説明

ラムダセンサの電気加熱のための制御方法及び装置

【課題】 内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの過熱が避けられるように、センサの電気的加熱のための制御方法および装置を提供する。
【解決手段】 内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱のための制御方法において、センサの全加熱出力(42)が制御され、且つセンサの温度の実際値(33)が特性パラメータ、例えば抵抗の測定によって決定される。定格加熱出力(41)が、特性マップ(20)を介して内燃機関の運転ポイント(30、31)に応じて決定される。制御加熱出力(40)が、制御器(10)において温度の実際値(33)と新しい目標値(34)とから決定される。全加熱出力(42)が、定格加熱出力(41)と制御加熱出力(40)との和として生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱の制御及び制御のための方法であって、その際センサの全加熱出力が制御され、またセンサの温度の実際値が特性パラメータ、例えば抵抗の測定によって定められる方法に関する。
【0002】
本発明は更に、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱の制御及び制御のための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
最近の自動車では一般に、内燃機関の排気ガスシステム内に、一定の温度をオーバーした後に始めて作動可能状態となる、少なくとも一つのセンサが配置されている。その際、このセンサは、例えばラムダセンサとすることができる。このセンサは、センサをかすめて流れ過ぎて行く熱い排気ガスによって加熱される。運転中に、センサは一般に、750℃の定格温度となっていなければならないであろう。スタートの後、センサが最低温度にできるだけ速やかに到達し、また排気ガスの加熱能力だけでは十分でない運転領域内においても確実に到達できるようにするために、通常、電気的加熱装置がセンサに備えられている。その加熱装置が故障した場合には、センサの機能は大幅に制限されることがある。
【0004】
DE 3928 709 A1 から、排気ガスセンサとそのリード線のための加熱装置の機能をチェックするための方法及び装置が知られている。それによれば、加熱装置のスイッチオンの後、連続する二つの時点で排気ガスセンサの作動可能状態が測定される。第一の時間の経過後にセンサの作動可能状態に問題があり、且つ第二の時間の経過後も続いている場合には、加熱装置の故障という判定が下される。その際、この機能診断は、加熱装置がスイッチオンされ且つ作動可能状態にあれば、排気ガスセンサが排気ガスだけによる加熱の場合よりもより速やかにその最低作動温度に到達するという仮定を根拠としている。それ故、この方法は、排気ガスセンサの作動可能状態をチェックするために適している。この方法によって、排気ガス関連部分の故障(センサの加熱もそれに含まれる)が検知され且つ表示されることを求めているカリフォルニア環境当局(CARB:カリフォルニア大気資源委員会)の要求が満たされる。ヨーロッパ市場においても、熱流或いはそれに代わるものの大きさを監視することが指示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱の定格加熱出力及び制御加熱出力を決定し、両者の加熱出力の和としての全加熱出力を、センサの過熱が避けられるように監視する方法を提供することである。
【0006】
更に、本発明の課題は、該方法の実施のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱のための制御方法であって、その際、センサの全加熱出力が制御され、且つセンサの温度の実際値が特性パラメータ、例えば抵抗の測定によって決定される制御方法において、定格加熱出力が、特性マップを介して内燃機関の運転ポイントに応じて決定され、制御加熱出力が、制御器において温度の実際値と新しい目標値とから決定され、全加熱出力が、定格加熱出力と制御加熱出力との和として生成される。
【0008】
本発明の装置に関する課題は、特性マップと制御器とが加算段階を通じて結合されている、ということによって解決されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサのセラミックスの過熱が又それと共に老化作用の過剰補正が防止される。更に、制御器の制御余裕が運転ポイントの広い範囲にわたって保持される。測定抵抗やアナログ/デジタル変換器を省くことができるということによって、コスト上の優位性も生まれる。
【0010】
センサの温度の実際値をセンサの内部抵抗の測定によって確定することによって、本発明の方法は、特にコスト的に有利に実施することができる。
【0011】
加熱出力が安定に維持されるように温度決定(特性)パラメータを後追い調整して行けば、制御器の制御余裕を、運転ポイントの広い領域にわたって保持することができる。その際、前記の後追い調整とは、温度決定パラメータの或る種の修正の手法を意味している。
【0012】
本発明の方法の一つの簡単な実施例では、前記の温度決定パラメータを、新しい目標値或いは温度の実際値とするということが想定されている。
【0013】
制御加熱出力の変化のダイナミクス(動特性)が、故障した加熱装置(加熱出力の低下)の診断のために用いられるということによって、ネルンストセル特性の変化と、例えば分路による加熱出力の低下との間の弁別が達成される。
【0014】
本発明の方法の、簡単化されてはいるが確実な一つの拡張例では、故障した或いは老化したセンサが、温度の実際値の変化が最大の大きさに達していることによって確認されるということが想定されている。
【0015】
加熱出力の低下からのネルンストセル特性の変化の分離は、温度の実際値の後追い調整は、制御加熱出力の後追い調整よりもはっきりと時間をかけて行われることによって、実現される。
【0016】
本発明の方法のメンテナンスの場合に有利な一つの拡張例では、起こり得る故障の原因はセンサの交換の際に防止されるので、センサの交換の検知が、制御加熱出力の評価によって行われるということが想定されている。
【0017】
制御器の制御パラメータを運転ポイントに応じて確定すれば、センサ温度の目標値からの偏差をとりわけ小さくすることができる。
【0018】
本発明の、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱のための制御装置よれば、特性マップと制御器とが加算段階を通じて結合されていることによって、排気ガスセンサの過熱を防止する特別に簡単に組み立てられた装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用することのできる技術的環境の略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明を適用することのできる技術的環境の原理図が非常に図式化されたブロック図の形で示されている。
【0021】
図1は、本発明を適用することのできる技術的環境の略図を示している。特性マップ(20)を通して、内燃機関の幾つかの運転ポイント(30、31)に依存して、公称ネルンストセル特性を有する新しいセンサのための定格加熱出力(41)が出力される。運転ポイント(30、31)は、例えばエンジン回転数及び/又は負荷及び/又は排気ガス温度及び/又は排気ガス流量とすることができる。特性マップ(20)は、これによって予備制御装置の性格を持つ。この予備制御装置には、温度の実際値(33)と新しい目標値(34)とから得られる残留差をセンサの内部抵抗の測定によって制御する制御器(10)が重ね合わされている。この制御のために必要な加熱出力は、制御加熱出力(40)と呼ばれる。重ね合わせの結果として得られる全加熱出力(42)は、加算段階(21)で形成され、標準化装置(22)と制限装置(23)とを経て、上述の値から定められたオンオフ比(43)でセンサに送り込まれる。
【0022】
その際、制御器(10)は更に、ここでは詳しくは明示されない制御パラメータ(32)によって影響されることがある。例えば温度決定パラメータが、加熱出力が安定に留まるように後追い調整されれば、制御器(10)の制御余裕は、運転ポイントの広い範囲にわたって保持されることができる。温度決定パラメータは、目標値の温度決定装置(24)の修正として用いられる新しい目標値(34)であると想定することができる。制御加熱出力(40)の変化速度(35)は、フェードアウト装置(25)のための入力値となる。その後に接続されている閾値発生装置(26)は、フェードアウト装置(25)と判定装置(28)との差から目標値の温度決定(24)を行う。ネルンストセル特性と加熱出力の低下とが弁別されることによって、センサの老化に関する診断装置(27)を通して、制御加熱出力(40)の変化のダイナミクスを、加熱装置の故障を表示するために利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10…制御器
20…特性マップ
21…加算段階
22…標準化装置
23…制限装置
24…目標値の温度決定装置
25…フェードアウト装置
26…閾値発生装置
27…診断装置
28…判定装置
30、31…運転ポイント
32…制御パラメータ
33…温度の実際値
34…新しい目標値
35…制御加熱出力の変化速度
40…制御加熱出力
41…定格加熱出力
42…全加熱出力
43…オンオフ比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスシステム内に配置されているセンサの電気的加熱のための制御方法であって、その際、センサの全加熱出力(42)が制御され、且つセンサの温度の実際値(33)が特性パラメータ、例えば抵抗の測定によって決定される制御方法において、
定格加熱出力(41)が、特性マップ(20)を介して内燃機関の運転ポイント(30、31)に応じて決定されること、
制御加熱出力(40)が、制御器(10)において温度の実際値(33)と新しい目標値(34)とから決定されること、及び
全加熱出力(42)が、定格加熱出力(41)と制御加熱出力(40)との和として生成されること、
を特徴とするセンサの電気的加熱のための制御方法。
【請求項2】
前記センサの温度の実際値(33)が、センサの内部抵抗の測定によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記特性パラメータが、前記加熱出力が安定に保たれるように後追い調整されることを特徴とする請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記特性パラメータが、新しい目標値(34)または温度の実際値(33)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の制御方法。
【請求項5】
制御加熱出力(40)の変化のダイナミクスが、故障した加熱装置、即ち加熱出力の低下の診断のために用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の制御方法。
【請求項6】
前記センサの故障或いは老化が、温度の実際値(33)の変化が最大の大きさに達していることによって確認されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の制御方法。
【請求項7】
温度の実際値(33)の後追い調整が、制御加熱出力(40)の後追い調整よりもはっきりと時間をかけて行われることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の制御方法。
【請求項8】
前記センサの交換の検知が、制御加熱出力(40)の評価によって行われることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の制御方法。
【請求項9】
制御器(10)の制御パラメータ(32)が、運転ポイント(30、31)に応じて確定されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の制御方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の制御方法を実施するための、内燃機関の排気ガスシステム内に配置されたセンサの電気的加熱のための制御装置において、
特性マップ(20)と制御器(10)とが加算段階(21)を通して接続されることを特徴とするセンサの電気的加熱のための制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−163110(P2012−163110A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117489(P2012−117489)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【分割の表示】特願2005−281429(P2005−281429)の分割
【原出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】