ラックバー及びステアリング装置
【課題】ストローク中央部付近の比ストローク特性をストローク両端側より小さくした場合であっても、オーバーピン寸法測定を高精度に行うこと。
【解決手段】筒部21と、筒部21に設けられ、ピニオンギア13aと噛み合う複数の歯部22aが軸方向に沿って並設されたラック歯形成部22とを備え、ラック歯形成部22の歯部22aは、ピニオンギア13aの回転角と筒部21の移動距離との比が、軸方向Cのストローク両端側Yがストローク中央部Xに対し大きく形成されるとともに、ストローク両端Zに近づくにつれて漸次小さく形成されている。
【解決手段】筒部21と、筒部21に設けられ、ピニオンギア13aと噛み合う複数の歯部22aが軸方向に沿って並設されたラック歯形成部22とを備え、ラック歯形成部22の歯部22aは、ピニオンギア13aの回転角と筒部21の移動距離との比が、軸方向Cのストローク両端側Yがストローク中央部Xに対し大きく形成されるとともに、ストローク両端Zに近づくにつれて漸次小さく形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステアリング装置等に使用されるラック&ピニオンギアに用いられるラックバー及びこのラックバーが組み込まれたステアリング装置に関し、特に据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を操舵するためのステアリング装置は、ステアリングシャフト側のピニオンギヤと、左右の車輪を接続するタイロッド側に、ラックが形成されたラックバーとを備えており、これらピニオンギヤとラックにより、ハンドルから伝達される回転操舵力をギヤボックスで左右の横力に変換してこれを車輪に伝達し、キングピン回りの回動力を車輪に作用させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、ステアリング装置のステアリングギア比(ハンドル回転角/タイヤ切れ角)は、ラックバーの歯部の間隔及び形状等によって定まる比ストローク特性に依存している(例えば、特許文献2参照)。例えば、図11に示すように、ラックバーのストローク中央付近では、ピニオン回転角に対し比ストロークを低めに設定することで、ハンドルの中央付近ではタイヤの切れ角の変化を少ないものとして直進時のふらつきを防止している。
【0004】
なお、図12に示すように、ラックバーLのストローク両端側では歯部Sが等間隔に配設されている。
【特許文献1】特開2002−166841号公報
【特許文献2】特開平6−72344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したラックバーでは、次のような問題があった。すなわち、ハンドルを最大角に切るとピニオンギアがストローク両端部に到達するとともに、ハンドルがロックに当たって停止する。このとき、ハンドルの操舵速度が早かった場合、ハンドルがロックに当たる衝撃で運転手に衝撃が伝わるとともに不快な打撃音が発生する。このため、据え切り時又は極低速走行時における操舵感が低下するという問題がある。
【0006】
なお、衝撃を緩和するために緩衝材を取り付けることも考えられるが、部品点数の増加に伴いコスト向上となるとともに、小型化・軽量化の障害になるという問題が生じる。
【0007】
さらに、電動でパワーアシストするタイプのギア(EPS)の場合、ハンドルを最大角付近まで切るとモータのアシスト不足が生じるという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上させ、しかも操舵力不足を防止することができるラックバー及びこのラックバーが組み込まれたステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のラックバー及びステアリング装置は次のように構成されている。
【0010】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とする。
【0011】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とする。
【0012】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、前記ラックバーは、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とする。
【0013】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、前記ラックバーは、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上させ、しかも操舵力不足を防止することがすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係るラックバー20が組み込まれたステアリング装置10を示す斜視図、図2はラックバー20の比ストローク特性を示す説明図、図3はラックバー20の要部を模式的に示す説明図である。
【0016】
ステアリング装置10は、ハンドル(操舵部材)11に連結されたステアリングシャフト12と、ステアリングシャフト12に連結されるとともに、先端にピニオンギア13aを有するピニオン軸13と、ピニオンギア13aに噛み合わされるラックバー20とを備えている。ラックバー20はさらにタイロッド30、30を介して前車輪WR、WLに接続されている。
【0017】
ラックバー20は、中実あるいは中空丸棒から形成された筒部21と、この筒部21の中央に設けられたラック歯形成部22と、外周面に何も形成されていない軸部23と、筒部21の両端側に設けられ、ラック歯形成部22の外径と異なる外径を有するロッド部24とを備えている。
【0018】
ラック歯形成部22は、ピニオンギア13aと噛み合う複数の歯部22aが軸方向Cに沿って並設されている。歯部22aは、図2に示すように、所定の比ストローク特性を有する間隔で配置されている。
【0019】
比ストローク特性は、ストローク中央部Xよりもストローク両端側Yが大きく形成されている。このため、図3に示すように、ストローク中央部X付近の歯部22aの間隔(ピッチ)がストローク両端側Yに近づくにつれて漸次広くなっている。例えば、ストローク中央部Xの比ストロークが50〜60(mm/rev)で、ストローク両端側Yが60(mm/rev)としている。一方、ストローク両端Zに近づくにつれて小さくなるように形成されている。例えば、比ストロークが55(mm/rev)となる。このため、図3に示すように、ストローク両端側Y付近の歯部22aの間隔(ピッチ)がストローク両端Zに近づくにつれて漸次狭くなっている。なお、歯部22aは、間隔が狭くなるにしたがって筒部21の軸方向Cに対する角度が大きくなる。
【0020】
このように、歯部22aの間隔が狭くなると、据え切り時や極低速走行時に早い速度でハンドルを廻しても、ラックバー20の移動速度がハンドルの最大角に近づくにつれて低速度となり、ロックに当たるときの衝撃が小さくなる。このため、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上することが可能となる。さらに、電動でパワーアシストするタイプのギア(EPS)の場合において、ハンドルを最大角付近まで切った場合でも、モータのアシスト不足が生じることを防止できる。したがって、衝撃を緩和するために緩衝材が不要となり、部品点数を増やすことなくコスト低減を図ることができるとともに、小型化・軽量化を図ることができる。
【0021】
図4〜図6は、上述したラックバー20の製造工程の一例を示す図である。図4は芯金110を示す側面図、図5は芯金110が用いられる中空ラックバー製造装置200を示す要部断面図である。なお、図5中Pは鉄製のパイプ(中空素材)を示している。また、図5中110Aは、芯金110と同じ構成の芯金を示している。パイプPは上述したラックバー20として用いられるものである。
【0022】
芯金110は、半円形状の棒材111を備えている。棒材111は、最初にパイプPに挿入される圧入方向の先端側に位置する先端部112と、駆動装置に連結された基端部113とを備えている。
【0023】
この棒材111には、上面は全体としては平坦であるが、棒材111の軸方向に沿って3つの突起部121,122,123が一体に設けられた平坦部111aが形成されている。一方、棒材111は平坦部111aと反対側に位置する背面側でパイプPの内周面と密接しており、鍛造工程中はバイプPの内周面との密接を維持しながらパイプPの軸方向における直線移動が可能である。また、パイプPの中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有している。すなわち、後述するように、パイプPの上面が平坦化され、平坦部Paが形成された後であっても円滑に移動できるような大きさに形成されている。棒材111の突起部121〜123とは反対側に位置する背面側には、パイプPを中空ラックバーとして用いる場合に、外周面側から案内するための案内部材との摺動面に対応する範囲Q(軸を中心にして120〜150°)にわたって外周押圧面114が形成されている。
【0024】
各突起部121〜123は、緩やかなテーパ状の案内面が形成されており、成形時の流動抵抗に関わらず芯金110のスムーズな動きが得られるようになっている。
【0025】
次に、この芯金110を用いる中空ラックバー製造装置200の構成について説明する。中空ラックバー製造装置200は、鉄製パイプPを保持する下型210及び上型220とを備えている。中空ラックバー製造装置200は、下型210及び上型220に保持されたパイプPの内部空洞に芯金110を圧入させることによりパイプPの肉を後述する歯型230に向けて内径側から張出させることで中空のラックバー20を製造する装置である。
【0026】
下型210は横断面において半円形の内周面211を備え、この半円形の内周面211にパイプPが載置される。上型220はその上側の内面が所定長さに亘って長さ方向に間隔をおいた歯型230を着脱自在に備えており、転写鍛造によりパイプPの上面における所定長さの部位に歯型230の凹凸に応じてラックを形成することができる。
【0027】
このように構成された中空ラックバー製造装置200及び芯金110,110Aを用いてパイプPの鍛造加工を行う。
【0028】
予め、別の型を用いて中央部を中凹状に平潰し、中凹の半円形状としたパイプPを用意する。このパイプPを上型220及び下型210間に保持し、パイプPの平坦部Paが歯型230に当接させる。
【0029】
この状態においてパイプPに対する芯金110の圧入が開始される。芯金110はその先端112よりパイプPの中空部に導入される。そして、テーパ状の案内面を介して最初の突起部121がパイプPの平坦部Paの内側面に作用し、パイプPの肉は歯型230の歯形に向けて張出される。そして、芯金110の圧入が続けられることにより順次突起部122,123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。次に、後退方向に芯金110を移動する。続いて、芯金110Aを圧入することで、交互に圧入鍛造を行う。このとき、芯金110,110Aには、外周押圧面114が形成されているため、パイプPの下側の面は、R形状が作りこまれていく。
【0030】
なお、この後、同様にして、突起部の突出量を僅かに大きくした芯金110を用いて圧入鍛造を行う。以降、同様にして芯金110のサイズを少しずつ大きく変えつつ、所定の工程を繰り返すことで、最終的な加工が完了する。最終的に、芯金110の高さは芯金圧入によりパイプPの肉が歯型230の凹凸に対応して十分に張出されたラックの転写鍛造を完了する。
【0031】
図7〜図10は、同ラックバーの製造工程の別の例を示す図である。図7は芯金セットの1つである短尺型の芯金110Bを示す側面図、図8〜図10は同芯金セットを用いる中空ラックバー製造装置300を示す図である。図8は金型及び芯金ホルダまわりを芯金が挟持された状態、図9は金型及び芯金ホルダまわりを芯金受け渡し状態、図10は金型及び芯金ホルダまわりを芯金の圧入が完了した状態で示している。図10において、図7と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
芯金110Bの棒材111の長さは、後述する歯型313の歯部の長さの半分以下と短い。
【0033】
中空ラックバーの製造装置300は、金型310、複数の芯金110Bのセットを収納する芯金ホルダ320、第1の芯金押棒330、第2の芯金押棒340、及び芯金ガイド350等を備えている。
【0034】
金型310は、鉄製パイプ材Pを保持する下型311及び上型312とを備えている。下型311は横断面において半円形の内周面311aを備え、この半円形の内周面311aにパイプ材Pが載置される。上型312はその上側の内面が所定長さに亘って長さ方向に間隔をおいた歯型313を着脱自在に備えており、転写鍛造によりパイプ材Pの上面における所定長さの部位に歯型313の凹凸に応じてラックを形成することができる。
【0035】
芯金ホルダ320は、金型310の片側、例えば図8〜図10において金型310の右隣にのみ配置されている。図8〜図10に示すように芯金ホルダ320は複数の保持孔321を有している。これらの保持孔321はパイプ材Pが延びる方向に芯金ホルダ320を貫通していて、その内部に芯金110Bが個別に収容されている。収容された芯金110Bは、金型310に対する適正な姿勢で、かつ、不用意に脱落しないように図示しない板ばね等により保持されるようになっている。芯金ホルダ320に支持された各芯金110Bは、金型310に対して第1の芯金押棒330が挿脱される側に位置されている。
【0036】
芯金ホルダ320はホルダ駆動部(不図示)により移動される。この駆動が行われるたびに、複数の保持孔321の内の一つが順次選択されて互いに合わさったパイプ材Pの一端に対向される。そのため、芯金ホルダ320に支持された芯金110Bを順次パイプ材P内に出し入れすることが可能である。このために、ホルダ駆動部で芯金ホルダ320を図8〜図10中上下方向(縦方向)に一定ピッチずつ移動させている。しかし、これに代えて、横方向(図8〜図10を描いた紙面の表裏方向)に移動させてもよい。或いは、芯金ホルダー320を回転可能に設けて、ホルダー駆動部で所定角度ずつ回転させることもできる。
【0037】
第1の芯金押棒330の先端側は、金型310に保持されたパイプ材Pに対して挿脱自在に形成されている。その際、芯金110Bを伴って金型310に保持されたパイプ材Pに挿入される。なお、図8〜図10中符号360は管状の押棒ガイドを示している。
【0038】
第2の芯金押棒340の先端側は、金型310に保持されたパイプ材Pに対して挿脱自在に形成されている。
【0039】
図8〜図10に示すように芯金ガイド350は、金型310と芯金ホルダ320との間に、かつ、金型310に寄せて配置されている。この芯金ガイド350は、金属等からなりその厚み方向に貫通した通孔351を有している。通孔351は金型310に保持されたパイプ材Pの中空部に連通されている。
【0040】
次に、以上の構成の中空ラックバー製造装置300を用いて中空のラックバーを製造する手順を説明する。セットされたパイプ材Pは金型310内に配置され、パイプ材Pの他端側は金型310から突出される。又、型締めによって、下型311及び上型312とで挟持されるとともに、平坦部Paに歯型313が当接される。
【0041】
このセット作業の前又は後に、芯金ホルダ320を動作させて、それに収容された複数の芯金110Bの内の一つを、芯金ガイド350の通孔351に対向した状態に保持する。これとともに、通孔351に対向した芯金110Bの右端に第1の芯金押棒330の先端を係合させる。
【0042】
次に、第2の芯金押棒340がパイプ材P内に挿入され、第2の芯金押棒340の先端がパイプ材P及び芯金ガイド350の通孔351を挿通して、この通孔351に対向している芯金ホルダ320内の芯金110Bの左端に当たるようになる。したがって、通孔351内の芯金110Bがその軸方向両端からこれら両端に接した第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持される。
【0043】
この後、第1の芯金押棒330が、芯金ホルダ320の保持孔321及び芯金ガイド350の通孔351を通って、図9に示すように金型310に保持されたパイプ材P内に挿入される。
【0044】
この時、芯金110Bは、第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒330により押圧されてパイプ材P内に圧入される。この圧入により、芯金110Bの突起部121〜123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。芯金110Bの圧入は、図10に示すように芯金110Bが平坦部Paから抜けきらない状態で終了する。
【0045】
次に、第1の芯金押棒330が引き戻される。この時、第2の芯金押棒340が芯金ホルダ320に向けて移動される。これにより、芯金110Bは、この芯金110Bの両端に接した第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のまま、第2の芯金押棒340により押圧されてパイプ材P及び芯金ガイド350の通孔351を通って芯金ホルダ320に内に押し戻される。この場合にも、芯金110Bの突起部121〜123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。
【0046】
この後、芯金ホルダ320を動かして、次に突起部の突起量が大きい芯金110B及びこれが収容された保持孔321を芯金ガイド350の通孔351を通してパイプ材Pの開口部に対向させる。
【0047】
そして、次に使用する芯金110Bを挟持した状態とした後に、同様にして、芯金110Bは、第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒330により押圧されてパイプ材P内に圧入し、一往復させる。こうした手順を順次繰り返すことによって、パイプ材Pに金型310の歯型313に対応したラックを有した中空のラックバー20を製造する。
【0048】
最後に、使用した最後の芯金110Bを芯金ホルダ320に戻した後に、第2の芯金押棒340をパイプ材Pから抜出してから、金型310を開く。
【0049】
上述したように、本発明の実施の形態に係るラックバー20においては、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、ラック歯形成部(歯部)の外径とロッド部(軸部)の外径とは異なるとしたが、同一径のものに適用してもよい。また、中空のラックバーとしたが、中実のラックバーとしてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係るラックバーが組み込まれたステアリング装置を示す斜視図。
【図2】同ラックバーの比ストローク特性を示す説明図。
【図3】同ラックバーの要部を模式的に示す説明図。
【図4】同ラックバーの製造工程の一例に係る芯金の要部を示す側面図。
【図5】同芯金が適用される中空ラックバー製造装置を示す断面図。
【図6】同芯金が挿入された状態の中空ラックバーを示す断面図。
【図7】同ラックバーの製造工程の別の例に係る芯金の要部を示す側面図。
【図8】同芯金を用いる中空ラックバー製造装置を示す図であって、金型及び芯金ホルダーまわりを芯金が挟持された状態で示す断面図。
【図9】同中空ラックバー製造装置の金型及び芯金ホルダーまわりを芯金受け渡し状態で示す断面図。
【図10】同中空ラックバー製造装置の金型及び芯金ホルダーまわりを芯金の圧入が完了した状態で示す断面図。
【図11】従来のラックバーの比ストローク特性を示す説明図。
【図12】同ラックバーの要部を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
10…ステアリング装置、11…ハンドル(操舵部材)、13…ピニオン軸、13a…ピニオンギア、20…ラックバー、21…筒部、22…ラック歯形成部、22a…歯部、23…軸部、24…ロッド部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステアリング装置等に使用されるラック&ピニオンギアに用いられるラックバー及びこのラックバーが組み込まれたステアリング装置に関し、特に据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を操舵するためのステアリング装置は、ステアリングシャフト側のピニオンギヤと、左右の車輪を接続するタイロッド側に、ラックが形成されたラックバーとを備えており、これらピニオンギヤとラックにより、ハンドルから伝達される回転操舵力をギヤボックスで左右の横力に変換してこれを車輪に伝達し、キングピン回りの回動力を車輪に作用させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、ステアリング装置のステアリングギア比(ハンドル回転角/タイヤ切れ角)は、ラックバーの歯部の間隔及び形状等によって定まる比ストローク特性に依存している(例えば、特許文献2参照)。例えば、図11に示すように、ラックバーのストローク中央付近では、ピニオン回転角に対し比ストロークを低めに設定することで、ハンドルの中央付近ではタイヤの切れ角の変化を少ないものとして直進時のふらつきを防止している。
【0004】
なお、図12に示すように、ラックバーLのストローク両端側では歯部Sが等間隔に配設されている。
【特許文献1】特開2002−166841号公報
【特許文献2】特開平6−72344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したラックバーでは、次のような問題があった。すなわち、ハンドルを最大角に切るとピニオンギアがストローク両端部に到達するとともに、ハンドルがロックに当たって停止する。このとき、ハンドルの操舵速度が早かった場合、ハンドルがロックに当たる衝撃で運転手に衝撃が伝わるとともに不快な打撃音が発生する。このため、据え切り時又は極低速走行時における操舵感が低下するという問題がある。
【0006】
なお、衝撃を緩和するために緩衝材を取り付けることも考えられるが、部品点数の増加に伴いコスト向上となるとともに、小型化・軽量化の障害になるという問題が生じる。
【0007】
さらに、電動でパワーアシストするタイプのギア(EPS)の場合、ハンドルを最大角付近まで切るとモータのアシスト不足が生じるという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上させ、しかも操舵力不足を防止することができるラックバー及びこのラックバーが組み込まれたステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のラックバー及びステアリング装置は次のように構成されている。
【0010】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とする。
【0011】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とする。
【0012】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、前記ラックバーは、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とする。
【0013】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、前記ラックバーは、軸部と、この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上させ、しかも操舵力不足を防止することがすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係るラックバー20が組み込まれたステアリング装置10を示す斜視図、図2はラックバー20の比ストローク特性を示す説明図、図3はラックバー20の要部を模式的に示す説明図である。
【0016】
ステアリング装置10は、ハンドル(操舵部材)11に連結されたステアリングシャフト12と、ステアリングシャフト12に連結されるとともに、先端にピニオンギア13aを有するピニオン軸13と、ピニオンギア13aに噛み合わされるラックバー20とを備えている。ラックバー20はさらにタイロッド30、30を介して前車輪WR、WLに接続されている。
【0017】
ラックバー20は、中実あるいは中空丸棒から形成された筒部21と、この筒部21の中央に設けられたラック歯形成部22と、外周面に何も形成されていない軸部23と、筒部21の両端側に設けられ、ラック歯形成部22の外径と異なる外径を有するロッド部24とを備えている。
【0018】
ラック歯形成部22は、ピニオンギア13aと噛み合う複数の歯部22aが軸方向Cに沿って並設されている。歯部22aは、図2に示すように、所定の比ストローク特性を有する間隔で配置されている。
【0019】
比ストローク特性は、ストローク中央部Xよりもストローク両端側Yが大きく形成されている。このため、図3に示すように、ストローク中央部X付近の歯部22aの間隔(ピッチ)がストローク両端側Yに近づくにつれて漸次広くなっている。例えば、ストローク中央部Xの比ストロークが50〜60(mm/rev)で、ストローク両端側Yが60(mm/rev)としている。一方、ストローク両端Zに近づくにつれて小さくなるように形成されている。例えば、比ストロークが55(mm/rev)となる。このため、図3に示すように、ストローク両端側Y付近の歯部22aの間隔(ピッチ)がストローク両端Zに近づくにつれて漸次狭くなっている。なお、歯部22aは、間隔が狭くなるにしたがって筒部21の軸方向Cに対する角度が大きくなる。
【0020】
このように、歯部22aの間隔が狭くなると、据え切り時や極低速走行時に早い速度でハンドルを廻しても、ラックバー20の移動速度がハンドルの最大角に近づくにつれて低速度となり、ロックに当たるときの衝撃が小さくなる。このため、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上することが可能となる。さらに、電動でパワーアシストするタイプのギア(EPS)の場合において、ハンドルを最大角付近まで切った場合でも、モータのアシスト不足が生じることを防止できる。したがって、衝撃を緩和するために緩衝材が不要となり、部品点数を増やすことなくコスト低減を図ることができるとともに、小型化・軽量化を図ることができる。
【0021】
図4〜図6は、上述したラックバー20の製造工程の一例を示す図である。図4は芯金110を示す側面図、図5は芯金110が用いられる中空ラックバー製造装置200を示す要部断面図である。なお、図5中Pは鉄製のパイプ(中空素材)を示している。また、図5中110Aは、芯金110と同じ構成の芯金を示している。パイプPは上述したラックバー20として用いられるものである。
【0022】
芯金110は、半円形状の棒材111を備えている。棒材111は、最初にパイプPに挿入される圧入方向の先端側に位置する先端部112と、駆動装置に連結された基端部113とを備えている。
【0023】
この棒材111には、上面は全体としては平坦であるが、棒材111の軸方向に沿って3つの突起部121,122,123が一体に設けられた平坦部111aが形成されている。一方、棒材111は平坦部111aと反対側に位置する背面側でパイプPの内周面と密接しており、鍛造工程中はバイプPの内周面との密接を維持しながらパイプPの軸方向における直線移動が可能である。また、パイプPの中空部の最小断面領域よりも小さい最大断面領域を有している。すなわち、後述するように、パイプPの上面が平坦化され、平坦部Paが形成された後であっても円滑に移動できるような大きさに形成されている。棒材111の突起部121〜123とは反対側に位置する背面側には、パイプPを中空ラックバーとして用いる場合に、外周面側から案内するための案内部材との摺動面に対応する範囲Q(軸を中心にして120〜150°)にわたって外周押圧面114が形成されている。
【0024】
各突起部121〜123は、緩やかなテーパ状の案内面が形成されており、成形時の流動抵抗に関わらず芯金110のスムーズな動きが得られるようになっている。
【0025】
次に、この芯金110を用いる中空ラックバー製造装置200の構成について説明する。中空ラックバー製造装置200は、鉄製パイプPを保持する下型210及び上型220とを備えている。中空ラックバー製造装置200は、下型210及び上型220に保持されたパイプPの内部空洞に芯金110を圧入させることによりパイプPの肉を後述する歯型230に向けて内径側から張出させることで中空のラックバー20を製造する装置である。
【0026】
下型210は横断面において半円形の内周面211を備え、この半円形の内周面211にパイプPが載置される。上型220はその上側の内面が所定長さに亘って長さ方向に間隔をおいた歯型230を着脱自在に備えており、転写鍛造によりパイプPの上面における所定長さの部位に歯型230の凹凸に応じてラックを形成することができる。
【0027】
このように構成された中空ラックバー製造装置200及び芯金110,110Aを用いてパイプPの鍛造加工を行う。
【0028】
予め、別の型を用いて中央部を中凹状に平潰し、中凹の半円形状としたパイプPを用意する。このパイプPを上型220及び下型210間に保持し、パイプPの平坦部Paが歯型230に当接させる。
【0029】
この状態においてパイプPに対する芯金110の圧入が開始される。芯金110はその先端112よりパイプPの中空部に導入される。そして、テーパ状の案内面を介して最初の突起部121がパイプPの平坦部Paの内側面に作用し、パイプPの肉は歯型230の歯形に向けて張出される。そして、芯金110の圧入が続けられることにより順次突起部122,123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。次に、後退方向に芯金110を移動する。続いて、芯金110Aを圧入することで、交互に圧入鍛造を行う。このとき、芯金110,110Aには、外周押圧面114が形成されているため、パイプPの下側の面は、R形状が作りこまれていく。
【0030】
なお、この後、同様にして、突起部の突出量を僅かに大きくした芯金110を用いて圧入鍛造を行う。以降、同様にして芯金110のサイズを少しずつ大きく変えつつ、所定の工程を繰り返すことで、最終的な加工が完了する。最終的に、芯金110の高さは芯金圧入によりパイプPの肉が歯型230の凹凸に対応して十分に張出されたラックの転写鍛造を完了する。
【0031】
図7〜図10は、同ラックバーの製造工程の別の例を示す図である。図7は芯金セットの1つである短尺型の芯金110Bを示す側面図、図8〜図10は同芯金セットを用いる中空ラックバー製造装置300を示す図である。図8は金型及び芯金ホルダまわりを芯金が挟持された状態、図9は金型及び芯金ホルダまわりを芯金受け渡し状態、図10は金型及び芯金ホルダまわりを芯金の圧入が完了した状態で示している。図10において、図7と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
芯金110Bの棒材111の長さは、後述する歯型313の歯部の長さの半分以下と短い。
【0033】
中空ラックバーの製造装置300は、金型310、複数の芯金110Bのセットを収納する芯金ホルダ320、第1の芯金押棒330、第2の芯金押棒340、及び芯金ガイド350等を備えている。
【0034】
金型310は、鉄製パイプ材Pを保持する下型311及び上型312とを備えている。下型311は横断面において半円形の内周面311aを備え、この半円形の内周面311aにパイプ材Pが載置される。上型312はその上側の内面が所定長さに亘って長さ方向に間隔をおいた歯型313を着脱自在に備えており、転写鍛造によりパイプ材Pの上面における所定長さの部位に歯型313の凹凸に応じてラックを形成することができる。
【0035】
芯金ホルダ320は、金型310の片側、例えば図8〜図10において金型310の右隣にのみ配置されている。図8〜図10に示すように芯金ホルダ320は複数の保持孔321を有している。これらの保持孔321はパイプ材Pが延びる方向に芯金ホルダ320を貫通していて、その内部に芯金110Bが個別に収容されている。収容された芯金110Bは、金型310に対する適正な姿勢で、かつ、不用意に脱落しないように図示しない板ばね等により保持されるようになっている。芯金ホルダ320に支持された各芯金110Bは、金型310に対して第1の芯金押棒330が挿脱される側に位置されている。
【0036】
芯金ホルダ320はホルダ駆動部(不図示)により移動される。この駆動が行われるたびに、複数の保持孔321の内の一つが順次選択されて互いに合わさったパイプ材Pの一端に対向される。そのため、芯金ホルダ320に支持された芯金110Bを順次パイプ材P内に出し入れすることが可能である。このために、ホルダ駆動部で芯金ホルダ320を図8〜図10中上下方向(縦方向)に一定ピッチずつ移動させている。しかし、これに代えて、横方向(図8〜図10を描いた紙面の表裏方向)に移動させてもよい。或いは、芯金ホルダー320を回転可能に設けて、ホルダー駆動部で所定角度ずつ回転させることもできる。
【0037】
第1の芯金押棒330の先端側は、金型310に保持されたパイプ材Pに対して挿脱自在に形成されている。その際、芯金110Bを伴って金型310に保持されたパイプ材Pに挿入される。なお、図8〜図10中符号360は管状の押棒ガイドを示している。
【0038】
第2の芯金押棒340の先端側は、金型310に保持されたパイプ材Pに対して挿脱自在に形成されている。
【0039】
図8〜図10に示すように芯金ガイド350は、金型310と芯金ホルダ320との間に、かつ、金型310に寄せて配置されている。この芯金ガイド350は、金属等からなりその厚み方向に貫通した通孔351を有している。通孔351は金型310に保持されたパイプ材Pの中空部に連通されている。
【0040】
次に、以上の構成の中空ラックバー製造装置300を用いて中空のラックバーを製造する手順を説明する。セットされたパイプ材Pは金型310内に配置され、パイプ材Pの他端側は金型310から突出される。又、型締めによって、下型311及び上型312とで挟持されるとともに、平坦部Paに歯型313が当接される。
【0041】
このセット作業の前又は後に、芯金ホルダ320を動作させて、それに収容された複数の芯金110Bの内の一つを、芯金ガイド350の通孔351に対向した状態に保持する。これとともに、通孔351に対向した芯金110Bの右端に第1の芯金押棒330の先端を係合させる。
【0042】
次に、第2の芯金押棒340がパイプ材P内に挿入され、第2の芯金押棒340の先端がパイプ材P及び芯金ガイド350の通孔351を挿通して、この通孔351に対向している芯金ホルダ320内の芯金110Bの左端に当たるようになる。したがって、通孔351内の芯金110Bがその軸方向両端からこれら両端に接した第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持される。
【0043】
この後、第1の芯金押棒330が、芯金ホルダ320の保持孔321及び芯金ガイド350の通孔351を通って、図9に示すように金型310に保持されたパイプ材P内に挿入される。
【0044】
この時、芯金110Bは、第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒330により押圧されてパイプ材P内に圧入される。この圧入により、芯金110Bの突起部121〜123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。芯金110Bの圧入は、図10に示すように芯金110Bが平坦部Paから抜けきらない状態で終了する。
【0045】
次に、第1の芯金押棒330が引き戻される。この時、第2の芯金押棒340が芯金ホルダ320に向けて移動される。これにより、芯金110Bは、この芯金110Bの両端に接した第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のまま、第2の芯金押棒340により押圧されてパイプ材P及び芯金ガイド350の通孔351を通って芯金ホルダ320に内に押し戻される。この場合にも、芯金110Bの突起部121〜123による肉の張出しを受け、圧入鍛造が行われる。
【0046】
この後、芯金ホルダ320を動かして、次に突起部の突起量が大きい芯金110B及びこれが収容された保持孔321を芯金ガイド350の通孔351を通してパイプ材Pの開口部に対向させる。
【0047】
そして、次に使用する芯金110Bを挟持した状態とした後に、同様にして、芯金110Bは、第1の芯金押棒330と第2の芯金押棒340とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒330により押圧されてパイプ材P内に圧入し、一往復させる。こうした手順を順次繰り返すことによって、パイプ材Pに金型310の歯型313に対応したラックを有した中空のラックバー20を製造する。
【0048】
最後に、使用した最後の芯金110Bを芯金ホルダ320に戻した後に、第2の芯金押棒340をパイプ材Pから抜出してから、金型310を開く。
【0049】
上述したように、本発明の実施の形態に係るラックバー20においては、ハンドルを最大角に切ったときにハンドルがロックに当たる衝撃を軽減することで、据え切り時又は極低速走行時における操舵感を向上することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、ラック歯形成部(歯部)の外径とロッド部(軸部)の外径とは異なるとしたが、同一径のものに適用してもよい。また、中空のラックバーとしたが、中実のラックバーとしてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係るラックバーが組み込まれたステアリング装置を示す斜視図。
【図2】同ラックバーの比ストローク特性を示す説明図。
【図3】同ラックバーの要部を模式的に示す説明図。
【図4】同ラックバーの製造工程の一例に係る芯金の要部を示す側面図。
【図5】同芯金が適用される中空ラックバー製造装置を示す断面図。
【図6】同芯金が挿入された状態の中空ラックバーを示す断面図。
【図7】同ラックバーの製造工程の別の例に係る芯金の要部を示す側面図。
【図8】同芯金を用いる中空ラックバー製造装置を示す図であって、金型及び芯金ホルダーまわりを芯金が挟持された状態で示す断面図。
【図9】同中空ラックバー製造装置の金型及び芯金ホルダーまわりを芯金受け渡し状態で示す断面図。
【図10】同中空ラックバー製造装置の金型及び芯金ホルダーまわりを芯金の圧入が完了した状態で示す断面図。
【図11】従来のラックバーの比ストローク特性を示す説明図。
【図12】同ラックバーの要部を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
10…ステアリング装置、11…ハンドル(操舵部材)、13…ピニオン軸、13a…ピニオンギア、20…ラックバー、21…筒部、22…ラック歯形成部、22a…歯部、23…軸部、24…ロッド部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、
軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とするラックバー。
【請求項2】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、
軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とするラックバー。
【請求項3】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、
前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、
前記ラックバーは、軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、
前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、
前記ラックバーは、軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、
軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とするラックバー。
【請求項2】
ピニオンギアに噛み合わされるラックバーにおいて、
軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とするラックバー。
【請求項3】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、
前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、
前記ラックバーは、軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部は、ピニオンギアの回転角と前記軸部の移動距離との比が、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
操舵部材に連結されたステアリングシャフトと、
このステアリングシャフトに連結されるとともに、先端にピニオンギアを有するピニオン軸と、
前記ピニオンギアに噛み合わされるラックバーとを備え、
前記ラックバーは、軸部と、
この軸部に設けられ、前記ピニオンギアと噛み合う複数の歯部が軸方向に沿って並設されたラック歯形成部とを備え、
前記ラック歯形成部の歯部のピッチが、前記軸方向の両端側が中央部に対し大きく形成されるとともに、両端に近づくにつれて漸次小さく形成されるとともに、前記軸部の軸方向に対する角度が大きくなることを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−264452(P2009−264452A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112940(P2008−112940)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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