説明

リン酸ドープ電解質膜およびその製造方法並びにそれを含む燃料電池

【課題】低温域から高温域の広い温度範囲で、従来のスルホン化ポリイミド電解質膜、リン酸ドープポリイミド電解質膜に比べ高いプロトン伝導性を有し、膜安定性、ガスバリア性にも優れた固体高分子電解質膜を提供する。
【解決手段】スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールのブレンド電解質膜にリン酸をドープすることにより固体高分子電解質膜を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとを含むリン酸ドープ電解質膜、その製造方法およびこのリン酸ドープ電解質膜を含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水の電気分解の逆動作に基づく動作原理により電気エネルギーを得る装置である、燃料電池では、一般に、天然ガス、メタノール、石炭などの燃料を改質して得られる水素と、空気中の酸素とを送り込むことによって、水が生成すると共に、直流電力が得られる。この燃料電池は発電効率が高く、次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めている。燃料電池は、小型化による効率の低下がなく、廃熱を利用するコージェネレーションシステムや廃熱を用いてタービンを動かして発電する複合発電とすることで、燃料の高い総合利用効率が可能である。その中で、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell;PEFC)は、150℃以下の比較的低温で作動し、電解質が固体で制御が容易で、高電流密度を得ることができるといった点から自動車や定置型電源、携帯用電源への応用が期待されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は、図1に示すように、固体高分子電解質膜1の両面にガス拡散電極層2、3を接合した全固体型構造を有している。空気極2と燃料極3とは、外部回路5(負荷4)によって接続されている。空気極2側に酸素または空気、燃料極3側に水素を供給すると、燃料極3側では、水素が酸化されてプロトンと電子を生成する。プロトンは、水分子を伴ってイオン交換膜1中を移動し、対極の空気極2で外部回路5(負荷4)から供給された電子とともに酸素の還元に使われて、水を生成する。
【0004】
固体高分子型燃料電池は、前述のような長所を有しているものの、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)などの電池構成材料が高価であること、固体高分子電解質膜が含水状態で良好な伝導性を持つため、イオン交換膜の水分管理が必要であることなどの短所を有している。そして、今後の燃料電池普及のためには、さらなる電池性能の向上とコストダウンが不可欠である。特に自動車用PEFCに用いられる高分子電解質膜には、−30℃の低温から120℃の高温までの広い温度域、かつ低加湿、もしくは無加湿条件下において、0.1Scm-1以上の高いプロトン伝導性が求められている。100℃を超える高温での作動は、一酸化炭素による触媒被毒に対する耐性向上やプロトン伝導性の向上、熱管理が容易である点などさまざまな利点がある。しかし、現在広く用いられているパーフルオロスルホン酸であるNafion(登録商標)(デュポン製)は、ガラス転移温度が約120℃と低く、100℃以上ではプロトンチャネル構造が崩れてしまい、結果として性能が顕著に低下してしまうため、自動車用燃料電池等の100℃以上での高温での使用には適さない。この他にもコストや高い燃料クロスオーバーなどの改善すべき問題点が存在するため、代替膜の研究が盛んに行われている。
【0005】
前記Nafionに代表されるパーフルオロスルホン酸膜における欠点を克服するため、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。このような芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子材料は、Nafionに比べ安価に製造可能である。その中で、スルホン化ポリイミドは高い熱的安定性と機械的強度、高い成膜性、スルホン酸の導入の容易さから、高性能材料の候補として期待され、種々のスルホン化ポリイミドが提案されている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1参照)。しかし、スルホン化ポリイミドは、フッ素系電解質膜に見られるようなチャネル構造を形成していないため、プロトン伝導性を向上させるためにはスルホン酸基量を増加させなければならない。しかし、スルホン酸基量の増加は、膜の膨潤と機械的強度の低下と加水分解安定性や酸化安定性の低下につながる。そこで、親水性ドメインを制御し、ブロック共重合体とすることでイオン交換容量を抑えたまま、高いプロトン伝導性を示すことが報告されている。さらにプロトン輸送に水を媒体とすることから、低加湿下で伝導性が低下する問題がある。
【0006】
そこで、低加湿下においても高いプロトン伝導性を示す電解質としてリン酸ドープポリベンズイミダゾールなどが注目されている(例えば、特許文献6、7、非特許文献2、3参照)。ポリベンズイミダゾールは高い熱的、化学的安定性を有しており、イミダゾール基に含まれるヘテロ原子により、リン酸などの強酸をドープすることが可能である。そして、リン酸ドープポリベンズイミダゾールは、高温、無加湿条件下で高いプロトン伝導性を示す。しかし、低温ではプロトン伝導性が顕著に低下してしまうため、高温域での作動に限られる。またポリベンズイミダゾール自体にイオン伝導特性がないため、ドープするリン酸量が多く必要である。リン酸ドープ量を増加すると、膜安定性の低下とガス透過性の急激な増加が起きてしまう。一方、スルホン酸基を含有するポリベンズイミダゾールにリン酸をドープすることで、少ないリン酸ドープ量で優れたプロトン伝導性が期待されたが、燃料電池として十分な性能には達していない。したがって、高温域におけるプロトン伝導性および膜安定性のさらなる向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表200−510511号公報
【特許文献2】特開2002−358978号公報
【特許文献3】特開2005−232236号公報
【特許文献4】特開2005−272666号公報
【特許文献5】特開2007−302741号公報
【特許文献6】米国特許第5525436号明細書
【特許文献7】特開2006−339064号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Membrane Science 329(2009)146−152
【非特許文献2】Progress in Polymer Science 34(2009)449−477
【非特許文献3】Journal of Power Sources 160(2006)175−180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、スルホン化ポリイミドは高温・低加湿下ではプロトン輸送媒体である水がほとんど存在しないため、プロトン伝導性の低下が免れない。一方、ポリベンズイミダゾールは低温でのプロトン伝導性の低下や、高い伝導性を示すためには高いリン酸ドープ量が必要され、これは膜安定性の低下とガス透過性などの問題が挙げられる。このように、固体高分子型燃料電池の実用化のためには、広温度域において高いプロトン伝導性を有すると共に、低加湿下においても高い膜安定性、ガスバリア性など、優れた特性を有する電解質膜が望まれる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、前記問題のない、すなわち100℃以下の温度、例えば30℃のような低温域から100℃を超える、例えば120℃のような高温域のいずれの温度域においても従来のものに比べ高いプロトン伝導性を示し、また膜安定性、ガスバリア性も優れた高分子電解質膜を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、前記特性を有する高分子電解質膜を製造する方法、および前記特性を有する高分子電解質膜を含む燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の高分子電解質膜、その製造方法および燃料電池に関する。
(1)スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとリン酸を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0013】
(2)前記リン酸は、スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとからなる膜にドープされることにより含まれていることを特徴とする上記(1)記載の固体高分子電解質膜。
【0014】
(3)上記(1)または(2)に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(1)で表されるスルホン化ポリイミドであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、R2は、スルホン酸基を有する、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、R3は、少なくとも1つの芳香環を有する、スルホン酸基を有しない2価の基を表し、nは1以上の整数、mは0または1以上の整数である。)
【0017】
(4)上記(1)または(2)に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(2)で示される繰り返し単位からなる主鎖と、下記式(3)で示される繰り返し単位からなる側鎖を含むグラフト型ポリイミドであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Xは水素または下記式(3)を繰り返し単位として含む構造を表し、繰り返し単位中のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、かつ、各繰り返し単位どうしにおけるXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
【化3】

【0021】
(5)前記スルホン化ポリイミドがスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の固体高分子電解質膜。
【0022】
(6)上記(1)または(2)に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化4】

(式中、Aはスルホン酸基を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、Bはスルホン酸基を有するポリイミド側鎖を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、Cは置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族基を表し、mおよびnは1以上の整数であり、rは0または1以上の整数であり、Yは1以上の数である。)
【0023】
(7)上記(6)に記載の固体分子電解質膜において、前記主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂は、m/(n+r)が90/10〜10/90の範囲にあり、ランダムまたはブロック重合体であることを特徴とする固体分子電解質膜。
【0024】
(8)上記(6)または(7)に記載の固体高分子電解質膜において、前記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂の基Bを構成するスルホン酸基を有するポリイミド側鎖が、下記式(5)で表わされる基であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化5】

(式中、Rは、スルホン酸基を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、xは1以上の数を表す。)
【0025】
(9)上記(6)〜(8)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、グラフト側鎖の重量平均分子量と、主鎖の重量平均分子量の比が、
0.01<Mw(グラフト側鎖)/Mw(主鎖)<20
であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0026】
(10)上記(6)〜(9)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、主鎖ポリマーに対する側鎖ポリマーのグラフト率が、
1<グラフト率<100
であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0027】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、前記ポリベンズイミダゾールが下記式(6)で表されるポリベンズイミダゾールであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、R4は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、R5は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、nは1以上の整数である。)
【0030】
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールの比が、ポリイミダゾールがスルホン化ポリイミドに対し1〜99重量%であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0031】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜において、リン酸がスルホン化ポリイミドとポリイミダゾールの合計重量に対し、1〜500重量%であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0032】
(14)スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとの混合溶液から形成されたスルホン化ポリイミドとポリイミダゾールからなる電解質膜にリン酸をドープすることを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
【0033】
(15)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の固体高分子電解質膜を用いた燃料電池。
【発明の効果】
【0034】
前述したように、高分子電解質膜には、広温度域かつ低加湿下での高いプロトン伝導性が求められている。しかし、スルホン化ポリイミドおよびポリイミダゾールは単独で用いた場合、これらのすべての条件を満たすことは困難である。また、スルホン化ポリイミド単独膜へのリン酸ドープにおいては膜の収縮が激しい。本発明においては、スルホン化ポリイミドに塩基性ポリマーであるポリベンズイミダゾールをブレンドすることにより、膜形態をフラットに保ったままリン酸ドープを行うことが可能となった。また、本発明のリン酸ドープスルホン化ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンド膜は、低温から中温域において従来公知のスルホン化ポリイミド膜に比べより高いプロトン伝導性を示し、さらに高温域でも、従来公知のリン酸ドープポリベンズイミダゾール膜に比べより高いプロトン伝導性を示す。
【0035】
これにより本発明が限定されるものではないが、その理由は次のとおりと考えられる。すなわち、本発明では高IEC(イオン交換容量)を有するスルホン化ポリイミドを用いることで、スルホン酸基のプロトン輸送経路の維持とリン酸との大きな相互作用が生み出され、この相互作用により、本発明のリン酸ドープスルホン化ポリイミド/ポリベンズイミダゾール膜は、従来のスルホン化ポリイミド単独膜、リン酸ドープポリベンズイミダゾール単独膜と比較して低温域でも、高温域でもプロトン輸送が促進され、広い温度域において優れたプロトン伝導性を達成することがでたものと考えられる。
【0036】
また、本発明においては、リン酸のドープ量を制御することで、膜安定性の低下、ガス透過性の問題が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】固体高分子型燃料電池の模式的断面図である。
【発明を実施するための態様】
【0038】
本発明の高分子電解質膜を構成するために用いられるスルホン化ポリイミドとしては、従来高分子電解質膜を構成するために提案されたスルホン化ポリイミド(SPI)を含め、スルホン化ポリイミドであればいずれのものをも用いることができる。
【0039】
本発明において好ましく用いられるスルホン化ポリイミドとしては、例えば、下記式(1)で示されるポリイミドが挙げられる。
【0040】
【化7】

【0041】
上記式(1)において、R1は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、例えばベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環の4価の残基、ベンゼン環、ナフタレン環などの2個の芳香環が直接連結された化合物の4価の芳香族残基、2個のベンゼン環が−C(CF32−、−SO2−、−CO2−などの基により連結された化合物の4価の残基、などが好ましいものとして挙げられ、より好ましくは2個の芳香環を有する化合物の4価の残基である。
【0042】
また、R2は、スルホン酸基を有し、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、例えば2個のベンゼン環が直接結合、−O−、>CR4(R4は、炭素原子とともにフルオレン環構造を形成する炭化水素基)などの基により連結され、ベンゼン環にあるいはベンゼン環の置換基にスルホン酸基を有するスルホン化芳香族化合物の2価の残基などが好ましいものとして挙げられる。ベンゼン環の置換基としてはアルキル基、アルキルオキシ基、フェニル基などが好ましく挙げられる。
【0043】
さらに、R3は、少なくとも1つの芳香環を有する、スルホン酸基を有しない2価の基を表し、例えば、ベンゼン環あるいは含窒素複素環などの複素環を構造中に有する非スルホン化化合物の2価の残基などが好ましいものとして挙げられる。
【0044】
また、nは1以上、好ましくは50以上の整数、例えば50〜2000、mは0または1以上、好ましくは30以上の整数、例えば30〜1000である。
【0045】
より具体的には、R1、R2、R3としては、例えば次のような基が挙げられる。
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
上記のごときスルホン化ポリイミドは、例えば、下記式に示すような芳香族スルホン化ジアミンと任意成分である非スルホン化芳香族ジアミンと芳香族カルボン酸二無水物のモノマーから合成することができる。
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、R1、R2、R3およびn、mは、上記で定義したものである。)
【0051】
上記芳香族カルボン酸二無水物としては、例えば、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビナフチル−1,1’,8,8’−テトラカルボン酸二無水物が好ましいものとして挙げられる。
【0052】
芳香族スルホン化ジアミンとしては、主鎖がスルホン酸基により修飾された主鎖型モノマーと側鎖にスルホン酸基が修飾した側鎖型のモノマーが挙げられる。芳香族スルホン化ジアミンの好ましい例としては、例えば、2,2−ベンジジンジスルホン酸、4,4’−ジアミノフェニルエーテルジスルホン酸、3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)ベンジジン、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−2,7−ジスルホン酸、2,2’−ビス(4−スルホフェニル)ベンジジンなどが挙げられる。
【0053】
さらに、非スルホン化芳香族ジアミンモノマーの好ましい例としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジアミン、2,2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,5−ジアミノピリジンが挙げられる。非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを用いることで、膜安定性や酸保持能を付与することができる。
【0054】
スルホン化芳香族ジアミンモノマーおよび非スルホン化芳香族ジアミンモノマーを組み合わせて用いることで、スルホン化共重合ポリイミドが得られるが、共重合体はランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0055】
共重合の際のスルホン化芳香族ジアミンモノマーと非スルホン化芳香族ジアミンモノマーの比率n/mは、30/70〜100/0であることが好ましい。n/mが30/70未満では電解質膜のプロトン伝導性が低く、好適な電解質膜を得ることが難しくなる。高いプロトン伝導性を得るためには、n/mが70/30〜100/0であることが望ましい。
【0056】
スルホン化ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、1.0×104〜1.0×106であることが好ましく、また数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比Mw/Mnは、1〜5であることが好ましい。Mwが1.0×104未満であると、ポリイミドの分子鎖の絡み合いが少なくなり、膜の作製が困難になることがある。一方、Mwが1.0×106を超えると、ポリイミドの粘度が高くなり、膜の作製が困難になることがある。また、Mw/Mnが5を超えると膜の強度が低下することがある。
【0057】
スルホン化ポリイミドの構造は、例えば、スルホン化グラフト型ポリイミドやスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドなどの特異的な構造であってもよい。
【0058】
本発明で好ましく用いられるスルホン化グラフト型ポリイミドとしては、例えば下記式(2)で示される繰り返し単位からなる主鎖と、下記式(3)で示される繰り返し単位からなる側鎖を含むスルホン化グラフト型ポリイミドが好ましいものとして挙げられる。下記スルホン化グラフト型ポリイミドについては、すでに出願済み(特願2009−54255)であり、合成方法をも含め、詳細には、特願2009−54255の明細書の記載を参照されたい。
【0059】
【化12】

【0060】
(式中、Xは水素または下記式(3)を繰り返し単位として含む構造を表し、繰り返し単位中のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、かつ、各繰り返し単位どうしにおけるXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0061】
【化13】

【0062】
式(2)のスルホン化グラフト型ポリイミドにおいて、主鎖ポリマーの重量平均分子量は、1.0×105〜1.0×107であることが好ましい。これより重量平均分子量が小さいと、膜としての強度が出にくく、またこれより重量平均分子量が大きいと溶解性などが不足して、製膜ができない場合がある。より好ましくは、3.0×105〜5.0×106である。この範囲であると、膜の強度や生産性のバランスがとれ、優れた膜を作製することができる。
【0063】
式(2)のスルホン化グラフトポリマーの主鎖ポリマーの合成は、従来公知の方法が適用可能である。このような公知の方法としては、例えばMacromolecules,36(2003),6527−6536などに記載の方法が挙げられる。
【0064】
一方、式(3)の側鎖の繰り返し単位を有する基Xとしては、下記式(7)で示される基が好ましいものとして挙げられる。
【0065】
【化14】

【0066】
(式中、mは10〜2000の整数を表す。)
【0067】
上記側鎖ポリマーの重量平均分子量は、1.0×105〜1.0×107であることが好ましい。これより重量平均分子量が小さいと、膜としてのイオン交換容量が小さくなり、十分なプロトン伝導性が発現しない場合がある。またこれより重量平均分子量が大きいと溶解性などが不足し、主鎖との反応がうまく進まない場合がある。側鎖ポリマーの重量平均分子量は、より好ましくは、3.0×105〜5.0×106である。この範囲であると、膜のイオン交換容量や生産性のバランスがとれ、優れた膜を作製することができる。
【0068】
グラフト側鎖の重量平均分子量(Mw)と、主鎖の平均重量分子量(Mw)の比は、
0.01<Mw(グラフト側鎖)/Mw(主鎖)<4
であることが好ましい。0.01未満であると、相分離構造の変化が起こらず、プロトン伝導性の向上が見られない場合があり、4を超える場合は、膜としても強度が低下する場合がある。
【0069】
このようなグラフト型ポリイミドは、先に示した主鎖構造を持つポリマーに、上記側鎖構造を持つポリマーをグラフトすることにより作製することができる。グラフト型ポリイミドの好ましい構造として、下記式(8)のもの(6FDA−HABA−g−NTDA−BDSA)を挙げることができる。
【0070】
【化15】

【0071】
上記式(2)の主鎖構造を有するポリマーと上記式(3)の側鎖構造を有するポリマーの反応には、公知の類似の反応における方法が適用されればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記式(8)の構造を有するスルホン化グラフトポリイミドであれば、前述した特許文献4やPolym. Adv. Technol.16(2005)753−757、Polymer42(2001)359−373などに示される反応を適用すればよい。
【0072】
上記スルホン化ブラフト型ポリイミドのイオン交換容量は、主鎖と側鎖のモル比により適宜設定することができる。好ましいイオン交換容量は、0.5〜4.0meq/gであり、さらに好ましくは1.5〜3.5meq/gである。
【0073】
また、スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドは、例えば次の反応式に従って合成することができる。反応式中、R1、R2は、前記した基と同様の基を表す。
【0074】
【化16】

【0075】
上記スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドにおいて、トリアミン、ジアミンと組み合わせる酸二無水物は同じ構造である必要はない。スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、1.0×105〜1.0×106であることが好ましく、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1〜10であることが好ましい。スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドは側鎖の絡み合いが少ないため、Mwが1.0×105未満であると、膜の作製が困難になることがある。また、分子量の値は直鎖上のポリスチレン換算で算出した場合、分岐構造であるスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドの正確な分子量を算出することは困難である。したがって、Mw/Mnが一般のポリイミドと比較して高い値になることがある。
【0076】
また、スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドのイオン交換容量は、0.5〜3.5meq/gであることが好ましく、1.0〜3.5meq/gが望ましい。
【0077】
本発明で好ましく用いられる主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂は、例えば下記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を含む、ランダム構造またはブロック構造を有するグラフト型コポリイミド樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0078】
【化17】

【0079】
上記式(4)において、基Aはスルホン酸基を有する炭素数6〜30の芳香族基を表わす。スルホン酸基は、芳香族基に直接置換されたものでもよいし、例えば−O(CH2)−基、−C64−(フェニル)基、−O−C64−基等を介して側鎖に導入されたものでもよい。芳香族基は、ベンゼン環、ナフタレン環などが単独で用いられてもよいが、2個以上の環が直接結合あるいは−O−、−SO2−、−C(CF32−基などを介して結合されたものでもよい。基Aの例としては、例えば、下記の基が好ましいものとして挙げられる。
【0080】
【化18】

【0081】
一方、基Bは、スルホン酸基を有するポリイミド側鎖を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、基Cは置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族基を表す。スルホン酸基を有するポリイミド側鎖は、炭素数6〜30の芳香族基に直接または−O−、−CO−、−NH−基などを介して連結される。また、基Cの置換基としては、−OH、−COOH、−NH2のような基が挙げられる。基Bは、基Cの炭素数6〜30の芳香族基の水素原子あるいは置換基と、側鎖を形成するスルホン酸基を有するポリイミド化合物との反応により、炭素数6〜30の芳香族基に、直接結合により、または−O−、−CO−、−NH−基などを介してスルホン酸基を有するポリイミド側鎖が結合された基である。したがって、式(4)の繰り返し単位nおよびrの合計は、スルホン酸基を有するポリイミド側鎖が結合される前の、基Aおよび基Cを含むポリイミド中の基Cを含むイミド繰り返し単位の数を表す。前記直接結合部、あるいは−O−、−CO−、−NH−基などを含む炭素数6〜30の芳香族基bとしては、例えば、下記の基が好ましいものとして挙げられ、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族基Cとしては、下記の基において、基−D−が、−H、−D−Hあるいは−D−OHとなっているような基が好ましいものとして挙げられる。
【0082】
【化19】

【0083】
(式中、Dは、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−CO(=O)−あるいは直接結合を表す。)
【0084】
また、スルホン酸基を有するポリイミド側鎖としては、下記式(5)で表される基が好ましいものとして挙げられる。
【0085】
【化20】

【0086】
(式中、Rはスルホン酸基を含む炭素数6〜30の芳香族基を表し、xは1以上の整数である。)
【0087】
上記式(5)の基Rとしては、上記式(4)の基Aと同様の基が好ましいものとして挙げられる。基Aと基Rとは同じであっても、異なるものであってもよい。基Aと基Rが同じで、共に
【0088】
【化21】

【0089】
または
【0090】
【化22】

【0091】
であるものが好ましく、より好ましくは、基Aと基Rが共に下記の基である場合である。
【0092】
【化23】

【0093】
上記式(4)で示されるグラフト型コポリイミド樹脂の主鎖を構成するコポリイミド樹脂は、ランダム構造であっても、ブロック構造を有するものであってもよい。また、mおよびn+rは、好ましくは1〜100の整数であり、m/(n+r)は好ましくは90/10から10/90の範囲内であり、Yは好ましくは1〜150の数を示す。主鎖を構成するポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5万〜50万が好ましい。また、側鎖を構成するポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜50万が好ましい。
【0094】
さらに、グラフト側鎖の重量平均分子量と、主鎖の重量平均分子量の比が、0.01<Mw(グラフト側鎖)/Mw(主鎖)<20であること、主鎖ポリマーに対する側鎖ポリマーのグラフト率が、1<グラフト率<100であること好ましい。
【0095】
ここでグラフト率とは、主鎖中の側鎖導入部位すべてに側鎖が導入された場合を100%として計算した割合であり、〔n/(n+r)〕×100である。具体的には以下の式で算出される。
IEC(イオン交換容量)=スルホン酸基当量×グラフト率/(主鎖単位分子量−(側鎖分子量×グラフト率)より
グラフト率(%)={(主鎖単位分子量×IEC)/[スルホン酸基当量−(側鎖分子量×IEC)]}×100
【0096】
また、重量平均分子量は、以下の方法でGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定、算出したポリスチレン換算値である。
<GPCによる分子量の測定方法>
微量のLiBr(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)を用い、合成したグラフトポリマーの分子量をポリスチレン換算で測定する。サンプル溶液は1mg/mlの濃度でポリマーを臭化リチウム添加DMFに溶解させて作製する。
【0097】
上記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂は、主鎖構造を持つ高分子と、側鎖構造を持つ高分子より合成することができる。主鎖ポリマーがランダム構造の場合には、例えば、次のようにして合成される。すなわち、まず、H2N−A−NH2およびH2N−C−NH2(式中、A、Cは、上記式(4)で定義した基を表す。)を所定割合でm−クレゾールなどの溶媒に溶解し、これに1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を加え、加熱して反応させ、ランダムコポリアミック酸を合成し、これにさらにトリエチルアミンおよび安息香酸を触媒として加え、加熱することによりイミド化して、主鎖となるランダムコポリイミド樹脂が作製される。
【0098】
一方、これとは別に、H2N−R−NH2(式中、Rは、上記式(5)で定義した基を表す。)をm−クレゾールなどの溶媒に溶解し、これに1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を加え、加熱、反応させて、該当するポリアミック酸を形成した後、これにトリエチルアミンおよび安息香酸を触媒として加え、加熱することによりイミド化して、側鎖となるポリイミド樹脂(これには、オリゴマーも含まれる。)を作製する。
【0099】
次いで、上記で合成された主鎖ポリイミド樹脂と側鎖となるポリイミド樹脂とを所定量m−クレゾールなどの溶媒に溶解し、この溶液を加熱することにより、主鎖に含まれるカルボキシル基や水酸基などと側鎖となるポリイミド樹脂のアミノ基とを反応させ、目的とする主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ランダムコポリイミド樹脂を得ることができる。
【0100】
また、主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ブロックコポリイミド樹脂を作製する場合には、まず、H2N−A−NH2をm−クレゾールなどの溶媒に溶解し、これに1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を加え、加熱、反応させてポリアミック酸(これには、オリゴマーも含まれる。)を合成する。これとは別に、H2N−C−NH2をm−クレゾールなどの溶媒に溶解した後、これに1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を加え、加熱、反応させてポリアミック酸(これには、オリゴマーも含まれる。)を作製する。
【0101】
こうして得られた2種のポリアミック酸溶液を混合し、加熱攪拌することにより、ブロックコポリアミック酸を作製し、これにさらにトリエチルアミンおよび安息香酸を触媒として加え、加熱することによりイミド化して、主鎖となるブロックコポリイミド樹脂を作製する。
【0102】
こうして得られた主鎖となるブロックコポリイミド樹脂と、上記のグラフト型ランダムコポリイミド樹脂の作製の際に製造されたと同様の方法で作成された側鎖となるスルホン酸基含有ポリイミド樹脂とをm−クレゾールなどの溶媒に溶解し、加熱反応させることにより、目的とする主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ブロックコポリイミド樹脂を得ることができる。
【0103】
得られたグラフト型コポリイミド樹脂の回収は、側鎖のみが溶解する溶媒で再沈することにより行われる。主鎖ポリマーの共重合比は、主鎖がランダム共重合体である場合には、主鎖を作製する際に用いるジアミンの使用割合を変えることにより、また主鎖がブロック共重合体である場合には、ブロック共重合体を構成する共重合ポリマー単位を作製する際に用いるジアミンの使用割合を変えることにより、適宜調整することができる。また、主鎖と側鎖のモル比は、合成の際に使用される主鎖となるポリマーと側鎖となるポリマーの比により適宜調整することができる。得られた高分子電解質のイオン交換容量(IEC)は、例えば、主鎖と側鎖のモル比、主鎖中の親水性モノマーと疎水性モノマーの組成比、主鎖中の側鎖分岐点の数、側鎖の分子量などによって調整することができる。本発明のポリイミド樹脂における好ましいイオン交換容量は0.5〜4.0[meq./g]であり、さらに好ましくは1.0〜3.5[meq./g]である。イオン交換容量が0.5[meq./g]より小さいと、好ましいプロトン伝導性が発現しなくなる可能性があり、上限4.0[meq./g]より大きいと、機械強度が低下し、電解質膜や電極の材料として用いた場合、十分な強度を持てない可能性がある。
【0104】
上記方法により、例えば下記式(9)の構造を有するグラフト型コポリイミドが製造される。
【0105】
【化24】

【0106】
上記で示した合成例は、上記式(4)で表わされるポリイミド樹脂を製造するための一例として示したにすぎず、主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂を製造するための方法が、上記方法に限定されるものではない。
【0107】
一方、本発明の高分子電解質膜を構成するために用いられるポリベンズイミダゾール(PBI)としては、従来高分子電解質膜を構成するために提案されたポリベンズイミダゾールを含め、ポリベンズイミダゾールであればいずれのものをも用いることができる。本発明において用いられる代表的なポリベンズイミダゾールとしては、下記式(6)で示されるものが挙げられる。
【0108】
【化25】

【0109】
式中、R4は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基であり、例えば、ベンゼン環や、2個のベンゼン環が−O−、−CO−、−SO2−などで連結されている芳香族環含有の4価の基などが好ましいものとして挙げられ、具体的には、例えば下記のごとき基が好ましいものとして挙げられる。
【0110】
【化26】

【0111】
また、式(6)中、R5は、少なくとも1個の芳香環を有する2価の基であり、例えば、水酸基、アルキル基あるいはスルホン酸基などの置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族環、ピリジン環などの窒素含有複素環、2個のベンゼン環が直接結合、−O−、−CO−、−SO2−などで連結されているベンゼン環などを含む2価の基が挙げられ、具体的には、例えば下記のごとき基が好ましいものとして挙げられる。
【0112】
【化27】

【0113】
本発明において用いられる上記式(6)で表わされるポリベンズイミダゾール重合体は、下記反応式に示すように、芳香族テトラアミンと芳香族ジカルボン酸のモノマーから合成することができる。芳香族テトラアミンとしては、化合物中にベンゼン環を1〜2個含有するものが望ましい。芳香族テトラアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノベンジジン、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどが、好ましいものとして挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸などが、好ましいものとして挙げられる。また、スルホン化芳香族ジカルボン酸を用いることで、ブレンド膜のスルホン酸基量のさらなる増加が可能である。スルホン化芳香族ジカルボン酸としては、例えば、5−スルホイソフタル酸、4,8−ジスルホニル−2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0114】
【化28】

【0115】
また、本発明において用いられるポリベンズイミダゾール重合体は、下記反応式に示すように、1分子中に2個のアミノ基と1個のカルボキシル基を有する芳香族化合物から合成されたものであってもよい。
【0116】
【化29】

【0117】
<SPI/PBIブレンド電解質膜の作製>
本発明のリン酸ドープ電解質膜は、まず、上記したスルホン化ポリイミド(SPI)とポリベンズイミダゾール(PBI)とのポリマーブレンド物を作製し、このポリマーブレンド物を剥離性基材上に塗布し、乾燥後剥離するなどの方法により、スルホン化ポリイミドとポリベンズイミダゾールとのブレンド電解質膜(SPI/PBIブレンド電解質膜)を形成し、得られた膜をリン酸により処理することによってリン酸ドープ膜を形成することにより得られる。
【0118】
より具体的に説明すると、前記ポリマーブレンドにおいては、スルホン化ポリイミドとポリベンズイミダゾールとを溶媒に溶解し、混合することにより均一ブレンド物が形成される。こうして作製されたポリマーブレンド液は、剥離性基材上に、例えばキャスト法などにより塗布され、溶剤を蒸発した後膜を基材から剥離することにより電解質膜が形成される。塗布法としては、キャスト法が好ましいが、浸漬塗布法、ロールコート法など従来公知の任意の方法で行うことができる。また、スルホン化ポリイミドとポリベンズイミダゾールの熱溶融ブレンドが可能であればエクストルージョン法などによってもよい。SPI/PBIブレンド膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、リン酸ドープ後燃料電池の電解質膜として用いられる場合、リン酸ドープ前の膜厚は通常10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜60μmである。またリン酸ドープ後の膜厚は10〜300μm、好ましくは10〜150μmである。
【0119】
スルホン化ポリイミド(SPI)ポリマーとポリベンズイミダゾール(PBI)ポリマーのブレンドの割合は、ポリベンズイミダゾールポリマーをスルホン化ポリイミドポリマーに対し、通常1〜99重量%、好ましくは5〜75重量%である。ポリベンズイミダゾールポリマーが5重量%未満であると、平坦な膜の形態を維持することができない場合があり、ポリベンズイミダゾールポリマーが75重量%を超えると、スルホン酸基量が低いため、低温でのプロトン伝導性が著しく低下してしまうことがある。
【0120】
製膜キャスト法による場合、製膜溶媒には、スルホン化ポリイミドポリマーおよびポリベンズイミダゾールポリマーが共に完全に溶解する有機溶媒を用いることが必要とされる。このような溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N,N−メチルピロリジノンなどを挙げることができる。ポリマーのブレンドは、両ポリマーを各々別々に溶解した後、これら溶解溶液を混合してもよいし、両ポリマーを同じ容器に入れ、これに溶媒を投入して攪拌混合し、均一ブレンドポリマー溶液としてもよい。
【0121】
<リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の作成>
こうして作製されたスルホン化ポリイミド(SPI)/ポリイミダゾール(PBI)ブレンド電解質膜にリン酸をドープすることによって、本発明のリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜が作製される。リン酸ドープは、得られたSPI/PBIブレンド電解質膜を5〜95重量%、より好ましくは10〜85重量%リン酸溶液に浸漬することにより行われる。リン酸ドープ前後の膜重量変化を測定し、以下の式により算出した値を膜のリン酸含有量と定義する。
リン酸含有量(重量%)=〔(リン酸ドープ膜重量−未ドープ膜重量)/未ドープ膜重量〕×100
【0122】
膜のリン酸含有量は、1〜500重量%であることが好ましく、10〜300重量%であることがより好ましい。リン酸含有量が10重量%未満である場合、リン酸がプロトン輸送部位として十分に働かないことがあり、300重量%を超えるとリン酸の溶出が激しく、さらに膜安定性の低下が著しい場合があるためである。リン酸含有量を向上させるためには、リン酸溶液は高濃度であることが望ましい。
【0123】
リン酸への浸漬時間は、使用されるポリマー、浸漬温度、要求されるリン酸含有量などにより異なることから特に限定されるものではないが、1〜72時間が望ましく、また温度は室温から100℃が望ましい。リン酸ドープ後の膜の乾燥のための熱処理温度を含めての乾燥条件は、60〜90℃における真空乾燥が望ましく、乾燥は、膜重量変化がなくなるまで行われることが望ましい。乾燥温度が60℃未満の場合であると、膜表面のリン酸を蒸発させることが困難であり、90℃を超える場合には膜の形態に変化が起こってしまうことがある。
【0124】
リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の構成については、リン酸保持能、安定性改善のためにポリイミドの構成にヘテロ原子を有する塩基性部位を含むこと以外に、その他の技術を使うことも考えられる。例えば、シリカを用いた無機・有機ハイブリッドとすることで、電解質樹脂間に架橋処理を施すことや、エレクトロスピニング法を用いてポリマーを数十nm〜数μm程度のファイバーとすることで、安定性および強度の向上が期待できる。
【0125】
<燃料電池>
上記のようにして作製された本発明の電解質膜は、例えば、高分子固体電解質型燃料電池の固体高分子電解質膜として好ましく用いられる。
【0126】
本発明のリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜が組み込まれた本発明の燃料電池の構成は、従来の燃料電池と同様のものであればよい。図1に燃料電池の部分構造を示すが、本発明の燃料電池は、本発明の固体高分子電解質膜1の両側に、固体高分子電解質膜を挟むように空気極2と燃料極3が配される。
【0127】
電極を調製するために使用する材料としては、(1)触媒(燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進するための白金又はルテニウムなどの金属又はそれらの合金)、(2)導電材(例えば、微粒子の炭素材料などの導電性物質)、(3)接着剤(例えば、撥水性を有する含フッ素樹脂)などが挙げられる。
【0128】
本発明の電解質膜と電極との接合体を、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込むための流路が形成された一対のグラファイト製などのガスセパレーターなどの間に挿入することにより、本発明の燃料電池が製造される。この燃料電池に、燃料ガスまたは液体として、水素を主たる成分とするガスやメタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、また酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個の流路より、電解質膜電極接合体に供給することにより、燃料電池は作動する。
【0129】
また、本発明の高分子固体電解質型燃料電池は、単独で使用されてもよいし、これを複数積層して、スタックを形成して使用してもよく、またそれらを組み込んだ燃料電池システムとして使用してもよい。
【実施例】
【0130】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0131】
合成例1(スルホン化ポリイミド(SPI)の合成)
窒素雰囲気下、m−クレゾール(重合溶媒)24mL(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)の28倍等量)に、2,2−ベンジジンジスルホン酸(BDSA)2.81g(8.16mmol)とトリエチルアミン2.72g(NTDAの2.4倍等量)を加え、80℃で1時間攪拌して溶解させた。この溶液に、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)2.19g(8.16mmol)を加え、120℃で24時間攪拌し、ポリアミック酸のトリエチルアミン塩を合成した。さらにNTDAの1.12倍等量の安息香酸1.12g(9.17mmol)およびトリエチルアミンを加え、化学イミド化反応を180℃で24時間行い、スルホン化ポリイミドのトリエチルアミン塩(以下、スルホン化ポリイミド塩という。)を合成した。合成したスルホン化ポリイミド塩は、酢酸エチルに注ぎ再沈した後、洗浄して回収した。回収したスルホン化ポリイミド塩は、24時間自然乾燥させた後、150℃で真空乾燥し、溶媒を完全に除去した。
【0132】
合成されたスルホン化ポリイミド塩の1H−NMRスペクトルを、FT/NMR装置 JNM−EX270(日本電子データム社製)を用いて測定した。1H−NMRスペクトル10.4から10.5ppmにポリアミック酸由来のピークが存在しないことから、イミド化反応が進行したことが確認された。また、1ppmおよび2.5ppmにピークが存在することから、トリエチルアミン型の形成が確認された。
【0133】
また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、スルホン化ポリイミド塩の分子量を測定した。測定装置は、JASCO社製RI―2031Plusを用いた(カラム:Shodex社製SB806HQ、SB804HQ×各1本)。なお、GPC溶媒として微量の臭化リチウム(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(DMF)を用い、キャリアを用いて調整した1mg/mlのスルホン化ポリイミド塩溶液よりポリスチレン換算の分子量を測定した。合成されたスルホン化ポリイミド塩の重量平均分子量(Mw)は4.5×105であり、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は2.8であった。
【0134】
合成例2(ポリベンズイミダゾール(PBI)の合成)
窒素雰囲気下、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)1.36g(6.35mmol)、4,4’−オキシビス安息香酸(OBBA)1.64g(6.35mmol)を量り取り、3wt%溶液となるように重合溶媒であるポリリン酸(PPA)を加え、攪拌しながら徐々に温度を上げていき、180℃で6時間攪拌し、ポリベンズイミダゾールを合成した。得られたポリマー溶液をイオン交換水に注ぎ再沈した後、水酸化ナトリウム溶液で中和し、洗浄した。吸引ろ過によりポリベンズイミダゾールを回収し、24時間自然乾燥させた後、100℃で真空乾燥した。
【0135】
得られたポリベンズイミダゾールの1H−NMRスペクトルを合成例1と同様の方法で測定した。1H−NMRスペクトルからポリベンズイミダゾールの構造が確認された。
【0136】
実施例1
1.塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製
合成例1で得られたスルホン化ポリイミド(SPI)塩0.36g、合成例2で得られたポリベンズイミダゾール(PBI)0.04gを、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)6ml、4mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ポリイミド溶液に加え、さらに一晩攪拌することで溶液を調整した。このSPI/PBIブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧して溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去し、この塩型のブレンド膜を真空乾燥して、塩型SPI/PBIブレンド電解質膜を得た。乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.037gであった。
【0137】
2.リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の作製
上記で得られた塩型SPI/PBIブレンド電解質膜を、85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた後取り出し、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.16gであった。70℃で28時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.070gであった。また、得られたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。
【0138】
リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の酸含有量を、前述した含浸操作における膜重量変化から、下式により算出した。
酸含有量(%)=〔(W3−W1)/(W1)〕×100
リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の酸含有量は89%であった。
【0139】
恒温恒湿器SH−221(ESPEC社製)を用いて温度と湿度を一定に保ち、インピーダンスアナライザー3532−50(日置社製)を用いて、得られたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の50kHz〜5MHzまでの周波数応答性を測定し、ブレンド電解質膜の抵抗からプロトン伝導度を算出した。90℃、98%RH、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ6.0×10-1、1.8×10-1、8.9×10-2、2.4×10-2Scm-1であった。
【0140】
実施例2
実施例1と同様の作製手順を用いて、リン酸浸漬時間を12時間とすることで最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って塩型SPI/PBIブレンド膜を作製した。
【0141】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.037gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で12時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.16gであった。これを70℃で28時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.067gであった。
【0142】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は81%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ1.4×10-1、5.6×10-2、1.7×10-2Scm-1であった。
【0143】
実施例3
実施例1と同様の作製手順を用いて、リン酸浸漬時間を3時間とすることで最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って塩型SPI/PBIブレンド膜を作製した。
【0144】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.034gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で3時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.13gであった。これを70℃で28時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.059gであった。
【0145】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は75%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ1.1×10-1、4.4×10-2、1.3×10-2Scm-1であった。
【0146】
実施例4
実施例1と同様の作製手順を用いて、浸漬後の乾燥を自然乾燥のみとすることで最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って塩型SPI/PBIブレンド膜を作製した。
【0147】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.041gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.20gであった。真空乾燥は行わず自然乾燥のみ行い、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.18gであった。
【0148】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は324%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ4.3×10-1、2.3×10-1、8.1×10-2Scm-1であった。
【0149】
実施例5
実施例1と同様の作製手順を用いて、浸漬後の乾燥温度を60℃とすることで最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って塩型SPI/PBIブレンド膜を作製した。
【0150】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.044gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.21gであった。60℃で18時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.10gであった。
【0151】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は123%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.5×10-1、1.3×10-1、3.8×10-2Scm-1であった。
【0152】
合成例3(スルホン化ブロックコポリイミドの合成)
窒素雰囲気下、m−クレゾール(重合溶媒)22mL(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)の28倍等量)に、2,2−ベンジジンジスルホン酸(BDSA)2.54g(7.38mmol)とトリエチルアミン2.46g(NTDAの2.4倍等量)を加え、80℃で4時間攪拌して完全に溶解させた。同時に、窒素雰囲気下、m−クレゾール(重合溶媒)7mL(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)の28倍等量)に、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジアミン(APPF)1.64g(3.16mmol)を加え、80℃で4時間攪拌して、完全に溶解させた。BDSA溶液にNTDA2.00g(7.38mmol)、APPF溶液にNTDA0.84g(3.16mmol)を加え、それぞれ120℃で24時間攪拌し、ポリアミック酸を合成した。2つのポリアミック酸溶液を混合し、120℃で24時間攪拌した。さらにNTDAの1.12倍等量の安息香酸1.12g(9.17mmol)およびトリエチルアミンを加え、化学イミド化反応を180℃で24時間行い、スルホン化ブロックコポリイミドのトリエチルアミン塩(以下、スルホン化ブロックコポリイミド塩という)を合成した。なお、合成したスルホン化ブロックコポリイミド塩は酢酸エチルに注ぎ再沈した後、洗浄して回収した。回収したスルホン化ポリイミド塩は、24時間自然乾燥させた後、150℃で真空乾燥し、溶媒を完全に除去した。
【0153】
実施例1と同様の方法で、スルホン化ブロックコポリイミド塩の1H−NMRスペクトルを測定した。1H−NMRスペクトル10.4から10.5ppmにポリアミック酸由来のピークが存在しないことから、イミド化反応が進行したことが確認された。また、1ppmおよび2.5ppmにピークが存在することから、トリエチルアミン型の形成が確認された。
【0154】
実施例1と同様の方法で、GPCを用いて、スルホン化ポリイミド塩の分子量を測定した。Mwは3.0×105であり、Mw/Mnは2.6であった。
【0155】
実施例6
スルホン化ポリイミドとして合成例3で得られたスルホン化ブロックコポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って、塩型スルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0156】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.15gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.43gであった。これを60℃で18時間真空乾燥し、リン酸ドープスルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.26gであった。
【0157】
作製したリン酸ドープスルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約60μmであった。酸含有量は69%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ9.5×10-2、4.1×10-2、1.0×10-2Scm-1であった。
【0158】
実施例7
実施例6と同様の作製手順を用いて、浸漬後の乾燥温度と時間を70℃、28時間とすることで最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例3で得られたスルホン化ブロックコポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って、塩型スルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0159】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.065gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.16gであった。これを70℃で28時間真空乾燥し、リン酸ドープスルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.10gであった。
【0160】
作製したリン酸ドープスルホン化ブロックコポリイミド/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約60μmであった。酸含有量は58%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ8.0×10-2、2.7×10-2、7.4×10-3 Scm-1であった。
【0161】
合成例4(スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドの合成)
トリニトロフェニルアミン(TNPA)8.5gをジオキサン/エタノール混合溶媒(2/1)360mlに溶解させ、パラジウムカーボン0.6gを加えた。次いでヒドラジン45mlをゆっくりと滴下し、60℃で20時間攪拌し反応させた。水を用いて再沈し、トリアミノフェニルアミン(TAPA)を得た。
【0162】
窒素雰囲気下、得られたTAPA1.00g(3mmol)をジメチルアセトアミド(DMAc)20mlに溶解させた。一方、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)1.33g(3mmol)をDMAc10mlに溶解させ、TAPA溶液に滴下漏斗を用いて、ゆっくりと滴下して加えた。モノマー仕込み比(モル比)は、TAPA:6FDA=1:1とした。無水酢酸1.55mlとトリエチルアミン2.30mlを加え24時間攪拌し、メタノールで再沈し、コアポリマーであるアミン末端6FDA−TAPAを得た。
【0163】
窒素雰囲気下、2,2−ベンジジンジスルホン酸(BDSA)1.05gにm−クレゾール10mL、トリエチルアミン1.5mlを加え、4時間攪拌し、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)をモル比でNTDA:BDSA=21:20となるように加え、120℃で24時間攪拌した。その後、安息香酸0.51gを加え、180℃で24時間反応させ、酸無水物末端NTDA−BDSA溶液を得た。
【0164】
上記で得られたm−クレゾールに溶解させたアミン末端6FDA−TAPAに酸無水物末端NTDA−BDSA溶液を加え、120℃で24時間攪拌して反応させた。前記アミン末端6FDA−TAPAと酸無水物末端NTDA−BDSAの比は、重量比で、1:6とした。得られた溶液をメタノールで再沈後、酢酸エチルで洗浄し、スルホン化スター・ハイパーブランチ塩を得た。
【0165】
スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド塩の1H−NMRスペクトルを、実施例1と同様の方法で測定した。1H−NMRスペクトル10.4から10.5ppmにポリアミック酸由来のピークが存在しないことから、イミド化反応が進行したことが確認された。また、1ppmおよび2.5ppmにピークが存在することから、トリエチルアミン型の形成が確認された。
【0166】
実施例1と同様の方法で、GPCを用いて、スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド塩の分子量を測定した。Mwが8.3×105であり、Mw/Mnは4.9であった。
【0167】
実施例8
スルホン化ポリイミドとして上記合成例4で得られたスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って、塩型スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0168】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.91gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.24gであった。80℃で30時間真空乾燥し、リン酸ドープ塩型スルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.15gであった。
【0169】
作製したリン酸ドープスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミド/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約40μmであった。酸含有量は62%であった。120℃、実施例1と同様にして、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ1.2×10-1、5.4×10-2、1.8×10-2Scm-1であった。
【0170】
合成例5(スルホン化グラフトコポリイミドの合成)
<高分子電解質前駆体(主鎖部分)の作製>
ジムロートと窒素流入器を取り付けた三つ口フラスコに、4,4’−ジアミノ−3,3’−ビフェニルジオール(HAB)4.0g(0.018mol)を量り取り、N−メチルピロリドン(NMP)80mLに溶解させた(15wt%)。続いて、2,2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)8.2g(0.018mol)とイソキノリン4.4mL(0.036mol)を加え、70℃で2時間攪拌加熱した。さらに200℃で5時間攪拌加熱を行い、放冷した後メタノール:水(6:4)で再沈した。得られた粒状のポリマーを150℃で15時間真空乾燥させ、6FDA−HABポリマーを得た。
【0171】
窒素流入器を取り付けた三つ口フラスコに、6FDA−HAB5.3gを量り取り、室温でNMP100mLに溶解させた(5wt%)。トランス−4−ニトロシンナモイルクロライド(NCC)5.0g(HABの3倍mol)を加え、ピリジン35mL(NCCの約20mol倍)を注ぎ入れて、室温で24時間攪拌した。合成したポリマーをアセトンで再沈した後、シャーレに移して、150℃で15時間真空乾燥させ、6FDA−HABにニトロ基を有するシンナモイルクロライドが反応した6FDA−HABNを得た。
【0172】
ジムロートと窒素流入器を取り付けた三つ口フラスコに、6FDA−HABN5.0gを量り取り、NMP50mLに80℃で溶解させた(10wt%)。塩化スズ(II)二水和物3.7gを加えた後、大過剰の濃塩酸を加え、80℃で24時間攪拌加熱した。合成したポリマーをメタノール:水=5:5の水溶液で再沈した後、シャーレに移して、150℃で15時間真空乾燥させ、6FDA−HABNのニトロ基をアミノ基に置換した、主鎖ポリマー6FDA−HABAを得た。
【0173】
微量のLiBr(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(以下DMF)を用い、実施例1と同様にして、GPCにより、6FDA−HABNの分子量をポリスチレン換算で測定した。サンプル溶液は1mg/mLの濃度でポリマーを臭化リチウム添加DMFに溶解させて作製した。測定の結果、重量平均分子量(Mw)は7.0×104であった。
【0174】
<高分子電解質前駆体(側鎖部分)の作製>
ジムロートと窒素流入器を取り付けた三つ口フラスコに4,4’−ジアミノ−ビフェニル2,2’−ジスルホン酸(BDSA)5.5g(0.0159mol)を量り取り、m−クレゾール50mLとトリエチルアミン5.4mLを加えて、80℃で溶解させた。続いて1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物(以下NTDA)4.4g(0.0164mol)を加えて、120℃で24時間攪拌し、さらに安息香酸2.2gを加えて、数時間120℃で攪拌して、NTDA−BDSAアミック酸ポリマー溶液を得た。
【0175】
微量のLiBr(10mM)を添加したジメチルホルムアミド(以下DMF)を用い、実施例1と同様にして、GPCにより、NTDA−BDSAアミック酸ポリマーの分子量をポリスチレン換算で測定した。サンプル溶液は1mg/mLの濃度でポリマーを臭化リチウム添加DMFに溶解させて作製した。測定の結果、重量平均分子量(Mw)は1.4×105であった。ポリマーの繰り返し単位数(m)は、228となる。
【0176】
<グラフト型スルホン化ポリイミドの作製>
上記で得た主鎖ポリマー6FDA−HABAを、上記で得た側鎖部分のNTDA−BDSAアミック酸ポリマー溶液(主鎖ポリマーのアミンに対して10倍mol)に加え、トリエチルアミンを加えて120℃で24時間反応させた。安息香酸を加えて180℃で24時間反応させることにより目的とするスルホン化グラフトコポリイミド6FDA−HABA−g−NTDA−BDSAを合成した。それぞれの合成したポリマー溶液は室温まで冷却した後、メタノールで再沈して未反応の側鎖を除去し、シャーレに移して150℃で15時間真空乾燥させた。
【0177】
実施例9
スルホン化ポリイミドとして合成例5で得られたスルホン化グラフトコポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って、塩型スルホン化グラフトコポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0178】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.15gであった。塩型のブレンド膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.64gであった。100℃で10時間真空乾燥し、リン酸ドープスルホン化グラフトコポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定した。W3は0.33gであった。
【0179】
作製したリン酸ドープスルホン化グラフトコポリイミド/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は116%であった。実施例1と同様にして、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.0×10-1、9.1×10-2、2.6×10-2Scm-1であった。
【0180】
実施例10
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、スルホン化ポリイミド塩を0.19g、ポリベンズイミダゾール0.01gをそれぞれジメチルスルホキシド4ml、5mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ポリイミド溶液に加えてさらに一晩攪拌することで溶液を調整した。
【0181】
このSPI/PBI(95/5)ブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.076gであった。この塩型のブレンド膜を、85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.27gであった。これを80℃で30時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.16gであった。
【0182】
作製されたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約40μmであった。酸含有量は115%であった。実施例1と同様にして、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.1×10-1、8.9×10-2、3.6×10-3Scm-1であった。
【0183】
実施例11
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、スルホン化ポリイミド塩0.10g、ポリベンズイミダゾール0.10gをそれぞれジメチルスルホキシド3ml、6mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ポリイミド溶液に加えてさらに一晩攪拌することで、溶液を調整した。
【0184】
このSPI/PBI(50/50)ブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.066gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.15gであった。これを80℃で30時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.15gであった。
【0185】
作製されたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は124%であった。実施例1と同様にして、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ7.2×10-2、3.2×10-2、5.4×10-2Scm-1であった。
【0186】
実施例12
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、スルホン化ポリイミド塩0.05g、ポリベンズイミダゾール0.15gをそれぞれジメチルスルホキシド2ml、7mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ポリイミド溶液に加えてさらに一晩攪拌することで溶液を調整した。
【0187】
このSPI/PBIブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.073gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.16gであった。これを80℃で30時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.15gであった。
【0188】
作製されたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は124%であった。120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.8×10-2、8.6×10-2、1.9×10-3Scm-1であった。
【0189】
実施例13
リン酸含浸後に乾燥を自然乾燥のみとすることを除き、実施12と同様の作製手順によりリン酸ドープSPI/PBI(25/75)ブレンド電解質膜を作製して、乾燥方法の違いによる最終的なリン酸含有量への影響を検討した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、スルホン化ポリイミド塩0.05g、ポリベンズイミダゾール0.15gをそれぞれジメチルスルホキシド2ml、7mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ポリイミド溶液に加えてさらに一晩攪拌することで溶液を調整した。
【0190】
このSPI/PBIブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.14gであった。この膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.48gであった。これを24時間自然乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.41gであった)。
【0191】
作製されたリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約50μmであった。酸含有量は194%であった。実施例1と同様にして、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ6.1×10-2、2.1×10-2、5.8×10-3Scm-1であった。
【0192】
合成例6(スルホン化ブロックグラフトコポリイミドの合成)
<高分子電解質前駆体(主鎖部分)の作製>
窒素雰囲気下、m−クレゾール(重合溶媒)22mL(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)の28倍等量)に、3,3‐ビス(3−スルホプロポキシ)ベンジジン(3,3−BSPB)3.39g(7.38mmol)とトリエチルアミン2.46g(NTDAの2.4倍等量)を加え、80℃で4時間攪拌して完全に溶解させた。同時に、窒素雰囲気下、m−クレゾール(重合溶媒)7mL(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)の28倍等量)に、3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)0.48g(3.16mmol)を加え、80℃で4時間攪拌して、完全に溶解させた。BSPB溶液にNTDA2.00g(7.38mmol)、DABA溶液にNTDA0.84g(3.16mmol)を加え、それぞれ120℃で24時間攪拌し、ポリアミック酸を合成した。2つのポリアミック酸溶液を混合し、120℃で24時間攪拌した。さらにNTDAの1.12倍等量の安息香酸1.12g(9.17mmol)およびトリエチルアミンを加え、化学イミド化反応を180℃で24時間行い、スルホン化ブロックコポリイミドのトリエチルアミン塩(以下、スルホン化ブロックコポリイミド塩という)NTDA−BSBP−b−DABAを合成した。なお、合成したスルホン化ブロックコポリイミド塩は酢酸エチルに注ぎ再沈した後、洗浄して回収した。回収したスルホン化ポリイミド塩は、24時間自然乾燥させた後、150℃で真空乾燥し、溶媒を完全に除去した。
【0193】
実施例1と同様の方法で、スルホン化ブロックコポリイミド塩の1H−NMRスペクトルを測定した。1H−NMRスペクトル10.4から10.5ppmにポリアミック酸由来のピークが存在しないことから、イミド化反応が進行したことが確認された。また、1ppmおよび2.5ppmにピークが存在することから、トリエチルアミン型の形成が確認された。
【0194】
<高分子電解質前駆体(側鎖部分)の作製>
ジムロートと窒素流入器を取り付けた三つ口フラスコに3,3‐ビス(3−スルホプロポキシ)ベンジジン(3,3−BSPB)7.32g(0.0159mol)を量り取り、m−クレゾール50mLとトリエチルアミン5.4mLを加えて、80℃で溶解させた。続いて1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物(以下NTDA)4.4g(0.0164mol)を加えて、120℃で24時間攪拌し、さらに安息香酸2.2gを加えて、数時間120℃で攪拌して、NTDA−BDSAアミック酸ポリマー溶液を得た。
【0195】
上記で得た主鎖ポリマーNTDA−BSBP−b−DABAを、上記で得た側鎖部分のNTDA−BSPBアミック酸ポリマー溶液(主鎖ポリマーのアミンに対して10倍mol)に加え、トリフェニルホスフィンとピリジンを加えて180℃で24時間反応させることにより目的とする下記式で示されるスルホン化ブロックグラフトコポリイミドNTDA−BSBP−b−DABA−g−NTDA−BSPBを合成した。それぞれの合成したポリマー溶液は室温まで冷却した後、メタノールで再沈して未反応の側鎖を除去し、シャーレに移して150℃で15時間真空乾燥させた。分子量は32万であった。
【0196】
【化30】

【0197】
実施例14
スルホン化ポリイミドとして合成例6で得られたスルホン化ブロックグラフトコポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製法に従って、塩型スルホン化ブロックグラフトコポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0198】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.15gであった。塩型のブレンド膜を85%リン酸溶液に室温で1時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.52gであった。100℃で10時間真空乾燥し、リン酸ドープスルホン化ブロックグラフトコポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定した。W3は0.27gであった。
【0199】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約30μmであった。酸含有量は80%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、0%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RH、−20℃、58%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ3.6×10-3、4.0×10-2、9.0×10−3、2.4×10-3Scm-1であった。
【0200】
実施例15
スルホン化ポリイミドとして合成例6で得られたスルホン化ブロックグラフトコポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製法に従って、塩型スルホン化ブロックグラフトコポリイミド/PBIブレンド膜を作製した。
【0201】
得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.16gであった。塩型のブレンド膜を85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.60gであった。100℃で10時間真空乾燥し、リン酸ドープスルホン化グラフトコポリイミド/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定した。W3は0.36gであった。作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約30μmであった。酸含有量は125%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、30%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RH、−20℃、70%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ3.0×10-3、7.9×10-4、4.0×10-5、1.3×10-3Scm-1であった。
【0202】
実施例16
スルホン化ポリイミドとして合成例6で得られたスルホン化ブロックグラフトポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、スルホン化ブロックグラフトポリイミド塩を0.15g、ポリベンズイミダゾール0.05gをそれぞれジメチルスルホキシド4ml、5mlに溶解させ、完全に溶解したポリベンズイミダゾール溶液をスルホン化ブロックグラフトポリイミド溶液に加えてさらに一晩攪拌することで溶液を調整した。
【0203】
このSPI/PBI(75/25)ブレンド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでキャスト膜を得た。得られたブレンド膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。得られた塩型のブレンド膜を真空乾燥し、乾燥直後の膜重量(W1)を測定した。W1は0.086gであった。この塩型のブレンド膜を、85%リン酸溶液に室温で24時間浸漬させた。その後、表面のリン酸を拭き取り、膜重量(W2)を測定した。W2は0.20gであった。これを80℃で30時間真空乾燥し、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜を得た。最終的に得られた膜の重量(W3)を測定したところ、W3は0.15gであった。
【0204】
作製したリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜の膜厚は、約20μmであった。酸含有量は77%であった。実施例1と同様の方法で、120℃、0%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RH、−20℃、58%RHにおけるプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ4.6×10-4、4.9×10-3、4.5×10-4、6.7×10-5Scm-1であった。
【0205】
比較例1
リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜との比較として、未ドープSPI単独膜を以下の手順で作製した。
合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩0.4gをジメチルスルホキシド(DMSO)10mlに溶解させ、一晩攪拌することで溶液を調整した。そのスルホン化ポリイミド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでスルホン化ポリイミド塩のキャスト膜を得た。
【0206】
得られたキャスト膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。次にキャスト膜を0.1N塩酸に24時間浸漬させて、スルホン化ポリイミド塩のスルホン酸基をプロトン化した後、イオン交換水で洗浄して残留した塩酸を除去し、一晩自然乾燥させた。得られたキャスト膜は透明で均一であった。膜厚は、約30μmであった。
【0207】
乾燥直後の、重量を測定したキャスト膜を0.1M塩化ナトリウム水溶液に加え、2晩攪拌した後、0.01N水酸化ナトリウムで滴定し、イオン交換容量を算出したところ、3.5meq/g(理論値3.5meq/g)であった。
【0208】
実施例1と同様にして、90℃、98%RH、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおけるスルホン化ポリイミド電解質膜のプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.7×10-1、1.6×10-3、1.5×10-4、1.3×10-5Scm-1であった。
【0209】
比較例2
リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜との比較として、未ドープSPI/PBIブレンド膜を以下のとおりの手順で作製した。
スルホン化ポリイミドとして合成例1で得られたスルホン化ポリイミド塩を用い、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールを用い、実施例1の塩型SPI/PBIブレンド電解質膜の作製に従って塩型SPI/PBIブレンド膜を作製した。
【0210】
キャスト膜を0.1N塩酸に24時間浸漬させて、スルホン化ポリイミド塩のスルホン酸基をプロトン化した後、イオン交換水で洗浄して残留した塩酸を除去し、一晩自然乾燥させた。得られたブレンド膜は透明で均一であった。膜厚は、約30μmであった。比較例1と同様にしてブレンド膜のイオン交換容量を算出したところ、3.2meq/g(理論値:3.2meq/g)であった。
【0211】
実施例1と同様にして、90℃、98%RH、120℃、43%RH、90℃、30%RH、30℃、30%RHにおける未ドープSPI/PBIブレンド膜のプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ4.3×10-1、9.6×10-4、9.6×10-5、1.2×10-5Scm-1であった。
【0212】
実施例1のリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜のプロトン伝導度と比較例1のスルホン化ポリイミド電解質膜および比較例2の未ドープSPI/PBIフレンド電解質膜のプロトン伝導度とを比較すると、実施例1のリン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜は、比較例の電解質膜に比べ、120℃において約100倍、30℃においては約2000倍のプロトン伝導度を示した。
【0213】
比較例3(スルホン化ブロックグラフトポリイミド電解質膜の作製)
スルホン化ポリイミドとして合成例6で得られたスルホン化ブロックグラフトポリイミド塩と、ポリベンズイミダゾールとして合成例2で得られたポリベンズイミダゾールから作製された、リン酸ドープSPI/PBIブレンド電解質膜との比較として、未ドープスルホン化ブロックグラフト単独膜を以下の手順で作製した。
【0214】
合成例6で得られたスルホン化ブロックグラフトポリイミド塩0.4gをジメチルスルホキシド(DMSO)10mlに溶解させ、一晩攪拌することで溶液を調整した。そのスルホン化ブロックグラフトポリイミド溶液をガラスシャーレ上にキャストし、110℃まで加熱した後、徐々に減圧し溶媒を蒸発させた。その後、110℃で12時間真空乾燥させることでスルホン化ブロックグラフトポリイミド塩のキャスト膜を得た。
【0215】
得られたキャスト膜をエタノールに浸漬させて不純物と残存溶媒を除去し、イオン交換水に浸漬させてエタノールを除去した。次にキャスト膜を0.1N塩酸に24時間浸漬させて、スルホン化ポリイミド塩のスルホン酸基をプロトン化した後、イオン交換水で洗浄して残留した塩酸を除去し、一晩自然乾燥させた。得られたキャスト膜は透明で均一であった。膜厚は、約30μmであった。
【0216】
乾燥直後の、重量を測定したキャスト膜を0.1M塩化ナトリウム水溶液に加え、2晩攪拌した後、0.01N水酸化ナトリウムで滴定し、イオン交換容量を算出したところ、2.4meq/gであった。
【0217】
実施例1と同様にして、120℃、43%RH、90℃、30%RHにおけるスルホン化ポリイミド電解質膜のプロトン伝導度を算出したところ、それぞれ2.4×10-4、2.7×10-5Scm-1であった。
【符号の説明】
【0218】
1 固体高分子電解質膜
2 空気極
3 燃料極
4 負荷
5 外部回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとリン酸を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項2】
前記リン酸は、スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとからなる膜にドープされることにより含まれていることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(1)で示されるスルホン化ポリイミドであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化1】

(式中、R1は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、R2は、スルホン酸基を有する、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、R3は、少なくとも1つの芳香環を有する、スルホン酸基を有しない2価の基を表し、nは1以上の整数、mは0または1以上の整数である。)
【請求項4】
請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(2)で示される繰り返し単位からなる主鎖と、下記式(3)で示される繰り返し単位からなる側鎖を含むグラフト型ポリイミドであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化2】

(式中、Xは水素または下記式(3)を繰り返し単位として含む構造を表し、繰り返し単位中のXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、かつ、各繰り返し単位どうしにおけるXはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】

【請求項5】
請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドがスルホン化スター・ハイパーブランチポリイミドであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項6】
請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜において、前記スルホン化ポリイミドが、下記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化4】

(式中、Aはスルホン酸基を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、Bはスルホン酸基を有するポリイミド側鎖を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、Cは置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族基を表し、mおよびnは1以上の整数であり、rは0または1以上の整数であり、Yは1以上の数である。)
【請求項7】
請求項6に記載の固体高分子電解質膜において、前記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂は、m/(n+r)が90/10〜10/90の範囲にあり、ランダムまたはブロック重合体であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項8】
請求項6または7に記載の固体高分子電解質膜において、前記式(4)で示される主鎖および側鎖にスルホン酸基を有するグラフト型ポリイミド樹脂の基Bを構成するスルホン酸基を有するポリイミド側鎖が、下記式(5)で表わされる基であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化5】

(式中、Rは、スルホン酸基を有する炭素数6〜30の芳香族基を表し、xは1以上の数を表す。)
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜において、グラフト側鎖の重量平均分子量と、主鎖の重量平均分子量の比が、
0.01<Mw(グラフト側鎖)/Mw(主鎖)<20
であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜において、主鎖ポリマーに対する側鎖ポリマーのグラフト率が、
1<グラフト率<100
であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜において、前記ポリイミダゾールが下記式(6)で表されるポリベンズイミダゾールであることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【化6】

(式中、R4は、少なくとも1つの芳香環を有する4価の基を表し、R5は、少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表し、nは1以上の整数である。)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜において、スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールの比が、ポリイミダゾールがスルホン化ポリイミドに対し1〜99重量%であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜において、リン酸がスルホン化ポリイミドとポリイミダゾールの合計重量に対し、1〜500重量%であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項14】
スルホン化ポリイミドとポリイミダゾールとの混合溶液から形成されたスルホン化ポリイミドとポリイミダゾールからなる電解質膜にリン酸をドープすることを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜を用いた燃料電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−68872(P2011−68872A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187186(P2010−187186)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】