説明

ヤブレツボカビ、脂肪酸組成物、ならびにその作出および使用の方法

本発明は、単離されたヤブレツボカビ微生物、ならびにその菌株および変異体に関する。本発明はさらに、バイオマス、微生物油、組成物、培養物、微生物油を産生する方法、ならびに単離されたヤブレツボカビ、バイオマスおよび微生物油を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、単離されたヤブレツボカビ(thraustochytrid)微生物、ならびにその菌株および変異体に関する。本発明はさらに、ヤブレツボカビバイオマス、微生物油、組成物、培養物、微生物油を産生する方法、ならびに単離されたヤブレツボカビ、バイオマスおよび微生物油を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸は、炭素鎖の長さおよび飽和特性に基づいて分類される。短鎖脂肪酸は一般に12個の炭素またはそれ以下の炭素を有し、中鎖脂肪酸は一般に14〜18個の炭素を有し、長鎖脂肪酸は一般に20個または以上の炭素を有する。脂肪酸は、炭素原子間に二重結合が存在しない場合に飽和脂肪酸と呼ばれ、二重結合が存在する場合に不飽和脂肪酸と呼ばれる。不飽和長鎖脂肪酸は、ただ一つの二重結合が存在する場合に一価不飽和され、二つ以上の二重結合が存在する場合に多価不飽和される。
【0003】
多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、脂肪酸のメチル末端からの最初の二重結合の位置に応じて分類される; オメガ-3 (n-3)脂肪酸は3番目の炭素の位置に最初の二重結合を含み、一方、オメガ-6 (n-6)脂肪酸は6番目の炭素の位置に最初の二重結合を含む。例えば、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、炭素22個の鎖長および6つの二重結合を有するオメガ-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)であり、「22:6 n-3」と表されることが多い。他のオメガ-3 LC-PUFAには、「20:5 n-3」と表されるエイコサペンタエン酸(「EPA」)、および「22:5 n-3」と表されるオメガ-3ドコサペンタエン酸(「DPA n-3」)が含まれる。DHAおよびEPAは「必須」脂肪酸と呼ばれている。オメガ-6 LC-PUFAには、「20:4 n-6」と表されるアラキドン酸(「ARA」)、および「22:5 n-6」と表されるオメガ-6ドコサペンタエン酸(「DPA n-6」)が含まれる。
【0004】
オメガ-3脂肪酸は細胞膜に存在することにより細胞生理に影響を与える生物学的に重要な分子であり、生物学的に活性な化合物の産生および遺伝子発現を調節し、生合成基質として働く。Roche, H. M., Proc. Nutr. Soc. 58: 397-401 (1999)(非特許文献1)。例えば、DHAはヒト大脳皮質中の脂質のおよそ15%〜20%、網膜中の脂質の30%〜60%を占め、精巣および精液中では濃縮されており、母乳の重要な成分である。Jean-Pascal Berge & Gilles Barnathan, Fatty Acids from Lipids of Marine Organisms: Molecular Biodiversity, Roles as Biomarkers, Biologically Active Compounds, and Economical Aspects, in Marine Biotechnology I 49 (T. Scheper, ed., 2005)(非特許文献2)。DHAは、脳内ではオメガ-3脂肪酸の97%まで、および網膜中ではオメガ-3脂肪酸の93%までを占める。さらに、DHAは胎児および幼児発達にも、成人における認知機能の維持にも不可欠である。同文献。DHAおよびEPAを含む、オメガ-3脂肪酸は抗炎症特性も保有する。例えば、同文献およびSimopoulos, A.P., J. Am. Coll. Nutr. 21: 495-595 (2002)(非特許文献3)を参照されたい。オメガ-3脂肪酸はヒト体内で新たに合成されないので、これらの脂肪酸は栄養源から得られなければならない。
【0005】
亜麻仁油および魚油はオメガ-3脂肪酸の良好な食事供給源と考えられる。亜麻仁油はEPA、DHA、DPAまたはARAを含むのではなく、むしろ身体によるEPAの生成を可能にする構成要素であるリノレン酸(C18:3 n-3)を含む。しかし、代謝による変換の速度は、特に健康を害した人では遅くかつ変わりやすいこともあるという証拠がある。魚油では、特定の種およびその食餌に応じて、脂肪酸組成の種類およびレベルが大幅に変わる。例えば、水産養殖によって育てられた魚は、天然の魚よりも低レベルのオメガ-3脂肪酸を有する傾向がある。さらに、魚油は、環境汚染物を含むリスクがあり、安定性の問題および魚臭い臭味を伴うこともある。
【0006】
ヤブレツボカビはヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目の微生物である。ヤブレツボカビはシゾキトリウム(Schizochytrium)属の成員を含み、DHAを含むオメガ-3脂肪酸の代替的な供給源と認識されている。米国特許第5,130,242号(特許文献1)を参照されたい。これらの海洋従属栄養微生物から産生される油は、対応する魚油または微細藻類油よりも単純な多価不飽和脂肪酸プロファイルを有することが多い。Lewis, T.E., Mar. Biotechnol. 1: 580-587 (1999)(非特許文献4)。ヤブレツボカビ種の菌株は、生物によって産生される高い割合の全脂肪酸としてオメガ-3脂肪酸を産生することが報告されている。米国特許第5,130,242号; Huang, J. et al., J. Am. Oil. Chem. Soc. 78: 605-610 (2001)(非特許文献5); Huang, J. et al., Mar. Biotechnol. 5: 450-457 (2003)(非特許文献6)。しかし、単離されたヤブレツボカビは、産生されるLC-PUFAの同一性および量が異なり、したがって既述の菌株のなかには望ましくないレベルのオメガ-6脂肪酸を有するものもあり、および/または培養液中で低い生産性を示すものもある。したがって、高い生産性および望ましいLC-PUFAプロファイルを示すヤブレツボカビの単離の継続的必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,130,242号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Roche, H. M., Proc. Nutr. Soc. 58: 397-401 (1999)
【非特許文献2】Jean-Pascal Berge & Gilles Barnathan, Fatty Acids from Lipids of Marine Organisms: Molecular Biodiversity, Roles as Biomarkers, Biologically Active Compounds, and Economical Aspects, in Marine Biotechnology I 49 (T. Scheper, ed., 2005)
【非特許文献3】Simopoulos, A.P., J. Am. Coll. Nutr. 21: 495-595 (2002)
【非特許文献4】Lewis, T.E., Mar. Biotechnol. 1: 580-587 (1999)
【非特許文献5】Huang, J. et al., J. Am. Oil. Chem. Soc. 78: 605-610 (2001)
【非特許文献6】Huang, J. et al., Mar. Biotechnol. 5: 450-457 (2003)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ種の単離されたヤブレツボカビ微生物またはそれに由来する菌株に関し、ここで該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む。
【0010】
本発明はまた、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ種の特徴を有する単離されたヤブレツボカビ微生物に関し、ここで該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む。
【0011】
本発明はまた、トリグリセリド画分を含む、単離されたヤブレツボカビ微生物またはそれに由来する菌株に関し、ここでトリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約40重量%であり、ここでトリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が少なくとも約0.5重量%から約6重量%であり、かつここで該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む。
【0012】
本発明はまた、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビと同種の単離されたヤブレツボカビ微生物またはそれに由来する菌株に関し、ここで該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む。
【0013】
いくつかの態様において、本発明の単離されたヤブレツボカビ微生物に由来する菌株は変異体菌株である。
【0014】
本発明はまた、ATCCアクセッション番号PTA-9695、PTA-9696、PTA-9697またはPTA-9698の下で寄託された単離微生物に関する。
【0015】
本発明はまた、本発明のヤブレツボカビ微生物のいずれか一つまたはその混合物を含むヤブレツボカビバイオマスに関する。
【0016】
本発明はまた、単離されたヤブレツボカビバイオマスに関し、ここでバイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約50重量%が脂肪酸であり、かつここで脂肪酸の少なくとも約50重量%がオメガ-3脂肪酸である。いくつかの態様において、脂肪酸の少なくとも約50重量%はドコサヘキサエン酸である。本発明はまた、単離されたヤブレツボカビバイオマスに関し、ここでバイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約25重量%がドコサヘキサエン酸である。
【0017】
いくつかの態様において、本発明はまた、単離されたヤブレツボカビバイオマスに関し、ここで脂肪酸の約10重量%またはそれ以下がエイコサペンタエン酸であり、かつここでドコサヘキサエン酸のエイコサペンタエン酸に対する重量比が少なくとも約5:1である。
【0018】
いくつかの態様において、本発明はまた、単離されたヤブレツボカビバイオマスに関し、ここで脂肪酸の約1.5重量%またはそれ以下がアラキドン酸であり、かつここでドコサヘキサエン酸のアラキドン酸に対する重量比が少なくとも約20:1である。
【0019】
いくつかの態様において、本発明はまた、少なくとも約10:1の重量比でドコサヘキサエン酸およびドコサペンタエン酸n-6を含む単離されたヤブレツボカビバイオマスに関する。
【0020】
本発明はまた、本発明のヤブレツボカビ微生物のいずれか一つまたはその混合物を含む単離されたヤブレツボカビ培養物に関する。いくつかの態様において、培養物は少なくとも約5%の溶存酸素を含む。
【0021】
本発明はまた、本発明のヤブレツボカビ微生物もしくはバイオマスのいずれか一つまたはその混合物を含む動物またはヒト用の食品、化粧品組成物または薬学的組成物に関する。
【0022】
本発明はまた、少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油に関し、ここでトリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約50重量%であり、かつここでトリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が約0.5重量%から約6重量%である。いくつかの態様において、微生物油はさらに、約1.5重量%またはそれ以下のトリグリセリド画分のアラキドン酸含量を含む。
【0023】
本発明はまた、少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油に関し、ここでトリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約40重量%であり、ここでトリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が少なくとも約0.5重量%から約6重量%であり、かつここでドコサヘキサエン酸のドコサペンタエン酸n-6に対する比が約6:1を上回る。
【0024】
本発明はまた、少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油に関し、ここでトリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約60重量%である。
【0025】
いくつかの態様において、微生物油のトリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約20%は、sn-1、sn-2およびsn-3位のいずれか二つから選択されるトリグリセリド中の二つの位置にドコサヘキサエン酸を含む。いくつかの態様において、微生物油のトリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約5%は、トリグリセリド中のsn-1、sn-2およびsn-3位の三つすべての位置にドコサヘキサエン酸を含む。
【0026】
いくつかの態様において、微生物油はさらに、約5重量%またはそれ以下のヘプタデカン酸を含む。
【0027】
本発明はまた、本発明の微生物油のいずれかを含む動物またはヒト用の食品、化粧品組成物または薬学的組成物に関する。いくつかの態様において、食品は乳児用調製粉乳である。いくつかの態様において、乳児用調製粉乳は未熟児に適している。いくつかの態様において、食品はミルク、飲料、治療用ドリンク、栄養ドリンクまたはその組み合わせである。いくつかの態様において、食品は動物飼料またはヒト食物用の添加物である。いくつかの態様において、食品は栄養補助食品である。いくつかの態様において、食品は動物飼料である。いくつかの態様において、動物飼料は水産養殖用の飼料である。いくつかの態様において、動物飼料はペット用の飼料、動物園動物用の飼料、使役動物用の飼料、家畜用の飼料またはその組み合わせである。
【0028】
本発明はまた、(a) 本発明の単離されたヤブレツボカビ微生物のいずれか一つまたはその混合物を培養液中で増殖させてバイオマスを作出する段階、および(b) オメガ-3脂肪酸を含む油をバイオマスから抽出する段階を含む、オメガ-3脂肪酸を含む微生物油を産生するための方法に関する。いくつかの態様において、培養物は少なくとも約5%の溶存酸素を含む。いくつかの態様において、培養pHは約6.5〜約8.5で維持される。いくつかの態様において、培養温度は約17℃〜約30℃で維持される。いくつかの態様において、培養物は約5 g/L〜約50 g/Lのグルコース濃度を含む。
【0029】
本発明はまた、本発明のバイオマスのいずれか一つからオメガ-3脂肪酸を含む油を抽出する段階を含む、オメガ-3脂肪酸を含む微生物油を産生するための方法に関する。いくつかの態様において、微生物油はヘキサン抽出工程を用いて抽出される。いくつかの態様において、微生物油は無溶媒抽出工程を用いて抽出される。
【0030】
いくつかの態様において、本発明の培養物のいずれか一つの1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.0の培地中にて約17℃〜約30℃で7日間増殖させた後に、少なくとも約50 gである。
【0031】
いくつかの態様において、本発明の単離された培養物のいずれか一つは、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.0の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約2 g/L/日のオメガ-3脂肪酸の生産性を有する。
【0032】
本発明はまた、本発明の方法によって産生される微生物油に関する。
【0033】
本発明はまた、炎症またはそれに関連する状態の処置用の医薬の製造のための、本発明の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物のいずれかの使用に関する。
【0034】
本発明はまた、炎症またはそれに関連する状態の処置のための、本発明の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物のいずれかの使用に関する。
【0035】
本発明はまた、炎症またはそれに関連する状態の処置において用いるための、本発明の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物のいずれかに関する。
【0036】
本発明はまた、本発明の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物のいずれかと、薬学的に許容される担体とを被験体に投与する段階を含む、それを必要とする被験体において炎症またはそれに関連する状態を処置するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は単離されたヤブレツボカビ微生物、ならびにその菌株および変異体のほか、それらのバイオマス、微生物油、組成物および培養物にも関する。本発明はまた、本発明のヤブレツボカビから微生物油を産生する方法、ならびにヤブレツボカビ、バイオマスおよび微生物油を使用する方法に関する。本明細書において記述されるヤブレツボカビは、以前の分離株と比べて非常に生産性があり、高レベルのオメガ-3脂肪酸、特に高レベルのDHAによって部分的に特徴付けられる、特有の脂肪酸プロファイルをもたらす。
【0038】
ヤブレツボカビ微生物
本発明は、単離されたヤブレツボカビに関し、その変異体、組み換え体および変種も含む。
【0039】
いくつかの態様において、本発明はATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された種のヤブレツボカビに関する。単離されたヤブレツボカビは本明細書においてシゾキトリウム種ATCC PTA-9695としても公知である。ATCCアクセッション番号PTA-9695と関連するヤブレツボカビは2009年1月7日付でアメリカンタイプカルチャーコレクション特許微生物寄託機関(American Type Culture Collection, Patent Depository)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)にブダペスト条約の下で寄託された。
【0040】
いくつかの態様において、本発明はATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビ菌株に関する。いくつかの態様において、本発明はATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビと同種の単離されたヤブレツボカビ微生物に関する。
【0041】
いくつかの態様において、本発明は、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された種またはそれに由来する菌株の特徴を有する単離されたヤブレツボカビに関する。ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ種の特徴には、その増殖および表現型特性(表現型特性の例としては形態学的および生殖的特性が挙げられる)、その物理的および化学的特性(乾燥重量および脂質プロファイルなど)、ならびにその遺伝子配列が含まれる。いくつかの態様において、本発明の単離されたヤブレツボカビは、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビと実質的に同一な表現型特性を有する。いくつかの態様において、本発明の単離されたヤブレツボカビは、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビと実質的に同一な増殖特性を有する。
【0042】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の単離されたヤブレツボカビの変異体、変種または組み換え体に関し、ここで該変異体、変種または組み換え体によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む。変異体菌株は周知の手順によって作出することができる。一般的な手順には照射; 高温での処理; および変異誘発物質での処理が含まれる。変種菌株は他の天然に存在する分離株および/または本明細書において記述される種の亜分離株(subisolate)でありうる。組み換え体菌株は、外来性遺伝子の発現または内在性遺伝子の機能もしくは発現の改変に向けて分子生物学における任意の周知の方法により作出することができる。いくつかの態様において、変異体、変種または組み換え体菌株は、野生型菌株よりも大量のDHAおよび/またはEPAを含むオメガ-3脂肪酸を産生する。いくつかの態様において、変異体、変種または組み換え体菌株は、少量のEPA、ARA、DPA n-6またはその組み合わせなどの、少量の一つまたは複数の脂肪酸を産生する。いくつかの態様において、変異体、変種または組み換え体菌株は、野生型菌株よりも培養液1リットルあたりに大きな乾燥細胞重量を生み出す。そのような変異体、変種または組み換え体菌株は、本発明の単離されたヤブレツボカビに由来する菌株の例である。
【0043】
いくつかの態様において、本発明は、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビの変異体菌株に関する。さらなる態様において、変異体菌株は、ATCCアクセッション番号PTA-9696、PTA-9697またはPTA-9698の下で寄託された菌株である。ATCCアクセッション番号PTA-9696、PTA-9697およびPTA-9698と関連するヤブレツボカビ菌株は2009年1月7日付でアメリカンタイプカルチャーコレクション特許微生物寄託機関(American Type Culture Collection, Patent Depository)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)にブダペスト条約の下で寄託された。これらの寄託された変異体菌株は、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビの誘導体である。
【0044】
いくつかの態様において、本発明の単離されたヤブレツボカビは、その変異体、変種または組み換え体を含めて、ヤブレツボカビから単離された一つまたは複数の画分における脂肪酸プロファイルを含む。ヤブレツボカビから単離された一つまたは複数の画分は、全脂肪酸画分、ステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせを含む。
【0045】
ヤブレツボカビ培養物および単離されたヤブレツボカビバイオマス
本発明はさらに、本発明の一つまたは複数の単離されたヤブレツボカビを含む培養物に関する。米国特許第5,130,242号に記述されているような、微生物叢の接種、増殖および回収のためのさまざまな発酵パラメータが当技術分野において公知である。ヤブレツボカビの増殖のための従来のいずれの培地も使用することができる。液体または固体培地は天然のまたは人工の海水を含んでもよい。炭素源はグルコース、フルクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性でんぷん、糖蜜、フコース、グルコサミン、デキストラン、脂肪、油、グリセロール、酢酸ナトリウムおよびマンニトールを含むが、これらに限定されることはない。窒素源はペプトン、酵母エキス、ポリペプトン、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、有機窒素源、グルタミン酸ナトリウム、尿素、無機窒素源、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウムを含むが、これらに限定されることはない。典型的な培地を表1に示す。
【0046】
(表1)容器培地

【0047】
典型的な培養条件には以下が含まれよう。

【0048】
いくつかの態様において、培地は飽和レベルの割合として、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%の溶存酸素を含む。いくつかの態様において、培地は飽和レベルの割合として、約5%〜約20%、約5%〜約50%、約5%〜約100%、約10%〜約20%、約10%〜約50%、約10%〜約100%、約20%〜約50%または約20%〜約100%の溶存酸素を含む。
【0049】
本発明はさらに、本発明のヤブレツボカビの単離されたバイオマスに関する。本発明の単離されたヤブレツボカビバイオマスは、米国特許第5,130,242号および米国特許出願公開第2002/0001833号に記述されているような、ヤブレツボカビバイオマスの単離のための任意の従来の方法によって得られた収集された細胞バイオマスである。
【0050】
いくつかの態様において、培養液1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約8.5の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約50 g、少なくとも約60 g、少なくとも約70 g、少なくとも約80 g、少なくとも約100 g、少なくとも約120 g、少なくとも約140 g、少なくとも約160 g、少なくとも約180 gまたは少なくとも約200 gである。いくつかの態様において、培養液1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5、約pH 7、約pH 7.5、約pH 8.0または約pH 8.5の培地中にて約17℃で、約18℃で、約19℃で、約20℃で、約21℃で、約22℃で、約23℃で、約24℃で、約25℃で、約26℃で、約27℃で、約28℃で、約29℃でまたは約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約50 g、少なくとも約60 g、少なくとも約70 g、少なくとも約80 g、少なくとも約100 g、少なくとも約120 g、少なくとも約140 g、少なくとも約160 g、少なくとも約180 gまたは少なくとも約200 gである。いくつかの態様において、培養液1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.5の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、約50 g〜約200 gである。いくつかの態様において、培養液1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5、約pH 7、約pH 7.5、約pH 8.0または約pH 8.5の培地中にて約17℃で、約18℃で、約19℃で、約20℃で、約21℃で、約22℃で、約23℃で、約24℃で、約25℃で、約26℃で、約27℃で、約28℃で、約29℃でまたは約30℃で約7日間増殖させた後に、約50 g〜約200 gである。
【0051】
いくつかの態様において、単離されたヤブレツボカビ培養物は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.5の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約2 g/L/日、少なくとも約4 g/L/日または少なくとも約8 g/L/日のオメガ-3脂肪酸の生産性を有する。いくつかの態様において、単離されたヤブレツボカビ培養物は、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.5の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、約1 g/L/日〜約20 g/L/日、約2 g/L/日〜約15 g/L/日、約2 g/L/日〜約10 g/L/日、約3 g/L/日〜約10 g/L/日または約4 g/L/日〜約9 g/L/日のオメガ-3脂肪酸の生産性を有する。
【0052】
いくつかの態様において、発酵容量(培養の容量)は、少なくとも約2リットル、少なくとも約10リットル、少なくとも約50リットル、少なくとも約100リットル、少なくとも約200リットル、少なくとも約500リットル、少なくとも約1000リットル、少なくとも約10,000リットル、少なくとも約20,000リットル、少なくとも約50,000リットル、少なくとも約100,000リットル、少なくとも約150,000リットル、少なくとも約200,000リットルまたは少なくとも約250,000リットルである。いくつかの態様において、発酵容量は、約2リットル〜約300,000リットル、約2リットル、約10リットル、約50リットル、約100リットル、約200リットル、約500リットル、約1000リットル、約10,000リットル、約20,000リットル、約50,000リットル、約100,000リットル、約150,000リットル、約200,000リットル、約250,000リットルまたは約300,000リットルである。
【0053】
いくつかの態様において、本発明は、本発明の脂肪酸プロファイルを含む単離されたヤブレツボカビバイオマスに関する。いくつかの態様において、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%または少なくとも約80%が脂肪酸である。いくつかの態様において、バイオマスの乾燥細胞重量の約50%超、約55%超または約60%超が脂肪酸である。いくつかの態様において、バイオマスの乾燥細胞重量の約50重量%〜約60重量%、約50重量%〜約70重量%、約50重量%〜約80重量%、約55重量%〜約70重量%、約55重量%〜約80重量%、約60重量%〜約70重量%または約60重量%〜約80重量%が脂肪酸である。いくつかの態様において、バイオマスはオメガ-3脂肪酸として少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%または少なくとも約80重量%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはオメガ-3脂肪酸として約50重量%〜約60重量%、約50重量%〜約70重量%、約50重量%〜約80重量%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはDHAとして少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%または少なくとも約80重量%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはDHAとして約50%〜約60%、約50%〜約70%または約50%〜約80%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%または少なくとも約60重量%がドコサヘキサエン酸である。いくつかの態様において、バイオマスの乾燥細胞重量の約25重量%〜約65重量%、約25重量%〜約50重量%、約30重量%〜約40重量%または約25重量%〜約35重量%がドコサヘキサエン酸である。いくつかの態様において、バイオマスはEPAとして約10重量%もしくはそれ以下、約9重量%もしくはそれ以下、約8重量%もしくはそれ以下、約7重量%もしくはそれ以下、約6重量%もしくはそれ以下、約5重量%もしくはそれ以下、約4重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下または約1重量%もしくはそれ以下の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはEPAとして約1重量%〜約10重量%、約1重量%〜約5重量%、約2重量%〜約5重量%、約3重量%〜約5重量%または約3重量%〜約10重量%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはEPAを実質的に含まない。いくつかの態様において、バイオマスは少なくとも約5:1、少なくとも約7:1、少なくとも約10:1、少なくとも約11:1、少なくとも約14:1、少なくとも約15:1、少なくとも約17:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約50:1または少なくとも約100:1の、DHAのEPAに対する重量比を含み、ここでバイオマスはEPAとして約10重量%またはそれ以下の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはARAとして約0.1重量%〜0.2重量%、約0.1重量%〜約0.3重量%、約0.1重量%〜約0.4重量%、約0.1重量%〜約0.5重量%または約0.1重量%〜約1.5重量%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはARAとして約1.5重量%もしくはそれ以下、約1重量%もしくはそれ以下、約0.5重量%もしくはそれ以下、約0.4重量%もしくはそれ以下、約0.3重量%もしくはそれ以下、約0.2重量%もしくはそれ以下または約0.1重量%もしくはそれ以下の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはARAを実質的に含まない。いくつかの態様において、バイオマスは少なくとも約20:1、少なくとも約40:1、少なくとも約60:1、少なくとも約80:1、少なくとも約100:1、少なくとも約150:1、少なくとも約200:1、少なくとも約250:1または少なくとも約300:1の、DHAのARAに対する重量比を含む。いくつかの態様において、バイオマスはDPA n-6として約0.5%〜約1%、約0.5%〜約2%、約0.5%〜約5%、約0.5%〜約6%、約1%〜約5%、約1%〜約6%、約2%〜約5%または約2%〜約6%の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはDPA n-6として約6重量%もしくはそれ以下、約5重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下、約1重量%もしくはそれ以下または約0.5重量%もしくはそれ以下の脂肪酸を含む。いくつかの態様において、バイオマスはDPA n-6を実質的に含まない。いくつかの態様において、バイオマスは約6:1、少なくとも約8:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約50:1または少なくとも約100:1を上回る、DHAのDPA n-6に対する重量比を含む。いくつかの態様において、バイオマスは、リノール酸(18:2 n-6)、リノレン酸(18:3 n-3)、エイコセン酸(20:1 n-9)およびエルカ酸(22:1 n-9)の各々が約5重量%もしくはそれ以下、約4重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下または約2重量%もしくはそれ以下の脂肪酸を含む。
【0054】
本発明の単離されたバイオマスの特徴は、外因的に導入された材料よりもむしろ単離されたバイオマスの内因性のまたは天然の特性と関連する。
【0055】
微生物油
本発明はさらに、微生物油を産生する方法に関する。いくつかの態様において、この方法は、培養液中で本発明のヤブレツボカビを増殖させて、バイオマスを産生する段階、およびバイオマスからオメガ-3脂肪酸を含む油を抽出する段階を含む。油は新たに収集されたバイオマスから抽出されてもよく、または品質劣化を防ぐ条件の下で貯蔵されている過去に収集されたバイオマスから抽出されてもよい。公知の方法を用いて、本発明のヤブレツボカビを培養すること、培養物からバイオマスを単離すること、バイオマスから微生物油を抽出すること、およびバイオマスから抽出された油の脂肪酸プロファイルを分析することができる。例えば、米国特許第5,130,242号を参照されたい。
【0056】
本発明はさらに、本発明の脂肪酸プロファイルを含む微生物油に関する。本発明の微生物油は、例えば、さらなる加工処理なしの、微生物のバイオマスから抽出される未精油; 精製、漂白および/もしくは脱臭などといったさらなる加工処理段階で微生物未精油を処理することによって得られる精油; 微生物未精油もしくは微生物精油を希釈することによって得られる希釈された微生物油; または、例えば、油中の脂肪酸(DHAなど)の濃度を高めるさらなる精製方法で微生物未精油もしくは微生物精油を処理することによって得られる濃縮油を含む、微生物に由来する任意の油でありうる。
【0057】
いくつかの態様において、微生物油は、約0重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%または少なくとも約5重量%のステロールエステル画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約0重量%〜約1.5重量%、約0重量%〜約2重量%、約0重量%〜約5重量%、約1重量%〜約1.5重量%、約0.2重量%〜約1.5重量%、約0.2重量%〜約2重量%または約0.2重量%〜約5重量%のステロールエステル画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満または約2重量%未満のステロールエステル画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%または少なくとも約90重量%のトリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約65重量%〜約95重量%、約75重量%〜約95重量%もしくは約80重量%〜約95重量%、または約97重量%、もしくは約98重量%のトリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%または少なくとも約5重量%の遊離脂肪酸画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約0.5重量%〜約5重量%、約0.5重量%〜約2.5重量%、約0.5重量%〜約2重量%、約0.5重量%〜約1.5重量%、約0.5重量%〜約1重量%、約1重量%〜約2.5重量%、約1重量%〜約5重量%、約1.5重量%〜約2.5重量%、約2重量%〜約2.5重量%または約2重量%〜約5重量%の遊離脂肪酸画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満または約1重量%未満の遊離脂肪酸画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%または少なくとも約5重量%のステロール画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約0.5重量%〜約1.5重量%、約1重量%〜約1.5重量%、約0.5重量%〜約2重量%、約0.5重量%〜約5重量%、約1重量%〜約2重量%または約1重量%〜約5重量%のステロール画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満または約1重量%未満のステロール画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約3.5重量%または少なくとも約5重量%のジグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、約1.5重量%〜約3重量%、約2重量%〜約3重量%、約1.5重量%〜約3.5重量%、約1.5重量%〜約5重量%、約2.5重量%〜約3重量%、約2.5重量%〜約3.5重量%または約2.5重量%〜約5重量%のジグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、油の約2重量%未満、約1.5重量%未満、約1重量%未満または約0.5重量%未満の不けん化物を含む。トリグリセリド画分などの、微生物油中に存在する脂質クラスは、フラッシュクロマトグラフィーにより分離され、かつ薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析されてもよく、または当技術分野において公知の他の方法により分離および分析されてもよい。
【0058】
いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはトリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%または少なくとも約80重量%のDHAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはトリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約40重量%〜約45重量%、約40重量%〜約50重量%、約40重量%〜約60重量%、約50重量%〜約60重量%、約55重量%〜約60重量%、約40重量%〜約65重量%、約50重量%〜約65重量%、約55重量%〜約65重量%、約40重量%〜約70重量%、約40重量%〜約80重量%、約50重量%〜約80重量%、約55重量%〜約80重量%、約60重量%〜約80重量%または約70重量%〜約80重量%のDHAを含む。いくつかの態様において、微生物油は、約45重量%もしくはそれ以下、約40重量%もしくはそれ以下、約35重量%もしくはそれ以下、約30重量%もしくはそれ以下、約25重量%もしくはそれ以下、約20重量%もしくはそれ以下、約15重量%もしくはそれ以下または約13重量%もしくはそれ以下のDHAを含んだステロールエステル画分を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはトリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約10重量%もしくはそれ以下、約9重量%もしくはそれ以下、約8重量%もしくはそれ以下、約7重量%もしくはそれ以下、約6重量%もしくはそれ以下、約5重量%もしくはそれ以下、約4重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下または約1重量%もしくはそれ以下のEPAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはトリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約2重量%〜約3重量%、約2重量%〜約3.5重量%、約2.5重量%〜約3.5重量%、約2重量%〜約6重量%、約2.5重量%〜約6重量%、約3.0重量%〜約6重量%、約3.5重量%〜約6重量%、約5重量%〜約6重量%または約2重量%〜約10重量%のEPAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、EPAを実質的に含まない。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、少なくとも約5:1、少なくとも約7:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約30:1または少なくとも約50:1の、DHAのEPAに対する重量比を含み、ここで微生物油および/または一つもしくは複数のその画分は10重量%またはそれ以下のEPAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、少なくとも約5:1、ただし約20:1未満の、DHAのEPAに対する重量比を含む。いくつかの態様において、DHAのEPAに対する重量比は約5:1〜約18:1、約7:1〜約16:1または約10:1〜約15:1である。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約0.1重量%〜約0.25重量%、約0.2重量%〜約0.25重量%、約0.1重量%〜約0.5重量%または約0.1重量%〜約1.5重量%のARAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約1.5重量%もしくはそれ以下、約1重量%もしくはそれ以下、約0.5重量%もしくはそれ以下、約0.2重量%もしくはそれ以下または約0.1重量%もしくはそれ以下のARAを含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、ARAを実質的に含まない。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約35:1、少なくとも約40:1、少なくとも約60:1、少なくとも約80:1、少なくとも約100:1、少なくとも約150:1、少なくとも約200:1、少なくとも約250:1または少なくとも約300:1の、DHAのARAに対する重量比を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約0.5重量%〜約1重量%、約0.5重量%〜約2重量%、約0.5重量%〜約2.5重量%、約0.5重量%〜約3重量%、約0.5重量%〜約3.5重量%、約0.5重量%〜約5重量%、約0.5重量%〜約6重量%、約1重量%〜約2重量%、約2重量%〜約3重量%、約2重量%〜約3.5重量%、約1重量%〜約2.5重量%、約1重量%〜約3重量%、約1重量%〜約3.5重量%、約1重量%〜約5重量%または約1重量%〜約6重量%のDPA n-6を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約6重量%もしくはそれ以下、約5重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下、約2.5重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下、約1重量%もしくはそれ以下または約0.5重量%もしくはそれ以下のDPA n-6を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、DPA n-6を実質的に含まない。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約6:1を上回る、少なくとも約8:1、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約50:1または少なくとも約100:1の、DHAのDPA n-6に対する重量比を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約5重量%もしくはそれ以下、約4重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下、約1.5重量%もしくはそれ以下、約1重量%もしくはそれ以下または約0.5重量%もしくはそれ以下のリノール酸(18:2 n-6)、リノレン酸(18:3 n-3)、エイコセン酸(20:1 n-9)およびエルカ酸(22:1 n-9)の各々を含む。いくつかの態様において、微生物油、ならびに/またはステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジグリセリド画分、極性画分(リン脂質画分を含む)およびそれらの組み合わせから選択される、一つもしくは複数のその画分は、約5重量%もしくはそれ以下、約4重量%もしくはそれ以下、約3重量%もしくはそれ以下、約2重量%もしくはそれ以下、約1.5重量%もしくはそれ以下または約1重量%もしくはそれ以下のヘプタデカン酸(17:0)を含む。いくつかの態様において、微生物油および/または一つもしくは複数のその画分は、約0.01重量%〜約5重量%、約0.05重量%〜約3重量%または約0.1重量%〜約1重量%のヘプタデカン酸を含む。
【0059】
トリグリセリド分子は3個の中心炭素原子(Csn-1H2R1-Csn-2H2R2-Csn-3H2R3)を含み、さまざまな位置異性体の形成を可能にする。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%または少なくとも約40%がsn-1、sn-2およびsn-3位のいずれか二つから選択されるトリグリセリド中の二つの位置にDHA (二置換DHA)を含んだ、トリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの約20%〜約40%、約20%〜約35%、約30%〜約40%または約30%〜約35%がsn-1、sn-2またはsn-3位のいずれか二つから選択されるトリグリセリド中の二つの位置にDHAを含んだ、トリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%または少なくとも約20%がsn-1、sn-2およびsn-3位の全ての位置にDHA (三置換DHA)を含んだ、トリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの約5%〜約20%、約5%〜約15%、約10%〜約20%または約10%〜約15%がsn-1、sn-2およびsn-3位の全ての位置にDHAを含んだ、トリグリセリド画分を含む。対照的に、米国特許第6,582,941号に報告されているTAG種は、三つすべての位置にDHAを含まない。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%または少なくとも約75%がsn-1、sn-2またはsn-3位のいずれか一つから選択されるトリグリセリド中の一つの位置にDHAを含んだ、トリグリセリド画分を含む。いくつかの態様において、微生物油は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積率に基づき、トリグリセリド画分中のトリグリセリドの約50%〜約75%、約50%〜約70%、約50%〜約65%、約60%〜約75%、約60%〜約70%または約60%〜約65%がsn-1、sn-2およびsn-3位のいずれか一つから選択されるトリグリセリド中の一つの位置にDHAを含んだ、トリグリセリド画分を含む。
【0060】
組成物
本発明はさらに、本発明のヤブレツボカビ、本発明の単離されたバイオマス、本発明の微生物油またはそれらの組み合わせを含む組成物に関する。
【0061】
本発明のヤブレツボカビ、バイオマスまたは微生物油はさらに、任意の公知の技法によって組成物の要件に基づき化学的にまたは物理的に改変または加工処理されてもよい。
【0062】
ヤブレツボカビ細胞またはバイオマスは、凍結乾燥、空気乾燥、噴霧乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥(凍結乾燥)または類似の過程を含むがこれらに限定されない方法によって組成物中で使用する前に乾燥されてもよい。あるいは、収集され洗浄されたバイオマスが乾燥なしで組成物中に直接用いられてもよい。例えば、米国特許第5,130,242号および同第6,812,009号を参照されたい。
【0063】
本発明の微生物油を出発材料として用い、DHAなどの脂肪酸中に濃縮された生成物をより効率的に産生することができる。例えば、本発明の微生物油を蒸留または尿素付加などの、当技術分野において公知のさまざまな精製技法に供して、より高濃度のDHAまたは別の脂肪酸を含む、より高力価の生成物を産生することができる。本発明の微生物油を化学反応に用いて、DHAのエステルおよび塩または別の脂肪酸などの油中の脂肪酸に由来する化合物を産生することもできる。
【0064】
本発明の組成物は一つまたは複数の賦形剤を含むことができる。本明細書において用いられる場合、「賦形剤」は、食物ならびに薬学的組成物、化粧品組成物および工業用組成物を含む本発明の組成物中で用いられて望ましい特徴を組成物に与える、成分または成分の混合物をいう。本発明の賦形剤は、薬学的組成物に添加される場合に「薬学的に許容される」賦形剤として記述されうるが、これは、賦形剤が正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題となる合併症を伴うことなく妥当な便益/リスク比に相応するようにして、望ましい接触時間にわたりヒトおよび動物の組織と接触させるのに適した化合物、材料、組成物、塩および/または投与剤形であることを意味する。いくつかの態様において、「薬学的に許容される」という用語は、動物における使用、およびより具体的にはヒトにおける使用に関して、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認され、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた国際薬局方に記載されていることを意味する。さまざまな賦形剤を用いることができる。いくつかの態様において、賦形剤は、アルカリ剤、安定剤、酸化防止剤、付着剤、分離剤、コーティング剤、外部位相成分(exterior phase component)、制御放出成分、溶媒、界面活性剤、保湿剤、緩衝剤、増量剤、皮膚軟化剤またはそれらの組み合わせでありうるが、これらに限定されることはない。賦形剤は、本明細書において論じられているものに加えて、限定されるものではないが、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed. (2005)に記載されている賦形剤を含むことができる。賦形剤を本明細書における特定の分類(例えば「溶媒」)に含めることは、賦形剤の役割を限定するのではなく例証するためであるよう意図される。特定の賦形剤が複数の分類の範囲内に入ることもある。
【0065】
本発明の組成物は、食品、薬学的組成物、化粧品および工業用組成物を含むが、これらに限定されることはない。
【0066】
いくつかの態様において、組成物は食品である。食品は、動物またはヒトが消費するための任意の食物であり、固体組成物も液体組成物もともに含む。食品は動物またはヒトの食物への添加物であってもよい。食物は一般食品; ミルク、飲料、治療用ドリンクおよび栄養ドリンクを含む、液体製品; 機能性食品; 栄養補助食品; 栄養補給食品; 未熟児用の調製粉乳を含む、乳児用調製粉乳; 妊婦または授乳婦用の食物; 成人用の食物; 高齢者用食物; ならびに動物用食物を含むが、これらに限定されることはない。
【0067】
いくつかの態様において、本発明のヤブレツボカビ、バイオマスまたは微生物油は、油、ショートニング、スプレッド、他の脂肪分、飲料、ソース、乳製品ベースもしくは大豆ベースの食物(ミルク、ヨーグルト、チーズおよびアイスクリームなど)、焼き菓子、例えば栄養補助食品(カプセルもしくは錠剤型の)としての、栄養製品、ビタミン補助食品、ダイエット用の栄養補助食品、粉末飲料、最終もしくは半最終粉末食品、ならびにそれらの組み合わせの一つもしくは複数として直接用いられてもよく、またはそれらの一つもしくは複数のなかに添加物として含められてもよい。
【0068】
本発明の微生物油を含みうる食品組成物の部分的なリストには、大豆ベースの製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト、飲料、クリーム、スプレッド、粉状ミルク); スープおよびスープミックス; パン生地、バター、ならびに例えば、ファインベーカリーウェア(fine bakery ware)、朝食用シリアル、ケーキ、チーズケーキ、パイ、カップケーキ、クッキー、バー、パン、ロールパン、ビスケット、マフィン、ペストリー、スコーン、クルトン、クラッカー、甘いもの(sweet goods)、スナックケーキ、パイ、グラノーラ/スナックバーおよびトースターペイストリーを含む焼成食品; キャンディー; 硬い菓子類; チョコレートおよび他の菓子類; チューインガム; 液体食品、例えばミルク、栄養ドリンク、乳児用調製粉乳、炭酸飲料、茶、流動食、フルーツジュース、フルーツベースの飲料、野菜ベースの飲料; マルチビタミンシロップ、食事代替物、医用食物およびシロップ; 粉末飲料ミックス; パスタ; 魚加工品; 肉加工品; 家禽加工品; グレイビーおよびソース; 調味料(ケチャップ、マヨネーズなど); 植物油ベースのスプレッド; 乳製品; ヨーグルト; バター; 冷凍乳製品; アイスクリーム; 冷凍デザート; 冷凍ヨーグルト; 離乳食などの半固体食品; プリンおよびゼラチンデザート; 加工および未加工チーズ; パンケーキミックス; エネルギーバーを含むフードバー; ワッフルミックス; サラダドレッシング; 代用卵ミックス; ナッツおよびナッツベースのスプレッド; ポテトチップスおよび他のチップスまたはクリスプスなどの塩味スナック、コーンチップス、トルティーヤチップス、成形スナック、ポップコーン、プレッツェル、ポテトクリスプス、ならびにナッツ; ディップ、ドライフルーツスナック、ミートスナック、ポークラインズ、ヘルスフードバーおよびライス/コーンケーキなどの特製スナックが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0069】
いくつかの態様において、本発明の微生物油を用いて、乳児用調製粉乳を補完することができる。乳児用調製粉乳には単独で、またはアラキドン酸(ARA)産生微生物に由来する物理的に精製された油との組み合わせで本発明の微生物油を補完することができる。例えば、ARA産生微生物は、モルティエレラアルピナ(Mortierella alpina)またはモルティエレラシュムッケリ節(Mortierella sect. schmuckeri)である。あるいは、乳児用調製粉乳にはARASCO(登録商標) (Martek Biosciences, Columbia, MD)を含めて、ARAに富む油との組み合わせで本発明の微生物油を補完することができる。
【0070】
いくつかの態様において、組成物は動物飼料である。「動物」は、動物界に属する任意の非ヒト生物を意味し、非限定的に、水生動物および陸生動物を含む。「動物飼料」または「動物食」という用語は、魚類であれ、非ヒト動物; 商業用魚類; 観賞魚; 稚魚; 双殻類; 軟体動物; 甲殻類; 貝類; エビ; 幼虫エビ; ホウネンエビ; ワムシ; 塩水エビ; ろ過摂食動物; 両生類; 爬虫類; 哺乳類; ペット; 農場動物; 動物園の動物; スポーツ用動物; 種畜; 競走用動物; ショー用動物; 在来動物(heirloom animal); 希少動物または絶滅危惧動物; 伴侶動物; イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウスまたはウマなどの愛玩動物; サル(例えば、オマキザル、アカゲザル、アフリカミドリザル、パタスザル、カニクイザルおよびミドリザル)、類人猿、オランウータン、ヒヒ、テナガザルならびにチンパンジーなどの霊長類; イヌおよびオオカミなどのイヌ科動物; ネコ、ライオンおよびトラなどのネコ科動物; ウマ、ロバおよびシマウマなどのウマ科動物; 雌ウシ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの食用動物; シカおよびキリンなどの有蹄動物; マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどのげっ歯類などを対象とした任意の飼料をいう。動物飼料は、水産養殖用の飼料、愛玩動物用の飼料を含むペット用の飼料、動物園動物用の飼料、使役動物のための飼料、家畜用の飼料またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されることはない。
【0071】
いくつかの態様において、組成物は、ヒトによる消費のために肉、卵またはミルクが取り出される任意の動物などの、ヒトによって肉または産物が消費される任意の動物用の飼料または飼料添加物である。そのような動物に餌として与えられる場合、LC-PUFAなどの栄養素を食肉、ミルク、卵またはそのような動物の他の産物に取り込ませて、これらの栄養素のその含量を増加させることができる。
【0072】
いくつかの態様において、組成物は、粉々にされて動物プランクトン、ホウネンエビ、ワムシおよびろ過摂食動物による消費に適したサイズの粒子を形成できる噴霧乾燥材料である。いくつかの態様において、組成物から栄養を得た動物プランクトン、ホウネンエビまたはワムシが今度は、稚魚、魚、貝類、双殻類または甲殻類に餌として与えられる。
【0073】
いくつかの態様において、組成物は薬学的組成物である。適当な薬学的組成物は、抗炎症性組成物、冠動脈心疾患の処置薬、動脈硬化症の処置薬、化学療法剤、活性賦形剤、骨粗鬆症薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗ヘリコバクターピロリ薬、神経変性疾患の処置薬、変性肝疾患の処置薬、抗生物質、コレステロール降下組成物およびトリグリセリド降下組成物を含むが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、組成物は医療用食物である。医療用食物は、医師の監督下で外部から投与または消費される組成物の中に存在する食物であり、かつ認められている科学原理に基づいて独特の栄養所要量が医学的評価によって確立されている、病状の特別な食事管理を目的とする該食物を含む。
【0074】
いくつかの態様において、微生物油は投与剤形で処方することができる。投与剤形は、限定されるものではないが、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、丸剤、粉末および顆粒、ならびに非経口投与剤形を含むことができ、これには有効量の微生物油を含む溶液、懸濁液、乳濁液および乾燥粉末が含まれるが、これらに限定されることはない。そのような処方物はまた、薬学的に許容される希釈剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、疎水性媒体、水溶性媒体、乳化剤、緩衝液、保湿剤、湿潤剤、可溶化剤、保存料などを含みうることも当技術分野において公知である。投与剤形は、限定されるものではないが、錠剤、糖衣錠、カプセル、カシェ剤および丸剤を含むことができ、これらには微生物油および一つまたは複数の適当な薬学的に許容される担体が含まれる。
【0075】
経口投与の場合、微生物油を当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。そのような担体は、処置される被験体による経口摂取のために、本発明の微生物油が錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方されることを可能にする。いくつかの態様において、投与剤形は錠剤、丸剤またはカプレットである。経口用の薬学的調製物は、固体賦形剤を添加し、得られた混合物を任意で粉砕し、必要に応じて、適当な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を加工処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得ることができる。適当な賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトールを含むが、これらに限定されない、糖類などの増量剤; 限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物が含まれるが、これらに限定されることはない。所望の場合、限定されるものではないが、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムといったその塩などの、崩壊剤が添加されてもよい。経口的に使用できる薬学的調製物は、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびにゼラチン製の軟質、密閉カプセルおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含むが、これらに限定されることはない。
【0076】
いくつかの態様において、組成物は化粧品である。化粧品は乳濁液、クリーム、ローション、マスク、石鹸、シャンプー、化粧水、顔用クリーム、コンディショナー、メーキャップ、入浴剤および分散液を含むが、これらに限定されることはない。化粧剤は薬用または非薬用であってよい。
【0077】
いくつかの態様において、組成物は産業用組成物である。いくつかの態様において、組成物は一つまたは複数の製造物のための出発材料である。製造物は、重合体; 写真感光材料; 洗浄剤; 産業用油; または産業用洗浄剤を含むが、これらに限定されることはない。例えば、米国特許第7,259,006号には、ベヘン酸の産生のためにDHAを含有する脂肪および油を用いること、ならびにベヘン酸を用いた写真感光材料の産生について記述されている。
【0078】
組成物を使用する方法
いくつかの態様において、組成物はヒトまたは動物での病状の処置において用いることができる。
【0079】
「処置する」および「処置」という用語は、その目的が、望ましくない生理学的状態、疾患もしくは障害を防ぐもしくは遅らせる(小さくする)こと、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることであるような、治療的処置も予防的または防止的措置をいう。本発明の目的上、有益なまたは所望の臨床結果は、病状、疾患もしくは障害と関連する症状もしくは症候の改善; 病状、疾患もしくは障害の程度の縮減; 病状、疾患もしくは障害の安定化(すなわち、病状、疾患もしくは障害が悪化していない状態); 病状、疾患もしくは障害の発症もしくは進行の遅延; 病状、疾患もしくは障害の改善; 病状、疾患もしくは障害の寛解(部分寛解であれ完全寛解であれ、かつ検出可能であれ検出不能であれ); または病状、疾患もしくは障害の好転の増強を含むが、これらに限定されることはない。処置は過度の副作用なく臨床的に有意な反応を誘発することを含む。処置はまた、処置を受けていない場合に予測される生存時間と比べて生存時間を延ばすことを含む。
【0080】
いくつかの態様において、組成物はにきび、急性炎症、加齢黄斑変性症、アレルギー、アルツハイマー病、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、血中脂質障害、乳房嚢胞、悪液質、がん、心臓再狭窄、心血管疾患、慢性炎症、冠動脈性心疾患、嚢胞性線維症、肝臓の変性障害、糖尿病、湿疹、胃腸障害、心疾患、高トリグリセリドレベル、高血圧、活動亢進、免疫疾患、腫瘍増殖の阻害(inhibiting tumor growth)、炎症状態、腸障害、腎臓機能障害、白血病、大うつ、多発性硬化症、神経変性障害、変形性関節炎、骨粗しょう症、ペルオキシソーム病、子癇前症、早産、乾癬、肺障害、関節リウマチ、心疾患のリスクまたは血栓症などの、病状、疾患または障害を処置するために用いられる。
【0081】
いくつかの態様において、組成物は妊娠後期における妊娠期間を増やすために用いられる。
【0082】
いくつかの態様において、組成物は血圧を制御するために用いられる。
【0083】
いくつかの態様において、組成物は認知機能を改善または維持するために用いられる。
【0084】
いくつかの態様において、組成物は記憶力を改善または維持するために用いられる。
【0085】
組成物または投与剤形は、組成物または投与剤形と適合する任意の経路によって被験体の体内に投与することができる。物質が被験体によって被験体の体内に導入される場合、または別の者、機械もしくは装置が物質を被験体の体内に導入する場合、物質は「投与され」るものと考えられる。「投与する」とは、それゆえ、例えば、自己投与、他者による投与、および間接投与を含む。「投与」との関連で本明細書において用いられる「持続的」または「連続的」という用語は、投与の頻度が少なくとも1日1回であることを意味する。しかしながら、投与の頻度は1日1回を超えてもよく、本明細書において規定される投与量レベルを上回らない限り、依然として「持続的」または「連続的」であり、例えば、1日2回またはさらに3回であってもよいことに留意されたい。投与のための手段および方法は、当技術分野において公知であり、当業者は指針としてさまざまな薬理学の参考文献を参照することができる。例えば「Modern Pharmaceutics」, Banker & Rhodes, Informa Healthcare, USA, 4th ed. (2002); および「Goodman & Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics」, McGraw-Hill Companies, Inc., New York, 10th ed. (2001)を参考にすることができる。
【0086】
「被験体」、「個体」または「患者」とは、診断、予後診断または治療が望まれる、ヒトか非ヒトかを問わない任意の被験体を意味する。哺乳類被験体は、ヒト; ペット; 農場動物; 動物園の動物; スポーツ用動物; イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウスまたはウマなどの愛玩動物; サル(例えば、オマキザル、アカゲザル、アフリカミドリザル、パタスザル、カニクイザルおよびミドリザル)、類人猿、オランウータン、ヒヒ、テナガザルならびにチンパンジーなどの霊長類; イヌおよびオオカミなどのイヌ科動物; ネコ、ライオンおよびトラなどのネコ科動物; ウマ、ロバおよびシマウマなどのウマ科動物; 雌ウシ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの食用動物; シカおよびキリンなどの有蹄動物; マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどのげっ歯類などを含むが、これらに限定されることはない。被験体という用語はまた、モデル動物、例えば、疾患モデル動物を包含する。いくつかの態様において、被験体という用語は、経済的にまたは他の点で、有益な動物、例えば、経済的に重要な種畜、競走用動物、ショー用動物、在来動物、希少動物もしくは絶滅危惧動物、または伴侶動物を含む。ある種の態様において、被験体はヒト被験体である。ある種の態様において、被験体は非ヒト被験体である。
【0087】
組成物は「治療的有効量」、「予防的有効量」、「治療的用量」または「予防的用量」として投与することができる。「治療的有効量」または「治療的用量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量および時間で、有効な量をいう。治療結果は、例えば、症状の緩和、生存期間の延長、可動性の改善などでありうる。治療結果は「治癒」である必要はない。「予防的有効量」または「予防的用量」は、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量および時間で、有効な量をいう。典型的には、予防的用量は疾患の前にまたは疾患の初期段階に被験体において用いられるので、予防的有効量は、進行期の疾患の処置のための治療的有効量よりも少ない。
【0088】
被験体に投与されるヤブレツボカビ、バイオマスまたは微生物油のDHAまたは他の脂肪酸成分の量に基づき、薬学的組成物の種々の投与量を被験体に投与することができる。「1日投与量(daily dosage)」、「1日投与量レベル(daily dosage level)」および「1日投与量(daily dosage amount)」という用語は、本明細書において1日に(24時間あたりに)投与されるDHAまたは他の脂肪酸成分の総量をいう。したがって、例えば、2 mgの1日投与量での被験体へのDHAの投与は、DHA 2 mgを含む単一の投与剤形、またあるいは、DHA各0.5 mgを含む四つの投与剤形(DHA計2 mgの場合)としてDHAが投与されるかを問わず、被験体が1日にDHA計2 mgを受けることを意味する。いくつかの態様において、DHAの日量は単一の投与剤形で、または二つの投与剤形で投与される。本発明の投与剤形は単回使用または複数回使用で服用することができる。例えば、各錠剤がDHA 0.5 mgを含む、四つの錠剤が毎日服用される場合、全四つの錠剤が1日1回服用されてもよく、または2つの錠剤が1日2回服用されてもよく、または1つの錠剤が6時間ごとに服用されてもよい。いくつかの態様において、1日投与量はDHA約100 mg〜約15 gである。いくつかの態様において、1日投与量は約100 mg〜約250 mg、約100 mg〜約500 mg、約100 mg〜約1 g、約1 g〜約2.5 g、約1 g〜約5 g、約1 g〜約10 g、約1 g〜約15 g、約5 g〜約10 g、約5 g〜約15 g、約10 g〜約15 g、約100 mg〜約10 g、約100 mg〜約5 gまたは約100 mg〜約2.5 gである。
【0089】
本発明の組成物または投与剤形の投与は、さまざまな投与計画を用いて達成することができる。例えば、いくつかの態様において、投与は連続的に毎日行われ、またあるいは、一日おきに(1日に2回)行われる。投与は一日または複数日で行うことができる。
【0090】
組成物および投与剤形の投与を、病状の処置に用いられる他の投与計画と組み合わせることができる。例えば、本発明の方法を食事療法(例えば、炭水化物の少ない食事、高タンパクの食事、高繊維質の食事など)、運動療法、減量療法、禁煙療法、またはそれらの組み合わせと組み合わせることができる。本発明の方法を病状の処置において他の医薬品と組み合わせて用いることもできる。本発明の組成物または投与剤形を、他の投与計画または医薬品の前または後に投与することができる。
【0091】
組成物を含むキット
本発明はさらに、本発明の組成物の一つまたは複数の単位を含んだキットまたはパッケージに関する。キットまたはパッケージは、本発明のヤブレツボカビ、バイオマスもしくは微生物油を含む食品、薬学的組成物、化粧品もしくは産業用組成物の単位、またはそれらの組み合わせを含むことができる。キットまたはパッケージは、食物、化粧品、薬学的組成物または産業用組成物の調製のために本発明のヤブレツボカビ、バイオマスもしくは微生物油を含む添加物、またはそれらの組み合わせを含むこともできる。
【0092】
いくつかの態様において、キットまたはパッケージは、本発明の方法によって投与される薬学的組成物の一つまたは複数の単位を含む。キットまたはパッケージは一つの投与単位、または二つ以上の投与単位(すなわち、複数の投与単位)を含むことができる。複数の投与単位がキットまたはパッケージ中に存在する場合、複数の投与単位は任意で連続投与用に準備されてもよい。
【0093】
本発明のキットは、キットの単位または投与剤形と関連する使用説明書を任意で含んでもよい。そのような使用説明書は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する形態であってよく、その通知は病状または障害を処置するためにヒトに投与するための、機関による製造、使用または販売の承認を反映するものである。使用説明書は、本発明の方法によるキット中の単位または投与剤形の使用に関する情報を伝える任意の形態であってよい。例えば、使用説明書は、印刷物の形態であってよく、または事前記録された媒体装置の形態であってもよい。
【0094】
患者の検査の間に、医療専門家は、本発明の方法の一つの実施が患者に適しているかを判定することができ、または医師は、本発明の方法の一つの実施によって患者の状態を改善できるかを判定することができる。任意の投与計画を指示する前に、医師は、例えば、投与計画と関連する種々のリスクおよび便益に関して患者に助言することができる。投与計画と関連する全ての既知のおよび疑われるリスクの完全な開示を患者に提供することができる。そのような助言は口頭で、および文書で提供することができる。いくつかの態様において、医師は、製品情報、教材などのような、投与計画に関する文献材料を患者に提供することができる。
【0095】
本発明はまた、販売場所で消費者情報とともに投与剤形を分配する段階を含む、処置の方法に関して消費者を教育する方法に関する。いくつかの態様において、分配は、薬剤師または医療提供者がいる販売場所で行われる。
【0096】
「消費者情報」という用語は、英語テキスト、非英語テキスト、視覚映像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および生の消費者サービス担当者へのアクセスを含むことができるが、これらに限定されることはない。いくつかの態様において、消費者情報は、本発明の方法による投与剤形の使用説明書、適切な年齢の使用、適応症、禁忌、適切な投薬、警告、ウェブサイトアドレスの電話番号を提供する。いくつかの態様において、本方法はさらに、本発明の方法による開示の投与計画の使用に関する消費者の質問に答える立場にある関係者へ専門的情報を提供する段階を含む。「専門的情報」という用語は、医療専門家が消費者の質問に答えられるように設計された、本発明の方法によって投与される場合の投与計画に関する情報を含むが、これらに限定されることはない。
【0097】
「医療専門家」は、例えば、医師、医師助手、ナースプラクティショナー、薬剤師および顧客サービス担当者を含む。
【0098】
本発明を一般的に記述してきたが、本明細書において提供される例を参照することによってさらなる理解を得ることができる。これらの例は例示のみを目的とするものであり、限定するものであると意図されない。
【実施例】
【0099】
実施例1
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビを分類学的分類のために特徴付けた。
【0100】
サンプルを干潮の間に潮間帯生息場から収集した。水、堆積物、生きた植物材料および腐敗性植物/動物残骸を無菌の50 ml試験管の中に入れた。水とともに各サンプルの一部を分離培地の固体寒天プレート上に広げた。分離培地は人工海水500 ml、蒸留水500 ml、グルコース1 g、グリセロール1 g、寒天13 g、グルタミン酸塩1 g、酵母エキス0.5 g、カゼイン加水分解物0.5 g、ビタミン溶液(100 mg/Lチアミン、0.5 mg/Lビオチン、B12 0.5 mg) 1 ml、微量ミネラル溶液(1リットルあたりFeCl36H2O 6.0 g、H3BO3 6.84 g、MnCl24H2O 0.86 g、ZnCl2 0.06 g、CoCl26H2O 0.026、NiSO4H2O 0.052 g、CuSO45H2O 0.002 gおよびNa2MoO42H2O 0.005 gを含有するPII金属) 1 ml、ならびにペニシリンGおよび硫酸ストレプトマイシン各500 mgからなった。寒天プレートを暗所中20〜25℃でインキュベートした。2〜4日後、寒天プレートを拡大下で観察し、細胞のコロニーを無菌のつまようじで採取し、新たな培地プレート上に再ストリークした。混入生物が除去されるまで、細胞を新鮮培地に繰り返しストリークした。
【0101】
寒天プレート由来のコロニーを、半分強の海水および加圧滅菌された孵化したての塩水幼虫エビの懸濁液(1 ml)を含むペトリ皿に移した。2〜3日後に塩水幼虫エビは胞子嚢の塊で一面が覆われるようになった。飛散した遊走子は放出時に双鞭毛であり、成熟胞子嚢から離れるようにして活動的に遊泳し、その壁残留物は胞子飛散後に、(位相差顕微鏡において)明確に視認できた。胞子嚢は直径が12.5 μm〜25 μmあり、遊走子はサイズが2.5 μm〜2.8 μm×4.5 μm〜4.8 μmであった。個々の胞子嚢あたり8〜24個の胞子があった。定着した胞子嚢は容積を増し、急速に二分裂を起こし、四分子、八分子、および最終的には胞子嚢の塊をもたらした。四分子形成は胞子嚢の成熟前のかなり早い段階で始まった。これらの特徴はシゾキトリウム属に一致している。
【0102】
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビをさらに、その18s rRNA遺伝子と既知種のそれとの類似性に基づき特徴付けた。ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来の全ゲノムDNAを標準的な手順(Sambrook J. and Russell D. 2001. Molecular cloning: A laboratory manual, 3rd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)によって調製し、18s RNA遺伝子のPCR増幅に用いた。18s rRNA遺伝子のPCR増幅を既述(Honda et. al., J. Eukaryot. Microbiol. 46(6) 1999)のプライマーで行った。染色体DNAの鋳型でのPCR条件は以下の通りであった: 全量50 μL中0.2 μM dNTPs、0.1 uMの各プライマー、8% DMSO、染色体DNA 200 ng、2.5 U PfuUltra(登録商標) II fusion HS DNAポリメラーゼ(Stratagene)および1×PfuUltra(登録商標)緩衝液(Stratagene)。PCRプロトコルには以下の段階が含まれた: (1) 2分間95℃; (2) 45秒間95℃; (3) 30秒間55℃; (4) 2分間72℃; (5) 段階2〜4を40サイクル繰り返す; (6) 5分間72℃; および(7) 6℃で保持。
【0103】
PCR増幅により、上記染色体の鋳型を用いた予想サイズを有する異なるPCR産物を得た。PCR産物を製造元の使用説明書にしたがってベクターpJET1.2/blunt (Fermentas)にクローニングし、供給されている標準プライマーを用いて挿入断片の配列を決定した。
【0104】
表2は、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来の18s rRNA配列と、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information; NCBI)電子データベース中のDNA配列との比較を示す。手短に言えば、「%同一性」は、DNAアライメントの標準であるVectorNTIプログラム(Invitrogen)の「AlignX」プログラム内のスコアリング行列「swgapdnamt」によって判定された。「%網羅」はNCBI電子データベースからのBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)計算の結果から取っており、整列されたセグメントに含まれる問い合わせ配列の長さの割合である。
【0105】
(表2)18s rRNA配列の比較

(p): 部分配列を示す
【0106】
表2に示されるように、%同一性の点で、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来の18s rRNA遺伝子配列(SEQ ID NO: 1)は、Honda, D. et al, J. Euk. Micro. 46(6): 637-647 (1999)から提供されたT.アグレガツム(T. aggregatum)の18s rRNA遺伝子配列と、同一ではないが、密接に関連していることが分かった。ヤブレツボカビアグレガツム(Thraustochytrium aggregatum)に対して公開されている18s rRNA配列は部分配列であり、およそ71個のDNAヌクレオチドギャップを配列の中央に有する。%網羅の点で、本発明の分離株の18s rRNA遺伝子配列は、T.アグレガツムとよりもシゾキトリウム種ATCC 20888とより密接に関連している。
【0107】
アクチンおよびβ-チューブリンなどの高度に保存されたタンパク質は生物間の系統発生関係を評価するためのマーカーとして、18s rRNA遺伝子とともに、広く用いられている(Baldauf, S. M. Am. Nat. 154, S178 (1999))。ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来の全ゲノムDNAも、アクチン遺伝子とβ-チューブリン遺伝子の両方のPCR増幅のための鋳型として用いた。PCR増幅は、T.アグレガツム由来のアクチンおよびβ-チューブリンDNA配列の保存領域に対して設計されたプライマーで行った。
【0108】
染色体DNAの鋳型でのPCR条件は以下の通りであった: 全量50 μL中0.2 μM dNTPs、0.1 uMの各プライマー、8% DMSO、染色体DNA 200 ng、2.5 U Herculase(登録商標) II fusion DNAポリメラーゼ(Stratagene)および1× Herculase(登録商標)緩衝液(Stratagene)。PCRプロトコルには以下の段階が含まれた: (1) 2分間95℃; (2) 30秒間95℃; (3) 30秒間55℃; (4) 2分間72℃; (5) 段階2〜4を40サイクル繰り返す; (6) 5分間72℃; および(7) 6℃で保持。
【0109】
PCR増幅により、上記染色体の鋳型を用いて予想サイズを有する異なるPCR産物を得た。各PCR産物を製造元の使用説明書にしたがってベクターpJET1.2/blunt (Fermentas)にクローニングし、供給されている標準プライマーを用いて各々の挿入断片の配列を決定した。
【0110】
表3は、公開データベースにおいて利用可能なアクチン配列と比較したときの、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来のアクチンアミノ酸配列(SEQ ID NO: 3)の同一性を示す。同一性は、タンパク質アライメントの標準であるVectorNTIプログラムの「AlignX」プログラム内のスコアリング行列「blosum62mt2」の使用によって判定された。
【0111】
(表3)アクチンタンパク質配列の%同一性の比較

【0112】
表4は、公開データベースにおいて利用可能なβ-チューブリン配列と比較したときの、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ由来のβ-チューブリンアミノ酸配列(SEQ ID NO: 5)の同一性を示す。同一性は、タンパク質アライメントの標準であるVectorNTIプログラムの「AlignX」プログラム内のスコアリング行列「blosum62mt2」の使用によって判定された。
【0113】
(表4)β-チューブリンタンパク質配列の%同一性の比較

【0114】
上記の特徴付けに基づき、ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビは、新しいシゾキトリウム種に相当するものと考えられ、それゆえ、シゾキトリウム種ATCC PTA-9695とも表される。
【0115】
実施例2
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビは、下記のように、さまざまな培養条件の下で高レベルの細胞増殖をもたらした。典型的な培地および培養条件を表1に示す。また、高レベルの脂肪酸およびDHAが認められた(すなわち、乾燥細胞重量の50重量%超が脂肪酸であり、脂肪酸メチルエステルの50重量%超がDHAであった)。
【0116】
pH 7.0で20%溶存酸素とともに22.5℃で8200 ppmのCl-を用いた炭素および窒素供給培養において、分離株は培養7日後に、140 g/Lの乾燥細胞重量をもたらし、70重量%の脂肪酸含量を有した。閉ループアンモニア供給を用い、pHを7.0で維持した。オメガ-3生産性はこれらの条件の下で8.92 g/(L日)であり、7日で4.7 g/L EPA (脂肪酸の5重量%)および56.3 g/L DHA (脂肪酸の57重量%)を有した。
【0117】
pH 7.0で20%溶存酸素とともに22.5℃で3640 ppmのCl-を用いた炭素および窒素供給培養において、分離株は培養7日後に、82 g/Lの乾燥細胞重量をもたらし、58重量%の脂肪酸含量を有した。オメガ-3生産性はこれらの条件の下で4.5 g/(L日)であり、7日で2.1 g/L EPA (脂肪酸の4.3重量%)および28.5 g/L DHA (脂肪酸の58.7重量%)を有した。
【0118】
pH 7.0で20%溶存酸素とともに22.5℃で980 ppmのCl-を用いた炭素および窒素供給培養において、分離株は培養7日後に、60 g/Lの乾燥細胞重量をもたらし、53重量%の脂肪酸含量を有した。オメガ-3生産性はこれらの条件の下で2.8 g/(L日)であり、7日で1.1 g/L EPA (脂肪酸の3.4重量%)および18.4 g/L DHA (脂肪酸の56.8重量%)を有した。
【0119】
実施例3
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビのバイオマスサンプル(サンプルA)から油を抽出した。バイオマスサンプルはpH 7.0で20%溶存酸素とともに22.5℃で980 ppmのCl-を用いた炭素および窒素供給培養において産生された。油をヘキサン抽出工程によりバイオマスサンプルAから抽出して、微生物油サンプルA1を得た。手短に言えば、ステンレス製の管およびステンレス製の玉軸受けを用いておよそ2時間ヘキサンとともに乾燥バイオマスをすりつぶした。スラリーを真空ろ過し、ろ液を回収した。ロータリーエバポレーターを用いてヘキサンを除去した。FRIOLEX (登録商標)工程(GEA Westfalia Separator UK Ltd., Milton Keynes, England)を用いて油をバイオマスサンプルAから抽出して、微生物油サンプルA2も得た。低圧フラッシュクロマトグラフィーを用いて微生物油サンプルA1およびA2から個別の脂質クラスを単離し、各クラスの重量百分率を判定した。炎イオン化検出を伴うガスクロマトグラフィー(GC-FID)を用い各クラスの脂肪酸プロファイルを脂肪酸メチルエステル(FAME)として判定した。
【0120】
フラッシュクロマトグラフィー
フラッシュクロマトグラフィーを用いて、未精油中に存在する脂質クラスを分離し、油中に存在する各クラスの重量百分率を判定した。クロマトグラフィーシステムには、石油エーテルおよび酢酸エチルから構成される移動相を3 mL/分で用いたSilica Gel 60 (EMD Chemical, Gibbstown, NJ)を利用した。段階的勾配を用いて、カラムから各脂質クラスを選択的に溶出した。移動相の勾配は100%石油エーテルから出発し、50%酢酸エチルで終了した(その後100%メタノールによる洗浄を行った)。Gilson FC 204 large-bedフラクションコレクター(Gilson, Inc., Middleton, WI)を用いて10 mLの試験管の中に画分を回収した。各試験管を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析し、(予想される保持因子(Rf)を有するTLCプレート上の単一のスポットにより判断したときに)個別の脂質クラスを含有する試験管をプールし、濃縮乾固し、秤量した。次いで全画分含量を重量測定法で判定した。
【0121】
TLC分析
薄層クロマトグラフィーをシリカゲルプレート上で行った。プレートを石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)からなる溶媒系によって溶出し、ヨウ素蒸気によって可視化した。各スポットのRf値を次いで、各脂質クラスについて報告されている文献値と比較した。
【0122】
脂肪酸分析
バイオマスのサンプルおよび単離された脂質クラスを脂肪酸組成につきFAMEとして分析した。サンプルをねじ蓋試験管の中に直接秤量し、トルエン中のC19:0内部標準(NuCheck, Elysian, MN) 1 mLおよびメタノール中1.5 NのHCl 2 mLを各試験管に加えた。試験管を短時間ボルテックスし、100℃で2時間加熱ブロック中に置いた。試験管を加熱ブロックから除去し、冷却させ、NaCl飽和水1 mLを加えた。試験管を再びボルテックスし、遠心分離し、上(有機)層の一部をGCバイアルに入れ、GC-FIDにより分析した。FAMEを、Nu-Chek-Prep GLC参照基準(Nu-Chek Prep, Inc., Elysian, MN)を用いて作成された3点内部標準較正曲線を用いて定量化し、保持時間に基づいて暫定的に同定した。存在する脂肪酸を全FAMEのmg/gおよび%として表現した。
【0123】
サンプルA1は、未精油をヘキサンに溶解し、カラムの頂部に適用することによって調製された。フラッシュクロマトグラフィーを用いたサンプルの分画の後、ステロールエステル画分は未精油の1.2重量%を占め、トリアシルグリセロール(TAG)画分は未精油の82.7重量%を占め、遊離脂肪酸(FFA)画分は未精油の0.9重量%を占め、ジアシルグリセロール(DAG)画分は未精油の2.9重量%を占めた。サンプルA1の未精油および単離画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表5および表6に示す。
【0124】
(表5)mg/g FAMEとして計算されたサンプルA1脂肪酸プロファイル

【0125】
(表6)%全FAMEとしてのサンプルA1脂肪酸プロファイル

【0126】
サンプルA2は、未精油をヘキサンに溶解し、カラムの頂部に適用することによって調製された。フラッシュクロマトグラフィーを用いたサンプルの分画の後、ステロールエステル画分は未精油の0.8重量%を占め、トリアシルグリセロール(TAG)画分は未精油の83.4重量%を占め、遊離脂肪酸(FFA)画分は未精油の1.8重量%を占め、ジアシルグリセロール(DAG)画分は未精油の5.6重量%を占めた。サンプルA2の未精油および単離画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表7および表8に示す。
【0127】
(表7)mg/g FAMEとして計算されたサンプルA2脂肪酸プロファイル

【0128】
(表8)%全FAMEとしてのサンプルA2脂肪酸プロファイル

【0129】
実施例4
実施例3に記述されるように、ヘキサン抽出(サンプルA1)またはFRIOLEX (登録商標)工程(GEA Westfalia Separator UK Ltd., Milton Keynes, England) (サンプルA2)を用いてATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビから前に抽出されていた微生物油のサンプルからトリアシルグリセリド(TAG)を単離した。大気圧化学イオン化質量分析(APCI-MS)による検出を伴う非水性逆相高性能液体クロマトグラフィー(NARP-HPLC)を用いて各TAG異性体の相対面積率を判定し、質量分析断片化パターンを用いて各位置異性体の仮同定を行った。
【0130】
TAGを含む、個々の脂質クラスをフラッシュクロマトグラフィーによって単離した。HPLC/APCI-MSによりTAG画分を分析して、どの脂肪酸成分が各TAG種に存在するか、および各TAG種の相対量を判定した。各TAGピークの仮同定は各ピークのAPCIスペクトルおよび保持時間に基づいた。NARP-HPLCを用いた場合、各TAGの保持は、アシル鎖の全てにおける全炭素数−2×二重結合数と定義される等量炭素数(ECN)とともに増す。また、最適なクロマトグラフィー条件を用いた場合、同じECMを有するが、異なる分布の飽和および不飽和脂肪酸を有するTAG種、ならびにさまざまな鎖長を有する脂肪酸の重要な対も分離することができる。各TAGピークのAPCI質量スペクトルはプロトン化した分子イオン[M + H]+、アンモニウム付加イオン[M + NH4]+およびDAG断片イオンの質量を与える。各TAGは特有の質量スペクトルを生じ、DAG断片イオンの質量は各TAG種の同一性を判定する手助けとなる。sn-2位からのアシル基の喪失に対応する断片イオンは、sn-1位またはsn-3位での喪失よりもエネルギー的に不利であるため、APCIスペクトルでは最も弱いシグナルであると考えられる。Modern Methods for Lipid Analysis by Liquid Chromatography Mass Spectrometry and Related Techniques 276-297 (William Craig Byrdwell ed., 2005)。
【0131】
フラッシュクロマトグラフィー
フラッシュクロマトグラフィーを用いて、未精油中に存在する脂質クラスを分離し、油中に存在する各クラスの重量百分率を判定した。クロマトグラフィーシステムには、石油エーテルおよび酢酸エチルから構成される移動相を3 mL/分で用いたSilica Gel 60を利用した。段階的勾配を用いて、カラムから各脂質クラスを選択的に溶出した。移動相の勾配は100%石油エーテルから出発し、50%酢酸エチルで終了した(その後100%メタノールによる洗浄を行った)。Gilson FC 204 large-bedフラクションコレクター(Gilson, Inc., Middleton, WI)を用いて20 mLの試験管の中に画分を回収した。各試験管をTLCによって分析し、(予想される保持因子(Rf)を有するTLCプレート上の単一のスポットにより判断したときに)個別の脂質クラスを含有する試験管をプールし、濃縮乾固し、秤量した。次いで全画分含量を重量測定法で判定した。
【0132】
TLC分析
薄層クロマトグラフィーをシリカゲルプレート上で行った。プレートを石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)からなる溶媒系によって溶出し、ヨウ素蒸気によって可視化した。次いで、各スポットのRf値を、各脂質クラスについて報告されている文献値と比較した。
【0133】
HPLC/APCI-MS分析
使用したLC/MSシステムは大気圧化学イオン化(APCI)およびHewlett Packardモデル1100質量選択検出器(MSD)を備えたHewlett Packard model 1100 HPLC (Agilent Technologies, Inc., Santa Clara, CA)からなった。HPLC法では、直列につながれた二本のPHENOMENEX (登録商標) C18カラム(250 mm×4.6 mm、5 μm; Phenomenex, Inc. (Torrance, CA))、1 mL/分の流速、2 μLの注入量、および50℃のカラム温度を利用した。移動相はイソプロパノール(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)中0.1%の酢酸アンモニウムからなった。20%の溶媒Aで始め、40分で75%の溶媒Aまで増やし、5分間75%の溶媒Aで保ち、1分で20%の溶媒Aに戻し、かつさらに9分間20%の溶媒Aで保つ、直線勾配を用いた。150のフラグメンター電圧、6 L/分の乾燥気体流、45 psigの噴霧器圧力、350℃の乾燥気体温度、325℃の気化器温度、3500 Vのキャピラリ電圧および10 μAのコロナ電流を用い、MSD質量範囲をm/z 400〜1150に設定した。
【0134】
トリドコサヘキサエノイン(Tri-DHA)
Tri-DHA STD (NuCheck, Elysian, MN)を用いて、クロマトグラフィーシステムおよび検出器の応答精度を評価した。Tri-DHAピークの保持時間は22.5分であり、全イオンクロマトグラム(TIC)は良好なシグナル対ノイズ比を示した。Tri-DHAピークのAPCI質量スペクトルはm/z 1023.7でプロトン化した分子イオン[M + H]+、m/z 1040.8でアンモニウム付加イオン[M + NH4]+およびm/z 695.5で単一の特徴的なDAG断片イオンを示す。
【0135】
単離TAG画分のサンプルをヘキサン中で調製し、NARP HPLC/APCI-MSにより分析して個々のTAG異性体の同一性を判定した。
【0136】
各ピークの質量スペクトルを評価し、下記表9および10にまとめられているように、各脂肪酸成分の仮同定を行った。
【0137】
(表9)サンプルA1でのLC/APCI-MSによるTAG種の仮同定

【0138】
(表10)サンプルA2でのLC/APCI-MSによるTAG種の仮同定

【0139】
実施例5
実施例3に記述されるように、Friolex工程を用いて発酵ブロスから油を抽出した後に、未精油を精製、漂白および脱臭段階によりさらに加工処理して最終油を得た。最終油を高オレイン酸ヒマワリ油で希釈して、およそ400 mg/gのDNA含量を有する完成商業油を得た。個々の脂質クラスを単離し、炎イオン化検出を伴うガスクロマトグラフィー(GC-FID)を用い各クラスの脂肪酸プロファイルを脂肪酸メチルエステル(FAME)として判定した。
【0140】
フラッシュクロマトグラフィー
フラッシュクロマトグラフィーを用いて、未精油中に存在する脂質クラスを分離し、油中に存在する各クラスの重量百分率を判定した。クロマトグラフィーシステムには、石油エーテルおよび酢酸エチルから構成される移動相を3 mL/分で用いたSilica Gel 60 (EMD Chemical, Gibbstown, NJ)を利用した。段階的勾配を用いて、カラムから各脂質クラスを選択的に溶出した。移動相の勾配は100%石油エーテルから出発し、50%酢酸エチルで終了した(その後100%メタノールによる洗浄を行った)。Gilson FC 204 large-bedフラクションコレクター(Gilson, Inc., Middleton, WI)を用いて10 mLの試験管の中に画分を回収した。各試験管を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析し、(予想される保持因子(Rf)を有するTLCプレート上の単一のスポットにより判断したときに)個別の脂質クラスを含有する試験管をプールし、濃縮乾固し、秤量した。次いで全画分含量を重量測定法で判定した。
【0141】
TLC分析
薄層クロマトグラフィーをシリカゲルプレート上で行った。プレートを石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)からなる溶媒系によって溶出し、ヨウ素蒸気によって可視化した。各スポットのRf値を次いで、各脂質クラスについて報告されている文献値と比較した。
【0142】
脂肪酸分析
最終油のサンプルおよび単離された脂質クラスを脂肪酸組成につきFAMEとして分析した。サンプルをねじ蓋試験管の中に直接秤量し、トルエン中のC19:0内部標準(NuCheck, Elysian, MN) 1 mLおよびメタノール中1.5 NのHCl 2 mLを各試験管に加えた。試験管を短時間ボルテックスし、100℃で2時間加熱ブロック中に置いた。試験管を加熱ブロックから除去し、冷却させ、NaCl飽和水1 mLを加えた。試験管を再びボルテックスし、遠心分離し、上(有機)層の一部をGCバイアルに入れ、GC-FIDにより分析した。FAMEを、Nu-Chek-Prep GLC参照基準(Nu-Chek Prep, Inc., Elysian, MN)を用いて作成された3点内部標準較正曲線を用いて定量化し、保持時間に基づいて暫定的に同定した。存在する脂肪酸を全FAMEのmg/gおよび%として表現した。
【0143】
サンプルは、最終油250 mgをヘキサン600 μLに溶解し、カラムの頂部に適用することによって調製された。フラッシュクロマトグラフィーを用いたサンプルの分画の後、ステロールエステル画分は最終油の1.2重量%を占め、トリアシルグリセリド(TAG)画分は最終油の92.1重量%を占め、遊離脂肪酸(FFA)画分は最終油の2.1重量%を占め、ステロール画分は最終油の1.1重量%を占め、ジアシルグリセリド(DAG)画分は最終油の2.8重量%を占めた。
【0144】
プールされた画分のTLC分析から、FFAおよびステロール画分にそれぞれTAGおよびDAGが混じっていることが示された。FRIOLEX (登録商標)最終油および単離画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表11および表12に示す。
【0145】
(表11)mg/g FAMEとして計算された脂肪酸プロファイル

【0146】
(表12)%全FAMEとしての脂肪酸プロファイル

【0147】
実施例6
実施例4に記述されている技法を用いて、実施例5に記述されている最終油のトリアシルグリセリド(TAG)の分析を行った。下記表13および14にまとめられているように、各脂肪酸成分の仮同定を行った。
【0148】
(表13)主要TAG種の仮同定

【0149】
(表14)LC/APCI-MSによるTAG種の仮同定

【0150】
実施例7
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された単離ヤブレツボカビの二日齢の種菌のフラスコを、980 ppm Cl-を含む炭素および窒素供給培養液(ヤブレツボカビ用培地)にて調製した。
【0151】
以下の手順にしたがって突然変異誘発を行った。
【0152】
およそ50 mlの、T=2日齢無菌フラスコのものを、40 mlの無菌ガラスホモジナイザーの中に注ぎ入れた。ホモジナイザー中で50回のプランジを培養液に与えた。培養液をピペットアウトし、無菌の50ミクロンメッシュフィルタを通じてろ過し、これを50 mlの無菌の試験管の中に入れた(メッシュは、より小さな塊および単一細胞に50ミクロンのメッシュを通過させながらより大きなコロニー群を保持する手段として用いられた)。濃縮された単離物(macerate)の全体を、無菌の50 mlの試験管に回収した。単離培養物をボルテックスし、ヤブレツボカビ用培地を含有する試験管の中で最大100分の1倍のレベルでの希釈を行った。希釈された単離物のサンプルをボルテックスした後に、4〜5個のガラスビーズ(3 mmのガラスビーズ)を含有する、100×15 mmの、ヤブレツボカビ用培地の寒天ペトリ皿に接種材料200 μlを加えた。ビーズに、接種材料をプレート全体に均等に広げさせるようにして、各プレートを穏やかに撹拌した。ビーズをプレートから取り除き、プレートを約5分間蓋を載せた状態で静置させて乾燥させた。手順が薄暗がりで行われるように、無菌フードと隣接部の両方の光を消した。手順を実行できるように最小限の光は利用可能であったが、それは間接的で、薄暗いもののみであった。
【0153】
5枚の複製プレートをXLクロスリンカー(Spectronics Corporation, New York)の底面に載せ、サンプルに放射線を照射している間は蓋を取り外した。クロスリンカーはマイクロジュール単位で出力を送るが、90%〜95%の死滅を達成するレベルを探した。同じプロトコルを用いて5枚の複製対照プレートに非突然変異誘発細胞を接種した。これらの細胞数を用いて、%死滅を計算した。照射が終わったら、プレートを取り出し、蓋を交換し、プレートをパラフィルムで包み、引き続きアルミ箔のラップで包んだ。プレートのものを最初の1週間、それらが損傷遺伝子を修復できないように暗所中で増殖させることが必須であった。
【0154】
コロニーをカウントする前に約10日間22.5℃の室内にプレートを置いた。最終のカウントが行われた時点で、個々のコロニーを無菌の接種ループで選び取り、新たなヤブレツボカビ用培地プレート上に再ストリークした。各コロニーを個々のプレート上にプレーティングした。プレートのものが密に増殖したら、接種ループを用いて、サンプルを採取し、ヤブレツボカビ用培地50 mlを含有する無菌の250 ml振盪フラスコの中に接種した。このフラスコを22.5℃の室内にて振盪機に200 rpmとして置いた。T=7日目に、振盪フラスコ培養液を50 mlの無菌の試験管中に収集した。pHをとり、サンプルを沈降させてバイオマスペレットを回収した。各サンプルをすすぎ、再び沈降させる前にイソプロピルアルコールおよび蒸留水の50:50混合液に再び懸濁した。回収されたペレットを凍結乾燥し、秤量し、FAME分析を行った。表15〜21中のデータは、上記の工程で作出された変異体を表す。
【0155】
(表15)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0156】
(表16)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0157】
(表17)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0158】
(表18)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0159】
(表19)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0160】
(表20)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0161】
(表21)ヤブレツボカビ菌株ATCCアクセッション番号PTA-9695の変異体


【0162】
実施例8
4つのヤブレツボカビサンプルをアメリカン組織培養コレクション(American Tissue and Culture Collection;ATCC)から入手し、各サンプルをバイオマスの脂肪酸プロファイル、抽出された未精油の脂肪酸プロファイル、未精油のトリアシルグリセリド(TAG)画分、および未精油の極性脂質(PL)画分について分析した。分析したサンプルはATCC 34304、20890、20889および20892であった。これらの菌株を、1リットルの人工海水中に50 mlの以下の培地: ペプトン1 g、酵母エキス1 g、グルコース5 gを含有する250 mlの振盪フラスコの中に接種した。培養物を軌道振盪機上にて200 rpmで振盪しながら20℃でインキュベートした。7日後に、培養物を遠心分離(5087×g)によって収集し、水:イソプロパノール(1:1)の混合液で洗浄し、再び遠心分離した。得られたペレットを凍結乾燥した。BlighおよびDyer (Can. J. of Biol. And Phys. 37: 911-917 (1959))の方法を用いて乾燥バイオマスから未精油を抽出した。Kaluznyら(J. Lipid Res. 26: 135-140 (1959))によって開発された固相抽出(SPE)法の変法を用いて未精油からTAGおよびPLを単離した。未精油および単離画分をDHAおよびEPA含量、ならびに(脂肪酸メチルエステルとしての)全脂肪酸含量について分析した。
【0163】
液体抽出
未精油は、100〜200 mgを1.5×10 cmのねじ口試験管の中に秤量し、1:2:0.8のクロロホルム:メタノール:水(CHCl3:MeOH:H2O)からなる単相系8 mLを添加し、PT-DA 3012/2アグリゲイタを備えたPOLYTRON(登録商標) PT 3100分散ユニットでホモジナイズすることによって凍結乾燥バイオマスから抽出された。サンプルを氷浴中に浸漬しながら10000 rpmで2分間ホモジナイズした。CHCl3 2.1 mLを添加し、1分間ボルテックスし、H2O 1.7 mLを添加し、さらに1分間再びボルテックスすることによって二相系を作出した。下(有機)層をパスツールピペットによって取り出し、回収フラスコの中に入れた。試験管に残ったMeOH-H2O層を2.1 mL部のCHCl3でさらに2回再抽出した。有機層を合わせ、窒素流の下で乾燥させた。
【0164】
固相抽出
Vac Elut装置中にセットされた500 mgのアミノプロピルカートリッジ(Burdick & Jackson)を用いてSPEにより未精製の脂質からTAGおよびPL画分を分離した。カートリッジをヘキサン5 mLで調整し、各サンプル10〜20 mgをCHCl3 400 μLに溶解し、カートリッジに適用した。カラムを2:1のCHCl3:イソプロピルアルコール(IPA) 4 mLで洗浄して、中性脂質の全てを溶出させ、これを回収し、窒素下で乾燥させた。次に脂肪酸をエーテル中2%の酢酸(HOAc) 5 mLで溶出させ、これを捨てた。PL部分をMeOH 5 mLで溶出させ、これを回収し、窒素下で乾燥させた。中性脂質画分をヘキサン400 μLに再溶解し、第二のアミノプロピルカラム(ヘキサン5 mLで予め調整された)に適用した。ステロールエステルをヘキサン中1%の酢酸エチル(EtOAc) 5 mLで溶出させ、捨てた。最後に、TAGをヘキサン中3%のEtOAc 5 mLで溶出させ、これを回収し、窒素下で乾燥させた。
【0165】
TLC分析
薄層クロマトグラフィーをシリカゲルプレート上で行った。プレートを石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)からなる溶媒系によって溶出し、ヨウ素蒸気によって可視化した。
【0166】
脂肪酸分析
バイオマスのサンプル、未精油、単離されたTAGおよびPL画分を脂肪酸組成につきFAMEとして分析した。サンプルをねじ蓋試験管の中に直接秤量し、トルエン中のC19:0内部標準1 mLおよびメタノール中1.5 NのHCl 2 mLを各試験管に加えた。試験管を短時間ボルテックスし、100℃で2時間加熱ブロック中に置いた。試験管を加熱ブロックから除去し、冷却させ、NaCl飽和水1 mLを加えた。試験管を再びボルテックスし、遠心分離し、上(有機)層の一部をGCバイアルに入れ、GC-FIDにより分析した。FAMEを、Nu-Chek-Prep GLC参照基準を用いて作成された3点内部標準較正曲線を用いて定量化し、保持時間に基づいて暫定的に同定した。存在する脂肪酸を全FAMEのmg/gおよび%として表現した。
【0167】
ATCC 34304
ATCC 34304バイオマスの脂質含量はFAMEの合計として9.1%であると推定され、溶媒抽出後に得られた未精油の量は9.2重量%であり、バイオマスに存在する脂肪の回収率101%を示した。バイオマスのEPAおよびDHA含量は、それぞれ、4.8 mg/gおよび38.7 mg/gであると判定された。抽出された未精油には25.9 mg/g EPAおよび238.7 mg/g DHAが含有されていた。単離されたTAGには13.9 mg/g EPAおよび303.9 mg/g DHAが含有され、その一方で単離されたPLには38.7 mg/g EPAおよび237.980 mg/g DHAが含有されていた。バイオマス、抽出された未精油、TAG画分およびPL画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表22および表23に示す。
【0168】
(表22)mg/gとして計算されたATCC 34304の脂肪酸プロファイル

【0169】
(表23)%全FAMEとして計算されたATCC 34304の脂肪酸プロファイル

【0170】
ATCC 20890
ATCC 20890バイオマスの脂質含量はFAMEの合計として9.2%であると推定され、溶媒抽出後に得られた未精油の量は10.2重量%であり、バイオマスに存在する脂肪の回収率111%を示した。バイオマスのEPAおよびDHA含量は、それぞれ、12.2 mg/gおよび36.6 mg/gであると判定された。抽出された未精油には64.7 mg/g EPAおよび194.2 mg/g DHAが含有されていた。単離されたTAGには41.9 mg/g EPAおよび230.2 mg/g DHAが含有され、その一方で単離されたPLには54.4 mg/g EPAおよび149.5 mg/g DHAが含有されていた。バイオマス、抽出された未精油、TAG画分およびPL画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表24および表25に示す。
【0171】
(表24)mg/gとして計算されたATCC 20890の脂肪酸プロファイル

【0172】
(表25)%全FAMEとして計算されたATCC 20890の脂肪酸プロファイル

【0173】
ATCC 20889
バイオマスの脂質含量はFAMEの合計として3.3%であると推定され、溶媒抽出後に得られた未精油の量は3.4重量%であり、バイオマスに存在する脂肪の回収率103%を示した。バイオマスのEPAおよびDHA含量は、それぞれ、2.3 mg/gおよび16.5 mg/gであると判定された。抽出された未精油には26.8 mg/g EPAおよび205.1 mg/g DHAが含有されていた。単離されたTAGには7.3 mg/g EPAおよび185.9 mg/g DHAが含有され、その一方で単離されたPLには35.2 mg/g EPAおよび218.6 mg/g DHAが含有されていた。バイオマス、抽出された未精油、TAG画分およびPL画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表26および表27に示す。
【0174】
(表26)mg/gとして計算されたATCC 20889の脂肪酸プロファイル

【0175】
(表27)%全FAMEとして計算されたATCC 20889の脂肪酸プロファイル

【0176】
ATCC 20892
バイオマスの脂質含量はFAMEの合計として8.8%であると推定され、溶媒抽出後に得られた未精油の量は12.1重量%であり、バイオマスに存在する脂肪の回収率138%を示した。バイオマスのEPAおよびDHA含量は、それぞれ、8.3 mg/gおよび43.3 mg/gであると判定された。抽出された未精油には50.5 mg/g EPAおよび260.1 mg/g DHAが含有されていた。単離されたTAGには98.7 mg/g EPAおよび407.7 mg/g DHAが含有され、その一方で単離されたPLには50.4 mg/g EPAおよび243.12 mg/g DHAが含有されていた。バイオマス、抽出された未精油、TAG画分およびPL画分の全脂肪酸プロファイルを、それぞれmg/gおよび%FAMEとして計算された、下記表28および表29に示す。
【0177】
(表28)mg/gとして計算されたATCC 20892の脂肪酸プロファイル

【0178】
(表29)%全FAMEとして計算されたATCC 20892の脂肪酸プロファイル

【0179】
本明細書において言及された全ての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物、特許または特許出願が参照により組み入れられると具体的かつ個別的に示されているかのように参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ種の単離されたヤブレツボカビ(thraustochytrid)微生物またはそれに由来する菌株であって、該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む、前記微生物またはそれに由来する菌株。
【請求項2】
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビ種の特徴を有する単離されたヤブレツボカビ微生物であって、該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む、前記微生物またはそれに由来する菌株。
【請求項3】
トリグリセリド画分を含む、単離されたヤブレツボカビ微生物またはそれに由来する菌株であって、トリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約40重量%であり、トリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が少なくとも約0.5重量%から約6重量%であり、かつ該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む、前記微生物またはそれに由来する菌株。
【請求項4】
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託されたヤブレツボカビと同種の単離されたヤブレツボカビ微生物またはそれに由来する菌株であって、該微生物またはそれに由来する菌株によって産生される全脂肪酸が約10重量%またはそれ以下のエイコサペンタエン酸を含む、前記微生物またはそれに由来する菌株。
【請求項5】
単離されたヤブレツボカビ微生物に由来する菌株が変異体菌株である、請求項1〜4のいずれか一項記載の単離されたヤブレツボカビ微生物。
【請求項6】
ATCCアクセッション番号PTA-9695の下で寄託された、単離されたヤブレツボカビ微生物。
【請求項7】
ATCCアクセッション番号PTA-9696の下で寄託された、単離されたヤブレツボカビ微生物。
【請求項8】
ATCCアクセッション番号PTA-9697の下で寄託された、単離されたヤブレツボカビ微生物。
【請求項9】
ATCCアクセッション番号PTA-9698の下で寄託された、単離されたヤブレツボカビ微生物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載のヤブレツボカビ微生物またはその混合物を含むヤブレツボカビバイオマス。
【請求項11】
バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約50重量%が脂肪酸であり、かつ脂肪酸の少なくとも約50重量%がオメガ-3脂肪酸である、単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項12】
脂肪酸の少なくとも約50重量%がドコサヘキサエン酸である、請求項11記載の単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項13】
バイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約25重量%がドコサヘキサエン酸である、単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項14】
脂肪酸の約10重量%またはそれ以下がエイコサペンタエン酸であり、かつドコサヘキサエン酸のエイコサペンタエン酸に対する重量比が少なくとも約5:1である、請求項10〜13のいずれか一項記載の単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項15】
脂肪酸の約1.5重量%またはそれ以下がアラキドン酸であり、かつドコサヘキサエン酸のアラキドン酸に対する重量比が少なくとも約20:1である、請求項10〜14のいずれか一項記載の単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項16】
少なくとも約10:1の重量比でドコサヘキサエン酸およびドコサペンタエン酸n-6をさらに含む、請求項10〜15のいずれか一項記載の単離されたヤブレツボカビバイオマス。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか一項記載のヤブレツボカビ微生物またはその混合物を含む単離されたヤブレツボカビ培養物。
【請求項18】
少なくとも約5%の溶存酸素をさらに含む、請求項17記載の単離されたヤブレツボカビ培養物。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項記載のヤブレツボカビ微生物もしくはヤブレツボカビバイオマスまたはその混合物を含む、動物またはヒト用の食品、化粧品組成物または薬学的組成物。
【請求項20】
少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油であって、トリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約50重量%であり、かつトリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が約0.5重量%から約6重量%である、前記微生物油。
【請求項21】
約1.5重量%またはそれ以下のトリグリセリド画分のアラキドン酸含量をさらに含む、請求項20記載の微生物油。
【請求項22】
少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油であって、トリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約40重量%であり、トリグリセリド画分のドコサペンタエン酸n-6含量が少なくとも約0.5重量%から約6重量%であり、かつドコサヘキサエン酸のドコサペンタエン酸n-6に対する比が約6:1を上回る、前記微生物油。
【請求項23】
少なくとも約70重量%のトリグリセリド画分を含む微生物油であって、トリグリセリド画分のドコサヘキサエン酸含量が少なくとも約60重量%である、前記微生物油。
【請求項24】
トリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約20%が、sn-1、sn-2およびsn-3位のいずれか二つから選択されるトリグリセリド中の二つの位置にドコサヘキサエン酸を含む、請求項20〜23のいずれか一項記載の微生物油。
【請求項25】
トリグリセリド画分中のトリグリセリドの少なくとも約5%が、トリグリセリド中のsn-1、sn-2およびsn-3位の三つすべての位置にドコサヘキサエン酸を含む、請求項20〜23のいずれか一項記載の微生物油。
【請求項26】
約5重量%またはそれ以下のヘプタデカン酸をさらに含む、請求項20〜23のいずれか一項記載の微生物油。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれか一項記載の微生物油を含む、動物またはヒト用の食品、化粧品組成物または薬学的組成物。
【請求項28】
乳児用調製粉乳である、請求項19または請求項27記載の食品。
【請求項29】
乳児用調製粉乳が未熟児に適している、請求項28記載の食品。
【請求項30】
ミルク、飲料、治療用ドリンク、栄養ドリンクまたはその組み合わせである、請求項19または請求項27記載の食品。
【請求項31】
動物飼料またはヒト食物用の添加物である、請求項19または請求項27記載の食品。
【請求項32】
栄養補助食品である、請求項19または請求項27記載の食品。
【請求項33】
動物飼料である、請求項19または請求項27記載の食品。
【請求項34】
水産養殖用の飼料である、請求項33記載の動物飼料。
【請求項35】
ペット用の飼料、動物園動物用の飼料、使役動物用の飼料、家畜用の飼料またはその組み合わせである、請求項33記載の動物飼料。
【請求項36】
以下の段階を含む、オメガ-3脂肪酸を含む微生物油を産生するための方法:
(a) 請求項1〜9のいずれか一項記載の単離されたヤブレツボカビ微生物またはその混合物を培養液中で増殖させてバイオマスを作出する段階、および
(b) オメガ-3脂肪酸を含む油を前記バイオマスから抽出する段階。
【請求項37】
培養物が少なくとも約5%の溶存酸素を含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
培養pHが約6.5〜約8.5で維持される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
培養温度が約17℃〜約30℃で維持される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
培養物が約5 g/L〜約50 g/Lのグルコース濃度を含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
請求項10〜16のいずれか一項記載のバイオマスからオメガ-3脂肪酸を含む油を抽出する段階を含む、オメガ-3脂肪酸を含む微生物油を産生するための方法。
【請求項42】
オメガ-3脂肪酸を含む微生物油がヘキサン抽出工程を用いて抽出される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
オメガ-3脂肪酸を含む微生物油が無溶媒抽出工程を用いて抽出される、請求項41記載の方法。
【請求項44】
培養物1リットルあたりから単離されるバイオマスの乾燥細胞重量が、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.0の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約50 gである、請求項36〜43のいずれか一項記載の方法、または請求項17もしくは請求項18記載の単離されたヤブレツボカビ培養物。
【請求項45】
オメガ-3脂肪酸の生産性が、炭素源、窒素源および栄養源、ならびに約950 ppm〜約8500 ppmの塩化物イオンを含む約pH 6.5〜約pH 8.0の培地中にて約17℃〜約30℃で約7日間増殖させた後に、少なくとも約2 g/L/日である、請求項36〜43のいずれか一項記載の方法、または請求項17もしくは請求項18記載の単離されたヤブレツボカビ培養物。
【請求項46】
請求項36〜45のいずれか一項記載の方法によって産生される微生物油。
【請求項47】
炎症またはそれに関連する状態の処置用の医薬の製造のための、請求項1〜16、20〜26、46のいずれか一項記載の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物の使用。
【請求項48】
炎症またはそれに関連する状態の処置のための、請求項1〜16、20〜26、46のいずれか一項記載の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物の使用。
【請求項49】
炎症またはそれに関連する状態の処置において用いるための、請求項1〜16、20〜26、46のいずれか一項記載の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物。
【請求項50】
請求項1〜16、20〜26、46のいずれか一項記載の単離された微生物、バイオマスもしくは微生物油、またはその混合物と、薬学的に許容される担体とを被験体に投与する段階を含む、それを必要性とする被験体において炎症またはそれに関連する状態を処置するための方法。

【公表番号】特表2012−520673(P2012−520673A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500760(P2012−500760)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/001720
【国際公開番号】WO2010/107415
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】