説明

モータ

【課題】雑防用電気回路部品によるモータケースの大型化を抑制することができ、しかも、雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができるモータを提供する。
【解決手段】モータは、ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、制御回路部材が発生するノイズを除去するためのチョークコイルCとを備える。ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)は、外部コネクタ101が嵌着されるコネクタ部7eを備えるとともに、コネクタ部7eに隣接した位置にモータケースの外部においてチョークコイルCを保持するための電気回路部品保持部7fを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御回路部材を備えるモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーウインドウ装置等のモータとしては、モータ本体と、モータ本体における回転軸の回転を減速するための減速機構がギヤハウジングに収容されてなる減速部と、モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、制御回路部材が発生するノイズを除去するための雑防用電気回路部品(チョークコイルやコンデンサ等)とを備えたものがある。
【0003】
そして、このようなモータとしては、制御回路部材及び雑防用電気回路部品(コンデンサ)をギヤハウジングに収容保持させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】独国特許出願公開第10020017号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなモータでは、雑防用電気回路部品(チョークコイルやコンデンサ等)の大型化に伴ってモータケース(その一部を構成するギヤハウジング)が大型化してしまうという問題がある。又、雑防用電気回路部品の配置箇所等によっては、電気的な接続が煩雑となってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、雑防用電気回路部品によるモータケースの大型化を抑制することができ、しかも、雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための雑防用電気回路部品とを備えたモータにおいて、前記ブラシホルダは、前記モータ本体の外部において前記雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えた。
【0007】
請求項2に記載の発明では、給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、前記モータ本体の本体ハウジングに対して前記ブラシホルダを間に介して組み付けられるサブハウジングと、前記サブハウジングの内部に収容され前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための雑防用電気回路部品とを備えたモータにおいて、前記ブラシホルダは、前記本体ハウジング及び前記サブハウジングの外部において前記雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えた。
【0008】
請求項3に記載の発明では、給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、前記モータ本体の本体ハウジングに対して前記ブラシホルダを間に介して組み付けられるサブハウジングと、前記サブハウジングの内部に収容され前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための少なくとも2つの雑防用電気回路部品とを備えたモータにおいて、前記ブラシホルダは、前記本体ハウジング及び前記サブハウジングの外部に電気回路部品保持部を備え、前記少なくとも2つの雑防用電気回路部品のうち、少なくとも1つの雑防用電気回路部品は前記電気回路部品保持部に保持され、他の雑防用電気回路部品は前記制御回路部材に保持された。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記電気回路部品保持部は、弾性を有するように設定された。
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ブラシホルダは、外部コネクタが嵌着されるコネクタ部を備えた。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載のモータにおいて、前記電気回路部品保持部を、前記コネクタ部に隣接して設けた。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載のモータにおいて、前記雑防用電気回路部品を前記電気回路部品保持部に対して、前記外部コネクタが前記コネクタ部に嵌着される方向と異なる方向から組み付け可能とした。
【0011】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記雑防用電気回路部品を含めて前記ブラシホルダの少なくとも一部を被覆する被覆部を設けた。
【0012】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載のモータにおいて、前記被覆部は、前記モータ本体内部への液体の浸入を防止するためのシール材と同部材で一体成形された。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブラシホルダは、モータ本体の外部において雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えるため、雑防用電気回路部品によるモータケース(例えば、ヨーク及びギヤハウジング)の大型化を抑制することができる。しかも、雑防用電気回路部品が保持される電気回路部品保持部はブラシホルダに備えられるため、雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができる。例えば、給電用ブラシの配線と共に(同じ工程で)雑防用電気回路部品の配線を容易に配設することができる。又、例えば、雑防用電気回路部品の配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ブラシホルダは、モータ本体の本体ハウジング及びサブハウジングの外部において雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えるため、雑防用電気回路部品によるモータケース(本体ハウジング及びサブハウジングであって、例えば、ヨーク及びギヤハウジング)の大型化を抑制することができる。しかも、雑防用電気回路部品が保持される電気回路部品保持部はブラシホルダに備えられるため、雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができる。例えば、給電用ブラシの配線と共に(同じ工程で)雑防用電気回路部品の配線を容易に配設することができる。又、例えば、雑防用電気回路部品の配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、少なくとも2つの雑防用電気回路部品を備えたモータであっても、これら雑防用電気回路部品をブラシホルダ(電気回路部品保持部)と制御回路部材に対してそれぞれ配置することができる。そのため、制御回路部材が収容されるサブハウジングが極端に大型化するのを抑制することができる。しかも、少なくとも1つの雑防用電気回路部品が保持される電気回路部品保持部はブラシホルダに備えられるため、その雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができる。例えば、給電用ブラシの配線と共に(同じ工程で)雑防用電気回路部品の配線を容易に配設することができる。又、例えば、雑防用電気回路部品の配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、電気回路部品保持部は弾性を有するように設定されるため、雑防用電気回路部品の寸法ばらつきや組み付け時の(位置の)ばらつきを弾性にて吸収することができ、ひいては設計や組み付け管理を容易とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、ブラシホルダは、外部コネクタが嵌着されるコネクタ部を備えるため、コネクタ部が部品点数を増加させることがない。しかも、例えば、コネクタ部の配線を、給電用ブラシの配線及び雑防用電気回路部品の配線と共に(同じ工程で)容易に配設することができる。又、例えば、コネクタ部の配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、電気回路部品保持部はコネクタ部に隣接して設けられるため、雑防用電気回路部品の配線をコネクタ部の配線に容易に(短距離で)接続することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、雑防用電気回路部品は電気回路部品保持部に対して、外部コネクタがコネクタ部に嵌着される方向と異なる方向から組み付け可能とされるため、雑防用電気回路部品及び外部コネクタの配置スペースを容易に確保することができるとともに、雑防用電気回路部品及び外部コネクタを容易に組み付けることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、雑防用電気回路部品を含めてブラシホルダの少なくとも一部を被覆する被覆部が設けられるため、雑防用電気回路部品を強固に保持することができる。又、被覆部にて雑防用電気回路部品の防水性や絶縁性を確保することができる。
【0020】
請求項9に記載の発明によれば、被覆部は、前記モータ本体内部への液体の浸入を防止するためのシール材と同部材で一体成形されるため、製造工程や部品点数の増加を抑制しながら、モータ本体内部への液体の浸入を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、雑防用電気回路部品によるモータケースの大型化を抑制することができ、しかも、雑防用電気回路部品の電気的な接続を容易とすることができるモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を車両におけるパワーウインドウ装置のモータ1に具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、モータ1は、モータ本体2と、該モータ本体2の回転を減速して出力するための減速部3とを備えている。
【0023】
モータ本体2は、図1及び図3に示すように、扁平の略有底筒状に形成された本体ハウジングとしてのヨークハウジング(以下、単にヨークという)4と、該ヨーク4内面に固定された一対のマグネット5(図3参照)と、該ヨーク4内で回転可能に支持されるアーマチャ(電機子)6と、ブラシホルダ7と、一対のブラシ8とを備えている。
【0024】
ブラシホルダ7は、樹脂材料よりなるブラシホルダ樹脂体7aを備え、ブラシホルダ樹脂体7aは、ホルダ本体7bと、フランジ部7cと、延出部7dと、コネクタ部7eと、電気回路部品保持部7f(図4参照)とが一体形成されてなる。ホルダ本体7bは、前記ヨーク4の開口部内に略収容されるように形成されている。ホルダ本体7bの中央孔には軸受9が固定され、該軸受9にはアーマチャ6における回転軸10の先端側が回転可能に支持される。尚、回転軸10の先端はヨーク4の外部まで突出し、その突出した部分には、センサ用マグネット10aが金属プレートを介して固定されている。又、ホルダ本体7bにおけるヨーク4の内部側には給電用ブラシとしてのブラシ8が保持され、該ブラシ8は前記回転軸10に固定された整流子11に押圧接触されている。フランジ部7cは、前記ホルダ本体7bにフランジ状に延出されている。又、延出部7dは、フランジ部7cの一部からヨーク4の扁平面4a(図1参照、図1及び図3中、紙面と平行な面)に沿った一方(図1及び図3中、右方)に延出されている。
【0025】
コネクタ部7eは、前記延出部7dの先端に設けられている。コネクタ部7eは、前記扁平面4aの直交方向(図1及び図3中、紙面直交方向であって紙面奥側、図2中、紙面手前側)から外部コネクタ101(図4参照)が嵌着可能に形成されている。即ち、コネクタ部7eは、図4に示すように、前記扁平面4aの直交方向(図1及び図3中、紙面直交方向であって紙面奥側、図2中、紙面手前側)が開口した略有底四角筒状(断面コ字形状)に形成されている。
【0026】
電気回路部品保持部7fは、図4に示すように、コネクタ部7eに隣接して設けられている。詳しくは、電気回路部品保持部7fは、コネクタ部7eの外壁の一部からヨーク4の扁平面4a(図1参照、図1及び図3中、紙面と平行な面)に沿った一方(図1及び図3中、右方)に延出して形成されている。本実施の形態の電気回路部品保持部7fは、一対設けられ、それぞれ弾性を有するように設定されている。又、電気回路部品保持部7fは、それぞれ先端部に互いに離間する方向に湾曲した湾曲部7gを有する。
【0027】
又、ブラシホルダ樹脂体7aには、図3に示すように、それぞれ複数のブラシ側ターミナル12とコネクタ側ターミナル13とが一部が露出した状態で埋設されるようにインサート成形されている。ブラシ側ターミナル12は、ホルダ本体7bにおけるヨーク4の内部側から延出部7dに延びるとともに、その先端部である内部接続端子12aが延出部7dからモータ本体2の軸方向(図3中、下方向)に突出(露出)して形成されている。このブラシ側ターミナル12の基端部にはピッグテールを介して前記ブラシ8が電気的に接続される。
【0028】
コネクタ側ターミナル13は、コネクタ部7eから延出部7dに延びるとともに、その先端部である内部接続端子13aが延出部7dからモータ本体2の軸方向(図3中、下方向)に突出(露出)して形成されている。このコネクタ側ターミナル13の基端部は、コネクタ部7eにおいて露出して外部接続端子13bを形成し、コネクタ部7eに外部コネクタ101が嵌着されることで該外部コネクタ101の外部端子101aに電気的に接続されることになる。尚、前記内部接続端子12a,13aは、前記扁平面4aの直交方向(図3中、紙面直交方向)に沿って並設される。又、図3では、内部接続端子12a,13aが紙面直交方向に並設されるため、1つしか図示されない。
【0029】
又、本実施の形態のコネクタ側ターミナル13において、内部接続端子13aと外部接続端子13bとの間には、図3及び図5に示すように、雑防用端子13cが(分岐するように)形成されている。この雑防用端子13cは前記電気回路部品保持部7f側に延びるとともに、その先端部がコネクタ部7eから外部に突出(露出)して配置されている。
【0030】
そして、雑防用端子13cには、ノイズを除去するための雑防用電気回路部品としてのチョークコイルCが電気的に接続されている。このチョークコイルCは、電気回路部品保持部7f(図4参照)に保持されている。詳しくは、本実施の形態のチョークコイルCは、トロイダル方式のものであって、その中央孔に一対の電気回路部品保持部7fが(径方向内側に撓められるように)嵌入され、中央孔の内周面が一対の電気回路部品保持部7fにてそれぞれ径方向外側に付勢されることで保持されている。尚、チョークコイルCは、前記外部コネクタ101がコネクタ部7eに嵌着される方向と異なる方向(本実施の形態では直交方向)であって、ヨーク4の扁平面4a(図1参照、図1及び図3中、紙面と平行な面)に沿った一方(図1及び図3中、右方)から組み付けられる。又、電気回路部品保持部7fの湾曲部7gがチョークコイルCの内周における曲面と密着することで電気回路部品保持部7fとチョークコイルCとの抜けが抑制されている。
【0031】
又、ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)には、シール材14が設けられている。詳しくは、シール材14は、エラストマよりなる。シール材14は、図3及び図4に示すように、フランジ部7c、延出部7d、及びコネクタ部7e(開口部を除く)等を略覆うように設けられる。又、シール材14は、前記チョークコイルCを含めて(その近傍の電気回路部品保持部7fやコネクタ部7eを)被覆する被覆部14a(図3〜図5参照)を有する。又、シール材14は、図4及び図5に示すように、コネクタ部7eの開口部外縁から開口方向に略筒状(蛇腹状)に延びる連結シール部14bを有する。
【0032】
減速部3は、図1及び図3に示すように、サブハウジングとしてのギヤハウジング21と、ウォーム軸22と、ウォームホイール23と、クラッチ24と、制御回路部材25と、カバー26とを備える。尚、本実施の形態では、ヨーク4及びギヤハウジング21がモータケースを構成している。
【0033】
ギヤハウジング21は、樹脂材料よりなる。ギヤハウジング21は、固定部21aと、ウォーム収容部21bと、ホイール収容部21cと、回路収容部21dとを備える。
固定部21aは、ヨーク4の開口部に形成されたフランジ部4bと対応した形状に形成されて該フランジ部4bにネジ27にて固定され、該フランジ部4bとともに前記ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)のフランジ部7c及び延出部7dを(シール材14を介して)挟持する。尚、このようにヨーク4に対してブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7)のフランジ部7c、延出部7d及びそれらを被覆するシール材14を間に介してギヤハウジング21(固定部21a)が組み付けられるため、該部分でのモータ1(モータケース)内への液体の浸入が防止される。
【0034】
ウォーム収容部21bは、前記回転軸10の延長線上で筒状に延びて形成され、その内部にウォーム軸22を回転可能に支持する。又、ウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側には、ウォーム軸22と回転軸10とを駆動連結するクラッチ24(図3参照)が設けられている。クラッチ24は、回転軸10からの駆動力をウォーム軸22に伝達し、逆にウォーム軸22からの駆動力が回転軸10に伝達されないようウォーム軸22の回転をロックするように作動する。つまり、このクラッチ24は、負荷側から加わる力によるモータ1の回転を防止するために設けられている。
【0035】
ホイール収容部21cは、ウォーム収容部21bと直交する方向で扁平の円盤形状に形成され、その内部にウォームホイール23を回転可能に支持する。尚、ウォーム収容部21bとホイール収容部21cとはその内部が一部で連通し、該連通部分でウォーム軸22とウォームホイール23とが歯合される。又、ホイール収容部21cは、前記ウォーム収容部21bに対して前記コネクタ部7eの反対側(図1中、左側)に形成されている。又、ホイール収容部21cの扁平面21eは前記ヨーク4の扁平面4a(図1参照)に沿って形成され、ギヤハウジング21全体としては、その扁平面21eの直交方向から見た面がギヤハウジング21の扁平面ということになる。
【0036】
回路収容部21dは、前記内部接続端子12a,13aと対応した位置であって、その内部に内部接続端子12a,13aが配置されるように形成されている。詳しくは、回路収容部21dは、ウォーム収容部21bに対してホイール収容部21cの反対側であって、ウォーム収容部21bとコネクタ部7eとの間に形成されている。回路収容部21dは、その内部がウォーム収容部21bの内部におけるモータ本体2側(前記センサ用マグネット10aと対応した部分)と連通している。又、回路収容部21dには、制御回路部材25を回転軸10の軸方向に沿った方向から挿入可能とする開口部21fが形成されている。この開口部21fは、その開口方向(開口部21fと直交する方向)が回転軸10の軸方向及びその直交方向に対して傾斜するように設定されている。本実施の形態の開口部21fは、ギヤハウジング21の扁平面の直交方向から見てコネクタ部7eとウォーム収容部21bの先端側(モータ本体2の反対側)とを結ぶ傾斜した直線状に(段差の無いように)形成されている。尚、前記ブラシ側ターミナル12とコネクタ側ターミナル13の各内部接続端子12a,13aは、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置されている。そして、回路収容部21dには、制御回路部材25が略収容される。
【0037】
制御回路部材25は、図3に示すように、ベース部材31、ヒートシンク32、モールドIC33、(他の)雑防用電気回路部品としてのコンデンサ34、ホール素子35及び複数の接続端子36等を備える。ベース部材31は、樹脂材よりなり、略板状に形成されている。ベース部材31において、一方の面(図3中、左側の面)には、板状のヒートシンク32を介して略板状のモールドIC33が固定され、他方の面(図3中、右側の面)には、略円柱形状のコンデンサ34が固定されている。又、ベース部材31において、一方の面(図3中、左側の面)の前記センサ用マグネット10aと対応する位置には、ホール素子35が固定されている。又、ベース部材31において、他方の面(図3中、右側の面)の前記ブラシ側ターミナル12及びコネクタ側ターミナル13の内部接続端子12a,13aと対応する位置には、モールドIC33等に電気的に接続された複数の接続端子36が配設されている。尚、本実施の形態では、制御回路部材25が駆動回路部としてのリレーを備えず、モールドIC33がその内部に駆動回路部としてのパワーMOSFETを含んでいる。又、モールドIC33は、ホール素子35にて検出されるセンサ用マグネット10a(回転軸10)の回転速度等に応じて車両ウインドウガラスに挟み込みが発生したと判断すると、ブラシ8(モータ本体2)に逆回転電流を供給するといった、挟み込み防止制御を行う回路である。
【0038】
このように形成される制御回路部材25は、モータ本体2と減速部3とが組み付けられた状態で前記開口部21fからギヤハウジング21(回路収容部21d)内に、その一部が外部に突出するように組み付けられる。そして、このように組み付けられることで、複数の接続端子36がブラシ側ターミナル12及びコネクタ側ターミナル13の内部接続端子12a,13a(ブラシ8及びコネクタ部7e)に対してそれぞれ電気的に接続可能に(当接するように)配置される。尚、勿論、この状態で複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aと同様に、開口部21fの開口方向外側から見て露出する(見える)位置に配置される。又、勿論、この状態で複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aと同様に、ギヤハウジング21の扁平面(扁平面4a,21e)の直交方向(図3中、紙面直交方向)に沿って並設される。そして、開口部21fの開口方向外側から見て露出した複数の接続端子36は、内部接続端子12a,13aにそれぞれレーザ溶接されて電気的に接続される。
【0039】
そして、ギヤハウジング21の前記開口部21fには、制御回路部材25を組み付けた状態で、開口部21fを閉塞すべく金属製のカバー26が点かしめにて固定される。
上記のように構成されたパワーウインドウ装置のモータ1は、車両ドアのインナパネル51(図4参照)と図示しないアウタパネルの間で、インナパネル51(図4参照)に対して固定される。詳しくは、インナパネル51には、インナパネル側挿入孔51aが形成され、そのインナパネル側挿入孔51a(の周囲)に連結シール部14bの先端が密着するように、モータ1が図示しないボルト等により固定される。これにより、例えば、インナパネル51とアウタパネルとの間に液体が浸入しても、モータ1(モータケース)内への液体の浸入、及びドアトリム側への液体の浸入が防止される。
【0040】
そして、インナパネル51の裏側(即ち、反アウタパネル側であってドアトリム側)から外部コネクタ101(図4参照)が、コネクタ部7eに嵌着されることで、外部コネクタ101に設けられた外部端子101aが前記外部接続端子13bに電気的に接続される。尚、外部端子101aは、図示しない制御装置(電源装置)に接続されている。又、ウォームホイール23に連結された出力軸23a(図1参照)は、図示しないレギュレータ(セクタギヤ)に駆動連結され、該レギュレータ等を介して車両ウインドウガラスに駆動連結される。
【0041】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)は、モータ本体2の外部においてチョークコイルCを保持するための電気回路部品保持部7fを備える。よって、チョークコイルCによるモータケース(ヨーク4及びギヤハウジング21)の大型化を抑制することができる。しかも、チョークコイルCが保持される電気回路部品保持部7fはブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)に備えられるため、チョークコイルCの電気的な接続を容易とすることができる。詳しくは、ブラシ8の配線(ブラシ側ターミナル12)と共に(同じ工程で)チョークコイルCの配線(コネクタ側ターミナル13(雑防用端子13c))を容易に配設することができる。又、チョークコイルCの配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0042】
(2)電気回路部品保持部7fは弾性を有するように設定されるため、チョークコイルCの寸法ばらつきや組み付け時の(位置の)ばらつきを弾性にて吸収することができ、ひいては設計や組み付け管理を容易とすることができる。特に、本実施の形態のように、トロイダル方式のチョークコイルCは、コイルの巻き付け具合によって内径及び外径のばらつきが大きくなりやすいが、電気回路部品保持部7fが弾性を有するため、ばらつきを許容して容易に保持させることができる。
【0043】
(3)ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)は、外部コネクタ101が嵌着されるコネクタ部7eを備える。よって、コネクタ部7eが部品点数を増加させることがない。しかも、コネクタ部7eの配線(コネクタ側ターミナル13(外部接続端子13b))を、ブラシ8の配線(ブラシ側ターミナル12)及びチョークコイルCの配線(コネクタ側ターミナル13(雑防用端子13c))と共に(同じ工程で)容易に配設することができる。又、コネクタ部7eの配線の長い取り廻しを回避することができる。
【0044】
(4)電気回路部品保持部7fはコネクタ部7eに隣接して設けられるため、チョークコイルCの配線(雑防用端子13c)をコネクタ部7eの配線(外部接続端子13b)に容易に(短距離で)接続状態とすることができる。
【0045】
(5)チョークコイルCは電気回路部品保持部7fに対して、外部コネクタ101がコネクタ部7eに嵌着される方向と異なる方向(本実施の形態では直交方向)から組み付け可能とされる。よって、チョークコイルC及び外部コネクタ101の配置スペースを容易に確保することができるとともに、チョークコイルC及び外部コネクタ101を容易に組み付けることができる。
【0046】
(6)ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)には、チョークコイルCを含めて(その近傍の電気回路部品保持部7fやコネクタ部7eを)被覆する被覆部14aが設けられるため、電気回路部品保持部7fのみで保持する場合に比べて、チョークコイルCを強固に保持することができる。又、被覆部14aにてモータケース(ヨーク4及びギヤハウジング21)の外部に配置されるチョークコイルCの防水性や絶縁性を確保することができる。
【0047】
(7)被覆部14aは、モータ1(モータケース)内への液体の浸入を防止するためのシール材14と同部材で一体成形されるため、製造工程や部品点数の増加を抑制することができる。
【0048】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、電気回路部品保持部7fを、チョークコイルCの中央孔に(径方向内側に撓められるように)嵌入されるものとしたが、これに限定されず、モータ本体2(モータケース)の外部において雑防用電気回路部品(チョークコイルC)を保持することができれば、他の形状のものに変更してもよい。
【0049】
例えば、図6に示すように、変更してもよい。図6に示す電気回路部品保持部7hは、チョークコイルCの外周を挟むように保持すべく、一対設けられ、それぞれ弾性を有するように設定されている。又、電気回路部品保持部7hは、チョークコイルCの外周における曲面と密着すべく、それぞれ先端部に互いに近接する方向に湾曲した湾曲部7iを有する。このようにしても、上記実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施の形態では、電気回路部品保持部7f(7h)は、チョークコイルCを保持するものとしたが、制御回路部材(モールドIC33)が発生するノイズを除去するための他の雑防用電気回路部品を保持するものとしてもよい。例えば、上記実施の形態では、コンデンサ34を制御回路部材25に設けてギヤハウジング21内に配設したが、このコンデンサ34(雑防用電気回路部品)をブラシホルダ(ブラシホルダ樹脂体)に設けた電気回路部品保持部に(モータ本体2の外部で)保持させる構成としてもよい。尚、この場合、電気回路部品保持部の形状をコンデンサに応じて変更する必要がある。又、勿論、チョークコイル及びコンデンサを共にブラシホルダ(ブラシホルダ樹脂体)に設けた電気回路部品保持部に(モータ本体2の外部で)保持させる構成としてもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)は、外部コネクタ101が嵌着されるコネクタ部7eを備えるとしたが、例えば、コネクタ部が別体でギヤハウジングに固定されるものとして、コネクタ部7eを備えていないブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)に変更してもよい。
【0052】
・上記実施の形態では、電気回路部品保持部7f(7h)はコネクタ部7eに隣接して設けられるとしたが、これに限定されず、例えば、電気回路部品保持部をコネクタ部の反対側(回転軸及びウォーム軸を挟んで反対側)に設けてもよい。
【0053】
・上記実施の形態では、チョークコイルCは電気回路部品保持部7fに対して、外部コネクタ101がコネクタ部7eに嵌着される方向と直交する方向から組み付け可能とされるとしたが、これに限定されず、他の方向から組み付ける構造に変更してもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、ブラシホルダ7(ブラシホルダ樹脂体7a)には、チョークコイルCを含めて(その近傍の電気回路部品保持部7fやコネクタ部7eを)被覆する被覆部14aが設けられるとしたが、被覆部14aを省略してもよい。又、上記実施の形態では、被覆部14aをモータ1(モータケース)内への液体の浸入を防止するためのシール材14と同部材で一体成形したが、被覆部を別体で設けてもよく、この場合、被覆部を別の材料で形成してもよい。
【0055】
・上記実施の形態の制御回路部材25は、モータ本体2の回転駆動を制御可能なものであれば、他の構成のもの(例えば、ベース部材31が回路基板のものや、ホール素子35を有さない(ホール素子がギヤハウジングに直接固定されたもの)等)に変更してもよい。
【0056】
・上記実施の形態では、回転軸10とウォーム軸22とがクラッチ24を介して駆動連結されるとしたが、クラッチ24を省略して回転軸10とウォーム軸22とを駆動連結(一体形成)してもよい。
【0057】
・上記実施の形態では、パワーウインドウ装置に用いられるモータに具体化したが、例えば、サンルーフモータやドアクローザモータ等、他の装置用のモータに具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態におけるモータの平面図。
【図2】本実施の形態におけるモータの底面図。
【図3】本実施の形態におけるモータの平面要部断面図。
【図4】図1のA−A断面図。
【図5】本実施の形態におけるモータの側面要部断面図。
【図6】別例を説明するための断面図。
【符号の説明】
【0059】
2…モータ本体、4…ヨークハウジング(本体ハウジング)、7…ブラシホルダ、7e…コネクタ部、7f,7h…電気回路部品保持部、8…ブラシ(給電用ブラシ)、14…シール材、14a…被覆部、21…ギヤハウジング(サブハウジング)、25…制御回路部材、34…コンデンサ((他の)雑防用電気回路部品)、101…外部コネクタ、C…チョークコイル(雑防用電気回路部品)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、
前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、
前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための雑防用電気回路部品と
を備えたモータにおいて、
前記ブラシホルダは、前記モータ本体の外部において前記雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、
前記モータ本体の本体ハウジングに対して前記ブラシホルダを間に介して組み付けられるサブハウジングと、
前記サブハウジングの内部に収容され前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、
前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための雑防用電気回路部品と
を備えたモータにおいて、
前記ブラシホルダは、前記本体ハウジング及び前記サブハウジングの外部において前記雑防用電気回路部品を保持するための電気回路部品保持部を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
給電用ブラシを保持するブラシホルダを有するモータ本体と、
前記モータ本体の本体ハウジングに対して前記ブラシホルダを間に介して組み付けられるサブハウジングと、
前記サブハウジングの内部に収容され前記モータ本体の回転駆動を制御する制御回路部材と、
前記制御回路部材が発生するノイズを除去するための少なくとも2つの雑防用電気回路部品と
を備えたモータにおいて、
前記ブラシホルダは、前記本体ハウジング及び前記サブハウジングの外部に電気回路部品保持部を備え、
前記少なくとも2つの雑防用電気回路部品のうち、少なくとも1つの雑防用電気回路部品は前記電気回路部品保持部に保持され、他の雑防用電気回路部品は前記制御回路部材に保持されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記電気回路部品保持部は、弾性を有するように設定されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ブラシホルダは、外部コネクタが嵌着されるコネクタ部を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のモータにおいて、
前記電気回路部品保持部を、前記コネクタ部に隣接して設けたことを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータにおいて、
前記雑防用電気回路部品を前記電気回路部品保持部に対して、前記外部コネクタが前記コネクタ部に嵌着される方向と異なる方向から組み付け可能としたことを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記雑防用電気回路部品を含めて前記ブラシホルダの少なくとも一部を被覆する被覆部を設けたことを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のモータにおいて、
前記被覆部は、前記モータ本体内部への液体の浸入を防止するためのシール材と同部材で一体成形されたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−50725(P2006−50725A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226143(P2004−226143)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】