説明

モールド検査方法およびモールド検査装置

【目的】本発明は、パターンを転写するモールド上に作成されたパターンを検査するモールド検査方法およびモールド検査装置に関し、微細寸法のモールド(押し型)上のパターンの検査をする新たな方法を提供し、しかも、極めて短時間に微細寸法のモールド上のパターンを検査することを目的とする。
【構成】モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成するステップと、生成された拡大画像をもとにモールド上に作成されたパターンを検査するステップとを有するモールド検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンを転写するモールド上に作成されたパターンを検査するモールド検査方法およびモールド検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製作に際し、各種の回路パターンの転写が利用される。光を透過するマスク上に作成された親パターンを、光感光剤を塗布したウエハに照射し現像することによりウエハ上に回路パターンを転写するリソグラフィー技術がある。半導体デバイスの高性能化に伴い、回路パターンが微細化し最小パターン寸法が50nmを切るまでに非常に小さくなっている。さらに近い将来には最小寸法が30nmを下回るほど小さくなると予想されている。光を利用する転写にはいろいろな技術的因難が伴い、さらなる微細化が実現できるか疑問視されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近このような微細パターンの転写の1つにナノインプリントと呼ばれる技術が導入されると予測されている。これは微細な寸法パターンを石英製の押し型上に作成し、これを押し型にして転写する技術である。しかしこのような微細寸法では従来の検査方法が利用できず、この押し型上のパターン(原パターン)を検査する手段がなかった。
【0004】
従来の光波長の限界を超える対象の検査には走査型電子顕微鏡(SEM)が利用できると考えられる。しかしSEMは十分な分解能を有するが、画像取得に時間がかかりすぎて実用的ではなかった。また、SEMでは使用する電子ビームの直径を小さくすれば分解能は高くなるが、その反対に1画像の取得の面走査の時間が増加する。たとえば30nmのパターン画像のために仮に分解能を10nm(画素サイズ5nm)、走査速度40Mpix/secとして,20mm角のパターン全体(1.6×1013pix)を画像化するためには111時間かかる。また高速化のためにはビーム強度を増やす必要があるが、これは検査対象への帯電や損傷によって限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような微細寸法の押し型を検査する新たな方法および装置を提供することを目的とし、
(1)検査対象のモールド・パターンを「転写板」に転写する。転写板の表面にあらかじめ光電子放出効率の高い物質の被膜が形成されている。モールド・パターンが忠実に
転写できるように転写板の表面は滑らかな平面である。転写被膜の材料は光電子放出効率の小さい物質を使用する。したがって現像後の転写板には光電子放出効率の大きい物質の被膜の上に光電子放出効率の小さい物質のパターン層が形成されている(逆にしてもよい)。
【0006】
(2)現像後の転写板を「電子画像装置」などの画像生成装置に装填し、電子画像を取得する。
【0007】
(3)得られた電子画像をモールド・パターンの設計データ、あるいは別に取得された類似画像と比較し、検査する。
【0008】
そのために、本発明は、パターンを転写する押し型(「モールド」という)上に作成されたパターンを検査するモールド検査方法において、モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成するステップと、生成された拡大画像をもとにモールド上に作成されたパターンを検査するステップとを有する。
【0009】
この際、転写板は、モールド上に作成されたパターンを、平坦な当該転写板に押下して当該押下した部分を電子放出を阻害する被膜あるいは電子放出の小さい被膜、または電子放出の大きい被膜を形成し、パターンの押下された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせるようにしている。
【0010】
また、転写板は、転写板上に均一な硬化性被膜を塗布してその上から前記モールドを押下した状態で硬化源を照射あるいは加熱あるいは所定時間経過などして被膜を硬化させた後、モールドを取り去ってパターンの転写された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせるようにしている。
【0011】
また、転写板は、予め表面に電子放出の大きいあるいは小さい被膜を形成するようにしている。
【0012】
また、転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成する際に、転写板を一定方向に連続移動あるいはステップ移動に同期し、拡大電子画像を遅延型ライン素子を用いて連続移動あるいはステップ移動の方向に転送し蓄積して拡大画像を生成するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成し、生成された拡大画像をもとにモールド上に作成されたパターンを検査することにより、微細寸法のモールド(押し型)上のパターンの検査をする新たな方法を提供し、しかも、極めて短時間に微細寸法のモールド上のパターンを検査することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成し、生成された拡大画像をもとにモールド上に作成されたパターンを検査し、極めて短時間に微細寸法のモールド上のパターンの検査を実現した。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明のシステム構成図(その1)を示す。
図1において、検出器1は、カメラ2内に配置された拡大電子画像をデジタルの拡大画像に変換する検出器であって、例えばCCD撮像素子である。
【0016】
カメラ2は、拡大電子画像をデジタルの拡大画像に変換するものであって、上述した検出器1などを備えたものである。
【0017】
電子カラム3は、電子光学系であって、電子の通路を真空に排気したものであり、転写板6から放出された電子を、高電圧で引き出して拡大した拡大電子画像を生成するためのものである。
【0018】
レンズ(2)4、レンズ(1)5は、転写板6から放出された電子を、高電圧で引き出して拡大電子画像を生成するものである。前段のレンズ(1)5は、先頭(転写板6に面した部分)に正の高電圧を印加(あるいは逆に転写板6に負の高電圧を印加(図1では当該後者の構造を採用)し、転写板6が励起されたときに放出された電子を高電圧で引き出して拡大電子画像を生成するレンズである。
【0019】
転写板(試料)6は、検査対象のモールド(押し型)上のパターンを転写し、パターンの部分とそれ以外の部分との電子放出効率を異ならせたものである(図6から図11参照)。
【0020】
光源7は、励起光8(短波長の光(例えば紫外線))を発生するものである。
励起光8は、転写板(試料)6の表面を照射し、当該転写板6から光電子を放出させるものである。転写板6上には、検査対象のモールド上のパターンに対応した部分とそれ以外の部分とが異なる電子放出効率の被膜で形成されているので、励起光8を照射することで、パターン部分とそれ以外の部分とで光電子の放出割合がことなるように励起することが可能である。
【0021】
試料台9は、転写板(試料)6を装着する台である。
絶縁柱10は、転写板6を装着した試料台9を電気的に絶縁し、当該転写板6にここでは負の高電圧を印加し、転写板6から放出された光電子を、レンズ(1)5(接地電位にある)の方向に引き出させて電子拡大画像を生成させるためのものである。
【0022】
移動ステージ11は、試料台9に転写板(試料)6を装着して高精度にX方向およびY方向に移動させるものであって、ここでは、図示外の光干渉計でX方向、Y方向に高精度に座標測定しつつ移動可能なステージである。
【0023】
試料交換機構12は、転写板(試料)6を交換するものであって、当該転写板(試料)6を格納した真空チャンバ13内の真空を高真空に保持したまま試料交換する、いわゆる予備排気室を備えた試料交換機構である。当該試料交換機構12を用いて、真空外から転写板6を図示の状態にセットしたり、逆に図示の状態から真空外に短時間に、試料室内を大気圧にすることなく転写板6を交換するためのものである。
【0024】
真空チャンバ13は、転写板6、試料台9、絶縁柱10、移動ステージ11などを真空中に保持する部屋である。
【0025】
画像装置・記憶装置21は、検出器1で検出・変換したデジタルの拡大画像を記憶する装置である。
【0026】
電子光学系制御部22は、電子光学系を制御し、転写板6から放出された電子を引き出して拡大した拡大電子画像を生成するものであって、転写板6に印加する負の高電圧、レンズ(1)5、レンズ(2)4、検出器1、更に、図示外の偏向走査系などを制御し、焦点のあった綺麗な拡大画像を生成するための各種制御を行うものである。
【0027】
ステージ制御部23は、移動ステージ11を制御するものであって、図示外の光干渉計をもとに移動ステージ11を高精度にX方向、Y方向に制御するものである。
【0028】
励起光電源24は、光源7に所定電圧などを印加し、励起光8を発生させて転写板6に照射し、励起して光電子を放出させるためのものである。
【0029】
試料搬送制御部25は、転写板(試料)6を真空外から図示の真空内の位置に図示外のロボットを制御して搬送したり、真空内の図示の位置から真空外のカセットに搬送したりなどするものである。
【0030】
真空排気制御部26は、真空チャンバ13、電子カラム3などの真空排気を制御するものである。
【0031】
コンピュータ27は、プログラムに従い各種処理を実行するものであって、ここでは、座標系決定手段271、画像形成手段272、ステージ制御手段273などから構成されるものである。
【0032】
座標系決定手段271は、試料台9に装着した転写板(試料)6上の基準マークをもとに当該試料台9に装着した転写板6の座標系と、移動ステージ11の座標系との対応関係を決定するものである。対応関係を決定した後は、転写板6上のパターンの座標(設計データベース32のパターンの座標)から、移動ステージ11の座標系に変換し、当該変換後の移動ステージ11の座標系に従い所望の位置に高精度に転写板6を位置付け、当該位置の拡大画像を生成することが可能となる。
【0033】
画像形成手段272は、転写板6上のパターンの拡大画像を生成するものであって、当該転写板6を所定幅で領域分割し(図12の(b)参照)、各領域毎に拡大画像を生成し、画像装置・記憶装置21に転送して記憶させるものである。これにより、転写板6上のパターンが多数の領域に分割された各領域について、拡大画像が画像装置・記憶装置21に自動的に転送して記憶されることとなる。
【0034】
ステージ制御手段273は、移動ステージ11を画像形成手段272で分割された各位置に位置付けたり、更に、時間遅延積分型ライン検出器1で拡大画像を生成するときには所定方向に連続あるいはステップで移動ステージ11を順次同期して移動制御するものである。
【0035】
比較照合コンピュータ31は、画像装置・記憶装置21に記憶された転写板6の拡大画像と、設計データベース32のモールド上のパターン(あるいは画像データベース33中の類似画像)とを照合して比較し、検査するものであって、検査手段311などから構成されるものである。
【0036】
検査手段311は、転写板6の拡大画像と、モールドの設計データベース32中の該当領域のパターン(あるいは画像データベース33中の類似画像)とを比較し、パターンの欠陥、寸法などを検査するものである。
【0037】
設計データベース32は、モールド上に形成するパターンの設計データ(CADデータ)を検索し易く格納したものである。
【0038】
画像データベース32は、各種画像データを格納したものである。
次に、図1の構成の概略の動作を説明する。
【0039】
図1において、平面内を移動できる移動ステージ11の上に絶縁柱10で周囲より絶縁した試料台9に試料交換機構12を介して転写板(試料)6を装着する。転写板(試料)6の表面に対向する電子レンズ(1)5を有する電子カラム3と、電子カラム3と干渉しない位置に転写板(試料)6を照射する励起光源7および励起光8の通路が配置されている。励起光8は紫外光、あるいはX線が望ましい。
【0040】
励起光8で照射された試料面から光電子が放出する。図示してはいないが、外部電源より供給する電圧によって転写板6は絶縁された試料台9と共通の負電位に保たれている。この負電位によって転写板6の表面と電子カラム底との間に生じる電場により該光電子は加速されて電子レンズ(1)5の電界内(あるいは磁界内)に入る。該光電子はさらにレンズ(2)4を通過し検出器1に達する。ここでレンズ5とレンズ4は共働して電子に対する拡大結像系を構成している。この拡大結像系の働きによって転写板6の表面の像(電子の放出密度分布)が検出器1の検出面に結像する。
【0041】
検出器1は2次元型の検出器であって、検出した拡大された放出密度分布を2次元画像として出力する。
【0042】
転写板6は平らな基板の上に光電子発生のための光電膜を形成したもので、インプリント装置(図12の(c)参照)を使って検査対象のモールド上のパターンを膜上に転写する。モールド上のパターンには通常アライメント(位置合わせ)用の基準マークが含まれている。このマークは検査の場合にも光学式位置合わせ顕微鏡(図示していない)などを使って基準マークの位置を検出することにより最初の位置合わせ(座標系の決定)に利用する。
【0043】
ここで、必要とする画像分解能をδとし、拡大結像系の倍率Mとするとき検出器1の画素サイズhはその1/2以下でなければならないから
(1/2)Mδ=h
したがって、像倍率はM=2h/∂となる。
【0044】
また、FOV(視野サイズ)は検出器1のサイズで決まり、m×m画素とすると
FOV=mh/M
例としてδ=20nm,h=8μm,m=4000とするとM=800,FOV=40μmとなる。
【0045】
転写板(試料)6の検査領域を仮に20mm角とすると、全域を走査するには40μm角の画像を25万枚撮影することになり、約35時間を要すると予想される。
【0046】
ここで電子の放出密度分布は、モールド上のパターンに対応する低放出率部分とそれ以外の高放出率部分との2つのレベルからなる。したがってパターンを認識するためには2次元放出率分布を適切な闇値によって2値化すればよい。
【0047】
検出した画像の1ピクセルあたりの検出電子数をNとし、また1ピクセル相当の試料面
の長さをdとすれば、(電子カラム3内での電子の損失はないものとして)転写板(試料)6面での放出電子密度ρは
ρ=N/d
で与えられる。1画像取得時問をtとすれば、電流密度ρは、
ρ=1.6×10−19N/(td
となる。
【0048】
検出器1の画素数をm×m、画素サイズをhとすると検出電流iは、
i=1.6×10−19N(mh)/(td
=1.6×10−19N(mh/d)/t
となる。これは転写板(試料)6の面での放出電流と考えてよいから、
N=100、d=10nm、m=4000、h=8μm、t=0.01secとすれば、試料面の放出電流密度は1600μA/cmが必要である。
【0049】
この電子放出を得るために実施例では光励起による光電子放出を応用している。励起光
は転写板(試料)6の面に斜めに光源7から照射される。光電子放出の効率は高いほうがよいので、励起光8には紫外線やX線が望ましい。
【0050】
光電子放出は、パイアルカリ光電面(Sb−K−Cs,Sb−Rb−Cs)など300−500nmの波長域で高い量子効率を示す材料が知られており、紫外光ではCsl,CsTeなどさらに高い量子効率を示す材料がある。
【0051】
マルチアルカリ光電面の場合の光電感度を70mA/W(量子効率20%)とすると、励起光23mW/cmが必要である。照射域の40μm角に収束することを考慮すると、この光強度の照射は十分可能である。
【0052】
紫外光を利用する場合は量子効率が高いので画像取得時間を短縮できる。
転写板6が十分薄くできる場合、励起光は転写板6の裏面から照射してもよい(図3)。
【0053】
次に、図2に別の実施例を示す。図1の実施例に対して装置の処理速度を上げるために
検出器1に時間遅延積分型を使用した例である。この型の検出器1はm個の画素列をn列並行に並べた配列を有し、nの方向に検出信号を転送しながら積分を行う機能を持っている。信号の転送と積分はステージ制御部23からの同期信号15により同期して行われる。この場合のステージ移動は連続移動とステップ移動の組み合わせである。図1の実施例に比較しステージのステップ移動の回数が少なくなるので、時間が大幅に短縮される。
【0054】
前の実施例と同様の式で
δ=10nm,h=8μm,m=4000とするとM=1600,FOV=20μm.
この場合、前例に比べて分解能を1/2としているにもかかわらず処理速度(画像取得)は1時間で済む。
【0055】
また、N=16、d=10nm、m=4000、h=8μm、t=0.01secとすれば、試料面の放出電流密度は400μA/cmとなり、1/4で十分である。
【0056】
以下順次詳細に説明する。
図2は、本発明のシステム構成図(その2)を示す。図2は、検出器1として、上述した遅延積分型を用いた場合のシステム構成図である。
【0057】
図2において、ステージ制御器14は、移動ステージ11の移動を高精度の制御(X方向、Y方向に制御)するものであって、例えば光干渉計を用いてX方向、Y方向を高精度に測長しつつ移動させるものである。ここでは、ステージ制御器14からの移動ステージ11の連続移動あるいはステップ移動に同期した同期信号15を、遅延積分型の検出器1に入力し、当該検出器1内で転写板(試料)6の一定方向への移動に同期し、拡大電子画像の移動方向に転送するという公知の制御により、遅延積分型の検出器(CCD)1により高感度かつ高S/N比で拡大電子画像を当該検出器1から出力することが可能となる。他の構成は、図1と同一であるので説明を省略する。
【0058】
図3は、本発明のシステム構成図(要部、その3)を示す。図3は、図1、図2では、転写板(試料)6に、励起光8を上方向から照射して励起したのに対し、当該図3では、背面から光源71からの励起光81を照射して当該転写板(試料)6の表面(上面)を励起する場合のシステム構成図を示す。この場合には、転写板(試料)6は、励起光81が当該転写板6を透過して上面のパターン部分とパターン以外の部分との光電子放出効率の違う部分に充分に照射して励起する(透過して励起)ようにある程度、薄い必要がある。
他の構成は、図1、図2と同じであるので、説明を省略する。
【0059】
図4は、本発明の検査工程(ステップ&リピート式)フローチャートを示す。
図4において、S1は、転写板6をステージにセットする。これは、後述するモールドのパターンを転写した転写板6を、図1の試料台9にセットする。
【0060】
S2は、転写板6の光電面の活性化を行う。これは、転写板6が大気中などに長い間放置などし、パターンの部分とパターン以外の部分とが異なる電子放出被膜で形成されている転写板6から充分な電子が放出されず、綺麗な拡大電子画像を得られないときに、当該転写板6の表面(光電面)の活性化(例えばイオン照射して表面層を僅か除去などして活性化)を行う。綺麗な拡大電子画像が得られる場合には、活性化は不要である。
【0061】
S3は、光学顕微鏡と転写板6上の基準マークを利用して転写板6の座標系を求める。これは、光光学顕微鏡あるいは本発明の拡大画像をもとに、図1の移動ステージ11に装着された転写板(試料)6上の基準マークをもとに移動ステージ11の座標系との関連付けを行う。
【0062】
S4は、検査レシピに従い第1検査対象位置にステージを移動させる。これは、S3で転写板6の基準マークをもとに、当該転写板6の座標系と、移動ステージ11の座標系との関連づけができたので、検査レシピ(検査手順書)に従い第1検査対象位置に移動(転写板6の検査対象位置(転写板6の座標系)を移動ステージ11の座標系に変換し、変換後の移動ステージ11の座標系の該当位置に、当該移動ステージ11を移動)させる。
【0063】
S5は、ステージに電圧をかける。例えばー10KVを印加し、移動ステージ11に装着した転写板6の表面のパターンと、電子カラム3の底部の部分との間に10KVの電圧を印加し、光電子がレンズ(1)5に向かって引き出されるように、電圧を印加する。
【0064】
S6は、励起光を照射し光電子を放出させる。これは、図1の光源7に電源を供給して励起光8を転写板6に照射し、光電子を放出させる。
【0065】
S7は、加速レンズで光電子を引き出して拡大像を形成する。これは、S6で転写板6から放出された光電子を正の高電圧でレンズ(1)5に向けて引き出し、更に、レンズ(2)4とのレンズ作用で拡大した拡大像を検出器1の検出面に結像させる。
【0066】
S8は、検出器1で画像(2次元)を検出する。これにより、転写板6の表面から放出された光電子の拡大像(拡大電子画像)をデジタルの拡大画像として出力する。
【0067】
S9は、必要なら表示装置に画像を表示する。
S10は、記憶装置に画像を記憶する。これは、S8で検出器1から出力された拡大画像を画像装置・記憶装置21に記憶する。
【0068】
S11は、次の検査対象があるか判別する。YESの場合には、S12で次の位置に移動し、S7以降を繰り返す。一方、NOの場合には、S13で画像取得を終了する。そして、S14に進む。
【0069】
S14は、画像を設計データと比較照合する。これは、S10で記憶させた画像装置・記憶装置21から読み出した拡大画像と、設計データベース32から取り出した設計データ(転写板6の拡大画像に相当する設計データ)とを比較照合し、パターンの欠陥、寸法の誤差などを検査する。
【0070】
S15は、次の画像があるか判別する。有る場合には、S14を繰り返す。無の場合にはS16で検査終了する。
【0071】
以上によって、転写板6を図1の試料台9にセットし、必要に応じて活性化を行い、転写板6上の基準マークをもとに当該転写板6の座標系と、移動ステージ11の座標系との関連付けを行った後、転写板6を検査対象位置に移動させ、光電子を引き出す電圧を印加、励起光を転写板6に照射して光電子を放出させ、印加した高電圧で当該光電子をレンズ系に向けて引き出して拡大し、検出器1で拡大画像を検出して画像装置・記憶装置21に記憶する。そして、画像装置・記憶装置21から読み出した転写板6の拡大画像と、設計データベース32中の該当設計データとを比較照合し、欠陥、寸法誤差などを検査することが可能となる。
【0072】
この際、既述したように、モールド(押し型)上の微細な寸法パターンを転写板6に転写してパターンの部分とそれ以外の部分とで光電子放出効率を異なるようにしたことで、その拡大画像を高速に取得し、モールド(押し型)のパターンの検査を行うことが可能となる。
【0073】
図5は、本発明の検査工程(TDI式)フローチャートを示す。
図5において、S21は、転写板6をステージにセットする。これは、後述するモールドのパターンを転写した転写板6を、図2の試料台9にセットする。
【0074】
S22は、転写板6の光電面の活性化を行う。これは、転写板6が大気中などに長い間放置などし、パターンの部分とパターン以外の部分とが異なる電子放出被膜で形成されている転写板6から充分な電子が放出されず、綺麗な拡大電子画像を得られないときに、当該転写板6の表面(光電面)の活性化(例えばイオン照射して表面層を除去などして活性化)を行う。綺麗な拡大電子画像が得られる場合には、活性化は不要である。
【0075】
S23は、光学顕微鏡と転写板6上の基準マークを利用して転写板6の座標系を求める。これは、図2の移動ステージ11に装着された転写板(試料)6上の基準マークをもとに移動ステージ11の座標系との関連付けを行う。
【0076】
S24は、検査レシピに従い検査スタート位置にステージを移動させる。これは、S23で転写板6の基準マークをもとに、当該転写板6の座標系と、移動ステージ11の座標系との関連づけができたので、検査レシピに従い検査スタート位置に移動(転写板6の検査対象位置(転写板6の座標系)を移動ステージ11の座標系に変換し、変換後の移動ステージ11の座標系の該当位置に、当該移動ステージ11を移動)させる。
【0077】
S25は、ステージに電圧をかける。例えばー10KVを印加し、移動ステージ11に装着した転写板6の表面のパターンと、電子カラム3の底部の部分との間に10KVの電圧を印加し、光電子がレンズ(1)5に向かって引き出されるように、電圧を印加する。
【0078】
S26は、励起光を照射し光電子を放出させる。これは、図2の光源7に電源を供給して励起光8を転写板6に照射し、光電子を放出させる。
【0079】
S27は、加速レンズで光電子を引き出して拡大像を形成する。これは、S6で転写板6から放出された光電子を正の高電圧でレンズ(1)5に向けて引き出し、更に、レンズ(2)4とのレンズ作用で拡大した拡大像を検出器1の検出面に結像させる。
【0080】
S28は、TDI式ライン検出器1で画像をステージ制御器14からの同期信号15に同期検出する。これにより、転写板6の表面から放出された光電子の拡大像(拡大電子画像)がTDI式ライン検出器1によって時間遅延積分されたデジタルの拡大画像として出力開始する。
【0081】
S29は、必要なら表示装置に画像を表示する。
S30は、ステージ移動スタートする。これは、移動ステージ1の連続移動あるいはステップ移動を開始し、その同期信号をTDI式ライン検出器1に供給開始し、拡大画像が連続して順次出力される。
【0082】
S31は、画像取得終了する。これは、同期信号に同期してTDI式ライン検出器1によって検出された拡大画像を画像装置・記憶装置21に記憶し、画像取得を終了する。
【0083】
S32は、画像を設計データと比較照合する。これは、S31で記憶させた画像装置・記憶装置21から読み出した拡大画像と、設計データベース32から取り出した設計データ(転写板6の拡大画像に相当する設計データ)とを比較照合し、パターンの欠陥、寸法の誤差などを検査する。
【0084】
S33は、検査終了する。
以上によって、転写板6を図2の試料台9にセットし、必要に応じて活性化を行い、転写板6上の基準マークをもとに当該転写板6の座標系と、移動ステージ11の座標系との関連付けを行った後、転写板6を検査対象のスタート位置に移動させ、光電子を引き出す電圧を印加、励起光を転写板6に照射して光電子を放出させ、印加した高電圧で当該光電子をレンズ系に向けて引き出しできる状態で移動ステージ11を連続移動あるいはステップ移動させ、同期信号15をTDI式ライン検出器1に供給して同期して時間遅延積分した拡大画像を画像装置・記憶装置21に記憶する。そして、画像装置・記憶装置21から読み出した転写板6の拡大画像と、設計データベース32中の該当設計データとを比較照合し、欠陥、寸法誤差などを検査することが可能となる。
【0085】
この際、既述したように、モールド(押し型)上の微細な寸法パターンを転写板6に転写してパターンの部分とそれ以外の部分とで光電子放出効率を異なるようにしたことで、転写板6を連続移動あるいはステップ移動しつつ同期信号をTDI式ライン検出器1に供給して時間遅延積分した拡大画像を高速に取得し、モールド(押し型)のパターンの検査を行うことが可能となる。
【0086】
図6は、本発明の転写板の作成フローチャートを示す。
図6において、S41は、基板(金属あるいはシリコン)の表面を研磨し、滑らかな平面を仕上げる。これは、転写板6となる金属あるいはシリコンの基板の表面を研磨し、滑らかな平面に仕上げる。
【0087】
S42は、光電変換膜(光源面Sb−K−Cs,Sb−Pb−Cs等)の作成(塗布、蒸着、あるいはスパッタリングなど)する。これは、S41で作成した平坦な基板上に、均一な光電変換膜を塗布、蒸着あるいはスパッタリングにより作成する。
【0088】
以上によって、転写板1として、金属あるいはシリコンの基板の表面を平面にし、光電変換膜を作成し、当該転写板1を作成できたこととなる。
【0089】
図7は、本発明のポジ型転写板の作成フローチャートを示す。
図7において、S51は、転写板作成装置に検査対象モールドをセットする。これは、例えば後述する図11の(b)のポジ型転写板作成装置に、検査対象のモールド41をセットする。
【0090】
S52は、ローラによるレジスト塗布を行う。これは、後述する図11の(b)のポジ型転写板作成装置のレジスト供給装置45の先端のローラによってモールド41にレジストを塗布する。
【0091】
S53は、転写板にモールドを押し付けて転写する。これは、後述する図11の(b)のポジ型転写作成装置で、転写板6にモールド41を押し付けて塗布したレジスト(光電子放出効率が小)を転写する。
【0092】
以上によって、図6のS41、S42で予め光電変換膜(光電子放出効率が大)を形成した転写板6に、モールド41上のパターンにローラでレジスト(光電子放出効率が小)を塗布し、転写板6にモールド41を押し付けてレジストを転写することにより、転写板6上にパターン部分がレジスト(光電子放出効率が小)となり、パターン部分以外が予め作成した光電変換膜(光電子放出効率が大)となる、いわゆるポジ型の転写板6を作成することが可能となる。
【0093】
尚、逆に、転写板6に光電子放出効率が小の膜を予め作成しておき、ローラで光電子放出効率が大のレジスト(光電子放出効率が大の物質を溶解したレジスト)を塗布して転写板6に転写し、パターン部分を光電子放出効率が大、パターン部分以外を光電子放出効率が小となるようにしてもよい。
【0094】
図8は、本発明のネガ型転写板の作成フローチャートを示す。
図8において、S61は、転写板作成装置に検査対象モールドをセットする。これは、例えば後述する図11の(a)のネガ型転写板作成装置に、検査対象のモールド41をセットする。
【0095】
S62は、転写板にレジスト塗布を行う。これは、後述する図11の(a)のネガ型転写板作成装置のレジスト供給装置42の先端部分からモールド41にレジストを塗布する(例えばモールド41を高速回転させた状態で、レジストを1滴中心付近に落とし、遠心力でモールド41の全面に均一にレジストを塗布する)。
【0096】
S63は、転写板にモールドを押し付けて転写する。これは、後述する図11の(a)のネガ型転写作成装置で、転写板6にモールド41を押し付けて塗布したレジスト(光電子放出効率が小)に転写する(モールド41のパターン部分に相当する部分のレジストが無しあるいは僅かに残る程度にし、パターン部分に相当しない部分はレジストがそのまま残るように転写する)。そして、熱硬化性あるいは光硬化性あるいは時間硬化性のレジストを使用した場合には、転写板6にモールド41を押し付けたままで加熱あるいは光照射あるいは所定時間経過して硬化させた後、モールド41を取り去ることで、ネガ型の転写を精密に行う。
【0097】
S64は、不要なレジスト除去する。これは、S63の転写でわずかに残ったレジストを除去し、モールド41のパターン部分に対応する転写板6の部分のレジストが完全になくなって、転写板6に予め作成して光電膜が露出するように当該不要なレジストを除去する。
【0098】
以上によって、図6のS41、S42で予め光電変換膜(光電子放出効率が大)を形成した転写板6に、レジストを塗布してモールド41を押し付けて転写(あるいは熱硬化性、光硬化性のレジストを使用したときは押し付けた状態で加熱、光照射してレジストを硬化させて転写など)することにより、転写板6上のパターン部分が予め作成した光電変換膜(光電子放出効率が大)となり、それ以外の部分がレジスト膜(光電子放出効率が小)となる、いわゆるネガ型の転写板6を作成することが可能となる。
【0099】
尚、逆に、転写板6に光電子放出効率が小の膜を予め作成しておき、光電子放出効率が大のレジスト(光電子放出効率が大の物質を溶解したレジスト)を塗布して転写板6に転写し、パターン部分を光電子放出効率が小、パターン部分以外を光電子放出効率が大となるようにしてもよい。
【0100】
図9は、本発明の転写工程のフローチャートを示す。
図9において、S71は、転写板にレジストを塗布する。
【0101】
S72は、インプリント・モールドを転写板に押し付ける。
S73は、転写板とモールドを加熱あるいは光照射しレジストを硬化させる。これは、熱硬化性あるいは光硬化性あるいは時間硬化性のレジストを塗布した転写板6と、モールドとを押し付けた状態で、加熱あるいは光照射あるいは所定時間経過してレジストを硬化させる。
【0102】
S74は、インプリント・モールドを転写板よりはがす。これは、S73でレジストを硬化させた後、モールドを転写板6からはがす。
【0103】
以上によって、熱硬化性あるいは光硬化性あるいは時間硬化性のレジストを転写板6に均一に塗布した後、モールドを押し付けた状態で、加熱あるいは光照射あるいは所定時間ん経過してレジストを硬化させた後、モールドより転写板6をはがすことにより、非常に微細なパターンを極めて高精度に転写板6に転写することが可能となる。そして、既述したように、余分なレジスト膜を除去し、モールド上のパターンに対応する転写板6の部分は予め当該転写板6上に作成した光電子放出効率が大の膜、それ以外の部分が光電子放出効率が小のレジストの膜を形成することが可能となる。
【0104】
図10は、本発明の転写板作成の説明図を示す。
図10の(a)は、モールドを押し付ける前の状態を模式的に示す。これは、後述する図11の(a)のネガ型転写板作成装置にモールドおよび転写板6をセットし、レジスト供給装置42から供給されたレジストを回転させた転写板6に1滴落とし遠心力で均一にレジストを当該転写板6に塗布した後の状態を模式的に示す。この際、転写板6には、図示のように、光電面(電子放出効率が大の光電面、図6参照)を予め作成されている(図6参照)ので、その上にレジストが塗布される。
【0105】
図10の(b)は、モールド押付け状態を示す。これは、図10の(a)の状態から、モールドを下方に移動させ転写板6に押付ける。この状態で、レジストが光硬化性レジストの場合には光照射したり、熱硬化性の場合には加熱したり、あるいは時間硬化性の場合には所定の硬化時間経過まで待ったりし、十分に硬化させる。
【0106】
図10の(c)は、モールド外しする。これは、図10の(b)でモールドを転写板6に押付けて当該転写板6のレジストにモールドのパターンが完全に転写されたので(硬化性レジストのときは十分に硬化したので)、モールドを上方向に移動させて当該モールドを外し、転写板6の塗布したレジストの部分に当該モールド上のパターンを完全に転写する。
【0107】
以上によって、光電面を予め形成した転写板6の上のレジストを塗布し、モールドを押付けて当該転写板6の塗布したレジストの部分に当該モールド上のパターンを転写し、当該モールド上のパターンの部分について転写板6上でレジストが無くあるいは殆どなく、それ以外の部分はレジストの残した転写板6を形成することが可能となる。そして、当該転写板6について、僅かにレジストがパターン部分に残っている場合には、全面をイオン照射して当該残っているレジストを完全の除去し、転写板6のパターン部分は下層の光電面(通常は電子放出効率が大)が露出し、それ以外の部分にはレジスト(通常は電子放出効率が小)で覆われた当該転写板6を作成することが可能となる。尚、光電面を電子放出効率が小、レジストを電子放出効率が大と逆にしてもよい。
【0108】
図11は、本発明の転写板の作成装置例を示す。
図11の(a)は、ネガ型転写作成装置を模式的に示す。図示のネガ型転写作成装置は、既述した図10の(a)(b),(c)の順番で、転写板6を作成する。作成された転写板6は、ネガ型、即ち、原型のモールド41上のパターンの凹凸とが逆となったものである。以下簡単に動作を説明する。
【0109】
(1)転写板6を図示の状態にセットし、レジスト供給装置42からレジストを供給し、転写板6の表面にレジストを均一に塗布する。例えば、光電面が予め形成された転写板6をセットして回転させ、レジスト供給装置42から当該転写板6のほぼ中心付近に一滴落とし、遠心力で当該転写板6の表面に均一な所定厚さのレジストを塗布する。尚、転写板6へのレジスト塗布は、別のレジスト塗布装置で行った後に、図示の状態にセットしてもよい。
【0110】
(2)レジストが塗布された転写板6に、上方にセットされたモールド41を、圧力制御装置44の制御のもとで下方に移動させ(あるいはモールド41を下方、転写板6を上方に両者を近づける方向に移動させ)、モールド41をレジストを形成した転写板6に所定圧力で押付ける。
【0111】
(3)レジストが光硬化性、熱硬化性、所定時間経過硬化性の場合には、光を照射したり、加熱したり、所定硬化時間経過を待ったりし、十分にレジストを硬化させる。
【0112】
(4)圧力制御装置44がモールドを転写板6から引き外す。
以上によって、転写板6に塗布したレジスト部分に、モールド41上のパターンがネガ型として転写されることとなる。
【0113】
図11の(b)は、ポジ型転写作成装置を模式的に示す。図示のポジ型転写作成装置は、モールド41上のパターンを直接に転写板6の上に転写したもので、原型のモールド41上のパターンの凹凸とが同じになったものである。以下簡単に動作を説明する。
【0114】
(1)モールド41を図示の状態にセットし、レジスト供給装置45からレジストを供給し、転写板6の表面にレジストを均一に塗布する。例えば、レジストをほぼ均一に含ませたローラで、モールド41の表面を所定圧力で移動させて均一にレジストを当該モールド41上のパターンに塗布する。この際、モールド41上のパターンの面積密度に対応した圧力でローラでモールド41上のパターンに押付けてほぼ均一の厚さのレジストを塗布する。
【0115】
(2)レジストを塗布したモールド41に、上方にセットされた転写板6を、圧力制御装置44の制御のもとで下方に移動させ(あるいは転写板6を下方、モールド41を上方に両者を近づける方向に移動させ)、転写板6をレジストを塗布したモールド41に所定圧力で押付ける。
【0116】
(3)圧力制御装置44が転写板6をモールド41から引き外す。
以上によって、モールド41上のパターンに塗布したレジストが転写板6に転写され、ポジ型として転写されることとなる。
【0117】
図12は、本発明の説明図を示す。
図12の(a)は、時間遅延積分型ライン検出器1の画素例を示す。本発明では、例えば図示のように、ライン方向に4000(m=4000画素)を有し、ライン方向と直角方向の時間遅延転送方向に16(n=16ライン)を有する例を示す。図示のライン検出器1は公知であって、ライン方向と直角方向に16回転送して16回分の時間積分した後、拡大画像として順次出力されることとなる。
【0118】
図12の(b)は、図12の(a)のm=4000画素のライン検出器1をもとに、転写板6を上から下、下から上というように順次連続移動(正確には、上から下、下から上に連続移動(あるいはステップ移動)と、隣の領域に移動するステップ移動)を繰り返す。この際、ステージの移動に同期してライン検出器1上の信号を転送することを繰り返す。
【0119】
図12の(c)は、モールド41を転写板6に押付ける様子を示す。これは、既述した図10、図11を模式的に分かり易く表示したものであって、転写板6とモールド41とを押付けて当該モールド41上のパターンを転写板6に転写する(詳細は図10、図11参照)。
【0120】
図12の(d)は、転写板6を模式的に示す。図示の転写板6では、モールド41上のパターンがそのまま当該転写板6の上にパターン(レジスト)として転写(ポジ転写)されている様子を示す。この場合には、転写板6には転写前に予め光電膜53(通常は、電子放出効率が大)が均一に形成されているので、その上にレジストのパターン54(通常は、電子放出効率が小)が転写された様子を示す。図示の状態では、転写板6上に、モールド41のパターン部分が電子放出効率の小のレジストのパターン54が形成され、それ以外の部分は電子放出効率が大の光電膜53で形成されているので、当該転写板6を既述した図1、図2の装置で拡大画像を生成すると、モールド41上のパターン以外の部分(光電膜)の輝度が大、モールド41上のパターン部分(レジスト)の輝度が小の拡大画像を生成することが可能となる。必要あれば、拡大画像の輝度を反転し、モールド41上のパターン部分(凸の部分)を輝度大にすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、微細寸法のモールド(押し型)上のパターンの検査をする新たな方法を提供し、しかも、極めて短時間に微細寸法のモールド上のパターンを検査するモールド検査方法およびモールド検査装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明のシステム構成図(その1)である。
【図2】本発明のシステム構成図(その2)である。
【図3】本発明のシステム構成図(要部、その3)である。
【図4】本発明の検査工程(ステップ&リピート式)フローチャートである。
【図5】本発明の検査工程(TDI式)フローチャートである。
【図6】本発明の転写板の作成フローチャートである。
【図7】本発明のポジ型転写板の作成フローチャートである。
【図8】本発明のネガ型転写板の作成フローチャートである。
【図9】本発明の転写工程フローチャートである。
【図10】本発明の転写板作成の説明図である。
【図11】本発明の転写板の作成装置例である。
【図12】本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0123】
1:検出器
2:カメラ
3:電子カラム
4:レンズ(2)
5:レンズ(1)
6:転写板(試料)
7、71:光源
8、81:励起光
9:試料台
10:絶縁柱
11:移動ステージ
12:試料交換機構
13:真空チャンバ
14:ステージ制御器
15:同期信号
21:画像装置・記憶装置
22:電子光学系制御部
23:ステージ制御部
24:励起光電源
25:試料搬送制御部
26:真空排気制御部
27:コンピュータ
271:座標系決定手段
272:画像形成手段
273:ステージ制御手段
31:比較照合コンピュータ
311:検査手段
32:設計データベース
33:画像データベース
41:モールド
42、45:レジスト供給装置
43:モータ
44:圧力制御装置
51:モールド支持体
52:ペース盤
53:光電面
54:パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを転写する押し型(以下「モールド」という)上に作成されたパターンを検査するモールド検査方法において、
前記モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、当該転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成するステップと、
前記生成された拡大画像をもとに、前記モールド上に作成されたパターンを検査するステップと
を有するモールド検査方法。
【請求項2】
前記転写板は、前記モールド上に作成されたパターンを、平坦な当該転写板に押下して当該押下した部分を電子放出を阻害する被膜あるいは電子放出の小さい被膜、または電子放出の大きい被膜を形成し、パターンの押下された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせたことを特徴とする請求項1記載のモールド検査方法。
【請求項3】
前記転写板は、当該転写板上に均一な硬化性被膜を塗布してその上から前記モールドを押下した状態で被膜を硬化させた後、前記モールドを取り去ってパターンの転写された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせたことを特徴とする請求項1記載のモールド検査方法。
【請求項4】
前記転写板は、予め表面に電子放出の大きいあるいは小さい被膜を形成したことを特徴とする請求項2あるいは請求項3記載のモールド検査方法。
【請求項5】
前記転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成する際に、当該転写板を一定方向に連続移動あるいはステップ移動に同期し、拡大電子画像を遅延型ライン素子を用いて当該連続移動あるいはステップ移動の方向に転送し蓄積して拡大画像を生成することを特徴とする請求項1記載のモールド検査方法。
【請求項6】
パターンを転写する押し型(以下「モールド」という)上に作成されたパターンを検査するモールド検査装置において、
前記モールド上に作成されたパターンに対応する部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせて予め作成した転写板に、励起源を照射して励起させ、当該転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成する画像生成装置と、
前記生成された拡大画像をもとに、前記モールド上に作成されたパターンを検査する手段と
を備えたことを特徴とするモールド検査装置。
【請求項7】
前記転写板は、前記モールド上に作成されたパターンを、平坦な当該転写板に押下して当該押下した部分を電子放出を阻害する被膜あるいは電子放出の小さい被膜、または電子放出の大きい被膜を形成し、パターンの押下された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせたことを特徴とする請求項6記載のモールド検査装置。
【請求項8】
前記転写板は、当該転写板上に均一な硬化性被膜を塗布してその上から前記モールドを押下した状態で被膜を硬化させた後、前記モールドを取り去ってパターンの転写された部分とそれ以外の部分との電子放出を異ならせたことを特徴とする請求項6記載のモールド検査装置。
【請求項9】
前記転写板は、予め表面に電子放出の大きいあるいは小さい被膜を形成したことを特徴とする請求項7あるいは請求項8記載のモールド検査装置。
【請求項10】
前記転写板上から放出された電子を、電圧により引き出して拡大画像を生成する際に、当該転写板を一定方向に連続移動あるいはステップ移動に同期し、拡大電子画像を遅延型ライン素子を用いて当該連続移動あるいはステップ移動の方向に転送し蓄積して拡大画像を生成することを特徴とする請求項6記載のモールド検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−69073(P2009−69073A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239930(P2007−239930)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【Fターム(参考)】