説明

モータ

【課題】ブラシホルダのラジアル方向の位置決めを簡単かつ確実に行うことができるモータを提供する。
【解決手段】内周面11eにマグネット13を固着した筒状のヨーク11と、このヨーク11の開口端に11c固定されたカバー20と、カバー20内に収納され、中央にコンミュテータ17が貫通する円形の貫通孔31aを形成した合成樹脂製のブラシホルダ30と、このブラシホルダの貫通孔31aを挾むように少なくとも一対形成されたブラシ収納部32,32に出没自在に収納されたブラシ34とを備えたモータ10において、ブラシホルダ30には、貫通孔31aを挾んだ位置に円環状に突出したリブ33aからなる一対の係合凹部33,33を形成し、カバー30の内面には、各係合凹部33に対向した位置に係止突起21eを形成し、各係合凹部33に各係止突起21eを嵌め込むことでカバー20に対してブラシホルダ30を位置決めした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨークの開口端にケースを介して取り付けられる合成樹脂製のブラシホルダを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータとして、図9,図10に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。このモータ1は、図10に示すように、円筒状のヨーク2と、このヨーク2の後側の開口端2aに固定されるカバーとしての金属製のリアブラケット3と、このリアブラケット3内に取り付けられる合成樹脂製のブラシホルダ4とを備えている。
【0003】
図9,図10に示すように、リアブラケット3は有底円筒状に形成されており、その内側底部3aに位置決め突起3bを一体形成してある。この位置決め突起3bはブラシホルダ4の位置決め孔4bに嵌合してある。これにより、ブラシホルダ4の周(ラジアル)方向の位置決めがなされている。このブラシホルダ4は合成樹脂により円板状に形成してあり、その内側に6つのブラシ収納部4aを放射状にかつ軸方向に延びるようにそれぞれ一体形成してある。この各ブラシ収納部4aにはブラシ5を出没自在に収納してある。
【0004】
また、図9,図10に示すように、ヨーク2の開口端2aとリアブラケット3との間には、金属製でリング板状のアース端子6を固定してある。このアース端子6には係止片6aを延設してあり、この係止片6aには嵌合孔6bを形成してある。この係止片6aの嵌合孔6bには、ブラシホルダ4の位置決め孔4bを貫通して突出したリアブラケット3の位置決め突起3bが嵌合されるようになっている。これにより、アース端子6はブラシホルダ4と共に周方向に位置決めされるようになっている。また、アース端子6の係止片6aにてブラシホルダ4の軸方向の抜け止めが行われるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−289651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のモータ1では、ブラシホルダ4のリアブラケット3の内側底部3aに形成した一箇所の位置決め突起3bに対向する位置に位置決め孔4bを形成するため、この位置決め孔4bのスペースがブラシホルダ4に必要となる。そのため、小型モータにおいて、この構造を適用することは困難なものとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、小型のモータにおいて、ブラシホルダのラジアル方向の位置決めを簡単かつ確実に行うことができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、内周面にマグネットを固着した筒状のヨークと、このヨークの開口端に固定されたケースと、このケース内に収納され、中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成した合成樹脂製のブラシホルダと、このブラシホルダの貫通孔を挾むように少なくとも一対形成されたブラシ収納部に出没自在に収納されたブラシとを備えたモータにおいて、前記ブラシホルダには、前記貫通孔を挾んだ位置に円環状に突出したリブからなる一対の係合凹部を形成し、前記ケースの内面には、前記各係合凹部に対向した位置に係止突起を形成し、前記各係合凹部に前記各係止突起を嵌め込むことで前記ケースに対して前記ブラシホルダを位置決めしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載のモータであって、前記各係合凹部を前記各ブラシ収納部の背後に対してずれた位置に形成したことを特徴とするモータ。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ブラシホルダには、貫通孔を挾んだ位置に円環状に突出したリブからなる一対の係合凹部を形成し、ケースの内面には、各係合凹部に対向した位置に係止突起を形成し、各係合凹部に各係止突起を嵌め込むことでケースに対してブラシホルダを位置決めしたことにより、合成樹脂製のブラシホルダを用いた小型モータにおいて、ブラシホルダに位置決めのための孔を設けるためのスペースを必要とせず、ブラシホルダのラジアル方向の位置決めを簡単かつ確実に行うことができる。これにより、ブラシホルダのラジアル方向のガタ付きを確実に防止することができると共に、振動、異音等の発生を確実に防止することができる。また、合成樹脂製のブラシホルダに円環状に突出したリブを設けることで、ブラシホルダの剛性を向上することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、各係合凹部を各ブラシ収納部の背後に対してずれた位置に形成したことにより、合成樹脂によるブラシホルダ成型時に、円環状に突出したリブを形成した際のブラシ収納部への収縮等の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態のモータを示す斜視図、図2は同モータの分解斜視図、図3は同モータのカバーを取り付ける前の状態をカバー側から見た斜視図、図4は同モータのカバーを取り付ける前の状態をキャップ側から見た斜視図、図5は同モータの正面図、図6は同モータのターミナルホルダ収納部の縦断面図、図7は同モータのコネクタ部の横断面図、図8は同モータに用いられるターミナルホルダの斜視図である。
【0014】
図1〜図4に示すように、モータ10は、両側が開口した金属製で円筒状のヨーク11と、このヨーク11の後側の開口端11aに加締め固定される合成樹脂製のキャップ12と、ヨーク11の前側の開口端11cに加締め固定される合成樹脂製で有底円筒状のカバー20と、これらヨーク11の前側の開口端11cとカバー20との間に挾持固定される合成樹脂製のブラシホルダ30とを備えており、例えば、車両のシートをスライドさせるシートスライド機構の駆動源として用いられるものである。
【0015】
図2に示すように、円筒状のヨーク11の内周面11eには、一対のマグネット13,13が接着剤等を介して固着されている。また、図4に示すように、キャップ12の中央には円形の貫通孔12aを形成してあり、その周りの円筒部12bの内側には図示しない軸受を配設してある。さらに、図2,図4に示すように、カバー20の中央には円形の貫通孔22aを形成してあり、その周りの円筒部22bの内側には軸受14を嵌合してある。そして、この各軸受14には、両側出力軸タイプのアーマチュア軸15の両端15a,15aを回転自在に支持してある。また、このアーマチュア軸15の両端15a,15aの各端面の中央には角穴15bをそれぞれ形成してある。この各角穴15bには図示しないシートスライド機構の棒状のケーブル等が連結されるようになっている。
【0016】
また、図2に示すように、アーマチュア軸15の一対のマグネット13,13に対向する位置には、アーマチュアコアとアーマチュアコイルから成るアーマチュア16が取り付けられている。さらに、アーマチュア軸15のヨーク11の前側の開口端11cに対向する位置には、コンミュテータ17が固定されている。このコンミュテータ17は所定数のコンミュテータ片17aを備えている。尚、図2に示すように、アーマチュア軸15の一端15aのコンミュテータ17と軸受14との間にはワッシャ18と円環状の弾性体19等を介在してある。
【0017】
図2〜図4に示すように、ヨーク11の前側の開口端11cに加締めにより固定されるカバー(ケース)20内には合成樹脂製で略円板状のブラシホルダ30が収納されるようになっている。このカバー20は、図1〜図4に示すように、ブラシホルダ30を収納する円筒壁部21と、この円筒壁部21の上部の前方に一体突出形成され、給電用の相手コネクタ50が嵌合される底壁24を有した四角筒状のコネクタ部23と、このコネクタ部23の底壁24の背面側に一体形成され、後述するターミナルホルダ40を着脱自在に収納する上面側が開口した凹状のターミナルホルダ収納部25とを有している。そして、カバー20の円筒壁部21の底壁22の中央に円形の貫通孔22aを形成してある。また、カバー20の円筒壁部21の両外側には上下各一対の段差部21a,21bを形成してある。この上下各一対の段差部21a,21bには、ヨーク11の前側の開口端11cの両側に形成された上下各一対の加締め片部11f,11gが加締められて係止されるようになっている。これにより、カバー20はブラシホルダ30を収納・挾持してヨーク11の前側の開口端11cに固定されるようになっている。
【0018】
また、図4に示すように、カバー20の円筒壁部21の内周面(内面)21cの相対向する位置にはブラシホルダ30のブラシホルダ本体31の両側部を当接させる一対の当接部21d,21dを一体突出形成してある。この一対の当接部21d,21dの貫通孔22aを挾んで上下斜めの対称位置には円柱状の係止突起(位置決め係止部)21e,21eをそれぞれ一体突出形成してある。
【0019】
図2,図3に示すように、ブラシホルダ30は、一対のブラシ34,34を保持する略合成樹脂製で円板状のブラシホルダ本体31を有している。このブラシホルダ本体31の中央には円形の貫通孔31aを形成してある。このブラシホルダ本体31の貫通孔31aを挾む相対向する位置の左右両側には、箱状の一対のブラシ収納部32,32を形成してある。この各ブラシ収納部32内にはブラシ34を出没自在に収納していて、該ブラシ34は図示しない捩りコイルバネ(付勢手段)によりコンミュテータ17のコンミュテータ片17aに接触するように押圧付勢されている。また、ブラシホルダ本体31の前面の貫通孔31aを挾んだ対称位置、即ち、カバー20の一対の係止突起21e,21eに相対向する位置には、円環状に突出したリブ33aから成る係合凹部(位置決め係合部)33を形成してある。この各係合凹部33にはカバー20の各円柱状の係止突起21eが嵌合されるようになっている。この際、円環状に突出したリブ33aは、一対のブラシ収納部32,32の背後に対してずれた位置に配置されている。
【0020】
また、図2に示すように、ブラシホルダ30のブラシホルダ本体31の上,下部の両側には各一対の突出片31b,31bをそれぞれ一体突出形成してある。この各一対の突出片31b,31bはヨーク11の前側の開口端11cとカバー20の円筒壁部21の端部21gに挾持されるようになっていると共に、該各一対の突出片31b,31bはカバー20の円筒壁部21の端部21gの各凹部21hに挾持されて位置決めされるようになっている。これにより、ブラシホルダ本体31はヨーク11の前側の開口端11cとカバー20の円筒壁部21の端部21gとの間に挾持されて固定されるようになっている。
【0021】
さらに、図2,図3,図7に示すように、ブラシホルダ30のブラシホルダ本体31の上部には、一つのターミナル35の基部35aが嵌合される端子固定孔部31cを形成してあると共に、4つのターミナル36の基部36aの丸孔が貫通されて熱溶着されるボス状の溶着部31dをそれぞれ一体突出形成してある。図5〜図7に示すように、各ターミナル35,36は、カバー20のコネクタ部23の底壁24に形成された端子貫通孔24aに貫通されて該コネクタ部23内に所定長突出している。また、図7に示すように、各ターミナル35,36の中途部35b,36bに切欠き35d,36dを有する凸部35c,36cを形成してある。そして、各ターミナル35,36の凸部35c,36cの切欠き35d,36dは、カバー20の凹状のターミナルホルダ収納部25に着脱自在に取り付けられた後述するターミナルホルダ40によりそれぞれ保持されるようになっている。
【0022】
図2,図6〜図8に示すように、ターミナルホルダ40は合成樹脂製のターミナルホルダ本体41を有している。このターミナルホルダ本体41は、カバー20のコネクタ部23の底壁24の背面側に形成された凹状のターミナルホルダ収納部25の上面開口より該凹状のターミナルホルダ収納部25内に嵌め込まれて複数のターミナル35,36をそれぞれ保持するようになっている。
【0023】
図2,図6,図8に示すように、ターミナルホルダ本体41の両側には、可撓性アーム42,42をそれぞれ一体突出形成してある。この各可撓性アーム42の中途部42aには、ターミナルホルダ収納部25の両側壁25a,25aに形成された各鉤部(係合部)25bに着脱自在に係止される係止爪(係止部)43を一体突出形成してある。また、各可撓性アーム42の先端部42bには、取り外し治具用の治具装着孔(治具装着部)44を形成してある。図5に示すように、この各可撓性アーム42の治具装着孔44は、カバー20のコネクタ部23の底壁24の両下側に形成された各開口部24b,24bから露出するようになっている。さらに、ターミナルホルダ本体41の底面41aには、各ターミナル35,36の凸部35c,36cの切欠き35d,36dに係止される棒状及びT字状の突起45,46,47をそれぞれ一体突出形成してある。
【0024】
尚、図6に示すように、カバー20のコネクタ部23の底壁24の背面側に形成された凹状のターミナルホルダ収納部25の底壁25cには、各ターミナル35,36の凸部35c,36cに当たる当接部25dをそれぞれ一体突出形成してある。また、複数のターミナル35,36のうち両側の各ターミナル35,36はモータ駆動用(電源用)であり、内側の3本の各ターミナル36,36,36はセンサ用(回転位置検出用)である。さらに、図1,図4に示すように、ヨーク11の後側の開口端11aには所定間隔毎に加締め片部11hを突出形成してある。この各加締め片部11hをキャップ12の各凹部12cに加締めることにより、ヨーク11の後側の開口端11aにキャップ12が固定されるようになっている。
【0025】
以上実施形態のモータ10によれば、図4に示すように、カバー20の円筒壁部21の内周面21cには、ブラシホルダ30のブラシホルダ本体31の両側を当接させる一対の当接部21d,21dを形成し、この一対の当接部21d,21dに円柱状の係止突起21eをそれぞれ一体突出形成し、ブラシホルダ本体31の貫通孔31aを挾んだ対称位置に各円柱状の係止突起21eが係止される係合凹部33をそれぞれ形成し、この各円柱状の係止突起21eに各係合凹部33を嵌め込んで、カバー20に対してブラシホルダ30を位置決めしたことにより、合成樹脂製のブラシホルダ30を用いた小型モータにおいてブラシホルダ30に位置決めのための孔を設けるためのスペースを必要とせず、ブラシホルダ30のラジアル方向の位置決めを簡単かつ確実に行うことができる。これにより、ブラシホルダのラジアル方向のガタ付きを確実に防止することができると共に、振動、異音等の発生を確実に防止することができる。また、合成樹脂製のブラシホルダ30に円環状に突出したリブ33aを設けることで、ブラシホルダ30の剛性を向上することができる。
【0026】
特に、カバー20の各当接部21dに円柱状の係止突起21eを一体突出形成すると共に、ブラシホルダ30のブラシホルダ本体31の両側に円環状に突出したリブ33aから成る係合凹部33をそれぞれ形成し、この各係合凹部33を各ブラシ収納部32の背後に対してずれた位置に形成したことにより、合成樹脂によるブラシホルダ30の成型時に、円環状に突出したリブ33aを形成した際のブラシ収納部32への収縮等の影響を抑制することができ、円滑なブラシ34のブラシ収納部32内での摺動を得ることができる。
【0027】
尚、本実施形態においては、ケースとしてのカバー20にブラシホルダ30を収納したが、他にカバー内に減速機構を収納することも可能であり、この場合は、ブラシホルダの収納部と減速機構との間にカバーの内面を配置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のモータを示す斜視図である。
【図2】上記モータの分解斜視図である。
【図3】上記モータのカバーを取り付ける前の状態をカバー側から見た斜視図である。
【図4】上記モータのカバーを取り付ける前の状態をキャップ側から見た斜視図である。
【図5】上記モータの正面図である。
【図6】上記モータのターミナルホルダ収納部の縦断面図である。
【図7】上記モータのコネクタ部の横断面図である。
【図8】上記モータに用いられるターミナルホルダの斜視図である。
【図9】従来のモータのブラシホルダをコンミュテータ側から見た側面図である。
【図10】図9中X−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 モータ
11 ヨーク
11c 開口端
11e 内周面
13 マグネット
17 コンミュテータ
20 カバー(ケース)
21c 内周面(内面)
21d,21d 一対の当接部
21e 円柱状の係止突起(位置決め係止部)
30 ブラシホルダ
31a 貫通孔
32,32 一対のブラシ収納部
33 係合凹部(位置決め係合部)
33a 円環状のリブ
34 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面にマグネットを固着した筒状のヨークと、このヨークの開口端に固定されたケースと、このケース内に収納され、中央にコンミュテータが貫通する円形の貫通孔を形成した合成樹脂製のブラシホルダと、このブラシホルダの貫通孔を挾むように少なくとも一対形成されたブラシ収納部に出没自在に収納されたブラシとを備えたモータにおいて、
前記ブラシホルダには、前記貫通孔を挾んだ位置に円環状に突出したリブからなる一対の係合凹部を形成し、前記ケースの内面には、前記各係合凹部に対向した位置に係止突起を形成し、前記各係合凹部に前記各係止突起を嵌め込むことで前記ケースに対して前記ブラシホルダを位置決めしたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1記載のモータであって、
前記各係合凹部を前記各ブラシ収納部の背後に対してずれた位置に形成したことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−167531(P2008−167531A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352087(P2006−352087)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】