説明

リグナン類化合物含有組成物

【課題】リグナン類化合物を高濃度に溶解して含有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】セサミン、エピセサミン等のリグナン類化合物を、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸トリグリセリド、好ましくは、カプリル酸及び/又はカプリン酸及び/又はラウリン酸のトリグリセリドを含む油脂を溶媒として溶解した組成物は、他の溶媒を用いる場合に比べてリグナン類化合物を高濃度で安定に含むため、食品、医薬品として価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグナン類化合物含有組成物に関する。より詳細には、セサミン及び/又はエピセサミンと炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリドとを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リグナン類化合物は、種々の用途での使用が知られている。例えば、USP4427694には、セサミンがアルコール中毒やアルコールや喫煙の禁断症状の緩和に有効であること、また特開平2−138120号には、セサミノールやエピセサミノールが気管支喘息等のアレルギー症の治療・予防に有効であることが開示されている。本出願人らも、リグナン類化合物の種々の生理作用を確認しており、現在までに血中コレステロール低下作用(特許3001589号)、Δ−不飽和化酵素阻害作用(特許3070611号)、肝機能改善作用(特許3075358号)、コレステロール降下作用(特許3075360号)、悪酔防止作用(特許3124062号)、コレステロール及び胆汁酸の代謝阻害、コレステロール低下作用(特許3283274号)、発癌抑制作用(特許3183664号)、乳癌抑制作用(特開平05−043458号)や、過酸化脂質生成抑制作用(特開平05−051388号)、活性酸素除去作用(特開平06−227977号)等の効果を明らかにしている。
【0003】
ところで、一般に、脂溶性物質はヒト又は動物が摂取したときの体内吸収が悪い。そこで、脂溶性物質の吸収を高める方法が提案されている。例えば、脂溶性物質であるユビデカレノンについて、食用天然油脂や中鎖脂肪酸のトリグリセリドに溶解させて液状にすることにより吸収を高める方法が開示されている(特開昭54−92616号)。
【特許文献1】USP4427694
【特許文献2】特開平2−138120号
【特許文献3】特許3001589号
【特許文献4】特許3070611号
【特許文献5】特許3075358号
【特許文献6】特許3075360号
【特許文献7】特許3124062号
【特許文献8】特許3283274号
【特許文献9】特開平04−159221号(特許3183664号)
【特許文献10】特開平05−043458号
【特許文献11】特開平05−051388号
【特許文献12】特開平06−227977号
【特許文献13】特開昭54−92616号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、脂溶性物質であるセサミン及びエピセサミンについて、水に分散させた懸濁状の場合と、油脂(小麦胚芽油)に溶解させた溶液状の場合とにおいてラットにおける吸収実験を行ったところ、後者が顕著に体内吸収に優れることを確認した。セサミン及び/又はエピセサミンは、油脂に溶解して摂取することが好ましい形態であるといえるが、セサミン及び/又はエピセサミンは難溶性で油脂(小麦胚芽油)に対する溶解度が低く、高濃度で配合することが困難なばかりか、低濃度に配合した場合であっても、保存安定性の悪さから保存中に結晶が析出することがあった。この結晶析出は吸収性の低下をもたらす可能性があることから、保存安定性を考慮すると、油脂(小麦胚芽油)に対する溶解度よりもかなり低い濃度で配合するしかなかった。このような状況のため、一度に摂取するセサミン及び/又はエピセサミンの量を多くしようとすると、溶剤である油脂の量も多くせざるをえず、余剰のカロリー摂取を余儀なくされるという問題があった。また、処方されるセサミン及び/又はエピセサミン含有組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎる、或いは摂取数量が多くなり過ぎて摂取に不都合を生じることがあった。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(カプセル剤など)が大きくなり過ぎたり、摂取粒数が多くなり過ぎたりするために、摂取に支障が生じることがあった。
【0005】
本発明は、脂溶性物質であるセサミン及び/又はエピセサミンを高濃度で配合しうる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、溶剤として炭素数が8〜12である中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いると、長鎖脂肪酸である小麦胚芽油の場合と比較して、2.5〜5.5倍程度セサミン及び/又はエピセサミンの溶解性が向上することを見出した。そして、本発明者らはさらに検討を行った結果、セサミンとその異性体であるエピセサミンとでは溶解度に差があり、エピセサミンがより難溶性であること、また中鎖脂肪酸トリグリセリドにおいて、前記セサミンとエピセサミンの溶解度の差が大きいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、セサミン及び/又はエピセサミンと炭素数8〜12の中鎖脂肪酸トリグリセリドとを含有する組成物で、セサミン及び/又はエピセサミンを中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解して含有する組成物である。
【0008】
また、本発明は、前記組成物を含有する飲食品に関し、その好ましい形態はカプセル剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、これまで可能であった濃度に比べ、はるかに高濃度にセサミン及び/又はエピセサミンを含有し、保存安定性に優れ、かつ安全性が高いものである。本発明の組成物は、高濃度にセサミン及び/又はエピセサミンを含有するので、ソフトカプセル等として経口的に摂取する場合には、カプセルの摂取数量を少なくすることができ、溶剤である油分の摂取量を抑えることができる。
【0010】
また、本発明によると、これまで実現し得なかった難溶性であるエピセサミン(又はエピセサミンを高濃度に含有する組成物)を1.0重量%以上含有するカプセル剤を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明によると、中鎖脂肪酸トリグリセリドに対するセサミン及びエピセサミンの溶解度の差を利用して、エピセサミンを精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
リグナン類化合物
本発明で使用するセサミン及びエピセサミン(本明細書中、「リグナン類化合物」と称することもある)は、これらを単独で、又は混合して使用することができる。
【0013】
本発明の食品に添加するリグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得る方法として次の手順で行うことができる。まず、リグナン類化合物を主成分とする抽出物を胡麻油から得るには、胡麻油とは実質的に非混和性であり、かつリグナン類化合物を抽出・溶解することができる種々の有機溶剤を用いて抽出・濃縮することで得られる。このような有機溶剤として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メタノール、エタノール等を挙げることができる。リグナン類化合物を主成分とする抽出物を得るには、例えば胡麻油と上記の溶剤のいずれかとを均一に混同した後、低温において静置し、遠心分離等の定法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる。さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは6〜8倍容量のアセトンに溶かし、−80℃で一晩放置する。その結果、油成分が沈殿となり、濾過により得た濾液から有機溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。あるいは、胡麻油を熱メタノール又は熱エタノールで混合した後、室温において静置し、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる、さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは5〜7倍容量の熱メタノール(50℃以上)又は熱エタノール(50℃以上)で混合し激しく抽出する。室温に静置あるいは遠心分離等の定法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。また、超臨界ガス抽出も利用できる。この抽出物より、各々のリグナン類化合物を得るためには、抽出物をカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留、液々交流分配クロマトグラフィー等の定法に従って処理することにより目的とする化合物を単離すればよい。さらに具体的には、逆相カラム、溶離液にメタノール/水(60:40)を使って、上記抽出物を高速液体クロマトグラフィーで分取し、溶媒を留去した後、得られた結晶をエタノールで再結晶化することで、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール等の各リグナン類化合物が得られる。用いる胡麻油は精製品でもよく、また胡麻油の製造過程で脱色工程前のいずれの粗製品でもよく、さらに、胡麻種子あるいは胡麻粕(脱脂胡麻種子、残油分8〜10%)であってもよい。この場合、胡麻種子あるいは胡麻粕を必要により破砕した後、任意の溶剤、例えば胡麻油からの抽出について前記した溶剤を用いて定法により抽出することができる。抽出残渣を分離した後、抽出液から蒸発等により溶剤を留去することにより抽出物が得られる。このように精製された胡麻種子抽出物、胡麻粕抽出物あるいは粗製品の胡麻油抽出物からは、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール以外に、セサモリン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、2,6−ビス−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、又は2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−6−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3,7−ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタンの各リグナン類化合物が同様の手法で得られる。
【0014】
なお、細辛から得られるセサミンも胡麻種子及び胡麻油より得られるセサミンと同等の効果を有し、これら光学活性体もリグナン類化合物に含まれる。さらに、胡麻油製造過程の副産物からもリグナン類化合物を得ることができる。なお、リグナン類化合物の精製法及び抽出物を得る方法はこれに限られるものではない。さらに、上記リグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物は胡麻油、胡麻粕、及び胡麻種子から得たものに限定したわけではなく、リグナン類化合物を含む天然物自体も使用することができる。このような天然物としては、例えば、五加皮、桐木、白果樹皮、ヒハツ、細辛等を挙げることができる。
【0015】
また、合成によりリグナン類化合物を得る方法としては、以下のものがあげられる。例えば、セサミン、エピセサミンについては、Berozaらの方法(J. Am. Chem. Soc., 78, 1242(1956) )で合成できる他、ピノレシノールはFreundenbergらの方法(Chem. Ber., 86, 1157(1953))によって、シリンガレシノールはFreundenbergらの方法(Chem. Ber., 88, 16(1955))によって合成することができる。
【0016】
さらに、リグナン類化合物は、配糖体の形で使用することもできる上、これらを単独で、又は適宜組み合わせて組成物の成分とすることもできる。
【0017】
溶剤(中鎖脂肪酸グリセリド)
本発明においては、リグナン類化合物は、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリドを含む油脂(モノ、ジ又はトリグリセリドの一種以上からなるもの)に溶解される。
【0018】
本明細書で「炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリド」というときは、特別な場合を除き、脂肪酸がグリセロールとエステル結合したモノ、ジ又はトリグリセリド(モノ、ジ又はトリアシルグリセロールということもある。)であって、構成する脂肪酸部分の少なくとも一つが炭素数8〜12の中鎖脂肪酸に由来するものをいう。脂肪酸の炭素鎖は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0019】
本明細書においては、グリセリドの一部を構成する中鎖脂肪酸に由来する部分を、単に「中鎖脂肪酸」ということもある。
【0020】
本発明の組成物においてリグナン類化合物の溶剤となる中鎖脂肪酸グリセリドとしては、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドのいずれでもよく、又はこれらの混合物でもよいが、トリグリセリド、特に、構成する脂肪酸がすべて中鎖脂肪酸であるトリグリセリド(本明細書では、「MCT」ということもある。例えば、トリカプリリン。)を好適に使用することができる。
【0021】
本発明においては、中鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれでもよいが、酸化等に対する脂肪酸グリセリドの安定性を向上する観点からは、飽和脂肪酸が好ましい。
【0022】
本発明において好ましい中鎖脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸が挙げられる。ジグリセリド又はトリグリセリドを構成する場合は、これらの脂肪酸は、単独で又は2種以上で構成することができる。
【0023】
特に好ましい中鎖脂肪酸グリセリドとしては、構成する脂肪酸がすべて中鎖脂肪酸であるトリグリセリドであって、その中鎖脂肪酸がカプリル酸、カプリン酸及びラウリル酸からなる群から選択される1種類以上であるトリグリセリドが挙げられる。
【0024】
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、やし油、ココナツ油、ババス油等の植物油脂中の成分として存在するものを使用することができ、また人工的に合成したものを使用することもできる。
【0025】
リグナン類化合物を溶解するための溶剤である油脂は、中鎖脂肪酸グリセリドのみからなるものであってもよく、また、リグナン類化合物を安定的に溶解させるために有効な量又は配合比で中鎖脂肪酸グリセリドが含まれている限り、中鎖脂肪酸グリセリドと他の脂肪酸グリセリドからなる組成物であってもよい。油脂中の中鎖脂肪酸グリセリドの配合比は、油脂全量に対して、例えば、重量比で5〜100%、10〜100%、25〜100%、50〜100%、75〜100%とすることができる。
【0026】
中鎖脂肪酸グリセリドは、体に蓄積されにくく、酸化しにくいという利点がある。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、元来、乳製品の脂肪分、やし油等に含まれており、食経験が豊富な成分である。
【0027】
リグナン類化合物含有組成物及び飲食品
本発明の組成物を製造するには、粉末状のリグナン類化合物を、溶解剤(溶剤)に添加して混合し、好ましくは加温下で攪拌することにより十分に溶解させる。中鎖脂肪酸トリグリセリドを溶媒として用いるなら、配合(重量)比は、リグナン類化合物:溶剤=1:15〜100程度であれば、リグナン類化合物は十分溶解する。
【0028】
本明細書において、飲食品とは、調味料、栄養補助食品、健康食品、食事療法用食品、総合健康食品、サプリメント及び飲料並びに経口投与の医薬品を含む。本発明の飲食品は、固形状(例えば、結晶、カプセル、タブレット、粉末)、半固形状(例えば、ゲル、ペースト)、液状(例えばミネラルウォーター、清涼飲料水、果実飲料、スポーツドリンク、酒類)とすることができる又はが、その際、リグナン類化合物は体内吸収されやすい溶液状態のままで含有されていることが好ましいことから、本発明の飲食品は、カプセル(特にソフトカプセル)、飲料等の形態が好ましい。
【0029】
本発明の飲食品は、当業者に公知の手法を用いて、本発明の組成物を含有させて、製造することができる。本発明の飲食品は、リグナン類化合物の所望の効果を、安定的にかつ効率的に期待し得る。
【0030】
本発明の飲食品中におけるリグナン類化合物の配合量は、特に限定されないが、リグナン類化合物の好ましい一日摂取量を参考に、当業者であれば、該飲食品の摂取形態に応じて、配合量を適宜設定することができる。通常、本発明の飲食品に対して、リグナン類化合物が0.0001重量%以上、特に0.001重量%以上含有するように添加する。
【0031】
本発明の組成物は、必要に応じて、リグナン類化合物及び炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリドの他に、任意の添加剤を含むことができる。また、本発明の飲食品は、本発明の組成物の他に、通常の飲食品に用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、糖類、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、香料、凝固剤、pH調整剤、増粘剤、エキス粉末、生薬、無機塩等が挙げられる。
【0032】
なお、本発明の飲食品用組成物又は飲食品には、その具体的な用途(例えば、栄養補助のため、健康維持のため、等)及び/又はその具体的な用い方(例えば、摂取量、摂取回数、摂取方法等)を表示することができる。
【0033】
最近になって、エピセサミンがセサミンに比べて肝臓のβ酸化系酵素の遺伝子発現ならびに酵素活性を顕著に上昇させること(Kushiro M., et al. J. Nutr. Biochem., 13, 289-295 (2002))等、エピセサミンの優れた効果が報告され始めている。したがって、エピセサミンを有効成分とする組成物の開発が予想される。しかし、本発明者らの検討によると、セサミンとエピセサミンとでは溶解度が異なり、エピセサミンの溶解性が低いことが判明している(実施例1参照)。したがって、エピセサミンを有効成分とする組成物、サプリメント(カプセル剤)を従来存在する小麦胚芽油等を溶解剤として製造しようとすると、保存中にエピセサミンが析出する問題が発生する。
【0034】
本発明は、このようなエピセサミンを有効成分とするカプセル剤を調製するのに有利に用いることができる。具体的には、今まで実現し得なかったエピセサミンを、内容組成物(カプセルの外側を除いた内容物部分)中1.0重量%以上となるように溶解した状態で添加したカプセル剤を調製することができる。
【0035】
また、上記したセサミンとエピセサミンの溶解度の差は、MCT中において大きい傾向にある(実施例1参照)。したがって、セサミン及びエピセサミンの混合物から、上記のエピセサミンを有効成分とする組成物の調製等を目的としてエピセサミンを高濃度で含有する組成物を得ようとする場合に、MCTを利用することができる。具体的には、セサミン及びエピセサミン混合物をMCTに溶解して再結晶を行うことで、エピセサミンを精製することができ、エピセサミンを高濃度で含有する組成物を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に沿ってさらに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
〈実施例1:溶解性試験〉
1.実験材料
試料として、セサミンとエピセサミンの混合物(セサミン:エピセサミン=51.1:48.2)の他、この混合物からそれぞれを精製したセサミン、エピセサミンの3種類を用いた。小麦胚芽油は理研ビタミン社製、オリーブ油はナカライテスク社製、中鎖脂肪酸(MCT)は、理研ビタミン社のアクターM−1(C8:C10:C12=56:42:2の中鎖脂肪酸トリグリセリド)及びアクターM−2(C8中鎖脂肪酸トリグリセリド)を用いた。ジアシルグリセロール(DG)は市販の油脂(エコナクッキングオイル、花王、ジアシルグリセロールを約80%含む食用油)を使用した。
【0038】
2.実験方法
試験管に各種油脂2gとサンプルを0.5〜10%(重量)の範囲内で0.25%刻みの濃度になるように秤量した。次にこれらの試験管を120℃に加熱し、完全にセサミンを油脂に溶解させた。その後、試験管を室温にて一晩、静置し、結晶の生成の有無を観察した。
【0039】
3.結果
表1に示すように、意外なことに、セサミン及び/又はエピセサミンの溶解性は、小麦胚芽油やオリーブ油のような長鎖脂肪酸のトリグリセリド(LCT)でも、又はジアシルグリセロール(DG)でも非常に低く、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)にのみ選択的に溶解性が高いことが判明した。この結果より、セサミン及び/又はエピセサミンを有効成分とするサプリメント等を、例えばソフトカプセルとして製造する際に、リグナン類化合物(例えば、セサミン)をMCTに溶解させることにより、1粒あたりに添加するリグナン類化合物量を増やすことができることが判明した。
【0040】
また、表1の結果から、セサミンとエピセサミンとでは溶解度に差があり、エピセサミンの溶解性が低い傾向にあることが判明した。この結果より、特にエピセサミンを有効成分とするサプリメント等を、例えばソフトカプセルとして製造する際に、上記のMCTに溶解させる手法が有用であることが判明した。
なお、MCTに溶解させたセサミン、エピセサミン及びそれらの混合物は常温で少なくとも9ヶ月間は析出は起こらず、安定であった。
【0041】
【表1】

【0042】
〈実施例2:エピセサミン含有組成物の製造〉
油脂として、MCT(理研ビタミン社、アクターM−1)又は小麦胚芽油を用いた。50ml容ナスフラスコに油脂を20g秤量し、そこにセサミンとエピセサミンの混合物(セサミン:エピセサミン=55:45)を4.0g投入した後、オイルバス中で120℃に加熱して撹拌しながら十分に溶解させた。その後、20℃の環境下に静置することで徐冷し、液温が60℃になったところでエピセサミン100%の種結晶を4.0mg投入し、20℃の環境下で30分間晶析させた。結晶が析出した液を吸引ろ過にて固液分離した後、99.5%のエチルアルコールで結晶混合物中に残った溶媒を洗い流した。このようにして得られた結晶混合物を以下の条件でHPLCに供しセサミン及びエピセサミンの組成を分析した。
【0043】
また、上記と同様にしてセサミン及びエピセサミンの混合物を120℃で加熱溶解させた後、活性白土処理を行った後、上記と同様にして再結晶を行って結晶混合物を得、その組成分析を行った。活性白土処理とは、オイルバス中のセサミン及びエピセサミン混合物の加熱溶解液に活性白土(水澤化学工業株式会社製、ガレオンアースV2R)を0.57g加えて120℃で30分間処理後、ろ過して廃白土を除く処理である。
【0044】
(HPLC条件)
カラム:Inertsil ODS-3 (GL-SCIENCE社製) 4.6×150mm
カラム温度:40℃
移動層:メチルアルコール/水=7:3
流速:1ml/min
検出器:UV290nm。
【0045】
得られた結晶物中のエピセサミン含量(純度)は、活性白土処理なしで67.4%、活性白土処理ありで94.0%であった。再結晶前のエピセサミン含量は45%であったことから、セサミン及びエピセサミン混合物をMCTに溶解させて再結晶を行うことにより、エピセサミンを精製できることがわかった。
【0046】
〈実施例3:カプセル剤−1〉
以下に示す配合でセサミン(セサミン:エピセサミン≒1:1)を加温下でMCTに溶解させた後、冷却してセサミン含有組成物を調製した。この組成物を、通常のロータリー法によってソフトカプセル剤皮の中に充填し、1粒250mg(内容液量:210mg)のソフトカプセルを得た。
【0047】
(内容液)
セサミン 10mg
MCT 200mg
(剤皮)
ゼラチン 60.0%
グリセリン 30.0%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量。
【0048】
〈実施例4:カプセル剤−2〉
リグナン類化合物として、実施例2で調製(精製)したエピセサミンを高濃度で含有する組成物2種(セサミン:エピセサミン=32.6:67.4、6.0:94.0)を用いた。以下に示す配合でリグナン類化合物を加温下でMCT:小麦胚芽油=25:75の油脂に溶解させた後、冷却してリグナン類化合物含有組成物を調製した。この組成物を、通常のロータリー法によってソフトカプセル剤皮の中に充填し、1粒250mg(内容液量:200mg)のソフトカプセルを得た。いずれも保存中の結晶析出はみられなかった。
【0049】
(内容液)
リグナン類化合物 3mg
ビタミンE 20mg
油脂 177mg
(剤皮)
ゼラチン 60.0%
グリセリン 30.0%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン及び/又はエピセサミンを炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリドを含む油脂に溶解して含有する組成物。
【請求項2】
中鎖脂肪酸グリセリドが、トリグリセリドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
中鎖脂肪酸グリセリドが、カプリル酸、カプリン酸又はラウリン酸から選択されるグリセリドの1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含有する、飲食品。
【請求項5】
カプセル剤の形態である、請求項4に記載の飲食品。
【請求項6】
エピセサミンを内容組成物の1.0重量%以上溶解して含有するカプセル剤。
【請求項7】
エピセサミンを、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸グリセリドを含む油脂に溶解して含有する、請求項6に記載のカプセル剤。
【請求項8】
エピセサミン精製のための、中鎖脂肪酸トリグリセリドの使用。

【公開番号】特開2006−306864(P2006−306864A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97871(P2006−97871)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】