説明

モータ駆動装置及びモータを有する電気機器

センサレスモータの種類に関わらず、停止状態でのロータ位置を確実に検出して適切な起動論理を決定し、安定してモータを起動する駆動装置である。センサレスモータの複数のステータコイルの中点電圧が変動し且つそのモータが回転しないようなロータ位置検出用駆動電圧を複数のステータコイルに供給し、ステータコイルの中点電圧と検出基準電圧とを比較する。その比較結果が予め用意されている検出論理パターン群の内のいずれかと一致したとき、その検出論理パターンが示すロータ位置に応じた起動論理を発生し、モータを起動する。一致しないときには、検出基準電圧を変更して、ロータ位置検出用信号を発生させロータ位置検出を繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、回転位置センサを持たないセンサレス型モータ(以下、センサレスモータ)の駆動装置及びこの駆動装置によって駆動されるセンサレスモータを有する電気機器に関するものである。
【背景技術】
MDドライバやHDDドライバ等に用いられるモータとして、ホール素子などによる回転位置センサが不要なセンサレスモータが、その構造が簡単であることなどの理由から多く用いられるようになってきている。このセンサレスモータは、停止しているときにそのマグネットロータのロータ位置が不明であることから、所定方向に確実に回転起動させるための起動方法に問題がある。
従来のセンサレスモータの起動方法としては、ロータ位置に無関係な予め定められたシーケンスでそのモータを強制的に振動させることにより起動させる方法などが用いられてきた。
この起動方法では、ロータ位置に無関係な起動論理によって生成される三相の電圧をモータに印加するので、モータが正転方向に始動するとは限らないと言う問題があった。
また、特開平5−268791号公報(以下、特許文献1)には、フローティング状態にあるステータコイルにおける零交差電圧をモニタする事によりロータ位置を検出するモータ駆動装置が示されている。しかし、この検出方法では、モータが回転していなければロータ位置を検出することは出来ないから、同期外れ後の再同期の際にロータ位置を検出できても、モータ起動前の停止状態ではロータ位置を検出することは出来なかった。
そこで、本出願人は、回転位置センサを持たないセンサレスモータの駆動を停止状態から回転位置に応じた所定の起動論理に基づいて駆動できるようにしたモータ駆動装置を既に提案している(特開2004−104846;以下、関連文献という)。この関連文献は、この出願の優先日において、未だ、公知でない、
関連文献のモータ駆動装置は、モータの停止時にそのモータが回転しないようなロータ位置検出用駆動電圧を順次にステータコイルに供給し、その時に発生するステータコイルの中点電圧と基準電圧とを比較した比較結果(検出パターン)に基づいてそのロータ位置を検出して、起動論理を決定するようにしている。
関連文献のモータ駆動装置では、対象とするモータによって中点電圧の発生状況(例えば、その電圧レベルや、変化状況)が異なるから、所定の比較結果(検出パターン)を得られるようにするために対象とするモータ毎に基準電圧を合わせ込むことが必要である。また、中点電圧の発生状況に依っては、基準電圧の合わせ込みのみでは所定の比較結果(検出パターン)を得ることが出来ない場合も発生することがある。
また、モータに印加される電源電圧が定格電圧より減少した減電時や増加した過電時には、ステータコイルの中点電圧はその減電量や過電量に応じて変化する。したがって、減電時や過電時には、所定の比較結果(即ち、検出パターン)を得ることがさらに困難である。
そこで、本発明は、回転位置センサを持たないセンサレスモータの駆動装置及びこの駆動装置によって駆動されるセンサレスモータを有する電気機器において、適用されるセンサレスモータの種類に関わらず、停止状態でのロータ位置を確実に検出して適切な起動論理を決定し、安定してモータを起動することを目的とする。また、電源電圧が減電時や過電時にも同様に安定してモータを起動することを目的とする。
【発明の開示】
本発明のモータ駆動装置は、センサレスモータの複数のステータコイルに駆動電流を供給するドライブスイッチ回路をドライブ信号によって制御してそのセンサレスモータを駆動するモータ駆動装置において、
そのセンサレスモータを回転させる前に、その複数のステータコイルの中点電圧が変動し且つそのセンサレスモータが回転しないようなロータ位置検出用駆動電圧をその複数のステータコイルに供給するようにそのドライブスイッチ回路を制御するロータ位置検出用信号をそのドライブスイッチ回路に出力するシーケンス回路と、
そのロータ位置検出用駆動電圧が印加されたときのその複数のステータコイルの中点電圧と、そのロータ位置検出用駆動電圧に基づいて形成された検出基準電圧とを比較し、その比較結果である検出パターンが予め用意されている検出論理パターン群の内のいずれかの検出論理パターンと一致するか否かを検出するパターン一致検出回路を備え、
一致するときには、その一致した検出論理パターンが示すロータ位置に応じた起動論理を発生する一方、一致しないときには、その検出基準電圧を変更させるとともに、そのシーケンス回路からロータ位置検出用信号を発生させて、ロータ位置検出を繰り返して行う。
また、そのロータ位置検出用電圧は、そのステータコイルの1相が低電位とオン・オフスイッチングで且つそのステータコイルの他相が高電位である状態と、そのステータコイルの1相が高電位とオン・オフスイッチングで且つそのステータコイルの他相が低電位である状態とが相を順次変化させてシーケンシャルに発生される。
また、その予め用意されている検出論理パターン群は、同じロータ位置に対して異なった複数の論理パターンを含んでいる。
また、そのパターン一致検出回路は、その複数のステータコイルに供給されるそのロータ位置検出用駆動電圧に基づいて形成される仮想中性点電圧と可変のオフセット電圧とを加算してその検出基準電圧を得る検出レベル生成回路を有する。
また、その仮想中性点電圧は、一端が各相へのそのロータ位置検出用駆動電圧が印加され、他端が共通接続された抵抗回路により形成される。
また、そのオフセット電圧は、オフセット切り換え信号によってレベル及び又は極性が切り換えられる。
また、そのパターン一致検出回路は、その中点電圧とその検出基準電圧とを比較する比較器と、該比較器からの比較出力が順次入力され検出パターンとして記憶するレジスタと、該レジスタに記憶された検出パターンとその予め用意されている検出論理パターン群とをパターン比較し、その比較結果に応じて、その起動論理と、ロータ位置検出処理もしくはモータ駆動処理を指令するモードセレクト信号とを出力するデコーダを有する。
本発明の電気機器は、センサレスモータと、このセンサレスモータを駆動する本発明のいずれかのモータ駆動装置とを備える。
本発明によれば、回転位置センサを持たないセンサレスモータの駆動装置及びこの駆動装置によって駆動されるセンサレスモータを有する電気機器において、複数のステータコイルの中点電圧が変動し且つそのモータが回転しないようなロータ位置検出用駆動電圧を複数のステータコイルに供給する。そして、ステータコイルの中点電圧と検出基準電圧とを比較する。その比較結果、即ち検出パターンが、予め用意されている検出論理パターン群の内のいずれかと一致した検出論理パターンが示すロータ位置に応じた起動論理を発生し、モータを起動する。一致しないときには、検出基準電圧を変更して、ロータ位置検出用信号を発生させロータ位置検出を繰り返して行う。これにより、適用されるモータの種類に関わらず、また、モータに応じた検出基準電圧の合わせ込みを行うことなく、停止状態でのロータ位置を確実に検出して適切な起動論理を決定し、安定してモータを起動することができる。また、電源電圧が減電時や過電時にも同様に安定してロータ位置を決定できるから、やはりモータを安定して起動できる。
また、ロータ位置検出用電圧として、ステータコイルの1相が低電位とオン・オフスイッチングで且つステータコイルの他相が高電位である状態と、ステータコイルの1相が高電位とオン・オフスイッチングで且つステータコイルの他相が低電位である状態とを相を順次変化させてシーケンシャルに発生させるから、センサレスモータのロータ位置を確実に効率よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、モータ駆動装置の全体構成を示す図である。
図2は、図1の駆動装置のタイミングチャートである。
図3は、モータ位置検出用駆動電圧の波形図である。
図4.Aは、中点電圧とロータの回転位置との関係を説明するための図である。
図4.Bは、中点電圧とロータの回転位置との関係を説明するための他の図である。
図5.Aは、ロータ位置検出用駆動電圧印加時の比較出力のパターン例1を示す図である。
図5.Bは、ロータ位置検出用駆動電圧印加時の比較出力のパターン例2を示す図である。
図5.Cは、ロータ位置検出用駆動電圧印加時の比較出力のパターン例3を示す図である。
図5.Dは、ロータ位置検出用駆動電圧印加時の比較出力のパターン例4を示す図である。
図6.Aは、検出レベル生成回路の具体的構成例を示す図である。
図6.Bは、検出レベル生成回路の他の具体的構成例を示す図である
図7は、検出基準電圧CTRの変更例を示す図である。
図8は、検出論理パターン群の検出論理パターンを考えやすい形式で示す図である。
図9は、検出論理パターン群の実際の検出論理パターンを示す図である。
図10は、ロータ位置決定のための概略のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明のセンサレスモータの駆動装置及びこの駆動装置によって駆動されるセンサレスモータを有する電気機器の実施例について、図を参照して説明する。図1は、センサレスモータが3相である場合のモータ駆動装置の全体構成を示す図である。なお、本発明は、3相モータ以外の多相モータにも適用することができる。
図1において、ドライバ部(即ち、ドライブスイッチ回路)1は、3相駆動回路であり、nチャンネル型MOSFETであるパワートランジスタQ1〜Q6によって構成される。パワートランジスタQ1〜Q3のドレインは共通接続され、駆動電圧(電源電圧)VCCが印加される端子に接続される。パワートランジスタQ1のソースがパワートランジスタQ4のドレインに、パワートランジスタQ3のソースがパワートランジスタQ5のドレインに、パワートランジスタQ3のソースがパワートランジスタQ6のドレインに、それぞれ接続される。そして、パワートランジスタQ4〜Q6のソースは共通接続され、グランドに接続される。なお、パワートランジスタQ1〜Q6はpチャンネル型MOSFETでもよく、また、パワートランジスタQ1〜Q3をpチャンネル型MOSFETとし、パワートランジスタQ4〜Q6をnチャンネル型MOSFETとしてもよい。
センサレスモータ2のステータコイルLuの一端がパワートランジスタQ1とパワートランジスタQ4との接続ノードに接続され、ステータコイルLvの一端がパワートランジスタQ2とパワートランジスタQ5との接続ノードに接続され、ステータコイルLwの一端がパワートランジスタQ3とパワートランジスタQ6との接続ノードに接続される。また、モータ2のステータコイルLu、Lv、Lwの他端が共通接続される。このように、ステータコイルLu、Lv、Lwは、スター結線されている。
モータ駆動制御回路3が、ドライブスイッチ回路1とモータ2との各接続ノードと、モータ2のステータコイルLu、Lv、Lwの他端(共通接続点;中点)と、ドライブ信号D1〜D6が出力される端子を介してパワートランジスタQ1〜Q6の各ゲートとに接続される。
ドライブスイッチ回路1は、モータ駆動制御回路3から出力されるドライブ信号D1〜D6によって、制御される。そして、ドライブスイッチ回路1からモータ2に駆動電圧が供給され、駆動電流が流れてモータ2が回転する。
次に、モータ駆動制御回路3について説明する。モータ駆動制御回路3は、モードセレクト回路11と、逆起電圧検出回路12と、スイッチングノイズマスク回路13と、ドライブ波形生成回路14と、マグネットロータの停止時のロータ位置を検出し起動論理を発生するためのロータ位置検出回路20とによって構成される。
逆起電圧検出回路12、スイッチングノイズマスク回路13、ドライブ波形生成回路14は、モータ2が起動した後に定常回転させるための回路である。モータ起動後の回転中においては、逆起電圧検出回路12がモータ駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutとステータコイルの中点電圧CTMとからフローティング状態にあるステータコイルに発生する逆起電圧を検出し、この逆起電圧の検出信号をスイッチングノイズマスク13に出力する。スイッチングノイズマスク13は、パワートランジスタQ1〜Q6のスイッチングによって発生するスイッチングノイズを除去した後、逆起電圧の検出信号をドライブ波形生成回路14に出力する。ドライブ波形生成回路14は、逆起電圧の検出信号からモータ回転中のロータ位置を検出して、そのロータ位置に応じてドライブ信号MTX1〜MTX6を生成する。モータ起動後は、モードセレクト回路11は、運転側に切り替わっているので、信号MTX1〜MTX6がモードセレクト回路11を介してドライブ信号D1〜D6としてドライブ部1に出力される。
さて、モータ2を停止状態から、運転状態に起動するためには、停止しているロータ位置を特定し、そのロータ位置に応じた起動論理をドライブ波形生成回路14に与える必要がある。この起動論理をロータ位置検出回路20が発生する。
ロータ位置検出回路20は、制御動作に必要とされる各種のクロックを発生し各構成要素に供給するクロック発生回路21と、ロータ位置検出用信号S1〜S6を発生するシーケンス回路22と、電圧レベルが可変の検出基準電圧CTRを発生する検出レベル生成回路23と、ステータコイル中点電圧CTMと検出基準電圧CTRとを比較して、検出パターンになる比較出力CTOを出力するコイル中点変動検出コンパレータ(比較器)24と、比較出力CTOをロータ位置検出用信号S1〜S6と同期して順次取り込んで検出パターンR1〜R6として記憶し、記憶された検出パターンR1〜R6を出力するレジスタ25と、レジスタ25に記憶された検出パターンR1〜R6を予め用意されている検出論理パターン群とパターン比較し、その比較結果が一致するときには、その一致した検出論理パターンが示すロータ位置に応じた起動論理Y1〜Y3を発生し、一致しないときには、シーケンス回路22からロータ位置検出用信号S1〜S6を発生させると共に検出基準電圧CTRを変更してロータ位 置検出を繰り返して行うようにモードセレクト信号SELを出力するデコーダ26と、プリセット回路27を有している。このロータ位置検出回路20から、シーケンス回路22を除いたものは、パターン一致検出回路となる。
そのデコーダ26は、同じロータ位置に対して異なった複数の論理パターンを含んで予め用意されている検出論理パターン群を記憶している論理検出テーブル26Aと、レジスタ25から供給される検出パターンR1〜R6が検出論理パターン群の内のいずれかの論理検出パターンと一致するかどうかを比較検出し、一致するものがある場合に一致したことを示すパターン一致信号C1と一致した検出論理パターンP1を出力する検出パターン比較回路26Bと、パターン一致信号C1によってセットされリセット信号Rによってリセットされるフリップフロップ(FF)回路26Cと、FF回路26Cからセット出力Q(モードセレクト信号SEL)が出されたときに、一致した検出論理パターンP1に応じた起動論理Y1〜Y3を出力する論理変換回路26Dを有している。
クロック発生回路21は、図示しない制御回路等からモータ起動命令信号STがロータ位置検出回路20に供給されると、短周期パルス信号である第1クロックCK1(例えば、50kHz)を発生し、この第1クロックを分周して得られる第2クロック〜第5クロックを発生して、それぞれ所要の回路に供給する。これら第2〜第5クロックは、図2のタイミングチャートに示されるように、第2クロックCK2はレジスタ25への比較出力CTOを取り込むタイミングを決めるレジスト指令信号であり、第3クロックCK3はロータ位置検出用信号S1〜S6の状態を切り換える期間切り換えタイミング信号であり、第4クロックCK4はそのレベルが高(H)レベルか低(L)レベルであるかによって、検出パターンを決める検出サイクル信号であり、また、第5クロックCK5は2つの検出サイクル毎に出力される検出レベル切り換え信号である。
シーケンス回路22は、モードセレクト信号SELがロータ位置検出用信号S1〜S6が選択されるロータ位置検出期間中に動作する。第5クロックCK5を基準にして、第3クロックCK3毎にロータ位置検出用信号S1〜S6の状態を変化させる。
ロータ位置検出用信号S1〜S6は、モータ2が動き出さないような短い時間のみ出力される。時点to〜t1、・・・、t5〜t6の各期間T1〜T6は例えばそれぞれ600μsであり、Hレベル区間と、Lレベル区間と、クロックCK1と同一波形になるパルス区間とを有している。ロータ位置検出用信号S1を例にとると、T1期間とT2期間がLレベル区間であり、T3区間がHレベル区間であり、T4区間がパルス区間であり、T5区間がHレベル区間であり、そしてT6区間がLレベル区間である。なお、ロータ位置検出用信号S1〜S6の順番は、モータ位置検出用駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutの発生の仕方に応じて決められる。
モードセレクト回路11は、ロータ位置検出中にはロータ位置検出用信号S1〜S6を選択してドライブ部1に出力し、パワートランジスタQ1〜Q6をオン・オフ制御する。具体的に一例を示すと、期間T1ではパワートランジスタQ1、Q5、Q6がオフになり、パワートランジスタQ2、Q3がオンになり、パワートランジスタQ4がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。期間T2ではパワートランジスタQ1、Q2、Q6がオフになり、パワートランジスタQ4、Q5がオンになり、パワートランジスタQ3がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。期間T3ではパワートランジスタQ2、Q4、Q6がオフになり、パワートランジスタQ1、Q3がオンになり、パワートランジスタQ5がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。期間T4ではパワートランジスタQ2、Q3、Q4がオフになり、パワートランジスタQ5、Q6がオンになり、パワートランジスタQ1がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。期間T5ではパワートランジスタQ3、Q4、Q5がオフになり、パワートランジスタQ1、Q2がオンになり、パワートランジスタQ6がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。期間T6ではパワートランジスタQ1、Q3、Q5がオフになり、パワートランジスタQ4、Q6がオンになり、パワートランジスタQ2がクロックCK1と同期してオン/オフスイッチングされる。
したがって、ステータコイルLu、Lv、Lwに印加されるモータ位置検出用駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutは、図3に示されるように、期間T1ではL*、H、Hに、期間T2ではL、L、H*に、期間T3ではH、L*、Hに、期間T4ではH*、L、Lに、期間T5ではH、H、L*に、期間T6ではL、H*、Lになる。ここで、H*は、Hレベルとオフとの間でのスイッチングを示し、L*は、Lレベルとオフとの間でのスイッチングを示している。これにより、ステータコイルLu、Lv、Lwには、第1クロックCK1と同一周期である短周期のパルス状電流が流れる。期間T1〜期間T6によって、1つの検出サイクルが構成される。なお、ステータコイルLu、Lv、Lwに流す電流を、短周期のパルス状電流とするのは、ステータコイルのインピーダンスを大きくして、中点電圧CTMの変動幅を大きくするためである。
センサレスモータ2のマグネットロータのマグネットが形成する磁界によって各ステータコイルのインピーダンスが変化する。したがって、ステータコイルの各一端電圧を図3の検出サイクルT1〜T6のように変化させることにより、停止状態のロータ位置に応じてステータコイルの中点電圧CTMは変動する。よって、この中点電圧CTMの変化を監視することにより、停止状態のロータ位置を特定することができる。
比較器24は、中点電圧CTMの変化を、検出レベル生成回路23の検出基準電圧CTRと比較して、この比較出力CTOを出力する。各検出サイクルT1〜T6における比較出力CTOから検出パターンを得る。
この中点電圧CTMは、同様な構造のセンサレスモータであっても、個々のモータによってその電圧の発生度合いが異なる。図4.A及び図4.Bは、中点電圧CTMがロータの位置に応じて変化する状況を説明するための図である。この図4.A及び図4.Bでは、モータの2つの相をHレベルとし、他の1相をLレベルとオフとにスイッチングさせながら、そのモータのマグネットロータの位置を電気角度で0°から360°まで手動によってずらせて行ったときの中点電圧CTMの変動を示している。また、モータの2つの相をLレベルとし、他の1相をHレベルとオフとにスイッチングさせることとしても良い。
このように中点電圧CTMの変化の大きさやパターンは、ステータコイルのインダクタンス成分や抵抗成分、磁界の強さ、ロータとステータとの距離(ギャップ長)等に応じてモータによって異なることになる。
関連文献では、比較出力CTOから検出サイクルにおける所定の検出パターンを得ることができるように、モータの種類に合わせて検出基準電圧CTRのレベルを調整していた。
しかし、MDドライバやHDDドライバには多くの種類(例えば、10数種類)のセンサレスモータが採用される。したがって、用いられるモータ毎に検出基準電圧CTRのレベルを合わせ込む調整作業が、必要となっていた。
また、図4.Aのように、中点電圧CTMの最高点(最大ピーク点)が他の部分と明確に区別できる場合には、関連文献に示されているような1種類の検出論理パターンでも、検出基準電圧CTRのレベルの合わせ込みによって、検出可能である。しかし、図4.Bに示されるような中点電圧CTMの変化パターンを示すモータに対しては、関連文献に示されているような1種類の検出論理パターンでは、もはや、検出基準電圧CTRのレベルの合わせ込みのみだけでは、的確にロータ位置を検出することは困難である。
そこで、本発明では、検出論理パターン群として、同じロータ位置に対して異なった複数の論理パターンを含むように複数種類の検出論理パターンを予め用意すること、検出パターンが検出論理パターン群の内のいずれとも一致しないときには、検出基準電圧CTRを変更して、ロータ位置検出を繰り返して行うこと、としている。これにより、適用されるモータの種類に関わらず、また、モータに応じた検出基準電圧の合わせ込みを行うことなく、停止状態でのロータ位置を確実に且つ自動的に検出する。このために、検出レベル生成回路23やデコーダ26などを、本発明に特有の構成としている。
図4.A、図4.Bでは、モータの2つの相をHレベルとし、他の1相をLレベルとオフとにスイッチングさせながら、そのモータのマグネットロータの回転位置を電気角度で0°から360°まで手動によってずらせて行ったときの中点電圧CTMの変動を示した。しかし、実際には、マグネットロータを回転させるのではなく、その代わりに、図2のようにロータ位置検出用信号S1〜S6を発生させる。そのロータ位置検出用信号S1〜S6によって、図3のようにロータ位置検出用駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutを発生させている。その場合の比較出力CTOの例を、図5.A〜図5.Dに示している。
この例では、図5.Aが或る電気角(例えば、0°)での中点電圧CTMと検出基準電圧CTRとの差CTM−CTRを期間T1〜期間T6の検出パターンとして示している。図5.Aの検出パターンは、「LLLHLL」である。この検出パターンが、図5.Bでは「LLLHHL」になり、図5.Cでは「LLLHHL」になり、60°電気角が経過した図5.Dでは「LLLLHL」になる。このような電気角360°の検出パターンの変化を、検出して、ロータ位置を特定することが可能になる。
検出レベル生成回路23の具体的構成例が、図6.A及び図6.Bに示されている。まず、図6.Aの構成例について説明する。
図6.Aにおいて、抵抗31−1の一端に駆動電圧Vuoutが入力され、抵抗31−2の一端に駆動電圧Vvoutが入力され、抵抗31−3の一端に駆動電圧Vwoutが入力される。抵抗31−1〜31−3の他端は、共通接続されて差動アンプ32の非反転入力端に接続される。抵抗31−1〜31−3の他端に、仮想中性点電圧が発生する。差動アンプ32の出力端子及び反転入力端子が、直接に接続されて、ボルテージフォロアとして動作する。差動アンプ32の出力端子が、抵抗33−1とスイッチ34−1の直列回路、抵抗33−2とスイッチ34−2の直列回路、乃至抵抗33−nとスイッチ34−nの直列回路を介して比較器24の反転入力端子に接続される。この反転入力端子に入力される電圧が、検出基準電圧CTRになる。また、比較器24の反転入力端子に定電圧端子から定電流源35を介して定電流I1が流入し、比較器24の反転入力端子から定電流源36を介してグランドへ定電流I2が流出する。比較器24の非反転入力端子には中点電圧CTMが入力される。オフセット電圧調整回路が、これら抵抗33−1〜33−n、スイッチ34−1〜34−n、定電流源35、36、オフセットレベル切換回路37、オフセット方向切換回路38を含んで、形成される。
スイッチ34−1〜34−nはオフセットレベル切換回路37からの切換信号によって選択的に切り換えられる。また、定電流源35、36は、オフセット方向切換回路38からの切換信号によって切り換えられる。定電流I1、I2は同じ大きさで良いが、大きさが異なっていても良い。また、定電流源35、36は、オフセット電圧を与えないように、同時にオフにするようにしても良い。
定電流源35、36及びスイッチ34−1〜34−nを切り換えることにより、抵抗31−1〜31−3の他端に発生する仮想中性点電圧(即ち、ボルテージフォロアとして動作する差動アンプ32の出力電圧)に加算或いは減算するオフセット電圧のレベル及び方向が変更されるから、検出基準電圧CTRが変更される。
また、図6.Bにおいて、抵抗41−1の一端に駆動電圧Vuoutが入力され、抵抗41−2の一端に駆動電圧Vvoutが入力され、抵抗41−3の一端に駆動電圧Vwoutが入力される。抵抗41−1〜41−3の他端に、仮想中性点電圧が発生する。抵抗41−1〜41−3の他端は、共通接続されて比較器24の反転入力端子に接続される。共通接続された抵抗41−1〜41−3の他端には、定電圧端子から定電流源42−1とスイッチ43−1との直列回路、定電流源42−2とスイッチ43−2との直列回路、乃至定電流源42−nとスイッチ43−nとの直列回路を介して電流I1が流入する。また、共通接続された抵抗41−1〜41−3の他端から、定電流源44−1とスイッチ45−1との直列回路、定電流源44−2とスイッチ45−2との直列回路、乃至定電流源44−nとスイッチ45−nとの直列回路を介して電流I2がグランドへ流出する。この反転入力端子に入力される電圧が、検出基準電圧CTRになる。比較器24の非反転入力端子には中点電圧CTMが入力される。オフセット電圧調整回路が、これら定電流源42−1〜42−n、スイッチ43−1〜43−n、スイッチ45−1〜45−n、定電流源44−1〜44−n、オフセットレベル切換回路46、オフセット方向切換回路47を含んで、形成される。
スイッチ43−1〜43−n及び45−1〜45−nはオフセットレベル切換回路46及びオフセット方向切換回路47からの切換信号によって選択的に切り換えられる。スイッチ43−1〜43−n及び45−1〜45−nを切り換えることにより電流の大きさ及び方向が調整できるから、抵抗41−1〜41−3の他端に発生する検出基準電圧CTRが変更される。電流I1、I2は同じ大きさで良いが、大きさが異なっていても良い。また、オフセット電圧を与えないように、スイッチ43−1〜43−n及び45−1〜45−nを同時にオフにするようにしても良い。
図7に、ロータ位置検出用信号S1〜S6と同期して切り換えられる検出基準電圧CTRの変更例を示している。図7では、2つの検出サイクル毎にオフセット電圧のレベルが切り換えられる。そのレベルの切り換えタイミングは、検出レベル切換信号CK5により決定される。
第1検出サイクルでは、期間T1、T3、T5において2つの相がHレベルで、他の1相がLレベルとオフとのスイッチングであるから、検出基準電圧CTRは2・VCC/3にオフセット電圧を加算した電圧とされる。また、期間T2、T4、T6において2つの相がLレベルで、他の1相がHレベルとオフとのスイッチングであるから、検出基準電圧CTRはVCC/3からオフセット電圧を減算した電圧とされる。つまり、期間切り換えタイミング信号CK3と同期して、定電流源35、36が交互に切り換えられている。
第2検出サイクルでは、各期間T1〜T6でオフセット電圧の極性が第1サイクルとは逆にされている。即ち、期間T1、T3、T5では、検出基準電圧CTRは2・VCC/3からオフセット電圧を減算した電圧とされる。また、期間T2、T4、T6では、検出基準電圧CTRはVCC/3にオフセット電圧を加算した電圧とされる。つまり、期間切り換えタイミング信号CK3と同期して、定電流源35、36が第1検出サイクルとは逆に交互に切り換えられている。第1検出サイクルと、第2検出サイクルの切換は、検出サイクル信号CK4により、判別される。
第3検出サイクルでは、検出レベル切換信号CK5によりオフセット電圧のレベルが切り換えられる。その後、第1、第2検出サイクルと同じようにして、検出基準電圧CTRが切り換えられていく。
この検出サイクルの更新は、検出パターンが検出論理パターン群のうちの1つの検出論理パターンと一致した段階で中止することがよい。また、オフセット電圧のレベル、方向の全ての組み合わせでの検出サイクルが終わったときに終了するようにしても良い。
レジスタ25は、比較器24からの比較出力CTOを、レジスト指令信号CK2のタイミングで読み込んで記憶していく。そして、各検出サイクルの終了毎に検出サイクル信号CK4に同期して、記憶している比較出力CTOを検出パターンR1〜R6として、デコーダ26に出力する。
デコーダ26内の論理検出テーブル26Aには、各種のセンサレスモータに適合するように設定されている、検出論理パターン群が記憶されている。
図8は、論理検出テーブル26Aに予め用意されている検出論理パターン群の検出論理パターンを、考えやすい形式で示している。図8では、検出論理パターン1〜検出論理パターン4で検出論理パターン群を構成している。検出論理パターン1〜検出論理パターン4において、Pos.1〜Pos.12は、電気角360°を12等分した各ロータ位置を示している。この図8からも判るように、各ロータ位置に対応する検出論理パターンが複数、この例では4つ用意されている。例えば、ロータ位置Pos.1についてみると、「LHHLLL」、「LHHLLL」、「HHHHLL」、「HHHHLL」である。ロータ位置Pos.1において、検出論理パターン1〜4のいずれに該当しても、同じロータ位置を示すものであるから起動論理Y1,Y2,Y3は、いずれも同じ、「H、L、M」である。なお、「H、L、M」は、U相が高レベル、V相が低レベル、W相が開放状態、であることを示している。他の起動論理Y1〜Y3も同様である。
図9が実際の検出論理パターン群である。各検出サイクルにおける期間T1〜期間T6のうち、期間T1、T3、T5と期間T2、T4、T6とは、その電圧レベルが逆転している。したがって、比較出力CTOも、期間T1、T3、T5と期間T2、T4、T6とでは逆になる。図9では、期間T1、T3、T5の論理を図8と逆にしたものとなる。即ち、期間T1、T3、T5においては、図8のHレベルを図9ではLレベルにし、図8のLレベルを図9ではHレベルにしている。
検出パターン比較回路26Bは、レジスタ25からの検出パターンR1〜R6を、論理検出テーブル26Aの検出論理パターン群と比較する。検出パターンR1〜R6が検出論理パターン群のうちの1つの検出論理パターンと一致したときに、パターン一致信号C1と、一致した検出論理パターンP1を出力する。
FF回路26Cは、パターン一致信号C1が入力されるとセットされ、出力端子Qからモードセレクト信号SELを出力する。このモードセレクト信号SELは、モードセレクタ回路11に入力されて、それまでのロータ位置検出用信号S1〜S6の出力状態から、ドライブ信号MTX1〜MTX6を出力するように切り換える。このモードセレクト信号SELが出力されたときは、ロータ位置が決定されたことを意味するから、モードセレクト信号SELによってロータ位置検出回路20の動作を停止させることがよい。
また、論理変換回路26Dはモードセレクト信号SELが入力されて、その時点で供給されている論理検出パターンP1を起動論理Y1〜Y3に変換する。
プリセット回路27は、論理変換回路26Dから出力された起動論理Y1〜Y3をドライブ波形生成回路14に供給する。なお、PRはプリセット信号であり、このプリセット信号PRがプリセット回路27に入力されたときには、所定の起動論理Y1〜Y3を出力する。
次に、以上のように構成されるモータ駆動装置の動作について、図10のフローチャートも参照して、説明する。
センサレスモータ2が停止している状態で、ステップS101でマグネットロータの位置検出がスタートすると、モータ起動命令信号STがロータ位置検出回路20に供給されて、位置検出動作が開始される。
モータ起動命令信号STによって、クロック発生回路21が発振を開始し、図2のように第1〜第5クロックCK1〜CK5を発生する。図2の第1検出サイクルにおいて、ロータ位置検出用信号S1〜S6が、各期間T1〜T6毎に、ドライブスイッチ回路1に供給され、パワートランジスタQ1〜Q6をスイッチングする。これにより、モータ2のステータコイルLu、Lv、Lwに図3に示されるようなモータ位置検出用駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutが印加される。
このモータ位置検出用駆動電圧Vuout、Vvout、Vwoutの印加により、ロータ位置に応じて中点電圧CTMが発生される。一方、第1検出サイクルにおいて、図7に示されるような検出基準電圧CTRが発生されている。これら中点電圧CTMと検出基準電圧CTRとが比較器24で期間T1〜T6毎に比較されて、その比較出力CTOがレジスト指令信号CK2のタイミングでレジスタ25に順次取り込まれる。このレジスタ25への取り込みタイミングは、各期間T1〜T6中の任意の時点でよく、好ましくは中点電圧CTMが安定して発生される時点に設定される。
レジスタ25に第1検出サイクル分の比較出力CTOが取り込まれると、ステップS102で、レジスタ25から第1検出サイクル分の比較出力CTOが検出パターンR1〜R6として、デコーダ26の検出パターン比較回路26Bに供給される。
ステップS103で、その検出パターンR1〜R6が論理検出テーブル26Aの検出論理パターン群のうちのいずれかの論理検出パターンと一致するかどうかを検出パターン比較回路26Bで照合する。
この照合の結果、その検出パターンR1〜R6が検出論理パターン群のうちのいずれの論理検出パターンとも一致しない(即ち、不一致)場合には、パターン一致信号C1及び一致した検出論理パターンP1は出力されない。そして、第2検出サイクルに入る。
第2検出サイクルでは、ステップS104において、検出基準電圧CTRを、第1検出サイクルでの検出基準電圧CTRと異ならせる。検出基準電圧CTRを異ならせる例として、図7に示されるように、オフセット電圧の極性を各期間T1乃至T6において逆にすることができる。この場合にはオフセットレベルは一定で極性のみを逆にすれば良い。また、他の例として、オフセット電圧の極性は同じでそのオフセットレベルを異ならせる。つまり、オフセットレベルのみ切り換えていってもよい。
このように第2検出サイクルでは、検出基準電圧CTRを異ならせて、再度ステップS102で検出パターンR1〜R6を得て、ステップS103で再度検出結果を照合する。
照合の結果が一致しない場合には、第3検出サイクルに入り、同様にステップS104、S102、S103を繰り返す。このように、検出基準電圧CTRを変更して、検出サイクルを繰り返す。この場合の検出基準電圧CTRは、2つの検出サイクル毎にオフセットレベルを変更し、その2つの検出サイクルの奇数番目の検出サイクルと偶数番目の検出サイクルとでオフセット電圧の極性を逆にする。また、オフセット電圧を検出サイクル毎に順次大きくし、或いは順次小さくするようにして、検出基準電圧CTRを変更しても良い。
ステップS103での照合の結果、その検出パターンR1〜R6が検出論理パターン群のうちのいずれかの論理検出パターンと一致した場合には、検出パターン比較回路26Bからパターン一致信号C1及び一致した検出論理パターンP1が出力される。
パターン一致信号C1によってFF回路26Cがセットされ、モードセレクト信号SELが出力される。このモードセレクト信号SELはモードセレクト回路11を切り換えて、モードセレクト回路11からロータ位置検出用信号S1〜S6に代えて、ドライブ信号MTX1〜MTX6を出力できるようにする。
一致した検出論理パターンP1が論理変換回路26Dで対応する起動論理Y1〜Y3に変換される。起動論理Y1〜Y3はプリセット回路27を介してドライブ波形生成回路14に供給される。
このように、本発明のモータ駆動装置は、照合の結果が一致しない場合には、検出基準電圧CTRを変更して、ロータ位置検出用信号を発生させロータ位置検出を繰り返して行う。また、予め用意されている検出論理パターン群は、同じロータ位置に対して異なった複数の論理パターンを含むように形成されている。したがって、適用されるモータの種類が異なっていても、モータに応じた検出基準電圧の合わせ込みを行う必要が無く、停止状態でのロータ位置を確実に検出することができる。また、電気機器の電源電圧VCCはその電源によっては電圧低下(減電)したり、電圧上昇(過電)することがあるが、このような減電時や過電時にも同様に安定してロータ位置を決定できる。したがって、共通のモータ駆動装置によって、外部からの検出基準電圧の合わせ込みを行う必要が無く、モータの種類や電源電圧に依らずに、各種モータを安定して起動することができる。
なお、1回の検出サイクルに要する時間は、数msec(例、約5msec)であるから、検出サイクルを何回か繰り返したとしても実用的な時間内にロータ位置を検出することができる。
なお、デコーダ26において、検出パターンが一致したときにのみ、その一致した検出論理パターンP1を出力しても良く、また、検出パターンR1〜R6を毎回出力しモードセレクト信号SELが出力されたときに起動論理への論理変換を行うようにしてもよい。
また、モードセレクト信号SELが出力されたときに、ロータ位置検出回路20を停止させるようにすることがよい。これにより、無駄な電力消費を削減できる。
また、本発明のモータ駆動装置では、論理パターンが一致するまで、検出基準電圧CTRを変更しつつ検出サイクルを繰り返すから、通常はいずれかの検出サイクルで一致する論理パターンが得られる。ただ、何らかの理由で所定回数の検出サイクルを行っても一致する論理パターンが得られ無い場合には、プリセット回路27にプリセット信号PRを与えて、所定の起動論理Y1〜Y3を与えて強制的に起動することができる。
本発明のモータ駆動装置を用いたMDドライバやHDDドライバ等では、モータが逆回転方向に起動することがないので、モータ、例えばスピンドルモータの起動がスムーズに且つ速やかに行われる。また、以上の実施例では、ドライブスイッチ回路1をモータ駆動制御回路3と別の構成として示したが、これらを1つのICで構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
本発明に係るモータ駆動装置によると、MDドライバやHDDドライバ等に用いられるセンサレスモータの種類に関わらず、停止状態でのロータ位置を確実に検出して適切な起動論理を決定し、安定してモータを起動することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4.A】

【図4.B】

【図5.A】

【図5.B】

【図5.C】

【図5.D】

【図6.A】

【図6.B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサレスモータの複数のステータコイルに駆動電流を供給するドライブスイッチ回路をドライブ信号によって制御して前記センサレスモータを駆動するモータ駆動装置において、
前記センサレスモータを回転させる前に、前記複数のステータコイルの中点電圧が変動し且つ前記センサレスモータが回転しないようなロータ位置検出用駆動電圧を前記複数のステータコイルに供給するように前記ドライブスイッチ回路を制御するロータ位置検出用信号を前記ドライブスイッチ回路に出力するシーケンス回路と、
前記ロータ位置検出用駆動電圧が印加されたときの前記複数のステータコイルの中点電圧と、前記ロータ位置検出用駆動電圧に基づいて形成された検出基準電圧とを比較し、その比較結果である検出パターンが予め用意されている検出論理パターン群の内のいずれかの検出論理パターンと一致するか否かを検出するパターン一致検出回路を備え、
一致するときには、その一致した検出論理パターンが示すロータ位置に応じた起動論理を発生する一方、一致しないときには、前記検出基準電圧を変更させるとともに、前記シーケンス回路からロータ位置検出用信号を発生させて、ロータ位置検出を繰り返して行うことを特徴とする、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記ロータ位置検出用電圧は、前記ステータコイルの1相が低電位とオン・オフスイッチングで且つ前記ステータコイルの他相が高電位である状態と、前記ステータコイルの1相が高電位とオン・オフスイッチングで且つ前記ステータコイルの他相が低電位である状態とが相を順次変化させてシーケンシャルに発生されることを特徴とする、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記予め用意されている検出論理パターン群は、同じロータ位置に対して異なった複数の論理パターンを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記パターン一致検出回路は、前記複数のステータコイルに供給される前記ロータ位置検出用駆動電圧に基づいて形成される仮想中性点電圧と可変のオフセット電圧とを加算して前記検出基準電圧を得る検出レベル生成回路を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記仮想中性点電圧は、一端が各相への前記ロータ位置検出用駆動電圧が印加され、他端が共通接続された抵抗回路により形成されることを特徴とする、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記オフセット電圧は、オフセット切り換え信号によってレベル及び又は極性が切り換えられることを特徴とする、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記パターン一致検出回路は、前記中点電圧と前記検出基準電圧とを比較する比較器と、該比較器からの比較出力が順次入力され検出パターンとして記憶するレジスタと、該レジスタに記憶された検出パターンと前記予め用意されている検出論理パターン群とをパターン比較し、その比較結果に応じて、前記起動論理と、ロータ位置検出処理もしくはモータ駆動処理を指令するモードセレクト信号とを出力するデコーダを有することを特徴とする、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
センサレスモータと、このセンサレスモータを駆動する前記請求項1乃至7のいずれかに記載のモータ駆動装置とを備えることを特徴とする、電気機器。

【国際公開番号】WO2005/083876
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510384(P2006−510384)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001535
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】