説明

モータ

【課題】ブラシと整流子との摺接部分に潤滑油などの異物の侵入を妨げることができるモータを提供すること。
【解決手段】保持部15の反出力側の面には、貫通孔20を囲むように凹設された環状溝6aが形成されている。環状溝6aの径方向外周側の面は、環状溝6aの開口部になるほど回転軸8からの距離が漸増するテーパ状に形成されている。整流子9の出力側端面には軸方向に突出する環状の環状突起9bが形成されている。この環状突起9bの端部は、モータ駆動時には前述した環状溝6aに対して非接触に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、ステータとロータとを備えており、機構に対して駆動力を与える際には、これらが相対回動する。そのため、モータの出力側を閉止するエンドプレートには回転軸が突出するための貫通孔が形成されている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「電動機の軸受保持構造」、日本電装公開技報(デンソー公開技報)、日本電装株式会社(株式会社デンソー)、1996年1月15日、整理番号106−033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、回転軸の回動を許容するため、回転軸と回転軸を保持する貫通孔との間には若干のクリアランスが存在し、モータの外部に突出する回転軸が潤滑油などに接触すると、このクリアランスからモータ内部に潤滑油が侵入する。モータ内部に侵入した潤滑油がブラシと整流子との間に介在すると、ブラシ摩耗を促進させる恐れがある。また、潤滑油は、ブラシと整流子との電気的な接触の妨げにもなる。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ブラシと整流子との摺接部分に潤滑油などの異物の侵入を妨げることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、巻線が巻装されたコアと、円柱状に形成されるとともにその外周面に所定の間隔にて配設され前記巻線と電気的に接続された整流子片を有する整流子と、前記整流子及び前記コアが配設され、これらと一体に回転する回転軸と、前記回転軸を支持する軸受と、前記整流子片と摺接するブラシと、前記コアに対して磁場を与えるマグネットを内包するヨークと、前記ヨークの開口部を閉止し前記回転軸が貫通する貫通孔を有するエンドプレートと、を備えるモータであって前記エンドプレートは、その前記コアに対向する面側に、前記貫通孔を囲む環状溝を備え、前記整流子は、軸方向における前記エンドプレート側の面に前記回転軸を囲む環状突起を備え、前記環状突起は、先端が前記環状溝に収容される。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記環状溝の径方向外側の面は、開口部に向けて前記回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されている。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記整流子は、前記環状突起の径方向内側に軸方向に空気を圧送するはねを備える。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のモータにおいて、前記環状溝が形成される面上には径方向に延びる排出溝が形成され、該排出溝は前記環状溝と連通する。
【0008】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のモータにおいて、前記排出溝は、取付状態において地方向に延びるように形成されている。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5に記載のモータにおいて、前記環状突起の内周壁は、先端部に向けて前記回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されている。
【0009】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載のモータにおいて、前記エンドプレートは、樹脂製である。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7に記載のモータにおいて、前記エンドプレートの前記コアに対向する面側には、前記ブラシが収容されるブラシボックスが一体に形成されている。
【0010】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8に記載のモータにおいて、前記エンドプレートは、前記ヨークの内周面に圧入され固定される。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、貫通孔から浸入した油等はエンドプレートに形成された環状溝に流入する。また、回転軸を伝い整流子のエンドプレート側端面に付着した油等は、環状突起によって径方向への流出が妨げられる。さらに、環状突起の先端が環状溝に収容されているため、整流子に付着した潤滑油は回転軸の回転によって、エンドプレートに形成された環状溝に移動する。よって、環状溝内に油等は留まるため整流子とブラシとの摺接部に油等が付着することを妨げることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、環状溝の径方向外側の面が開口部に向けて回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されているため、環状溝の径方向に油等が誘導される。径方向に誘導された油等は、エンドプレートを伝うため軸方向に流れず、より好適に整流子とブラシとの摺接部に油等が付着することを妨げることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、整流子の軸方向エンドプレート側端面に形成されたはねによって回転軸の回転に伴い軸方向へ空気が圧送される。圧送された空気は貫通孔と軸受との間のクリアランスから浸入する油等を押し戻すため、モータ内に油等が侵入することを妨げることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、環状溝から径方向に延びる排出溝に油等が流入し、軸方向へ油等が流れない。よって、より好適に整流子とブラシとの摺接部に油等が付着することを妨げることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、エンドプレートに付着した油等は重力によって地方向に流れるため、排出溝を地方向に延ばすことによって、より好適に整流子とブラシとの摺接部に油等が付着することを妨げることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、環状突起の内周壁を先端部に向けて回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されているため、整流子の環状突起の径方向に油等が誘導される。径方向に誘導された油等は回転軸の回転により環状突起の先端から飛散し、エンドプレートに形成された環状溝に移動する。よって、より好適に整流子とブラシとの摺接部に油等が付着することを妨げることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、容易に形成することができる。また、金属製のものと比較して軽量化することができる。
請求項8に記載の発明によれば、エンドプレートとブラシボックスとが一体に形成されることによりブラシと摺接する整流子をエンドプレートに近接して配設することができる。よって、回転軸を短尺化することができる。また、新規にブラシボックスを設定する必要がないため製造工程を簡略化することができる。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、内周面に圧入固定されるため、エンドプレートが径方向に突出せず、モータを小型化することができるとともに、形状を簡略化することができる。また、ねじ等の組みつけに必要な部品が不要となり部品点数が少なくなるため、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラシと整流子との摺接部分に油等などの異物の侵入を妨げることができるモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に本実施の形態に係るモータを用いたポンプ装置1の一部断面図を示す。
ポンプ装置1は、電動機としてのモータ部2と流体を圧送するポンプ部3とから構成されている。ここで、説明の簡略化のために、図1に示したモータ部2においては、左側(ポンプ部3側)を出力側とし、右側を反出力側とする。
【0020】
図1に示すように、モータ部2は、略有底円筒状に形成されたヨークハウジング4と、ヨークハウジング4に収容されるロータ5と、ヨークハウジング4の開口部を閉止する樹脂製のエンドプレート6とを備えている。なお、ヨークハウジング4の開口部はロータ5の出力側(ポンプ部3側)に形成されている。
【0021】
ヨークハウジング4の内周面には、磁石7が固定されており、該磁石7に対向してロータ5が回転可能に支持されている。ロータ5は、回転軸8を中心に回転可能とされており、この回転軸8には整流子9と電機子10とが一体となって回転するよう固定されている。整流子9は、エンドプレート6のロータ5側に設けられたブラシ11に摺接されており、電機子10はブラシ11からの給電によって回転する。
【0022】
回転軸8は、軸方向において電機子10から反出力側に配設される反出力側軸受12と、整流子9より出力側に配設される出力側軸受13によって回転可能に支持されている。反出力側軸受12はヨークハウジング4の底部中央に形成された軸受支持部14に収容され、出力側軸受13は、エンドプレート6の中央部に配設される保持部15に保持されている。
【0023】
回転軸8の反出力側端部、すなわち、軸受支持部14には弾性部材としての皿ばね16が配設され、電機子10、整流子9、出力側軸受13及び反出力側軸受12は回転軸8と一体に出力側へ付勢されている。
【0024】
ヨークハウジング4は、その開口端部に形成された径方向外側に略垂直に広がる鍔部17を備え、その底部略中央部に反出力側軸受12を支持する軸受支持部14を備えている。軸受支持部14には皿ばね16が配設されており、該皿ばね16の弾性力により回転軸8は出力側へ付勢されている。
【0025】
また、ヨークハウジング4の開口部付近の内周には段差部18が形成されている。この段差部18から開口部側は、エンドプレート6と嵌合するエンドプレート嵌合部19となっている。エンドプレート6はエンドプレート嵌合部19に圧入されるとともに、段差部18によって挿入方向への変位が規制されヨークハウジング4に対して固定される。
【0026】
エンドプレート6は、出力側の面の略中央部には、出力側軸受13を保持する保持部15が突出形成されており、保持部15にはエンドプレート6を貫通する貫通孔20が形成されている。
【0027】
ここで、図2(a)に本発明に係る保持部15を貫通する貫通孔20周辺の拡大図を示す。また、図2(b)に同図(a)のA−A線からみた保持部15の反出力面側の平面図を示す。
【0028】
エンドプレート6の保持部15の反出力側の面には、図2(a)及び(b)に示すように、貫通孔20を囲むように軸方向に凹設された環状溝6aが形成されている。環状溝6aの径方向外周側の面6bは、環状溝6aの開口部になるほど回転軸8からの距離が漸増するテーパ状に形成されている。また、環状溝6aの地方向(図示状態において下側)の一部は、地方向に延びて凹設された排出溝6cに連通している。
【0029】
また、図1に示すように、エンドプレート6の反出力側の面には、整流子9に摺接するブラシ11を保持するブラシボックス21がエンドプレート6と一体に形成されている。エンドプレート6は樹脂から形成されており、エンドプレート6、ブラシボックス21及び保持部15が一体成形されている。ここで、ブラシ11は、ブラシボックス21に保持され、その閉口側底部に配設されたばねによって開口側すなわち整流子9側へ付勢されている。
【0030】
なお、保持部15の径方向内側の端部が形成する円は整流子9の絶縁部22の外形よりも若干小さく、出力側軸受13よりも若干大きく形成されている。また、保持部15の軸方向厚さは、出力側軸受13の軸方向厚さよりも小さくなっているため、絶縁部22が保持部15の反出力側の面に当接した状態において出力側軸受13はエンドプレート6すなわちモータ部2から出力側へ突出する。また、出力側軸受13は保持部15の径方向内側に配設されるため、出力側軸受13と保持部15とは軸方向長さにおいて重なりを持つ。
【0031】
また、エンドプレート6は、図1図示状態で貫通孔20の下側に、エンドプレート6の出力側の面から軸方向出力側に突出する態様でエンドプレート保持部23が一体に形成されている。エンドプレート保持部23には、一端がブラシ11に電気的に接続された配線兼用プレート24が埋設されている。エンドプレート6は、エンドプレート保持部23が後述するポンプハウジング25に固定された状態でポンプ装置1に対して固定される。
【0032】
なお、ヨークハウジング4の鍔部17の出力側の面と、エンドプレート6の出力側の面は略同一平面となるように形成されている。
回転軸8の一端は、エンドプレート6の貫通孔20から突出しており、その突出した部分には偏心部8aが形成されている。偏心部8aは、回転軸8と異なる中心を持つ円柱状に形成されている。また、偏心部8aには偏心軸受26が配設されている。このため、回転軸8が回転すると、偏心軸受26は偏心運動する。なお、ポンプハウジング25にはこの偏心部8aの偏心回動を許容するための回転軸収容部25aが回転軸8の突出に沿って形成されている。
【0033】
整流子9は、絶縁性樹脂などから円柱状に形成された絶縁部22と、その外周に等間隔に配設された整流子片9aによって構成されている。絶縁部22の外径はエンドプレート6に形成された貫通孔20の内周よりも若干大きくなっている。整流子9は、ブラシボックス21に保持されるブラシ11と整流子片9aが摺接するように回転軸8に固定される。すなわち、整流子9は、ヨークハウジング4の開口部の内側に形成されるエンドプレート嵌合部19に対応する軸方向位置であって、エンドプレート6の反出力面側に配設される。
【0034】
ここで、図3(a)に本発明に係る整流子9の出力側端面の概略平面図を示す。また、図3(b)に同図(a)のB−B線における概略断面図を示す。
整流子9の出力側端面には軸方向に突出する環状の環状突起9bが形成されている。環状突起9bは整流子9の出力側端面の周に沿って形成されている。また、環状突起9bの内周壁9cは先端になるほど回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されている。なお、この環状突起9bの端部は、モータ駆動時(回転軸8の回転時)には前述した環状溝6aに対して非接触に収容されている(図1参照)。また、環状突起9bの内側には複数(本実施形態では4つ)のはね9dが形成されている。このはね9dにより空気は軸方向へ圧送される。また、はね9dの内周側端部には整流子9の軸孔に沿って、径方向に凹設され軸方向に延びる空気孔9eが形成されている。回転軸8の回転にともないはね9dによって出力側へ圧送される空気は、この空気孔9eから供給される。
【0035】
ここで、図1に示すように、モータ部2単体では、皿ばね16の付勢力により偏心軸受26、出力側軸受13、整流子9、電機子10及び反出力側軸受12は回転軸と一体に出力側に付勢されているため絶縁部22はエンドプレート6に当接する。すなわち、偏心軸受26と、出力側軸受13の出力側の一部と、がモータ部2から突出し、保持部15と整流子9の絶縁部22が当接することにより軸方向の移動が妨げられる。このため、ロータ5はモータ部2に収容され、出力側軸受13は貫通孔20よりも小さな径を持つため、貫通孔20に圧入されず、容易に保持部15に挿入され組みつけられる。
【0036】
電機子10は、整流子9から反出力側に配設され、略円柱状に形成されており、その外周面には周方向に沿って等角度間隔に、径方向外側に突出するティース部10aが複数形成されている。ティース部10aは、径方向端部が周方向両側に延びる略T字形状に形成されており、巻線10bが巻装されている。
【0037】
一方、ポンプ部3は、ポンプハウジング25を備えており、ポンプハウジング25には偏心部8aの偏心運動を許容する回転軸収容部25aが回転軸8の軸方向に延びる態様で形成されている。回転軸収容部25aはポンプ部3側に向けて開口しており、出力側軸受13と嵌合する軸受支持面25bを備えている。
【0038】
軸受支持面25bは回転軸収容部25aから径方向に凹設されており、軸受支持面25bから回転軸収容部25aにかけては軸方向に垂直な面である当接面25cが形成され、出力側軸受13の出力側端面はこの当接面25cに当接している。また、軸受支持面25bから開口側はエンドプレート6の突出に応じて凹設されている。すなわち、皿ばね16によって出力側に付勢されていた回転軸8は、当接面25c及び軸受支持面25bと出力側軸受13が当接することによって反出力側に押し戻されている。回転軸8が押戻されることにより、絶縁部22がエンドプレート6から離間されるとともに出力側軸受13がポンプ部3の軸受支持面25bによって径方向の変位を規制される。
【0039】
以上のような構成によって、ポンプ部3とモータ部2はボルトによって一体に固定され、ブラシ11から電力を供給されロータ5が回転しプランジャ27が往復動され、油圧部28の体積が変化することにより流体が圧送される。
【0040】
次に、ポンプ装置1駆動時の各構成の役割について図1〜3を用いて説明する。
モータ駆動時、プランジャ27の摺動部には潤滑油が供給される。この潤滑油は回転軸8と出力側軸受13との間に存在するクリアランスからモータ部2内に浸入する。浸入した潤滑油は、エンドプレート6の環状溝内に流れ込み、さらに排出溝6cによって回転軸8すなわちロータから離間される。すなわち、環状溝6aに流れ込んだ潤滑油は、排出溝6cに流れるため、さらに整流子9から離間される。
【0041】
また、回転軸8を伝って整流子9に接触した潤滑油は、回転軸8の回転による遠心力によって径方向に流れる。径方向に流れた潤滑油は、テーパ状に形成された内周壁9cに誘導され、エンドプレート6に掲載されている環状溝6aに移動する。ここで、環状突起9bの先端部は環状溝6aに収容されているため、潤滑油は環状溝6aよりも径方向外側へ付着することなく的確に環状溝6aへ移動する。
【0042】
また、環状突起9b内に形成された空気孔9e(図2(a)または図3参照)から供給される空気は、はね9d(図2(a)または図3参照)によって空気が軸方向に圧送されるため、貫通孔20と回転軸8との間のクリアランスから浸入しようとする潤滑油を押戻す。
【0043】
上記したように、本実施形態は、以下の作用効果を有する。
(1)貫通孔20から侵入した潤滑油はエンドプレートに形成された環状溝6aに流入する。また、回転軸8を伝い整流子9のエンドプレート側端面に付着した潤滑油は回転によって径方向に流れるが、環状突起9bによって径方向すなわちブラシ11との摺接部への流出が妨げられる。さらに、環状突起9bは、非接触で環状溝6aに収容されているため、環状突起9bの先端まで誘導された潤滑油はさらにエンドプレート6に形成された環状溝6aに移動する。すなわち、整流子9から離間する。よって、例えば本実施形態のように貫通孔20に対して出力側軸受13が圧入されておらず両者の間に若干のクリアランスが存在しても、整流子とブラシとの摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。すなわち、圧入する必要がないため、製造工程を簡略化することもできる。
【0044】
(2)環状溝6aの径方向外側の面6bが開口部に向けて回転軸8からの距離が漸増するテーパ状に形成されているため、環状溝6aに流れた潤滑油は環状溝6aの径方向に誘導される。径方向に誘導された潤滑油は、エンドプレートの反出力面側を伝うため軸方向に流れず、より好適に整流子とブラシとの摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0045】
(3)整流子9の軸方向エンドプレート側の端面にはね9dが形成されているため回転軸8の回転に伴って軸方向出力側へ空気が圧送される。圧送された空気は、貫通孔20のクリアランスから浸入する潤滑油を押戻すため、モータ部2の外部から潤滑油が浸入することを抑制する。また、出力側へ圧送された空気は、整流子9側への潤滑油の流れを抑制する。すなわち、整流子とブラシとの摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0046】
(4)エンドプレート6に付着した潤滑油は重力によって地方向に流れるため、環状溝6aに流入した潤滑油は地方向に延びる排出溝6cに流入する。よって、潤滑油は軸方向へ流れず、より好適に整流子とブラシとの摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0047】
(5)環状突起9bの内周壁9cは、環状突起9bの先端部に向けて回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されているため、整流子9の環状突起9bの径方向に潤滑油が誘導される。回転軸8の回転により潤滑油は環状突起9bの先端から径方向へと飛散するが、環状突起9bの先端部は環状溝6aに収容されているため、潤滑油はエンドプレート6に形成された環状溝6aに移動する。よって、より好適に整流子とブラシとの摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0048】
(6)エンドプレート6を樹脂製とすることにより、エンドプレートを容易に形成することができる。また、金属製のものと比較して軽量化することができる。
(7)エンドプレート6とブラシボックス21とが一体に形成されることによりブラシ11と摺接する整流子9をエンドプレートに近接して配設することができる。よって、回転軸を短尺化することができる。また、新規にブラシボックスを設定する必要がないため製造工程を簡略化することができる。
【0049】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、整流子9の反出力面側端面に4つのはね9dを形成した。しかし、その個数は適宜変更することができる。また、図4に示すように、整流子9の反出力面側端面9fを単純な平面としてもよい。このような構成によれば、はね9dを形成した場合と比較して回転軸8を端尺化することができる(図3参照)。なお、このような構成としても、環状突起9bは環状溝6aに収容されているため、環状突起9bから環状溝6aへ潤滑油が移動し、整流子9とブラシ11との摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0050】
○上記実施形態では、環状溝6aの径方向外周側の面6bは、環状溝6aの開口部になるほど回転軸8から離間するテーパ状に形成されている。しかし、径方向外周側の面を単純な円筒状に形成しても良い。なお、このような構成としても環状溝に潤滑油が誘導されるため、整流子9とブラシ11との摺接部に潤滑油が付着することを妨げることができる。
【0051】
○上記実施形態では、環状突起9bの内周壁9cは、先端になるほど回転軸から離間するテーパ状に形成した。しかし、図5に示すように、環状突起9gを単純な円環状としてもよい。なお、このような構成としても整流子9の反出力側端面に付着した潤滑油は環状突起によって径方向、すなわち、ブラシとの摺接部に侵入することが妨げられる。
【0052】
○上記実施形態では、はね9dの内周側端部に整流子9の軸孔に沿って、径方向に凹設され軸方向に延びる空気孔9eが形成されている。しかし、空気孔9eの配設位置及び個数は適宜変更可能である。また、空気孔9eを形成せずとも、はね9dによって空気は軸方向出力側へ圧送される。
【0053】
○はね9dの形状及び配置は、図3(a)および(b)に示されるものに限定されない。また、はね9dは、単一方向の回転のみならず双方向回転に対応するものに適宜変更可能である。さらに、金属などから個別に形成したはねを、整流子9の反出力面側端面に配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施の形態を示す断面図。
【図2】(a)本実施の形態の一部を示す断面図、(b)同図(a)A―A線からみた平面図。
【図3】(a)本実施の形態の一部を示す概略平面図、(b)同図(a)B−B線における概略断面図。
【図4】別例を示す概略断面図。
【図5】別例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0055】
6…エンドプレート、6a…環状溝、6b…面、6c…排出溝、8…回転軸、9…整流子、9a…整流子片、9b,9g…環状突起、9c…内周壁、10b…巻線、11…ブラシ、15…保持部、20…貫通孔、21…ブラシボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻装されたコアと、
円柱状に形成されるとともにその外周面に所定の間隔にて配設され前記巻線と電気的に接続された整流子片を有する整流子と、
前記整流子及び前記コアが配設され、これらと一体に回転する回転軸と、
前記回転軸を支持する軸受と、
前記整流子片と摺接するブラシと、
前記コアに対して磁場を与えるマグネットを内包するヨークと、
前記ヨークの開口部を閉止し前記回転軸が貫通する貫通孔を有するエンドプレートと、を備えるモータであって、
前記エンドプレートは、その前記コアに対向する面側に、前記貫通孔を囲む環状溝を備え、
前記整流子は、軸方向における前記エンドプレート側の面に前記回転軸を囲む環状突起を備え、
前記環状突起は、先端が前記環状溝に収容される
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記環状溝の径方向外側の面は、開口部に向けて前記回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記整流子は、前記環状突起の径方向内側に軸方向に空気を圧送するはねを備える
ことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のモータにおいて、
前記環状溝が形成される面上には径方向に延びる排出溝が形成され、該排出溝は前記環状溝と連通する
ことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のモータにおいて、
前記排出溝は、取付状態において地方向に延びるように形成された
ことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のモータにおいて、
前記環状突起の内周壁は、先端部に向けて前記回転軸からの距離が漸増するテーパ状に形成されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のモータにおいて、
前記エンドプレートは、樹脂製である
ことを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のモータにおいて、
前記エンドプレートの前記コアに対向する面側には、前記ブラシが収容されるブラシボックスが一体に形成されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項1〜8に記載のモータにおいて、
前記エンドプレートは、前記ヨークの内周面に圧入され固定される
ことを特徴とするモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−121804(P2006−121804A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305848(P2004−305848)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】