとが交わる交差部を弾性支持する。また、サイドフレームとクロスフレームとで囲まれた範囲内に車両を駆動するモータを配置すると共に、サイドフレームと前側のクロスフレームとの双方に固定したモータ支持部材によって、モータの前側を弾性支持する。モータ支持部材は、サイドフレーム側連結部材を介してサイドフレームに固定され、且つクロスフレーム側連結部材を介してクロスフレームに固定される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るモータ支持構造によれば、モータの振動が、モータ支持部材、サイドフレーム側連結部材、及びクロスフレーム側連結部材を介して、サイドフレームとクロスフレームとに分散して伝達されるので、車体部材への振動伝達が抑制される。したがって、エンジンと比較して、車両駆動がモータとなったときの静粛性や制振制の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】モータ支持構造の平面図である。
【図2】モータ支持構造の斜視図である。
【図3】右側のブラケットを示す車両正面図である。
【図4】右側のブラケットを示す車両右側面図である。
【図5】車体への振動伝達を示す。
【図6】円環モードについて説明した図である。
【図7】太鼓モードについて説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、モータ支持構造の平面図である。
図2は、モータ支持構造の斜視図である。
左右一対のフロントサイドメンバ1は、車体前後方向に延在し、その後側が、ダッシュパネル2の下に潜るように屈曲又は湾曲している。フロントサイドメンバ1の下方には、車両を駆動するモータ3がマウントされた、平面で見て井桁状のサブフレーム4を配設する。モータ3は、パワートレインの回転駆動源を構成し、車両上方から見て、井桁状のサブフレーム4で囲まれた範囲内に配置される。
【0009】
井桁状のサブフレーム4は、車体左右方向に延在する前側クロスフレーム11及び後側クロスフレーム12と、車体前後方向に延在する左側サイドフレーム13及び右側サイドフレーム14と、を連なるように設ける(連設する)ことで、環状構造が形成される。井桁状のサブフレーム4は、その四隅を、つまり前側クロスフレーム11と左側サイドフレーム13との交差部、左側サイドフレーム13と後側クロスフレーム12との交差部、後側クロスフレーム12と右側サイドフレーム14との交差部、及び右側サイドフレーム14と前側クロスフレーム11との交差部を、夫々、インシュレータ15によって、フロントサイドメンバ1の下面に弾性支持する。四隅のインシュレータ15は、前後の剛性差よりも左右の剛性差の方が小さくなるように設定する。
【0010】
ここで交差部とは、前側及び後側クロスフレーム11、12と、左側及び右側サイドフレーム13、14とが交わる部位であり、本実施の形態では、車両上方から見て、前側及び後側クロスフレーム11、12をその車両前後方向の幅を維持したまま車両左右方向に延在させた領域と、左側及び右側サイドフレーム13、14をその車両左右方向の幅を維持したまま車前後方向に延在させた領域とが重複する範囲を、交差部とする。また、井桁状のサブフレーム4は、前側及び後側クロスフレーム11、12と、左側及び右側サイドフレーム13、14とを別々に作成し、接合して形成してもよいし、前側及び後側クロスフレーム11、12と、左側及び右側サイドフレーム13、14とを一体的に形成してもよい。
【0011】
モータ3の左側の側面は、ブラケット21及びインシュレータ31(第一のモータ支持部材)を介して、サブフレーム4に弾性支持する。また、右側の側面は、ブラケット22及びインシュレータ32(第二のモータ支持部材)を介して、サブフレーム4に弾性支持する。また、後側の背面は、ブラケット23及びインシュレータ33(第三のモータ支持部材)を介して、サブフレーム4に弾性支持する。インシュレータ31、32、33は、弾性体を有し、この弾性体によってモータ3を弾性支持する。モータ3に対するインシュレータ33の固定点は、モータ3に対するインシュレータ31、32の固定点よりも上側に配置される。
【0012】
左側のインシュレータ31は、平面で見て、一端側のフランジを前側クロスフレーム11に連結し、他端側のフランジを左側サイドフレーム13に連結することで、前側クロスフレーム11及び左側サイドフレーム13によって二点支持し、その一端側と他端側との間でモータ3を弾性支持している。インシュレータ31は、前側クロスフレーム11と左側サイドフレーム13との交差部16に近い位置、つまり前側クロスフレーム11の左端側、及び左側サイドフレーム13の前端側で支持する。
【0013】
前側クロスフレーム11の左端側には、インシュレータ31に向かって、つまりサブフレーム4の内側(車体後側)に向かって突出する後方突出部41を形成し、インシュレータ31の一端側のフランジは、その後方突出部41を介して前側クロスフレーム11に連結する。一方、左側サイドフレーム13の前端側には、インシュレータ31に向かって、つまりサブフレーム4の内側(車体右側)に向かって突出する右方突出部42を形成し、インシュレータ31の他端側のフランジは、その右方突出部42を介して左側サイドフレーム13に連結する。
【0014】
なお、後方突出部41は、前側クロスフレーム11と一体形成してもよいし、或いは前側クロスフレーム11とは別体で構成し、この前側クロスフレーム11に連結するようにしてもよい。同様に、右方突出部42は、左側サイドフレーム13と一体形成してもよいし、或いは左側サイドフレーム13とは別体で構成し、この左側サイドフレーム13に連結するようにしてもよい。
【0015】
右側のインシュレータ32は、平面で見て、一端側のフランジを前側クロスフレーム11に連結し、他端側のフランジを右側サイドフレーム14に連結することで、前側クロスフレーム11及び右側サイドフレーム14によって二点支持し、その一端側と他端側との間でモータ3を弾性支持している。インシュレータ32は、前側クロスフレーム11と右側サイドフレーム14との交差部17に近い位置、つまり前側クロスフレーム11の右端側、及び右側サイドフレーム14の前端側で支持する。
【0016】
前側クロスフレーム11の右端側には、インシュレータ32に向かって、つまりサブフレーム4の内側(車体後側)に向かって突出する後方突出部43を形成し、インシュレータ32の一端側のフランジは、その後方突出部43を介して前側クロスフレーム11に連結する。一方、右側サイドフレーム14の前端側には、インシュレータ32に向かって、つまりサブフレーム4の内側(車体左側)に向かって突出する左方突出部44を形成し、インシュレータ32の他端側のフランジは、その左方突出部44を介して右側サイドフレーム14に連結する。
【0017】
なお、後方突出部43は、前側クロスフレーム11と一体形成してもよいし、或いは前側クロスフレーム11とは別体で構成し、この前側クロスフレーム11に連結するようにしてもよい。同様に、左方突出部44は、右側サイドフレーム14と一体形成してもよいし、或いは右側サイドフレーム14とは別体で構成し、この右側サイドフレーム14に連結するようにしてもよい。
【0018】
後側のインシュレータ33は、後側クロスフレーム12の略中央に固定する。
また、左側のインシュレータ31(又は右側のインシュレータ32)は、車両上方から見て、モータ3の前側における車幅方向の両端側に配置され、且つ前側のクロスフレーム11よりも左側のサイドフレーム13(又は右側のサイドフレーム14)に近接した位置に配置される。
【0019】
また、後方突出部41(又は43)における前側のクロスフレーム11に対する連結部は、右方突出部42(又は左方突出部44)における左側のサイドフレーム13(又は右側のサイドフレーム14)に対する連結部と比較して、交差部16(又は17)に近接した位置に配置される。
【0020】
図3は、右側のブラケットを示す車両正面図である。
ブラケット22は、モータ3における腹部(下面)を支持するのではなく、車幅方向の端部を支持する。
図4は、右側のブラケットを示す車両右側面図である。
モータ3は、車幅方向のモータ回転軸3aを有し、ブラケット22は、モータ3における車幅方向の端部で、モータ回転軸3aに対して径方向に離間した位置を弾性支持する。具体的には、モータ回転軸3aよも車体前側を弾性支持する。
なお、図3及び図4では、右側のブラケット22について説明したが、左側のブラケット21についても同様の構成としてもよい。
【0021】
《作用》
エンジンに比べるとモータの振動は、より高周波領域にまで及ぶ。したがって、エンジンを想定したマウント構造で、モータをマウントすると、エンジンでは発生しなかった高い周波数領域で、サブフレーム4、左側サイドフレーム13及び右側サイドフレーム14等の固有振動が励起され、静粛性や制振性が低下する可能性がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、サブフレーム4の剛性が高い部位である交差部16(17)に対して、インシュレータ31(32)、ブラケット21(22)を順に介して、モータ3を弾性支持する。これにより、モータの振動は、前側クロスフレーム11への伝達とサイドフレーム13(14)への伝達とに分散され、夫々が曲げモードに対する剛性の高い位置に伝達されるので、前側クロスフレーム11及び左側サイドフレーム13の弾性一次モードである車両上下方向曲げモード変形を励起しにくくなる。すなわち、フロントサイドメンバ1を介した車体側への振動伝達が抑制されるので、静粛性や制振制の低下を防げる。
【0023】
図5は、車体への振動伝達を示す。
交差部16(17)が、インシュレータ15の近傍に位置することで、インシュレータ31(32)とインシュレータ15とが近接することになる。こうして、二つの弾性体が近接することで、モータからの振動を効率よく吸収することができる。すなわち、図5に示すように、二重の防振効果が得られるので、フロントサイドメンバ1を介した車体側への振動伝達が抑制され、静粛性や制振性の低下を防げる。
【0024】
また、インシュレータ31(32)は、前側クロスフレーム11及びサイドフレーム13(14)をバイパスするように二点支持されるので、交差部16(17)の車体上下方向の曲げ剛性及び固有振動周波数を大きくすることができる。したがって、モータ振動が入力されても、前側クロスフレーム11及びサイドフレーム13(14)の変形が励起されにくくなり、フロントサイドメンバ1を介した車体側への振動伝達が抑制され、静粛性や制振制の低下を防げる。
【0025】
また、モータ3が小型化すると、モータ3と前側クロスフレーム11及びサイドフレーム13(14)との離隔距離が長くなってしまう。そこで、前側クロスフレーム11の左端側(右端側)には、インシュレータ31(32)に向かって突出する後方突出部41(42)を形成し、サイドフレーム12(14)の前側には、インシュレータ31(32)に向かって突出する突出部43(44)を形成する。そして、これら後方突出部41と右方突出部43とにインシュレータ31を連結し、後方突出部42と左方突出部44とにインシュレータ32を連結する。これにより、モータが小型化しても、ブラケット21(22)を大型化したり、インシュレータ31(32)の取付け点を変更する必要がなくなり、利便性が向上する。特に、ブラケット21(22)を大型化すると、剛性及び固有振動周波数の低下によって振動伝達の抑制効果が低下するので、ブラケット21(22)の大型化を回避することで、静粛性や制振制の低下を防げる。
【0026】
また、インシュレータ31、32(モータ側支持部材)及びインシュレータ15(車体側弾性体)を、左方突出部44(サイドフレーム側連結部材)と、後方突出部41、43(クロスフレーム側連結部材)と、左側サイドフレーム13及び右側サイドフレーム14と、前側クロスフレーム11及び後側クロスフレーム12と、前記交差部とで形成する四角形の周上に配置することにより、モータの振動が曲げモードに対する剛性の高い位置に伝達されるので、車体部材への振動伝達が抑制され、静粛性や制振制の低下を防ぐことができる。
【0027】
また、インシュレータ31は、モータ3の左側を弾性支持し、インシュレータ32は、モータ3の右側を弾性支持する。四隅のインシュレータ15は、前後の剛性差よりも左右の剛性差の方が小さくなるように設定される。インシュレータ15の近傍にインシュレータ31(32)を配設しているので、インシュレータ15の剛性とインシュレータ31(32)の剛性とが合成された剛性が車体に対して作用する。したがって、剛性差の小さい左右のインシュレータ15に対して、インシュレータ31(32)を配設した方が、インシュレータ15及びインシュレータ31(32)の合成された剛性の、位置による差が小さくなり、モータ3の支持剛性について位置による偏りが小さくなる。したがって、モータ回転時に、モータを車体左右方向の軸に沿って回転させることができ、モータ回転時の車両左右方向軸に対するモータの傾きによる操縦安定性の悪化を抑制することができる。また、モータ振動や路面などの外部入力により、モータ自身が振動する振動モードを容易にコントロールすることができ、静粛性や制振性の低下を防げる。
【0028】
また、インシュレータ31、32の夫々を、モータ3における前側に配置している。これにより、サブフレーム4の剛性が高い部位である交差部16、17の近傍へ固定することができるので、静粛性や制振制の低下を抑制することができる。
また、インシュレータ31、32の夫々は、モータ3における車幅方向の両端側に配置している。これにより、障害物との接触によって車体前部が後方に変形するときに、インシュレータ31、32が、モータ3に対して干渉することを回避できる。すなわち、接触時のエネルギー吸収効果を低減することがなく、フロントサイドメンバ1やサブフレーム4によって接触時のエネルギーを効果的に吸収することができる。
【0029】
また、インシュレータ31、32の夫々は、前側のクロスフレーム11よりもサイドフレーム13、14に近接した位置に配置している。前側のクロスフレーム11は、歩行者保護のために、あまり剛性を高めないように設定されることがあり、この場合には、前側のクロスフレーム11よりもサイドフレーム13、14の方が、剛性は相対的に高い。したがって、インシュレータ31、32を、より剛性の高いサイドフレーム13、14に近接させることで、インシュレータ31、32の移動量を減らすことができ、振動を吸収させやすくなる。
【0030】
また、サブフレーム4に対して、後方突出部41、43の連結部は、右方及び左方の突出部42、44の連結部と比較して、交差部16、17に近接させていることで、剛性が相対的に低い前側のクロスフレーム11への振動伝達を抑制することができる。したがって、交差部16、17に設けたインシュレータ15で振動を効果的に吸収することができる。逆に言えば、その分、歩行者保護の対応で前側のクロスフレーム11の剛性を抑制することができる。
【0031】
図6は、円環モードについて説明した図である。
図7は、太鼓モードについて説明した図である。
モータ3において、車両音振性能に影響が大きい加振モードは、円環モードと、太鼓モードである。円環モードは、円が広がったり、縮まったりするモードであり、太鼓モードは、太鼓のように幕共振が発生するモードである。したがって、円環モードの影響を極力受けないようにするためには、モータ3の腹部には、ブラケット22の固定位置(マウント位置)を配置しない方がよい。また、太鼓モードの影響を極力受けないようにするためには、モータ回転軸3aの近傍には、ブラケット22の固定位置(マウント位置)を配置しない方がよい。
【0032】
そこで、ブラケット22は、先ず車幅方向の端部を支持する。これにより、主に太鼓モードによる加振の影響を軽減することができる。また、ブラケット22は、モータ3における車幅方向の端部で、モータ回転軸3aに対して径方向に離間した位置を支持する。これにより、主に円環モードによる加振の影響を軽減することができる。なお、モータ回転軸3aよも車体前側を支持することで、インシュレータ32を小型化することもできる。
【0033】
また、モータ3の前側に設けた二つのインシュレータ31、32と、モータ3の後ろ側に設けた一つのインシュレータ33により、計三箇所でモータマウントを行っているので、モータ3を安定して支持することができる。
また、モータ3に対するインシュレータ33の固定点は、モータ3に対するインシュレータ31、32の固定点よりも上側に配置している。これにより、モータ3を下側から支持するインシュレータ31、32と、モータ3を上側から支持するインシュレータ33とによって、モータ3の上下振動を効果的に吸収することができる。
【0034】
《応用例》
本実施形態では、クロスフレーム及びサイドフレームによって二点支持されるインシュレータを、二箇所に配設しているが、これに限定されるものではなく、一箇所だけに配設してもよいし、三箇所以上に配設してもよい。
【0035】
《効果》
以上より、モータ3に「モータ」に対応し、フロントサイドメンバ1が「車体部材」に対応し、前側クロスフレーム11及び後側クロスフレーム12が「クロスフレーム」に対応し、左側サイドフレーム13及び右側サイドフレーム14が「サイドフレーム」に対応する。また、インシュレータ15が「フレーム支持部材」に対応し、交差部16、17が「交差部」に対応し、インシュレータ31、32が「モータ支持部材」に対応し、インシュレータ31が「第一のモータ支持部材」に対応し、インシュレータ32が「第二のモータ支持部材」に対応する。また、後方突出部41、43が「クロスフレーム側連結部」に対応し、右方突出部42、左方突出部44が「サイドフレーム側連結部材」に対応する。また、インシュレータ33が「第三のモータ支持部材」に対応する。
【0036】
(1)車体の一部を構成する車体部材と、該車体部材の下方で車体前後方向に延在する左側及び右側のサイドフレームと、前記車体部材の下方で車体左右方向に延在し、前記左側及び右側のサイドフレームの前端側同士及び後端側同士に連結される前側及び後側のクロスフレームと、車体上方から見て、前記サイドフレームと前記クロスフレームとが交わる部位を交差部とし、当該交差部に固定され、内在する弾性体を介して前記サイドフレーム及び前記クロスフレームを弾性支持するフレーム支持部材と、車体上方から見て、前記左側及び右側のサイドフレーム、並びに前記前側及び後側のクロスフレームによって囲まれた範囲内に配置され、車両を駆動するモータと、前記モータの前側を、内在する弾性体を介して前記サイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定することで弾性支持するモータ支持部材と、前記サイドフレームと前記モータ支持部材とを連結することで前記サイドフレームに前記モータ支持部材を固定するサイドフレーム側連結部材と、前記前側のクロスフレームと前記モータ支持部材とを連結することで前記前側のクロスフレームに前記モータ支持部材を固定するクロスフレーム側連結部材と、を備える。
これにより、モータの振動が、モータ支持部材とサイドフレーム側連結部材及びクロスフレーム側連結部材を介してクロスフレームとサイドフレームとに分散伝達されるので、車体部材への振動伝達が抑制され、車両駆動がモータとなったときのエンジンに対する静粛性や制振性の低下を防ぐことができる。
【0037】
(2)前記モータ支持部材は、車両上方から見て、前記モータにおける前側に配置される。
これにより、モータ支持部材を、剛性が高い部位である交差部の近傍へ固定することができるので、静粛性や制振性の低下を抑制することができる。
【0038】
(3)前記モータ支持部材は、車両上方から見て、前記モータにおける車幅方向の一端側に配置される。
これにより、車両の前方接触時にモータ支持部材がモータに干渉することで接触エネルギーの吸収を阻害することがなく、車体部材とクロスフレームとサイドフレームとで効果的に接触エネルギーを吸収することができる。
【0039】
(4)前記モータ支持部材は、前記クロスフレームよりも前記サイドフレームに近接した位置に配置される。
これにより、モータ支持部材の弾性体の移動量を減らすことができ、振動を吸収させやすくなる。
【0040】
(5)前記クロスフレーム側連結部材における前記クロスフレームに対する連結部は、前記サイドフレーム側連結部材における前記サイドフレームに対する連結部と比較して、前記交差部に近接した位置に配置される。
これにより、比較的剛性の低いクロスフレームへの振動伝達を極力減らすことで、フレーム支持部材の弾性体に効率よく振動が伝達され、効率よく吸収可能になる。また、歩行者保護の対応でクロスフレームの剛性を抑制することもできる。
【0041】
(6)前記モータは、車幅方向のモータ回転軸を有し、前記モータ支持部材は、前記モータにおける車幅方向の端部で、前記モータ回転軸に対して径方向に離間した位置を弾性支持する。
これにより、モータの車幅方向端部やそれ以外の部分の変形による加振の影響を受けないようにすることができ、振動伝達を軽減できる。
【0042】
(7)前記モータ支持部材は、車体上方から見て、前記モータ回転軸よも車体前側を弾性支持する。
これにより、モータ支持部材を小型化することができる。
【0043】
(8)前記モータ支持部材は、前記左側のサイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定される第一のモータ支持部材と、前記右側のサイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定される第二のモータ支持部材と、を備え、前記後側のクロスフレームに固定され、内在する弾性体を介して前記モータの後側を弾性支持する第三のモータ支持部材を備える。
これにより、モータを少ない数で安定して支持することができる。
【0044】
(9)前記モータに対する前記第三のモータ支持部材の固定点は、前記モータに対する前記第一及び第二のモータ支持部材の固定点よりも上側に配置される。
これにより、モータの上下振動を効果的に吸収することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 フロントサイドメンバ
2 ダッシュパネル
3 モータ
3a モータ回転軸
4 サブフレーム
11、12 クロスフレーム
13、14 サイドフレーム
15 インシュレータ
16、17 交差部
21、22 ブラケット
31、32 インシュレータ
41、43 後方突出部
42 右方突出部
44 左方突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を構成する車体部材と、
該車体部材の下方で車体前後方向に延在する左側及び右側のサイドフレームと、
前記車体部材の下方で車体左右方向に延在し、前記左側及び右側のサイドフレームの前端側同士及び後端側同士に連結される前側及び後側のクロスフレームと、
車体上方から見て、前記サイドフレームと前記クロスフレームとが交わる部位を交差部とし、当該交差部に固定され、内在する弾性体を介して前記サイドフレーム及び前記クロスフレームを弾性支持するフレーム支持部材と、
車体上方から見て、前記左側及び右側のサイドフレーム、並びに前記前側及び後側のクロスフレームによって囲まれた範囲内に配置され、車両を駆動するモータと、
前記モータの前側を、内在する弾性体を介して前記サイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定することで弾性支持するモータ支持部材と、
前記サイドフレームと前記モータ支持部材とを連結することで前記サイドフレームに前記モータ支持部材を固定するサイドフレーム側連結部材と、
前記前側のクロスフレームと前記モータ支持部材とを連結することで前記前側のクロスフレームに前記モータ支持部材を固定するクロスフレーム側連結部材と、を備えることを特徴とするモータ支持構造。
【請求項2】
前記モータ支持部材は、車両上方から見て、前記モータにおける前側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のモータ支持構造。
【請求項3】
前記モータ支持部材は、車両上方から見て、前記モータにおける車幅方向の一端側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ支持構造。
【請求項4】
前記モータ支持部材は、前記クロスフレームよりも前記サイドフレームに近接した位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のモータ支持構造。
【請求項5】
前記クロスフレーム側連結部材における前記クロスフレームに対する連結部は、前記サイドフレーム側連結部材における前記サイドフレームに対する連結部と比較して、前記交差部に近接した位置に配置されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のモータ支持構造。
【請求項6】
前記モータは、車幅方向のモータ回転軸を有し、
前記モータ支持部材は、前記モータにおける車幅方向の端部で、前記モータ回転軸に対して径方向に離間した位置を弾性支持することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のモータ支持構造。
【請求項7】
前記モータ支持部材は、車体上方から見て、前記モータ回転軸よも車体前側を弾性支持することを特徴とする請求項6に記載のモータ支持構造。
【請求項8】
前記モータ支持部材は、前記左側のサイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定される第一のモータ支持部材と、前記右側のサイドフレーム及び前記前側のクロスフレームの双方に固定される第二のモータ支持部材と、を備え、
前記後側のクロスフレームに固定され、内在する弾性体を介して前記モータの後側を弾性支持する第三のモータ支持部材を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のモータ支持構造。
【請求項9】
前記モータに対する前記第三のモータ支持部材の固定点は、前記モータに対する前記第一及び第二のモータ支持部材の固定点よりも上側に配置されることを特徴とする請求項8に記載のモータ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221992(P2010−221992A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257850(P2009−257850)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】