説明

ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システム

【課題】素早く正確に光電式ヤーンクリアラのヘッド汚れを検出可能な方法等を提供する。
【解決手段】複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、特定錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)の変化が、監視される糸自身の特性の変化に起因するのか、上記検出ヘッドの汚れに起因するのかを、他の錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)との関係から判断するようにした方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸の状態を検出して不具合部分を除去する為のヤーンクリアラに関する。
【背景技術】
【0002】
紡績装置や糸巻装置に装備されているヤーンクリアラは、太さをはじめとする糸の各種状態を検出して不具合部分を除去し、糸の品質を保持する為に必要不可欠な装置である。ヤーンクリアラは、糸継ぎの手前に備えられる。通常、1基のヤーンクリアラで複数錘の状況を監視・判定するシステム形式が採られ、この場合、1基のヤーンクリアラに複数の検出ヘッドが装備される。また通常、紡績装置や糸巻装置には、一機台システムあたり複数のヤーンクリアラが備えられる。
【0003】
かかるヤーンクリアラでは、例えば糸太さ(φ)を監視し、不良であるか否かを判定・検出するシーケンスとしては、一般的に、各錘にて測定されたφデータが、φの機台平均値に対して設定された上下限範囲内にあるか否かを判定し、範囲外であれば番手異常を示すφアラームとする様な手法を採っていた。
以下、本発明を詳細に説明するに当たり、まず、このヤーンクリアラの基本構成及びその動作につき説明する。
なお、ヤーンクリアラに関しては、機械式や帯電電荷式のほか、静電容量型や光電型等種々の型式のものが現在知られている。このうち、光電型のものについては、構造上、均斉度の解析や太さむらの検出も可能であり、従来より多様な糸欠陥を検出出来るヤーンクリアラとして多用されているところである。以下では、ヤーンクリアラは光電式のものとして説明する。
【0004】
図14は、従来知られた光電型ヤーンクリアラの構成を示すブロック図である。この様なヤーンクリアラ1は、例えば、後に図1,2として詳述する紡績機の各紡績ユニット50における紡績部40と巻取部30の中間に配置される。又ヤーンクリアラ1の上流側には、糸Yを切断するカッタCが備えられる。
図14に示す様に、光電型のヤーンクリアラ1は、投光部2と受光部3とからなる検出ヘッド1’を備えており、投光部2から投射した光を受光部3で受光したときの受光量に対応した電圧(電流)を検出信号として出力する様構成されている。投光電圧と受光電圧の関係は、例えば図4,5の様なかたちで示される。尚、投光部2はLED等の発光素子から、受光部3はフォトトランジスタ等の光電変換素子からなっている。その様な光電変換素子は、以下で説明する各例では、影の大きさにほぼ比例して電圧値が上昇する様な特性のものとされている。
ここで、図4及び図5に示すY軸は受光電圧であるが、通常、糸太さが太くなれば糸による影が大きくなるので、受光量は減少する。にもかかわらず、図5では受光量が逆に増加しているように見える。これは、実際の電圧を処理して理解しやすくする為に意図的に操作を行っていることによるものである。
上記のヤーンクリアラ1では、検出ヘッド1’にスラブや異番手等の糸欠陥が遭遇して電気出力の変化を検出すると、その出力信号によってカッタCが働いて糸Yを切断する様構成されており、通常、糸欠陥が検出されれば、カッタCによって糸が切断され、下流側の糸端が図2のパッケージPに巻き取られるので、検出ヘッド1’は糸無しの状態となる。このように、受光部3からの電気信号は、糸の品質解析信号として利用される。
【0005】
検出ヘッド1’は、制御装置4に接続されている。制御装置4はマイクロコンピュータからなり、A/D変換部5、糸走行状態判定部6、光調整部7及び投光電圧指令値出力部15を備えている。各構成要素の詳細は後記する通りである。
【0006】
通常、上記構成からなるヤーンクリアラ1は、紡績糸の巻き取り中に相当する糸走行時に機能する。このとき、ヤーンクリアラ1は糸走行状態判定部6において、A/D変換部5を介して入力される受光電圧信号に基づいて、糸太さφや毛羽の多寡をはじめとした糸品質の解析を行い、撚り付与の異常、スラブその他の糸欠陥の検出を行なう。
なお、糸走行中であっても、温度ドリフト防止や投光部2の劣化を考慮した補正を行なうが、その補正に伴う電圧値の変化は微小なのでここでは考慮せず、糸走行停止時における補正にのみ着目し、糸走行中、投光側駆動電圧(図4のx)は、次に説明する通りほぼ一定値に固定されるものとする。
【0007】
ところで、上記構成からなる光電型ヤーンクリアラ1では、起動時に糸走行が停止している状態で受光電圧が所定の設定値(図4のV)になる様調節される(基準点補正)。ヤーンクリアラ1は、この糸走行停止の状態を基準とし、基準点から見た受光電圧の変化即ち、前記所定の設定値Vと糸走行中に得られる受光電圧との電圧差を基に、糸の走行又は停止状態の判定や、スラブその他の糸欠陥の検出或いは糸品質の解析を行なっている。このとき、投光側駆動電圧xは、図4に示される通り糸の走行又は停止に関わらず一定の値に固定されるが、その電圧値は、糸走行停止の状態で受光電圧が所定の設定値Vとなる様な値とされる。
【0008】
上記投光電圧xの調整は、図14の制御装置4を用いて実施される。糸走行状態判定部6で糸走行停止と判定された後、補正部8ではA/D変換部5から取り込んだ受光電圧の値と設定値記憶部9に予め記憶されている所定の設定値Vとの比較が行なわれる。その後、両者の差が所定の許容範囲内に収まる様、補正部8により投光電圧xの値が制御される。これにより、受光電圧が所定の設定値Vに較正されると共に、それに対応する投光側電圧値も光調整部7によって固定される。
投光側駆動電圧xはこの様にして決定され、以後、糸走行状態に移った場合においても投光部2のLEDは同じ電圧値で駆動される。
【0009】
従って糸走行中、上記一定の投光側駆動電圧xでLEDを駆動して受光部に向けて光を投射すると、対向する投光部2と受光部3の間にある走行糸の太さ等によって受光部3のフォトトランジスタに現われる影や反射光は変化し、受光側で得られる受光電圧も時々刻々と変化する。糸走行状態判定部6は、その様な糸走行中における受光電圧の変化を監視しており、糸走行停止の状態にて調整された基準点即ち前記所定の設定値Vに対して糸走行中の受光電圧がどの程度ずれているかを見て、その結果から、糸の走行/停止判定のほか、異番手検出、並びにスラブその他の糸欠陥の検出、糸欠陥の解析を行なっている。
【0010】
ここで、ヤーンクリアラにおける検出ヘッド(クリアラヘッド)の投受光面すなわち、相対峙する投受光素子間に備えられたカバーガラスが汚れてくると、各錘で走行させている糸の太さは略同様であるにも拘らず、ヤーンクリアラにおけるφの測定値にばらつきが発生し、前記φアラーム検出機能にて不良箇所があると誤検出し、無駄切れが多発してしまうと言う問題があった。
そのほかにも、各錘で走行させている糸の太さは略同様であるにも拘らず、ヤーンクリアラにおけるφの測定値にばらつきが発生する様な事態に至ると、受光部からの信号を利用したスラブその他の糸欠陥の検出や糸品質の解析が正確に実施できず、糸品質に少なからず影響を及ぼすこととなり、高品質の紡績糸パッケージを安定して市場に供給することが難しくなる、という不都合が生じる問題があった。
【0011】
そのため、(1)クリアラヘッドの投受光面が汚れるのを予防し、クリアラヘッドが常に不具合無く機能する様にしておく必要があると同時に、(2)原理的にクリアラヘッドの投受光面の汚れにも強く、多様な環境下でも糸太さを正確に測定・検出することが可能なヤーンクリアラ及びその制御方法を提供する必要がある。
【0012】
上記(1)に関しては、クリアラヘッドの投受光面が汚れるの予防する技術としては、
i) エアで飛ばすもの(特許文献1参照)、
ii) クリアリング過程中における許容警告頻度の限界値を決め、許容限度を超えると警報を発報する技術、を基礎とするもの、すなわち、クリアリング過程中、糸の太さの測定値を連続的に記録し、その分布を求め、該測定値の分布と予め定めた許容警告頻度とから、応答限界を、独立に、統計的関係を基に確定するもの(特許文献2参照)、
等が知られている。
【0013】
特許文献1に記載の技術は、検出ヘッド1’内に異物や汚れが滞留した儘の状態を回避すべく、基準点補正を行なう直前に定期的に検出ヘッド1’周りに圧縮空気を噴射して、検出ヘッド1’内に滞留した異物や汚れを吹き飛ばして除去する様なものである(符号は図14に示すものを使用)。この圧縮空気は、ヤーンクリアラ1の制御装置4とは別のコントローラのバルブ制御部17により司られるバルブ18及びクリーニングノズル19を介して噴射される様構成されていた。
【0014】
ただ、その様な構成では実際に異物や汚れが除去されているか不明であって、例えば投受光素子が対峙する間のガラス面にこびり付いてしまった様な検出ヘッドの汚れについては、上記のエア吹き付け等の手段によっては簡単に除去出来ない。この場合だと、汚れ等がガラス面に付着した儘装置の運転が継続されるケースが多く、上記した無駄切れ等の不具合を最小限に抑える意味でも、クリアラヘッドの汚れをより素早くかつ正確に検出する技術を提供することが望まれる。このように、圧縮空気を噴射しても確実に糸屑や汚れ等が検出ヘッド1’内から除去されなければやはり上記と同様の不都合が生じる余地があり、根本的な問題の解決には至っていないのが現状であった。
また、上の(2)に記した様なニーズに十分応える有用な装置は、これまで提供された例が無かった。
【特許文献1】特開平10−305967号公報
【特許文献2】特開平3−305967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明は、より素早くかつ正確に、ヤーンクリアラのヘッド汚れを検出可能なヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、本願発明者らは、(1)複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、特定錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)の変化が、監視される糸自身の特性の変化に起因するのか、上記検出ヘッドの汚れに起因するのかを、他の錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)との関係から判断するものとすることで上記課題を悉く解決可能なことを見い出し、本発明を完成した。
さらに、本願発明者らは以下の少なくとも1つの構成を備えた光電式ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムとすることにより上記課題を解決可能なことを見い出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法は、(2)複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、i)前記各錘における糸太さφのデータを検出するステップと、ii)前記各錘におけるCV%の値を計算するステップと、iii)前記各錘における糸太さφのデータ及びCV%の値を基にφの機台平均値、CV%の機台平均値を計算するステップと、iv)前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算するステップと、v)前記各錘における糸太さφのデータを予め定められた第1の閾値と比較するステップと、vi)前記第1の閾値との比較結果に応じて、或る特定の錘におけるCV%の値、CV%の機台平均値及び前記機台全体の標準偏差を基に、前記特定の錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσを計算するステップと、vii)さらに、前記σの値を予め定められた第2の閾値と比較するステップと、viii)前記第2の閾値との比較結果に応じて、前記特定の錘に関して実際に番手異常であるのか、或いは検出ヘッドが汚れているのかを判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法は、(3)同様に複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、i)前記各錘における糸太さφのデータを検出するステップと、ii)前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するステップと、iii)前記φの機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算するステップと、iv)前記機台全体の標準偏差を予め定められた第3の閾値と比較するステップと、v)前記第3の閾値との比較結果に応じて、前記糸太さφの値が前記φの機台平均値から最もかけ離れている錘のデータを除外した残りのデータを基にφの機台平均値及び標準偏差を再計算するステップと、vi)前記再計算した標準偏差を前記第3の閾値と再び比較するステップと、vii)前記第3の閾値との再比較結果に応じて、前記v)の再計算を繰り返すステップと、viii)前記第3の閾値との比較及び再比較結果に応じて、最終的に計算から除外された一又は複数の錘について検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0019】
或るいは、本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法は、(4)同様に複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、i)前記各錘における毛羽データHDを監視し、必要に応じてHDアラームを行うステップと、ii)前記各錘におけるCV%の値、前記各錘におけるCV%の値を基に計算したCV%の機台平均値、前記CV%の機台平均値を基に計算した機台全体の標準偏差を計算するステップと、iii)前記HDアラームを行った特定の錘について、前記CV%の値を予め定められた第4の閾値と比較するステップと、iv)前記第4の閾値との比較結果に応じて、前記特定の錘に関して汚れ検出用HDアラームの検出数を累積的に加算するステップと、v)前記i)〜iv)のステップを反復するステップと、vi)前記反復を行った結果、ある錘について最終的に単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が予め定められた設定回数値を超えている場合には、その錘に関して検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0020】
次に、上記課題を解決可能な本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムは、(2)’複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを検出するφ検出部と、ii)同様に、前記各錘の受光側と接続され、前記各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部と、iii)前記φ検出部と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するφの機台平均値計算部と、iv)前記CV%計算部と接続され、前記各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部と、v)前記CV%の機台平均値計算部に接続され、前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、vi)少なくとも前記φ検出部、前記CV%計算部、前記φの機台平均値計算部、前記CV%の機台平均値計算部、及び前記標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記各錘における糸太さφのデータ、前記各錘におけるCV%の値、前記φの機台平均値、前記CV%の機台平均値及び前記機台全体の標準偏差、並びに予め定められた第1の閾値及び第2の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、からなることを特徴とするものである。
【0021】
また、上記課題を解決可能な本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムは、(3)’同様に複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを検出するφ検出部と、ii)前記φ検出部と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するφの機台平均値計算部と、iii)前記φの機台平均値計算部に接続され、前記φの機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、iv)少なくとも前記φ検出部、前記φの機台平均値計算部、及び前記標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記標準偏差計算部にて算出された標準偏差と、予め定められた第3の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、からなることを特徴とするものである。
【0022】
或るいは、上記課題を解決可能な本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムは、(4)’同様に複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における毛羽データHDを監視するHD監視部と、ii)同様に、前記各錘の受光側と接続され、前記各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部と、iii)前記CV%計算部と接続され、前記各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部と、iv)前記CV%の機台平均値計算部に接続され、前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、v)少なくとも前記HD監視部、前記CV%計算部、前記CV%の機台平均値計算部、及び標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記HD監視部からの出力と、前記各錘におけるCV%の値、並びに予め定められた第4の閾値及びHDアラームの設定回数値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、からなることを特徴とするものである。
【0023】
なお、本発明のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムとしては、前記(2)〜(4)或いは(2)’〜(4)’の内、少なくとも2つを組み合わせたものであってもよい。
【0024】
[用語の説明]
本明細書中で用いる「糸走行停止状態」の語について、一般的に糸走行が停止していることを認識するのはヤーンクリアラからの糸むら信号(FW信号)が検出されない状態を言う。即ち、糸の太さや毛羽によってヤーンクリアラから出される信号は常に変動しており、この信号の変動がないと糸が走行していないと判断する。
尚本発明では、「糸走行停止状態」とは、
検出ヘッド内に汚れや糸その他の滞留物があるか否かにかかわらず、とにかく糸走行が認められないという事実を認識した状態を言い、
i)検出ヘッドに汚れや滞留物が無い状態で糸走行が停止している場合のほか、 ii)検出ヘッド内に汚れが付着したり異物が滞留している場合、或いは、
iii)ヘッド内に汚れが付着しているか、糸が引っ掛かっているか不明な儘糸走行が停止していると認識された場合を含むものとする。
又本発明では、「検出ヘッドに汚れが付着している状態」には、i)検出ヘッドの全部又は一部に糸くずや埃等の異物が付着している状態のほか、ii)走行していた糸の切断後、検出ヘッドに糸が引っ掛かって滞留してしまった状態、iii)検出ヘッド内に糸くずや埃等の異物が完全に挟まっている状態や一部挟まっている状態、iv)又異物が検出ヘッド上に載置され、検出ヘッドの全部又は一部が塞がれている状態等をも包含されるものとする。
【0025】
「CV%」とは、糸むら均斉度、即ち所定区間(試長L)内の紡績糸の太さむらの変動率を示すものである。
CV値の算出要領としては、先ず、検出された紡績糸の太さφの平均値Vaを算出したのち、この平均値Vaを次式に当てはめて算出する手法がその一例として挙げられる。
【0026】
【数1】

【0027】
なお、上式(1)において、N:サンプリング数、Vx:個々の糸太さ(φ)、Va:データN個の糸太さφの平均値、Σ:N個のデータの総和である。
この式(1)で求められたCV%は、後記図4,5に例示される様な、ヤーンクリアラの検出ヘッドから実際に検出された紡績糸の太さむらの監視波形と対応している。このCV%を求めることにより、検出した所定区間(試長L)分の紡績糸の太さ検出値について、平均値に対する変動の大きさを知ることが可能である。
【0028】
「SD」とは、走行する紡績糸の太さむらに応じた連続的な検出値の標準偏差の値を示すものである。
このSDは次式により算出され、これは上記CV%を算出する際平均値で除す前の値に相当する。
【0029】
【数2】

【0030】
この式(2)で求められたSDは、紡績糸の太さむらの変化量(幅)即ち、後記図4,5に例示されるヤーンクリアラの検出ヘッドから実際に検出された紡績糸の太さむらの監視波形の変化幅に相当するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、より素早くかつ正確に、ヤーンクリアラのヘッド汚れを検出し得る光電式ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムを提供することが可能となる。
以下では、複数の実施形態を例示するが、上記の通り一機台システムに於いてそれらの内の2以上の手法を併用してもよく、この場合、ヤーンクリアラのヘッドの汚れ検出性能を更に高めることが可能である。後記の通り、ヘッドが汚れていてもφが変化しない状況も存在し得、2以上の手法を併用していると、そのような場合により正確に検出ヘッドの汚れ検出を行うことが可能となる。また、機台システムのより安全な運用にも資することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための好適な形態につき説明する。図1は機台システムの一構成例を示す図、図2は紡績機の概要を示す図、図3は本発明の第1形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図、図4はヤーンクリアラの検出ヘッドの投光電圧と受光電圧との関係を示す図、図5はヤーンクリアラの検出ヘッドにて観測される糸むら信号の一例を示す図、図6は糸の太さと均斉度(CV%)の関係について示す図、図7は本発明の第1形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図3に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図、図8はCV%の機台平均値からのばらつきσと閾値の関係を示す図、図9は本発明の第2形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図、図10は本発明の第2形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図9に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図、図11は本発明の第3形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図、図12は本発明の第3形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図11に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図、図13は本発明の第3形態におけるヘッド汚れの検出方法について示す図、図14は従来の光電型ヤーンクリアラの構成を示すブロック図である。
尚、以下の説明では、同一構成要素には同一符号を付するものとする。
【0033】
[第1形態]
図1に、本発明に係る光電式ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムの適用対象となる紡績装置の機台システムの制御系の一構成例を示す。ヤーンクリアラは、紡績装置の糸継ぎの手前に備えられる。図1に示す機台システム100では、1台のヤーンクリアラが4錘分の監視・判定を行っている。即ち、図1に示す機台システム100におけるヤーンクリアラ1では、4台の検出ヘッド1’が1基の制御装置4を共用する様な構成となっている。又図1に示す機台システムでは、ヤーンクリアラがNo.1〜No.20まで備えられており、結局一機台システムで計80錘を取り扱っている。
各ヤーンクリアラは、コントロールマスターCMに接続される。後記する通り、コントロールマスターCMでは糸太さφの機台平均値の算出、各検出ヘッドにおけるCV%の機台平均値の算出等が行われる。尚コントロールマスターCM自体は、機台の稼働状況、糸品質管理、操業管理、保全管理などの各種データをユーザーに対して情報提示する稼動データ管理システムVOSに接続されている。
なお、同じ図1に示されたMSMPCはユニットコントローラであり、各錘の紡績装置、カッターの制御、パッケージの管理(定長)を行うものである。
【0034】
図2に、本実施形態に係る紡績装置の機台システム100を構成する複数の紡績ユニットの内の一の紡績ユニット50の要部を指し示す。なお、本実施形態に係るヤーンクリアラ1は、空気式の紡績機に設けられている。空気紡績機自体は、図2の紙面垂直方向に等間隔に設けられた複数(本実施形態では80基)の紡績ユニットからなるものである。図2に示す通り、紡績ユニット50は、上流側から順に紡績部40とヤーンクリアラ1と巻取部30とを有している。尚このような紡績機は、不図示の自動糸継装置を更に備えており、ヤーンクリアラ1によって検出された糸の不具合部分を切断、除去した後、再び紡績糸の糸継ぎを行なって糸の巻取りを継続出来る様構成されている。
【0035】
図2に示す紡績部40は、紡績ユニット50の最上流側に位置しており、スライバ(繊維束)Sから紡績糸Yを紡出する様構成されている。紡績部40は、バックローラB、ミドルローラM及びフロントローラFからなるドラフトパート45と、空気紡績ノズルAと糸送りローラDとをスライバS側からこの順に備える構成とされる。ミドルローラMには無端状のゴムベルトであるエプロンEが巻回されている。各ローラB、M、Fはそれぞれ、上位のトップローラと下位のボトムローラとからなり、スライバSのドラフトを行なう。空気紡績ノズルAは、フロントローラFを出たスライバSを加撚して紡績糸Yを製造する。糸送りローラDは、紡績ノズルAから糸を引き出すものである。
【0036】
一方、紡績ユニット50の最下流側には、巻取部30が配置されている。巻取部30は、紡績糸Yを巻取るためのパッケージPを回転駆動すべくパッケージP外周表面に圧接され、不図示のモータにより駆動されるドラムTからなる。
【0037】
また、上記の紡績部40と巻取部30との間には、糸の状態を検出して不具合部分を除去する為に設けられるヤーンクリアラ1が配置されている。先に説明した通り、ヤーンクリアラ1は、各紡績ユニット50で紡績される糸Yの径(糸太さφ)の変動を検出して糸むら信号等を出力する光電変換式の糸監視装置である。ヤーンクリアラ1の上流側には、糸Yを切断するカッタCが備えられる。さらに、ヤーンクリアラ1の上面近くには、クリーニングノズル19が備えられる。このクリーニングノズル19の一端側の開口部は、ヤーンクリアラ1の上面に対向する様配置される。一方、クリーニングノズル19の他端側には、不図示の空気噴出装置が接続されており、空気噴出装置は、従来知られた制御手法に従い、バルブの開閉に応じてクリーニングノズル19の一端側開口部から圧縮空気を噴射することによって、ヤーンクリアラ1の検出ヘッドに付着した風綿や埃、或いは糸くず等の汚れや異物のほか、ヤーンクリアラ1に引っ掛かった糸Yを吹き飛ばして除去する様構成されている。
【0038】
次に、本発明のヤーンクリアラ1の構成につき図3に沿って説明する。尚、ヤーンクリアラの基本構成自体は従来技術として先に図14を用いて説明した通りである。
【0039】
図3に、ヤーンクリアラの投受光系の構成を示す。本実施形態に係るヤーンクリアラの投受光系は、投光側にLEDが備えられ、受光側に受光素子が備えられ、相対峙する投受光素子の間には、走行する糸条の毛羽等が投光又は受光素子自体に付着しない様にする為に不図示のガラス面(カバーガラス)が備えられる構成となっている。
動作原理に関しては以下にて詳述するが、基本的に、受光素子が影の多寡(=受光量の多寡に相当)を見て、検出ヘッド1’を通過する走行中の糸太さ(φ)を監視・判定するものとなっている。
【0040】
次に、図3に示すヤーンクリアラの詳細につき説明する。
図3に示す様に、検出ヘッド1’に接続された制御装置4はマイクロコンピュータからなり、A/D変換部5、糸走行状態判定部6、光調整部7及び投光電圧指令値出力部15を備えている。投光電圧指令値出力部15は、F/V変換部、或いは後記の通りD/A変換部からなる。A/D変換部5は、検出ヘッド1’の受光部3と接続され、受光部3から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有している。糸走行状態判定部6は、A/D変換部5と接続され、A/D変換部5からの受光電圧信号を見て糸Yの走行又は停止を判定する。
ここで、糸走行中は、受光部3のフォトトランジスタが糸の微小な太さの変化(糸むら)を検出して受光電圧波形に振幅が現われる様になっているため(図4,5参照)、本実施例ではこの性質を利用して糸Yの走行又は停止の判定を行なう様構成されている。具体的には、上述の振幅(糸むらの信号)が所定時間検出されれば糸走行と判断し、反対にその様な振幅が所定時間検出されなければ糸走行停止と判断する様構成されている。
【0041】
光調整部7は、補正部8と設定値記憶部9とからなる。補正部8は、糸走行状態判定部6において糸走行停止状態と判定された後、A/D変換部5から補正部8に入力された受光電圧と設定値記憶部9に予め記憶されている所定の設定値(図4のV)とを比較して、糸走行停止状態における受光電圧が所定の設定値Vになる様、投光部2への駆動信号を較正して投光電圧(図4のx)を調節(基準点補正)する機能を有している。上記所定の設定値Vは、本実施形態では約0.1Vとされており、制御手段4の外部に設けられた入力部13から設定値記憶部9に予め入力され、格納されている。本実施形態では、入力部13は、機台システム100の稼動データ管理システムVOSの操作パネルに相当する。
この補正部8は、基準点補正が行なわれた後の投光側駆動電圧xの値を、投光電圧指令値出力部15へ出力する。
ここで、本実施形態では、光調整部7の補正部8はパルス出力部であって、任意の出力周波数fで駆動パルスを出力する機能を有しており、投光電圧指令値出力部15に接続されている。これは、投光電圧指令値出力部15をF/V変換部として構成したことによるものである。
【0042】
本実施形態では、投光電圧指令値出力部15はF/V変換部からなっており、駆動パルスの出力周波数fに対応した電圧信号を出力して、可変電圧源16に入力する様構成されている。可変電圧源16は、検出ヘッド1’の投光部2に接続されており、投光電圧指令値出力部15からの信号に応じた電圧を、投光部2のLEDに印加する様になっている。
尚、後記の通り、投光電圧指令値出力部15の構成はこれに限定されず、例えばD/Aコンバータとして構成しても構わない。
【0043】
次に、本実施形態に係るヤーンクリアラのヘッド汚れ検出部20に付き説明する。本実施形態では、ヘッド汚れ検出部20は制御装置4とコントロールマスターCMの両者にわたって備え設けられる。ヘッド汚れ検出部20は、各錘の受光側と接続され、各検出ヘッド1’に接続された制御装置4のA/D変換部5からのφデータが入力されるφ検出部21と、同様に各錘の受光側と接続され、各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部23と、φ検出部21と接続され、φ検出部21に入力された各錘からのφデータを基に機台平均値を計算するφの機台平均値計算部22と、CV%計算部23と接続され、各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部24と、CV%の機台平均値計算部24に接続され、CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部25と、少なくともφ検出部21、CV%計算部23、φの機台平均値計算部22、CV%の機台平均値計算部24、及び標準偏差計算部25と直接又は間接に接続され、φ検出部21に入力された各錘からのφデータ、各錘におけるCV%の値、φの機台平均値、CV%の機台平均値及び機台全体の標準偏差、並びに予め定められた第1の閾値及び第2の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部26とから夫々構成されている。また、比較部26はさらに、アラーム27に接続される様になっている。
ここで、比較部26は、後記の通り、少なくともφ検出部21、CV%計算部23、φの機台平均値計算部22、CV%の機台平均値計算部24、及び標準偏差計算部25と直接又は間接に接続されるものであって、
i)各錘における糸太さφのデータを予め定められた第1の閾値と比較した上で、
ii)第1の閾値との比較結果に応じて、或る特定の錘におけるCV%の値、CV%の機台平均値及び機台全体の標準偏差を基に、各錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσを計算し、
iii)さらに、上記σの値を予め定められた第2の閾値と比較し、
iv)上記第2の閾値との比較結果に応じて、上記特定の錘に関して実際に番手異常であるのか、或いは検出ヘッドが汚れているのかを判定し、ユーザーにその旨通知するものである。
したがって本実施形態によれば、後記の通り、i)比較部26にてまず、φの機台平均値を基に予め定めた第1の閾値よりもφの値が大きいと判断されたその錘について、ii)引き続き、その錘におけるCV%の値、CV%の機台平均値及び機台全体の標準偏差を基に、その錘におけるCV%の値の機台平均値からのばらつきσを計算し、iii)さらに、上記σの値を予め定められた第2の閾値と比較し、σの値がCV%の機台平均値と機台全体の標準偏差を基に予め定めた所定範囲(第2の閾値)内であると判定されたときには、その錘の検出ヘッド1’に汚れが付着しているとして、外部に警報を発する様、比較部26からアラーム27に指令が行なわれる。
本実施形態では、φの機台平均値計算部22で算出されたφの機台平均値を基に予め定められた所定の閾値(第1の閾値)を定めて記憶する第1の記憶部と、CV%の機台平均値計算部24で算出されたCV%の機台平均値と標準偏差計算部25で算出された機台全体の標準偏差を基に予め定められた所定の上限値、下限値(第2の閾値)とを定めて記憶する第2の記憶部とは、共に比較部26内に備えられている。
【0044】
このように、本実施形態の検出ヘッド1’に対しては、制御装置4及びコントロールマスターCMとの間でやり取りを行いつつヘッド汚れの検出シーケンスが実行される。
【0045】
[動作]
上記の構成において、本実施例のヤーンクリアラ1の動作を説明する。図2に示すように、紡績機の運転が開始されることによって、ドラフトパート45及び空気紡績ノズルA等からなる紡績部40から糸Yが紡出されると、この糸Yはヤーンクリアラ1により糸Yの状態が検出されながら、巻取部30に送出されてパッケージPに巻き取られる。このようにして紡績が開始されると、図4,5に示すように、ヤーンクリアラ1では、検出ヘッド1’の受光素子からの出力信号に基づいて、糸走行/停止状態の判定が行なわれるほか、毛羽の多寡をはじめとした糸品質の解析が開始され、均斉度の解析やスラブその他の糸欠陥の判定が行なわれる。又、ヤーンクリアラ1及びコントロールマスターCMでは、図7に例示される様な検出ヘッドの汚れ検出シーケンスも実行可能となる。
ここで、ヤーンクリアラを長い間使って来ると、投受光のガラス面に、スライバSからの綿埃、砂埃その他の汚れが付着し、検出ヘッド1’が汚れてくる。そうすると、受光素子3からの信号が見かけ上、糸が太くなった様に見えて来る。以下で説明する本実施形態の検出シーケンスでは、そのような汚れを検出し、ユーザーに早期に通知して対処を促す様作用する。
【0046】
引き続き、本発明の第1形態に係るヘッド汚れの検出シーケンスを、図4,5に示すヤーンクリアラの検出ヘッドの投受光系で観測される糸むら信号の一例を示す図、及び図7のフローチャートに基づき説明する。
なお、図7に係るヘッド汚れの検出シーケンスは、各錘から抽出したφデータをコントロールマスターCMに集め、そこで各錘に関する解析を施してヘッド汚れ錘の特定を行うものである。したがって、この第1形態に係る判定手段は、図3に示す通り、機台システム100の各錘、及びコントロールマスターCM全体にわたって備えられるべきものである。
まず、通常の状態における投受光系の動作につき説明する。本実施形態では、基本となる投光側のLED出力は、図5のA〜C各図の左端側に示される如く、糸切れ状態の時に受光レベルが0.1Vとなる様に、基準点補正が適当な時期を空けて実施される。走行する糸条の糸太さφ(平均値)は、図5に示す通り、受光素子3に於て観測される糸むら信号の平均レベルを取ることで把握される。糸むら信号の振れ幅は、毛羽の有無・程度により変動する。
【0047】
本実施形態では、各錘の受光素子3は影の多寡(=受光量の多寡に相当)を見て検出ヘッド1’を通過する走行中の糸太さφを監視・判定している。又本実施形態では、或る糸太さに対する信号レベルの基準値が、φの機台平均値を基に予め定めた所定の閾値(第1の閾値)として第1の記憶部に記憶されている。測定されたφデータの値が、φの機台平均値を基に予め定めた第1の閾値よりも大きい場合には、その錘についてi)糸番手が実際に変化しているのか、或いはii)検出ヘッドが汚れているのかを更に判定すべく、
i)各錘のCV%の値、CV%の機台平均値、及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体の標準偏差を基に、その特定の錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσを計算し、
ii)このσの値が、CV%の機台平均値と機台全体の標準偏差を基に予め定められた所定の上限値、下限値の範囲(第2の閾値)内にあるかを比較する様になっている。本実施形態では、その結果に応じてi)糸番手が実際に変化しているのか、或いはii)検出ヘッドが汚れているのかを判定している。
【0048】
具体的には、まず、ヤーンクリアラ1に於いて各錘の糸太さφを検出(S1)した後、それらの値を用いて、コントロールマスターCMにてφの機台平均値を計算する(S2)。本実施形態では、糸太さφは受光素子3に接続された制御装置4におけるA/D変換部5から電圧値の形で取り出される。又本実施形態では、ステップS1はφ検出部21にて、ステップS2はφの機台平均値計算部22にて実行される。
なお、本実施形態では、後記の通り、ステップS1,S2にて、各錘のCV%の計算(ステップS1)、CV%の機台平均値、及びそれを基に機台全体の標準偏差の計算(ステップS2)が並行して実行される。このステップS1のCV%の計算はCV%計算部23にて、ステップS2のCV%の機台平均値の計算はCV%の機台平均値計算部24にて、それを基に求める標準偏差の計算は標準偏差計算部25にて実施される。
【0049】
次に、ステップS1にて検出した各錘の糸太さφの値を、ステップS2にて算出したφの機台平均値を基に予め定めた第1の閾値と比較する(S3)。このステップS3は、第1の記憶部に格納された第1の閾値を利用して比較部26にて実行される。
【0050】
なお、検出ヘッド1’が汚れた状態の儘であると、受光素子3からの信号出力としては、これまでと変わらない所定の番手の糸を走行させているにも拘らず、i)平均太さの信号レベルも大きくなるほか、ii)糸むら部分の信号レベルも大きくなる(図5A参照)。従来技術の儘であれば、双方のレベルが大きくなった場合であっても、i)糸欠点が出現した、或いは異番手の糸が掛けられているものと看做し、ii)ユーザーに対してφアラームを出していた。
【0051】
本実施形態では、次に説明する各錘のCV%の値を用いて、i)糸番手が実際に変化しているのか、ii)それとも、単なるヘッド汚れであるのかを検出する。
本実施形態では、各錘のCV%の値、CV%の機台平均値、及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体の標準偏差を基に計算される、特定の錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσと比較されることとなる、CV%の機台平均値を基に計算した機台全体の標準偏差より予め定める範囲の上下限値(第2の閾値)は、比較部26内の第2の記憶部に予め格納されている。
【0052】
ここで、本発明にて用いる、糸の太さと均斉度(CV%)の関係について添付の図5並びに図6を用いて説明すると、
i)ヘッドが汚れていない通常の状態では、実際に所定のものよりも太番手の糸が掛かっている場合であっても、糸の毛羽の量を示す糸むら部分の信号レベルは変化せず(図5B参照)、それゆえ、CV%の値が小さくなる(図6参照)。逆に、実際に所定のものよりも細番手の糸が掛かっている場合であっても、糸の毛羽の量は同様に変化しないことから、CV%の値は今度は大きくなる。
なお、前記の通り図5に示すY軸は受光電圧であるところ、通常は、糸太さが太くなれば糸による影が大きくなるので受光量は減少する。それにもかかわらず、図5では受光量が逆に増加しているように見えるのは、実際の電圧を処理して理解しやすくする為に、意図的に操作を行っていることによるものである。
【0053】
ii)一方、ヘッドが汚れている状態であって、糸太さφは実際には所定の番手から変化していないにもかかわらず、受光素子が実際より“太く”糸太さφの値を測ってしまっている場合には、上記した、糸が太目に検出される度合に応じて毛羽の量を示す糸むら部分の信号レベルも増える(図5A参照)。それゆえ、CV%の値は変化しない(図6参照)。
このように、糸の太さと均斉度(CV%)の関係は、経験的に、糸太さが太くなるに従いCV%の値は小さくなる。ところが、ヘッドが汚れてくると、見かけ上の糸太さが変化しても糸むらの変化量も比例するので、CV%の値は変化しないことになる(CV%=変化量/平均太さ)。
ここで、ヘッドが汚れている状態でヤーンクリアラに糸を掛けて走行させた際、糸太さφの値が全体的に上がるほか、毛羽の量を示す糸むら部分の信号レベルも全体的に上がって検出されるのは、糸走行が停止した状態における所定のタイミングで、受光素子からの出力を予め定められた一定レベルとなる様に補正する所謂基準点補正が行われる際に、投光側からの出力レベルが変わって全体的に大きくなっていることによるものと考察される。
【0054】
上記した性質を利用して、本実施形態では、受光素子からの出力レベルの変化が、i)糸番手が実際に変化しているのか、ii)それとも、単なるヘッド汚れであるのかを見分けている。
【0055】
すなわち、ステップS3における比較の結果、或る特定の錘の糸太さφの値が第1の閾値よりも大きいと判断された場合、今度は、各錘のCV%の値、CV%の機台平均値、及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体の標準偏差を基に、その特定の錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσの計算に入る(S4)。このステップS4は比較部26にて実施される。
なお、ステップS3における比較の結果がNoである場合には、異番手或いはヘッド汚れの可能性は無く、再びS1,S2の検出・計算が繰り返される。
【0056】
その後、ステップS4にて算出したこのσの値が、CV%の機台平均値及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体の標準偏差を基に予め定められた所定の上限値、下限値の範囲(第2の閾値)内にあるか比較される(S5)。このステップS5も、同様に比較部26内の第2の記憶部に格納された上下限値(第2の閾値)を利用して、比較部26にて実行される。
【0057】
その結果、このσの値が上記上下限値の範囲内に無く、ステップS5にてNoと判定された場合には、糸番手が実際に変化していることから、ユーザーにその旨アラーム警告される(S6,S7)。
【0058】
一方、CV%の値が変化しておらず、ステップS5にてYesと判定された場合には、ヘッドが汚れていることとなり、ユーザーにはその旨アラーム警告される(S8,S9)。
上記ステップS5以降に関連し、CV%の機台平均値からのばらつきσと閾値の関係は、参考として示される図8の通りである。
【0059】
以上の様にして、本実施形態では、受光素子からの出力レベルの変化が、i)糸番手が実際に変化しているのか、ii)それとも、単なるヘッド汚れであるのかを見分けている。
【0060】
[第2形態]
次に、本発明の第2形態につき説明する。なお、機台システムの基本構成、及び当該システム内で得られる糸太さや糸むらを示す信号の様子その他については第1形態で説明した通りである。
図9は本発明の第2形態に係るヤーンクリアラの構成を示すブロック図、図10は本発明の第2形態に係る汚れヘッドの検出シーケンスを示す図である。なお、図10に係るシーケンスは、各錘から抽出したφデータをコントロールマスターCMに集め、そこで解析を施して計算によりヘッド汚れ錘の特定を行うものである。
【0061】
本発明の第2形態に係る手法は、一機台システムが備える複数錘における錘間バラツキ(偏差)の指標を利用した判定手法であり、概説すると以下の通りである。この判定は、上記の通りコントロールマスターCMにて行われ得る。したがって、一機台システムに対してこの判定手段を1組用意すれば足りる。
【0062】
まず、本実施形態に係る糸監視システムのヘッド汚れ検出部20’に付き図9に基づき説明する。本実施形態では、ヘッド汚れ検出部20’はコントロールマスターCMに備え設けられる。ヘッド汚れ検出部20’は、各錘の受光側と接続され、各検出ヘッド1’に接続された制御装置4のA/D変換部5からのφデータが入力されるφ検出部21と、φ検出部21と接続され、φ検出部21に入力された各錘からのφデータを基にφの機台平均値を計算するφの機台平均値計算部22と、φの機台平均値計算部22と接続され、算出されたφの機台平均値を基に機台全体の標準偏差SDを計算する標準偏差計算部25’と、次の比較部26’内にて、標準偏差計算部25’にて算出された標準偏差を基に予め定められた所定の設定値(第3の閾値)を格納する第3の記憶部と、少なくともφ検出部21、φの機台平均値計算部22、及び標準偏差計算部25’と直接又は間接に接続され、標準偏差計算部25’にて算出された標準偏差と、第3の記憶部における第3の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部26’とから夫々構成されている。また、比較部26’はさらに、アラーム27に接続される様になっている。
ここで、比較部26’は、後記の通り、標準偏差計算部25’と接続され、
i)機台全体の標準偏差を第3の閾値と比較し、
ii)その結果に応じて、糸太さφの値が上記φの機台平均値から最もかけ離れている錘のデータを除外した残りのデータを基にφの機台平均値及び標準偏差を再計算させると共に、
iii)上記再計算した標準偏差を第3の閾値と再び比較し、
iv)その結果に応じて上記ii)のステップを繰り返させ、
v)上記第3の閾値との比較及び再比較結果に応じて、最終的に計算から除外された一又は複数の錘について検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するものである。
【0063】
引き続き、本発明の第2形態に係るヘッド汚れ錘の検出シーケンスを、図9及び図10に基づき説明する。
まずはじめに、各錘にて測定したφデータをコントロールマスターCMに集め、その上で、φの機台平均値、及び機台全体における錘間バラツキを計算する(図10のS0,S1)。このステップS0,S1は、φの機台平均値計算部22,標準偏差計算部25’にて実行される。本実施形態では、錘間バラツキの指標として標準偏差SDを用いた。
【0064】
この標準偏差の値が、予め定められた所定の設定値(第3の閾値)より大きい場合、本実施形態ではこの機台中にヘッド汚れ錘が存在するものと判定する(S2)。このステップS2は、標準偏差計算部25’にて算出された標準偏差SD及び第3の記憶部に格納された第3の閾値を利用して比較部26’にて実行される。なお、ステップS2に於いて、標準偏差の値が、第3の閾値より小さい結果であれば、この機台ではヘッド汚れ錘は無いものと看做し、ヘッド汚れ錘を探す本実施形態に係るシーケンスは終了(S7)する。
【0065】
ステップS2に於いて、標準偏差の値が、第3の閾値より大きい場合、各錘にて測定した糸太さφの値と先程計算したφの機台平均値とを比較し、φの機台平均値から一番離れている錘を計算上抽出する(S3)。
本実施形態では、ここで抽出された錘の状態を「ヘッド汚れ」と看做し、以下の通り、φの値に関して機台平均値からの外れ加減が大きい錘から順に除外した上で、φの機台平均値、及び機台全体における錘間バラツキを再計算する(S4,S5)。尚ステップS3,S4は比較部26’にて、ステップS5はφの機台平均値計算部22及び標準偏差計算部25’にて実行される。
このように、本実施形態では、φの値に関して機台平均値からの外れ加減が大きい錘を「ヘッド汚れ錘」と判断し、φの機台平均値、及び機台全体での標準偏差の計算から除外する。
【0066】
上記の除外後に計算した標準偏差が、第3の閾値よりも未だ大きい場合には(ステップS6の結果がNoである場合)、φの値に関して機台平均値からの外れ加減が次に大きい錘をも「ヘッド汚れ錘」と判断し(S3,S4の繰り返し)、φの機台平均値、及び機台全体での標準偏差の計算から除外して、又新たに標準偏差を再計算する(S5,S6の繰り返し)。このステップS6も比較部26’にて実行される。
このように、標準偏差の値が予め定められた所定の設定値(第3の閾値)以下になるまで、φの値に関して機台平均値からの外れ加減の大きい錘の除外を行う(S3〜S6のステップ反復)。
【0067】
最終的に標準偏差の値が第3の閾値以下(ステップS6の結果がYesである場合)になると、そこでヘッド汚れ錘を探るシーケンスは終了する(S7)。本実施形態に係る手法によれば、このシーケンスが終了するまでに計算から除外された一又は複数の錘が所謂「ヘッド汚れ錘」であるものと判断される。これら計算から除外された錘がヘッド汚れ錘である旨のユーザーへの通報は、比較部26’からアラーム27を通じて行われる。
【0068】
[第3形態]
又以下では、本発明の第3形態につき説明する。第2形態と同様、機台システムの基本構成、及び当該システム内で得られる糸太さや糸むらを示す信号の様子その他については第1形態で説明した通りである。
図11は本発明の第3形態に係るヤーンクリアラの構成を示すブロック図、図12は本発明の第3形態に係るヘッド汚れ錘の検出シーケンスを示す図、図13は本発明の第3形態におけるヘッド汚れの検出方法について示す図である。なお、図12に係るシーケンスは、各錘におけるCV%値のデータをコントロールマスターCMに集め、そこでの計算値を基に解析・比較を行うことを通じてヘッド汚れ錘の特定を行うものである。
【0069】
本発明の第3形態は、HDと呼ばれる指標を利用した判定手法である。HDとは、へアリネス(毛羽)データと呼ばれる糸品質を表わす指標の一つであり、糸が掛かってからある一定長さのデータを指し示している。なお本実施形態では、i)HDアラーム回数、及びii)CV%の値と言う2つの指標を見てヘッド汚れ錘の特定を行っている。
【0070】
本発明の第3形態について概説すると、i)ある単位時間内にHDアラーム(或いはそれによるカット)が設定回数以上発生し、かつ、ii)その錘のCV%の測定値が、CV%の機台平均値及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体での標準偏差の値を基に予め定められた上下限値(第4の閾値)以内であった錘につき、その錘をヘッド汚れ錘と判定し、オペレータにヘッドのクリーニングを要求するものである。
一例によれば、第4の閾値は機台全体での標準偏差の何倍かの値とされる。
【0071】
次に、本実施形態に係る糸監視システムのヘッド汚れ検出部20’’に付き図10に基づき説明する。本実施形態でも、ヘッド汚れ検出部20’’は制御装置4とコントロールマスターCMの間にわたって備え設けられる。ヘッド汚れ検出部20’’は、各錘の受光側と接続され、各検出ヘッド1’に接続された制御装置4のA/D変換部5からのφデータから各錘における指標HDを監視するHD監視部28と、同様に、各錘の受光側と接続され、各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部23と、CV%計算部23に接続され、各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部24と、CV%の機台平均値計算部24と接続され、CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部25と、少なくともHD監視部28、CV%計算部23、CV%の機台平均値計算部24、及び標準偏差計算部25と直接又は間接に接続され、HD監視部28からの出力と、各錘におけるCV%の値、並びに予め定められた第4の閾値及びHDアラームの設定回数値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部26’’とから夫々構成されている。また、比較部26’’はさらに、アラーム27に接続される様になっている。
ここで、比較部26’’は、後記の通り、HD監視部28、CV%の機台平均値計算部24及び標準偏差計算部25と直接接続され、
i)HD監視部28を通じてHDアラームを行った特定の錘について、CV%の値を予め定められた第4の閾値と比較し、
ii)その比較結果に応じて、その錘に関して汚れ検出用HDアラームの検出数を累積的に加算する共に、
iii)上記i),ii)のステップを反復させ、
iv)上記反復の結果、ある錘について最終的に単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が上記所定の設定回数値を超えている場合には、その錘については検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するものである。
本実施形態では、予め定められた第4の閾値及び所定の設定回数値は、比較部26’’内に格納されている。
【0072】
引き続き、本発明の第3形態に係るヘッド汚れ錘の検出シーケンスを、図11,12に沿って具体的に説明すると、先ず、紡績装置が動作を開始して糸が検出ヘッドを通って走行し出した後に、ある特定の錘に於いてHD監視部28を通じてHDアラームが発生すると(図11のS0,S1)、次に、その錘のCV%の測定値が予め定められた設定範囲(第4の閾値)内にあるか否かが判定される(S2)。
この第4の閾値は、本実施形態では、CV%の機台平均値及びこのCV%の機台平均値から求めた機台全体の標準偏差より予め定められ、比較部26’’に格納されている。
なお、ステップS1はHD監視部28にて、ステップS2は、比較部26’’にて実行される。特定錘のCV%の値は、CV%計算部23にて計算される。
【0073】
ステップS2に於ける判定の結果がNoである場合、その錘がヘッド汚れ錘である可能性は無いものと看做してこのシーケンスは終了し、再び最初に戻ってHD監視部28にてHDアラームの発生を監視する(S1)。
なお、ステップS2に於ける判定の結果がNoである場合、ステップS3に於ける汚れ検出用HDアラームの検出数の加算がスキップされる。そのため、ステップS4に係る判定処理も事実上スキップされ、ステップS4の結果は当然Noであるものとして処理が行われる。
【0074】
一方、ステップS2に於ける判定の結果がYesである場合、汚れ検出用HDアラームの検出数を加算(S3)して次のステップS4に係る判定処理に移行する。ステップS3は、比較部26’’内部にて実行される。
【0075】
ステップS4では、ステップS3に於ける加算後に、いずれかの錘について単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が予め定められた設定回数値を超えているか否かが判定される(図13参照)。ステップS4の結果がNoの場合、再び最初に戻ってHDアラームの発生を監視する(S1)。
この、上記した設定回数値も、予め定められた値が比較部26’’内に格納されている。
なお、図13に示す通り、本実施形態に係るヘッド汚れ錘の検出シーケンスは、紡績装置の動作開始後、HDアラームが発生する度に実行され、ステップS3における検出数は累積加算されて行く。
したがって、このシーケンスを複数回実行すると、ステップS3における検出数が比較部26’’内部に於いて累積的に加算され、記録されて行く。
【0076】
ステップS4の結果がYesの場合、すなわち、最終的に単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が所定の設定回数値を超えた際には、その錘をヘッド汚れ錘と判定し、オペレータにヘッドのクリーニングを要求して本シーケンスを終了する(S5)。単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が所定の設定回数値を超えたその錘がヘッド汚れ錘である旨のユーザーへの通報は、比較部26’’からアラーム27を通じて行われる。
なお、このようにある単位時間内にHDアラーム或いはそれによるカットが多数発生するのは、一例ではHDに係る誤検出による無駄切れが多発することによるものと考えられる。
【0077】
このように、前記第1形態〜第3形態として例示した本発明によれば、例えば投受光素子が対峙する間のガラス面にこびり付いてしまって、エアー吹き付け等の手段によっては簡単に除去出来ず、アルコールを染み込ませた綿棒等でしか取れない様な検出ヘッドの汚れについても、素早くかつ確実に検出することが出来る。
【0078】
[変形例]
以上、本発明を実施するための好適な形態につき、添付図面に基づき詳細に説明したが、本発明は上の構成等に何ら限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の光電式ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法或いは検出システムを、上記第1形態〜第3形態の2以上の組み合わせからなるものとして良く、この場合、検出ヘッドの汚れ検出性能を更に高めることが可能である。
【0079】
ヤーンクリアラ1基あたりに装備される検出ヘッドの数も、上記に限定されない。一機台システムあたりに装備されるヤーンクリアラの数についても同様である。
【0080】
また、上記各例では本発明の光電式ヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムは空気式の紡績部を備える紡績機に対して適用されていたところ、適用対象はそのような紡績機に限定されず、空気式以外の各種紡績部を備えたものや、自動ワインダ、合糸機その他の繊維機械に対しても本発明を適用し得る。
【0081】
上記各例では、投光電圧指令値出力部15はF/V変換部とされ、駆動パルスの出力周波数fに対応した駆動電圧を出力して可変電圧源16に入力する様構成されているが、投光電圧指令値出力部15の構成はこれに限定されるものではない。即ち、図3、図9、図11及び図14に示されている様に、投光電圧指令値出力部15を例えばD/Aコンバータとして構成しても構わない。このとき、光調整部7の補正部8はマイクロコンピュータのカウンタとして構成される。
尚、投光電圧指令値出力部15をD/Aコンバータとした場合、補正部8では、基準点補正の結果に応じてカウンタに入力された所望の投光電圧xに相応するデータ(カウンタ値)と不図示のクロック信号によって出力信号を変化させ、これを投光電圧指令値出力部15に送出する。投光電圧指令値出力部15では、補正部8で作成された出力信号にD/A変換を施して、これを可変電圧源16に送出する。可変電圧源16は、投光電圧指令値出力部15から出力される信号に基づき投光部2のLEDの発光量を増減する。
【0082】
さらに、上記各例では、ヘッド汚れ錘であると判定されるとユーザーに対してアラームが行なわれる様構成されているが、このときの処置の仕方はこれらに限定されず、例えば紡績ユニット50を操業停止とする処置を行なっても構わない。
さらに、圧空バルブその他を利用して清掃を行う処置を併用しても良い。
【0083】
このように、本発明は新規かつ有用なヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法及び検出システムを提供するものであることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】機台システムの一構成例を示す図である。
【図2】紡績機の概要を示す図である。
【図3】本発明の第1形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図である。
【図4】ヤーンクリアラの検出ヘッドの投光電圧と受光電圧との関係を示す図である。
【図5】ヤーンクリアラの検出ヘッドにて観測される糸むら信号の一例を示す図である。
【図6】糸の太さと均斉度(CV%)の関係について示す図である。
【図7】本発明の第1形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図3に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図8】CV%の機台平均値からのばらつきσと閾値の関係を示す図である。
【図9】本発明の第2形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図9に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図11】本発明の第3形態に係るヤーンクリアラの制御系の一構成例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第3形態に係る検出シーケンスを示す図であって、図11に示す構成を用いて本発明の糸監視方法を実施する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図13】本発明の第3形態におけるヘッド汚れの検出方法について示す図である。
【図14】従来の光電型ヤーンクリアラの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
A 空気紡績ノズル
B バックローラ
C カッタ
CM コントロールマスター
D 糸送りローラ
E エプロン
F フロントローラ
M ミドルローラ
P パッケージ
S スライバ
T ドラム
V 糸速度センサ
VOS 稼動データ管理システム
Y 紡績糸
1 ヤーンクリアラ
1’ 検出ヘッド
2 投光部
3 受光部
4 制御装置
5 A/D変換部
6 糸走行状態判定部
7 光調整部
8 補正部
9 設定値記憶部
10 異常判定部
11 記憶部
12 比較部
13 入力部
14 アラーム
15 投光電圧指令値出力部
16 可変電圧源
17 バルブ制御部
18 バルブ
19 クリーニングノズル
20,20’,20’’ ヘッド汚れ検出部
21 φ検出部
22 φの機台平均値計算部
23 CV%計算部
24 CV%の機台平均値計算部
25,25’ 標準偏差計算部
26,26’,26’’ 比較判定部
27 アラーム
28 HD監視部
30 巻取部
40 紡績部
45 ドラフトパート
50 紡績ユニット
100 機台システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、
特定錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)の変化が、監視される糸自身の特性の変化に起因するのか、上記検出ヘッドの汚れに起因するのかを、他の錘のヤーンクリアラから出力される糸むら信号に基づいて得られる糸太さデータ(φ)、及び/又は糸均斉度データ(CV%)との関係から判断するようにしたことを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法。
【請求項2】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、
i)前記各錘における糸太さφのデータを検出するステップと、
ii)前記各錘におけるCV%の値を計算するステップと、
iii)前記各錘における糸太さφのデータ及びCV%の値を基にφの機台平均値、CV%の機台平均値を計算するステップと、
iv)前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算するステップと、
v)前記各錘における糸太さφのデータを予め定められた第1の閾値と比較するステップと、
vi)前記第1の閾値との比較結果に応じて、或る特定の錘におけるCV%の値、CV%の機台平均値及び前記機台全体の標準偏差を基に、前記特定の錘のCV%の値の機台平均値からのばらつきσを計算するステップと、
vii)さらに、前記σの値を予め定められた第2の閾値と比較するステップと、
viii)前記第2の閾値との比較結果に応じて、前記特定の錘に関して実際に番手異常であるのか、或いは検出ヘッドが汚れているのかを判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、
を含むことを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法。
【請求項3】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、
i)前記各錘における糸太さφのデータを検出するステップと、
ii)前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するステップと、
iii)前記φの機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算するステップと、
iv)前記機台全体の標準偏差を予め定められた第3の閾値と比較するステップと、
v)前記第3の閾値との比較結果に応じて、前記糸太さφの値が前記φの機台平均値から最もかけ離れている錘のデータを除外した残りのデータを基にφの機台平均値及び標準偏差を再計算するステップと、
vi)前記再計算した標準偏差を前記第3の閾値と再び比較するステップと、
vii)前記第3の閾値との再比較結果に応じて、前記v)の再計算を繰り返すステップと、
viii)前記第3の閾値との比較及び再比較結果に応じて、最終的に計算から除外された一又は複数の錘について検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、
を含むことを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法。
【請求項4】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、
i)前記各錘における毛羽データHDを監視し、必要に応じてHDアラームを行うステップと、
ii)前記各錘におけるCV%の値、前記各錘におけるCV%の値を基に計算したCV%の機台平均値、前記CV%の機台平均値を基に計算した機台全体の標準偏差を計算するステップと、
iii)前記HDアラームを行った特定の錘について、前記CV%の値を予め定められた第4の閾値と比較するステップと、
iv)前記第4の閾値との比較結果に応じて、前記特定の錘に関して汚れ検出用HDアラームの検出数を累積的に加算するステップと、
v)前記i)〜iv)のステップを反復するステップと、
vi)前記反復を行った結果、ある錘について最終的に単位時間当たりにおける汚れ検出用HDアラームの検出回数が予め定められた設定回数値を超えている場合には、その錘に関して検出ヘッドが汚れていると判定し、ユーザーにその旨通知するステップと、
を含むことを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法。
【請求項5】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法であって、請求項2〜4に記載の前記方法の内、少なくとも2つの制御方法を含み、各制御方法の実行結果を組み合わせて特定の錘に関して検出ヘッドが汚れているか否かを判定することを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出方法。
【請求項6】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、
i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを検出するφ検出部と、
ii)同様に、前記各錘の受光側と接続され、前記各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部と、
iii)前記φ検出部と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するφの機台平均値計算部と、
iv)前記CV%計算部と接続され、前記各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部と、
v)前記CV%の機台平均値計算部に接続され、前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、
vi)少なくとも前記φ検出部、前記CV%計算部、前記φの機台平均値計算部、前記CV%の機台平均値計算部、及び前記標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記各錘における糸太さφのデータ、前記各錘におけるCV%の値、前記φの機台平均値、前記CV%の機台平均値及び前記機台全体の標準偏差、並びに予め定められた第1の閾値及び第2の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、
からなることを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システム。
【請求項7】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、
i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを検出するφ検出部と、
ii)前記φ検出部と接続され、前記各錘における糸太さφのデータを基にφの機台平均値を計算するφの機台平均値計算部と、
iii)前記φの機台平均値計算部に接続され、前記φの機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、
iv)少なくとも前記φ検出部、前記φの機台平均値計算部、及び前記標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記標準偏差計算部にて算出された標準偏差と、予め定められた第3の閾値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、
からなることを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システム。
【請求項8】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、
i)前記各錘の受光側と接続され、前記各錘における毛羽データHDを監視するHD監視部と、
ii)同様に、前記各錘の受光側と接続され、前記各錘におけるCV%の値を計算するCV%計算部と、
iii)前記CV%計算部と接続され、前記各錘におけるCV%の値を基にCV%の機台平均値を計算するCV%の機台平均値計算部と、
iv)前記CV%の機台平均値計算部に接続され、前記CV%の機台平均値を基に機台全体の標準偏差を計算する標準偏差計算部と、
v)少なくとも前記HD監視部、前記CV%計算部、前記CV%の機台平均値計算部、及び標準偏差計算部と直接又は間接に接続され、前記HD監視部からの出力と、前記各錘におけるCV%の値、並びに予め定められた第4の閾値及びHDアラームの設定回数値を基にヘッド汚れ錘の有無を検出する比較部と、
からなることを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システム。
【請求項9】
複数錘からなる機台システムに装備され、各錘における糸品質その他を監視する複数のヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システムであって、
請求項6〜8に記載された前記検出システムの内、少なくとも2つの検出システムを含み、各システムの実行結果を組み合わせて特定の錘に関して検出ヘッドが汚れているか否かを判定することを特徴とするヤーンクリアラの検出ヘッドの汚れ検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−7214(P2008−7214A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176293(P2006−176293)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】