リソグラフィ装置及び疎液性コーティングを表面に形成する方法
【課題】疎液性コーティングを表面に形成する方法を提供する。
【解決手段】疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法が開示される。この方法は、化学式SiX4をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでXのそれぞれは同一または異なるものであり、少なくとも1つのXは離脱基であり、少なくとも1つのXは疎液性の基である。
【解決手段】疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法が開示される。この方法は、化学式SiX4をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでXのそれぞれは同一または異なるものであり、少なくとも1つのXは離脱基であり、少なくとも1つのXは疎液性の基である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置、疎液性コーティングを表面に形成する方法、及びコーティングステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板の目標部分、通常は基板の目標部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、集積回路の個別の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用される。このパターンが基板(例えばシリコンウェーハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイからなる)目標部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板には網状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的に露光される。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(スキャン方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をスキャン方向に平行または逆平行に走査するようにして各目標部分は照射を受ける。パターニングデバイスから基板へのパターン転写は、基板にパターンをインプリントすることによっても可能である。
【0003】
リソグラフィ投影装置において基板を液体に浸すことが提案されている。この液体は比較的高い屈折率をもつ液体であり、例えば水である。そうして投影系の最終要素と基板との間の空間が液体で満たされる。一実施例においては液体は蒸留水であるが、その他の液体も使用可能である。本発明の一実施形態は液体に言及して説明しているが、その他の流体、特に濡れ性流体、非圧縮性流体、及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切なこともある。気体を除く流体が特に好ましい。その真意は、露光放射は液体中で波長が短くなるので、より小さい形状の結像が可能となるということである(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくし、焦点深度も大きくすることと見なすこともできる。)。別の液浸液も提案されている。固体粒子(例えば石英)で懸濁している水や、ナノ粒子(例えば最大寸法10nm以下)で懸濁している液体である。懸濁粒子はその液体の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよいし、そうでなくてもよい。その他に適切な液体として炭化水素もある。例えば芳香族、フッ化炭化水素、及び/または水溶液がある。
【0004】
基板を、又は基板と基板テーブルとを液体の浴槽に浸すということは(例えば米国特許第US4,509,852号参照)、走査露光中に加速すべき大きい塊の液体があるということである。これには、追加のモータ又はさらに強力なモータが必要であり、液体中の乱流が望ましくない予測不能な効果を引き起こすことがある。
【0005】
液浸装置においては液浸流体が、流体ハンドリングシステム、流体ハンドリングデバイス構造、または流体ハンドリング装置によって操作される。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体を供給してもよく、よって流体供給システムであってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めてもよく、流体閉じ込めシステムであってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体に対する障壁を提供してもよく、バリア部材、例えば流体閉じ込め構造であってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは気体流れを生成または使用して、例えば液浸流体の流れ及び/または位置の制御を助けるようにしてもよい。その気体流れは液浸流体を閉じ込めるシールを形成してもよく、流体ハンドリング構造はシール部材と称されてもよい。こうしたシール部材が流体閉じ込め構造であってもよい。一実施例においては液浸液が液浸流体として使用される。その場合、流体ハンドリングシステムは液体ハンドリングシステムであってもよい。上記の記載において流体に関し定義された構成への本段落での言及は、液体に関し定義される構成も含むものと理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液浸リソグラフィにおいては液体の位置を制御する必要がある。1つまたは複数の表面に疎液性(例えば水については疎水性)コーティングを使用することは液体の位置例えば液体のメニスカスの制御に役立てることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、疎液性コーティングを表面に形成する方法を提供することが望ましい。望ましくは、液浸液が表面になす後退接触角を、これは使用により時間とともに劣化し得るものであるが、それよりも高いレベルに復元するために使用することのできる方法が提供される。疎液性コーティングを表面に形成するためにリソグラフィ投影装置のその場で使用することができる方法及び装置を提供することが望ましい。
【0008】
一態様によれば、疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、化学式SiR1R2X2を有するシランまたはシロキサンを表面に接触させることを含み、R1、R2、及びXは同一または異なるものであり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基である方法が提供される。
【0009】
一態様によれば、リソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置が提供される。
【0010】
一態様によれば、リソグラフィ投影装置のために要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーションが提供される。
【0011】
本発明の実施形態が付属の図面を参照して以下に説明されるがこれらは例示に過ぎない。各図面において対応する参照符号は対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【図3】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【図4】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【図5】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の方法の反応経路の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の気相塗布方法を模式的に示す図である。
【図8】本発明の一実施形態のリソグラフィ投影装置を模式的に示す図である。
【図9】3種類の異なるコーティングについて露光放射パルス回数により変化する後退接触角を表すグラフである。
【図10】異なる前駆体で形成された複数のコーティングについて前進接触角、静的接触角、後退接触角を示す図である。
【図11】異なる前駆体につき塗布技術によって変化する後退接触角を示す図である。
【図12】異なる種類の表面に対し1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを気相塗布方法により塗布する場合の成膜時間による後退接触角の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明系(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメタに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストで被覆されたウエーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメタに従って基板Wを正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ系)PSと、を備える。
【0014】
照明系ILは、放射の方向や形状の調整またはその他の制御のために、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの向きやリソグラフィ装置の設計、あるいはパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、静電固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定技術を用いてもよい。支持構造MTは例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影系PSに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0016】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0017】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0018】
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光光あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられ得る。
【0019】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0020】
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)のテーブルであってそのうち少なくとも1つまたはすべてが基板を保持し得るテーブル(及び/または2つ以上のパターニングデバイステーブル)を備えてもよい。こうした多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
【0021】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば放射源SOがエキシマレーザである場合には、放射源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは放射源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを備える。あるいは放射源SOが例えば水銀ランプである場合には、放射源SOはリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。放射源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称される。
【0022】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における照度分布の少なくとも外径及び/または内径(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために使用されてもよい。放射源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部を構成するとみなされてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置に一体の部分であってもよいし、リソグラフィ装置とは別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置はイルミネータILを搭載可能に構成されていてもよい。イルミネータILは取り外し可能とされ、(例えば、リソグラフィ装置の製造業者によって、またはその他の供給業者によって)別々に提供されてもよい。
【0023】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、パターニングデバイスMAによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。そうして基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0024】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
【0025】
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
【0026】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分Cの(走査方向の)長さを決定する。
【0027】
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0028】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0029】
投影系の最終要素と基板との間に液体を提供する構成は少なくとも二種類に大きく分類することができる。浴槽型の構成といわゆる局所液浸システムとである。浴槽型は基板の実質的に全体と任意的に基板テーブルの一部とが液槽に浸される。いわゆる局所液浸システムは、基板の局所域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。後者の分類においては、液体で満たされる空間は平面図にて基板上面よりも小さく、液体で満たされた領域は基板がその領域の下を移動しているとき投影系に対し実質的に静止状態にある。本発明の一実施例が指向する更なる一構成は、液体が閉じ込められない全濡れ型である。この構成においては、基板上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは浅い。液体はフィルム状であってもよく、基板上の薄い液体フィルムであってもよい。図2乃至図5の液体供給装置はいずれもこうしたシステムに使用可能であるが、シール機能はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにするか、あるいはその他の手法で、局所域のみに液体を封じないようにする。4つの異なる形式の局所液体供給システムが図2乃至図5に図示されている。
【0030】
1つの提案される構成は、液体供給システムが基板の局所域のみにかつ投影系の最終要素と基板との間に液体閉じ込めシステムを使用して供給するというものである(基板は一般に投影系の最終要素よりも大きな面積をもつ)。そのための構成の一例がPCT特許出願第WO99/49504号に開示されている。図2及び図3に示されるように、液体が少なくとも1つの入口によって基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給され、投影系の下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。つまり、基板が−X方向に最終要素の下を走査されると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される構成を概略的に示したものである。図において基板Wの上方の矢印は液体流れ方向を示し、基板Wの下方の矢印は基板テーブル移動方向を示す。図2では液体が最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終要素の周囲に規則的なパターンで設けられる。液体供給デバイス及び液体回収デバイスにおける矢印が液体流れ方向を示す。
【0031】
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの更なる解決法が、図4に示されている。液体は、投影系PSの両側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の分離された出口によって除去される。入口及び出口は、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影系PSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影系PSの他方側にある複数の分離された出口によって除去され、これによって投影系PSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。入口と出口のどちらの組合せを使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組合せの入口及び出口は作動させない)。図4の断面図において矢印は入口での液体流入方向と出口での液体流出方向とを示す。
【0032】
本明細書にその全体が援用される欧州特許出願公開第1420300号及び米国特許出願公開第2004−0136494号には、二重ステージまたはデュアルステージの液浸リソグラフィ装置の着想が開示されている。こうした装置には基板を支持するための2つのテーブルが設けられている。レベリング計測が1つのテーブルで第1位置で液浸液なしで実行され、露光が1つのテーブルで第2位置で液浸液ありで実行される。1つの構成においては、装置は1つのテーブルのみを有するか、一方のテーブルのみが基板を支持可能である2つのテーブルを有する。
【0033】
PCT特許出願公開第2005/064405号には、液浸液が閉じ込められていない全濡れ型が開示されている。こうしたシステムでは基板の上面全体が液体に覆われる。これは、基板上面全体が実質的に同一条件にさらされているという点で有利であり得る。基板の温度制御及び基板の処理に利点がある。WO2005/064405では、液体供給システムが液体を、投影系の最終要素と基板との間隙に供給する。その液体が基板の残りの部位へと漏れ(または流れ)出ることが許容されている。基板テーブルの端部にある障壁が液体の漏出を防いでおり、そのため基板テーブルの上面から制御された態様で液体を除去することができる。こうしたシステムは基板の温度制御及び処理を改善するが、液浸液の蒸発はなお生じ得る。この問題の軽減に役立つ1つの方法が米国特許出願公開第2006/0119809号に記載されている。基板のあらゆる位置を覆う部材が設けられている。この部材と基板及び/または基板を保持する基板テーブルの上面との間に液浸液を延在させるように構成されている。
【0034】
提案されている別の構成は流体ハンドリング構造をもつ液体供給システムを設けることである。流体ハンドリング構造は、投影系の最終要素と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。こうした構成を図5に示す。流体ハンドリング構造は、投影系に対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)では多少の相対運動があってよい。流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成される。一実施例においては、流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成され、このシールはガスシール等の非接触シールであってもよい。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。他の実施例では流体ハンドリング構造は、非ガスのシールであるシールを有しており、液体閉じ込め構造とも称される。
【0035】
図5は、バリア部材または液体閉じ込め構造を形成する本体12を有する局所液体供給システムまたは流体ハンドリング構造または流体ハンドリングデバイスを模式的に示す図である。局所液体供給システムは、投影系PSの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する。なお後述の説明で基板W表面への言及は、そうではないことを明示していない限り、基板テーブル表面をも意味し得るものとする。液体ハンドリング構造は、投影系に対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(一般には光軸方向)では多少の相対運動があってよい。一実施例においては、本体12と基板Wの表面との間にシールが形成され、このシールはガスシールや流体シール等の非接触シールであってもよい。
【0036】
流体ハンドリング構造は、投影系PSの最終要素と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール、例えばガスシール16が投影系PSの像フィールドの周囲に形成され、投影系PSの最終要素と基板W表面との間の空間11に液体が閉じ込められてもよい。この空間11の少なくとも一部が本体12により形成される。本体12は投影系PSの最終要素の下方に配置され、当該最終要素を囲む。液体が、投影系PSの下方かつ本体12内部の空間11に、液体入口13によって供給される。液体出口13によって液体が除去されてもよい。本体12は、投影系PSの最終要素の少し上方まで延在していてもよい。液位が最終要素の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。一実施例においては本体12は、上端において内周が投影系PSまたはその最終要素の形状に近似し、例えば円形であってもよい。下端において内周が像フィールドの形状に近似し、例えば長方形であってもよい。これらの形状は必須ではない。内周はいかなる形状であってもよく、例えば内周は投影系の最終要素の形状に一致していてもよい。内周は円形であってもよい。
【0037】
液体は、本体12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11に保持されてもよい。ガスシール16は、例えば空気又は合成空気、一実施例ではN2又はその他の不活性ガスなどの気体によって形成される。ガスシール16の気体は、圧力の作用で入口15を介して本体12と基板Wとの隙間に提供される。気体は出口14から抜き取られる。気体入口15での過剰圧力、出口14の真空レベル、及び隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速の気体流れが存在するように構成される。本体12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間11に液体を保持する。入口及び出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。気体流れは空間11に液体を保持する効果がある。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。
【0038】
図5の例はいわゆる局所域型であり、液体はいかなる時点においても基板Wの上面の局所域に供給されるのみである。異なる構成も可能であり、例えば米国特許出願公開第2006−0038968号には、単相抽出器または二相抽出器を利用する流体ハンドリング構造を含む構成が開示されている。一実施例においては、単相抽出器または二相抽出器は、多孔質材料に覆われている入口を備えてもよい。一実施例の単相抽出器においては、多孔質材料が気体から液体を分離し液体単相の液体抽出を可能とするために使用される。多孔質材料の下流のチャンバがいくらか負圧に保たれて液体で満たされる。そのチャンバの負圧は、多孔質材料の孔に形成されるメニスカスが周囲の気体のチャンバへの引き込みを妨げるような大きさとされる。その一方、多孔質材料が液体に接触すれば流れを制限するメニスカスはなくなるので液体が自由にチャンバに流入できる。多孔質材料は多数の小孔、例えば5μm乃至300μmの、望ましくは5μm乃至50μmの範囲の直径の小孔を有する。一実施例においては、多孔質材料は少なくともいくらかの親液性(例えば親水性)をもつ。すなわち、多孔質材料は液浸液例えば水に対する接触角が90度未満である。
【0039】
その他にも多様な液体供給システムが可能であり、例えば、本明細書にその全体が援用される米国特許出願公開第2009−0279062号には、二相抽出により出口開口に液体メニスカスを留める気体引き込み型が開示されている。本発明はいかなる特定の形式の液体供給システムにも限定されない。本発明は、投影系の最終要素と基板との間に液体を閉じ込める閉じ込め型液浸システムへの使用に有利であり、例えばその使用を最適とするが、本発明はいかなるその他の液体供給システムにも使用可能である。
【0040】
液浸リソグラフィ装置の多くの構成要素は液浸液に対し特定の接触角範囲をもつ表面を有する。よって表面は液体に対しある表面特性を有する。こうした表面は疎液性または親液性であり、あるいは水に対しては疎水性または親水性である。こうした表面は、例えば液体の損失を防ぐために、液体の位置制御を支援するのに使用されてもよい。液体位置が正確に制御されなければ、望まれない測定誤差や欠陥増加につながる。一実施例においては、表面特性を与えるためにコーティングが使用され得る。表面特性例えば疎液性コーティングは、使用時に液浸液がコーティングに作る接触角の劣化に悩まされるおそれがある。これは特に、投影ビームの放射及び/または液体にさらされる表面例えばコーティングに顕著となりうる。
【0041】
疎液性コーティングに被覆される構成要素またはその部分の例としては、基板テーブルの上面の部分、基板と基板テーブルとの間隙に流路を形成する基板テーブルの側表面、表面に表面特性を与えるための及び/または物体に隣接する間隙を橋渡しするための接着性平面シート(例えばステッカ)、センサ(例えば、透過イメージセンサ(TIS)、ドーズセンサ、スポットセンサ、レンズ干渉計(例えば干渉波面測定センサ))、投影系の最終要素例えばその光路外の表面、いずれかの流体ハンドリング構造の一部分例えば投影系に面する上面及びその下面の少なくとも一部分、及び/または、ダミー基板や第2テーブルあるいは2つのテーブル間のブリッジ要素といった閉鎖表面がある。
【0042】
閉鎖表面は、流体ハンドリング構造の開口を、例えば基板を交換する例えば投影系PS下方でのテーブル交換の際に、塞ぐために使用される表面である。閉鎖表面は、ダミー基板、ブリッジ要素、または別個のテーブルであってもよいし、ダミー基板、ブリッジ要素、または別個のテーブルを含んでもよい。テーブルの交換はダミー基板を使用して流体を空間11に閉じ込めて行われる。閉鎖表面がブリッジ要素(交換ブリッジとも呼ばれる)であれば、閉鎖表面は進退可能であり、ある1つのテーブルの一部分であってもよい。ブリッジ要素は、例えば投影系PSの下方でのテーブルの(例えば2つの基板テーブルの、あるいは基板テーブルの計測テーブルへの)交換の際に、少なくとも2つのテーブル(例えば基板テーブルと計測テーブル、あるいは2つの基板テーブル)間の間隙に存在するダミー基板として機能してもよい。ブリッジ要素は、例えば投影系PSの下方をブリッジ要素が通過する期間は少なくとも、テーブルに取り付けられてもよい。一実施例においては閉鎖表面は別個のテーブル、例えば計測テーブルMSTの一部であってもよい。
【0043】
(既述の)ある構成要素に表面要素を与えるコーティングに液浸液が作る接触角が許容範囲外にある場合、例えばあるしきい値を上回るあるいは下回る場合には、接触角を復元するための行動をとるべきであり、さもなければ装置特性が劣化しうる(なお以下では接触角についての、疎液表面においてあるしきい値を下回ってより親液性となるとの言及は、そうではないと述べない限り、親液表面であるしきい値を上回ってより疎液性となることを含むものとみなす。コーティングの劣化との言及は、そうではないと述べない限り、コーティングがされていない表面の表面特性の劣化も含む。)。その1つの方法は構成要素を交換することであるが、交換には費用がかかるとともに装置にダウンタイムを生じさせるから望ましくない。代替的にまたは追加的に、接着性平面部材例えばステッカが表面上に配置されてもよい。ステッカは液浸液に所望の接触角特性をもつ。この方法も、ステッカの適正な貼付のために装置から構成要素を取り出す必要が生じ得るので装置のダウンタイムを要し、好ましくない。ステッカはある最小厚さをもつので、ステッカを適用すれば表面高さに変化が生じる。よってステッカの適用は表面トポグラフィに望ましくない変化を与えるおそれがある。また、ステッカの適用は、適用表面の機械特性及び/または光学特性を変化させるおそれがある。
【0044】
コーティングの化学的塗布の方法が本明細書に開示される。この方法は最初に表面を処理するためにも使用することができる。この方法は劣化した疎液性コーティングを復元するためにも使用することができる。特に、この方法は、劣化した有機ケイ素コーティングの復元に使用することができる。有機ケイ素コーティングの例は、SiOxCyHzであり、例えばLipocer(商標)である。
【0045】
SiOxCyHzは、例えば米国特許出願公開第2009−0206304号に記載されているが、水及びUV放射の存在下での使用により(例えば、一般にはある回数の露光放射の照射後に)劣化する。コーティングのメチル基が次第に酸化され例えばヒドロキシル基または自由電子対をもつ酸素原子となり廃棄物として水及びCO2が放出される。
【0046】
SiOxCyHzは、米国特許出願公開第2009−0206304号に記載された工程により湿式の化学的成膜またはCVDにより塗布可能である。
【0047】
一実施例においては、米国特許出願公開第2009−0206304号のコーティングとは異なり、コーティングは単分子層のコーティングであってもよい。
【0048】
一実施例においてはコーティングは、単分子層の厚さであってもよいし、1nm以下または数nmの厚さ(例えば、0.1nm乃至100nmの範囲、0.1nm乃至50nmの範囲、または0.1nm乃至20nmの範囲から選択された厚さ)であってもよい。一実施例においてはコーティングは、自己組織化単分子膜であってもよい。
【0049】
こうした化学的塗布はその下層の構成要素の表面トポグラフィにそれほど影響を与えないのであり、構成要素の高さ(それ自体で液体損失の制御に重要であり得る)またはその光学特性を大きく変化させない。
【0050】
疎液性コーティングの前駆体が表面に接触させられる。前駆体が表面と反応して、疎液性コーティングが形成される。特に、その表面は、具体的には自由電子対をもつ酸素原子またはヒドロキシル基である酸化された基を有する表面である。前駆体はシランまたはシロキサンである。前駆体は、2種以上の異なるシラン及び/またはシロキサンの混合物であってもよい。前駆体は、化学式SiX4を有してもよい。ここでXそれぞれは同一または異なるものである。少なくとも1つのXは離脱基である。表面との反応中に離脱基がシランまたはシロキサンから離脱し、シランまたはシロキサンのSiが表面に結合する。少なくとも1つのXは疎液性の基である。よって、シランまたはシロキサンが表面と反応して固定されると疎液性の基がこの表面から延びて存在するため表面は疎液性となる。
【0051】
前駆体は表面と反応する。特に、前駆体のSi原子団が表面に(例えば酸素原子を介して)結合し、廃棄物が生成される。この廃棄物は、水素原子に結合した離脱基であってもよい。
【0052】
反応経路の例を図6に示す。第1ステップには、疎液性のメチル基を備える疎水性ポリシロキサンコーティングが示されている。水及びDUV放射にさらされると、これら水及びDUV放射は液浸リソグラフィ装置内に存在するのであるが、水はSi原子に吸着されヒドロキシル化学結合を形成する傾向がある。これにより、液体がコーティングになす接触角は小さくなるであろう。すなわち、第2ステップに示すようにコーティングは劣化する。
【0053】
SiR1R2X2の形式の前駆体が表面に接触させられる。これは、後述のように気相であっても液相であってもよい。R1基は疎液性の基である。R2基は、離脱基、または1つまたは複数の離脱基をもつ原子団である。
【0054】
第3ステップの反応により、離脱基R2は離脱してSi原子がヒドロキシル基の酸素原子に結合する。ヒドロキシル基の水素原子も離脱する。離脱基R2とヒドロキシル基の水素原子とは結合して廃棄物を形成する。この反応によって疎液性の基R1が表面に残るため表面の疎液性が回復される。
【0055】
理解されるように、この反応メカニズムは表面に酸化された基が存在するときに生じる。典型的には劣化した表面または本願に記載の方法を使用してうまく被覆可能である表面は、その表面にあるすべての基のうち少なくとも1割、少なくとも2割、少なくとも3割、少なくとも4割、または少なくとも5割が酸化基である。一実施例においては、表面にあるすべての基のうち少なくとも7.5割が酸化基である。
【0056】
米国特許出願公開第2009−0206304号に記載されたSiOxCyHzコーティングは、プラズマ処理(CVD)を使用して適用される。プラズマはHMDSOから生成され、プラズマからのラジカルの再結合によってコーティングが適用される。本発明の一実施形態は、化学的に反応性のある基をもつ分子に関する。ここで、これら分子はコーティングが形成されるべき表面へと気相で輸送される。表面に達すると化学反応によりこれら分子がコーティングを形成する。すなわち、化学反応経路による以外には、分子を生成する結合は切断されない。
【0057】
疎液性基R1は、ヒドロカルビル(CH2)nCH3(nは0から11であり望ましくは0)、パーフルオロデシル(CH2)2(CF2)nF(nは1から8)、CF3、F、離脱基R2で終端されるシロキサン(Si(CH3)2O)n(nは1から4であり望ましくは1)からなるグループから選択される基であってもよい。
【0058】
適する離脱基または少なくとも1つの離脱基をもつ基R2は、H、Cl、F、Br、I、OHからなるグループから選択される陰イオン、またはヒドロカルビル(CH2)nCH3(nは0から11であり望ましくは0)である。望ましくは離脱基はハロゲンまたはヒドロキシルの陰イオンであるが、特定の条件例えばDUV放射露光または特定温度の下ではアルキル基のみが離脱基となりうる。
【0059】
前駆体のその他の基Xは、一実施例においては、離脱基または疎液性基のいずれかまたはその両方であり、望ましくはメチル基CH3またはハロゲンの1つである。
【0060】
一実施例においては、離脱基をもつ基R2はシロキサン(Si(CH3)2O)Clであり(すなわちCl離脱基をもち)、離脱基はClであり残りの2つのXはメチル基(CH3)であり、前駆体は、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンである。
【0061】
一実施例においては、離脱基と疎液性基とは異なる。これにより反応の収率が高まる。
【0062】
シランまたはシロキサンを表面に接触させる前に、表面に準備をすることが望ましい。表面に準備をすることは、異物及び/または既にある剥がれそうなコーティングの一部を除去するために表面を洗浄することを含んでもよい。表面に準備をすることは、意図的に表面にヒドロキシル基を形成することを含んでもよい。
【0063】
表面を洗浄することは例えば、米国特許出願公開第2009−0174870号に記載されたプラズマクリーニング、及び/または米国特許出願公開第2009−0025753号に記載されたオゾンを用いるクリーニング、及び/または米国特許出願公開第2009−0027636号に記載されたUV放射を用いるクリーニング、及び/または米国特許出願第12/582,214号に記載された石けん、溶剤、または界面活性剤など、及び/または強酸または強塩基または過酸化物と硫酸との混合物など酸化液を含む化学物質を含む洗浄液を用いるクリーニングを含んでもよい。UV放射及びオゾンと(液体または気体の)水との存在が酸化基またはヒドロキシル基の存在を促進するために追加的にまたは代替的に使用されてもよい。水蒸気及び/または液相の水に表面をさらすことは、酸化基またはヒドロキシル基の生成促進に役立ちうる。
【0064】
シランまたはシロキサンは液体の状態で表面に接触させてもよい。例えば、シランまたはシロキサンが無水トルエン等の溶媒に、例えば無水トルエンに2%の体積濃度で溶解されてもよい。この溶液は窒素雰囲気下に保たれ、コーティングされるべき洗浄表面がこの溶液に浸される。表面は適切な時間例えば少なくとも20分、30分、または40分浸されてもよい。浸された後で表面は例えばトルエンで洗い流される。その後表面は例えば窒素で乾燥されてもよい。表面の乾燥には昇温し例えば50℃にある時間おく必要があり得る。約30分間の昇温乾燥が適切であり得る。表面は超純水で洗い流されてもよい。その後表面のすすぎと例えば窒素での乾燥とが再度行われてもよい。表面は対流式オーブンに30分間50℃で置かれてもよい。
【0065】
一実施例においては、シランまたはシロキサンは気体で表面に接触させてもよい。
【0066】
図7は、シランまたはシロキサンを表面に気相でどのように接触させるかについての例を模式的に示す。シラン前駆体またはシロキサン前駆体150が第1区画または準備区画115に置かれる。準備区画においては前駆体は200にて導入されるキャリアガス例えば窒素ガスに混合され、その混合物は300にて反応槽400であってもよい第2区画へと輸送される。コーティングされるべき表面310が反応槽に、望ましくは均一な成膜を保証するよう水平に置かれている。前駆体が表面に接触して反応する。
【0067】
窒素キャリアガス、未反応のシランまたはシロキサン、及び副生成物(典型的には表面のヒドロキシル基の水素原子に離脱基が結合したもの)が350にて反応槽から抽出され第3区画125へと排出される。第3区画の前駆体トラップ360は、窒素雰囲気下に保たれているが、未反応の前駆体を再使用または廃棄のために捕捉する。キャリアガスは370にて第3区画を出る。
【0068】
コーティングされる基板は通常、シランまたはシロキサン前駆体にさらされて第2区画に2分間乃至60分間滞在する。必要な表面の全体に単分子層コーティングを保証するには(すなわち基板上の反応性のある基のすべてが前駆体と完全に反応するには)少なくとも10分間は滞在すべきである。
【0069】
気相成膜後に表面が溶剤例えばトルエンで、余剰のシラン及び/またはシロキサン前駆体を除去するために洗い流されてもよい。その後表面は窒素で乾燥されてもよい。そのあと更に表面は、湿式の化学塗布と同様に、超純水で洗い流され乾燥されてもよい。
【0070】
この方法がリソグラフィ投影装置の構成要素の復元に使用される場合には、望ましくはこの方法がリソグラフィ投影装置のその場で実行される。そのために、コーティングステーション100がリソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するために設けられていてもよい。一例を図8に示す。一実施例においてはリソグラフィ投影装置にコーティングステーション100が設けられている。他の一実施例においてはコーティングステーション100は別体の構成要素である。別体である場合コーティングステーションはそれが使用されるべき装置例えばリソグラフィ装置に、使用に必要なときに取り付けられる。コーティングステーションは劣化した表面特性を持つ表面の検査に使用されてもよい。その劣化した表面がコーティングステーション100の作用により補修されてもよい。一実施例においては、コーティングステーション100は、1つまたは複数の基板テーブルWT及び/または1つまたは複数の計測テーブルMSTが装置例えばリソグラフィ投影装置を離れずにコーティングステーション100に入ることができるように、配置されている。この構成により、表面コーティングをその場で行い装置のダウンタイムを短くすることができる。
【0071】
コーティングステーションは反応槽400を備えてもよい。反応槽400は、シランまたはシロキサン前駆体を収容するために、及び前駆体を表面に接触させるためにある。そのためには表面は反応槽400の内部で露出されなければならない。
【0072】
反応槽400はいかなる形式をとってもよい。一実施例においては反応槽400は、表面の上方に配置される何らかのカバー例えば壁付きのカバーの形式であってもよく、例えばドームであってもよい。反応槽400は開口を有する。この開口を通じて、表面は反応槽400内で前駆体にさらされることができる。この表面をさらすための開口は、ドームの壁端部によって画定される。ドームは表面またはコーティングされるべき表面を包囲する表面に封じられる。この表面をドームで封じることは、ドームの壁端部をコーティングされるべき表面またはそれを包囲する表面により封じることによって実現されてもよい。使用の際に前駆体が反応槽に収容されてもよい。一実施例においては反応槽は、反応槽内に置かれるべき部材全体を許容する閉鎖可能な開口例えば扉付きの出入口を有する。扉が閉じられることで前駆体が収容されるようにしてもよい。そうすると、表面は反応槽に挿入可能及び取出可能である。
【0073】
反応槽400は、前駆体を反応槽400に供給するための供給口110を有する。供給口110は第1区画115に接続されている。第1区画115には、キャリアガス例えば窒素がキャリア入口116を通じて供給され、前駆体が前駆体入口117を通じて供給される。キャリアガス及び前駆体は第1区画115において、反応槽400への供給口110への導管を通じて供給される前に、混合される。モータ118がガスをポンプで送るために設けられていてもよい。モータ118は第1区画115と反応槽400との間の導管に、キャリアガスのためにキャリア入口116の上流に、または、前駆体のために前駆体入口117の上流に設けられていてもよい。それに代えてまたはそれとともに、モータ118は反応槽の下流に設けられていてもよい。1つまたは複数のモータがそれぞれ上述の任意の位置に設けられていてもよい。
【0074】
反応槽100には、ガスを反応槽400から排出するための排出口120も設けられている。排出口120の下流には、前駆体トラップ127を収容するための更なる区画125がある。更なる区画125は、キャリアガス及び副生成物を更なる区画125から排出するための排出口129を有する。
【0075】
コーティングステーション100は、表面準備モジュール300を備えてもよい。表面準備モジュール500は、反応槽400から分離されて存在していてもよいし、より便利には反応槽400の内部にあってもよいし、あるいはそれら両方でもよい。表面準備モジュール500のある部分が反応槽400の内部にあり他のある部分が反応槽400の外部にあってもよい。表面準備モジュール500は、説明したシランまたはシロキサン前駆体に表面を接触させる前に表面を洗浄してもよい。表面準備モジュール500はそれに加えてまたはそれに代えて、上述のように表面へのヒドロキシル基の形成を促すようにしてもよい。具体的には、洗浄モジュールは、UV放射またはDUV放射を表面に照射するUV光源またはDUV光源、及び表面に洗浄液、水等の液浸液、気体(例えばオゾン)またはプラズマまたは水を供給する流体またはプラズマ供給チャネルを備えてもよい。
【0076】
コーティングステーション100は、コーティング後に表面を洗い流すためのすすぎモジュール600を備えてもよい。コーティングステーションはさらに、コーティング後に表面を(任意的に昇温して)乾燥するための乾燥モジュール700を備えてもよい。乾燥モジュール700及びすすぎモジュール600は、完全にまたは部分的に反応槽400の内部または外部にあってもよい。コーティングステーション100は、上述の方法の実行に適合されている。
【0077】
行われた実験結果を以下に述べる。これらは本発明の一実施形態の1つまたは複数の有効性を示す。
【0078】
図9は、水の後退接触角の(y軸に度数で示す)、1L/分の水流のもとでのDUV放射パルス回数(x軸にパルス回数(1e+3)で示す)に対する変化を3種類の表面について比較したものを示す図である。DUV光源は、193nmの波長で、1回のパルスあたり0.25mJ/cm2/パルスのドーズ量のものを用いた。図示されるように、菱形記号で示される疎液性コーティングSiOxCyHzは時間の経過とともに劣化している。正方形記号及び三角形記号で示されるSiOxCyHzコーティングの結果は時間とともに劣化しているが、これらはそれぞれ、上述の気相成膜方法に10分間ジメチルシロキサン前駆体及びジメチルシラン前駆体にさらすことでコーティングを復元したものである。図示されるように、復元した表面の水の後退接触角は、もとのコーティングと実質的に同じである。この結果は、復元したコーティングの寿命が(SiOxCyHzと同様に良好に)許容できるものであり、本方法がもとのコーティングの復元に使用可能であることを示している。
【0079】
図10は、ガラス基板上に形成したコーティングの接触角を(y軸に度数で示す)、適する前駆体ごとに番号で示す図である。各前駆体につき前進接触角、静的接触角、後退接触角の、ガラス基板上のSiOxCyHzコーティングとの比較を示す。x軸に複数の異なるサンプルを示す。サンプルごとに三種類の接触角が測定されており、静的接触角は白抜き、前進接触角は斜線、後退接触角は影付きで示す。各番号は、1:SiOxCyHzコーティング、2:パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、3:パーフルオロデシルメチルジクロロシラン、4:パーフルオロデシルトリクロロシラン、5:ドデシルジメチルクロロシラン、6:ドデシルメチルジクロロシラン、7:トリメチルクロロシラン、8:ジクロロジメチルシラン、9:トリクロロメチルシラン、10:ポリジメチルシロキサン(シラノール終端)、11:1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、12:1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサンである。これらの例は上述の湿式化学塗布技術にて30分浸すことで準備された。ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンが本目的のために特に適する。これらの例の前進接触角及び後退接触角は、リソグラフィ投影装置における疎液性コーティングに仕様として定められる図示の110度乃び70度の範囲の前進接触角及び後退接触角に収まっているからである。他の前駆体のうち、パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロデシルメチルジクロロシラン、パーフルオロデシルトリクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサンは適する可能性がある。ドデシルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、シラノール終端のポリジメチルシロキサンは、適しない前駆体である可能性がある。最も好ましい前駆体は少なくとも2つの離脱基をもつ。それらは表面により強く結合するからである。
【0080】
最も望ましい前駆体は、立体障害をほとんど有しないもの(例えばメチル基が最少)であるか、表面の酸化基の離脱基(例えばハロゲン)への接触を妨げる大きい基がないものである。離脱基としてOH基は望ましくはない。それは、他の離脱基よりも反応性が低いからである。長い鎖長による立体障害のために、前駆体の鎖長はより短いことが好ましい。
【0081】
図11は、処理されたガラス表面での水例えば超純水の後退接触角(y軸に度数で示す)が塗布技術に依存してどのように変わるかを示す図である。図11は4種類の異なるコーティングのサンプルを示す。番号1はSiOxCyHz、番号2はジクロロジメチルシラン、番号3は1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、番号4はパーフルオロデシルメチルジクロロシランである。図11は、ジクロロジメチルシラン(番号2)及び1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン(番号3)には気相での塗布(斜線で示す)が好ましいことを示している。それは、より大きい後退接触角をより高い再現性で実現できるからである。これら2つの化学物質に行った試験は、10分間の気相成膜と(斜線)、比較のための30分間の湿式化学塗布(白抜き)であった。パーフルオロデシルメチルジクロロシラン(番号4)には、湿式化学成膜(白抜き)が望ましいかもしれない。湿式化学成膜のほうが60分間の気相成膜(影付き)よりも大きい後退接触角を実現できるからである。比較のためにSiOxCyHzコーティング(番号1)は30分間の湿式化学塗布(白抜き)を用いた場合をプロットする。
【0082】
図12は、後退接触角(y軸に度数で示す)の表面による変化を示す。図12において、ガラス表面は+印、ガラスセラミックは丸印、SiOxCyHzは×印で示しており、これらはそれぞれ時間(x軸に分で示す)を変えて1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンの気相で処理したものである。図からわかるように、10分経過後にはガラス、ガラスセラミック、SiOxCyHzにつき一定の後退接触角が実現される。処理された表面の表面特性は、実質的に一致しているかまたは均一な接触角を有し得る。よって、疎液性の表面コーティングを1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを前駆体として使用して形成するには、少なくとも10分間の成膜時間が望ましい。単分子層コーティングの均質な被覆を実現するための時間は表面の特性に依存する。ガラスへのコーティングは、反応性部分(ヒドロキシル基)の数が最少である(ガラスは他の表面よりも酸化されている)から、最速である。
【0083】
試験によれば、イソプロパノール(IPA)を含浸させた布で物理的に拭き取ったうえで紫外放射及びオゾンに10分間さらす洗浄が最も良好である。紫外放射及び/またはオゾンにさらすのは、2分間乃至60分間のうちいずれの長さであっても良好な結果を得ることができる。
【0084】
理解されるように、本願にて網羅される明記された組み合わせには限られず、任意の上記の特徴は他の任意の上記の特徴とともに使用可能である。
【0085】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0086】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を示す。「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含む1つの光学素子またはこれら各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0087】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明の実施形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは1つまたは複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0088】
本明細書に記載のコントローラは各々がまたは組み合わされて、リソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内部に設けられた1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み取られたときに動作可能であってもよい。コントローラは信号を受信し処理し送信するのに適切ないかなる構成であってもよい。1つまたは複数のプロセッサは少なくとも1つのコントローラに通信可能に構成されていてもよい。例えば、複数のコントローラの各々が上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するための1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。各コントローラはコンピュータプログラムを記録する記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウェアを含んでもよい。コントローラは1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
【0089】
本発明の1つまたは複数の実施形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から外部に流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸流体を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
【0090】
本明細書に述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施形態においては投影系と基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組合せであってもよい。1つまたは複数の構造体、及び1つまたは複数の流体開口の組合せを含んでもよい。流体開口は、1つまたは複数の液体開口、1つまたは複数の気体開口、1つまたは複数の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。一実施例においては、液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、液浸空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、流速、またはその他の性状を制御するための1つまたは複数の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。
【0091】
要約すれば、本開示は以下の特徴の1つまたは複数を含む。
【0092】
1.疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、
化学式SiR1R2X2をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでR1、R2、及びXは同一または異なるものであり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基である方法。
【0093】
2.前記表面は、前記表面にあるSi原子の一部が前記酸化基をもつポリシロキサン構造を備える、特徴1に記載の方法。
【0094】
3.前記酸化基は、ヒドロキシル基、または自由電子対をもつ酸素原子、またはその両方である、特徴1に記載の方法。
【0095】
4.前記Xのいずれかまたは全部は、離脱基または疎液性基のいずれかである、特徴1から3のいずれかに記載の方法。
【0096】
5.1つまたは両方のXはメチル基またはハロゲンである、特徴1から4のいずれかに記載の方法。
【0097】
6.前記疎液性の基R1は、(CH2)nCH3、(CH2)2(CF2)nF、CF3、F、前記離脱基R2で終端する(Si(CH3)2O)nからなるグループから選択される、特徴1から5のいずれかに記載の方法。
【0098】
7.前記離脱基または離脱基をもつ基R2は、H、Cl、F、Br、I、OH、及び(CH2)nCH3からなるグループから選択される、特徴1から6のいずれかに記載の方法。
【0099】
8.前記シランまたはシロキサンは、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサン、ドデシルメチルジクロロシラン、パーフルオロデシルトリクロロシラン、パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロデシルメチルジクロロシランからなるグループから選択される1つまたは複数の化合物である、特徴1から7のいずれかに記載の方法。
【0100】
9.前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させる前に、前記表面を準備することをさらに含む、特徴1から8のいずれかに記載の方法。
【0101】
10.前記表面を準備することは、
前記表面をUV放射にさらすこと、
前記表面をオゾンにさらすこと、
前記表面をプラズマにさらすこと、
洗浄液を使用して前記表面を洗浄すること、
酸化液を使用して前記表面を洗浄すること、からなるグループから選択される1つまたは複数を含む、特徴9に記載の方法。
【0102】
11.前記表面を準備することは、前記表面を水蒸気にさらすことをさらに含む、特徴10に記載の方法。
【0103】
12.前記シランまたはシロキサンは溶媒に溶かされている、特徴1から11のいずれかに記載の方法。
【0104】
13.前記シランまたはシロキサンは気体で前記表面に接触させられる、特徴1から12のいずれかに記載の方法。
【0105】
14.前記シランまたはシロキサンはキャリアガス望ましくは窒素により運ばれる、特徴13に記載の方法。
【0106】
15.前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させた後に、前記表面を洗い流すことをさらに含む、特徴1から14のいずれかに記載の方法。
【0107】
16.前記シランまたはシロキサンは20℃において気相である、特徴1から15のいずれかに記載の方法。
【0108】
17.前記表面は、リソグラフィ装置の構成要素の表面である、特徴1から16のいずれかに記載の方法。
【0109】
18.前記方法は前記リソグラフィ装置の内部で実行される、特徴17に記載の方法。
【0110】
19.前記コーティングは0.1nm乃至100nmの厚さである、特徴1から18のいずれかに記載の方法。
【0111】
20.特徴1から19のいずれかに記載の方法を使用してリソグラフィ投影装置の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0112】
21.リソグラフィ投影装置のための要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーション。
【0113】
22.前記コーティングの前駆体を収容し、前記前駆体を前記表面に接触させるための反応槽を備える、特徴21に記載のコーティングステーション。
【0114】
23.前記反応槽は、該反応槽に前駆体を供給するための入口と該反応槽から気体を除去するための出口とを有する、特徴22に記載のコーティングステーション。
【0115】
24.前記反応槽は開口を有し、該開口を通じて前記表面が該反応槽において前記前駆体にさらされることが可能であり、前記反応槽は前記開口を画定する該反応槽の壁端部を、コーティングされるべき前記表面またはコーティングされるべき前記表面に隣接する表面に対し封じるシールを有し、それによって前記前駆体が前記反応槽に収容される、特徴22または23に記載の方法。
【0116】
25.前記反応槽は、望ましくはリソグラフィ投影装置の制御のもとで、前記表面が該反応槽に挿入可能及び前記反応槽から取出可能とするよう開放可能である、特徴22または23に記載の方法。
【0117】
26.前記コーティングの前駆体をキャリアガスに混合するための区画と、混合されたキャリアガス及び前駆体を前記表面に供給するための導管と、を備える、特徴21から25のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0118】
27.未反応の前記コーティングの前駆体を回収するための前駆体トラップを備える、特徴21から26のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0119】
28.洗浄モジュールを備える、特徴21から27のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0120】
29.前記表面を照明するUV光源を備える、特徴21から28のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0121】
30.特徴21から29のいずれかに記載のコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0122】
31.リソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0123】
32.前記表面は、テーブルの、望ましくは基板テーブルまたは計測テーブルの、表面の少なくとも一部である、特徴30または31に記載のリソグラフィ投影装置。
【0124】
33.前記表面は、テーブルに搭載された要素の、望ましくはセンサまたは格子の、表面である、特徴30から32のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0125】
34.前記表面は、流体ハンドリング構造の表面である、特徴30から33のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0126】
35.コーティングステーションが特徴1から19のいずれかに記載の方法を実行するよう構成されている、特徴30から34のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0127】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置、疎液性コーティングを表面に形成する方法、及びコーティングステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板の目標部分、通常は基板の目標部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、集積回路の個別の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用される。このパターンが基板(例えばシリコンウェーハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイからなる)目標部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板には網状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的に露光される。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(スキャン方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をスキャン方向に平行または逆平行に走査するようにして各目標部分は照射を受ける。パターニングデバイスから基板へのパターン転写は、基板にパターンをインプリントすることによっても可能である。
【0003】
リソグラフィ投影装置において基板を液体に浸すことが提案されている。この液体は比較的高い屈折率をもつ液体であり、例えば水である。そうして投影系の最終要素と基板との間の空間が液体で満たされる。一実施例においては液体は蒸留水であるが、その他の液体も使用可能である。本発明の一実施形態は液体に言及して説明しているが、その他の流体、特に濡れ性流体、非圧縮性流体、及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切なこともある。気体を除く流体が特に好ましい。その真意は、露光放射は液体中で波長が短くなるので、より小さい形状の結像が可能となるということである(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくし、焦点深度も大きくすることと見なすこともできる。)。別の液浸液も提案されている。固体粒子(例えば石英)で懸濁している水や、ナノ粒子(例えば最大寸法10nm以下)で懸濁している液体である。懸濁粒子はその液体の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよいし、そうでなくてもよい。その他に適切な液体として炭化水素もある。例えば芳香族、フッ化炭化水素、及び/または水溶液がある。
【0004】
基板を、又は基板と基板テーブルとを液体の浴槽に浸すということは(例えば米国特許第US4,509,852号参照)、走査露光中に加速すべき大きい塊の液体があるということである。これには、追加のモータ又はさらに強力なモータが必要であり、液体中の乱流が望ましくない予測不能な効果を引き起こすことがある。
【0005】
液浸装置においては液浸流体が、流体ハンドリングシステム、流体ハンドリングデバイス構造、または流体ハンドリング装置によって操作される。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体を供給してもよく、よって流体供給システムであってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めてもよく、流体閉じ込めシステムであってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは液浸流体に対する障壁を提供してもよく、バリア部材、例えば流体閉じ込め構造であってもよい。一実施例においては流体ハンドリングシステムは気体流れを生成または使用して、例えば液浸流体の流れ及び/または位置の制御を助けるようにしてもよい。その気体流れは液浸流体を閉じ込めるシールを形成してもよく、流体ハンドリング構造はシール部材と称されてもよい。こうしたシール部材が流体閉じ込め構造であってもよい。一実施例においては液浸液が液浸流体として使用される。その場合、流体ハンドリングシステムは液体ハンドリングシステムであってもよい。上記の記載において流体に関し定義された構成への本段落での言及は、液体に関し定義される構成も含むものと理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液浸リソグラフィにおいては液体の位置を制御する必要がある。1つまたは複数の表面に疎液性(例えば水については疎水性)コーティングを使用することは液体の位置例えば液体のメニスカスの制御に役立てることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、疎液性コーティングを表面に形成する方法を提供することが望ましい。望ましくは、液浸液が表面になす後退接触角を、これは使用により時間とともに劣化し得るものであるが、それよりも高いレベルに復元するために使用することのできる方法が提供される。疎液性コーティングを表面に形成するためにリソグラフィ投影装置のその場で使用することができる方法及び装置を提供することが望ましい。
【0008】
一態様によれば、疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、化学式SiR1R2X2を有するシランまたはシロキサンを表面に接触させることを含み、R1、R2、及びXは同一または異なるものであり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基である方法が提供される。
【0009】
一態様によれば、リソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置が提供される。
【0010】
一態様によれば、リソグラフィ投影装置のために要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーションが提供される。
【0011】
本発明の実施形態が付属の図面を参照して以下に説明されるがこれらは例示に過ぎない。各図面において対応する参照符号は対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【図3】リソグラフィ投影装置に使用される液体供給システムを示す図である。
【図4】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【図5】リソグラフィ投影装置に使用される他の液体供給システムを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の方法の反応経路の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態の気相塗布方法を模式的に示す図である。
【図8】本発明の一実施形態のリソグラフィ投影装置を模式的に示す図である。
【図9】3種類の異なるコーティングについて露光放射パルス回数により変化する後退接触角を表すグラフである。
【図10】異なる前駆体で形成された複数のコーティングについて前進接触角、静的接触角、後退接触角を示す図である。
【図11】異なる前駆体につき塗布技術によって変化する後退接触角を示す図である。
【図12】異なる種類の表面に対し1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを気相塗布方法により塗布する場合の成膜時間による後退接触角の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明系(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメタに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストで被覆されたウエーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメタに従って基板Wを正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ系)PSと、を備える。
【0014】
照明系ILは、放射の方向や形状の調整またはその他の制御のために、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの向きやリソグラフィ装置の設計、あるいはパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、静電固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定技術を用いてもよい。支持構造MTは例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影系PSに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0016】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0017】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0018】
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光光あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられ得る。
【0019】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0020】
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)のテーブルであってそのうち少なくとも1つまたはすべてが基板を保持し得るテーブル(及び/または2つ以上のパターニングデバイステーブル)を備えてもよい。こうした多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
【0021】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば放射源SOがエキシマレーザである場合には、放射源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは放射源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを備える。あるいは放射源SOが例えば水銀ランプである場合には、放射源SOはリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。放射源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称される。
【0022】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における照度分布の少なくとも外径及び/または内径(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために使用されてもよい。放射源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部を構成するとみなされてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置に一体の部分であってもよいし、リソグラフィ装置とは別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置はイルミネータILを搭載可能に構成されていてもよい。イルミネータILは取り外し可能とされ、(例えば、リソグラフィ装置の製造業者によって、またはその他の供給業者によって)別々に提供されてもよい。
【0023】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、パターニングデバイスMAによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。そうして基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0024】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
【0025】
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
【0026】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分Cの(走査方向の)長さを決定する。
【0027】
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0028】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0029】
投影系の最終要素と基板との間に液体を提供する構成は少なくとも二種類に大きく分類することができる。浴槽型の構成といわゆる局所液浸システムとである。浴槽型は基板の実質的に全体と任意的に基板テーブルの一部とが液槽に浸される。いわゆる局所液浸システムは、基板の局所域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。後者の分類においては、液体で満たされる空間は平面図にて基板上面よりも小さく、液体で満たされた領域は基板がその領域の下を移動しているとき投影系に対し実質的に静止状態にある。本発明の一実施例が指向する更なる一構成は、液体が閉じ込められない全濡れ型である。この構成においては、基板上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは浅い。液体はフィルム状であってもよく、基板上の薄い液体フィルムであってもよい。図2乃至図5の液体供給装置はいずれもこうしたシステムに使用可能であるが、シール機能はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにするか、あるいはその他の手法で、局所域のみに液体を封じないようにする。4つの異なる形式の局所液体供給システムが図2乃至図5に図示されている。
【0030】
1つの提案される構成は、液体供給システムが基板の局所域のみにかつ投影系の最終要素と基板との間に液体閉じ込めシステムを使用して供給するというものである(基板は一般に投影系の最終要素よりも大きな面積をもつ)。そのための構成の一例がPCT特許出願第WO99/49504号に開示されている。図2及び図3に示されるように、液体が少なくとも1つの入口によって基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給され、投影系の下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。つまり、基板が−X方向に最終要素の下を走査されると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される構成を概略的に示したものである。図において基板Wの上方の矢印は液体流れ方向を示し、基板Wの下方の矢印は基板テーブル移動方向を示す。図2では液体が最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終要素の周囲に規則的なパターンで設けられる。液体供給デバイス及び液体回収デバイスにおける矢印が液体流れ方向を示す。
【0031】
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの更なる解決法が、図4に示されている。液体は、投影系PSの両側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の分離された出口によって除去される。入口及び出口は、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影系PSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影系PSの他方側にある複数の分離された出口によって除去され、これによって投影系PSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。入口と出口のどちらの組合せを使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組合せの入口及び出口は作動させない)。図4の断面図において矢印は入口での液体流入方向と出口での液体流出方向とを示す。
【0032】
本明細書にその全体が援用される欧州特許出願公開第1420300号及び米国特許出願公開第2004−0136494号には、二重ステージまたはデュアルステージの液浸リソグラフィ装置の着想が開示されている。こうした装置には基板を支持するための2つのテーブルが設けられている。レベリング計測が1つのテーブルで第1位置で液浸液なしで実行され、露光が1つのテーブルで第2位置で液浸液ありで実行される。1つの構成においては、装置は1つのテーブルのみを有するか、一方のテーブルのみが基板を支持可能である2つのテーブルを有する。
【0033】
PCT特許出願公開第2005/064405号には、液浸液が閉じ込められていない全濡れ型が開示されている。こうしたシステムでは基板の上面全体が液体に覆われる。これは、基板上面全体が実質的に同一条件にさらされているという点で有利であり得る。基板の温度制御及び基板の処理に利点がある。WO2005/064405では、液体供給システムが液体を、投影系の最終要素と基板との間隙に供給する。その液体が基板の残りの部位へと漏れ(または流れ)出ることが許容されている。基板テーブルの端部にある障壁が液体の漏出を防いでおり、そのため基板テーブルの上面から制御された態様で液体を除去することができる。こうしたシステムは基板の温度制御及び処理を改善するが、液浸液の蒸発はなお生じ得る。この問題の軽減に役立つ1つの方法が米国特許出願公開第2006/0119809号に記載されている。基板のあらゆる位置を覆う部材が設けられている。この部材と基板及び/または基板を保持する基板テーブルの上面との間に液浸液を延在させるように構成されている。
【0034】
提案されている別の構成は流体ハンドリング構造をもつ液体供給システムを設けることである。流体ハンドリング構造は、投影系の最終要素と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。こうした構成を図5に示す。流体ハンドリング構造は、投影系に対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)では多少の相対運動があってよい。流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成される。一実施例においては、流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成され、このシールはガスシール等の非接触シールであってもよい。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。他の実施例では流体ハンドリング構造は、非ガスのシールであるシールを有しており、液体閉じ込め構造とも称される。
【0035】
図5は、バリア部材または液体閉じ込め構造を形成する本体12を有する局所液体供給システムまたは流体ハンドリング構造または流体ハンドリングデバイスを模式的に示す図である。局所液体供給システムは、投影系PSの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する。なお後述の説明で基板W表面への言及は、そうではないことを明示していない限り、基板テーブル表面をも意味し得るものとする。液体ハンドリング構造は、投影系に対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(一般には光軸方向)では多少の相対運動があってよい。一実施例においては、本体12と基板Wの表面との間にシールが形成され、このシールはガスシールや流体シール等の非接触シールであってもよい。
【0036】
流体ハンドリング構造は、投影系PSの最終要素と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール、例えばガスシール16が投影系PSの像フィールドの周囲に形成され、投影系PSの最終要素と基板W表面との間の空間11に液体が閉じ込められてもよい。この空間11の少なくとも一部が本体12により形成される。本体12は投影系PSの最終要素の下方に配置され、当該最終要素を囲む。液体が、投影系PSの下方かつ本体12内部の空間11に、液体入口13によって供給される。液体出口13によって液体が除去されてもよい。本体12は、投影系PSの最終要素の少し上方まで延在していてもよい。液位が最終要素の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。一実施例においては本体12は、上端において内周が投影系PSまたはその最終要素の形状に近似し、例えば円形であってもよい。下端において内周が像フィールドの形状に近似し、例えば長方形であってもよい。これらの形状は必須ではない。内周はいかなる形状であってもよく、例えば内周は投影系の最終要素の形状に一致していてもよい。内周は円形であってもよい。
【0037】
液体は、本体12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11に保持されてもよい。ガスシール16は、例えば空気又は合成空気、一実施例ではN2又はその他の不活性ガスなどの気体によって形成される。ガスシール16の気体は、圧力の作用で入口15を介して本体12と基板Wとの隙間に提供される。気体は出口14から抜き取られる。気体入口15での過剰圧力、出口14の真空レベル、及び隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速の気体流れが存在するように構成される。本体12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間11に液体を保持する。入口及び出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。気体流れは空間11に液体を保持する効果がある。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。
【0038】
図5の例はいわゆる局所域型であり、液体はいかなる時点においても基板Wの上面の局所域に供給されるのみである。異なる構成も可能であり、例えば米国特許出願公開第2006−0038968号には、単相抽出器または二相抽出器を利用する流体ハンドリング構造を含む構成が開示されている。一実施例においては、単相抽出器または二相抽出器は、多孔質材料に覆われている入口を備えてもよい。一実施例の単相抽出器においては、多孔質材料が気体から液体を分離し液体単相の液体抽出を可能とするために使用される。多孔質材料の下流のチャンバがいくらか負圧に保たれて液体で満たされる。そのチャンバの負圧は、多孔質材料の孔に形成されるメニスカスが周囲の気体のチャンバへの引き込みを妨げるような大きさとされる。その一方、多孔質材料が液体に接触すれば流れを制限するメニスカスはなくなるので液体が自由にチャンバに流入できる。多孔質材料は多数の小孔、例えば5μm乃至300μmの、望ましくは5μm乃至50μmの範囲の直径の小孔を有する。一実施例においては、多孔質材料は少なくともいくらかの親液性(例えば親水性)をもつ。すなわち、多孔質材料は液浸液例えば水に対する接触角が90度未満である。
【0039】
その他にも多様な液体供給システムが可能であり、例えば、本明細書にその全体が援用される米国特許出願公開第2009−0279062号には、二相抽出により出口開口に液体メニスカスを留める気体引き込み型が開示されている。本発明はいかなる特定の形式の液体供給システムにも限定されない。本発明は、投影系の最終要素と基板との間に液体を閉じ込める閉じ込め型液浸システムへの使用に有利であり、例えばその使用を最適とするが、本発明はいかなるその他の液体供給システムにも使用可能である。
【0040】
液浸リソグラフィ装置の多くの構成要素は液浸液に対し特定の接触角範囲をもつ表面を有する。よって表面は液体に対しある表面特性を有する。こうした表面は疎液性または親液性であり、あるいは水に対しては疎水性または親水性である。こうした表面は、例えば液体の損失を防ぐために、液体の位置制御を支援するのに使用されてもよい。液体位置が正確に制御されなければ、望まれない測定誤差や欠陥増加につながる。一実施例においては、表面特性を与えるためにコーティングが使用され得る。表面特性例えば疎液性コーティングは、使用時に液浸液がコーティングに作る接触角の劣化に悩まされるおそれがある。これは特に、投影ビームの放射及び/または液体にさらされる表面例えばコーティングに顕著となりうる。
【0041】
疎液性コーティングに被覆される構成要素またはその部分の例としては、基板テーブルの上面の部分、基板と基板テーブルとの間隙に流路を形成する基板テーブルの側表面、表面に表面特性を与えるための及び/または物体に隣接する間隙を橋渡しするための接着性平面シート(例えばステッカ)、センサ(例えば、透過イメージセンサ(TIS)、ドーズセンサ、スポットセンサ、レンズ干渉計(例えば干渉波面測定センサ))、投影系の最終要素例えばその光路外の表面、いずれかの流体ハンドリング構造の一部分例えば投影系に面する上面及びその下面の少なくとも一部分、及び/または、ダミー基板や第2テーブルあるいは2つのテーブル間のブリッジ要素といった閉鎖表面がある。
【0042】
閉鎖表面は、流体ハンドリング構造の開口を、例えば基板を交換する例えば投影系PS下方でのテーブル交換の際に、塞ぐために使用される表面である。閉鎖表面は、ダミー基板、ブリッジ要素、または別個のテーブルであってもよいし、ダミー基板、ブリッジ要素、または別個のテーブルを含んでもよい。テーブルの交換はダミー基板を使用して流体を空間11に閉じ込めて行われる。閉鎖表面がブリッジ要素(交換ブリッジとも呼ばれる)であれば、閉鎖表面は進退可能であり、ある1つのテーブルの一部分であってもよい。ブリッジ要素は、例えば投影系PSの下方でのテーブルの(例えば2つの基板テーブルの、あるいは基板テーブルの計測テーブルへの)交換の際に、少なくとも2つのテーブル(例えば基板テーブルと計測テーブル、あるいは2つの基板テーブル)間の間隙に存在するダミー基板として機能してもよい。ブリッジ要素は、例えば投影系PSの下方をブリッジ要素が通過する期間は少なくとも、テーブルに取り付けられてもよい。一実施例においては閉鎖表面は別個のテーブル、例えば計測テーブルMSTの一部であってもよい。
【0043】
(既述の)ある構成要素に表面要素を与えるコーティングに液浸液が作る接触角が許容範囲外にある場合、例えばあるしきい値を上回るあるいは下回る場合には、接触角を復元するための行動をとるべきであり、さもなければ装置特性が劣化しうる(なお以下では接触角についての、疎液表面においてあるしきい値を下回ってより親液性となるとの言及は、そうではないと述べない限り、親液表面であるしきい値を上回ってより疎液性となることを含むものとみなす。コーティングの劣化との言及は、そうではないと述べない限り、コーティングがされていない表面の表面特性の劣化も含む。)。その1つの方法は構成要素を交換することであるが、交換には費用がかかるとともに装置にダウンタイムを生じさせるから望ましくない。代替的にまたは追加的に、接着性平面部材例えばステッカが表面上に配置されてもよい。ステッカは液浸液に所望の接触角特性をもつ。この方法も、ステッカの適正な貼付のために装置から構成要素を取り出す必要が生じ得るので装置のダウンタイムを要し、好ましくない。ステッカはある最小厚さをもつので、ステッカを適用すれば表面高さに変化が生じる。よってステッカの適用は表面トポグラフィに望ましくない変化を与えるおそれがある。また、ステッカの適用は、適用表面の機械特性及び/または光学特性を変化させるおそれがある。
【0044】
コーティングの化学的塗布の方法が本明細書に開示される。この方法は最初に表面を処理するためにも使用することができる。この方法は劣化した疎液性コーティングを復元するためにも使用することができる。特に、この方法は、劣化した有機ケイ素コーティングの復元に使用することができる。有機ケイ素コーティングの例は、SiOxCyHzであり、例えばLipocer(商標)である。
【0045】
SiOxCyHzは、例えば米国特許出願公開第2009−0206304号に記載されているが、水及びUV放射の存在下での使用により(例えば、一般にはある回数の露光放射の照射後に)劣化する。コーティングのメチル基が次第に酸化され例えばヒドロキシル基または自由電子対をもつ酸素原子となり廃棄物として水及びCO2が放出される。
【0046】
SiOxCyHzは、米国特許出願公開第2009−0206304号に記載された工程により湿式の化学的成膜またはCVDにより塗布可能である。
【0047】
一実施例においては、米国特許出願公開第2009−0206304号のコーティングとは異なり、コーティングは単分子層のコーティングであってもよい。
【0048】
一実施例においてはコーティングは、単分子層の厚さであってもよいし、1nm以下または数nmの厚さ(例えば、0.1nm乃至100nmの範囲、0.1nm乃至50nmの範囲、または0.1nm乃至20nmの範囲から選択された厚さ)であってもよい。一実施例においてはコーティングは、自己組織化単分子膜であってもよい。
【0049】
こうした化学的塗布はその下層の構成要素の表面トポグラフィにそれほど影響を与えないのであり、構成要素の高さ(それ自体で液体損失の制御に重要であり得る)またはその光学特性を大きく変化させない。
【0050】
疎液性コーティングの前駆体が表面に接触させられる。前駆体が表面と反応して、疎液性コーティングが形成される。特に、その表面は、具体的には自由電子対をもつ酸素原子またはヒドロキシル基である酸化された基を有する表面である。前駆体はシランまたはシロキサンである。前駆体は、2種以上の異なるシラン及び/またはシロキサンの混合物であってもよい。前駆体は、化学式SiX4を有してもよい。ここでXそれぞれは同一または異なるものである。少なくとも1つのXは離脱基である。表面との反応中に離脱基がシランまたはシロキサンから離脱し、シランまたはシロキサンのSiが表面に結合する。少なくとも1つのXは疎液性の基である。よって、シランまたはシロキサンが表面と反応して固定されると疎液性の基がこの表面から延びて存在するため表面は疎液性となる。
【0051】
前駆体は表面と反応する。特に、前駆体のSi原子団が表面に(例えば酸素原子を介して)結合し、廃棄物が生成される。この廃棄物は、水素原子に結合した離脱基であってもよい。
【0052】
反応経路の例を図6に示す。第1ステップには、疎液性のメチル基を備える疎水性ポリシロキサンコーティングが示されている。水及びDUV放射にさらされると、これら水及びDUV放射は液浸リソグラフィ装置内に存在するのであるが、水はSi原子に吸着されヒドロキシル化学結合を形成する傾向がある。これにより、液体がコーティングになす接触角は小さくなるであろう。すなわち、第2ステップに示すようにコーティングは劣化する。
【0053】
SiR1R2X2の形式の前駆体が表面に接触させられる。これは、後述のように気相であっても液相であってもよい。R1基は疎液性の基である。R2基は、離脱基、または1つまたは複数の離脱基をもつ原子団である。
【0054】
第3ステップの反応により、離脱基R2は離脱してSi原子がヒドロキシル基の酸素原子に結合する。ヒドロキシル基の水素原子も離脱する。離脱基R2とヒドロキシル基の水素原子とは結合して廃棄物を形成する。この反応によって疎液性の基R1が表面に残るため表面の疎液性が回復される。
【0055】
理解されるように、この反応メカニズムは表面に酸化された基が存在するときに生じる。典型的には劣化した表面または本願に記載の方法を使用してうまく被覆可能である表面は、その表面にあるすべての基のうち少なくとも1割、少なくとも2割、少なくとも3割、少なくとも4割、または少なくとも5割が酸化基である。一実施例においては、表面にあるすべての基のうち少なくとも7.5割が酸化基である。
【0056】
米国特許出願公開第2009−0206304号に記載されたSiOxCyHzコーティングは、プラズマ処理(CVD)を使用して適用される。プラズマはHMDSOから生成され、プラズマからのラジカルの再結合によってコーティングが適用される。本発明の一実施形態は、化学的に反応性のある基をもつ分子に関する。ここで、これら分子はコーティングが形成されるべき表面へと気相で輸送される。表面に達すると化学反応によりこれら分子がコーティングを形成する。すなわち、化学反応経路による以外には、分子を生成する結合は切断されない。
【0057】
疎液性基R1は、ヒドロカルビル(CH2)nCH3(nは0から11であり望ましくは0)、パーフルオロデシル(CH2)2(CF2)nF(nは1から8)、CF3、F、離脱基R2で終端されるシロキサン(Si(CH3)2O)n(nは1から4であり望ましくは1)からなるグループから選択される基であってもよい。
【0058】
適する離脱基または少なくとも1つの離脱基をもつ基R2は、H、Cl、F、Br、I、OHからなるグループから選択される陰イオン、またはヒドロカルビル(CH2)nCH3(nは0から11であり望ましくは0)である。望ましくは離脱基はハロゲンまたはヒドロキシルの陰イオンであるが、特定の条件例えばDUV放射露光または特定温度の下ではアルキル基のみが離脱基となりうる。
【0059】
前駆体のその他の基Xは、一実施例においては、離脱基または疎液性基のいずれかまたはその両方であり、望ましくはメチル基CH3またはハロゲンの1つである。
【0060】
一実施例においては、離脱基をもつ基R2はシロキサン(Si(CH3)2O)Clであり(すなわちCl離脱基をもち)、離脱基はClであり残りの2つのXはメチル基(CH3)であり、前駆体は、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンである。
【0061】
一実施例においては、離脱基と疎液性基とは異なる。これにより反応の収率が高まる。
【0062】
シランまたはシロキサンを表面に接触させる前に、表面に準備をすることが望ましい。表面に準備をすることは、異物及び/または既にある剥がれそうなコーティングの一部を除去するために表面を洗浄することを含んでもよい。表面に準備をすることは、意図的に表面にヒドロキシル基を形成することを含んでもよい。
【0063】
表面を洗浄することは例えば、米国特許出願公開第2009−0174870号に記載されたプラズマクリーニング、及び/または米国特許出願公開第2009−0025753号に記載されたオゾンを用いるクリーニング、及び/または米国特許出願公開第2009−0027636号に記載されたUV放射を用いるクリーニング、及び/または米国特許出願第12/582,214号に記載された石けん、溶剤、または界面活性剤など、及び/または強酸または強塩基または過酸化物と硫酸との混合物など酸化液を含む化学物質を含む洗浄液を用いるクリーニングを含んでもよい。UV放射及びオゾンと(液体または気体の)水との存在が酸化基またはヒドロキシル基の存在を促進するために追加的にまたは代替的に使用されてもよい。水蒸気及び/または液相の水に表面をさらすことは、酸化基またはヒドロキシル基の生成促進に役立ちうる。
【0064】
シランまたはシロキサンは液体の状態で表面に接触させてもよい。例えば、シランまたはシロキサンが無水トルエン等の溶媒に、例えば無水トルエンに2%の体積濃度で溶解されてもよい。この溶液は窒素雰囲気下に保たれ、コーティングされるべき洗浄表面がこの溶液に浸される。表面は適切な時間例えば少なくとも20分、30分、または40分浸されてもよい。浸された後で表面は例えばトルエンで洗い流される。その後表面は例えば窒素で乾燥されてもよい。表面の乾燥には昇温し例えば50℃にある時間おく必要があり得る。約30分間の昇温乾燥が適切であり得る。表面は超純水で洗い流されてもよい。その後表面のすすぎと例えば窒素での乾燥とが再度行われてもよい。表面は対流式オーブンに30分間50℃で置かれてもよい。
【0065】
一実施例においては、シランまたはシロキサンは気体で表面に接触させてもよい。
【0066】
図7は、シランまたはシロキサンを表面に気相でどのように接触させるかについての例を模式的に示す。シラン前駆体またはシロキサン前駆体150が第1区画または準備区画115に置かれる。準備区画においては前駆体は200にて導入されるキャリアガス例えば窒素ガスに混合され、その混合物は300にて反応槽400であってもよい第2区画へと輸送される。コーティングされるべき表面310が反応槽に、望ましくは均一な成膜を保証するよう水平に置かれている。前駆体が表面に接触して反応する。
【0067】
窒素キャリアガス、未反応のシランまたはシロキサン、及び副生成物(典型的には表面のヒドロキシル基の水素原子に離脱基が結合したもの)が350にて反応槽から抽出され第3区画125へと排出される。第3区画の前駆体トラップ360は、窒素雰囲気下に保たれているが、未反応の前駆体を再使用または廃棄のために捕捉する。キャリアガスは370にて第3区画を出る。
【0068】
コーティングされる基板は通常、シランまたはシロキサン前駆体にさらされて第2区画に2分間乃至60分間滞在する。必要な表面の全体に単分子層コーティングを保証するには(すなわち基板上の反応性のある基のすべてが前駆体と完全に反応するには)少なくとも10分間は滞在すべきである。
【0069】
気相成膜後に表面が溶剤例えばトルエンで、余剰のシラン及び/またはシロキサン前駆体を除去するために洗い流されてもよい。その後表面は窒素で乾燥されてもよい。そのあと更に表面は、湿式の化学塗布と同様に、超純水で洗い流され乾燥されてもよい。
【0070】
この方法がリソグラフィ投影装置の構成要素の復元に使用される場合には、望ましくはこの方法がリソグラフィ投影装置のその場で実行される。そのために、コーティングステーション100がリソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するために設けられていてもよい。一例を図8に示す。一実施例においてはリソグラフィ投影装置にコーティングステーション100が設けられている。他の一実施例においてはコーティングステーション100は別体の構成要素である。別体である場合コーティングステーションはそれが使用されるべき装置例えばリソグラフィ装置に、使用に必要なときに取り付けられる。コーティングステーションは劣化した表面特性を持つ表面の検査に使用されてもよい。その劣化した表面がコーティングステーション100の作用により補修されてもよい。一実施例においては、コーティングステーション100は、1つまたは複数の基板テーブルWT及び/または1つまたは複数の計測テーブルMSTが装置例えばリソグラフィ投影装置を離れずにコーティングステーション100に入ることができるように、配置されている。この構成により、表面コーティングをその場で行い装置のダウンタイムを短くすることができる。
【0071】
コーティングステーションは反応槽400を備えてもよい。反応槽400は、シランまたはシロキサン前駆体を収容するために、及び前駆体を表面に接触させるためにある。そのためには表面は反応槽400の内部で露出されなければならない。
【0072】
反応槽400はいかなる形式をとってもよい。一実施例においては反応槽400は、表面の上方に配置される何らかのカバー例えば壁付きのカバーの形式であってもよく、例えばドームであってもよい。反応槽400は開口を有する。この開口を通じて、表面は反応槽400内で前駆体にさらされることができる。この表面をさらすための開口は、ドームの壁端部によって画定される。ドームは表面またはコーティングされるべき表面を包囲する表面に封じられる。この表面をドームで封じることは、ドームの壁端部をコーティングされるべき表面またはそれを包囲する表面により封じることによって実現されてもよい。使用の際に前駆体が反応槽に収容されてもよい。一実施例においては反応槽は、反応槽内に置かれるべき部材全体を許容する閉鎖可能な開口例えば扉付きの出入口を有する。扉が閉じられることで前駆体が収容されるようにしてもよい。そうすると、表面は反応槽に挿入可能及び取出可能である。
【0073】
反応槽400は、前駆体を反応槽400に供給するための供給口110を有する。供給口110は第1区画115に接続されている。第1区画115には、キャリアガス例えば窒素がキャリア入口116を通じて供給され、前駆体が前駆体入口117を通じて供給される。キャリアガス及び前駆体は第1区画115において、反応槽400への供給口110への導管を通じて供給される前に、混合される。モータ118がガスをポンプで送るために設けられていてもよい。モータ118は第1区画115と反応槽400との間の導管に、キャリアガスのためにキャリア入口116の上流に、または、前駆体のために前駆体入口117の上流に設けられていてもよい。それに代えてまたはそれとともに、モータ118は反応槽の下流に設けられていてもよい。1つまたは複数のモータがそれぞれ上述の任意の位置に設けられていてもよい。
【0074】
反応槽100には、ガスを反応槽400から排出するための排出口120も設けられている。排出口120の下流には、前駆体トラップ127を収容するための更なる区画125がある。更なる区画125は、キャリアガス及び副生成物を更なる区画125から排出するための排出口129を有する。
【0075】
コーティングステーション100は、表面準備モジュール300を備えてもよい。表面準備モジュール500は、反応槽400から分離されて存在していてもよいし、より便利には反応槽400の内部にあってもよいし、あるいはそれら両方でもよい。表面準備モジュール500のある部分が反応槽400の内部にあり他のある部分が反応槽400の外部にあってもよい。表面準備モジュール500は、説明したシランまたはシロキサン前駆体に表面を接触させる前に表面を洗浄してもよい。表面準備モジュール500はそれに加えてまたはそれに代えて、上述のように表面へのヒドロキシル基の形成を促すようにしてもよい。具体的には、洗浄モジュールは、UV放射またはDUV放射を表面に照射するUV光源またはDUV光源、及び表面に洗浄液、水等の液浸液、気体(例えばオゾン)またはプラズマまたは水を供給する流体またはプラズマ供給チャネルを備えてもよい。
【0076】
コーティングステーション100は、コーティング後に表面を洗い流すためのすすぎモジュール600を備えてもよい。コーティングステーションはさらに、コーティング後に表面を(任意的に昇温して)乾燥するための乾燥モジュール700を備えてもよい。乾燥モジュール700及びすすぎモジュール600は、完全にまたは部分的に反応槽400の内部または外部にあってもよい。コーティングステーション100は、上述の方法の実行に適合されている。
【0077】
行われた実験結果を以下に述べる。これらは本発明の一実施形態の1つまたは複数の有効性を示す。
【0078】
図9は、水の後退接触角の(y軸に度数で示す)、1L/分の水流のもとでのDUV放射パルス回数(x軸にパルス回数(1e+3)で示す)に対する変化を3種類の表面について比較したものを示す図である。DUV光源は、193nmの波長で、1回のパルスあたり0.25mJ/cm2/パルスのドーズ量のものを用いた。図示されるように、菱形記号で示される疎液性コーティングSiOxCyHzは時間の経過とともに劣化している。正方形記号及び三角形記号で示されるSiOxCyHzコーティングの結果は時間とともに劣化しているが、これらはそれぞれ、上述の気相成膜方法に10分間ジメチルシロキサン前駆体及びジメチルシラン前駆体にさらすことでコーティングを復元したものである。図示されるように、復元した表面の水の後退接触角は、もとのコーティングと実質的に同じである。この結果は、復元したコーティングの寿命が(SiOxCyHzと同様に良好に)許容できるものであり、本方法がもとのコーティングの復元に使用可能であることを示している。
【0079】
図10は、ガラス基板上に形成したコーティングの接触角を(y軸に度数で示す)、適する前駆体ごとに番号で示す図である。各前駆体につき前進接触角、静的接触角、後退接触角の、ガラス基板上のSiOxCyHzコーティングとの比較を示す。x軸に複数の異なるサンプルを示す。サンプルごとに三種類の接触角が測定されており、静的接触角は白抜き、前進接触角は斜線、後退接触角は影付きで示す。各番号は、1:SiOxCyHzコーティング、2:パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、3:パーフルオロデシルメチルジクロロシラン、4:パーフルオロデシルトリクロロシラン、5:ドデシルジメチルクロロシラン、6:ドデシルメチルジクロロシラン、7:トリメチルクロロシラン、8:ジクロロジメチルシラン、9:トリクロロメチルシラン、10:ポリジメチルシロキサン(シラノール終端)、11:1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、12:1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサンである。これらの例は上述の湿式化学塗布技術にて30分浸すことで準備された。ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンが本目的のために特に適する。これらの例の前進接触角及び後退接触角は、リソグラフィ投影装置における疎液性コーティングに仕様として定められる図示の110度乃び70度の範囲の前進接触角及び後退接触角に収まっているからである。他の前駆体のうち、パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロデシルメチルジクロロシラン、パーフルオロデシルトリクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサンは適する可能性がある。ドデシルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、シラノール終端のポリジメチルシロキサンは、適しない前駆体である可能性がある。最も好ましい前駆体は少なくとも2つの離脱基をもつ。それらは表面により強く結合するからである。
【0080】
最も望ましい前駆体は、立体障害をほとんど有しないもの(例えばメチル基が最少)であるか、表面の酸化基の離脱基(例えばハロゲン)への接触を妨げる大きい基がないものである。離脱基としてOH基は望ましくはない。それは、他の離脱基よりも反応性が低いからである。長い鎖長による立体障害のために、前駆体の鎖長はより短いことが好ましい。
【0081】
図11は、処理されたガラス表面での水例えば超純水の後退接触角(y軸に度数で示す)が塗布技術に依存してどのように変わるかを示す図である。図11は4種類の異なるコーティングのサンプルを示す。番号1はSiOxCyHz、番号2はジクロロジメチルシラン、番号3は1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、番号4はパーフルオロデシルメチルジクロロシランである。図11は、ジクロロジメチルシラン(番号2)及び1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン(番号3)には気相での塗布(斜線で示す)が好ましいことを示している。それは、より大きい後退接触角をより高い再現性で実現できるからである。これら2つの化学物質に行った試験は、10分間の気相成膜と(斜線)、比較のための30分間の湿式化学塗布(白抜き)であった。パーフルオロデシルメチルジクロロシラン(番号4)には、湿式化学成膜(白抜き)が望ましいかもしれない。湿式化学成膜のほうが60分間の気相成膜(影付き)よりも大きい後退接触角を実現できるからである。比較のためにSiOxCyHzコーティング(番号1)は30分間の湿式化学塗布(白抜き)を用いた場合をプロットする。
【0082】
図12は、後退接触角(y軸に度数で示す)の表面による変化を示す。図12において、ガラス表面は+印、ガラスセラミックは丸印、SiOxCyHzは×印で示しており、これらはそれぞれ時間(x軸に分で示す)を変えて1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンの気相で処理したものである。図からわかるように、10分経過後にはガラス、ガラスセラミック、SiOxCyHzにつき一定の後退接触角が実現される。処理された表面の表面特性は、実質的に一致しているかまたは均一な接触角を有し得る。よって、疎液性の表面コーティングを1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサンを前駆体として使用して形成するには、少なくとも10分間の成膜時間が望ましい。単分子層コーティングの均質な被覆を実現するための時間は表面の特性に依存する。ガラスへのコーティングは、反応性部分(ヒドロキシル基)の数が最少である(ガラスは他の表面よりも酸化されている)から、最速である。
【0083】
試験によれば、イソプロパノール(IPA)を含浸させた布で物理的に拭き取ったうえで紫外放射及びオゾンに10分間さらす洗浄が最も良好である。紫外放射及び/またはオゾンにさらすのは、2分間乃至60分間のうちいずれの長さであっても良好な結果を得ることができる。
【0084】
理解されるように、本願にて網羅される明記された組み合わせには限られず、任意の上記の特徴は他の任意の上記の特徴とともに使用可能である。
【0085】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウェーハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0086】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を示す。「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含む1つの光学素子またはこれら各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0087】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明の実施形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは1つまたは複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0088】
本明細書に記載のコントローラは各々がまたは組み合わされて、リソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内部に設けられた1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み取られたときに動作可能であってもよい。コントローラは信号を受信し処理し送信するのに適切ないかなる構成であってもよい。1つまたは複数のプロセッサは少なくとも1つのコントローラに通信可能に構成されていてもよい。例えば、複数のコントローラの各々が上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するための1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。各コントローラはコンピュータプログラムを記録する記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウェアを含んでもよい。コントローラは1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
【0089】
本発明の1つまたは複数の実施形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から外部に流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸流体を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
【0090】
本明細書に述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施形態においては投影系と基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組合せであってもよい。1つまたは複数の構造体、及び1つまたは複数の流体開口の組合せを含んでもよい。流体開口は、1つまたは複数の液体開口、1つまたは複数の気体開口、1つまたは複数の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。一実施例においては、液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、液浸空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、流速、またはその他の性状を制御するための1つまたは複数の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。
【0091】
要約すれば、本開示は以下の特徴の1つまたは複数を含む。
【0092】
1.疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、
化学式SiR1R2X2をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでR1、R2、及びXは同一または異なるものであり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基である方法。
【0093】
2.前記表面は、前記表面にあるSi原子の一部が前記酸化基をもつポリシロキサン構造を備える、特徴1に記載の方法。
【0094】
3.前記酸化基は、ヒドロキシル基、または自由電子対をもつ酸素原子、またはその両方である、特徴1に記載の方法。
【0095】
4.前記Xのいずれかまたは全部は、離脱基または疎液性基のいずれかである、特徴1から3のいずれかに記載の方法。
【0096】
5.1つまたは両方のXはメチル基またはハロゲンである、特徴1から4のいずれかに記載の方法。
【0097】
6.前記疎液性の基R1は、(CH2)nCH3、(CH2)2(CF2)nF、CF3、F、前記離脱基R2で終端する(Si(CH3)2O)nからなるグループから選択される、特徴1から5のいずれかに記載の方法。
【0098】
7.前記離脱基または離脱基をもつ基R2は、H、Cl、F、Br、I、OH、及び(CH2)nCH3からなるグループから選択される、特徴1から6のいずれかに記載の方法。
【0099】
8.前記シランまたはシロキサンは、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、1,3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1,5-ジクロロヘキサメチルトリシロキサン、ドデシルメチルジクロロシラン、パーフルオロデシルトリクロロシラン、パーフルオロデシルジメチルクロロシラン、パーフルオロデシルメチルジクロロシランからなるグループから選択される1つまたは複数の化合物である、特徴1から7のいずれかに記載の方法。
【0100】
9.前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させる前に、前記表面を準備することをさらに含む、特徴1から8のいずれかに記載の方法。
【0101】
10.前記表面を準備することは、
前記表面をUV放射にさらすこと、
前記表面をオゾンにさらすこと、
前記表面をプラズマにさらすこと、
洗浄液を使用して前記表面を洗浄すること、
酸化液を使用して前記表面を洗浄すること、からなるグループから選択される1つまたは複数を含む、特徴9に記載の方法。
【0102】
11.前記表面を準備することは、前記表面を水蒸気にさらすことをさらに含む、特徴10に記載の方法。
【0103】
12.前記シランまたはシロキサンは溶媒に溶かされている、特徴1から11のいずれかに記載の方法。
【0104】
13.前記シランまたはシロキサンは気体で前記表面に接触させられる、特徴1から12のいずれかに記載の方法。
【0105】
14.前記シランまたはシロキサンはキャリアガス望ましくは窒素により運ばれる、特徴13に記載の方法。
【0106】
15.前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させた後に、前記表面を洗い流すことをさらに含む、特徴1から14のいずれかに記載の方法。
【0107】
16.前記シランまたはシロキサンは20℃において気相である、特徴1から15のいずれかに記載の方法。
【0108】
17.前記表面は、リソグラフィ装置の構成要素の表面である、特徴1から16のいずれかに記載の方法。
【0109】
18.前記方法は前記リソグラフィ装置の内部で実行される、特徴17に記載の方法。
【0110】
19.前記コーティングは0.1nm乃至100nmの厚さである、特徴1から18のいずれかに記載の方法。
【0111】
20.特徴1から19のいずれかに記載の方法を使用してリソグラフィ投影装置の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0112】
21.リソグラフィ投影装置のための要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーション。
【0113】
22.前記コーティングの前駆体を収容し、前記前駆体を前記表面に接触させるための反応槽を備える、特徴21に記載のコーティングステーション。
【0114】
23.前記反応槽は、該反応槽に前駆体を供給するための入口と該反応槽から気体を除去するための出口とを有する、特徴22に記載のコーティングステーション。
【0115】
24.前記反応槽は開口を有し、該開口を通じて前記表面が該反応槽において前記前駆体にさらされることが可能であり、前記反応槽は前記開口を画定する該反応槽の壁端部を、コーティングされるべき前記表面またはコーティングされるべき前記表面に隣接する表面に対し封じるシールを有し、それによって前記前駆体が前記反応槽に収容される、特徴22または23に記載の方法。
【0116】
25.前記反応槽は、望ましくはリソグラフィ投影装置の制御のもとで、前記表面が該反応槽に挿入可能及び前記反応槽から取出可能とするよう開放可能である、特徴22または23に記載の方法。
【0117】
26.前記コーティングの前駆体をキャリアガスに混合するための区画と、混合されたキャリアガス及び前駆体を前記表面に供給するための導管と、を備える、特徴21から25のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0118】
27.未反応の前記コーティングの前駆体を回収するための前駆体トラップを備える、特徴21から26のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0119】
28.洗浄モジュールを備える、特徴21から27のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0120】
29.前記表面を照明するUV光源を備える、特徴21から28のいずれかに記載のコーティングステーション。
【0121】
30.特徴21から29のいずれかに記載のコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0122】
31.リソグラフィ投影装置の構成要素の表面に疎液性コーティングを形成するよう構成されているコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【0123】
32.前記表面は、テーブルの、望ましくは基板テーブルまたは計測テーブルの、表面の少なくとも一部である、特徴30または31に記載のリソグラフィ投影装置。
【0124】
33.前記表面は、テーブルに搭載された要素の、望ましくはセンサまたは格子の、表面である、特徴30から32のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0125】
34.前記表面は、流体ハンドリング構造の表面である、特徴30から33のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0126】
35.コーティングステーションが特徴1から19のいずれかに記載の方法を実行するよう構成されている、特徴30から34のいずれかに記載のリソグラフィ投影装置。
【0127】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、
化学式SiR1R2X2をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでR1、R2、及びXは同一または異なり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面は、前記表面にあるSi原子の一部が前記酸化基をもつポリシロキサン構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化基は、ヒドロキシル基、または自由電子対をもつ酸素原子、またはその両方であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Xのいずれかまたは全部は、離脱基または疎液性基のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
1つまたは両方のXはメチル基またはハロゲンであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記疎液性の基R1は、(CH2)nCH3、(CH2)2(CF2)nF、CF3、F、前記離脱基R2で終端する(Si(CH3)2O)nからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させる前に、前記表面を準備することをさらに含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記シランまたはシロキサンは溶媒に溶かされていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記シランまたはシロキサンはキャリアガス望ましくは窒素により運ばれることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記表面は、リソグラフィ装置の構成要素の表面であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
リソグラフィ投影装置のための要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーション。
【請求項12】
前記コーティングの前駆体を収容し、前記前駆体を前記表面に接触させるための反応槽を備える、請求項11に記載のコーティングステーション。
【請求項13】
前記コーティングの前駆体をキャリアガスに混合するための区画と、混合されたキャリアガス及び前駆体を前記表面に供給するための導管と、を備える、請求項11または12に記載のコーティングステーション。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに記載のコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【請求項15】
前記表面は、テーブルの、望ましくは基板テーブルまたは計測テーブルの、表面の少なくとも一部、または流体ハンドリング構造の表面、またはそれら両方である、請求項14に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項1】
疎液性コーティングを酸化基を有する表面に形成する方法であって、
化学式SiR1R2X2をもつシランまたはシロキサンを前記表面に接触させることを含み、ここでR1、R2、及びXは同一または異なり、R1は疎液性の基であり、R2は離脱基または離脱基をもつ基であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面は、前記表面にあるSi原子の一部が前記酸化基をもつポリシロキサン構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化基は、ヒドロキシル基、または自由電子対をもつ酸素原子、またはその両方であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Xのいずれかまたは全部は、離脱基または疎液性基のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
1つまたは両方のXはメチル基またはハロゲンであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記疎液性の基R1は、(CH2)nCH3、(CH2)2(CF2)nF、CF3、F、前記離脱基R2で終端する(Si(CH3)2O)nからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シランまたはシロキサンを前記表面に接触させる前に、前記表面を準備することをさらに含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記シランまたはシロキサンは溶媒に溶かされていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記シランまたはシロキサンはキャリアガス望ましくは窒素により運ばれることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記表面は、リソグラフィ装置の構成要素の表面であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
リソグラフィ投影装置のための要素の表面に疎液性コーティングを形成するコーティングステーション。
【請求項12】
前記コーティングの前駆体を収容し、前記前駆体を前記表面に接触させるための反応槽を備える、請求項11に記載のコーティングステーション。
【請求項13】
前記コーティングの前駆体をキャリアガスに混合するための区画と、混合されたキャリアガス及び前駆体を前記表面に供給するための導管と、を備える、請求項11または12に記載のコーティングステーション。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに記載のコーティングステーションを備えるリソグラフィ投影装置。
【請求項15】
前記表面は、テーブルの、望ましくは基板テーブルまたは計測テーブルの、表面の少なくとも一部、または流体ハンドリング構造の表面、またはそれら両方である、請求項14に記載のリソグラフィ投影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−119735(P2011−119735A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−268063(P2010−268063)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268063(P2010−268063)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】
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