説明

リチウムイオン二次電池システムおよびリチウムイオン二次電池

【課題】リチウムイオン二次電池のサイクル寿命と保存特性を改善することができ、再充電できない放電容量の低減が可能なリチウムイオン二次電池システムを提供する。
【解決手段】正極と炭素を含む負極と非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池202から構成されるリチウムイオン二次電池システムにおいて、充電制御パラメータに従ってリチウムイオン二次電池を充電する充放電回路210と、充放電回路210を制御する演算処理部209とを備え、演算処理部209は、リチウムイオン二次電池202の電池特性を求め、電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、充電制御パラメータの値を変更し、充電が終了したときに、充電制御パラメータを変更前の値に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池システムと、これに利用されるリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池を代表とする非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有するため、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。リチウムイオン二次電池が使用される電気自動車には、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から直接充電させるプラグイン・ハイブリッド電気自動車がある。また、電力系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵システムとしての用途も期待されている。
【0003】
このような多様な用途に対し、リチウムイオン二次電池に高い容量密度と優れた耐久性が要求されている。すなわち、充電容量が大きく、環境温度が高くなっても充電可能な容量の低下率が低く、長期にわたって容量維持率が高いリチウムイオン二次電池が要求されている。特に、電気自動車用リチウムイオン二次電池は、一充電による電気エネルギーが大きいことが第一に要求され、その解決策の一つのとして高容量な負極材料が求められている。また、路面からの輻射熱あるいは車内からの熱伝導により、60℃以上の高温環境における保存特性とサイクル寿命が、第二の重要な要求性能となっている。
【0004】
高容量密度に関係する炭素質負極材料は、多数のものが知られている。その中でも、複数の炭素材料を混合することによって、放電末期の急激な電圧低下を回避する技術、あるいは電池の高容量化を図る技術が公開されている。
【0005】
特許文献1には、黒鉛に5〜30容量%の他の炭素質材料を混合した負極を用いることによって、放電電位を高く平坦に保つことができ、電池作動中に残存容量が僅かになった場合に両極間電圧を緩やかに減少させることにより、突然の電圧低下を防止する発明が記載されている。
【0006】
特許文献2には、黒鉛質材料とその材料よりも高い放電容量を有する非黒鉛質材料の混合負極を用いることによって、放電末期において負極側の分極による電圧変化を抑制し、負極材料自体が有する容量を充分に活用可能とする発明が記載されている。
【0007】
特許文献3には、完全には黒鉛化していない易黒鉛化性炭素材料と黒鉛とからなる負極を用いて、大電流のパルス充放電を長期にわたり繰り返した場合においても、容量劣化および内部抵抗の増加を最小限に抑えることによって、長寿命化を可能とする発明が記載されている。
【0008】
特許文献4には、黒鉛と、低結晶性炭素材料で表面を修飾した黒鉛との混合負極を用いて、高い容量密度を維持し、入出力特性にも優れるリチウムイオン二次電池用負極炭素材を提供しようとする発明が記載されている。
【0009】
また、充電条件の制御によってリチウムイオン二次電池の容量を維持しようとする技術も提案されている。
【0010】
例えば、特許文献5には、電池残存容量検知部を用いて充電中の電池残存容量を検知したときに、追加の充電を行う発明が記載されている。
【0011】
また、特許文献6には、充放電の回数あるいはシステム据え付け後の経過時間および電圧値を計測し、充電回路の充電終止電圧(定電圧値)を段階的に予め設定された電圧値まで上昇させて、充電容量を増加させる制御に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許3068712号公報
【特許文献2】特許4069784号公報
【特許文献3】特許4215202号公報
【特許文献4】特開2009−117240号公報
【特許文献5】特開平7−79535号公報
【特許文献6】特開2000−23388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
電気自動車用または電力貯蔵用のリチウムイオン二次電池は、充電状態にて高温で放置される場合があり、このように放置されると放電容量(充放電容量)の低下が起こる。この低下した容量のうち、再充電できる容量とできない容量がある。本発明は、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命と保存特性を改善することができ、再充電できない放電容量の低減が可能なリチウムイオン二次電池システムと、これに利用されるリチウムイオン二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは上述の課題を解決するために鋭意検討し、正極と、炭素を含む負極と、非水電解質とを有する非水電解質二次電池(主にリチウムイオン二次電池である)、または複数個のそれらの電池からなる電池システムの放電曲線の経時的変化に着目した。そして、その放電曲線が変化したときに放電容量を回復させる充電制御を行う方法、およびその方法を実行するためのシステムを構築するに至った。
【0015】
上述の課題を解決する第一の手段は、正極と炭素を含む負極と非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池から構成されるリチウムイオン二次電池システムにおいて、充電制御パラメータに従って前記リチウムイオン二次電池を充電する充放電回路と、前記充放電回路を制御する演算処理部とを備え、前記演算処理部は、前記リチウムイオン二次電池の電池特性を求め、前記電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータの値を変更し、充電が終了したときに、前記充電制御パラメータを変更前の値に戻すことを特徴とする。
【0016】
第二の手段は、第一の手段のリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記演算処理部は、前記電池特性として電圧変化量と放電容量との比および前記放電容量の積算値を求め、前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータの値を変更し、充電が終了したときに、前記充電制御パラメータを変更前の値に戻すことを特徴とする。
【0017】
第三の手段は、第二の手段のリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記演算処理部は、前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻すことを特徴とする。
【0018】
第四の手段は、第一の手段のリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記演算処理部は、前記電池特性として温度の時間変化量と放電容量との比および前記放電容量の積算値を求め、前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻すことを特徴とする。
【0019】
第五の手段は、第一の手段のリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記演算処理部は、前記電池特性として電圧変化幅と初期電圧変化幅との比および前記放電容量の積算値を求め、前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻すことを特徴とする。
【0020】
第六の手段は、第一から第五の手段のリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記演算処理部は、着脱可能であることを特徴とする。
【0021】
第七の手段は、正極と、炭素を含む負極と、非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池において、前記負極は、黒鉛と非黒鉛炭素との混合物が負極活物質として用いられ、前記正極と前記負極とは、電圧変化量と放電容量との比が互いに異なることを特徴とする。
【0022】
第八の手段は、第七の手段のリチウムイオン二次電池において、定格容量まで充電したときに、前記負極活物質の単位重量当たりの充電容量密度が250〜330mAh/gであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量(充放電容量)の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による円筒形リチウムイオン二次電池の断面構造を示す図である。
【図2】本発明によるリチウムイオン二次電池システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明よる円筒形リチウムイオン二次電池の初期放電曲線である。
【図4】本発明よる円筒形リチウムイオン二次電池の充放電サイクル試験経過後の放電曲線である。
【図5】実施例1におけるリチウムイオン二次電池システムが実行する充放電制御プログラムの一例を示す。
【図6】実施例3におけるリチウムイオン二次電池システムが実行する充放電制御プログラムの一例を示す。
【図7】実施例4におけるリチウムイオン二次電池システムが実行する充放電制御プログラムの一例を示す。
【図8】実施例5におけるリチウムイオン二次電池システムが実行する充放電制御プログラムの一例を示す。
【図9】本発明によるリチウムイオン二次電池システムを適用した電気自動車の駆動系統の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明が対象とする非水電解質二次電池の代表例は、リチウムイオン二次電池である。なお、本明細書では、電解質を非水溶媒に溶解したものを「非水電解質」と呼ぶ。
【0026】
図1は、本発明による円筒形リチウムイオン二次電池の断面構造を示す図である。円筒形リチウムイオン二次電池は、正極10、セパレータ11、負極12、電池容器(「電池缶」と同義)13、正極集電タブ14、負極集電タブ15、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18、正温度係数(PTC、Positive temperature coefficient)抵抗素子19、および電池蓋20から構成される。電池蓋20は、内蓋16、内圧開放弁17、ガスケット18、およびPTC抵抗素子19からなる一体化部品である。
【0027】
正極10は、正極活物質、導電剤、バインダ、および集電体から構成される。正極活物質を例示すると、LiCoO、LiNiO、およびLiMnが代表例である。他に、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn12、LiMn2−x(ただし、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn、Ta、x=0.01〜0.2)、LiMnMO(ただし、M=Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Li1−xMn(ただし、A=Mg、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ca、x=0.01〜0.1)、LiNi1−x(ただし、M=Co、Fe、Ga、x=0.01〜0.2)、LiFeO、Fe(SO、LiCo1−x(ただし、M=Ni、Fe、Mn、x=0.01〜0.2)、LiNi1−x(ただし、M=Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca、Mg、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO、FeF、LiFePO、およびLiMnPOなどを列挙することができる。本実施例では、正極活物質にLiNi1/3Mn1/3Co1/3を選択した。ただし、本発明によるリチウムイオン二次電池は、正極材料に何ら制約を受けないので、正極活物質はこれらの材料に限定されない。
【0028】
正極活物質の粒径は、正極活物質、導電剤、およびバインダから形成される合剤層の厚さ以下になるように規定される。正極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級や風流分級などにより粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を作製する。
【0029】
また、正極活物質は、一般に酸化物系であるために電気抵抗が高いので、電気伝導性を補うための炭素粉末からなる導電剤を利用する。正極活物質と導電剤はともに粉末であるので、粉末にバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体へ接着させている。
【0030】
正極10の集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μmで孔径が0.1〜10mmのアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、または発泡金属板などが用いられる。アルミニウムの他に、ステンレスやチタンなどの材質も適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
【0031】
正極活物質、導電剤、バインダ、および有機溶媒を混合した正極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、またはスプレー法などによって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、正極10を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の合剤層を集電体に積層化させることも可能である。
【0032】
負極12は、負極活物質、バインダ、および集電体からなる。高レート充放電が必要な場合に、導電剤を添加することもある。本発明で使用可能な負極活物質としては、黒鉛と非黒鉛炭素のいずれか一方、または黒鉛と非黒鉛炭素の混合物を選択することができる。
【0033】
負極12に用いる黒鉛は、リチウムイオンを化学的に吸蔵・放出可能な天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェ−ズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、およびポリアクリロニトリル系炭素繊維などを原料として製造される。X線構造解析により測定された黒鉛層の間隔が0.335〜0.339nmであることが望ましい。
【0034】
また、負極12に用いる非黒鉛炭素は、上記の黒鉛を除く炭素材料であって、リチウムイオンを吸蔵または放出することができるものである。これには、黒鉛層の間隔が0.34nm以上であって、2000℃以上の高温熱処理により黒鉛に変化する炭素材料や、5員環または6員環の環式炭化水素や、環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料などが含まれる。黒鉛負極の放電曲線に対して異なる放電曲線を有する材料を、非黒鉛材料として選択することが望ましい。後述する実施例では、易黒鉛化炭素を非黒鉛炭素として用いている。
【0035】
黒鉛と非黒鉛炭素の重量比が0.5〜0.9になるように混合したものを負極活物質として負極12に用い、定格容量まで充電したときに、負極活物質全体の単位重量当たりの充電容量密度を250〜330mAh/gにすると、高容量な負極12であり、かつ、放電末期の電圧変化が緩やかになる。放電末期の電圧変化率(放電容量に対する電圧変化幅(電池電圧の変化量))が負極12と正極10との間で異なると、電池の放電電圧曲線の形状から、電圧変化率の高い方の電極の電位変化が電池の放電電圧に現れる。その結果、電池の放電末期の放電曲線から、いずれの電極が電池の放電終止を決定し、電池の放電容量を支配しているかを区別することができる。特に、正極10と負極12の自己放電電流が異なるときに、自己放電電流の大きな電極の充電レベルが放電側にシフトしたときに、電池の放電電圧曲線の形状が変化する現象が認められる。
【0036】
このように正極10と異なる電圧変化率を有する負極12に、リチウムと合金を形成する材料または金属間化合物を形成する材料を、第3の負極活物質として添加しても良い。第3の負極活物質としては、例えばアルミニウム、シリコン、スズ等の金属およびこれらの合金、リチウム含有の遷移金属窒化物Li(3−x)N、ケイ素の低級酸化物LiSiO(x≧0,2>y>0)、およびスズの低級酸化物LiSnOが挙げられる。第3の負極活物質の材料には特に制限がなく、上述の材料以外でも利用可能である。
【0037】
一般に使用される負極活物質は粉末であるため、それにバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体へ接着させている。本発明によるリチウムイオン二次電池の負極12では、負極活物質の粒径を、負極活物質およびバインダから形成される合剤層の厚さ以下にすることが望ましい。負極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級や風流分級などにより粗粒を除去し、合剤層厚さ以下の粒子を使用する。
【0038】
負極12の集電体には、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μmで孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、または発泡金属板などが用いられる。銅の他に、ステンレス、チタン、またはニッケルなどの材質も適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の集電体を使用することができる。
【0039】
負極活物質、バインダ、および有機溶媒を混合した負極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、またはスプレー法などによって集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥させ、ロールプレスによって加圧成形することにより、負極12を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、多層合剤層を集電体に形成させることも可能である。
【0040】
以上の方法で作製した正極10と負極12の間にセパレータ11を挿入し、正極10と負極12の短絡を防止する。セパレータ11には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系高分子シート、またはポリオレフィン系高分子と4フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた2層構造などを使用することが可能である。電池温度が高くなったときにセパレータ11が収縮しないように、セパレータ11の表面にセラミックスとバインダの混合物を薄層状に形成しても良い。これらのセパレータ11は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、一般に細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%であれば、リチウムイオン二次電池に使用可能である。
【0041】
このようなセパレータ11を正極10と負極12の間に挿入した電極群を製作する。電極群は、図1に示した円筒形状の他に、短冊状電極を積層したもの、または正極10と負極12を扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器13の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒形、偏平長円形状、角形などの形状を選択しても良い。
【0042】
電池容器13の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解質に対し耐食性のある材料から選択される。また、電池容器13を正極10または負極12に電気的に接続する場合は、非水電解質と接触している部分において、電池容器13の腐食やリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、電池容器13の材料の選定を行う。
【0043】
電池容器13に電極群を収納し、電池容器13の内壁に負極集電タブ15を接続し、電池蓋20の底面に正極集電タブ14を接続する。電解液は、電池の密閉の前に電極群に注入する。電解液の注入方法は、電池蓋20を解放した状態にて電極群に直接、添加する方法、または電池蓋20に設置した注入口から添加する方法がある。
【0044】
その後、電池蓋20を電池容器13に密着させ、電池全体を密閉する。電解液の注入口がある場合は、それも密封する。電池を密閉する方法には、溶接、かしめなど公知の技術がある。
【0045】
本発明で使用可能な電解液の代表例として、エチレンカーボネートにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなどを混合した溶媒に、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、またはホウフッ化リチウム(LiBF)を溶解させた溶液がある。本発明は、溶媒や電解質の種類、溶媒の混合比に制限されることなく、他の電解液も利用可能である。電解質は、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイドなどのイオン伝導性高分子に含有させた状態で使用することも可能である。この場合はセパレータ11が不要となる。
【0046】
なお、電解液に使用可能な非水溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1、3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、1、2−ジエトキシエタン、クロルエチレンカーボネート、またはクロルプロピレンカーボネートなどの非水溶媒がある。本発明の電池に内蔵される正極10または負極12上で分解しなければ、これ以外の溶媒を用いても良い。
【0047】
また、電解質の例としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、またはリチウムトリフルオロメタンスルホンイミドで代表されるリチウムのイミド塩など、多種類のリチウム塩がある。これらの塩を、上述の溶媒に溶解してできた非水電解液を電池用電解液として使用することができる。本発明の電池に内蔵される正極10または負極12上で分解しなければ、これ以外の電解質を用いても良い。
【0048】
固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合には、エチレンオキシド、アクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、メタクリル酸メチル、またはヘキサフルオロプロピレンのポリエチレンオキサイドなどのイオン導電性ポリマーを電解質に用いることができる。これらの固体高分子電解質を用いた場合、セパレータ11を省略することができる利点がある。
【0049】
さらに、イオン性液体を用いることができる。例えば、1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate(EMI−BF)、リチウム塩LiN(SOCF)2(LiTFSI)とトリグライムとテトラグライムの混合錯体、環状四級アンモニウム系陽イオン(N-methyl-N-propylpyrrolidiniumが例示される)とイミド系陰イオン(bis(fluorosulfonyl)imideが例示される)より、正極10と負極12にて分解しない組み合わせを選択して、本発明によるリチウムイオン二次電池に用いることができる。
【0050】
本発明によるリチウムイオン二次電池の形状は、図1に示した円筒形の他に、扁平楕円形や角形など、任意の形状としても良い。電池の形状は、本発明を実施する上で何ら影響を与えない。
【0051】
図2は、本発明によるリチウムイオン二次電池システムの構成例を示す図である。本発明によるリチウムイオン二次電池システムは、モジュール201、充放電回路210、および演算処理部209から構成される。
【0052】
モジュール201は、図1に示した円筒形のリチウムイオン二次電池(以下、「単電池」と称する)202を8個直列に接続したモジュールである。図1の電池蓋20は、図2では正極端子203として表示されている。正極端子203は、ブスバー204を介して、隣接する電池缶205に連結されている。図2では、4つの正極端子203と、4つの電池缶205があり、ブスバー204が3組の正極端子203と電池缶205の間を連結するように溶接されている。図中では下段の4個の電池に対して2個のブスバー204が取り付けられているが、上段の中央2個電池の電池にブスバーが配置されている。
【0053】
また、図2はモジュール201を正面から見た図であるが、モジュール201の反対側の面にもブスバーが4個設けられており(図示せず)、全体として8個の単電池202が直列に接続されている。8個の単電池202は、支持部品206によって固定されている。
【0054】
これらの直列接続された単電池202の正極側末端に正極外部端子207が接続され、負極側末端に負極外部端子208が設置されている。
【0055】
正極外部端子207と負極外部端子208は、電力線212を介して、単電池202の充電と放電の両方の制御を行う充放電回路210に連結されている。また、充放電回路210は、外部電力ケーブル214を介して、外部機器211に接続することができる。
【0056】
単電池202を充電する際には、外部機器211を直流用または交流用の外部電源とし、充放電回路210に電力を供給する。外部機器211が交流電源の場合は、充放電回路210にインバータ(AC−DC変換器)を付属させるか、外部電力ケーブル214の途中に外付けインバータを設置する。
【0057】
また、外部機器211を外部負荷に置き換え、モジュール201を放電させるように充放電回路210を動作させれば、外部機器211に電力を供給することができる。外部機器211が交流用電気機器であれば、外部電力ケーブル214の途中にインバータ(DC−AC変換器)を設けるか、予め充放電回路210にインバータ機能を付加しておく。
【0058】
このように充放電回路210を動作させることによって、モジュール201から電力を取り出したり、充電を行ったりすることができる。
【0059】
演算処理部209は、信号線213を介して充放電回路210に接続され、充放電回路210を制御する。具体的には、充放電回路210からモジュール201全体の電圧の計測値を信号として受信する。そして、受信した電圧信号に基づいて演算を行い、この演算結果に従って、単電池202を充電する際に用いる充電制御パラメータを変更させるための信号を、信号線213を介して、充放電回路210に送信する。
【0060】
充電制御パラメータとは、各単電池202またはモジュール201全体を充電するときの充電条件を表すパラメータであり、例えば、充電時間や充電電圧のことである。
【0061】
また、演算処理部209は、充放電回路210から着脱可能としても良く、システム内部に組み込んでも良い。以下の実施例では、演算処理部209を充放電回路210に隣接するように配置して、システム内部に組み込んだ。
【0062】
なお、ここでは、演算処理部209は、モジュール201全体の電圧の計測値を、信号線212、充放電回路210、および電力線213を介して受信するとした。演算処理部209または充放電回路210に各単電池202の電圧を計測する信号線を接続して、各単電池202の電圧信号を個別に演算処理部209に取り込んで演算処理を行うことも可能である。
【0063】
また、単電池202に熱電対やサーミスタ等の温度計測手段を設置し、計測した温度の信号を別に設けた信号線を介して充放電回路210または演算処理部209に取り込むようにすれば、単電池202の温度を演算・処理することが可能である。この場合も、各単電池202の温度を個別に計測し、演算処理部209で演算・処理することができる。
【0064】
さらに、演算処理部209は、充放電回路210を介して、モジュール201の充放電時間、休止時間(スタンバイ時間)、および不使用時間をそれぞれ計測して積算し、積算時間に応じた演算や処理を行うことができる。演算処理部209に、このような時間の計測・積算機能を付与しても良い。また、電池の容量低下に影響がない場合は、モジュール201の休止時間または不使用時間を積算時間から省いても良い。
【0065】
また、単電池202やモジュール201の容器の状態を示す任意の信号(電圧、電流、温度等の物理的信号を意味する)を、別に設けた信号線を介して、充放電回路210または演算処理部209に取り込むことで、単電池202の状態に応じた充放電制御が可能となる。例えば、モジュール201の内部に送風する場合や冷媒を循環させる場合に、風や冷媒を送る補機の動力(消費電力)やモジュール201の容器と単電池202の間の空間の温度などを、信号線を介して、充放電回路210または演算処理部209に取り込むことが可能である。
【0066】
次に、演算処理部209が、単電池202の電圧信号等に基づいて、充放電回路210に信号を送り、充電制御パラメータを変更させるときの動作原理を説明する。
【0067】
ニッケル、マンガン、コバルトの固溶体となるLiNi1/3Mn1/3Co1/3を正極活物質に用い、天然黒鉛と易黒鉛化炭素を負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池(単電池)を作成した。負極活物質の組成は、天然黒鉛と易黒鉛化炭素の重量比率を90:10とした。このリチウムイオン二次電池に対し、1時間率相当の電流値(15A)で充電を開始し、4.2Vの定電圧にて1時間の充電を行った。
【0068】
図3は、このリチウムイオン二次電池を0.5時間率の条件(放電電流として7.5A)で放電したときの初期放電曲線である。横軸は放電容量を、縦軸は電池電圧を示している。放電は、前述の充電上限電圧4.2V付近より始まり、わずかなステージ状の波形を示しながら、定格容量15Ah付近より電圧が急激に低下し、放電終止電圧2.5Vにて終了した。
【0069】
本実施例の正極と負極を組み合わせた電池において、放電容量が15Ah付近にて放電曲線の電圧変化が顕著になることが特徴的である。放電曲線の形状から、正極の電圧変化を顕著に反映していることがわかっている。
【0070】
電池の電圧は、正極と負極の電位差である。したがって、電池の放電曲線における正極電位と負極電位の寄与の様子は、正極と負極のそれぞれについて、リチウム金属を対極と参照極とした3極式試験セルを用いて、正極または負極の放電曲線から把握することができる。
【0071】
正極の放電容量と電位の関係を示す放電曲線は、以下の手順によって得られる。まず、上記の電池放電曲線と同じ電流密度になるように、正極を放電させ、放電曲線を得る。この放電曲線を、実際の電池に用いた正極の面積当たりに換算した放電容量と電位の曲線に変換する。この曲線での放電末期の変化が、電池の放電末期に現れる。一般的に、負極に不可逆容量があるために、電池の放電電圧は、正極の放電電位の低下によって規定値に到達する。
【0072】
負極の自己放電が進行すると、しだいに負極の充電レベルが下がってくるため、電池の放電終了電圧が負極の放電電位で決まる場合がある。このような電池の内部の状態変化を把握するために、上記の3極式試験セルを用いた試験によって、負極の放電容量と電位の曲線を得ておく必要がある。負極の充電レベルが下がると、負極の放電末期の電位変化が電池の放電末期の曲線に現れてくる。電池の放電曲線の変化から、電池の放電終止が負極の電位上昇によって支配されていることを判定することができる。
【0073】
次に、上記の電池を15Ahの容量まで充電し、それを開回路の状態にて50℃の恒温槽に保管した。60日経過後に恒温槽より電池を取り出し、放電から充放電サイクル試験を行った。
【0074】
図4は、本発明よる円筒形リチウムイオン二次電池に対し、充放電サイクル試験経過後に放電曲線が安定になったときに得た放電曲線である。横軸は放電容量を、縦軸は電池電圧を示している。図3と比較して明らかに異なる点は、放電容量が約10%減少したことと、放電末期の放電曲線、すなわち12Ah以上の放電容量における放電曲線が変化していることである。この変化が負極の放電末期の電位変化に酷似していることから、電池の放電終止は、負極電位の上昇に支配されていることがわかった。
【0075】
放電容量が減少したのは、50℃の保存試験によって、自己放電反応により負極に吸蔵されているリチウムイオンと電解液が反応し、充放電に寄与するリチウムイオンが失活したことが主な原因である。この反応により負極の充電レベルが低下する。また、これらの反応は、負極表面被膜を成長させてリチウムイオンの拡散を阻害させたり、負極活物質粒子同士の接触を悪化させて電子の流れを阻害させたりする。この結果、電池の放電容量(充放電容量)が減少すると考えられている。
【0076】
したがって、実際のシステムにおいて、完全に放電させる運転モードがあれば、放電容量の減少により電池の状態を診断することができる。
【0077】
放電末期の放電曲線が変化したのは、上記の負極の自己放電容量が正極の自己放電容量よりも大きいため、保存試験中に負極の充電レベルが放電側にシフトしたためと推定される。負極が、正極に比べて放電側に徐々にシフトすると、電池全体の放電曲線に負極の放電末期の曲線の形状が現れ始める。
【0078】
図4のグラフの縦軸は、電池電圧であり、正極の電位と負極の電位の差で与えられている。負極の放電曲線は、放電初期は数十mV付近の低い電位にある。したがって、負極の電位は、図示していないが、図4の縦軸では0V付近となる。
【0079】
この負極が放電されるにつれて、徐々に電位が上昇する。すなわち、負極の電位は、放電容量の増加とともに、図4の縦軸の上方に移動する。その結果、図4に示した電池電圧は、放電容量の増加とともに徐々に小さくなっていく。
【0080】
負極の放電末期では、電圧の上昇が顕著となる。負極の顕著な電圧上昇が、図4の放電曲線では、電池電圧の低下として現れている。実際のシステムにおいて電池電圧変化の有無を判断する方法として、放電容量の単位ステップ(制御回路が監視しようとする刻み値)に対する電池電圧の変化量、または単位時間当たりの電池電圧の変化量を用いれば、電池を完全に放電しなくても、図4に示したような放電末期の曲線を予測することができる。
【0081】
図4に示すように、自己放電によって顕著な容量低下が起こったときには、放電末期の電池の放電曲線が変化する場合がある。これは、正極材料や負極材料によらずに、同様な変化を観察することができるので、放電曲線の変化から電池の状態を診断することができる。
【0082】
このような放電曲線の変化の原因は、負極または正極のいずれかの自己放電電流(自己放電反応の速度に同じ)が大きいためである。通常は、負極上の電解液の分解反応が正極上の電解液の分解反応よりも速いので、負極の自己放電電流が大きい。その結果、負極の充電レベルが放電側にシフトするために、放電末期の放電曲線に負極の電位が影響し始める。なお、負極と正極の自己放電電流が同じであれば、再充電により負極と正極の充電レベルを同じに揃えることができるため、放電末期の放電曲線に変化は現れない。ただし、この自己放電により電解液を消費するので、いずれ電解液の枯渇による充放電不良をもたらす。したがって、上述の再充電は、充放電に必要な量の電解液が電池に存在しているときまで可能であることに留意する。ただし、図1に示した電池蓋20に開閉可能な電解液注液口を設ければ、電解液を補充することができるので、上述の制約を受けることなく継続的に再充電をすることが可能となる。
【0083】
逆に、正極の自己放電電流が大きくなる条件になれば、放電末期の放電曲線に正極の電位変化に由来する変化が現れてくる。すなわち、正極と負極に用いた活物質の種類と、電解液の組成との組み合わせによって、放電曲線は影響を受けることになる。
【0084】
次に、放電容量の低下が起こったときに、放電容量を回復させる手段について説明する。発明者らは、放電容量の低下が正極と負極の自己放電速度の差が原因である場合、電極活物質自身は失活していないにもかかわらず、充電できないために電池容量が低下することを突き止めた。これは、電池を放置しているときに、正極に対して負極の電位がより放電側にシフトし、再充電する際に正極中のリチウムイオンが先に空になってしまい、正極が満充電になるからである。
【0085】
一般的に、負極の自己放電電流は正極の自己放電電流よりも大きい。特に電池の初期の状態では、負極の自己放電による電池の容量低下が進行する。しかし、負極が徐々に自己放電して電位が放電側にシフトした場合、負極電位の上昇に伴い電解液の分解反応速度が遅くなる。充電終止電圧を変更しなければ、負極の電位上昇に伴い、逆に正極は高い電位まで充電されることになり、正極の電位が上昇する。これにより、正極上の電解液分解速度が速くなり、ついには負極上の電解液分解速度を上回る。
【0086】
本発明は、電池の放電末期における放電曲線の変化から負極の電位を予測し、正極の自己放電電流が負極の自己放電電流よりも大きくなるような条件下で電池を充電することによって、正極と負極の充電レベルの差を縮小させるものである。充電レベルが初期の状態に近づくことによって、電池の容量を回復させることができる。発明者らは、正極と負極の自己放電反応速度の違いによって充電レベルがずれてしまったときに、両極の充電レベルを揃える方法を見出した。その一つの手段として、容量ずれが拡大したときに選択的に充電時間の延長を行って、容量ずれを縮小させることができる。
【0087】
従来技術によると、電池の電圧を高くすることによって、充電容量を増加する方法がとられている。この方法によると、正極上での電解液の分解が加速されるので、電解液分解ガスが電池内に早く蓄積するようになり、電池内圧の上昇による安全機構が作動してしまう。また、電解液分解が促進されるので、電解液不足に陥ってしまう。
【0088】
また、充電終了時の電池電圧が低いときに再充電を行う方法によると、充電終了の判断のための時間が必要であり、その累積時間が大きくなる問題がある。判断時間を含めた全充電時間が長くなると、高い充電レベルになっている状態が継続されるので、電解液の分解が促進され、電池の劣化を回避することができない。さらに、充電終了時間際の電圧変化は、非常に小さい。したがって、例えば、図3や図4の充電側では、数十mVの範囲での変化を検知し、充電時間を制御しなければならない。計測精度を高めようとすると、充電後の休止時間を長くする必要があり(通常は数十分である)、それは前述の充電時間の延長をもたらす。
【0089】
本発明は、従来技術と全く異なる方式によるものである。本発明では、電池の放電容量または放電曲線の変化から電池特性を求め、この電池特性から電池の状態を判断し、充電条件を変化させて容量を回復させることにした。電池特性を求めるのに必要な量としては、例えば、放電曲線、放電容量、電圧、温度が挙げられる。これらの量以外にも、電池の放電可能容量を反映する量を測定すれば、いずれの測定値を用いても、電池特性を求めることができる。
【0090】
電池特性の例として、完全に放電することができるときには電池の放電容量を、完全放電の途中で放電容量を予測するときには電池の放電電圧の変化率などを用いることができる。以下に述べる実施例では、電池特性として、電圧変化量(電圧変化幅)と放電容量との比、温度の時間変化量(温度変化幅)と放電容量との比、電圧変化幅と初期電圧変化幅との比、および放電容量の積算値を用いる。これらの他に、特定周波数におけるインピーダンスや、特定の直流電流のオンオフ時の電圧変化幅などの電池特性を利用することも可能である。
【0091】
電池特性の値と予め設定した管理値との大小関係を求めて、電池の容量低下量を見積もり、充電制御パラメータを変更することができる。本明細書では、充電制御パラメータを変更するための条件、すなわち、電池特性の値と管理値との大小関係のことを、充電制御パラメータ変更条件と呼ぶ。充電制御パラメータ変更条件は、充電制御パラメータが複数ある場合は、それぞれの充電制御パラメータに対して設定することができる。充電制御パラメータ変更条件については、以下に述べる各実施例で具体的に説明する。
【0092】
電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしている場合には、演算処理部209(図2参照)は、充放電回路210に、充電制御パラメータを変更するための信号を送信する。この信号を受けた充放電回路210は、充電制御パラメータを変更し、新たな充電条件にて各単電池202またはモジュール201全体を充電する。充電が終了したとき、演算処理部209は、充電制御パラメータを変更前の値に戻すための信号を充放電回路210に送信する。この信号を受けた充放電回路210は、充電制御パラメータを元の値に復帰させ、通常の充電を行う。
【0093】
以上に述べた演算処理は、マイコン等にて実行することができる。
【0094】
本発明によるリチウムイオン二次電池システムでは、このように電池の容量低下を放電過程で検知することによって、充電時間の不必要な延長を回避し、短時間で容量回復を図ることができる。これにより、最低限の充電時間の延長で、効率良く電池を充電することが可能となる。
【0095】
ここで、充電時間の延長による容量回復のメカニズムについて説明する。発明者らは、電池の自己放電反応の詳細を研究した結果、負極の自己放電反応速度は、充電レベルが高いときには正極の自己放電反応速度よりも速いが、負極の充電レベルが下がったときには正極よりも遅くなることを突き止めた。
【0096】
そこで、電池の容量が低下したときに充電時間を長くすれば、負極と正極の自己放電電流が一致するまで、負極の充電レベルが回復することがわかった。そして、回復した後には、充電時間を元の時間に戻し、不必要に充電時間を長くすることなく、電解液分解等による電池の容量低下を回避することができることを見出した。
【0097】
以上で説明した本発明の内容を踏まえ、それぞれ具体的な実施例を示し、本発明の効果を明らかにしていく。なお、本発明の要旨を変更しない範囲で、具体的な構成材料や、部品などを変更しても良い。また、本発明の構成要素を含んでいれば、公知の技術を追加したり、公知の技術で置き換えたりすることも可能である。
【実施例1】
【0098】
図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池(単電池)を8個直列に接続し、図2に示したモジュール201を組み立てた。このモジュール201に、充放電回路210、演算処理部209、外部機器(給電負荷装置)211等を接続し、図2に示したリチウムイオン二次電池システムを構成した。リチウムイオン二次電池の負極活物質の組成は、天然黒鉛と易黒鉛化炭素の重量比率を90:10とした。正極活物質は、LiNi1/3Mn1/3Co1/3である。
【0099】
なお、本実施例は本発明の有効性を確認するための試験であるので、外部機器211として外部電源または外部負荷を取り付ける代わりに、電力の供給と消費の両方の機能を兼ね備えた給電負荷装置を用いた。給電負荷装置を用いることは、電気自動車等の電気車両や工作機械、または分散型電力貯蔵システムやバックアップ電源システムなどの実使用時と比較して、本発明の効果に相違をもたらすものでない。
【0100】
また、組み立て初期における1個のリチウムイオン二次電池(単電池)の放電曲線は、図3に示した通りである。
【0101】
本システム組み立て直後の充電試験は、充放電回路210から正極外部端子207と負極外部端子208へ1時間率相当の電流値(15A)の充電電流を流し、33.6Vの定電圧にて1時間の充電を行った。ここで設定した定電圧値は、先に述べた単電池の定電圧値4.2Vの8倍の値である。モジュールの充放電に必要な電力は、外部機器(給電負荷装置)211より供給した。
【0102】
放電試験は、充電試験の時とは逆向きの電流を正極外部端子207と負極外部端子208から充放電回路210に流して、外部機器(給電負荷装置)211にて電力を消費させた。放電電流は、0.5時間率の条件(放電電流として30A)とし、正極外部端子207と負極外部端子208の端子間電圧が20Vに達するまで放電させた。なお、以下の説明では、充電または放電の電流値は、1時間率での電流15Aを基準として表記する。
【0103】
このような充放電試験条件にて、単電池202は、充電容量15.0Ah、放電容量14.9Ahの初期性能を得た。本実施例のシステムをS1とする。
【0104】
図5に、本発明によるリチウムイオン二次電池システムが実行する充放電制御プログラムのフローチャートを示す。図5は、モジュール201を放電している途中で、予め定めた周期時間にて放電容量ΔQを読み取り、そのときの電圧変化幅(電池電圧の変化量)ΔVを測定し、ΔVとΔQの比から電池の状態を検知するプログラムの典型例を表している。周期時間は1秒としたが、本発明の効果が得られる範囲で変更可能である。
【0105】
まず、S501で、外部から放電を開始するための信号トリガを演算処理部209に与え、演算処理部209が充放電回路210に放電指令を与える。信号トリガの例としては、電気自動車ではアクセルを踏み込んだときに発信される信号が、分散型電力貯蔵システムではタイマーやボタンスイッチのようなユーザーがシステムに与えることのできる信号が挙げられる。信号の発信の方法には、あらゆる公知の技術を使うことができる。
【0106】
また、充放電回路210が外部からの信号トリガを直接受けて放電を開始しても良い。
【0107】
放電指令の後、S502で、演算処理部209はモジュール201の放電容量ΔQを読み取る。放電容量ΔQは、周期時間ごとに放電容量を測定し、その変化量として読み取る。
【0108】
さらに、S503にて、モジュール201を構成するすべての単電池202の電圧を読み取る。電圧を読み取るときの周期時間を1秒、0.5時間率時の演算処理部209の計測きざみ幅を8mAhとし、単電池202の電圧変化幅ΔVを計測することができる。図3または図4に示した電圧曲線で説明すると、例えば、放電容量10Ah以降における電圧変化幅を演算処理部209にて計算することになる。ΔVとΔQの比である電圧変化率(ΔV/ΔQ)は、演算処理部209において計算される(S504)。図4の放電末期の電圧変化から、その積算値の増加とともにΔV/ΔQが増加することがわかる。
【0109】
本実施例で例示した周期時間や放電容量ΔQの計測パラメータは、任意の値に設定することができる。また、放電容量ΔQの積算値は、モジュール201に流れている電流値と時間(ここでは周期時間に同じ)の積として計算される。放電容量ΔQを計測する電子素子は、公知の部品により構成される。
【0110】
同時に、S503で、演算処理部209は、周期時間ごとに電池の電圧変化幅ΔVを測定する。電池電圧は、モジュール201全体の電圧、すなわち端子間電圧(正極外部端子207と負極外部端子208との間の電圧)であっても良いし、単電池の電圧を求めても良い。後者の場合は、各単電池の平均値をΔVとすることとする。ただし、容量減少の大きな単電池を早期の段階で検知して、容量回復処理を行う必要があるときには、電圧変化の大きな単電池を選択し、その値をΔVとすると、より望ましい効果が得られる。ΔVの大きな電池は、各単電池のΔVを測定した後に最大値を求めるプログラムを組み込めば、ΔVの大きな電池を容易に検知することができる。
【0111】
より簡便な方法として、ある特定の位置に配置された単電池を選定し、その電池の電圧変化幅ΔVを測定することにしても良い。例えば、モジュール201の中で高温になりやすい領域があれば、その中にある単電池が容量低下を起こしやすいので、その単電池の電圧変化幅ΔVを監視する。
【0112】
次に、S504で、ΔVとΔQの比、すなわち電圧変化率ΔV/ΔQを演算処理部209で計算する。ΔVとΔQの関係は、多項式で表しても良く、指数関数、対数関数など任意の関数で表すことができる。電池の容量低下の有無を判断できる関数であれば、本発明の実施に関数の制約はない。
【0113】
S505で、演算処理部209は、電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしているか判断する。S505での電池特性は、ΔV/ΔQであり、充電制御パラメータ変更条件は、管理値αを用いて、ΔV/ΔQ≧αである。すなわち、演算処理部209にてΔV/ΔQと管理値αとの大小関係を判断する。
【0114】
電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしていない場合、すなわち、ΔV/ΔQがαよりも小さい場合は、容量低下が問題となるレベルに達していないと判定し(noと判断される)、S502に戻る。電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしている場合、すなわち、ΔV/ΔQがα以上の場合は、容量低下が問題となるレベルに達していると判定され(yesと判断される)、S506に進む。
【0115】
管理値αは、任意に定めることのできる値であり、電池の容量と寿命のバランスや所望する劣化度に基づいて予め決めておく。また、正極と負極の材料や組み合わせに応じて変えることもできる。
【0116】
S506でも、演算処理部209は、電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしているか判断する。S506での電池特性は、電池の放電容量の積算値Qaであり、充電制御パラメータ変更条件は、管理値βを用いて、Qa≦βである。すなわち、演算処理部209にて放電容量の積算値Qaと管理値βとの大小関係を判断する。これは、図3のように電池容量がほとんど低下せず、Qaが定格容量近くまで放電されて電圧が降下した場合と、図4のように電池容量が低下して、定格容量よりも小さい放電容量で電圧が降下した場合を区別するための判断ステップである。Qaがβより大きいときが前者であり、Qaがβ以下のときが後者に対応する。
【0117】
電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしている場合、すなわち、Qaがβ以下の場合は、S507へ移行する。電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしていない場合、すなわち、Qaがβよりも大きいときは、S507を省略してS508へ進み、放電を終了させる。
【0118】
管理値βは、管理値αと同様に、任意に定めることのできる値であり、電池の容量と寿命のバランスや所望する劣化度に基づいて予め決めておく。また、正極と負極の材料や組み合わせに応じて変えることもできる。
【0119】
S506での処理は、図3に示した放電末期の急激な電圧変化と、図4に示した放電末期の緩やかな電圧変化とを区別する処理である。
【0120】
S506での処理を詳しく説明する。S506では、S501からS506での判断時までの放電容量の積算値Qaを用いる。Qaは、電流値と時間(ここでは周期時間に同じ)の積として計算される。放電容量を計測する電子素子は、公知の部品により構成される。
【0121】
なお、本実施例では、αを0.7V/Ah、βを14Ahとし、S507の処理を、図4の緩やかな電圧変化を検知して行うようにし、誤って図3の急峻な電圧変化を検知しないようにした。
【0122】
S507では、演算処理部209が充電制御パラメータを変更する。本実施例では、一例として、通常の充電時間tをΔtだけ延長するように充電制御パラメータを変更する。すなわち、充電時間をtからt+Δtに変更する。ここで、tは、電池容量が問題とならないと判断されるときの、後で説明する定電流充電と定電圧充電の合計時間とする。tを定電圧充電の時間としても、本発明の効果を得ることができる。定電圧充電の時間が、放電容量の回復に寄与するからである。Δtは、予め定めておく。本実施例では、tは、定電流充電と定電圧充電の合計時間とし、1.5時間とした。Δtは0.5時間とした。
【0123】
S508で、放電停止指令が外部より発信され、充放電回路210がモジュール201の放電を停止させる。
【0124】
なお、S502からS507の処理の途中で、ユーザーが外部から任意の時に放電停止指令を与え、S501からS508へ直接的に移行しても良い。この場合は、S507の処理を行わず、充電条件(図5の例では充電時間)は変更されない。
【0125】
S509で外部より充電指令が与えられると、S510で定電流充電が始まる。この充電指令の例としては、電気自動車ではブレーキ踏み込み等の制動信号等による外部トリガであり、分散型電力貯蔵システムではタイマーやボタンスイッチのようなユーザーがシステムに与えることのできる信号である。信号の発信の方法には、あらゆる公知の技術を使うことができる。なお、本発明によるリチウムイオン二次電池システムを電気自動車に適用した例は、実施例6にて説明する。
【0126】
S510で、予めモジュール201に設定している定電圧設定値に、モジュール201の端子間電圧が達すると、S511に移行して定電圧充電が始まる。
【0127】
S511では、充電時間が所定の時間に達するまで定電圧充電が継続される。この所定の時間とは、S507での処理が行われた場合は、S507で定めた充電時間t+Δtであり、S507での処理が行われなかった場合は、充電時間tである。この所定の時間にて、定電流充電(S510)と定電圧充電(S511)が行われることになる。
【0128】
S512では、充電時間がこの所定の時間に達したとき、演算処理部209は、充電停止指令を充放電回路210に送信し、充電が終了する。
【0129】
S513では、充電が終了したときに、充電時間をtにする。すなわち、S507での処理が行われた場合は、充電時間をt+Δtからtに戻し、S507での処理が行われなかった場合は、充電時間をtのままにする。
【0130】
充電終了後には、ユーザーが放電指令を演算処理部209に与えて、図5に示した一連の処理を再開させることができる。
【0131】
電池の容量低下が小さく、Qaがβよりも大きい場合には、充電時間はtのままであり、図5の一連の処理が繰り返される。S513の処理は、過剰な充電を回避し、電池の容量低下を防止するために有効である。
【0132】
以上に述べた充放電制御プログラムを演算処理部209で実行させて充放電回路210を動作させ、モジュール201の充放電サイクル試験を繰り返した。その結果、1000サイクル経過時点での単電池の放電容量は、14.4〜14.8Ahを維持していた。
【0133】
本実施例では、演算処理部209を充放電回路210に隣接するように配置してシステム内部に組み込んだ。充放電サイクルの頻度が小さい場合には、演算処理部209を動作させる必要性が低く、定期的な保守のときに電池の状態を調べれば十分である。そこで、演算処理部209を充放電回路210から着脱可能とし、必要なときだけ充放電回路210に接続するようにする。このようにすると、通常の使用時には、演算処理部209が接続されていないので、リチウムイオン二次電池システムがコンパクトになるという利点がある。
【0134】
演算処理部209が着脱可能なリチウムイオン二次電池システムでは、保守のときに、外部通信ケーブルを用いて、演算処理部209を充放電回路210に接続する。モジュール201の充放電を実行し、電池の状態を調べる。その結果、電池容量が低下しているときは、演算処理部209から図5のS506に示したような充電制御パラメータの変更の命令信号を充放電回路210に送信し、モジュール201の放電容量を回復させる。放電容量の回復後に、演算処理部209をシステムから切り離す。このようにすれば、充放電サイクルの頻度の低い用途のときに、システムに演算処理部209を設置する必要がなくなり、システムのコストダウンに役立つ。
【実施例2】
【0135】
実施例2では、実施例1のリチウムイオン二次電池とは負極活物質の組成のみ異なり、他は同じであるリチウムイオン二次電池を5種類製作した。表1に、製作した5種類のリチウムイオン二次電池について、負極活物質である天然黒鉛(A)と易黒鉛化炭素(B)の重量組成を列挙する。各種類のリチウムイオン二次電池を8個製作し、同一種類の電池を8個直列に接続してモジュールを組み立てて、図2に示したリチウムイオン二次電池システムを5種類、製作した。このシステムのそれぞれに対し、図5に示した充放電制御プログラムを実行する演算処理部209を用いて、実施例1と同じ条件にて1000サイクルの充放電試験を行った。充放電試験後の電池容量と容量維持率は、表1に記載した。
【0136】
【表1】

【0137】
表1から、電池容量の増加には天然黒鉛(A)の組成が高いほど有利であることがわかる。これは、図4で示した放電曲線において、放電末期の電圧降下幅が、易黒鉛化炭素(B)の組成の増加につれて大きくなるためである。
【0138】
寿命の観点では、易黒鉛化炭素(B)の組成が高いほど優れている。これは、図4の放電曲線において、放電末期の電圧降下幅が大きいので、図5に示したフローチャートのS503において、ΔVの検出が容易になるためと考えられる。
【0139】
したがって、高容量であり、かつ、容量維持率の高い組成を選択すると、天然黒鉛(A)の組成が50〜90%であるのが好適である。ただし、本発明は、黒鉛の組成が上記の好適組成範囲を外れたときに適用できない訳ではなく、好適組成範囲が必須の条件ではない。電池システムに要求される電池容量または容量維持率の要求値以上を達成できるのであれば、好適組成範囲を外れても良い。
【0140】
(比較例1)
図2に示したモジュール201を用い、本発明による演算処理部209を使用せず、通常の充放電条件のみを繰り返すことのできるリチウムイオン二次電池システムを製作した。負極活物質の組成は、実施例1と同様に、天然黒鉛と易黒鉛化炭素の重量比率を90:10とした。本比較例のシステムの充放電制御プログラムでは、図5のS502〜S506を実行しない。
【0141】
演算処理部209を使用せず、上述のように充放電制御プログラムを変更した条件にて、モジュール201の充放電サイクル試験を行った。その結果、1000サイクル経過時点での単電池202の放電容量は、12.7〜13.1Ahまで低下した。
【0142】
(比較例2)
図2に示したモジュール201を用い、本発明による演算処理部209を使用しないリチウムイオン二次電池システムを製作した。負極活物質の組成は、実施例1と同様に、天然黒鉛と易黒鉛化炭素の重量比率を90:10とした。本比較例のシステムでは、充放電回路210にマイコンを接続し、このマイコンによって充放電制御プログラムを実行して充放電を制御する。
【0143】
本比較例のシステムの充放電制御プログラムでも、図5のS502〜S506を実行しない。本比較例の充放電制御プログラムでは、モジュール201の端子間電圧が33.6Vに達した後に1時間の定電圧充電を行い、15分の休止時間を設ける。15分経過後の電圧が33.2V未満(すなわち単電池当たりで4.15V未満)であるときには、さらに1時間の追加の充電を行う。このように、モジュール端子間電圧が33.2Vに達するまで、1時間の定電圧充電と15分の充電休止を繰り返す。モジュール端子電圧が33.2V以上になれば、充電を終了させる。
【0144】
上述の充放電制御プログラムで充放電回路210を制御させて、モジュール201の充放電サイクル試験を行った。その結果、1000サイクル経過時点での単電池202の放電容量は、12.0〜12.5Ahまで低下した。容量低下が大きくなった理由は、満充電付近にて充電終止電圧を計測するための休止時間が累積し、電池の容量低下が促進されたためと考えられる。
【0145】
(比較例3)
図2に示したモジュール201を用い、本発明による演算処理部209を使用しないリチウムイオン二次電池システムを製作した。負極活物質の組成は、実施例1と同様に、天然黒鉛と易黒鉛化炭素の重量比率を90:10とした。本比較例のシステムでも、充放電回路210にマイコンを接続し、このマイコンによって充放電制御プログラムを実行して充放電を制御する。
【0146】
本比較例のシステムの充放電制御プログラムでも、図5のS502〜S506を実行しない。本比較例の充放電制御プログラムでは、モジュール201の端子間電圧が33.6Vに達した後に1時間の定電圧充電を行い、15分の休止時間を設ける。15分経過後の電圧が33.2V未満(すなわち単電池当たりで4.15V未満)であるときには、充電電圧を34.4V(単セル当たり4.3V)に高くして、さらに1時間の追加の充電を行う。このように、モジュール端子間電圧が33.2Vに達するまで、1時間の定電圧充電と15分の充電休止を繰り返す。モジュール端子電圧が33.2V以上になれば、充電を終了させる。
【0147】
上述の充放電制御プログラムで充放電回路210を制御させて、モジュール201の充放電サイクル試験を行った。その結果、1000サイクル経過時点での単電池202の放電容量は、11.3〜11.7Ahまで低下した。容量低下が大きくなった理由は、定電圧充電の電圧が高いために、電解液分解反応または正極活物質の結晶変化が加速されたためと考えられる。
【実施例3】
【0148】
実施例1と同様に、図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池(単電池)を8個直列に接続し、図2に示したモジュール201を組み立てた。このモジュール201に、充放電回路210、演算処理部209、外部機器(給電負荷装置)211等を接続し、図2に示したリチウムイオン二次電池システムを構成した。また、組み立て初期における1個のリチウムイオン二次電池(単電池)の放電曲線は、図3に示した通りである。
【0149】
本システム組み立て直後の充電試験と放電試験は、実施例1と同様に行った。この充放電試験条件にて、単電池202は、充電容量15Ah、放電容量14.8〜14.9Ahの初期性能を得た。本実施例のシステムをS2とする。
【0150】
図6に、本実施例での充放電制御プログラムのフローチャートを示す。本実施例での充放電制御プログラムは、実施例1で示した充放電制御プログラム(図5)とほぼ同様の構成をとり、以下の説明で特記していない記号および技術的機能は、実施例1と同様である。以下では、実施例1の充放電制御プログラムと異なる箇所のみを説明する。
【0151】
S601〜S606までの処理は、実施例1の充放電制御プログラムのS501〜S506と同じであり、ステップ番号も互いに対応している。
【0152】
S607では、演算処理部209が充電制御パラメータを変更する。本実施例では、一例として、通常の充電電圧(定電圧充電時の充電電圧)VをΔvだけ高くなるように充電制御パラメータを変更する。すなわち、充電電圧をVからV+Δvに変更する。ここで、Vは、初期の電池の充電電圧に等しい。Δvは、充電電圧の調整幅であり、予め定めておく。なお、ここで用いたΔv(小文字)は、実施例1の電池電圧変化幅ΔV(大文字)と異なることに注意されたい。
【0153】
S608〜S612までの処理は、実施例1の充放電制御プログラムのS508〜S512と同じであり、ステップ番号も互いに対応している。ただし、S611での定電圧充電は、先に変更した充電電圧V+Δvで所定時間(t)になるまで行い、所定時間になると、S612で充電が終了する。
【0154】
S613では、充電が終了したときに、充電電圧をVにする。すなわち、S607での処理が行われた場合は、充電電圧をV+ΔvからVに戻し、S607での処理が行われなかった場合は、充電電圧をVのままにする。
【0155】
本実施例では、Vは33.6Vとし、Δvは0.4V(単セル当たり50mVの増加)に制限した。定電流充電と定電圧充電の合計時間は、1.5時間とした。また、管理値αは0.7V/Ah、管理値βは14Ahとした。
【0156】
電池の容量低下が小さく、Qaがβよりも大きい場合には、充電電圧はVのままの33.6Vになっているので、過剰な充電を回避し、電池の容量低下を防止することができる。
【0157】
以上に述べた充放電制御プログラムを演算処理部209で実行させて充放電回路210を動作させ、モジュール201の充放電サイクル試験を繰り返した。その結果、1000サイクル経過時点での単電池202の放電容量は、13.8〜14.2Ahを維持していた。
【実施例4】
【0158】
実施例1と同様に、図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池(単電池)を8個直列に接続し、図2に示したモジュール201を組み立てた。このモジュール201に、充放電回路210、演算処理部209、外部機器(給電負荷装置)211等を接続し、図2に示したリチウムイオン二次電池システムを構成した。また、組み立て初期における1個のリチウムイオン二次電池(単電池)の放電曲線は、図3に示した通りである。
【0159】
本実施例では、熱電対またはサーミスタを各単電池202の側面中央部に張り付け、8個の電池の側面温度を測定し、側面温度の信号を演算処理部209に取り込む。演算処理部209は、8個の温度データの平均値を計算し、平均温度と放電容量の時間変化を監視する充放電制御プログラムを実行する。
【0160】
本システム組み立て直後の充電試験と放電試験は、実施例1と同様に行った。ただし、放電試験において、放電電流は、0.25時間率の条件(放電電流として60A)とし、正極外部端子207と負極外部端子208の端子間電圧が20Vに達するまで放電させた。この充放電試験条件にて、単電池202は、充電容量15Ah、放電容量13.7〜14.0Ahの初期性能を得た。本実施例のシステムをS3とする。
【0161】
図7に、本実施例での充放電制御プログラムのフローチャートを示す。本実施例での充放電制御プログラムは、モジュール201を放電している途中で、予め定めた周期時間にて放電容量ΔQと温度変化幅(電池平均温度の時間変化量)ΔTを読み取り、ΔTとΔQとの比から電池の状態を検知する。周期時間は1秒としたが、本発明の効果が得られる範囲で変更可能である。
【0162】
本実施例での放電制御プログラムは、実施例1で示した充放電制御プログラム(図5)とほぼ同様の構成をとり、以下の説明で特記していない記号および技術的機能は、実施例1と同様である。以下では、実施例1の充放電制御プログラムと異なる箇所のみを説明する。
【0163】
S701およびS702の処理は、実施例1の充放電制御プログラムのS501およびS502にそれぞれ対応する。
【0164】
S703では、演算処理部209は、S702で放電容量ΔQを読み取るのと同時に、周期時間ごとに電池の温度変化幅ΔTを測定する。
【0165】
次に、S704で、ΔTとΔQの比、すなわちΔT/ΔQを演算処理部209で計算する。ΔTとΔQの関係式は、多項式で表しても良く、指数関数、対数関数など任意の関数で表すことができる。電池の容量低下の有無を判断できる関数であれば、本発明の実施に関数の制約はない。
【0166】
S705で、演算処理部209は、電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしているか判断する。S705での電池特性は、ΔT/ΔQであり、充電制御パラメータ変更条件は、管理値γを用いて、ΔT/ΔQ≧γである。すなわち、演算処理部209にてΔT/ΔQと管理値γとの大小関係を判断する。
【0167】
電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしていない場合、すなわち、ΔT/ΔQがγよりも小さい場合は、容量低下が問題となるレベルに達していないと判定し(noと判断される)、S702に戻る。電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしている場合、すなわち、ΔT/ΔQがγ以上の場合は、容量低下が問題となるレベルに達していると判定され(yesと判断される)、S706に進む。
【0168】
管理値γは、実施例1の管理値αと同様に、任意に定めることのできる値であり、電池の容量と寿命のバランスや所望する劣化度に基づいて予め決めておく。また、正極と負極の材料や組み合わせに応じて変えることもできる。本実施例では、管理値γは、図3に示した放電曲線の放電容量13Ahにて1.2℃/Ahとした。なお、13Ahにおける初期のΔT/ΔQは1.0℃/Ahであった。
【0169】
S706の処理は、実施例1の充放電制御プログラムのS506と同じである。
【0170】
S707では、実施例1のS507と同様に、演算処理部209が充電制御パラメータを変更する。すなわち、充電時間を、Δtだけ長くなるように、tからt+Δtに変更する。本実施例では、tは定電流充電と定電圧充電の合計時間を意味し、1.5時間とした。Δtは0.5時間とした。
【0171】
S708〜S713までの処理は、実施例1の充放電制御プログラムのS508〜S513にそれぞれ対応している。
【0172】
以上に述べた充放電制御プログラムを演算処理部209で実行させて充放電回路210を動作させ、モジュール201の充放電サイクル試験を行った。充放電サイクル試験は、1000サイクル経過時点で終了させた。実施例1に記載のように1時間率の充電を行った後に2時間率の放電容量を測定し、1000サイクルの充放電サイクル試験前後の放電容量を同一条件にて比較した。その結果、この充放電サイクル試験後でも、単電池202は、試験前の放電容量13.7〜14.1Ahを維持していた。
【0173】
なお、S707で、充電制御パラメータの変更として、充電時間をtからt+Δtに変更したが、実施例3のS607と同様に、充電電圧をVからV+Δvに変更してもよい。この場合、S708〜S713までの処理は、実施例3のS608〜S613と同じである。
【実施例5】
【0174】
実施例1と同様に、図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池(単電池)を8個直列に接続し、図2に示したモジュール201を組み立てた。このモジュール201に、充放電回路210、演算処理部209、外部機器(給電負荷装置)211等を接続し、図2に示したリチウムイオン二次電池システムを構成した。
【0175】
本実施例での演算処理部209は、モジュール201の運転時間を積算する機能を有し、運転時間Δtaqとして記録している。モジュール201の運転時間とは、モジュール201が実際に充放電している時間と休止時間(スタンバイ時間)、およびモジュール201の不使用時間を、全て積算した時間である。電池の容量低下に影響がないと判断する場合は、モジュール201の休止時間または不使用時間を省略しても良い。
【0176】
なお、不使用時間の計測は、モジュール201に残存容量が残っており、演算処理部209に電力を供給できるときのみとした。残存容量が残っていないときは、演算処理部209に電力を供給できないので、不使用時間の積算を行わない。このように不使用時間の計測を省略しても、実質的に問題とならない。なぜならば、残存容量がないことは単電池202が十分に放電されていることと同義なので、このような場合は、電解液の分解等の副反応が極めて起こりにくいからである。
【0177】
充放電試験条件は実施例1と同じとし、1時間率の充電と2時間率の放電を行った。このような充放電試験条件にて、単電池202は、充電容量15.0Ah、放電容量14.9Ahの初期性能を得た。本実施例のシステムをS4とする。
【0178】
図8に、本実施例での充放電制御プログラムのフローチャートを示す。本実施例の充放電制御プログラムは、実施例1で示した充放電制御プログラム(図5)と比較すると、S802〜S805およびS807が異なっており、他は実施例1と同様である。以下では、実施例1と異なるS802〜S805およびS807について説明する。以下の説明で特記していない記号および技術的機能は、実施例1と同様である。
【0179】
図8のS802〜S804では、モジュール201を放電している途中に、予め定めた周期時間にて、運転時間Δtaq、放電容量ΔQ、電圧変化幅ΔVをそれぞれ、逐次読み取っていく。周期時間は1秒としたが、本発明の効果が得られる範囲で変更可能である。
【0180】
S804では、ΔQの積算値が予め定めた規定値に到達したときに、その時点での電圧変化幅ΔVを測定する。また、初めて電圧変化幅ΔVを測定した時に限り、ΔVを電圧変化幅の初期値(初期電圧変化幅)ΔVinとして演算処理装置209に記録しておく。初期電圧変化幅ΔVinは、モジュール201を実際に使用開始するとき(すなわち、工場出荷時の)電圧変化幅であり、電池が劣化していない初期状態の電圧変化幅である。
【0181】
S805で、演算処理部209は、電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしているか判断する。S805での電池特性は、ΔV/ΔVinであり、充電制御パラメータ変更条件は、管理値δを用いて、ΔV/ΔVin≧δである。すなわち、演算処理部209にてΔV/ΔVinと管理値δとの大小関係を判断する。
【0182】
電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしていない場合、すなわち、ΔV/ΔVinがδよりも小さい場合は、容量低下が問題となるレベルに達していないと判定し(noと判断される)、S802に戻る。電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしている場合、すなわち、ΔV/ΔVinがδ以上の場合は、容量低下が問題となるレベルに達していると判定され(yesと判断される)、S806に進む。
【0183】
本実施例では、単電池202の放電容量が13Ah、演算処理部209の計測きざみ幅が8mAhとなるときにおいて、ΔVinを6mVに設定した。すなわち、2時間率の放電電流が7.5A、毎秒の放電容量が2mAhとなるので、ΔVが毎秒1.5mV以上変化するようになったときに、S806に進んで充電条件(図8の例では充電時間)が変更される。
【0184】
管理値δは、実施例1の管理値αと同様に、任意に定めることのできる値であり、電池の容量と寿命のバランスや所望する劣化度の限界値に基づいて予め決めておく。管理値δは、ΔQの値によって変化するので、計測条件に応じて調整する。また、正極と負極の材料や組み合わせに応じて変えることもできる。本実施例では、電圧計測誤差のマージンを10%とし、管理値δを1.1に設定した。
【0185】
次に、S807の説明をする。S807では、演算処理部209が充電制御パラメータを変更する。本実施例では、一例として、通常の充電時間tをΔt+Δt’だけ延長するように充電制御パラメータを変更する。すなわち、充電時間をtからt+Δt+Δt’に変更する。ここで、Δtは予め定めた時間延長分であり、Δt’は、S802で読み取ったΔtaqに応じて補正される時間延長分である。運転時間Δtaqが数日から1ヵ月程度の短期間の放置期間を含む場合は、Δt’は、ゼロまたはΔtよりも極めて小さな数値とし、不必要な時間も充電を行わないようして、電池の容量低下を防止する。Δtaqが1ヵ月以上の長期の放置を含み、大きな値になった場合には、Δt’を正の値に設定する。
【0186】
電池の容量低下が小さく、Qaがβよりも大きい場合には、充電時間はtのままであるので、過剰な充電を回避し、電池の容量低下を防止することができる。
【0187】
以上に述べた充放電制御プログラムを演算処理部209で実行させて充放電回路210を動作させ、モジュール201の充放電サイクル試験を行った。その結果、1000サイクル経過時点での単電池202の放電容量は、13.8〜14.3Ahを維持していた。
【0188】
なお、S807で、充電制御パラメータの変更として、充電時間をtからt+Δtに変更したが、実施例3のS607と同様に、充電電圧をVからV+Δvに変更してもよい。この場合、S808〜S813までの処理は、実施例3のS608〜S613と同じである。
【実施例6】
【0189】
図9を用いて、本発明によるリチウムイオン二次電池システムを電気自動車に適用した実施例を説明する。図9は、本実施例で説明する駆動システムを搭載した電気自動車の構成を示す図である。
【0190】
実施例5で説明したのと同一仕様のモジュールを12セット製造し、これらのモジュールを直列接続して、バッテリー920を製作した。そして、電気自動車と同じ構成の駆動システムを、バッテリー920、ハンドル921、制御装置922、アクセル923、信号ケーブル924、変換器925、および電力ケーブル926を用いて製作した。なお、電気自動車のモーター927と車輪928は、充放電装置に置き換えた。この充放電装置は、図2に示した外部機器211に対応するものであり、モジュール201からの電力を消費し、回生エネルギーをモジュール201に供給する。また、制御装置922は、実施例1に示した演算処理部209を有している。
【0191】
この駆動システムを用いて、電気自動車にバッテリー920を搭載したときと同じ運転試験を実施した。バッテリー920は、電気自動車の車体底部に設置することができる。
【0192】
運転者がハンドル921を操作した場合またはアクセル923を踏み込んだ場合、制御装置922は、信号ケーブル924を介して変換器925に信号を伝達する。変換器925は、制御装置922から伝達された信号の演算処理を行い、バッテリー920からの出力を増減して、電力ケーブル926を介してモーター927の消費電力量を制御し、車輪928の加速または制動を行うことができる。加速時にはバッテリー920に蓄えられた電気エネルギーを消費し、制動時には電気エネルギーを取り込む(いわゆる回生を行う)ことができる。
【0193】
実施例1〜5で説明したように、本発明によるリチウムイオン二次電池システムは実際の電気自動車の運転および保管の使用条件を模擬している。したがって、本発明の電池を適用した電気自動車は、バッテリー920への充電容量を大きくでき、また、環境温度が高くなっても充電可能な容量の低下率を低く抑えることが可能となる。長期に渡ってモジュールの容量を高く維持できるため、作製したバッテリー920は、高温環境下においても長寿命な特性を安定して得ることができる。
【0194】
なお、実施例6では電気自動車への適用例を説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されず、例えば、電力貯蔵用途の定置式電力貯蔵システムに適用することもできる。この場合にも、長期に渡ってモジュールの容量を高く維持でき、高温環境下においても長寿命な特性を安定して得ることができる。
【符号の説明】
【0195】
10…正極、11…セパレータ、12…負極、13…電池容器、14…正極集電タブ、15…負極集電タブ、16…内蓋、17…内圧開放弁、18…ガスケット、19…正温度係数抵抗素子、20…電池蓋、201…モジュール、202…リチウムイオン二次電池(単電池)、203…正極端子、204…ブスバー、205…電池缶、206…支持部品、207…正極外部端子、208…負極外部端子、209…演算処理部、210…充放電回路、211…外部機器、給電負荷装置、212…電力線、213…信号線、214…外部電力ケーブル、920…バッテリー、921…ハンドル、922…制御装置、923…アクセル、924…信号ケーブル、925…変換器、926…電力ケーブル、927…モーター、928…車輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と炭素を含む負極と非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池から構成されるリチウムイオン二次電池システムにおいて、
充電制御パラメータに従って前記リチウムイオン二次電池を充電する充放電回路と、
前記充放電回路を制御する演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、
前記リチウムイオン二次電池の電池特性を求め、
前記電池特性が充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータの値を変更し、
充電が終了したときに、前記充電制御パラメータを変更前の値に戻す、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池システム。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記電池特性として電圧変化量と放電容量との比および前記放電容量の積算値を求め、
前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータの値を変更し、
充電が終了したときに、前記充電制御パラメータを変更前の値に戻す、請求項1記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、
充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻す、請求項2記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項4】
前記演算処理部は、
前記電池特性として温度の時間変化量と放電容量との比および前記放電容量の積算値を求め、
前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、
充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻す、請求項1記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項5】
前記演算処理部は、
前記電池特性として電圧変化幅と初期電圧変化幅との比および前記放電容量の積算値を求め、
前記比および前記積算値がそれぞれに対する前記充電制御パラメータ変更条件を満たしたと判断したときに、前記充電制御パラメータである定電圧充電の時間または電圧を増加させ、
充電が終了したときに、前記定電圧充電の時間または電圧を変更前の値に戻す、請求項1記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項6】
前記演算処理部は、着脱可能である請求項1〜5のいずれか1項記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項7】
正極と、炭素を含む負極と、非水電解質とを有するリチウムイオン二次電池において、
前記負極は、黒鉛と非黒鉛炭素との混合物が負極活物質として用いられ、
前記正極と前記負極とは、電圧変化量と放電容量との比が互いに異なることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
定格容量まで充電したときに、前記負極活物質の単位重量当たりの充電容量密度が250〜330mAh/gである請求項7記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−165453(P2011−165453A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26097(P2010−26097)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】