説明

リニア振動モータの駆動制御方法

【課題】低コスト、且つ、効率よく巻線へ電流を流す駆動制御を行う。
【解決手段】振幅検出部7が、非通電期間中に起電圧のサンプリングを行い、その中での最大点により振幅を算出する。これにより、サンプリング時間が多少ずれても十分に振幅を検出でき、次の巻線1への通電タイミングまでの時間に余裕がある。このため効率の良いタイミングで巻線へ通電することができ、モータ駆動の効率化、省電力化となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動式の電気かみそりに適用して好適な、可動子に往復動を行わせるリニア振動モータの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁石又は永久磁石からなる固定子と、永久磁石又は電磁石を有する振動子と、電磁石の巻線に供給する駆動電流を制御する制御部とを備え、固定子に対し振動子を往復振動させるリニア振動モータが知られている。このリニア振動モータでは、振幅を一定に保つために、振動子の振幅の変位,速度,又は加速度を検出する必要がある。このような背景から、従来のリニア振動モータは、電磁石の巻線へ電流を流さない非通電期間を設け、この非通電期間において振動子の振幅の変位,速度,又は加速度を検出する。
【特許文献1】特開2001−16892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電磁石の巻線に効率よく電流を流そうとする場合、非通電期間が短時間となり、逆に非通電期間を十分設けようとすると、電磁石の巻線に電流を流すタイミングが効率よく電流を流すタイミングよりも遅れてしまう。また振動子の振幅の変位,速度,又は加速度を短時間で検出をするためには、精度の高い外部発振を用いたマイコンによる駆動制御を行う必要があり、コストの低減や回路のサイズダウンへの対応が困難になる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低コスト、且つ、効率よく巻線へ電流を流す駆動制御を行うことが可能なリニア振動モータの駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るリニア振動モータの駆動制御方法は、電磁石又は永久磁石からなる固定子と、永久磁石又は電磁石を有する振動子と、電磁石の巻線への駆動電流を制御する制御部とを備え、固定子に対し振動子を往復振動させるリニア振動モータの駆動制御方法であって、電磁石の巻線に駆動電流が流れていない非通電期間を1/4周期以上設け、非通電期間内において振動子の振動に伴い巻線に発生する起電圧を検出し、検出された起電圧に基づいて振動子の変位,速度,又は加速度を検出し、検出された振動子の変位,速度,又は加速度に基づいて巻線への駆動電流を電流供給タイミングも含め最適に制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るリニア振動モータの駆動制御方法によれば、低コスト、且つ、効率よく巻線へ電流を流す駆動制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となるリニア振動モータ及びその駆動制御方法について説明する。
【0008】
本発明の実施形態となるリニア振動モータは、図1に示すように、巻線1を有する固定子2と、永久磁石3を有する振動子4と、振動子4を保持するフレーム5と、振動子4とフレーム5との間に懸架されたバネ6a,6bと、巻線1に生じる起電圧から振動子4の振幅を検出する振幅検出部7と、振幅検出部7の検出結果に基づいて巻線1への駆動電流をPWM制御する制御出力部8とを備える。振幅検出部7は、図2に示すように、巻線1の両端電圧を増幅回路11で増幅し、比較回路12でゼロ電圧の基準電圧V0と比較して同電圧となった時間T0を振幅の折り返し点として判断する。制御出力部8はこの折り返し点より1/4周期以上巻線1に駆動電流が流れていない非通電期間を設け、振幅換算部14はこの非通電期間中に周期的に巻線1の起電圧のサンプリングを行い、その中での最大点により振幅を算出する。
【0009】
従来のリニア振動モータでは、図5に示すように、折り返し点の時間T0と起電圧がある一定の電圧V1になる時の時間T1の2点の時間差で振幅を判断していたが、その期間はとても短いため、測定誤差やノイズの影響を受けやすく精度のよい検出方法ではなかった。これに対し本発明の実施形態となるリニア振動モータでは、振幅換算部14が非通電期間中に起電圧のサンプリングを行い、その中での最大点により振幅を算出するので、サンプリング時間が多少ずれても十分に振幅を検出することができる。また次の巻線1への通電タイミングまでの時間に余裕があるため、本発明の実施形態となるリニア振動モータによれば、効率の良いタイミングで巻線へ通電することができ、モータ駆動の効率化、省電力化が可能となる。
【0010】
なお効率の良い通電タイミングとしては、変位最大点より1/20周期以内、又は速度最大点より1/4周期以内に巻線1へ通電することが望ましい。また振幅最大点又は速度最大点をマイコンを用いて検出することにより、より正確なタイミングで巻線1へ通電することができる。またマイコンを用いて制御する場合、サンプリングタイミングが多少ずれても正確な振幅が検出できるため、低精度の発振回路を用いたり、マイコンの内部発振クロックを用いても従来より精度の良いリニア振動モータの制御が可能である。
【0011】
またマイコンを用い、且つ、非通電期間が長いので、変位最大点の検出期間を従来より長く設定することができる。例えば、変位最大点の検出期間を従来より100マイクロ秒以上長い300マイクロ秒に設定することにより、急峻な負荷変動により変位最大点が遅れた場合でも変位最大点を見失うことなく、リニア振動モータの制御が可能となる。
【0012】
巻線1に通電するインバータ回路を構成する上下段のスイッチング素子Q1,Q2(図2参照)を用いて巻線1への駆動電流をPWM制御することは一般的ではあるが、非通電期間が半サイクルである制御において、さらに上段のスイッチング素子Q1をWPWM制御してもよい。このような制御によれば、モータに対するスイッチングのタイミングを同じに保つことが可能となり、負荷の変動によって通電電流量を調整した場合においても効率の良いタイミングで電流を供給することができる。
【0013】
図6に示す電池電圧換算回路15によって電池Vccの電圧の状態をリアルタイムに検出し、その検出値により制御出力部8にて振幅補正制御を行う。Q1,Q2の制御を電圧によらず一定にしていると電圧の高いときには電流が多くなり振幅が増えてしまうが、このような電圧フィードバックを行う構成によれば、電池容量の多少による電圧の違いに関わらず一定の振幅で制御することができる。
【0014】
または、図2に示すように電池電圧換算回路15によって比較回路12の基準電圧を補正することにより、電池Vccの電圧による振幅変化を抑えるようにしてもよい。制御出力部8が電圧によらず制御を一定にしていると、電池電圧の高いときには電流が多くなり振幅が増えてしまい、逆に電池電圧の低い時は電流が少なくなり振幅が小さくなる。しかし、基準電圧の補正を行えば電圧の高い時は振動子の速度を高く検知するため速度を抑える制御を行い、電圧の低い時は振動子の速度を低く検知するため速度を高くする制御を行うことができる。そのため、適切な補正を行えば電池電圧による振幅への影響を相殺することができ、電圧の違いに関わらず一定の振幅で制御することができる。
【0015】
また万一リニア振動モータで高負荷状態が一定時間継続した場合、非通電期間に検出した起電圧の最大点が所定の基準電圧以下になるので、その状態を異常と判断し、駆動を停止させるようにしてもよい。また異常状態の判断として、巻線1への通電電流を用いて、ある基準以上の電流が一定時間流れ続けることを検知して判断しても良い。
【0016】
電池電圧が基準電圧以下に低下した場合に突然リニア振動モータを停止させると、例えば除毛器具の場合、髭を挟んだ状態で停止する可能性があり危険なので、上段のスイッチング素子Q1のデューティを徐々に低下させ緩やかに停止させることが望ましい。
【0017】
またリニア振動モータへの電流の供給を一方向に限定する場合には図2のように巻線1に通電するインバータ回路として上下段のスイッチング素子Q1,Q2を設けたハーフブリッジ回路を用いることができるので、スイッチング素子数を削減することによるコストダウン及びサイズダウンを行うことができる。図4はハーフブリッジ回路を示す。このハーフブリッジ回路のグランドと巻線1のプラス側間にダイオードD2、巻線1のマイナス側と電源Vcc間にダイオードD1を接続することにより、巻線1に流れる電流を回生し、リニア振動モータを効率的に駆動できる。
【0018】
またこの際、下段のスイッチング素子Q2を半サイクルより長くオンさせることにより、巻線1に流れる電流を効果的に利用するとともに、ダイオードD1に流れる電流を少なくすることが出来るため定格の小さい安価な部品を用いることができる。
【0019】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態(例えば固定子が完全に固定されていない可動固定子を用いたアクチュエータを用いて実施される場合等)、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態となるリニア振動モータの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す振幅検出部と電源回路の構成を示し電池電圧の状態による補正を基準電圧の補正にて行う回路図である。
【図3】巻線の起電圧の測定タイミングを説明するための波形図である。
【図4】図2に示す電源回路の応用例の構成を示す回路図である。
【図5】従来の巻線起電圧の測定タイミングを説明するための波形図である。
【図6】図1に示す振幅検出部と電源回路の構成を示し電池電圧の状態による補正を制御出力部で行う回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1:巻線
2:固定子
3:永久磁石
4:振動子
5:フレーム
6a,6b:バネ
7:振動検出部
8:制御出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石又は永久磁石からなる固定子と、永久磁石又は電磁石を有する振動子と、電磁石の巻線への駆動電流を制御する制御部とを備え、固定子に対し振動子を往復振動させるリニア振動モータの駆動制御方法であって、電磁石の巻線に駆動電流が流れていない非通電期間を1/4周期以上設け、当該非通電期間内において振動子の振動に伴い巻線に発生する起電圧を検出し、検出された起電圧に基づいて振動子の変位,速度,又は加速度を検出し、検出された振動子の変位,速度,又は加速度に基づいて巻線への駆動電流を制御することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記振動子の変位最大点を周期の基点として、当該基点から1/20周期以内に巻線に駆動電流を供給することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記振動子の速度最大点を周期の基点として、当該基点から1/4周期以内に巻線に駆動電流を供給することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項4】
請求項2項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、変位最大点の検出期間を300マイクロ秒以上にすることを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記巻線に供給する駆動電流を制御するインバータ回路を構成するスイッチング素子のオン時間の開始タイミングと終了タイミングを一定にし、その時間内でスイッチング制御することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記非通電期間内において前記巻線に駆動電流を供給する電源の電圧を検出し、検出結果に基づいて電源電圧の変化に伴う前記振動子の振幅制御を補正することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記非通電期間内において前記巻線に駆動電流を供給する電源の電圧を用いて振幅検出部の比較回路の基準電圧を補正し、前記振動子の振幅制御を補正することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記非通電期間に検出された起電圧の最大点が所定値以下である状態が所定時間継続した場合、駆動を停止することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記巻線に所定値以上の駆動電流が所定時間以上流れ続けた場合、駆動を停止することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記巻線に駆動電流を供給する電源の電圧が所定値以下である場合、前記巻線に供給する駆動電流を制御するインバータ回路を構成するスイッチング素子のデューティを徐々に低下させることにより駆動を徐々に停止させることを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のうち、いずれか1項に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記巻線に供給する駆動電流を制御するインバータ回路として1組の上段及び下段のスイッチング素子からなるハーフブリッジ回路を用いることを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記ハーフブリッジ回路において接地準位と巻線の正極側間、及び電源と巻線の負極側間にダイオードを接続することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のリニア振動モータの駆動制御方法において、前記下段のスイッチング素子の通電期間として半サイクルを超えた時間を設定することを特徴とするリニア振動モータの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−240045(P2009−240045A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81955(P2008−81955)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】