説明

ランキンサイクルシステム

【課題】ランキンサイクルの過熱器における蒸気漏れを検出し、膨張器の破損の回避することを課題とする。
【解決手段】ランキンサイクルシステム100は、冷媒を沸騰させて蒸気を発生させるエンジン100、熱媒体となる排気ガスとの熱交換によりエンジン1において発生した蒸気を過熱する過熱器7、過熱器7において過熱された蒸気によって駆動される膨張器8、過熱器7における蒸気漏れを検出する温度検出装置9を備える。さらに、ランキンサイクルシステム100は、過熱器7から膨張器8への蒸気の流通を遮断する遮断弁10、過熱器7と膨張器8をバイパスするバイパス通路15、三方弁16を備える。過熱器7における蒸気漏れが検出されたとき、遮断弁10は遮断され、三方弁16は蒸気が過熱器7と膨張器8とをバイパスするように切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランキンサイクルを利用して内燃機関(エンジン)の稼動に伴う廃熱を回収する廃熱回収装置が知られている。このような廃熱回収装置には、例えば、エンジンの水冷冷却系統を密閉構造として沸騰冷却を行うようにし、エンジンにおける廃熱によって気化した冷却水、すなわち蒸気によって膨張器(例えば、衝動タービン)を駆動して、その蒸気の持つ熱エネルギを電気エネルギ等に変換して回収するものがある。このようなランキンシステムを用いた廃熱回収装置における経路内の蒸気漏れを判定する提案が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−169731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、膨張器がより効率よく駆動されるためには、蒸気の持つエネルギを増す必要がある。このため、ランキンサイクルシステムには、効率よく膨張器を駆動するために、過熱器を備えたものがある。過熱器は、蒸気を他の熱媒体との間で熱交換させて過熱(スーパーヒート)させる。内燃機関をランキンサイクルにおける蒸気発生器とした場合には、内燃機関の排気ガスを過熱器における熱媒体とすることができる。
【0005】
しかしながら、その一方で、膨張器は、あまりに高温の環境下に置かれると、内部のシールが熱により破損する恐れを有する。シールが破損すれば、蒸気漏れが発生し、蒸気と膨張器に供給されている潤滑剤との混合が生じる。
【0006】
さらに、内燃機関をランキンサイクルにおける蒸気発生器とし、その排気ガスを過熱器における熱媒体とする場合、過熱器に破損が生じ、蒸気通路に排気ガスが流入してしまうと、膨張器内のシールは熱によって容易に破損する。シールが破損し、膨張器の潤滑剤供給部に高温の排気ガスが到達する恐れもある。
【0007】
そこで、本明細書開示のランキンサイクルシステムは、特に過熱器における蒸気漏れを検出し、膨張器の破損の回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本明細書開示のランキンサイクルシステムは、冷媒を沸騰させて蒸気を発生させる蒸気発生器と、熱媒体との熱交換により前記蒸気発生器において発生した蒸気を過熱する過熱器と、前記過熱器において過熱された蒸気によって駆動される膨張器と、前記過熱器における蒸気漏れを検出する蒸気漏れ検出装置と、前記過熱器から前記膨張器への蒸気の流通を遮断する遮断弁と、前記蒸気漏れ検出装置により蒸気漏れが検出されたときに前記遮断弁を遮断状態とする制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
過熱器において蒸気漏れが発生すると、高温の熱媒体が蒸気通路内に浸入する。蒸気漏れを検出したときに、膨張器への蒸気の流通を遮断することにより、高温の流体が膨張器へ供給されることによる膨張器の破損を回避することができる。
【0010】
このようなランキンサイクルシステムは、さらに、前記過熱器及び前記膨張器をバイパスするバイパス通路と、前記蒸気発生器によって発生した蒸気が流通する経路を前記過熱器側と、前記バイパス通路側との間で切り替える通路切替手段と、を備え、前記制御部は、前記蒸気漏れ検出装置により蒸気漏れが検出されたときに前記通路切替手段をバイパス通路側へ切り替えるようにすることができる。これにより、過熱器において蒸気漏れが生じたときに、蒸気が蒸気漏れ発生箇所から熱媒体と共に排出されることを回避することができる。
【0011】
このようなランキンサイクルシステムにおける前記蒸気発生器は、内部で冷媒が沸騰することにより冷却される内燃機関であり、前記熱媒体は、前記内燃機関が排出する排気ガスである構成とすることができる。ランキンサイクルシステムにより内燃機関の廃熱回収を行うことができる。この場合、過熱器において内燃機関の排気ガスを熱媒体とした蒸気の過熱を行うことができる。そして、過熱器において蒸気漏れが発生した場合に、高温の排気ガスが膨張器に供給されることを回避することができる。
【0012】
このようなランキンサイクルシステムにおける蒸気漏れ検出装置は、前記過熱器の下流側、例えば、前記過熱器と前記膨張器との間の冷媒通路に配設された温度検出装置とすることができる。過熱器において蒸気漏れが発生すると、これに伴って高温の熱媒体が蒸気通路に浸入する。このため、過熱器の下流側を流通する流体の温度は高くなる。そこで、過熱器下流側の流体の温度を検出することによって蒸気漏れを検出することができる。なお、蒸気漏れを検出することができるものであれば、採用することができる。例えば、流通経路内の圧力を検出するようにしてもよい。また、熱媒体を排気ガスとした場合は、A/FセンサやOセンサを用い、これにより排気ガスの浸入を検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本明細書開示のランキンサイクルシステムによれば、過熱器における蒸気漏れに起因する膨張器の破損を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例のランキンサイクルシステムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施例のランキンサイクルシステムの制御の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
ランキンサイクルシステム100の概略構成について図1を参照しつつ説明する。ランキンサイクルシステム100は、内部で冷媒が沸騰することにより冷却されるエンジン1を備えている。エンジン1は、蒸気発生器に相当する内燃機関の一例である。エンジン1は、シリンダブロック1aとシリンダヘッド1bを備える。シリンダブロック1a及びシリンダヘッド1b内にはウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケット内の冷媒が沸騰することによってエンジン1の冷却が行われる。エンジン1は、さらに、排気管2を備える。エンジン1のシリンダヘッド1bには、冷媒供給路3の一端が接続されている。冷媒供給路3には、エンジン1で温められた冷媒が流入する。
【0017】
冷媒供給路3には、気液分離器4が配設されている。エンジン1側から気液混合状態で気液分離器4に流入した冷媒は、気液分離器4内で気相と液相とに分離される。気液分離器4の下端部には、冷媒循環路5の一端が接続されている。この冷媒循環路5の他端はシリンダブロック1aに接続されている。また、冷媒循環路5には、エンジン1内に液状の冷媒を圧送する第1ウォーターポンプ6が配設されている。この第1ウォーターポンプ6は、いわゆるメカ式であり、エンジン1が備えるクランクシャフトを駆動源としている。この第1ウォーターポンプ6により液状の冷媒が、エンジン1と気液分離器4との間を循環する。
【0018】
冷媒供給路3の他端は、過熱器7に接続されている。過熱器7は、下側に蒸発部7aを備え、その上側に過熱部7bを備えている。冷媒供給路3は、蒸発部7aに接続されている。過熱器7には、排気管2が引き込まれている。排気管2は、その内部を流通する排気ガスがエンジン1で発生し、気液分離器4を通過した蒸気と熱交換をする熱媒体となる。排気管2は、排気ガスが過熱部7b、蒸発部7aの順に通過するように過熱器7を貫通している。これにより、過熱器7は、エンジン1側から冷媒供給路3を通じて流入する冷媒とエンジン1が排出する排気との熱交換を行う。これにより、蒸気発生量が増大すると共に、蒸気の過熱度が向上し、廃熱回収効率が向上する。過熱部7bの上端部には、蒸気排出管7cが設けられている。
【0019】
過熱器7の下流には、過熱器7において過熱された蒸気によって駆動される膨張器8が設けられている。膨張器8は、衝動タービンを備えており、蒸気排出管7cの先端部に設けられたノズル8aから噴射された蒸気によって駆動される。衝動タービンの回転力は、エンジン1が備えるクランクシャフトの回転を補助したり、発電機の駆動に用いられたりする。これにより、廃熱の回収が行われる。衝動タービンは、軸受けを備えるが、耐久性の面でグリス封入タイプの軸受けを採用することができず、オイル潤滑式の軸受けが採用されている。このため、潤滑油の通路と蒸気の通路とを隔てるオイルシールが設けられている。
【0020】
蒸気排出管7cは、冷媒通路に相当する。蒸気排出管7cには、温度検出装置9が配設されている。また、蒸気排出管7cの温度検出装置9の下流側には、膨張器8への蒸気の流通を遮断する電磁式の遮断弁10が設けられている。温度検出装置9は、蒸気漏れ検出装置の一例である。温度検出装置9は、過熱器7の下流となる蒸気排出管7cを流通する流体の温度を測定する。測定された温度が規定値よりも高い場合は、過熱器7において蒸気漏れが発生しており、蒸気経路に高温の排気ガスが浸入していると判断することができる。
【0021】
膨張器8の下流側には、膨張器8においてエネルギを回収された後の冷媒をエンジン1側へ再循環させる冷媒回収路11が設けられている。冷媒回収路11の一端は、膨張器8に接続されている。冷媒回収路11の他端は、冷媒循環路5の第1ウォーターポンプ6の上流側に接続されている。冷媒回収路11には、コンデンサ12が配設されている。コンデンサ12は、蒸気化している冷媒を冷却して凝縮し、冷媒を液状に戻す。冷媒回収路11のコンデンサ12の下流側には、凝縮水タンク13が配設されている。凝縮水タンク13には、液状に戻された冷媒が貯留される。
【0022】
冷媒回収路11の凝縮水タンク13の下流には第2ウォータポンプ14が配設されている。この第2ウォータポンプ14は、電気式のベーンポンプとなっている。第2ウォータポンプ14が稼動状態となると、凝縮水タンク13内の冷媒を冷媒循環路5へ供給する。以上のように、廃熱回収装置100は、冷媒が循環する経路を備えている。
【0023】
ランキンサイクルシステム100は、過熱器7及び膨張器8をバイパスするバイパス通路15を備えている。バイパス通路15は、気液分離器4の下流側の冷媒供給路3から分岐し、コンデンサ12の上流側の冷媒回収路11に接続されている。ランキンサイクルシステム100は、バイパス通路15の冷媒供給路3からの分岐点に通路切替手段に相当する電磁式の三方弁16を備えている。三方弁16は、三つの口部16a、16b、16cを備えている。そして、口部16aが気液分離器4側、口部16bが過熱器7側、口部16cがコンデンサ12側に位置するように分岐点に取り付けられている。これにより、エンジン100によって発生した蒸気が流通する経路を過熱器7側と、バイパス通路15側(コンデンサ12側)との間で切り替えることができる。
【0024】
ランキンサイクルシステ100は、制御部に相当するECU(Electronic control unit)17を備えている。ECU17は、温度検出装置9、遮断弁10、第2ウォータポンプ14、三方弁16とそれぞれ電気的に接続されている。ECU17は、温度検出装置9により蒸気漏れと判定される流体の温度が検出されたときに遮断弁10を遮断状態とするとともに、三方弁16をバイパス通路15側、すなわち、口部16aと口部16bとが連通する状態へ切り替える。
【0025】
遮断弁10を遮断することにより、高温の流体、すなわち、排気ガスが混入した蒸気が膨張器8へ導入されることに起因する膨張器8の破損を回避することができる。すなわち、排気ガスは、膨張器8が備えるオイルシールの耐熱温度を大きく上回る温度に達するが、このような排気ガスにオイルシールが晒されることを回避することができる。
【0026】
また、三方弁16の切り替えにより蒸気をバイパス通路15側へ流し、蒸気漏れが発生していると考えられる過熱器7をバイパスさせる。これにより、過熱器から冷媒が排気ガスと共に排出されることが抑制される。
【0027】
つぎに、このようなランキンサイクルシステム100の制御の一例につき、図2に示すフロー図を参照しつつ説明する。
【0028】
ECU17は、エンジン1が始動すると、ステップS1において、温度検出装置9から温度Tを取得する。そして、ステップS2において、取得した温度Tが予め定めた温度T0以下であるか否かを判断する。ここで、温度T0は、これよりも高い温度となるときは、蒸気漏れに伴って蒸気に排気ガスが混入していると判断できる値として定められた閾値である。
【0029】
ステップS2において、YESと判断したとき、すなわち、温度Tが閾値T0よりも低かったときはステップS3へ進む。ステップS3では、蒸気漏れが発生していない正常判定を行う。ステップS3で正常判定を行った後は、ステップS4へ進む。ステップS4では、遮断弁10を開弁状態とすると共に、三方弁16を過熱器7側へ切り替える。すなわち、口部16aと口部16bとが連通する状態とする。このような状態とされたランキンサイクルシステム100は、エンジン1で発生した気液混合状態の冷媒が気液分離器4に導入される。そして、気液分離器4において分離された蒸気は過熱器7において、排気ガスと熱交換し、過熱される。過熱された蒸気は、膨張器8へ送られる。そして、膨張器8を駆動した後の蒸気はコンデンサ12で凝縮され、凝縮水タンク13に貯留される。凝縮水タンク13に貯留された冷媒は、第2ウォータポンプ14がECU17の指令に基づいて駆動されたときに、エンジン1側へ戻される。一方、気液分離器4で分離された液体の冷媒は、冷媒循環路5を通じてエンジン1側へ戻される。
【0030】
一方、ステップS2において、NOと判断したとき、すなわち、温度Tが閾値T0よりも高かったときはステップS5へ進む。ステップS5では、異常判定を行う。ステップS5で異常判定を行った後は、ステップS6へ進む。ステップS6では、遮断弁10を遮断状態とすると共に、三方弁16をバイパス通路15側へ切り替える。すなわち、口部16aと口部16cとが連通する状態とする。このようにフェイル状態とされたランキンサイクルシステム100は、エンジン1で発生した気液混合状態の冷媒が気液分離器4に導入される。そして、気液分離器4において分離された蒸気は、過熱器7及び膨張器8をバイパスしてコンデンサ12へ導入される。コンデンサ12で凝縮された冷媒は、凝縮水タンク13に貯留される。凝縮水タンク13に貯留された冷媒は、第2ウォータポンプ14がECU17の指令に基づいて駆動されたときに、エンジン1側へ戻される。一方、気液分離器4で分離された液体の冷媒は、冷媒循環路5を通じてエンジン1側へ戻される。
【0031】
なお、このように蒸気漏れが検出されたときは、インジケータ等によって運転者に警告を発し、エンジン1の回転数を制限する等の運転状態とする。
【0032】
以上説明したように、本実施例のランキンサイクルシステム100によれば、膨張器8の破損を回避し、冷媒の系外への排出を抑制することができる。
【0033】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0034】
1…エンジン
2…排気管
3…冷媒供給路
4…気液分離器
5…冷媒循環路
6…第1ウォータポンプ(W/P)
7…過熱器(熱交換部)
7a…蒸発部
7b…過熱部
8…膨張器
9…温度検出装置
10…遮断弁
11…冷媒回収路
12…コンデンサ
13…凝縮水タンク
14…第2ウォータポンプ(W/P)
15…バイパス通路
16…三方弁(通路切替手段)
17…ECU(制御部)
100…ランキンサイクルシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を沸騰させて蒸気を発生させる蒸気発生器と、
熱媒体との熱交換により前記蒸気発生器において発生した蒸気を過熱する過熱器と、
前記過熱器において過熱された蒸気によって駆動される膨張器と、
前記過熱器における蒸気漏れを検出する蒸気漏れ検出装置と、
前記過熱器から前記膨張器への蒸気の流通を遮断する遮断弁と、
前記蒸気漏れ検出装置により蒸気漏れが検出されたときに前記遮断弁を遮断状態とする制御部と、
を備えたことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記過熱器及び前記膨張器をバイパスするバイパス通路と、
前記蒸気発生器によって発生した蒸気が流通する経路を前記過熱器側と、前記バイパス通路側との間で切り替える通路切替手段と、を備え、
前記制御部は、前記蒸気漏れ検出装置により蒸気漏れが検出されたときに前記通路切替手段をバイパス通路側へ切り替えることを特徴とした請求項1記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記蒸気発生器は、内部で冷媒が沸騰することにより冷却される内燃機関であり、
前記熱媒体は、前記内燃機関が排出する排気ガスであることを特徴とする請求項1又は2記載のランキンサイクルシステム。
【請求項4】
前記蒸気漏れ検出装置は、前記過熱器の下流側の冷媒通路に配設された温度検出装置であることを特徴とした請求項1乃至3のいずれか一項記載のランキンサイクルシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−149384(P2011−149384A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12776(P2010−12776)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】